説明

溶着マイクロシーム

本発明は、二積層物(1a, 1b)の二つのエッジの間の溶着シーム(80)を開示し、各積層物は防水性機能層(50)とテクスタイル層(30)から成る。このテクスタイル層(30)は第一成分と第二成分から成り、第一成分は第一温度以下で安定であり、また第二成分は第二温度で溶融する。シーム(80)は各積層物のテクスタイル層の溶融第二成分と非溶融第一成分により形成され、これらのエッジは実質的に互いにエッジ−エッジ突き合せ配置にある。この場合、防水性、耐久性のある非常に小さな寸法のシームが作り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高性能の防水性、水蒸気透過性肌着、手袋、靴などの構造体における隣合った防水性、水蒸気透過性積層物片間の防水性シームの製造に関する。本発明は非常に小さな寸法の防水性の薄いシームの製造を可能にする。さらに本発明は連続した湾曲溶着シームの製造を可能にする。
【背景技術】
【0002】
防水性水蒸気透過性布帛およびこれから作られた肌着は業界ではよく知られている。この様な肌着は防水性と通気性を結合させ、したがって着用者から発生する水蒸気は肌着から外へ通過でき、肌着の着心地を良くする。
【0003】
多くの防水性水蒸気透過性材料(ここでは“機能層”と呼ぶ)が業界で知られている。非常にしばしばこれらの機能性層は一あるいは二以上のテクスタイル層に積層される。一方、積層物自身も防水性であるが、隣合った機能性層片間あるいは積層材料片間で作られるシームの製造と封止は特別な問題を起す。通常は、この様なシームは材料を縫製し、シームをシーム封止テープ(テープはシーム自身の何れかの側で布帛に確保される)で被覆することによって作られる。この技術は非常に厚いシームを作り(一層の上に他の層を重ねる)、シーム封止テープの接着剤は布帛の各糸条を防水状にカプセル化できないので、これらのシームは防水性でない。
【0004】
防水性シームを形成する別の技術は、二つ以上の合成材料を溶着させる。従来技術では溶着シームは知られている。溶着シームの一つのタイプがWO 99/16620に開示され、図1に示される。WO 99/16620の方法は布帛片同士を部分的に重ね合せ、熱と圧力を用いて接合することからなる。一つ以上の布帛片の切断エッジが肌着等の構造体の外側から常時見えるので、このような溶着シームは不利である。このような状況は美的およびファッション性の理由から望ましくない。外側にある見える溶着跡もまた望ましくない。さらなる問題は、布帛エッジ自身の擦切れである。最後に、シームの継目は、固定プロセス設定で封止するのが困難な三以上の層を蓄積する。これは非常にしばしば焦げたあるいは漏れ口があるシーム継目をもたらす。
【0005】
クリーンルーム肌着用の紡糸ポリオレフィン合成布帛の接合シーム構造体が米国特許4,938,817に記載されている。このようなシームが図2に示される。この特許の教示にしたがって製作されたシームは比較的硬く、それゆえ着用者には着心地が良くない。さらに、溶着跡は外側から見え、これは美的ならびにファッション上の理由から望ましくない。さらなる問題は、シームの継目で、シームを形成する布帛の層の数が増加し、継目を硬くかつ着用者に対し非常に着心地を悪くする。
【0006】
WO 02/24015 A1および図3によって記載されている方法を用いて、防水性水蒸気透過性積層物のエッジが接合される他の先行技術が知られている。ポリウレタン膜の表面を溶融することによって互いに接合してシームを形成する。ポリウレタン膜層が積層物の外側を形成し、したがって肌着の外側を形成しているので、このようなシームはファッション性のある肌着には望ましくない。さらなる問題は、剥離力がシーム線に沿ったシーム配置に向けられるので、シーム強度が弱いことである。シーム継目においてもまた、積層物の層の重なりあるいは蓄積があり、その結果、シーム継目が厚くかつ硬くなる。このような多層のシーム継目は防水性がないことが多い。さらにシームの周囲のエッジエリアが擦切れることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、防水性、耐久性および柔軟性のある防水性シームであって、構造体、例えば肌着、の外側からは見えず、薄くて着心地が良く、激しい最終使用とぴったり合った用途に適当であり、他方なお美的に好ましくかつ擦切れたエッジがないものに対する需要がある。
【0008】
したがって、防水性テクスタイル積層物から作られた肌着のシームの着心地を向上させるのが本発明の目的である。
【0009】
さらに、防水性テクスタイル積層物から作られた肌着のシームの幅を減らすのが本発明の目的である。
【0010】
したがって、防水性テクスタイル積層物から作られた肌着の永続性と耐久性があるシームを製造するのが本発明の目的である。
【0011】
さらに、強度がありかつ柔軟性のあるシームを提供するのが本発明の目的である。
【0012】
さらに、横(シームを横断する)方向に強度があるシームを提供するのが本発明の目的である。
【0013】
本発明のさらなる目的は、防水性シームをこの積層物の手を加えてないテクスタイル材料から形成できるテクスタイル積層物を提供することである。
【0014】
二つ以上の防水性水蒸気透過性テクスタイル積層物(テクスタイル層を外側にした)の間に防水性シームを提供するのが本発明の目的である。
【0015】
本発明の別の目的は防水性テクスタイル積層物から作られた構造体の外側から見えないシームを提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は含まれるテクスタイル積層物層の層の重なりなしでシーム継目を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、擦切れが起るのがおおむね防止されたシームのエッジを有するシームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のこれらおよび他の目的は、二つ以上のテクスタイル積層物間のエッジエリアに形成された防水性溶着シームを提供することで解決される。ここに積層物のエッジは実質的に互いにエッジ−エッジ突き合せ配置に配置されている。
【0019】
本発明は二成分材料を含むテクスタイル積層物の使用を伴なう。この様な二成分材料は高い温度で溶融する第一の熱可塑性成分と低い温度で溶融する第二の熱可塑性成分からなる。二成分材料は特許公報WO 99/16616およびWO 99/16620(ダブリューエルゴアアンドアソシエーツインコーポレーティッド(W.L. Gore & Associates Inc.))に記載されている。
【0020】
かくして、本発明は、第一エッジを有する少なくとも第一積層物と第二エッジを有する第二積層物の組合わせのエッジエリアに形成される防水性溶着シームを提供する;この積層物の各々は防水性機能層と機能層に積層された一つ以上のテクスタイル層を含み、このテクスタイル層は少なくとも第一成分と第二成分から成り、第一成分は第一温度以下で安定であり、また第二成分は第二温度で溶融し、ここに第一温度は第二温度より高く、またここにシームは各積層物のテクスタイル層の溶融第二成分と非溶融第一成分により形成され、第一エッジは実質的にエッジ−エッジ突き合せ配置で第二エッジに配置されている。
【0021】
本発明はまた、溶着シームを形成することによる二片以上の防水性積層物を接合する方法に関し、この方法は下記a)-e) から成る。
【0022】
a) 二以上の防水性積層物を提供し、各積層物は少なくともテクスタイル層に積層された防水性機能層を含み、テクスタイル層は少なくとも第一成分と第二成分から成り、第一成分は第一温度までは安定であり、第二成分は第二温度で溶融し、ここに第一温度は第二温度よりも高く、各積層物は少なくとも一つのエッジを有する。
【0023】
b) 二以上の積層物を互いに重ね、テクタイル層は相互に接触し、一つの積層物の少なくとも一つのエッジを少なくとも一つの他の積層物の少なくとも一つのエッジと揃え、エッジエリアを形成する。
【0024】
c) 第二成分の溶融温度範囲内であり第一温度よりも低い温度でこのエッジエリアを溶着しかつ加圧し、第二成分が溶融し二片以上の間にシームを形成するようにする。
【0025】
d) シーム代を切断する。
【0026】
e) シームを溶着、加圧して、エッジ−エッジ突き合せ配置にある二つ以上の積層物のエッジを再配置させる。
【0027】
好ましくは、工程c) および工程d) は同時に進める。
【0028】
一実施態様においては、工程c) と工程e) は同じ温度で進める。別の実施態様においては、工程c) を行なう温度は工程e) を行なう温度と異なる。一実施態様においては、溶着工程は超音波エネルギーを使用して行い、第二成分を加熱する。好ましくは、溶着工程および加圧工程は、ホーンと回転アンビルを使用した連続プロセスである。この結果、エッジエリアにおいて温度と圧力が一定した分布となり、したがって一定した溶着シームに至る。
【0029】
請求項1の方法により二片以上の防水性積層物の間で溶着シームが得られる。
【0030】
本発明はこのような溶着シームを有する肌着、ビバークバッグ、シェルター(テントを含む)等のような防水性構造体と関連し、またシーム封止の方法に関する。
【0031】
本発明はまた複数片の防水性積層物を含み、請求項1 の方法により二片以上の該積層物の間に製造した一以上の溶着シームを有する製造物に関する。
【0032】
本発明によれば、驚くべきことにエッジ−エッジ突き合せ配置における溶着シームの配置は積層物エッジ間の平坦で柔軟性のあるシームを生じるということが判った。好ましくはシームはなお防水性である。シーム厚さは積層物厚さよりも大きくないので、本発明のシームは肌着の着心地を向上させる。溶着シームのエッジ−エッジ突き合せ配置は、また、シーム継目において含まれる積層物片の層の重なりを防止し、したがって各シーム継目はこれまでよりは柔らかく薄い。このことは、本発明の溶着シームおよび溶着シーム継目の実質的な単位厚さをもたらす。溶着装置の溶着パラメターはシームおよびシーム継目についてと同じなので、このことはシーム製造の複雑さを減らすことになる。
【0033】
第二テクスタイル層の第一と第二の成分の両方は、本発明の溶着シームに加わる。第二成分は溶融し、積層物エッジを互いに接合する封止材料を提供する。さらに、溶融した第二成分は第一成分と機能層をカプセル化し、一方第一成分と機能層は安定している。したがって、第二成分は防水性バリアを提供し、第一成分はエッジ−エッジ突き合せシームに構造と強度を提供する。
【0034】
溶着工程と加圧工程は、溶着シームの積層物エッジを再配置させ、エッジ−エッジ突き合せ配置にする。このためシーム嵩が減り、かくしてシーム硬さが減りかつ着用者の着心地の良さを増大する。溶着工程と加圧工程はさらに溶着シームと積層物エッジがコンビネーションの外側から見えなくし、したがって、コンビネーションを美的に好ましい状況にする。さらに、溶融第二成分によりエッジは包まれ、擦切れが大いに防止される。
【0035】
下のインストロン試験で示されるように、本発明の溶着シームは強度があり、柔軟性である。剥離応力がシームの全断面へ拡げられるので、エッジ−エッジ突き合せ配置へのエッジの再配置は、シーム内で強度のある構造を取るに至る。
【0036】
積層物の第二テクスタイル層の第二成分は低溶融温度を有する材料であり、好ましくは160℃ないし230℃の範囲の第二温度で溶融する。第一成分は安定な材料であり、すなわち高温まで溶融あるいは分解しない。好ましくは、第一成分は180℃以上の第一温度までは安定であり、すなわち180℃より低い温度では溶融しない。信頼性のあるシームを形成するためには、第一温度と第二温度との差は20℃以上である。したがって、第一成分と第二成分はそれぞれの溶融点に依存して選択して第一成分の溶融点は常に第二成分の溶融点よりも高いようにしなければならない。
【0037】
第一成分は、一般にセルロース、ウールおよびシルクを含む蛋白質繊維、高溶融点ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステル共重合体、ポリアミドあるいはポリアミド共重合体からなるポリマーの群から選ばれる。好ましくは、第一成分はポリアミド6.6(ナイロン)などのポリアミドである。
【0038】
第二層の第二成分は、ポリエステル共重合体、ポリアミド、ポリアミド共重合体およびポリプロピレン等のポリオレフィンからなる低溶融点熱可塑性樹脂の群から選ばれた熱可塑性材料である。好ましい実施態様においては、第二成分はポリプロピレン等のポリオレフィンである。好ましくは、第二化合物はポリアミド6などのポリアミドである。
【0039】
本発明の特に好ましい実施態様においては、ポリアミド6, 6を第一成分(溶融点約255℃)、ポリプロピレン(溶融点約160℃)を第二成分として用いる。
【0040】
第二テクスタイル層(一般に外層)は、ストランド、フィラメント、糸あるいは繊維の形状の複数の糸条からなる。さらに、第二層は織編テクスタイル層あるいは不織テクスタイル層である。
【0041】
一実施態様においては、第二テクスタイル層の糸条は第一成分と第二成分からなる複合纎維である。二成分を有する複合纎維は“二成分”纎維と呼ばれることがある。本発明に用いられる適当な二成分纎維の例としては偏心鞘一芯配置と共心鞘一芯配置が挙げられる。ここに第二成分は被覆、“海中島”配置、くさび一芯配置、くさび配置あるいは“サイド−バイ−サイド”配置を形成する。しかしながら、本発明の好ましい実施態様においては、共混纎分離纎維あるいはフィラメントの混合が使用される。ここでは、一つの纎維は第一成分で形成され、他の纎維は第二成分で形成されている。
【0042】
要求されるならば、二より大な成分、各成分は異なる溶融点を有する、を使用することができる。
【0043】
積層物の第一層(機能層)は膜あるいはフィルムでよい。第一層は、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン、ポリスルホン、ポリカーボネート、弗化ポリマー、ポリアクリル酸エステル、エーテル−エステル共重合体、エーテル−アミド共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ四弗化エチレンあるいはポリオレフィンから成る材料の群から選ぶことができる。第一層は好ましくは延伸ポリ四弗化エチレン(ePTFE)で形成されている。延伸ポリ四弗化エチレンは非常に防水性があり高度に通気性があることが知られている。ePTFEは親水性ポリマーを公知の方法で塗膜してよい。この様な積層物は1500 g/m2/dayより大きな(特別な場合、3000g/m2/dayより大きな)水蒸気透過率を提供でき、また、0.13 barより大きな水進入圧を提供できる。
【0044】
代わりに、防水性水蒸気透過性層は水蒸気透過性ポリマーの一体構造シート、あるいは柔軟性基材(例えば、織編物基材)上のポリマーの塗膜によっても構成できる。
【0045】
好ましい実施態様においては、本発明の積層物間で形成されているシームは十分に防水性であり、ここに説明するSuter試験によって0.07バール以上、好ましくは0.13バール以上、最も好ましくは0.2バール以上の水進入圧に対抗できる。
【0046】
通常は、シームは液状の水の通過に抵抗する様に意図されている。しかしながら、材料と接着剤の適当な選択によりシームは、NH3、HCl、H2S、SO2および有機物質等の化学物質の蒸気の通過に抵抗できる。
【0047】
本発明による溶着シームは、一以上の補強材により補強できる。可能な補強材は防水性テープ、ジグザグパターンあるいは二重縫いパターンの糸、あるいは防水性テクスタイル積層物である。好ましい補強材は部分的に溶融可能な糸あるいは薄いシームテープである。部分的に溶融可能な糸は、160℃ないし230℃の範囲の温度で溶融する一以上の成分を含む。補強材はシーム強度あるいはシームの防水性を向上できる。本発明のシームの減少された幅により、補強材は非常に小さい寸法を有していて、したがって補強材付きのシームはなお柔らかく可撓性である。
【0048】
本発明のシームは積層物の厚さと実質的に等しい厚さを有する。一実施態様において、積層物と溶着シームの各々は0.3 μmの最大厚さを有する。さらなる実施態様においては、積層物の各々は0.9 μmの積層物厚さを有し、溶着シームは0.9 μmの厚さを有する。
【0049】
本発明の別の実施態様においては、溶着シームは実質的に非直線であり、湾曲シームを形成する。湾曲シームは連続した溶着工程で製造でき、ファッション性のある肌着のデザインにおいて好まれる。
【0050】
さらに、本発明による溶着シームは一つ以上の曲率の形状をしていて、例えば、肌着の肩エリアを形成するのに好都合である。
【0051】
本発明を先行技術と対比させ、また以下に述べる添付図面と関連させて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
図1-3は、先行技術で公知の通常の溶着シームを示す。
【0053】
図1は、二層の防水テクスタイル積層物210a と210b との間で形成される通常の溶着シームを示す。第一積層物層210a のエッジ220a を第二の積層物層210b の最上部エッジ220b にセットし、熱と圧力をかけて溶着する。エッジ220a とエッジ220b を一方を他方の上にして加熱し圧力をかけエッジ間の接合を溶着する。
【0054】
この通常のシームの問題は、第二の積層物層210b のエッジ線230 が構造体の外側に見えることである。溶着跡240 も外側に見える。これは、肌着においては美的な限界を意味する。さらに、エッジ自身に保護がないので、エッジ220a と220b は擦切れからの保護に制限がある。
【0055】
図2は、テクスタイル層積層物層210a と210b の間の別のタイプの通常の溶着シームを示す。第一積層物層210a を第二積層物層210b の上に重ね、エッジ220a とエッジ220b を互いに揃える。シームは部分的に重ね合わせたエッジの長さに沿って伸び、シーム線を規定するストリップ250を形成する。このシームの形成は、このストリップ250に沿って熱と圧力をかけることによって行われ、熱は超音波エネルギーの形で連続的にかけられる。ストリップ250は第二積層物層210b の隣接表面に平坦に折り重ねられ、熱および圧力は折り重ねられたストリップ250およびストリップ250が折り重ねられている第二積層物層210b にかけられる。このような溶着シームは、溶着跡240が外側から見えることとシーム厚さが大きいという欠点がある。殊にシーム継目には、シームを形成する層の数が増加するという問題がある。例えば、T継目においては、五層の積層物片を溶着しなければならなかった。さらに、積層物のエッジ220a と220b のエッジ擦切れ防止は限られている。
【0056】
図3は、ポリウレタン膜260a と260b の表面を互いに接合することによって形成される溶着シームを示す。このようなシームの一タイプはWO 02/24015に開示されている。このシームは、ポリウレタンで作られた一層以上を含む二片の積層物260a と260b の二つのエッジ部分の間の横方向の溶着継目である。
【0057】
各積層物260a と260b は、二つのタイプの糸条から作られた裏と第三のタイプの糸条により形成された閉ループパイルから成る基礎布帛262を含む。基礎布帛262には、外側スキン層、内側スキン層および接着剤から成る塗膜を積層する。
【0058】
基礎布帛262は弾性があり、二つ以上のタイプの糸条から作ることができる。一つ以上の糸条は弾性があり、他の糸条は好ましくは実質的に伸張性がない。好ましくは、両方の糸条とも合成されていて、例えば、第一の糸条についてはポリエステルで、第二の弾性糸条についてはポリウレタンのような弾性樹脂かあるいはナイロンである。パイルについての糸条は、例えば、任意の天然の糸条である。
【0059】
塗膜270は積層物260aと260bの外側の層を形成することになっており、好ましくはポリウレタンの一つあるいは二つ以上の層から形成されている。外側のスキン層は親水性でなく、一方、内側の層は親水性である、あるいはその逆である。外側の層は内側の層よりも高い溶融点を有するか、その逆か、あるいは両溶融点は殆ど同じである。
【0060】
接着剤は好ましくは親水性ポリウレタン樹脂で形成される。
【0061】
スキン層と接着剤は共に約15ないし20 μm である。
【0062】
積層物260a, 260b は水に対して実質的に透過性がなく、水蒸気に対して透過性がある。
【0063】
溶着により、好ましくは超音波溶着により積層物260a, 260bの一部分の間に継目が作られる。溶着するためには、積層物の一部分260a, 260bをそれぞれのスキンを接触させ突き合わせて置く。溶着の際は、少なくとも一つのスキン層と接着層は溶融しリセットして、スキンと接着剤により継目が形成されるようにする。望むならば、裏の一つ以上の糸条もまた溶融させ、ついでリセットされる。パイルは溶融しない。一実施態様においては、実質的に全エッジ領域280は削除され、溶着と切断は一操作でできる。
【0064】
図3による溶着シームは幾つかの短所がある。この様なシームはポリウレタン積層物との関連でのみ知られている、殊にポリウレタン層がシームのために溶融するために用いられる場合に知られている。しかし、ファッション性のあるアパレルのように、テクスタイル層が外側にあることが必要とされる場合には、ポリウレタン層を外側にした積層物とシームは使えない。
【0065】
さらに、少なくとも非熱可塑性パイルは溶融されず擦切れることがあるので、シームの擦切れは起り得る。スキンと接着剤のみが溶融される場合には、擦切れの危険性は増大する。
【0066】
さらに、剥離応力はシーム内の積層物エッジの配置と同じ方向に向けられるので、このようなシームのシーム強度は非常に劣る。したがって、全部の力は剥離応力線290に集中する。
【0067】
強力な継目を得るために、基礎布帛262の大きな質量が必要であり、重たい積層物と低い通気性という結果になる。
【0068】
さらに、シーム継目には積層物層の層状の重なりあるいは蓄積があり、これは厚くて硬いシーム継目という結果になる。
【0069】
このような蓄積は、一定のギャップと振幅の超音波技術を適用する時に、焦げた点(burned spots)となる。
【0070】
WO 02/24015の別の実施態様においては、積層物260a, 260bを水に不透過性とし水蒸気に透過性とするために親水性ポリウレタンをスキン層と接着層の両方に使用できる。しかし、外側にある親水性ポリウレタンはいかなる形態の液体でも吸収し膨潤する。その結果、積層物と継目の湿潤強度が大きく減少する。
【0071】
図4は、特許公報WO 99/16616およびWO 99/16620に記載されているタイプの二成分熱可塑性材料を示す。防水性二成分積層物1は、一あるいは二以上の二成分糸条を含む織編物テクスタイル層30を含みこれに防水性機能層50が積層されている。防水性機能層は防水性、水蒸気透過性膜を含む。一実施態様においては、機能層50は多孔性ポリマー層10および親水性ポリマーで形成された水蒸気透過性ポリマー層20から成る。布帛層40が機能層50の他の側に積層されている。布帛層には、好ましくは二成分テクスタイル層を含ませ本発明の溶着シームのシーム強度と防水性を向上させる。
【0072】
多孔性ポリマー層10は、解放性相互結合マイクロボイドの微視的構造を有する微細多孔性ポリマー膜でよい。ポリマー層10は通気性を示し、したがって、水蒸気透過性を賦与するかあるいは損なわない。使われる微細多孔性膜は典型的には5ないし125 μmの厚さであり、最も好ましくは、5ないし25 μmの厚さである。微細多孔性膜は可塑性あるいはエラストマー系ポリマーから形成できる。適当なポリマーの例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリケトン、ポリスルフォン、ポリカーボネート、弗化ポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、エーテル−エステル共重合体、エーテル−アミド共重合体などが挙げられる。
【0073】
好ましい微細多孔性ポリマー膜材料は延伸微細多孔性ポリ四弗化エチレン(ePTFE)である。この材料は、開放性相互結合微視的ボイドの多重性、高空隙率、高強度、柔らかさ、可撓性、安定した化学的性質、高水蒸気移動および良好な汚染制御特性を示す表面を有するという特徴がある。US Pat No. 3,953,566およびUS Pat No. 4,187,390にはこのような微細多孔性延伸ポリ四弗化エチレン膜の調製が記載されている。
【0074】
この連続した水蒸気透過性ポリマー層20は一般に親水性ポリマーである。親水性層は拡散により水を選択的に輸送するが、圧力駆動の液体流あるいは空気流を支持しない。したがって、湿分すなわち水蒸気は輸送されるが、ポリマーの連続層は空気により運ばれる粒子、微細有機物、油あるいは他の汚染物の通過を妨げる。この特性は、汚染物に対するバリアとして機能することにより、それから作られるテクスタイル材料およびテクスタイル製品(肌着、靴下、手袋、靴など)に良好な汚染制御特性を与える。さらに、材料の水蒸気輸送特性が着用者に快適さを提供する。
【0075】
連続した水蒸気透過性ポリマー層20は典型的には5ないし50 μmの厚さであり、好ましくは10ないし25 μmの厚さである。この厚さが満足な耐久性、連続性および水蒸気透過速度を生じる良好な実際的バランスであることが判った。これには限定されないが、層20の連続した水蒸気透過性ポリマーは、好ましくはポリウレタン族、シリコーン族、エーテル−エステル共重合体族あるいはエーテル−エステル−アミド共重合体族のポリマーである。適当なエーテル−エステル共重合体親水性組成物は、US Pat No. 4,493,870(Vrouenraets)およびUS Pat No. 4,725,481(Ostapachenko)に記載されている。適当な親水性組成物はUS Pat No. 4,2340838 (Foyら)に記載されている。適当なポリウレタン類はUS Pat No. 4,194,041(Gore)に記載されている。ポリウレタン類の連続した水蒸気透過性ポリマーの好ましいクラス、殊にオキシエチレン単位を含むポリマーについてはUS Pat No. 4,532,316(Henn)に記載されている。典型的には、これらの材料は、ポリマーに親水性を賦与する高濃度のオキシエチレン単位を有する組成物を含む。オキシエチレン単位の濃度は典型的には基礎ポリマーの45 wt.%より大であり、好ましくは60 wt.%より大であり、より好ましくは70 wt.%より大である。US Pat No. 5,026,591 (Hennら)の教示により機能層50を調製できる。
【0076】
本発明の積層物1は、好ましくは布帛裏地層40を備えている。裏地層40は、織物であるか、不織布であるかあるいは編物であって、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ポリオレフィンなどの色々な材料で作られていて良い。一実施態様においては、裏地層40は、ここに詳細に述べている二成分テクスタイル層30の様な二成分テクスタイル層でよい。裏地層40は、標準の積層工程により機能層50の片側に積層されてよい。殊に、液体熱硬化性接着剤の点状パターンをグラビアロールにより機能層50の片側に適用してよい。材料を圧力ローラーの間を通して、硬化させることにより積層が起こる。
【0077】
テクスタイル層30は通常は糸条から作られる織編物テクスタイル層であり、糸条はストランド、フィラメント、糸、二成分以上を有する纎維あるいは纎維ブレンドから成る。
【0078】
第一成分は第一の温度以下で安定な材料である、すなわち溶融しないかあるいは分解しない。第一成分は約180℃以上の第一の温度以下で安定している、すなわち、180℃より低い温度で溶融しない。一実施態様においては、第一成分は、高温で、例えば約260℃ まで安定な材料である。別の実施態様においては、第一成分は溶融性がなく、ある温度で分解する(Kevlar材料のように)。第二成分は、第二の低溶融温度で溶融する材料から作られている。一実施態様においては、第二成分は160℃ ないし230℃ の範囲の低溶融温度を有する材料である。第一温度は第二温度より高くなければならない。
【0079】
織編物二成分テクスタイル層30中の二つ以上の成分は、二つの異なる共混纎型のストランド、フィラメント、糸あるいは纎維で作ることができる。あるいはその代わりに、二成分糸条が使用される。二成分糸条は芯一鞘構造、“海中島”構造あるいは“サイド-バイ-サイド”構造をとることができる。WO 99/16616の表1は、本発明で使用できる、可能な市販の二成分糸条を示す。
【0080】
本発明の一実施態様によれば、二成分層中の第二成分はポリエステル共重合体、ポリアミド、ポリアミド共重合体あるいはポリオレフィンからなる低溶融点熱可塑性樹脂の群から選ばれた熱可塑性樹脂である。本発明の好ましい実施態様では、第二成分はポリプロピレンあるいはポリアミド6.0である。
【0081】
第一成分は、セルロース、ウールおよびシルクを含む蛋白質繊維、ポリプロピレンおよびポリエチレンを含む高溶融点ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステル共重合体、ポリアミドあるいはポリアミド共重合体からなるポリマーの群から選ばれる。好ましくは、第一成分はポリアミド6.6である。
【0082】
基本的には、二成分は、第一成分が常に第二成分よりも高い溶融点を持つように選ばなければならない。好ましくは、第一温度と第二温度の差は20℃以上である。本発明の好ましい実施態様においては、織編物テクスタイル層30の二成分は、ポリプロピレンとポリアミドか、ポリプロピレンとポリエチレンか、あるいは異なるグレードのポリアミド(例えば、ポリアミド6とポリアミド6.6)である。
【0083】
特に好ましい実施態様には、78 dtexポリプロピレンマルチフィラメントおよび44 dtexポリアミドマルチフィラメント(すなわち、78f25/44f13)の60:40ブレンドである糸条が含まれる。
【0084】
テクスタイル層30は二つの熱可塑性成分を有してよい。しかしながら、特別な目的に望むならば、三つ以上の熱可塑性成分を含めてもよい。
【0085】
層30を形成するのに使用する二成分あるいは多成分糸条は色々な従来技術によって製造できる。例えば、テクスタイル層30の異なる成分の多くのフィラメントは混合して所定のメトリック数(Nm)あるいはdtexの糸条を形成することができる。糸条のメトリック数(Nm)は次式Nm = 10,000/dtexから得られる。典型的には、メトリック数は70ないし90である。かくして、84 dtexの25フィラメント糸条はここでは全体として(84f25)として示される。公知の技術を用いて、多成分糸条を織編みできる。
【0086】
布帛裏地層40について上で述べたのと類似の積層工程で二成分テクスタイル層30を機能層50の片側に積層する。積層工程の際には、低溶融点(あるいは高溶融点)成分が積層工程中に著しく溶融しないように留意しなければならない。
【0087】
WO 99/16616に記載されているように、二成分層30中に液体延伸剤を含ませることができる。
【0088】
本発明のシームは図5a-5eとの関連で述べる方法で形成される。図5eは、第一二成分積層物1aと第二二成分積層物1bをこれらのエッジで接合する本発明のシーム80を示す。シーム80は一般に通常の溶着機械を使用して製造できることを理解すべきである。シーム80は、図4に示し上に述べたタイプの積層物片1a, 1bにより形成される。しかしながら、図4に示すような二成分積層物材料1 の使用は、実質的に積層エッジのエッジ−エッジの突き合せ配置を有する平坦な溶着シーム80 を生じる。
【0089】
かくして、図5aに示されるような隣接した積層物片1aと1bの間でシームが形成される。各積層物は裏地層40と防水性通気性機能層50(多孔性ポリマー層10および親水性水蒸気透過ポリマー層20で形成される)および織編テクスタイル材料である二成分テクスタイル表側層30 を含む。二成分糸条の使用は良好なシーム封止を提供するので、テクスタイル材料は嵩高かもしれない。表側層とは、二成分テクスタイル層30が表側布帛を形成し積層物1a, 1bの外側層を形成することになっていることを意味する、すなわち、表側層は肌着等の構造体の外側にあり、着用者の反対側を向いている。積層物1a, 1bの内側は裏地層40により形成される。第一積層物1aは第一エッジ60aを有し、第二積層物1bは第二エッジ60bを有する。
【0090】
第一積層物1aと第二積層物1bは互いに向合って置かれ、それぞれの二成分層30とエッジ60a, 60b(エッジの上のエッジ)が接触している。第一エッジ60aと第二エッジ60bはエッジエリア65を形成する。
【0091】
二積層物1a, 1bを互いに接合あるいは溶融して、図5bに示すようにエッジエリア65にプリシーム70を形成させなければならない。エッジエリア65における二成分テクスタイル層30が十分なエネルギーを供給され第二成分の第二温度より高い温度であり第一成分の第一温度より低い温度に到達するならば、プリシーム70 が形成される。第二成分は溶融し、前記プリシーム70において第一積層物1aを第二積層物1bに接合する封止材料(接着剤)を提供する。第一成分と第二成分は両方とも構造的継目に参入する。第二成分は第一成分をカプセル化し、他方第一成分は安定している。第二成分は防水性バリアを提供し、第一成分はシームに構造と強度を提供する。
【0092】
裏地層40が二成分テクスタイル層として選ばれる場合、エッジエリア65において、層40の第二成分もまた溶融し、他方、層40の第一成分は安定している。二成分層30, 40のこのような組合わせはプリシーム70の高強度をもたらす。
【0093】
二成分テクスタイル層30にエネルギーを加えてプリシーム70を形成する方法は超音波溶着技術を使用して第二成分を加熱する。接触溶着あるいは衝撃溶着のような他の溶着技術もまた使用できる。二成分層を接合する本発明の好ましい方法は例えばSonotrodeによる超音波エネルギーの使用による。超音波ホーンとアンビルシステムを通して超音波エネルギーを適用することによりエッジエリアに熱を局地的に発生できる。好ましくは、ホーンと回転アンビルを使用して連続プロセスで行える。事前に規定した選択周波数と調整可能な振幅でホーンが上下に振動する。積層物1a, 1bのエッジエリア65はアンビルの先端とホーンの間を通過でき、溶着される。アンビルとホーンの間の距離は0.1-0.5 mmである。適当な溶着を得るために、Sonotrodeの速度が制御される。速度が遅ければ、溶着温度が高くなる。
【0094】
一実施態様においては、超音波溶着と切断機械を結合させてプリシーム70が作られる。切断工程は、溶着工程の際あるいは溶着工程の後で実施され、溶着工程の際に形成されたシーム代が除かれる。その際は、アンビルとホーンの距離は0である。
【0095】
超音波機械90(例えば、Sonotronic Sonotrodeを用いたPfaff 8310)を使用して、プリシーム70の溶着と切断を一工程で行うことができる。
【0096】
超音波機械90のエネルギー入力を選択して、二成分テクスタイル層30の第二低溶融温度成分の溶融点よりも大きく、第一成分の高溶融温度よりも低くなるようにする。典型的には、溶着工程は150℃から240℃の間で行われる。これらの条件下では、二成分テクスタイル層30中の低溶融温度成分が溶融し、溶着ダイスにより積層物1a, 1bにかけられる圧力のため二成分テクスタイル層30は互いに溶融する。低溶融温度成分は、高溶融温度を有する繊維により形成される構造の間の二成分テクスタイル層30中のギャップを満たす。したがって、高い溶着温度繊維は二つの機能を果たす。第一にシームに機械的強度を与える。第二にこの繊維は“ギャップキーパー”あるいはスペーサーとして働き、溶融状態の低溶融温度繊維がプリシーム70から染み出さないようにすることを確実にする。
【0097】
溶着工程中に、シーム代が削除され、したがってシームエッジはシーム代がない。切断線に沿って高温が発生し、全成分を溶融する可能性がある。
【0098】
溶着工程と切断工程の後で、二積層物1a, 1bは図5cに示すように開かれる。二積層物1a, 1bは実質的に一平面内にあり、プリシーム70を経由して互いに接続される。エッジエリアにあるシームを形成する層は実質的に横方向にある。プリシームエッジ75は積層物1a, 1bの間の頂点のように形成される。
【0099】
図5dは、本発明のシーム80を作るさらなる工程を示す。プリシーム70にさらなる溶着工程を適用してシームを平坦にする。さらなる処理は、熱工具あるいは超音波機械によりなされる。一実施態様において、切断装置のない溶着機械90は加熱され、溶着プリシーム70上に押付けられる。シームの片側あるいは両側にさらなる溶着を行って、第二成分のすでに溶融した材料を再溶融することができる。この圧力は、プリシーム70内の横に傾斜した層を実質的に直線方向に新たに配置させる。積層物1a, 1bの第一エッジ60aと第二エッジ60bはエッジ−エッジ突き合せ配置に再配置させられる。したがって、頂点状のシームエッジ75は平坦なシーム線に形成される。
【0100】
図5eは仕上げた本発明のシーム80を示す。さらなる溶着工程の故に、エッジ−エッジ突き合せシーム80は積層物1aあるいは1b自身とほぼ完璧に近く同じ厚さを有する。シーム厚さは積層物の厚さに依存して0.2 μm ないし0.9 μmの範囲にある。さらに、プリシーム70の再溶融と押付けを第一溶融工程とは反対方向に行うと、シーム内の層、殊にエッジの再配置に至る。殊に機能層50が多かれ少なかれ直線方向に配置させられる。少なくとも機能層50のエッジの端は、第二成分の溶融材料中に完全に埋め込まれる。二成分テクスタイル層30と裏地布帛層40は実質的に水平で直線方向にある。その結果、図3の通常のシームのシーム線290に沿う剥離応力の代わりに、シーム80の全断面にわたって引張り応力がかかることになる。シーム80は、殊に二つの二成分層30, 40を使用する場合には、高いシーム強度を有する。驚くことには、本発明のシームは非常に耐久性があり、何回もの洗濯工程の後でも、シームはなお閉じていて開いたエリアが見付からなかった。
【0101】
シーム80は防水性であり、積層物エッジの擦切れは耐久的に防止される。形成されるシーム80の幅は、積層物厚さと工程データに依存して0.2 mm ないし1.5 mm の間にある。シーム80は柔らかく非常に薄い。さらなる利点はシーム継目で層が蓄積しないことである。
【0102】
図6は、本発明の一実施態様の平面図である。図は、本発明のエッジ−エッジ突き合せ配置における溶着シームを経由してエッジで互いに接合されている三片の二成分積層物の組合わせを示す。各二成分積層物片は、異なる色の二成分テクスタイル層を有している。三片1a, 1b, 2は、図5に説明する方法により接合され、T−継目を形成する。
【0103】
第一工程で、第一二成分積層物1aと第二二成分積層物1bは第一エッジ−エッジシーム82で接合される。その後、第二工程で、第一と第二の積層物1a, 1bの組合わせは、本発明にしたがって溶着エッジ−エッジシーム84で第三二成分積層物2に溶着される。
【0104】
図7は、図6のシーム継目Aを通した拡大透視断面図(線VII-VII)である。断面は溶着シーム82に沿い、溶着シーム84と第三二成分積層物2を突き抜ける。驚くべきことには、第一と第二と第三の積層物2の組合わせの層の重なりはなく、シーム82とシーム84の継目における積層物片同士の層の重なりがないことが判った。反対に、第一、第二および第三積層物のエッジは実質的にエッジ−エッジ突き合せ配置にある。したがって、全三積層物およびこれらの間のシームは同じ平面にある。殊に、シーム継目Aの厚さは、シーム82およびシーム84と実質的に同じである。シーム継目において層の重なりがない。積層物は突き合せ状のシームにより接合される。したがって、シーム継目におけるシームは実質的に積層物より厚くない。シーム継目における接合は防水性かつ防裂け性である。
【0105】
シーム強度は、溶着シームに適用される補強材を用いて向上できる。補強材はシームの防水性および/あるいはシーム強度を向上できる。
【0106】
好ましくは、補強材は布帛層側あるいは二成分積層物1の内側に製品(article)で適用する。可能な補強材はテクスタイルテープ、防水性テープ、糸あるいは防水性テクスタイル積層物である。本発明の一実施態様においては、補強材は図8に開示するようにシームテープ105の形状である。シームテープ105はシーム80自身の何れかの側に固定できる。美的理由で、シームテープ105は普通は肌着の内側に適用して見えないようにする。したがって、シームテープ105は好ましくは布帛層40に固定される。
【0107】
シームテープは、溶着可能な接着テープ、溶着可能なテクスタイルテープあるいは溶着可能な積層物テープでよい。基本的には、溶着可能なテープは80℃ないし230℃の範囲の温度で溶融する一以上の熱可塑性成分を含む。
【0108】
別の実施態様においては、シームテープ105は、加熱されると軟化し流動する熱可塑性フィルムでよい。より普通には、シームテープ105は片側に熱溶融接着剤の被覆を有する裏地テープを含む。本発明により溶着シーム80を調製した後、シームテープ105を、例えば、熱空気の衝風を使ってシームテープ105を加熱し、接着剤を溶融する。ついでテープ105をシーム80上に当てがい、両者を一組の圧力ローラーの噛合せを通して溶融接着剤を布帛40中に絞り出してテープの下にある布帛へのテープの良好な接合を確保する。一般に、シーム封止接着剤は、二成分テクスタイル層30の第二成分の溶融温度より高い温度で溶融する。そこで、通常のシーム封止条件が維持されるのが可能となる。好ましくは、シーム封止接着剤は、第二成分の溶融点より10ないし20℃低い温度で溶融する。しかしながら、これらの条件はある程度熱の流れ速度とシーム封止速度に依存する。
【0109】
本発明のさらなる実施態様においては、図5dで説明したような平坦化工程の際にシームにシームテープが当てがわれる。一実施例においては、超音波溶着機械は、二つの板と板間の距離を有する。プリシーム70とプリシーム上のシームテープはこの距離を通して連続的に輸送され、互いに接合される。同時に、プリシームはエッジ−エッジ突き合せ配置にまで平坦化される。
【0110】
驚くべきことには、本発明はまた、薄い溶着シーム自身と実際のシーム代がないという事実の故に非常に薄い(幅が狭い)シームテープの使用を可能にする。好ましくは、シームテープは8ないし10 mm以内の幅を有する。
【0111】
補強材の別の例を図9に示す。糸110を使って溶着シーム80を補強する。一実施態様においては、上述のように、糸は二成分材料から作られる。別の実施態様においては、糸は単繊維糸条である。糸110は溶着シーム80全体にわたり好ましくは布帛層40にまでジグザグ状に縫付けられる。縫製工程の後で、布帛は二成分テクスタイル層30の第二成分の溶融温度以上にシームエリアで加熱され、またもし使用されているならば二成分糸の第二成分の溶融温度以上にも加熱される。しかしながら、シームエリアが加熱される温度は第一成分の溶融温度より低くなければならない。加熱工程は平坦化シーム80のさらなる溶着工程であるか、図5d に説明したようにプリシーム70の平坦化工程により行なってもよい。溶融第二成分は積層物1中の縫目孔を封止し、シームを防水性にする。
【0112】
図10は予備成形したエッジ60a, 60bを有する二つの積層物1a, 1bを示す。エッジ60a, 60bは湾曲した形状であり、第一エッジ60aは第二エッジ60b にぴったり合う。
【0113】
第一エッジ60aと第二エッジ60bの組合わせを図11に示す。第一積層物1aと第二積層物1bは本発明により溶着シーム80で接合される。シームを平坦化する連続溶着工程は二次元非線形封止線をもたらす。
【0114】
本発明のさらなる実施態様を図12に開示する。第一二成分積層物1aおよび第二二成分積層物1bは図5bに示すのと同じ配置にあり、唯一の差は溶着機械が図5bに示すような直線シームでなく湾曲シーム線あるいは非直線シームを作り出すことである。
【0115】
このような湾曲あるいは非直線シーム線の結果を図13に示す。プリシーム70は平坦化され三次元湾曲を有する溶着シーム80に形成される。溶着シーム80の湾曲に基づいて、最終組合わせは三次元構造からなる。このような三次元構造は身体に合わせた肌着の製造、肩の構造体、および予備形成したフードに役立つ。
【0116】
図14は複数片の防水性積層物から作られた肌着120を示す。これらの片は異なる色および/あるいは非直線形状およびエッジを有することができる。これらの片は、本発明の方法により製造された一以上の溶着シーム80により接合される。殊にフード130のエリアには、三次元の湾曲溶着シーム88が製造される。体と腕のエリアにおいて、二次元溶着シーム86が製造される。
【実施例】
【0117】
例1(未加工マイクロシーム)
二片の三層二成分積層物の間でシームを形成した。積層物は、親水性ポリマーを塗布された延伸ポリ四弗化エチレンで形成された防水性機能層50 に積層された織物二成分テクスタイル層30 と機能層50 の反対側に積層された編物二成分テクスタイル裏地層40 を含んだ。二成分織物層は、第一成分(ポリアミド6.6、溶融点:255℃)および第二成分(ポリアミド6、溶融点:225℃)から成る。第一成分と第二成分は加工し相互混繊フィラメントの形態であった。二成分テクスタイル層30は55 g/m2のテクスタイル質量を有していた。二成分編物裏地層40は80 g/m2のテクスタイル質量を有していて、矢張り第一成分としてのポリアミド6.6と第二成分としてのポリアミド6から作られている。積層物は0.3 mmの厚さを有していた。先ず第一積層物1aおよび第二積層物1bを対向させて置き、それぞれの二成分織物層30を接触させた。タイプPfaff 8310(Pfaff社、ドイツ)の超音波溶着機械を使用し、16 μmの振幅、35 kHzおよび0.7 m/minの速度でプリシーム70を形成した。アンビルホイールには90度の角度を持たせ0 mmのギャップとした。温度は約240℃であった。溶着工程の際ギャップを置かずに、シーム代を切断した。次いで、同じ溶着機械(Pfaff 8310)を使用し、平坦アンビルホイール(角度180度)と0.13 mmのギャップとした以外は同じ設定でプリシーム70を平坦化し、マイクロシーム80とした。
【0118】
図15は溶着し平坦化したシーム80の断面の電子顕微鏡写真を示す。二成分積層物1aおよび1bの全層は殆ど真直ぐな構造であり、機能層5はシーム80の溶融材料中に埋め込まれている。シーム80は0.2 mmの幅と0.3 mmの厚さを有している。防水性とシーム強度の数字は下の表1に示した。
【0119】
例2(未加工マイクロシーム)
二片の三層積層物1a, 1bの間にシームを形成した。積層物は、250 g/m2のテクスタイル質量の二成分編物テクスタイル層30 を含んだ。層30を、親水性ポリマーを塗布した延伸ポリ四弗化エチレンから形成された機能層50に積層した。積層物1はさらに110 g/m2のテクスタイル質量を有し、機能層50の相対する側に積層された二成分編物テクスタイル裏地層40を含んだ。二成分層30, 40は、第一成分(ポリアミド6,6、溶融点255℃)および第二成分(ポリアミド6.0、溶融点225℃)から成った。第一成分および第二成分は加工し相互混繊した長繊維糸条の形態であった。積層物1は0.8 mmの厚さを有していた。シーム80は、溶着機械が平坦化工程について0.5 mmのギャップを有している点以外は実施例1にしたがって調製した。
【0120】
図16は、図5bに従う溶着工程と切断工程後の平坦化されていないプリシーム70の断面の電子顕微鏡写真である。この結果、頂点状構造75を有するプリシーム70を生じる。
【0121】
図17は、さらなる溶着工程とプレス工程を加えてプリシームを平坦化させる点以外は図16におけるシームと同じシームの断面の電子顕微鏡写真を示す。したがって、シーム80は平坦化され、各積層物1a, 1bのエッジはエッジ−エッジ突合せ配置で再配置されている。シーム80は0.6 mmの幅と0.8 mmの厚さを有している。防水性とシーム強度の数字は下の表1に示される。数字は、シームが積層物で作られた構造体の外側から見えず、したがって構造体を美的に感じよく作ることができることを示している。さらに、シームのエッジエリアは構造体の外側から見えないことと、エッジが溶融第二成分により包まれ、おおむね擦切れないようになっていることが示されている。
【0122】
例3
二片の三層積層物の間に溶着シームを形成した。材料と溶着工程は実施例1と同じである。なお、三層二成分積層物テープの形状の補強材を、超音波エネルギーを用いてシームの内側に溶着した。テープは幅6mmであり、シームと裏地層40の隣接エリアを完全に覆う。
【0123】
例4
二片の三層積層物の間に溶着シームを形成した。材料と溶着工程は実施例1と同じである。なお、二成分糸の形状の補強材をジグザグ状にシーム上に縫付けた。次いで、糸付きのシームを加熱し、溶融した二成分層の第二成分と溶融した糸の第二成分が積層物中の縫い孔を封止した。
【0124】
例5
二片の三層積層物の間に溶着シームを形成した。材料と溶着工程は実施例1と同じである。なお、二成分糸の形の補強材を二針カバー縫付(coverstitch)の形でシーム上に縫付けた。次いで、糸付きのシームを加熱し、溶融した二成分層の第二成分と溶融した糸の第二成分が積層物中の縫い孔を封止した。
【0125】
例6
二片の三層積層物の間に溶着シームを形成した。材料と溶着工程は実施例1と同じである。なお、編物バンドの形の補強材を超音波エネルギーを用いてシームの内側に溶着により取付けた。テープは7 mmの幅を有し、シームと裏地層40 の隣接エリアを完全に覆った。
【0126】
例7
二片の三層積層物の間に溶着シームを形成した。テクスタイル層30用の二成分材料および裏地層40が大きなテクスタイル質量を有するフリースの形状である点を除いては、材料と溶着工程は実施例1と同じである。したがって、積層物は382 g/m2の大きな質量を有する。
【0127】
例8
二片の三層積層物の間に溶着シームを形成した。溶着工程は実施例1と同じである。テクスタイル層30用の二成分材料および裏地層40はフリースの形状でありポリエステルで作られている。第一成分はポリエチレンテレフタレート(PET、溶融点255℃)であり、第二成分はポリブチレンテレフタレート(PBT、溶融点225℃)である。フリース層30, 40は実施例7におけると同様に大きなテクスタイル質量を有していて、したがって、積層物は440 g/m2の大きな質量を有する。
【0128】
例9
二片の三層積層物の間に溶着シームを形成した。テクスタイル層30用の二成分材料および裏地層40が実施例1におけると同様に大きなテクスタイル質量を有する点を除いては、材料と溶着工程は実施例1と同じである。したがって、積層物は180 g/m2の大きな質量を有する。
【0129】
例10
二片の三層積層物の間に溶着シームを形成した。溶着工程は実施例1と同じである。テクスタイル層30用の二成分材料および裏地層40がポリエステルで作られていて、布帛裏地層40用の二成分材料は起毛編物裏地材料の形状である。第一成分はポリエチレンテレフタレート(PET、溶融点255℃)であり、第二成分はポリブチレンテレフタレート(PBT、溶融点225℃)である。積層物は430 g/m2の大きな質量を有する。
【0130】
表1は、積層物とこの積層物間に形成された溶着シームについて測定した結果を示す。
【0131】
表1は、実施例中の各使用積層物のテクスタイル質量と厚さ、および各溶着シームのシーム強度についての全体像を与える。Suter試験は、溶着シームが防水性(合格)か否(不合格)かを示す。次の略字が使用される。
【0132】
3L = 親水性ポリマーが機能層として塗布されたePTFE(延伸ポリ四弗化エチレン)膜を有する三層積層物
TL = テクスタイル層30 、FL = 布帛裏地層40、PA = ポリアミド、BiCo = 二成分テクスタイル材料
【0133】
【表1】

【0134】
“シームはSuter試験を合格したか?”の欄は、形成されたシームが0.13バールの水圧に4分以上対抗できたかどうかを示す。全実施例はSuter試験を合格し、したがって防水性である。
【0135】
“封止強度”の欄は溶着シームについてのシーム強度を示す。約200 Nの値は肌着中のテクスタイルシームについては非常によいと考えられる。
【0136】
例1, 2および6-10 の未使用溶着シーム(補強材なし)は増大する積層物質量を伴う向上したシーム強度を示す。
【0137】
例3-5 における補強材の使用は、比較的低質量の積層物を使用して高いシーム強度を得る結果となる。
【0138】
定義と試験方法
機能層:機能層という語は、防水性と水蒸気透過性という性質を有する層であることを示すために用いられる。好ましくは、機能層は防水性、水蒸気透過性膜から成る。
【0139】
積層物:積層物という語は、機能層と一つ以上のテクスタイル層との結合(二層積層物)を記載するのに使われる。第一のテクスタイル層と反対側の機能層に接着されているさらなるテクスタイル層を有する三層積層物もある。
【0140】
糸条:記述中の糸条なる語は、テクスタイルに作られる材料の連続したストランドを述べるのに使われる。糸条はストランド、フィラメント、繊維等を含む。
【0141】
外側:外側なる語は、本発明の溶着シームを含む組合わせあるいは製品の側であり、肌着の見える外側殻を形成する側を意味する。
【0142】
内側:内側なる語は、本発明の溶着シームを含む組合わせあるいは製品の側であり、肌着の内側を形成し、この肌着の着用者に向いている側を意味する。
【0143】
シーム:シームなる語は、二つ以上の材料片間の接続(継目)を意味する。シーム代は、溶着後に絞りを含む切断によって除去できるシームの部分である。
【0144】
エッジ:エッジなる語は、積層物の外側限界あるいは境界を意味する。接合するために少なくとも第一エッジと第二エッジを向かい合わせて置くと、エッジエリアが形成される。切断エッジなる語は、切断によって生じるエッジの表面を定義する。
【0145】
封止強度試験
EN/ISO 13935にしたがって封止強度試験を行った。封止の強度を測定するために、機械方向と横方向の二方向にトライプリケート(triplicate)の実施例の膨らませることができるモジュールから試料を切断した。試料は20 cm長さで、シールが真中にある。シール長さは引張り軸に直角に8 cmであった。試料を確実に保持する空気取付クリップ(pneumatic clamp jaws)を備えたインストロンモデル#1122 に試料を装着した。試料が破断するまで、クロスヘッドを200 mm/minの速度で拡げた。破断時の負荷と破断伸びを記録した。機械方向と横方向の平均を平均して表1に報告した。
【0146】
積層物/シームの厚さ
Peacock 20-360 Snap Gauge (M-213)試験機を使用して、ASTM D 1777-64 (1975年に再承認)にしたがって、いわゆるスナップゲージ法(Snap Gauge Method)を用いた。試験前に24±2℃および相対湿度65±2%で調整した5.08 x 5.08 cm以上の試験片を使用した。試験機の押え金を衝撃なしに試験片まで下げた。5秒後、読みを行った。用いたサンプリングパターンでは、5試験片を試験し、五つの結果の平均と標準偏差を計算した。
【0147】
布帛の質量
試験前に24±2℃および相対湿度65±2%で調整した8.9 cm径の円形試料を用いて、布帛の質量を測定した。用いたサンプリングのパターンでは、五試験片を試験し、五つの結果の平均と標準偏差を計算した。通気カバー付きの0.01 gまでの精度の任意の天秤が使用できる。試験法のさらなる詳細はASTM D 3776-96 Option Cに記載されている。
【0148】
水蒸気透過性
ここに用いる水蒸気透過性は、150(m2.Pa)/W 未満の水蒸気透過率(Ret)を有することを意味する。水蒸気透過率は、1987年9月の日付でドイツのBekleidungsphysiologisches Instituts e.V. Hohensteinにより発行されたStandard-Pruefvorshrift (標準試験法)No. BPI 1.4に説明されるHohenstein MDM Dry Methodを使用して測定される。
【0149】
防水性
ここに使用される防水性は、0.13バール以上の水透過抵抗(hydrostatic resistance)を有することを意味する。この積層物についての測定は、100 cm2の面積を有する積層物の試験試料を増水圧下に置くことによってなされる。この目的のために、温度20±2℃の温度の蒸留水が使用され、水圧の増加率は60±3 cm H2O/minである。試料の水透過抵抗は、試料の反対側に水が現れる圧力である。この試験を行う正確な方法は、1981年からのISO標準番号811に記載されている。
【0150】
いわゆるSuter試験によりシームについてこの測定が行われ、この試験ではシームを含む積層物の試験試料はホールダー上に伸ばされる。20±2℃の温度の蒸留水を0.13 バールの圧力の下でシームの片側に置き、試験試料を4分以上放置する。黒っぽいティッシュペーパー(dark tissue)を用いて、シームの他の側を調べ、シームを通して水の透過が起きたかどうかを見た。
【0151】
修正Suter試験装置を使用して防水性試験に供した。これは低水進入圧試験である。締付け配置にある二つの円形ラバーガスケットによって封止された11.25 cm径の試料の下側に水圧をかけた。試料は、織物表側布帛を下側に水と対持させ、テープを張ったシームを有する編物層を最上部にして取付けた。締付け機構、ガスケットおよび試料によって防漏水性封止が形成されていることが重要である。変形可能な試料においては、試料の上に補強スクリム(例えば、開放不織布帛)を置き、締付けた。テープを張ったシームを有する試料の上側は雰囲気に開放され、操作者が見ることができた。試料の下側にかけられる水圧は、水溜めに接続されたポンプによって2 psi (0.14 kg/cm2)に増加させた。水圧は圧力ゲージにより示され、ラインにあるバルブによって制御された。試料の上側を1分間目視して、防水性に欠ける場合に試料を通して押出されて水が現れるかどうかを確認した。表面に見られる液状水は、試験試料が防水性に欠けていると解釈された。一分間の試験時間中に液状水が試料の上表面に見られなければ、試料は試験に合格であった。
【0152】
シームの幅
幅は試験片の長さに沿って三場所で測定し、平均してその試験片の幅を得た。三試験片を測定し、三結果の平均を計算した。幅は、物差しを使って、最寄のミリメートルまで測定した。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】先行技術に開示された通常の溶着平坦シームを模式的に示す。
【図2】先行技術による付加タイプの通常の溶着シームを模式的に示す。
【図3】先行技術にしたがって、溶融によりポリウレタン膜の表面を互いに接合させて形成した通常の溶着シームを示す。
【図4】本発明によるシームを形成するのに使用する二成分積層物の断面図である。
【図5a】本発明による溶着シーム形成の工程を模式的に示す。
【図5b】本発明による溶着シーム形成の工程を模式的に示す。
【図5c】本発明による溶着シーム形成の工程を模式的に示す。
【図5d】本発明による溶着シーム形成の工程を模式的に示す。
【図5e】本発明による溶着シーム形成の工程を模式的に示す。
【図6】二成分テクスタイル層から成る防水性積層物の3層の間のT継目を示す。
【図7】図6のT継目の断面図を示す。
【図8】溶着シームの内側に補強テープを有する本発明による溶着シームの断面図である。
【図9】溶着シームの内側にわたって二成分糸の形の補強材を有する本発明による溶着シームの断面図である。
【図10】湾曲溶着シームを作成するための湾曲プリカットした形の第一二成分積層物と第二二成分積層物を示す。
【図11】二成分積層物間の湾曲エッジ−エッジ溶着シームを模式的に示す。
【図12】曲率を持った本発明による溶着シームを示す。
【図13】裏返した後の図8による湾曲溶着シームを示す。
【図14】本発明による、エッジ−エッジシームと湾曲したエッジ−エッジシームを含む肌着を示す。
【図15】本発明による溶着シームの一実施態様の顕微鏡写真を示す。
【図16】平坦化されていない構造における溶着シームの第二の実施態様の顕微鏡写真を示す。
【図17】平坦化構造における溶着シームの第二の実施態様の顕微鏡写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶着シーム(80)を形成することにより二片以上の防水性積層物を接合する方法であって、
a) 二以上の防水性積層物(1a, 1b)であって、該積層物は各々が少なくともテクスタイル層(30)に積層された防水性機能層(50)を含み、テクスタイル層(30)は少なくとも第一成分と第二成分を含み、第一成分は第一温度までは安定であり、第二成分は第二温度で溶融し、第一温度は第二温度よりも高く、かつ、該積層物は各々が少なくとも一つのエッジ(60a, 60b)を有するものを用意し、
b) 該二以上の積層物同士を、テクタイル層同士が接触し、かつ、一つの積層物(1a)の少なくとも一つのエッジ(60a)が少なくとも一つの他の積層物(1b)の少なくとも一つのエッジ(60b)に揃えられてエッジエリア(65)を形成するように配置し、
c) 第二成分の溶融温度範囲内であり第一温度よりも低い温度で該エッジエリア(65)を溶着かつ加圧することにより、第二成分を溶融させて該二片以上の間にシームを形成させ、
d) 当該シーム代を切断し、
e) 該シームを溶着、加圧することにより、該二以上の積層物のエッジをエッジ−エッジ突き合せ配置に再配置させることを特徴とする方法。
【請求項2】
工程c)と工程d)が同時に行なわれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第二成分が160℃ないし230℃の範囲の温度で溶融可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第一成分が少なくとも180℃の温度まで安定であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第一温度と第二温度の間の温度差が20℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程c)および工程e)が同じ温度で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程c)が160℃ないし230℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程e)が160℃ないし230℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
超音波エネルギーを用いて工程c)および工程e)が行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程c)および工程e)が連続プロセスで行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
機能層(50)が延伸ポリ四弗化エチレン(PTFE)で作られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
シーム(80)が少なくとも一つの補強材により補強されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
補強材がテープ、糸、テクスタイル積層物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
補強材が160℃ないし230℃の範囲の温度で溶融する少なくとも一つの成分を含む糸の群から選ばれることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法により得られた、少なくとも二片の防水性積層物(1a, 1b)の間の溶着シーム(80)。
【請求項16】
複数片の防水性積層物を含み、該片の二以上の間に請求項1に記載の方法により製造された溶着シーム(80)を有する製品。
【請求項17】
エッジエリア(65)で溶着シーム(80)おいて互いに接合された、第一エッジ(60a)を有する少なくとも第一積層物(1a)と第二エッジ(60b)を有する第二積層物(1b)との組合わせであって、
該積層物の各々は、防水性機能層を含む第一層(50)と、第一層(50)に積層されかつ少なくとも第一成分と第二成分を含む第二テクスタイル層(30)とを含み、
第一成分は第一温度に対して安定であり、また第二成分は第二温度で溶融し、第一温度は第二温度より高く、
シーム(80)は各積層物のテクスタイル層の溶融第二成分と非溶融第一成分により形成され、第一エッジ(60a)は実質的にエッジ−エッジ突き合せ配置で第二エッジ(60b)に配置されていることを特徴とする組合わせ。
【請求項18】
各積層物(1a, 1b)は積層物厚さを有し、また溶着シーム(80)はシーム厚さを有し、このシーム厚さが実質的に積層物厚さと同じであることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項19】
溶着シーム(80)が実質的に非直線であることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項20】
溶着シーム(80)が一つ以上の曲率を有し三次元の組合わせを形成する形状であることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項21】
溶着シーム(80)が一つ以上の補強材により補強されていることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項22】
補強材がテープ、糸、テクスタイル積層物からなる材料の群から選ばれていることを特徴とする請求項21に記載の組合わせ。
【請求項23】
補強材が160℃ないし230℃の範囲の温度で溶融する少なくとも一つの成分を有する糸の群から選ばれることを特徴とする請求項22に記載の組合わせ。
【請求項24】
第二成分が160℃ないし230℃の範囲の温度で溶融可能であることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項25】
第一成分が180℃以上の温度まで安定であることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項26】
第一温度と第二温度の間の温度差が20℃以上であることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項27】
シーム(80)が0.07 バール以上の水進入圧に対抗することを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項28】
シーム(80)が0.13 バール以上の水進入圧に対抗することを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項29】
シーム(80)が0.25 cm未満の幅を有することを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項30】
第二テクスタイル層(30)がストランド、フィラメント、糸あるいは繊維の形の複数の糸条から成ることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項31】
一つ以上の糸条が第一成分と第二成分から成る二成分構造を有することを特徴とする請求項30に記載の組合わせ。
【請求項32】
糸条が鞘−芯構造を有し、第二成分が当該被覆を形成していることを特徴とする請求項31に記載の組合わせ。
【請求項33】
糸条が“サイド−バイ−サイド”構造を有することを特徴とする請求項31に記載の組合わせ。
【請求項34】
第二層(30)が編物、織物あるいは不織布テクスタイル層であることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項35】
第一成分がポリエステル、ポリアミド、セルロースあるいは蛋白質繊維から成るポリマーの群から選ばれることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項36】
第一成分がポリアミド6.6であることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項37】
第二成分が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項38】
第二成分がポリエステル共重合体、ポリアミド、ポリアミド共重合体およびポリオレフィンからなる熱可塑性樹脂の群から選ばれることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項39】
第二成分がポリプロピレンであることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項40】
第二成分がポリアミド6であることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項41】
第二成分が超音波エネルギーを用いて溶融されることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項42】
シーム(80)が連続的に形成されていることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項43】
機能層(50)が膜あるいはフィルムであることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項44】
機能層(50)がポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリケトン、ポリスルホン、ポリカーボネート、弗化ポリマー、ポリアクリレート、ポリウレタン、エーテル−エステル共重合体およびエーテル−アミド共重合体から成る物質の群から選ばれることを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項45】
機能層(50)が延伸ポリ四弗化エチレン(PTFE)で作られたことを特徴とする請求項17に記載の組合わせ。
【請求項46】
請求項17の組み合わせから作られた衣類製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−513835(P2009−513835A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516050(P2006−516050)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006857
【国際公開番号】WO2005/000055
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(391018178)ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエーツ,ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (40)
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】