説明

溶液中でミクロンサイズの物体を検出するための光学的検出方法

本発明の全般的分野は密着型イメージング装置に関する分野である。本方法は、そのような装置を用いたミクロンサイズ又は1μm未満の粒子、あるいは有機体の検出に関し、前記粒子又は有機体は液滴(G)中に浸漬され、そして検出は感光電池又は感光素子のマトリックスを用いて行われる。本方法は、液滴が蒸発している間に行われる、1つの検出ステップ又は検出ステップの連続を含む。それは液滴が蒸発した後に行われる検出ステップもまた含み得る。一定の条件下で、本方法は当初の蒸発していない液滴における粒子又は有機体の三次元分布が、再構成されることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、生物学的診断及び解析用の密着型イメージング装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的診断用の光画像の分野において、密着型イメージング以外の特定の検出に焦点を絞った場合、2つの方法が一般に用いられる。これらの方法はフローサイトメトリー及び蛍光分子画像である。
【0003】
フローサイトメトリーは、レーザーの光線をカットする様々な細胞を数え、特徴を示し、分類する有力な技術である。作り出された回折パターンを解析することにより、細胞の寸法を決定することができる。蛍光測定は、さらに細菌の様々な科の識別を可能にする。この技術の欠点は、それが高価で複雑な装置を必要とすることである。別の欠点は、走査される立体角が比較的小さく、調査され得る領域を制限することである。
【0004】
蛍光分子画像は、それが極めて有効なため、生物学的診断において広く用いられている方法である。蛍光測定は個々の事象に対して敏感である。蛍光マーカーを使用すると、顕微鏡を用いて個別の分子を検出可能である。良好な結果を得るためには、蛍光分子により放出されるエネルギー(「発光」エネルギーと呼ばれる)から蛍光分子を励起するためのエネルギー(「励起」エネルギーと呼ばれる)を、完全に分離することが必要である。優れたフィルターが今日存在するが、それらは光線束の調整、特に小さな光線の開口を有すること、を強いる。その結果、この方法が使用する光学システムは複雑で大きな寸法となる。蛍光画像はまた、解析される媒体に前もって蛍光体を追加することを必要とし、プロセスを侵襲的にする。
【0005】
従って、これらの複雑で高価な技術を、広範な観察領域を有する非侵襲的な密着型イメージング装置で置き換えることが要望されている。
【0006】
これらの技術は、細胞、細菌、又はより一般的にミクロンサイズの粒子を、前述の進歩した光学システムを必要とせずに検出することを可能にするため、ますます発展している。密着型イメージング装置の略図を図1に示す。この装置は小さい光源、例えば発光ダイオードであり得る光源1、光源の開口を制限する絞り2、及びCCD(電荷結合素子)又はCMOS(相補型金属酸化膜半導体)の感光素子(photosites)のマトリックスであり得る、撮像装置又はセンサー3を備える。そのような撮像装置は、各感光素子に関連するマイクロレンズを一般に含む。絞り2は必須ではないが、それが有れば有利である。このマトリックス3と光源1との間に挿入されるのは、調査されるべき物体5を保持する、顕微鏡の薄板タイプの透明なスライド4である。
【0007】
この対象物はミクロンサイズの粒子を含む溶液である。これらの粒子は細胞又は細菌、あるいはマイクロスフェアーのような他の粒子のような、生物学的粒子であってもよい。解析された液滴は透明なスライド4の上に置かれ、そのメニスカスは、空気であってもよい周囲の気体と接触する。マトリックス3は図1に示されていない画像ディスプレイ及び/又は処理システムに接続されている。対象物を保持しているスライド4からダイオード1が離れている距離は、望ましくは1cmよりも大きく、例えば数cm、典型的には2cm〜5cmの間にあってもよい。センサーの表面から対象物が離れている距離は、0.1mm〜2mmの間にある。これは密着型イメージングと称されているが、調査される対象物はセンサーと直接的に接触して置かれず、上記に示す距離にある。スライドはシリカ又は水晶のような透明の材料で作られ、その厚さは数十μm〜1mmの間で変化する。拡大光学レンズの無い、この非常に単純な装置は或る場合において、フローサイトメトリー、高解像度の光学顕微鏡検査法、又は蛍光分子画像のような、従来の光学計数法の代替となり得る。
【0008】
過去数年間にわたり、幾つかのチームが密着型イメージングを用いて大きな成果を得ている。例えば、米国の大学であるUCLA(University of California, Los Angeles=カリフォルニア大学、ロサンゼルス校)に本拠を置くチームは、細菌を検出し識別するために密着型イメージングを使用した。この方法は次の出版物:“Lensfree holographic imaging for on−chip cytometry and diagnostics” (「オンチップ細胞計測及び診断のための、レンズを用いないホログラフィックイメージング」)by Sungkyu Seo et al., The Royal Society of Chemistry(英国王立化学協会), Dec.5,2008−2009,9, 777−787に記述されている。この出版物に記述されている装置において、細菌は2枚の板の間の液体中に置かれ、その全体は感光素子のマトリックス上に置かれている。単色の照明源は、良好な空間干渉性を得るように直径100μmの絞りによりフィルタリングされている。従って、感光素子のマトリックスにおいて、或る回折パターンが各々の浸漬された細胞に対して得られる。著者らによれば、得られた回折パターンは十分に良く解像され、1つの種を他の種から明確に区別できるため、様々な細菌の具体的な計数が可能である。
【0009】
UCLAチームによって提案された方法は巧みである。しかしながら、それは欠点を有する。すなわち、それは必然的に高価な、高感度のCCDセンサーの使用を要する。例えば、使用されたセンサーはKodakのKai−10002高感度CCDセンサーであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
低価格のCMOS又はCCDセンサーのような標準のセンサーが使われた場合、シラノールのマイクロスフェアー、ラテックスのマイクロスフェアー、又は大腸菌のような、様々な直径1μmのミクロンサイズ粒子の回折パターンを依然として観察できる。しかしながら、その検出効率は非常に低く、せいぜい約1%である。例えば、図2は、粒子Pの中心を通るセンサーのx軸に沿って得られた信号Sを示す。信号Sは、ここで様々な画素により測定された、縦座標軸に沿ったグレーレベルを示し、画素は横座標軸を形成し、すなわち図2は分析結果を示す。信号対雑音比(SN比)は非常に低く、粒子の検出を可能にするには、ほとんど十分でないことが見られる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による方法は、これらの欠点を持たない。それは実際、高感度センサーを必要とせずに、密着型イメージング装置を用いてミクロンサイズの粒子が検出されることを可能にする。本発明による方法の主な特徴は、液滴(この中に、検出されるべきミクロンサイズの粒子(細菌、細胞、マイクロスフェアー等)が見出される)が蒸発している間か、又は前記液滴が蒸発した後に測定を行うことである。従って、先行技術の測定と異なり、液滴は2枚の板の間には置かれない。さらに、液滴は蒸発できるように気体、例えば空気と接触しなければならない。これは蒸発中又は蒸発後において、検出が非常に効果的であることが観察されたためである。
【0012】
より正確には、本発明の主題は、密着型イメージング装置を用いてミクロンサイズ又は1μm未満の粒子あるいは有機体を検出するための、光学的検出方法であり、前記粒子又は有機体は液滴中に浸漬され、そして検出は感光電池又は感光素子のマトリックスを用いて行われ、前記方法が、液滴の蒸発している間に行われる、少なくとも1つの第一の検出ステップを含むことを特徴とする。液滴は、撮像装置と接触しているか又はそこから近距離に位置するスライド上に置かれるか、又は撮像装置上に直接置かれ得る。
【0013】
有利には、前記方法は、液滴が蒸発した後に行われる少なくとも1つの第二の検出ステップを含む。
【0014】
有利には、検出は、液滴をその蒸発部分から分離する界面において、液滴の周辺上で行われる。
【0015】
有利には、前記方法は、液滴が蒸発している間及び/又は液滴が蒸発した後に、規則的な時間間隔で行われる検出ステップの連続を含み、各検出ステップは所与の平面において見出される、粒子又は有機体の分布を測定することを可能にし、前記平面は、蒸発時間に依存する、感光素子のマトリックスから離れて位置し、得られた粒子又は有機体の前記分布の組み合わせは、当初の蒸発していない液滴内における粒子又は有機体の三次元分布が再構成されることを可能にする。
【0016】
液体は水又は、検出されるべき粒子が細菌の時には生理的緩衝液、例えばトリスヒドロキシメチルアミノメタン(tris(hydroxymethyl)aminomethane)の略称を示す、“Tris”であることと有利である。好適な実施形態において、液体は湿潤剤、例えばTween 20 [すなわちpolyoxyethylene(20)sorbitan monolaurate=ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート]を含む。
【0017】
最後に、透明なスライド又はセンサーの表面のいずれかである、液滴の保持部は官能化されてもよい。それはまた親水性にされ得る。それはまた周囲温度より低く冷却され得る。
【0018】
本発明は非限定的な例として与えられる、以下の記述を読むことにより、そして添付図により、より良く理解され、他の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】密着型イメージング装置を示す。
【図2】低感度の感光素子マトリックスで得られた検出信号を示す。
【図3】本発明による検出方法の原理を示す。
【図4】本発明による方法を用いて、低感度の感光素子マトリックスで得られた検出信号を示す。
【図5】本発明による方法を実施する、連続的な検出ステップを示す。
【図6】生理食塩水の緩衝液滴内、及び液滴の蒸発から生じる膜内にある細菌の観察を表わす図を示す。分析結果(図6a及び6d)は、水平軸xに沿った位置の関数としての検出された強度を示す。
【図7】蒸発前後の、同じ生理食塩水の緩衝液滴内にある細菌の観察を表わす図を示し、液滴は親水性又は疎水性のスライド上に堆積されている。曲線7a及び7cは、液滴に沿って位置する点における、時間の関数としての検出された強度を示す。
【図8】直径500nmのポリスチレン粒子の画像と、この画像のx軸に沿った横方向の分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記で見られたように、低感度のセンサーの使用により、大きなSN比が得られない。本発明による方法により、SN比、そして結果的に検出効率を増加することができる。先行技術による検出システムは液滴内の微小粒子又は微小有機体を検出する。しかしながら、粒子が浸漬されているとき、それらは高感度センサーが使用されない限り検出するのが困難である。例えば、図3の左側の視図は、時間Tにおける、粒子Pを含有する液滴Gの一部分の画像を示す。上述のような密着型イメージング装置のセンサーが、この画像を捉えるために使用された。センサーの感度が低すぎる場合、粒子は認識出来ない。
【0021】
しかしながら、液滴が蒸発するとき、とりわけ粒子が液滴のメニスカスの所にあるとき、粒子、細菌、又はマイクロスフェアーは、空気−液体の界面において非常にはっきりと現われる。例えば、図3の右側の視図は、時間T+ΔTにおける、部分的に蒸発した後の上記液滴Gの一部分の画像を示す。粒子Pは、蒸発した液滴の領域Zにおいてはっきりと現われている。文字Lで表わされる右上の隅に位置する部分は、当初は溶液で覆われていなかったスライドの部分に対応する。
【0022】
図4は例えば、粒子Pの中心を通るセンサーのx軸に沿って得られる信号Sの分析結果を示す。SN比は、今や粒子の検出を可能にするのに十分高いことが見られる。表わされたSN比は、浸漬された大部分の細胞の検出を想定し得るのに十分な程、高く、数十%のオーダーである。この方法は再現可能である。本発明による方法は、従って実施が簡単である。それは基本的に、液滴が蒸発する間に測定を実行することにある。1つの測定又は検出ステップは、基本的に密着型イメージング装置の撮像装置の感光素子により検出された信号を記録し、それらの振幅を解析することにある。
【0023】
蒸発の間に照らされた粒子間の、この増加したコントラストに関する物理的説明は複雑である。実験に基づく例の以下の記述に示されるように、この増加は粒子を覆う薄い残留膜の形成に起因し得るが、この膜は液滴が蒸発した後も幾分かの間残っている。液滴を支持するスライド上で液滴を形成する液体の湿潤特性に応じて、この膜は、短寿命であり数秒又はそれ未満のうちに消滅するか、又はこの膜は耐久性があり数秒間、数十秒間、あるいは数分間までも残るかのいずれかである。粒子を覆うこの残留膜はマイクロレンズとして作用し、従って驚くほど高いSN比で細菌の検出を可能にすると考えられる。信号の強度は、粒子が蒸発ライン上にあるとき実際に最大化され、粒子が液滴のメニスカスの所にあるとき3倍となる。
【0024】
一定の条件下では、液滴が蒸発するときその高さが基本的に減少し、蒸発は液滴の上部から下部に向かって生じるが、液滴の縁から中心に向かっては蒸発しない可能性がある。これは例えば、スライドが数度だけ傾いている場合に生じる。この効果は当初の蒸発していない液滴において、粒子又は有機体の三次元分布を再構成するために用いることができる。これを達成するためには、液滴が蒸発している間に、規則的な時間間隔で検出ステップの連続を行うことで十分である。各検出ステップは与えられた平面において、粒子又は有機体の分布が測定されることを可能にし、前記平面は蒸発時間に依存する感光素子のマトリックスからの距離であり、得られた前記粒子又は有機体の分布の組み合わせは、当初の蒸発していない液滴内の粒子又は有機体の三次元分布が再構成されることを可能にする。図5はこの原理を例証する。この図において、粒子を含んでいる液滴の蒸発中の異なる3つの時点が示されている。一方には液滴の一部分の三次元視図、そして他方には密着型イメージング装置のマトリックス検出器によって取得された、対応する画像がある。三次元視図は、液滴又はそれらの分布の実寸法を表わしていないことに注意されたい。時間T0において、液滴からは僅か2つの粒子が現われ、検出器の画像内で識別できる。それらは白い円で表わされている。蒸発の30秒後の時間T1においては、より多数の粒子が液滴から現われ、検出器の画像内で識別できる。最後に、蒸発の45秒後の時間T2において、蒸発は実際的に終わっている。全ての粒子が現われ、検出器の画像内で識別できる。従って、瞬間T0、T1、T2等において取得された各種の連続的画像から、液滴内の粒子の三次元分布を知ることが可能である。
【0025】
本方法を完全に制御することが望まれる場合、蒸発を赤外線ダイオード又は電気ヒーターを用いて、あるいは液滴のメニスカスの上方で気体を吹き付けることにより、調節してもよい。加熱手段はまた基板内へ組み込まれてもよい。基板は、例えばその上にITO(インジウムスズ酸化物)の薄膜が堆積されている、水晶のスライドであってもよく、この膜はそのとき電気抵抗を形成することができる。液滴の大きさ、使用された液体、及び実験条件に応じて大きさのオーダーを与えると、液滴が蒸発するのに必要な時間は数秒〜数十秒であり、液滴の体積は1μl〜20μlの間、あるいはそれを超える。
【0026】
Tris(トリスヒドロキシメチルアミノメタン(tris(hydroxymethyl)aminomethane))又は浄水のような、様々な液体が使用され得る。Trisは数日の間、細菌の保存を可能にする食塩溶液であるという利点を持つ。それは従って生理的緩衝液として広く用いられる。後で示されるように、液滴を支持するスライドは疎水性であり過ぎることがなく、親水性であり過ぎることもないことが望ましい。本方法は様々なタイプの粒子と共に機能する。例として、直径1μmのシラノールのマイクロスフェアー、直径1μmのラテックスのマイクロスフェアー及び細菌が挙げられ得る。証明のための試験が大腸菌又は枯草菌に対して行われた。本方法は、液滴当り1粒子から液滴当り10万粒子までの広い範囲の濃度で機能する。
【0027】
勿論、光源から来る照明は出来る限り均質であることが望ましい。言い換えれば、メニスカスの表面は各点において基本的に等しい強度で照らされる。照明が一定の空間干渉性を有すること、すなわち光源の前に置かれた絞りが小さい寸法を持つこともまた望ましい。例えば、100μmの直径を有する絞りを使うことが可能である。
【0028】
この画像取込装置は、それがウェブカメラの場合に低価格のCCDセンサー、又はCMOSセンサーの感光素子からデジタル画像を取り込む電子カード、発光ダイオード、絞り及びガラスのスライドのみを含むため、単純で安価である。センサーの画素もしくは感光素子は、およそ2〜10μmの平均サイズを有し得る。これらのセンサーは、画素のサイズが2μm以下の高感度センサーよりも大幅に安価である。本センサーは低価格CMOS又はCCDセンサーである。
【0029】
特定の細菌を細菌培地から分離するために、抗体によって「官能化」されたガラスのスライドを用いることにより、検出を改善できる。そのとき、検出及び検出された細菌の識別が可能であり、識別はスライドの官能化に依存する。
【0030】
検出試験は図1に示すような装置を用いて行われた。光源1は555nmを中心とする波長で発光する、1.7Wの発光ダイオード(Luxeon(登録商標) K1Luxeon III)であった。光源は基板4の10cm上方に置かれた。後者は70mm×25mm×0.15mmのガラス製顕微鏡スライドであった。センサー3は、8ビットのダイナミック・レンジを有する800×600画素のCMOS画像センサーであった。各画素のサイズは3μm×3μmであった。このセンサーはウェブカメラ(V−Gear TalkCam 2000型)から取り出された。基板4を光検出器3に出来る限り近く置くために、検出器を覆っているプラスチックの膜は取り除かれた。
【0031】
約1μlの体積を有する液体サンプルは、センサー3に対向する基板4の上に堆積された。液滴は次に数分間の期間にわたり蒸発できるようにされた。この実験において、使用された溶液はpH8の10mM Tris−HCl食塩溶液であった。望ましくは、商標名Tween 20により知られる、0.1体積%のポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(polyoxyethylene(20)sorbitan monolaurate))が加えられてもよい。
【0032】
図6a、6b及び6cは、直径100μmの絞りを光源と液体サンプルとの間に置くことにより、空間的に可干渉性にされた光線によって、サンプルが照らされたときに得られた、それぞれ、横方向の分析結果PI、画像、及び前記画像の三次元表示を示す。このようにして、液滴内に存在する細菌によって生み出された回折パターンを観察することが望ましい。液滴の体積は約1μlである。
【0033】
S.Su Seoによる文献“Lensless holographic imaging for on−chip cytometry and diagnostics”(「オンチップ細胞計測及び診断のための、レンズを用いないホログラフィックイメージング」),Lab Chip 9(6),777−87(2009)に記述されているように、ホログラフィック回折パターンが観察される。
【0034】
図6d、6e、及び6fは、サンプルが同じ光源により、ただし絞り無しで照らされたときに得られた、それぞれ、横方向の分析結果PI、画像、及び前記画像の三次元表示を示す。液滴はこれらの画像が生み出される前に蒸発していた。基板は十分に親水性であったため、液滴が蒸発している間、基板及びその上に堆積された細菌を覆う湿潤膜が残っていた。基板が親水性であり、サンプルの溶液が湿潤で低い表面張力を有したため、この膜はさらに長時間残存した。そのため、これは超湿潤膜形成と称される。
【0035】
試験の間に行われた構成は、この場合超音波で清浄にされ、エタノールと、湿潤剤(0.1%のTween)の追加により湿潤状態にされた上述の生理的緩衝液とで濯がれたガラスである、親水性のスライドが使用されたため、好ましい。図7に例証されるような構成において、液滴の蒸発に続いて、形成された超湿潤膜は適所に長い時間、すなわち数分間、さらには数時間にわたり、残ることが観察された。
【0036】
図6d、6e及び6fは、それぞれ図6a、6b及び6cと比較されるべきである。湿潤膜により覆われた細菌の接触画像から得られるSN比は、液滴内に浸された細菌の接触画像に対して20倍増加することが観察され、それによってこれら細菌を明白に検出することができる。
【0037】
溶液の蒸発からもたらされる膜の形成は、本発明による方法のキーポイントの1つである。そのような膜は、細菌の上方に形成される1つ以上のマイクロレンズの役目を果たす。これは、約45と非常に高いSN比で、細菌を検出できるかの理由を説明する。
【0038】
これらの例において、SN比(SNR)は次のように定義される:
【数1】

ここで、
― I=画像の各画素の振幅、
― μ=ノイズを表わすと考えられる領域における、画素の平均振幅
― σ=ノイズを表わすと考えられる領域における、画素の振幅の標準偏差
である。
【0039】
水滴が蒸発するとき、そのような膜の形成が細菌の表面において観察される。使用される溶液に応じて、そして特にその湿潤特性と表面張力特性に応じて、膜はより長い又はより短い時間の間残る。この膜の厚さを推定するため、様々な直径の重合体のマイクロスフェアーに対して試験が行われた。マイクロスフェアーの直径が5μmを超えたとき、膜は組織的に破断することが観察された。従って、この膜の厚さは数μm未満、さらには5μm未満であることが結論付けられた。基板の表面上に形成される膜の破断は、図1に略図で示されている、前述の装置で画像を作り出すことにより、容易に検出可能であった。
【0040】
2つの試験が、使用された緩衝溶液に関して、1つは疎水性の基板上で、もう1つは親水性の基板上で、上述の緩衝液を用いて行われた。「疎水性」及び「親水性」という表現は、この基板と接触する液滴の接触角が、それぞれ90°よりも大きい、及び小さいことを意味すると理解され、これは広く受け入れられている定義である。
【0041】
図7a及び7bは基板が疎水性であるときに得られた結果を例証する。図7aは図7bに示す細菌の画像における、横方向分析結果の時間的変遷を示し、本分析結果は細菌の画像の中央を通っている。t<48秒(図7b−1)に関して液滴は蒸発し、何ら有意な信号は検出されていない。t=48秒とt=49秒の間では、液滴の蒸発は細菌を覆う短寿命の膜の形成をもたらす(図7b−2)。実際、細菌上に形成するこの膜の影響に対応して、信号の増加が観察される。基板が疎水性であるため、膜は急速に消失し、それはt>48.5秒間で観察された信号の強度の急速な低下を説明する(図7b−3)。
【0042】
図7c及び7dは、液滴を支持する基板が親水性であるときに得られた結果を例証する。図7cは図7dに示す細菌の画像における、横方向分析結果Pの時間的変遷を示し、本分析結果は細菌の画像の中央を通っている。t<7秒の間、液滴は蒸発し、何ら有意な信号は検出されていない(図7d−1)。t=7秒において、細菌は薄膜のみに覆われている(図7d−2)。基板が親水性であるため、膜は基板の表面上及び細菌の表面上に長時間残る(図7d−3)。従って、高い強度の信号が前の場合よりもずっと長期間にわたって観察され、その期間はここでは数十秒である。液滴が蒸発を終了したとき、膜は消失して細菌はもはや検出されない。
【0043】
これらの図は、本発明による方法により、細菌を含んでいる液滴の蒸発する瞬間に、そして特に液滴/外側の媒体の界面が細菌に達するとき、すなわち細菌が薄膜のみにより覆われる瞬間に、溶液内の細菌が検出されるのが可能となることが、確認される。溶液の湿潤度に応じて、膜の形成は短寿命(1秒又は2秒間の残存)か、あるいは耐久性があるかのいずれかである。考慮されている基板上の溶液の湿潤度が大きいほど、膜の形成はより耐久性がある。「耐久性がある」の表現は、数十秒又は数分、あるいは数時間さえも持続する膜を意味するものと理解される。
【0044】
従って、耐久性がある膜を得ることが望まれるとき、湿潤剤を溶液に加えることが好ましい。そのような湿潤剤は、例えば0.1体積%の濃度を有する、上記に定義されたTween 20である。
【0045】
本試験における使用のために選ばれた溶液は、蒸留水中で10mMに希釈された、Ph=8を有する緩衝液Tris HClであった。この緩衝液を用いて、とりわけ満足すべき結果が得られた。Trisはトリスヒドロキシメチルアミノメタン(tris(hydroxymethyl)aminomethane)又は2−アミノ2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(2−amino2−hydroxymethyl−1,3−propanediol)の略称である。
【0046】
他の緩衝液が使用されてもよい。細菌の識別が望まれるとき、細菌を生きたまま保つ生理的緩衝液が好ましい。Tweenのような湿潤剤の追加は、一般的に非常に有用であることが分っており、より耐久性がある微小な膜の形成を可能にする。そのような湿潤剤の体積濃度は、例えばおよそ数百分の1%〜数%、望ましくは数百分の1%〜数十分の1%である。使用され得る他の緩衝液の中では、PBS(phosphate buffered saline=リン酸緩衝生理食塩水)又は、非生物学的用途に対しては、蒸留水が挙げられ得る。
【0047】
上記の例は細菌の観察について記述しているが、本発明は細菌よりも小さい粒子又は生物学的対象物に適用され得る。図8は、上記の例において記述されたような、同じ生理食塩水緩衝液の液滴の蒸発に引き続いて形成される超湿潤膜で覆われた、ポリスチレンのマイクロスフェアーの観察から来る画像(図8a)及び分析結果PI(図8b)を示す。このマイクロスフェアーの直径は500nmである。検出されたSN比は高く留まっている(約20)。
【0048】
さらに、液滴の保持部を周囲温度未満に冷却することにより、液滴の蒸発が遅くなり、残留膜はより耐久性を増す。例えば、周囲温度が20℃のとき、保持部は5〜10℃の間の温度に冷却され得る。
【0049】
次に、冷却された撮像装置を使用することもまた可能であり、それは検出された信号のSN比が増加できるようにする。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明による方法の産業上の用途の非限定的な例として:
― 病院、製薬又は食品加工の環境における、細菌及び真菌の含有量に関する空気品質のモニタリングと、
― 微生物、細胞生物学、及び細胞病理学を含む前臨床研究用の診断測定及び診断ツールと、
― 体液中の生物学的粒子の濃度測定と
が挙げられ得る。
【0051】
例えば、細菌性の尿路感染についても言及され得る。細菌に対する尿の検査は、1μlあたりの白血球数が10を上回る白血球尿(尿中に白血球が存在)、又は膿尿症と関連する、一種微生物(一種類の細菌)の細菌尿が、1μlあたりの細菌数が100を上回る、多数の細菌集落を伴って発見されるとき、尿路感染の確認を可能にする。
【0052】
以上のような測定は、本発明による方法を用いて容易に行われ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密着型イメージング装置を用いてミクロンサイズ又は1μm未満の粒子あるいは有機体を検出するための、光学的検出方法であって、前記粒子(P)又は有機体が液滴(G)中に浸漬され、そして前記検出が感光電池又は感光素子のマトリックス(3)を用いて行われ、前記方法が、前記液滴の蒸発している間に行われる、少なくとも1つの第一の検出ステップを含むことを特徴とする光学的検出方法。
【請求項2】
前記方法が、前記液滴の蒸発後に行われる、少なくとも1つの第二の検出ステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の光学的検出方法。
【請求項3】
前記液滴をその蒸発部分から分離する界面(Z)において、前記検出が前記液滴の周辺で行われることを特徴とする、請求項1に記載の光学的検出方法。
【請求項4】
前記方法が、前記液滴の蒸発している間に規則的な時間間隔で行われる、検出ステップの連続を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学的検出方法。
【請求項5】
各検出ステップが、所与の平面において見出される、粒子又は有機体の分布の測定を可能にし、前記平面が、蒸発時間に依存する、前記感光素子のマトリックスから離れて位置し、得られた粒子又は有機体の前記分布の組み合わせが、当初の蒸発していない液滴内における粒子又は有機体の三次元分布が、再構成されることを可能にすることを特徴とする、請求項4に記載の光学的検出方法。
【請求項6】
前記液体が水又は生理的緩衝液であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学的検出方法。
【請求項7】
前記生理的緩衝液が、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(tris(hydroxymethyl)aminomethane)の略称を示す、“Tris”であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学的検出方法。
【請求項8】
前記液体が、湿潤剤を加えることにより湿潤状態にされることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学的検出方法。
【請求項9】
前記液体中の前記湿潤剤の体積濃度が、数百分の1%〜数%の間にあることを特徴とする、請求項8に記載の光学的検出方法。
【請求項10】
前記液滴が透明のスライド上又はセンサーの表面上に置かれている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学的検出方法。
【請求項11】
前記液滴を支持する前記スライドが官能化されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学的検出方法。
【請求項12】
保持部の上に置かれている前記液滴が周囲温度に対して冷却される、請求項10又は11のいずれかに記載の光学的検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−507630(P2013−507630A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533626(P2012−533626)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065382
【国際公開番号】WO2011/045360
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(510163846)コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ (47)
【Fターム(参考)】