説明

溶融ガスを含む水の処理

本発明は、水から、メタンガス等のガスの少なくとも一部分を回収するために、何パーセントかの溶解ガスを含む水の処理のための方法及び装置に関する。装置は、分離室と流れにおいて連絡する出口と入口を有する、供給パイプを具備する。前記分離室は、分離されたガスと水をそれぞれ排出するためのガス出口及び水出口を有する。超音波発信器等の気泡の形成を刺激するための手段が、前記供給パイプに関連する。本発明は、溶解ガスを含む水の処理方法に係り、この方法は、入口及び出口を有するチューブを位置決めする位置決め手順であって、水中において、前記出口の下に前記入口が位置決めされる、位置決め手順と、前記チューブ内の水内において気泡の形成を刺激して、前記チューブ内において水の上方向の流れを引き起こすための少なくとも1つの装置を使用する使用手順とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水からガスの少なくとも一部分を回収するために、何パーセントかの溶解ガスを含む水の処理のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中央アフリカのKlVu湖は、地理学上の断層線の近くに位置する深い湖(約400−450m)である。これは、湖の水内における二酸化炭素の蓄積と加熱を引き起こす。地学上の成層構造及び水の循環の殆ど無い状態が存在するので、溶融二酸化炭素を含む水は、湖の底付近に停滞し、その底付近では、メタン細菌バクテリアが二酸化炭素をメタンに変換する。湖の底付近の水中におけるメタンに対する二酸化炭素の比率は、概略5対1である。
【0003】
溶解したメタンが、潜在的に価値のあるエネルギ源であることは、以前から分かっている。また、もしメタンガスが水から取り除かれないと、大災害が発生して、付近の数万の人の生命が失われる結果を生じる長期間にわたるリスクが存在することが指摘されてきた。爆発性活動が、水中において潜在しており、メタンが周囲の大気に放出されると、それは容易に爆発可能であると同時に、窒息性ガスの巨大な雲を放出するであろうことが推測されている。
【0004】
分離設備(プラント)が存在しており、その施設は、底から水面へ水を輸送するパイプ(配管)を基本的に有しており、前記水面ではガスは自然に泡になり、従って水から単純に分離される。水を水面へ輸送することは、自然の水圧サイフォンが安定した状態でパイプ内に形成されるので、全く容易に実現される。所望のメタンからの二酸化炭素の分離は、多少より未解決であり、それは、通常水洗浄を使用する分離処理方法であるが、この分離処理方法は、分離設備の経済的可能性に対してマイナスの影響を与える。
【0005】
分離処理方法は、深い水深において圧力が高いことにより、より効率的であり、この高圧は、放出される二酸化炭素に対するメタンのより好適な比率をもたらし、更により良好な水洗浄効率をもたらすことが分かっている。しかし、経済的な処理方法は、これを実現するために未だ考案されておらず、特には、これは、自然サイフォン又はガスリフト(浮上法)は水深が深くなると、効率が悪化することによる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題の幾つかを少なくとも部分的に緩和する水処理のための方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従がい、水本体からの溶解ガスの分離のための装置が開示されており、前記ガスは、前記水本体の下部に集中されており、前記水本体は、分離室と流れにおいて連絡する出口と入口を有する、供給パイプを具備しており、前記分離室は、分離されたガスと水をそれぞれ排出するためのガス出口及び水出口を有しており、更に気泡の形成を刺激するための手段が、前記供給パイプに関連する。
【0008】
本発明の別の形態において、前記気泡の形成を刺激するための手段は、電気又は機械デバイスを具備する。この場合、該装置において、前記手段は、1つ又は複数の超音波発信器を具備する電気デバイスを具備する。また、前記電気デバイスは、前記供給パイプの長さに沿って部分的に間隔を開けて配置される複数の超音波発信器を具備する。前記供給パイプは、その出口に隣接して、実質的に垂直で且つ180度で曲げられる。前記分離室は、前記水本体の水面の下に位置するように形成される。
【0009】
本発明の更に別の形態において、前記ガス出口はスクラバーユニットに流体接続しており、前記水出口は、前記供給パイプの入口から離れた位置において排出する。
【0010】
更に本発明は、溶解ガスを含む水の処理方法を開示しており、この方法は、入口及び出口を有するチューブを位置決めする位置決め手順であって、水中において、前記出口の下に前記入口が位置決めされる、位置決め手順と、前記チューブ内の水内において気泡の形成を刺激して、前記チューブ内において水の上方向の流れを引き起こすための少なくとも1つの電気又は機械装置を使用する使用手順とを具備する。
【0011】
本発明の別の形態において、気泡の形成を刺激するデバイスである超音波発信器が開示されており、好適には、複数の気泡形成刺激デバイスは、前記チューブの長さの少なくとも一部分に沿って間隔を開けて配置されるており、前記チューブは、前記水本体の水面の下に位置する少なくとも1つのデバイスを具備する。
【0012】
本発明は更に、水本体からの溶解ガスの分離方法を開示しており、本形態において、その様なガスが前記水本体の下部に集中しており、この方法は:前記水本体において、入口を有する供給パイプを設置する設置手順であって、前記水本体の底付近の前記入口と、前記水本体の水面の下に設置された分離室と流れにおいて連絡する出口とを具備しており、前記入口が前記出口の下に位置決めされる、設置手順と;前記供給パイプ内において気泡の形成を刺激して、水とガスとを前記分離室内へ上方向に流れさせる、刺激手順と;前記分離室内の水を、前記分離室から外へ水出口を通り移動可能にして更に前記分離室内のガスを前記分離室から外へガス出口を通り移動可能にする、手順と;を具備する。
【0013】
本発明の別の形態において、
本発明の別の形態において、少なくとも1つの電気又は機械デバイスにより、前記気泡の形成が刺激されており、前記デバイスは、超音波発信器であることが好ましい。
【0014】
本発明の2つの実施の形態が、図面を参照して、単なる例として以下で説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示すように、水2の本体からの溶解ガスの分離のための装置1は、その底付近の水中に高割合のその様なガスを有する湖である、本実施の形態において、供給パイプ(配管)5と、分離室7と、スクラバー(洗浄器)8とを具備する。水内に溶解されたガスは、メタン及び二酸化炭素を含む。
【0016】
供給パイプ5の入口10は、水本体2の底3付近において、275mより深くに設置されており、供給パイプ5の出口11は、分離室7への入口と流れにおいて連絡している。供給パイプ5は、出口11に隣接するU形状のベンド(曲げ部)を有しており、出口11は分離室7内へ下方向で流体接続する。
【0017】
分離室7は、15から60mの間の深度、本実施例においては約60mの深度において、水本体2の水面17下において、浮遊ブイ15から吊るされている。分離室7のガス出口20は、スクラバー8内に流体接続しており、その一方で流体出口21は、装置1上において且つそれから離れたある距離において、水本体2に流体接続する。
【0018】
スクラバー8は、ガス出口23を有しており、そのガス出口23は、プラットフォーム(図示されない)上の圧力制御ステーション(基地)(図示されない)内に流体接続しており、前記プラットフォームは、陸まで延びるガス供給パイプライン(図示されない)に流体接続する。プラットフォームはまた、スクラバー8のための洗浄水供給部26と、ポンプと、始動ポンプ(図示されない)とを具備する。
【0019】
超音波発信器30の列は、分離室7付近の供給パイプ5内において吊り下げられ、ブイ15からのケーブル(電線)により作動させられる。
【0020】
使用において、水は供給パイプを充填するが、しかし装置1の深度における圧力は、水からの自然発生のガスの放出を防止する。ガスを含む水は、供給パイプ5から分離室7へ吸引されて、始動させる。超音波発信器30の作動は、気泡の形成を刺激し、その気泡は順に出口11付近の圧力の減少を引き起こす。これは、水からのガスの放出を促進すると共に、供給パイプ5内に形成された自然の水圧サイフォンを促進する。水とガスは従って、分離室7内に供給され、分離室7において、ガスと水との分離が行われる。水からのガスの放出は、分離室7内にガスを生成し、そのことは、分離室7内の水を出口21から外に移動させ、ガスを出口20からスクラバー8内に移動させる。スクラバー8において、二酸化炭素の多くは、水洗浄によりガスから除去され、比較的高品質のメタンがそれ以降の処理又は使用のために残される。
【0021】
60mまでの水深における装置の運転は、二酸化炭素に対する放出(分離)されるメタンの比を、大気圧において運転される同様な装置の6倍まで増大する。更に、スクラバー(洗浄器)8の洗浄効率は、大気における洗浄(スクラビング)に比べて、60m水深における運転により、10倍より大きく増大させられる。
【0022】
しかし、装置の運転は、供給パイプ内における気泡の形成を刺激する手段を使用することにより実際に実行可能である。特に、その様な手段は、低エネルギで且つ低保守しか必要性としないものでなければならない。超音波発信器は、この仕事に理想的に適すると考えられるが、しかし処理方法は、笛又は高せん断(shear)により超音波を生じる同様なノズルを介しての高圧水の噴射を使用して同様に作動可能である。
【0023】
超音波による刺激は、装置により多数の微小な気泡を生成させ、それらの気泡は、水の流れ内において浮遊して保持される。気泡の寸法は、最適には約1ミクロン直径で、一般的には5ミクロンより小さい直径であるべきである。
【0024】
しかし、装置の多くのこれとは別の実施の形態が存在しており、それらは、特に、気泡形成を刺激するための手段及びその形態に関して、本発明の範囲内に含まれることが認識される。例えば、装置は、多数の分離室及びスクラバーユニットを有しても良く、気泡形成を刺激するための任意の適切な手段が使用可能であることが重要である。
【0025】
図2において、同様な形態は、同様な番号により指示されており、図2に示すように、装置50は、2つの段階51,52を具備可能であり、各段階51,52は、並行して作動し且つスクラバーユニット8に流体接続する、一対の分離室7を有する。第1の段階51の分離室7は、50及び60mの間の水深に設置されており、その一方で第2の段階52の分離室7は、15及び20mの間の水深に設置される。第1の段階51のスクラバー8は、図1の実施の形態の説明で記載されたプラットフォーム15にガスを供給する。しかし、第1の段階51の各分離室7の流体出口21は、第2の段階52のそれぞれの分離室7に流体接続しており、各パイプ内の「第2の段階52の」超音波発信器30の列は、各段階51,52の分離室7の中間にある。
【0026】
第2の段階52は、図1を参照して記載された実施の形態における装置と同じ状態で作動する。従って、その運転は、再度詳細に記載される必要は無いと考えられる。
【0027】
第2の段階は、単一段階の45%までメタン回収を増大し、その一方で、分離室からの水を水面まで逃がす必要なしで、処理方法の運転を継続するのに十分な動力を提供することが分かる。このことにより、大気への温室効果ガスの排出を回避するという環境に優しいだけではなく、更に資源がより良好に保存されることが分かる。前記2つの段階の処理方法は、水から83%のメタンの回収が可能であると計算される一方で、回収されたメタンから生じるエネルギの2%だけが、装置の運転に必要である。
【0028】
高度に効率的で且つ環境に優しい装置がこのように、本発明により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、水本体内に設置された溶解ガスの分離のための装置の第1の実施の形態の概要図である。
【図2】図2は、その様な装置の第2の実施の形態の概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水本体からの溶解ガスの分離のための装置において、
前記ガスは、前記水本体の下部に集中されており、前記水本体は、分離室と流れにおいて連絡する出口と入口を有する、供給パイプを具備しており、前記分離室は、分離されたガスと水をそれぞれ排出するためのガス出口及び水出口を有しており、更に
気泡の形成を刺激するための手段が、前記供給パイプに関連することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記気泡の形成を刺激するための手段は、電気デバイスを具備することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電気デバイスは、少なくとも1つの超音波発信器を具備することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記電気デバイスは、複数の超音波発信器を具備することを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記超音波発信器は、前記供給パイプの長さに沿って部分的に間隔を開けて配置されることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記気泡の形成を刺激するための手段は、機械デバイスを具備することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記供給パイプは、その出口に隣接して、実質的に垂直で且つ180度で曲げられることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記分離室は、前記水本体の水面の下に位置するように形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ガス出口はスクラバーユニットに流体接続することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記水出口は、前記供給パイプの入口から離れた位置において排出することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
溶解ガスを含む水の処理方法において、この方法は、
入口及び出口を有するチューブを位置決めする位置決め手順であって、水中において、前記出口の下に前記入口が位置決めされる、位置決め手順と、
前記チューブ内の水内において気泡の形成を刺激して、前記チューブ内において水の上方向の流れを引き起こすための少なくとも1つの装置を使用する使用手順と、
を具備することを特徴とする方法。
【請求項12】
少なくとも1つの電気デバイスを使用して、気泡の形成を刺激する手順を具備することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電気デバイスは超音波発信器であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの機械デバイスを使用して、気泡の形成を刺激する手順を具備することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
複数のデバイスは、前記チューブの長さの少なくとも一部に沿って間隔を開けて配置されることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
水本体からの溶解ガスの分離方法において、その様なガスが前記水本体の下部に集中しており、
この方法は、
前記水本体において、入口を有する供給パイプを設置する設置手順であって、前記水本体の底付近の前記入口と、前記水本体の水面の下に設置された分離室と流れにおいて連絡する出口とを具備しており、前記入口が前記出口の下に位置決めされる、設置手順と、
前記供給パイプ内において気泡の形成を刺激して、水とガスとを前記分離室内へ上方向に流れさせる、刺激手順と、
前記分離室内の水を、前記分離室から外へ水出口を通り移動可能にして更に前記分離室内のガスを前記分離室から外へガス出口を通り移動可能にする、手順と、
を具備することを特徴とする方法。
【請求項17】
少なくとも1つの電気デバイスを使用して、気泡の形成を刺激する手順を具備することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電気デバイスは超音波発信器であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの機械デバイスを使用して、気泡の形成を刺激する手順を具備することを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−503309(P2007−503309A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530650(P2006−530650)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001559
【国際公開番号】WO2004/103913
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505432773)
【Fターム(参考)】