説明

溶湯金属の自動吸引供給装置および溶湯金属用取鍋

【課題】溶湯金属の特性を悪化させずに吸引供給する
【解決手段】溶解炉100から溶湯金属用取鍋50に溶湯金属を吸引供給するための自動吸引供給装置1であって、吸引口10aで上記溶解炉100から溶湯金属を吸引し、排出口10bで上記溶湯金属用取鍋50に溶湯金属を排出するための配管10と、上記配管10に接続され、上記配管10内に窒素を導入するためのガス管2と、上記溶湯金属用取鍋50の内部を減圧するための減圧ポンプとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアルミニウムなどの溶湯金属などを吸引供給するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム精錬工場内において、アルミニウムなどの溶湯金属を溶解炉から取り出し、溶湯金属用取鍋に入れ、フォークリフトなどにより工場内或いは工場間などを運搬している。運搬したアルミニウムなどの溶湯金属は、成型工場において所定の形状になるように成型される。
【0003】
溶解炉から溶湯金属用取鍋へ溶湯金属を供給する場合、溶湯金属用取鍋の上蓋を開けて溶湯金属を空気にさらしながら容器内に供給していた。
【0004】
しかし、空気による溶湯金属の酸化の防止、および安全性を確保するなどの観点から、近年では、差圧式の溶湯金属吸引供給技術が採用され始めている。これは、溶湯金属用取鍋内を減圧することにより生じる差圧を利用して、溶解炉から溶湯金属用取鍋へ溶湯金属を吸引供給する技術である。
【0005】
このような差圧式の溶湯金属吸引供給技術としては、例えば、特許文献1〜4に開示されたものがある。
【0006】
図13は、従来の溶湯金属用取鍋の構成を示す断面図である。溶湯金属用取鍋450は、図13に示すように、有底筒状の本体部451の上部開口部452に、大蓋470が配置されている。また、本体部451の側面部には配管取付部454が設けられている。配管取付部454における流路455は、本体部451の底部453に近い位置に設けられた内部開口部455bから、配管取付部454の上部に設けられた外部開口部455aに向けて延在している。この配管取付部454には、流路455に連通するように配管460が接続されている。さらに、大蓋470のガス配管473には、エアホース474を介して減圧ポンプ(図示せず)が接続されている。
【0007】
図14は、従来の差圧式の溶湯金属用取鍋内に溶湯金属を吸引供給するシステムを示す図である。図14に示すように、溶湯金属吸引供給システム500では、溶湯金属用取鍋550と溶解炉600とが配管560により接続されている。溶湯金属用取鍋550は、溶湯金属用取鍋450と同様に、本体部551と、大蓋570とを備えており、大蓋570のガス配管573には、エアホース574を介して減圧ポンプ575が接続されている。ただし、溶湯金属用取鍋550には、本体部551の側面部に配管取付部が設けられておらず、配管560は大蓋570を貫通し、本体部551の底部553に近い位置に向かって延在している点で溶湯金属用取鍋450と異なっている。
【0008】
このような構成の溶湯金属用取鍋550は、フォークリフト610によって保持されており、昇降が可能である。
【0009】
溶湯金属吸引供給システム500では、減圧ポンプ574を作動させて、溶湯金属用取鍋550の内部を減圧し、溶湯金属用取鍋550と溶解炉600との内部間に差圧を生じさせる。この差圧によって、溶解炉600から溶湯金属が吸引されて、溶湯金属用取鍋550内に供給される。
【0010】
これにより、溶湯金属を空気にさらすことはなく、溶解炉600から溶湯金属用取鍋550に、溶湯金属を安全に吸引供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−160539号公報(2004年6月10日公開)
【特許文献2】特開2004−188490号公報(2004年7月8日公開)
【特許文献3】特開2005−262318号公報(2005年9月29日公開)
【特許文献4】特開2008−155282号公報(2008年7月10日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図14に示されるような溶湯金属吸引供給システムでは、以下のような問題点を有している。
【0013】
溶湯金属を溶湯金属用取鍋に吸引供給する場合、溶解炉および溶湯金属用取鍋に存在する空気や水分が吸引供給した溶湯金属に混入していることがある。溶湯金属に混入した空気や水分は、溶湯金属と反応して水素と酸化物が生成される。このような水素と酸化物とが混入した溶湯金属を用いて成型した場合、成型された金属の内部に引け巣と酸化不純物とが生じるため、充分な強度が得られなくなるという問題を有している。
【0014】
上記問題は、エンジンなどの高温状況下で使用される成型金属に顕著であり、変形、破損などの原因となっている。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶湯金属の特性を悪化させることなく溶解炉から溶湯金属用取鍋に、溶湯金属を吸引供給することができる自動吸引供給装置、およびそれに使用する溶湯金属用取鍋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の自動吸引供給装置は、上記課題を解決するために、溶解炉から溶湯金属用取鍋に溶湯金属を吸引供給するための自動吸引供給装置であって、吸引口で溶解炉から溶湯金属を吸引し、排出口で溶湯金属用取鍋に溶湯金属を排出するための配管と、配管に接続され、配管内に窒素を導入するための窒素導入手段と、溶湯金属用取鍋の内部を減圧するための減圧手段とを備えていることを特徴としている。
【0017】
上記発明によれば、配管に窒素導入手段が接続さている構成であるため、配管内に窒素が導入される。配管による溶湯金属の吸引開始時に窒素導入手段から配管に導入された窒素は、溶湯金属中の水素と酸化物とを吸収して、溶湯金属用取鍋において、減圧手段によって吸引除去される。これにより、溶湯金属用取鍋に供給された溶湯金属に含まれる水素と酸化物との量を軽減することができる。
【0018】
また、溶湯金属用取鍋の内部に残留した空気や水分は、溶湯金属用取鍋の内部の減圧に伴って、減圧手段により吸引除去される。このため、溶湯金属が溶湯金属用取鍋に供給される時点において、溶湯金属用取鍋の内部には空気や水分が、ほぼ存在しない状態になる。これにより、溶湯金属用取鍋に供給された溶湯金属への新たな空気や水分の混入を防止することができる。
【0019】
このように、上記発明によれば、溶湯金属の特性を悪化させることなく溶解炉から溶湯金属用取鍋に、溶湯金属を吸引供給することができる。
【0020】
また、本発明の自動吸引供給装置では、配管を上下方向に移動させる昇降手段を備えることが好ましい。
【0021】
上記発明によれば、配管と昇降手段とが接続されているため、昇降手段に連動して配管自体が上下方向に移動する。
【0022】
これにより、従来のように、フォークリフトなどで、溶湯金属用取鍋を昇降させることなく、溶解炉から溶湯金属用取鍋に、溶湯金属を吸引供給する作業を安全にすることができる。
【0023】
また、本発明の自動吸引供給装置では、昇降手段は、スクリュージャッキであることが好ましい。
【0024】
上記発明によれば、上配管とスクリュージャッキとが接続されているため、スクリュージャッキに連動して配管が上下方向に移動する。スクリュージャッキは、高温下での作動性および耐久性に優れている。
【0025】
これにより、スクリュージャッキは、配管を上下方向に移動させる昇降手段として、好適に用いることができる。
【0026】
また、本発明の自動吸引供給装置では、配管の外周上に、溶湯金属用取鍋に形成された開口部を塞ぐように溶湯金属用取鍋に当接する取鍋当接部を備えることが好ましい。
【0027】
上記発明によれば、取鍋当接部を溶湯金属用取鍋に当接させることにより、溶湯金属用取鍋に形成された開口部に配管が挿入された状態で、溶湯金属用取鍋と配管とが接続される。また、取鍋当接部を溶湯金属用取鍋に当接させるだけで、溶湯金属用取鍋内を密閉状態にでき、減圧手段により容易に溶湯金属用取鍋内を減圧させることができる。
【0028】
これにより、溶湯金属用取鍋ごとに配管を繋ぎ換えるなどの作業が不要であるため、溶湯金属用取鍋と配管との接続作業時間を短縮することができる。
【0029】
また、本発明の自動吸引供給装置では、上記溶湯金属用取鍋に供給された溶湯金属の液面である溶湯金属面が所定位置に到達したか否かを検知する溶湯金属面検知手段と、上記溶湯金属面検知手段により溶湯金属面が所定位置に到達したことを検知したとき、上記減圧手段の動作を停止させ、上記溶湯金属用取鍋の内部を大気圧に戻す制御を行う制御部とを備えることが好ましい。
【0030】
上記発明によれば、溶湯金属面検知手段が溶湯金属用取鍋内の溶湯金属面が所定位置に到達したことを検知したとき、制御部は減圧手段による溶湯金属用取鍋内の減圧を停止させる。
【0031】
これにより、作業者による手動の操作がなくても、溶湯金属用取鍋から溶湯金属が噴出することを防止することができる。
【0032】
なお、所定位置は、例えば、予め定められた最大貯蔵量の溶湯金属を上記溶湯金属用取鍋に貯蔵したときの溶湯金属の液面の高さに設定しておけばよい。これにより、最大貯蔵量よりも多く供給されることを防止することができる。
【0033】
また、本発明の自動吸引供給装置では、上記取鍋当接部を上記溶湯金属用取鍋に当接させたときに、上記排出口は、上記所定位置よりも高い位置に配置されることが好ましい。
【0034】
上記従来の差圧式の溶湯金属用取鍋では、溶解炉からの配管の排出口が底面付近に位置している。これは、溶湯金属用取鍋内において、溶湯金属用取鍋内の空気などが混入することを防止するために、溶湯金属用取鍋に供給される溶湯金属が、溶湯金属用取鍋あるいは貯蔵された溶湯金属と接するときの衝撃をなるべく抑えるためである。その結果、溶湯金属用取鍋に所望量だけ溶湯金属を供給したとき、溶湯金属の液面の高さは、排出口よりも高くなる。そのため、溶湯金属用取鍋内を大気圧に戻したときに、サイフォンの原理により、溶湯金属用取鍋から溶解炉に向けて溶湯金属が逆流することが考えられる。当該逆流を防止するために、従来の方式では、溶解炉から溶湯金属用取鍋までの配管において、空気を導入させ、溶湯金属用取鍋内を大気圧に戻したときに、配管内に空気を溜めて、逆流する量を低減させる措置が取られている。しかしながら、空気を導入しているため、溶湯金属の特性が劣化する虞がある。
【0035】
これに対して、本発明では、上述したように、配管内に窒素を導入する窒素導入手段を備えている。そのため、溶湯金属に空気などが混入することが防止される。すなわち、上記の構成のように、排出口を所定位置よりも高い位置に配置し、溶湯金属用取鍋に供給される溶湯金属が、溶湯金属用取鍋あるいは貯蔵された溶湯金属と接するときの衝撃が比較的大きくても、溶湯金属に空気などが混入されにくい。そして、上記の構成によれば、溶湯金属用取鍋内を大気圧に戻したとしても、溶湯金属用取鍋から溶解炉への溶湯金属の逆流を防止することができる。
【0036】
また、本発明の自動吸引供給装置では、減圧手段は、取鍋当接部に接続されることが好ましい。
【0037】
上記発明によれば、各溶湯金属用取鍋に当接する1つの取鍋当接部に減圧手段が接続されている。
【0038】
これにより、減圧手段の接続部を溶湯金属用取鍋ごとに設ける必要がないため、溶湯金属用取鍋の構造の単純化、および製造コストの削減を図ることができる。また、溶湯金属用取鍋に減圧手段を繋ぎ換えるなどの作業が不要であるため、作業時間を短縮することができる。
【0039】
また、本発明の自動吸引供給装置では、取鍋当接部は、溶湯金属用取鍋と当接する面に、耐熱材からなるシール部材を少なくとも2つ有することが好ましい。
【0040】
上記発明によれば、取鍋当接部と溶湯金属用取鍋とが当接する面は、耐熱材によって2重にシーリングされているため、溶湯金属用取鍋を確実に密閉することができる。
【0041】
また、本発明の自動吸引供給装置では、上記配管は、上記配管の中心方向に向かって第1の層および第2の層をこの順で有しており、第1の層は、熱伝導性の低い材質からなり、第2の層は、熱伝導性の高い材質からなることが好ましい。
【0042】
上記発明によれば、配管には、まず、熱伝導性の低い材質からなる第1の層によってライニングされている。このため、外部への放熱による溶湯金属の温度低下を防止することができる。さらに、上記第1の層よりもさらに配管の中心方向側に、熱伝導性の高い材質からなる第2の層によってライニングされている。このため、溶湯金属を吸引供給する前に、バーナーなどを用いて配管内の温度を上げる予熱作業の時間を短縮することができる。
【0043】
これにより、溶湯金属の温度低下に起因する、配管の内面への溶湯金属の固着を軽減することができる。
【0044】
上記配管のフランジ部分に、内側に高耐熱性の膨張材質からなるシール部材と、外側に高耐久性の硬化材質からなるシール部材とを有することが好ましい。
【0045】
上記発明によれば、配管のフランジ部分の内側は、高耐熱性の膨張材質からなるシール部材によってシーリングされている。このため、配管のフランジ部分の密閉性を高めることができる。また、配管のフランジ部分の外側は、高耐久性の硬化材質からなるシール部材によってシーリングされている。このため、配管のフランジ部分の耐久性を高めることができる。
【0046】
これにより、フランジ部分から配管内に、空気が流入することを防止するとともに、フランジ部分から外部に、溶湯金属が流出しないように確実に配管を連結することができる。
【0047】
また、本発明の溶湯金属用取鍋は、溶湯金属を貯蔵するための取鍋本体部と、溶湯金属を流通するための流通管と、配管を挿入するための開口部とを有する上記の自動吸引供給装置によって溶湯金属が供給される溶湯金属用取鍋であって、上記自動吸引供給装置から溶湯金属が供給されるときに、上記自動吸引供給装置の上記排出口は、予め定められた最大貯蔵量の溶湯金属を上記溶湯金属用取鍋に貯蔵したときの溶湯金属の液面の高さである所定位置よりも高い位置に配置しており、上記取鍋本体部の内部の溶湯金属の液面の波紋により、当該液面の高さを検知し、検知結果を出力する波紋振動検知手段を備えることを特徴としている。
【0048】
上記発明によれば、溶湯金属用取鍋において、配管の排出口は、予め定められた最大貯蔵量の溶湯金属を上記溶湯金属用取鍋に貯蔵したときの溶湯金属の液面の高さである所定位置よりも高い位置に配置されているため、溶湯金属用取鍋内の溶湯金属の液面には、供給された溶湯金属の落下による波紋が生じる。波紋振動検知手段は、波紋を振動として認識することにより、溶湯金属の液面の高さを検知することができる。これにより、検知された液面の高さ位置を、例えば表示装置などに表示することができる。その結果、作業者は、溶湯金属に液面の高さ、つまり、供給された溶湯金属量を容易に把握することができる。つまり、作業員は、吸引供給作業の進捗度などを随時把握することができるため、作業の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の自動吸引供給装置は、以上のように、吸引口で上記溶解炉から溶湯金属を吸引し、排出口で上記溶湯金属用取鍋に溶湯金属を排出するための配管と、上記配管に接続され、上記配管内に窒素を導入するための窒素導入手段と、上記溶湯金属用取鍋の内部を減圧するための減圧手段とを備えているものである。
【0050】
それゆえ、溶湯金属の特性を悪化させることなく溶解炉から溶湯金属用取鍋に、溶湯金属を吸引供給することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置を用いて、溶解炉から溶湯金属用取鍋に溶湯金属を吸引供給するシステムの全体構成を示す側面図である。
【図2】本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置の側面図である。
【図3】本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置が備える配管の側面図である。
【図4】本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置が備える配管の排出口近傍の側面図である。
【図5】本実施形態の自動吸引供給装置が備える配管を予熱するために使用される配管予熱機を示す断面図である。
【図6】図4に示す本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置が備える配管のフランジ部分の拡大断面図である。
【図7】本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置が備える配管に設置された取鍋当接部を示す断面図である。
【図8】本実施の形態の溶湯金属の自動吸引供給装置が備えるスクリュージャッキを示す側面図である。
【図9】本実施形態の溶湯金属用取鍋を示す上面図である。
【図10】図9に示す溶湯金属用取鍋のA−A線断面図であり、本実施形態の取鍋本体部と取鍋上部とが正常な状態で組み合わさったときの状態を示す断面図である。
【図11】本実施形態の溶湯金属用取鍋の取鍋上部の平面図である。
【図12】図11に示す溶湯金属用取鍋の取鍋上部のB−B線断面図である。
【図13】従来の溶湯金属用取鍋の構成を示す断面図である。
【図14】従来の差圧式の溶湯金属用取鍋内に溶湯金属を吸引供給するシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明に関する実施の一形態である、例えば、アルミニウム、マグネシウム、および銅などの溶湯金属の自動吸引供給装置について図1〜図12に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0053】
図1は、本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置を用いて、溶解炉から溶湯金属用取鍋に溶湯金属を吸引供給するシステムの全体構成を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態の溶湯金属を吸引供給するシステムは、自動吸引供給装置1と、溶湯金属用取鍋50と、溶解炉100とを有している。溶湯金属用取鍋50と溶解炉100とは、自動吸引供給装置1を介して接続されている。
【0054】
自動吸引供給装置1は、溶湯金属用取鍋50の内部を減圧することによって生じる溶湯金属用取鍋50と溶解炉100との差圧を利用して、溶解炉100から溶湯金属用取鍋50に、溶湯金属を吸引供給する、いわゆる差圧式の溶湯金属吸引供給装置である。
【0055】
溶湯金属用取鍋50は、供給された溶湯金属を搬送するためのものであり、溶湯金属用取鍋50の上部において、自動吸引供給装置1と接続される。
【0056】
溶解炉100は、溶湯金属用取鍋50に供給するための溶湯金属を溶解、貯留するためのものであり、貯留する溶湯金属の種類によって任意に温度を設定することができる。
【0057】
以下、自動吸引供給装置1から詳細に説明する。
【0058】
図2は、本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置の側面図である。図2に示すように、自動吸引供給装置1は、配管10と、取鍋当接部12と、2つのスクリュージャッキ20と、2つのジョイント部25と、支持部30と、図示しない制御部とを有している。
【0059】
配管10は、吊り下げ型のスクリュージャッキ20のネジ軸22にジョイント部25を介して接続されている。また、2つのスクリュージャッキ20のジャッキ本体部21は、支持部30にそれぞれ固定されており、ネジ軸22は支持部30を上下方向に貫通している。
【0060】
これにより、スクリュージャッキ20を操作することによって、配管10を上下方向に移動させることができると共に、配管10を所望の高さで停止させることができる。
【0061】
図3は、本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置が備える配管の側面図である。図3に示すように、配管10は逆U字型の形状であり、吸引口10aと排出口10bとを有しており、吸引口10aは、排出口10bよりも低い位置に配置されている。配管10は、吸引口10aで溶解炉から溶湯金属を吸引し、排出口10bで溶湯金属用取鍋50に溶湯金属を排出する。
【0062】
また、配管10には、窒素導入手段であるガス管2が接続されている。ガス管2は、窒素ボンベ(図示せず)から供給される窒素ガスを、配管10内に導入できるように接続されている。
【0063】
一般的に、溶解炉から溶湯金属用取鍋に溶湯金属を吸引供給する場合、溶解炉および溶湯金属用取鍋に存在する空気や水分が、吸引供給された溶湯金属に混入する。溶湯金属に混入した空気や水分は、溶湯金属と反応して水素と酸化物とが生成される。このような水素と酸化物とが混在する溶湯金属を用いて成型した場合、成型された金属の内部に引け巣と酸化不純物とが生じる。このため、成型された金属に充分な強度が得られなくなるという問題を有している。
【0064】
そこで、本実施形態の自動吸引供給装置1では、このような溶湯金属の特性を悪化させる空気や水分を除去するために、配管10に窒素を導入するための着脱可能なガス管2が接続されている。配管10による溶湯金属の吸引開始前にガス管2から配管10に導入された窒素は、溶湯金属中の水素と酸化物とを吸収して、溶湯金属用取鍋50において吸引除去される。これにより、溶湯金属用取鍋50に供給された溶湯金属に含まれる水素と酸化物との量を軽減することができる。
【0065】
また、溶湯金属用取鍋50の内部に存在する空気や水分は、溶湯金属用取鍋の内部の減圧に伴って、上記減圧ポンプにより吸引除去される。このため、溶湯金属が溶湯金属用取鍋50に供給される時点において、溶湯金属用取鍋50の内部には空気や水分が、ほぼ存在しない状態になる。これにより、溶湯金属用取鍋50に供給された溶湯金属への新たな空気や水分の混入を防止することができる。
【0066】
このように、自動吸引供給装置1では、ガス管2から配管10に窒素が導入されることにより、溶湯金属に混入した空気や水分を除去することができると共に、溶湯金属への新たな空気や水分の混入を防止することができる。
【0067】
これにより、溶湯金属の特性を悪化させることなく、溶解炉100から溶湯金属用取鍋50に溶湯金属を吸引供給することができる。
【0068】
なお、配管10内に窒素を導入できるのであれば、配管10におけるガス管2の接続位置および接続方法は、特に限定されない。
【0069】
図4は、本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置が備える配管の排出口近傍の側面図である。図4に示すように、配管10の内面は、配管の中心方向に向かって、熱伝導性の低い材質からなる第1の層19aおよび熱伝導性の高い材質からなる第2の層19bをこの順で有している。つまり、配管10の内周面には、まず、熱伝導性の低い材質からなる第1の層19aによってライニングされ、さらに、第1の層19aの上面(つまり、第1の層19aにおいて配管の中心軸側の面)に、熱伝導性の高い材質からなる第2の層19bによってライニングされる。
【0070】
配管10の内面を、熱伝導性の低い材質からなる第1の層19a、すなわち断熱材によってライニングすることにより、外部への放熱による溶湯金属の温度低下を防止することができる。
【0071】
また、配管10の内面のさらに内側を、熱伝導性の高い材質からなる第2の層19bによってライニングすることにより、溶湯金属を吸引供給する前に、バーナーなどを用いて配管10内の温度を上げる予熱作業の時間を短縮することができる。
【0072】
これにより、溶湯金属の温度低下に起因する、配管10の内面への溶湯金属の固着を軽減することができる。なお、第2の層19bの内径は、直径30mm以上、200mm以下であることが好ましい。
【0073】
図5は、本実施形態の自動吸引供給装置が備える配管を予熱するために使用される配管予熱器を示す断面図である。配管を予熱する場合、図5に示すような、配管予熱器120を使用することができる。配管予熱器120は、燃焼ブロアー121を備えており、燃焼ブロアー121からの炎は、燃焼管123と燃焼室124とを介して、挿入管125の上部から放射される。挿入管125の外周の直径は、配管10に挿入できるように、配管10の内周の直径よりも小さくなるに設計されている。また、挿入管125の下部には、配管10の内部に固着していた溶湯金属を受けるための底部126を備えている。底部126は、取っ手127により開閉可能であり、底部126に溜まった溶湯金属を回収することができる。
【0074】
さらに、図4に示すように、配管10は、複数の配管のフランジ部分16により、連結された構成である。図6は、図4に示す本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置1が備える配管10のフランジ部分の拡大断面図である。図6に示すように、配管10のフランジ部分16は、内側に高耐熱性の膨張材質からなるシ−ル部材17と、外側に高耐久性の硬化材質からなるシ−ル部材18とを用いて二重にシーリングされている。
【0075】
配管10のフランジ部分16の内側を高耐熱性の膨張材質からなるシ−ル部材17によってシーリングすることにより、配管のフランジ部分16の密閉性を高めることができる。
【0076】
また、配管のフランジ部分16を外側に高耐久性の硬化材質からなるシ−ル部材18によってシーリングすることにより、配管のフランジ部分16の耐久性を高めることができる。これにより、フランジ部分16から配管10内に、空気などが流入することを防止するとともに、フランジ部分16から外部に、溶湯金属が流出しないように確実にシーリングすることが可能である。
【0077】
従来の差圧式の溶湯金属用取鍋550では、図14に示すように、配管560が本体部551の底部553に近い位置に向かって延在して設けられている。このため、溶湯金属用取鍋550の減圧状態を開放したとき、溶湯金属用取鍋550から溶解炉600へ、溶湯金属が逆流する虞があるという問題を有している。この逆流を防止するため、溶湯金属用取鍋550では、空気の導入が可能である一方、外部に溶湯金属が流出しない程度に、配管560のフランジ部分566の密閉性を弱めるなどの措置を講じる必要がある。それゆえ、溶湯金属用取鍋550の内部の減圧効率が低下するため、溶湯金属の吸引供給時間が長期化するという問題を有している。また、配管560のフランジ部566から空気が配管560内に導入され、空気が溶湯金属に混入してしまう問題もある。
【0078】
一方、本実施形態の配管のフランジ部分16は、上述のように2種類の材質からなるシール部材によって、完全に密閉されている。これにより、溶湯金属用取鍋50の内部の減圧効率が向上するため、溶湯金属の吸引供給時間を短縮することができる。また、配管560内に空気が導入されることがなく、空気の溶湯金属への混入も一層防止できる。
【0079】
図7は、本実施形態の溶湯金属の自動吸引供給装置が備える配管に設置された取鍋当接部を示す断面図である。図7に示すように、取鍋当接部12は、減圧管接続部13と溶湯金属面検知手段14を備えている。また、取鍋当接部12の中央部分には貫通孔が形成されており、配管10が貫通している。
【0080】
取鍋当接部12は、溶湯金属用取鍋50の上部に当接し、上方から押圧されることにより、溶湯金属用取鍋50を密閉する。このため、取鍋当接部12と溶湯金属用取鍋50との当接面には、例えば、シール部材19cにより2重にシーリングされている。これにより、溶湯金属用取鍋50を完全に密閉することができる。なお、シール部材19cには、例えば、シリコンなどのような耐熱材を用いることができる。
【0081】
減圧管接続部13には、溶湯金属用取鍋50の内部の気体を吸引するために、減圧管3が接続されており、減圧管3の他端は、減圧ポンプ(図示せず)に接続されている。減圧ポンプを作動させることにより、溶湯金属用取鍋50の内部を減圧し、湯金属用取鍋50と溶解炉との内部間に差圧を生じさせることができる。この差圧によって、溶解炉100から溶湯金属用取鍋50に、溶湯金属を安全に吸引供給することができる。
【0082】
溶湯金属面検知手段14は、取鍋当接部12が溶湯金属用取鍋50の上部に当接したときに、溶湯金属用取鍋50内に貯蔵された溶湯金属の液面(以下、溶湯金属面という場合がある)の位置を検出するものであり、プラグ14aに電極棒14eが挿通されたソケット14dを装着した構成である。このような電極棒14eの先端を、溶湯金属の満量時の溶湯金属面50sなど所定のレベル(所定位置)に配置させている。すなわち、当該所定位置とは、予め定められた最大貯蔵量の溶湯金属を上記溶湯金属用取鍋に貯蔵したときの溶湯金属の液面の位置に対応している。これにより、溶湯金属面検知手段14は、溶湯金属面が上記の所定位置に到達したか否かを検知することができる。
【0083】
なお、図7には示されていないが、溶湯金属面検知手段14を2以上備えることにより、電極棒14e間の導通を検知することで確実に溶湯金属の満量を検知することができる。また、長さの異なる複数の電極棒14eを用いて、複数の溶湯金属面レベルを検知するようにしてもよい。
【0084】
本実施形態の自動吸引供給装置1では、溶湯金属面検知手段14が溶湯金属の満量を検知したとき、溶湯金属面検知手段14に接続された制御部(図示せず)によって減圧ポンプを制御して、溶湯金属用取鍋50の内部の減圧状態を自動的に開放する。これにより、溶湯金属用取鍋50から、溶湯金属が溢れ出ることを防止することができる。
【0085】
ここで、図7に示すように、溶湯金属用取鍋50の内部における配管10の排出口10bは、満量時の溶湯金属面50sに浸らない上方の位置に配置されていることが好ましい。つまり、排出口10bは、上記の所定位置よりも高い位置に配置するように設計されていることが好ましい。
【0086】
従来の差圧式の溶湯金属用取鍋50では、溶湯金属用取鍋本体の底部に近い位置に、配管と連通する内部開口部が配置されている。この構成に起因して、上述のように、溶湯金属用取鍋50の減圧状態を開放したとき、溶湯金属用取鍋50から溶解炉100へ、溶湯金属が逆流する虞があるという問題を有している。
【0087】
一方、溶湯金属用取鍋50では、配管10の排出口10bが、溶湯金属面50sに浸らない位置に配置されているため、上記溶湯金属が逆流問題を防止することができる。
【0088】
また、配管10の排出口10bは、溶湯金属用取鍋50の内部における上方の位置に配置されていることにより、溶湯金属用取鍋50の内部側面には、溶湯金属面の波紋振動を検知するための、波紋振動検知手段56が組み込まれていることが好ましい。溶湯金属は、溶湯金属用取鍋50内に、上方から供給されるため、溶湯金属用取鍋50の内部の溶湯金属面には、供給された溶湯金属の落下により波紋が生じる。波紋振動検知手段56は、上記波紋を振動として認識することにより、溶湯金属面の高さを検知することができるセンサである。検知した溶湯金属面の高さ位置は、外部のディスプレイ(図示せず)などにより表示される。これにより、作業員は、吸引供給作業の進捗度などを把握することができ、作業の効率化を図ることができる。
【0089】
なお、本実施形態の自動吸引供給装置1では、配管10に取鍋当接部12が設置され、取鍋当接部12を介して、溶湯金属用取鍋50と配管10とが接続された構成であるが、このような構成に限定されない。例えば、取鍋当接部12を介さずに、溶湯金属用取鍋50と配管10とが、直接接続された構成であってもよい。例えば、従来の溶湯金属用取鍋のように、溶湯金属用取鍋と配管とが一体となった構成であっても、配管にガス管を接続することによって、溶湯金属に窒素を導入することができる。
【0090】
また、溶湯金属用取鍋と配管との接続部分は、溶湯金属用取鍋の上部に限定されない。上記接続部分は、例えば、溶湯金属用取鍋の外周部であってもよい。
【0091】
本実施形態の自動吸引供給装置1では、昇降手段として、2つのスクリュージャッキ20を用いている。図8は、本実施の形態の溶湯金属の自動吸引供給装置が備えるスクリュージャッキを示す側面図である。図8に示すように、スクリュージャッキ20は、ジャッキ本体部21と、ネジ軸22と、連結シャフト23と、モーター部24と、ジョイント部25とを有している。
【0092】
2つのジャッキ本体部21は、水平方向に伸びる支持部30にそれぞれ固定されており、ネジ軸22は、支持部30を上下方向に貫通して垂直方向に伸びている構成である。
【0093】
また、2つのジャッキ本体部21は、連結シャフト23により連結されている。このため、2つのスクリュージャッキ20の動きを連動させることができる。
【0094】
さらに、2つのネジ軸22の下端には、ジョイント部25を介して配管10が接続されている。
【0095】
このような構成により、ジャッキ本体部21に接続されたモーター部24を作動させることによって、配管10を昇降させることができる。
【0096】
従来の溶湯金属吸引供給システムでは、溶解炉から溶湯金属用取鍋に溶湯金属を吸引供給する場合、フォークリフトなどにより、溶湯金属用取鍋自体を昇降させる必要がある。このため、不安定な状況下での溶湯金属の吸引供給作業を強いられている。
【0097】
一方、自動吸引供給装置1では、配管10を昇降させることができるため、溶湯金属用取鍋50自体を昇降させる必要がない。これにより、より安全に溶湯金属の吸引供給作業をすることができる。
【0098】
ジョイント部25には、例えば、ばねなどの弾性体が内蔵されている。これにより、取鍋当接部12を溶湯金属用取鍋50の上部に当接させる場合、上方から取鍋当接部12を溶湯金属用取鍋50の上部に押圧することができる。
【0099】
自動吸引供給装置1は、以上のような構成であるため、溶湯金属の特性を悪化させることなく溶解炉100から溶湯金属用取鍋50に、溶湯金属を安全、且つ、迅速に吸引供給することを実現することができる。
【0100】
次に本実施の形態に用いられる溶湯金属用取鍋50について説明する。
【0101】
図9は、本実施形態の溶湯金属用取鍋を示す上面図である。また、図10は、図9に示す溶湯金属用取鍋のA−A線断面図であり、本実施形態の取鍋本体部と取鍋上部とが正常な状態で組み合わさったときの状態を示す断面図である。図10に示すように、溶湯金属用取鍋50は、取鍋本体部51と、取鍋上部70とに分離することが可能である。
【0102】
取鍋本体部51は、ほぼ円筒状に形成されており、その底面は底壁によって閉じられている。その内側面および内底面によって囲まれた空間が溶湯金属の貯蔵部61となる。
また、取鍋本体部51の側面には、溶湯金属を流通させるための流通管54が形成されている。流通管54における流路55は、貯蔵部61の側面に設けられた内部開口部55bから、流通管54の上部に設けられた外部開口部55aに向けて延在している。
さらに、貯蔵部の底面外周部分には傾斜面が形成されており、溶湯金属排出時の付着を防止している。
【0103】
図11は、本実施形態の溶湯金属用取鍋の取鍋上部の平面図である。また、図12は、図11に示す溶湯金属用取鍋の取鍋上部のB−B線断面図である。図11に示すように、取鍋上部70のほぼ中央に形成された上記配管を挿入するための開口部71には、取っ手73が取り付けられたハッチ72により塞がれている。ハッチ72の外周の1ヶ所にはヒンジ75を介して取鍋上部70に取り付けられている。このため、図12に示すように、ハッチ72は取鍋上部70の開口部71に対して開閉可能となっている。
【0104】
また、このヒンジ75が取り付けられた位置と対向するように、ハッチ72の外周の2ヶ所には、ハッチ72を取鍋上部70に固定するための略Y字型のハッチ固定ピン76が取り付けられている。これにより、ハッチ72が取鍋上部70に固定されることにより、溶湯金属用取鍋50を密閉することができる。
【0105】
溶湯金属用取鍋50は、以上のような構成であり、自動吸引供給装置1と組み合わせて使用することによって、溶湯金属の特性を悪化させることなく溶解炉100から溶湯金属用取鍋50に、溶湯金属を安全、且つ、迅速に吸引供給することを効果的に実現することができる。
【0106】
なお、本実施形態の溶湯金属用取鍋50では、流通管54を1つ備えた構成であるが、流通管54を2つ以上備えた構成であってもよい。
【0107】
次に、本実施の形態における溶解炉100について説明する。
【0108】
溶解炉100の構成は、構成は特に限定されないが、少なくとも溶湯金属を貯留するための貯留槽と、配管10を挿入するための挿入孔とを備えている。上記挿入孔は通常、着脱可能な蓋部により密閉されているため、上記挿入孔からの放熱を防止することができる。一方、溶解炉100から溶湯金属を吸引する場合は、上記蓋部を取り外し、上記挿入孔に配管10を容易に挿入することができる。
【0109】
また、溶解炉100は、加熱手段によって任意に温度を設定することができ、貯留された溶湯金属の温度は、溶湯温度計により随時視認できるようになっている。
本実施の形態の溶湯金属を供給するシステムは、以上のような構成の自動吸引供給装置1と、溶湯金属用取鍋50と、溶解炉100とを備えている。これにより、窒素を導入しながら溶解炉100から溶湯金属用取鍋50に溶湯金属を吸引供給することができる。
【0110】
以下、自動吸引供給装置1を使用して、溶解炉100から溶湯金属用取鍋50に溶湯金属を吸引供給する手順について、図1に基づいて説明する。
【0111】
まず、溶湯金属の吸引供給に先立って、図5に示した配管予熱器120を用いて、配管10を予熱する。配管予熱器120を所定の位置に配置し、スクリュージャッキ20を操作して配管10を降下させる。そして、配管10の排出口10bに配管予熱器120の挿入管125の上端が挿入できる位置でクリュージャッキ20を停止させ、配管予熱器120による加熱を開始する。このとき、配管10の内面は、熱伝導性の高い材質からなる第2の層19bによってライニングされているため、配管10の内側全体の温度は、短時間で上昇する。このため、予熱作業の時間を短縮することができる。また、配管10を予熱することによって、配管10の内面に固着した金属が溶解するため、配管10の詰まりを防止することができる。なお、溶解した金属は、挿入管125の下部に備えられた開閉可能な底部126などにおいて回収される。
【0112】
次に、スクリュージャッキ20を操作して予熱した配管10を上昇させ、配管予熱器120に替えて溶湯金属用取鍋50を所定の位置に配置する。再度スクリュージャッキ20を操作して配管10を降下させる。そして、配管10の外周上の排出口10b近傍に備えられている取鍋当接部12が、溶湯金属用取鍋50の取鍋上部70に形成された開口部71の周辺に当接できる位置でクリュージャッキ20を停止させる。このとき、配管10の吸引口10aは、溶解炉100の上記挿入孔から挿入されて、溶解炉100に貯留されている溶湯金属に浸される。一方、配管10の排出口10bは、溶湯金属用取鍋50の開口部71から溶湯金属用取鍋50に挿入される。このとき、配管10とスクリュージャッキ20のネジ軸22とを接続するジョイント部25には、ばねが内蔵されているため、取鍋当接部12が溶湯金属用取鍋50の方向に押圧される。このため、溶湯金属用取鍋50の開口部71は、取鍋当接部12によって密閉される。これにより、溶湯金属用取鍋50と溶解炉100とを、自動吸引供給装置1によって短時間で接続することができる。
【0113】
次に、配管10にガス管2を介して接続された窒素ボンベと、取鍋当接部12に減圧管3を介して接続された減圧ポンプとを作動させ、溶湯金属用取鍋50内部の減圧を開始する。このとき、溶湯金属用取鍋50および耐火材中の空気および水分(水蒸気)を、減圧ポンプによって吸引させて除去することができる。また、溶湯金属用取鍋50内部と溶解炉100の内部との差圧値が一定以上になると、溶解炉100から溶湯金属用取鍋50への溶湯金属の吸引供給が開始される。溶湯金属の吸引供給開始後も、継続して配管10にはガス管2から窒素が導入される。吸引供給開始後に配管10に導入された窒素は、溶湯金属に混入した空気や水分から生成された水素と酸化物とを吸収し、溶湯金属用取鍋50において、減圧ポンプによって吸引されることにより、溶湯金属中の水素と酸化物を除去することができる。
【0114】
ここで、自動吸引供給装置1は、吸引開始後15秒で溶湯金属用取鍋50内の圧力が−3kpaに至らない場合、または吸引開始後2.5分で溶湯金属用取鍋50内の溶湯金属が満量に達しない場合は、吸引供給が自動停止するように制御されている。また、溶湯金属用取鍋50に供給された溶湯金属量は、溶湯金属用取鍋50の内部側面に組み込まれた、溶湯金属面の波紋を振動として認識する波紋振動検知手段によって、常に把握できるようになっている。さらに、溶湯金属用取鍋50内の溶湯金属が満量に達した場合は、取鍋当接部12に備えられた溶湯金属面検知手段14によって満量が検知され、吸引供給が自動停止するように制御されている。これらの制御は、いずれも自動吸引供給装置1が備える制御部(図示せず)によって統制されている。これにより、システム不具合による溶湯金属の噴出などの事故を未然に防ぐことができる。
【0115】
なお、本実施形態の自動吸引供給装置1では、溶湯金属用取鍋50内における配管10の排出口10bは、溶湯金属用取鍋50内の溶湯金属が満量に達した場合の溶湯金属面よりも高い位置に配置されている。このため、従来の差圧式の溶湯金属用取鍋で生じる、溶湯金属用取鍋から溶解炉への溶湯金属の逆流を排除することができる。
【0116】
最後に、スクリュージャッキ20を操作して予熱された配管10を上昇させ、溶湯金属用取鍋50の開口部71と溶解炉100の挿入孔とを、それぞれハッチ(図示せず)と上記蓋部とを用いて密閉して、吸引供給作業は完了する。
【0117】
以上のように、本実施形態の自動吸引供給装置1を使用することによって、溶湯金属の特性を悪化させることなく、溶解炉100から溶湯金属用取鍋50に、溶湯金属を吸引供給することができる。
【0118】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、昇降手段にスクリュージャッキを用いたが、特にこれに限定するものではなく、油圧式ジャッキなどを用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の自動吸引供給装置であれば、溶湯金属に混入した水分などから生成する水素と酸化物などを除去して、溶湯金属を吸引供給することができる。これにより、多くの種類の溶湯金属に適用することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 自動吸引供給装置
2 ガス管(窒素導入手段)
3 減圧ポンプ(減圧手段)
10 配管
10a 吸引口
10b 排出口
12 取鍋当接部
14 溶湯金属面検知手段
16 フランジ部分
19a 第1の層
19b 第2の層
19c シリコンからなるシール部材
20 スクリュージャッキ(昇降手段)
50 溶湯金属用取鍋
51 取鍋本体部
54 流通管
56 波紋振動検知手段
71 開口部
100 溶解炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解炉から溶湯金属用取鍋に溶湯金属を吸引供給するための自動吸引供給装置であって、
吸引口で上記溶解炉から溶湯金属を吸引し、排出口で上記溶湯金属用取鍋に溶湯金属を排出するための配管と、
上記配管に接続され、上記配管内に窒素を導入するための窒素導入手段と、
上記溶湯金属用取鍋の内部を減圧するための減圧手段と
を備えることを特徴とする自動吸引供給装置。
【請求項2】
上記配管を上下方向に移動させる昇降手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動吸引供給装置。
【請求項3】
上記昇降手段は、スクリュージャッキであることを特徴とする請求項2に記載の自動吸引供給装置。
【請求項4】
上記配管の外周上に、上記溶湯金属用取鍋に形成された開口部を塞ぐように上記溶湯金属用取鍋に当接する取鍋当接部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動吸引供給装置。
【請求項5】
上記溶湯金属用取鍋に供給された溶湯金属の液面である溶湯金属面が所定位置に到達したか否かを検知する溶湯金属面検知手段と、
上記溶湯金属面検知手段により溶湯金属面が所定位置に到達したことを検知したとき、上記減圧手段の動作を停止させ、上記溶湯金属用取鍋の内部を大気圧に戻す制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の自動吸引供給装置。
【請求項6】
上記取鍋当接部を上記溶湯金属用取鍋に当接させたときに、上記排出口は、上記所定位置よりも高い位置に配置されることを特徴とする請求項5に記載の自動吸引供給装置。
【請求項7】
上記減圧手段は、上記取鍋当接部に接続されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の自動吸引供給装置。
【請求項8】
上記取鍋当接部は、上記溶湯金属用取鍋と当接する面に、耐熱材からなるシール部材を少なくとも2つ有することを特徴とする請求4〜7のいずれか1項に記載の自動吸引供給装置。
【請求項9】
上記配管は、上記配管の中心方向に向かって第1の層および第2の層をこの順で有しており、
上記第1の層は、熱伝導性の低い材質からなり、
上記第2の層は、熱伝導性の高い材質からなる、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動吸引供給装置。
【請求項10】
上記配管のフランジ部分に、内側に高耐熱性の膨張材質からなるシール部材と、外側に高耐久性の硬化材質からなるシール部材とを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の自動吸引供給装置。
【請求項11】
溶湯金属を貯蔵するための取鍋本体部と、溶湯金属を流通するための流通管と、配管を挿入するための開口部とを有する請求項1に記載の自動吸引供給装置によって溶湯金属が供給される溶湯金属用取鍋であって、
上記自動吸引供給装置から溶湯金属が供給されるときに、上記自動吸引供給装置の上記排出口は、予め定められた最大貯蔵量の溶湯金属を上記溶湯金属用取鍋に貯蔵したときの溶湯金属の液面の高さである所定位置よりも高い位置に配置しており、
上記取鍋本体部の内部の溶湯金属の液面の波紋により、当該液面の高さを検知し、検知結果を出力する波紋振動検知手段を備えることを特徴とする溶湯金属用取鍋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−240701(P2010−240701A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93359(P2009−93359)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(390036858)ゼオンノース株式会社 (4)
【出願人】(399038527)株式会社スズムラ (2)
【Fターム(参考)】