説明

溶融ガラスの送出及び精製システム

供給溶融ガラスを精製して送出する方法及び装置は、供給ガラスを溶融装置内で溶融し、溶融ガラスのストリームを排出する段階を含む。精製セクションは、溶融装置によって排出された溶融ガラスを精製し、溶融ガラスをガラス成形装置に下流側に送出するために設けられる。精製セクションは、溶融ガラスのストリームと接触及び非接触状態になる移動をし、ガラス成形装置を溶融ガラスのストリームと接続及び非接続にするように取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は溶融ガラスの精製に関し、より詳細には、下流側のガラス成形装置への供給溶融ガラスの精製及び送出のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスを溶融するために液中燃焼を使用することは、ガラス製造業において公知である。液中燃焼において、燃焼ガスがガラスの溶融プールの表面下に注入され、溶融物を介して上方に浸透することが可能になる。このような手法の利点は、加熱される材料が燃焼ガスと緊密に接触し、これによって直接的で効率的な熱交換速度が得られることである。別の利点は、溶融物中へのガスの注入が高度の撹拌を生じさせることであり、これは、溶融プロセスにおいて有利とすることができる。
【0003】
しかしながら、液中燃焼プロセスは、大容積のガスを溶融ガラス中に注入し、低密度の泡状ガラスを生じさせる。従って、下流側のガラス成形装置への供給溶融ガラスを精製及び送出するための改良された方法及びシステムの必要性が当該技術分野においてある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の全体としての発明の概念は、供給溶融ガラスを精製して、ガラス成形装置に下流側に送出するための改良された方法及びシステムを含む。本方法は、溶融装置において供給ガラスを溶融する段階と、溶融ガラスのストリームを排出する段階とを含む。精製セクションは、溶融装置によって排出された溶融ガラスを精製し、溶融ガラスをガラス成形装置に下流側に送出するために設けられる。精製セクションは、溶融ガラスのストリームと接触及び非接触になるように移動され、ガラス成形装置を溶融ガラスのストリームと接続及び非接続にする。
【0005】
別の実施形態において、本方法は、溶融装置において供給ガラスを溶融して溶融ガラスを提供する段階を含み、溶融プロセスは溶融ガラス内部にガス状介在物を生じさせる。精製セクションは、ガス状介在物を有する溶融ガラスを受入れて溶融ガラスを精製するために設けられる。ガス状介在物を有する溶融ガラスのストリームが溶融装置から排出される。ガス状介在物を有する溶融ガラスのストリームが精製され、これにより高均質性のガス状介在物を有する溶融ガラスから低均質性のガス状介在物を有する溶融ガラスの範囲にわたる勾配が確立される。
【0006】
本発明はまた、供給溶融ガラスを精製して、ガラス成形装置に下流側に送出するための改良された装置に関する。本装置は、供給溶融ガラスを生成するための溶融装置を含む。溶融装置は、溶融ガラスのストリームを溶融装置から排出するように構成された排出スパウトを含む。精製セクションは、溶融ガラスを受入れて精製し、ガラス成形装置に下流側に送出するように構成される。精製セクションは、溶融ガラスのストリームと接触及び非接触状態になる移動をするように取付けられる。その結果、精製セクションが溶融ガラスのストリームと接触すると、溶融ガラスは精製セクションを通過して移動し、精製セクションが溶融ガラスのストリームと非接触になると、溶融ガラスは精製セクションをバイパスする。
【0007】
別の実施形態において、本装置は、ガス状介在物を有する供給溶融ガラスを生成する溶融装置を含む。溶融装置は、ガス状介在物を有する溶融ガラスのストリームを排出する排出スパウトを含む。精製セクションは、ガス状介在物を有する溶融ガラスのストリームを受入れて溶融ガラスを精製するように構成され、これにより高均質性のガス状介在物を有する溶融ガラスから低均質性のガス状介在物を有する溶融ガラスに及ぶ勾配が確立される。精製セクションは更に、低均質性のガス状介在物を有する溶融ガラスをガラス成形装置に下流側に送出するように構成される。
【0008】
本発明の様々な目的及び利点は、当業者には、添付図面を参照しながら以下の例示的な実施形態の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】1つの例示的な実施形態による、溶融装置からガラス成形装置に供給溶融ガラスを送出するシステムの側面断面立面図である。
【図2】溶融装置から排出された溶融ガラスのストリームを受ける位置に精製セクションを移動する前の、図1に示された精製セクションの側面断面立面図である。
【図3】溶融装置から排出された溶融ガラスのストリームを受ける位置にある、図1に示した精製セクションの側面断面立面図である。
【図4】図2及び図3に示した精製セクションの送出トレイの平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで本発明の基本原理の理解を促進する目的で、図面に示され且つ以下で説明される例示的な実施形態を参照する。しかしながら、これによって本発明の範囲がどのような限定も受けるものではないことは理解される。本発明は、本発明が関係する技術分野の当業者に通常想起されるような、例示の装置におけるあらゆる変更及び更なる修正並びに本発明の基本原理の別の応用を含む。更にまた、記載の例示的な実施形態は、本明細書において当業者が本発明を実施できるようにするために選択された。
【0011】
特に別の定めのない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において本発明の説明で用いた専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定することを意図していない。本発明及び添付の請求項の記載で使用する単数形態は、文脈で別途明確に示していない限り、複数形も含むことが意図される。
【0012】
別途指示されていない限り、本明細書及び請求項において使用される分子量及び反応条件などのような成分及び特性の量を表す全ての数字は、用語「約(about)」によって全ての場合で修飾されていると理解すべきである。その結果、別途指定のない限り、本明細書及び請求項において記載された数量特性は、本発明の実施形態において得ることが求められた所望の特性に応じて変わる可能性のある近似値である。本発明の広い範囲を記載した数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載した数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、あらゆる数値は、これらそれぞれの測定値において見出される誤差に必然的に起因する一定の誤差を本質的に包含している。
【0013】
ここで図面を参照すると、1つの例示的な実施形態による、ガラス製品を成形するためのガラス成形装置60に対して供給溶融ガラスを溶融装置12から下流側に送出するシステム10が図1に示されている。ガラスウール又はガラス補強材の製造のための細いガラス繊維を連続生産するための繊維化装置が、例示的な実施形態において概略図で示されているが、上述のように、ガラス形成装置60は、ガラス製品の形成に適切なあらゆる装置とすることができる。上述のように、システム10は、供給溶融ガラスを下流側のガラス成形装置60に送出するよう構成される。あらゆる好適な組成のガラスバッチ材料を溶融ガラスを生成するために使用できる点を理解されたい。
【0014】
1つの例示的な実施形態において、ガラスバッチは、繊維化プロセスから製品を形成するのに使用される種類のガラスのような、従来のガラスを遙かに上回る連続又は過渡的供用温度にて機能し又は安定状態を保持(例えば、溶融又は結晶化しない)できる高温ガラスである。高温ガラスバッチ組成は、多くの場合、高濃度のSiO2及び/又はAl23を含有し、これは、ガラスバッチを従来のプロセスによって溶融することが極めて困難になる。限定ではなく例証として、繊維化に好適な他のガラス組成は、ZrO2、TiO2、MgO2、CaO、又は鉄酸化物の有意な量を含有することができ、その各々は、例えば、高い引張強さ又は引張係数など、ガラス繊維に特定の望ましい特性をもたらす。他の例示的な実施形態において、ガラスバッチ材料は、平坦ガラス製品、ガラス器具製品、ミネラルウール製品、又は他の何らかのガラス関連製品の形成に適切なあらゆる組成物とすることができる。しかしながら、システム10は、ガラス形成装置60への溶融ガラスの送出に関して以下で具体的に記述されており、本明細書で用いる用語「溶融ガラス」は、本発明のシステム10により送出できるあらゆるガラス化可能材料を含む点を理解されたい。
【0015】
最初に考慮すべき事項として、所望のガラス製品を生成するのに十分な溶融ガラスの密度が確立されており、この密度は「所望密度」と称される。一部のガラス製品においては、ガス状介在物の存在は望ましくない。例えば、多量のガス状介在物を含有する(例えば泡沫状の)供給溶融ガラスは、比較的低い密度を有し、結果として低い引張り強さ及び引張係数を有するガラス繊維をもたらすことになる。更に、或る種のガラス繊維形成工程においては、ガラス中の大きな気泡の存在は、形成される繊維の破断を生じさせ、これにより製造効率が低下する。比較的低密度を示す未精製状態の供給溶融ガラス(例えば、過剰な量のガス状介在物を有する)は、一般的におよそ40容積%を超えるガスからなることができることが分かった。従って、ガス状介在物を実質的に除去することによってより低密度の溶融ガラスを処理又は精製し、その結果、およそ10容積%未満からなるより高密度の供給溶融ガラスをもたらすことが望ましいとすることができる。一部の例示的な実施形態において、例えば、ガラスがおよそ5容積%未満で0.3容積%ほどの少ないガスからなる程度まで、溶融ガラスを更に精製することができる。
【0016】
一般的には、溶融ガラスのストリーム17は、溶融装置12から溶融装置スパウト16を経由して精製セクション20に排出される。精製セクション20は、溶融ガラスを精製して該溶融ガラスを下流側のガラス成形装置60に送出するように構成される。精製セクション20は、溶融装置スパウト16から切り離され、溶融装置スパウト16から排出された溶融ガラスのストリーム17と接触及び非接触状態になる移動をするように取付けることができる。この構成は、溶融ガラスのストリーム17と接触させる精製セクション20の位置決めの前に、流動溶融ガラスの開始及び溶融装置スパウト16からの十分な流量状態の確立を可能にする。
【0017】
溶融装置12は、溶融ガラスの連続供給を可能にするのに好適なあらゆる装置とすることができる。例えば、図示の実施形態において、溶融装置12は液中燃焼プロセスを組み込んでいるが、これは必須ではない。液中燃焼プロセスは、従来の方法に比べて、混合の強化、高い剪断力、及び液中燃焼から高温ガラス溶融物へのより直接的な熱伝達を可能にすることができる。液中燃焼のプロセスは通常、ガラスバッチ材料の迅速且つ完全な溶融をもたらし、一方で溶融ガラス中の温度勾配は最小限にされる。その成果、全体的により効率的なプロセスであり、繊維化プロセスから形成されるガラス製品を製造するのに好適な高温ガラスバッチを効果的に溶融させる能力が得られる。
【0018】
しかしながら、溶融ガラスへの大量のガスの注入が過度に多くのガス状介在物を有する溶融ガラスを生じさせるような、液中燃焼の潜在的な欠点が生じる可能性がある。このようなガラスは通常、ガラス内に存在するガス状介在物の量を削減するために、ガラス成形装置60への送出前に後続の精製を必要とする。当業者には明らかになるように、本明細書で説明された例示的な実施形態は、供給溶融ガラスを連続して精製し、溶融装置スパウト16から下流側のガラス成形装置60に送出するためのシステム10を提供する。
【0019】
図2及び図3に示すように、精製セクション20は、これによって内部キャビティ41を形成する上向きコンテナとすることができる。内部キャビティ41は、上流壁42及び下流壁43、2つの側壁(図示せず)、及び床面44によって定められ、全てが適切な耐火材料で作製されている。床面44は、実質的に水平な平面に沿って平坦であり、前方壁42、43及び側壁(図示せず)もまた平坦であるが、実質的に垂直な平面に沿っている。精製セクション20は、精製セクション20全体を囲む外側断熱シェル45を含むことができる。外側断熱シェル45は、精製セクション20からの伝導及び放射熱損失を最小限にするための適切な高温断熱材料で形成することができる。
【0020】
精製セクション20の内部キャビティ41は、異なる流量及び入力温度の組み合わせで精製するためのガラスの十分な滞留時間を提供するのに適切な長さ及び幅を有することができる。上流壁42と下流壁43との間で測定した内部キャビティ41の長さはまた、溶融ガラスによって製造されるガラス製品の種類のような他の要因に応じて変えることができる。限定ではなく例証として、内部キャビティ41は、ガラス強化製品の製造に使用されることになる溶融ガラスの精製において、長さがおよそ2.2メートル(7フィート3インチ)及び幅が0.3メートルを有することができる。しかしながら、ガラスウール製品の形成に使用されることになる溶融ガラスについては、通常は精製の必要性が少ない。従って、滞留時間及び内部キャビティ41の長さは、ガラス強化製品について上述した実施例よりも比較的短くなる可能性がある。
【0021】
精製セクション20は、外側断熱シェル45において形成された供給開口部46を含むことができる。供給開口部46は、上流壁42に接近して設置されるが、内部キャビティ41に沿った他の場所に位置付けることもできる。供給開口部46は上方に面し、内部キャビティ41内に入る溶融ガラスのストリーム17を受けるように適合される。しかしながら、供給開口部46は、溶融ガラスのストリーム17を受けるのに適切なあらゆる開口部として具現化することができる。図示のように、熱損失を抑制して供給開口部46から出る熱量を低減するために、外側断熱シェル45の蓋部分51を片持ちにし、供給開口部46の上に延在させることができる。
【0022】
精製セクション20はまた、排出開口部47を含むことができる。排出開口部47は、下流壁43によって形成され、排出開口部47がオーバーフロースパウトとして機能するよう構成されるようにすることができる。この構成は、精製セクション20が内部キャビティ41内で溶融ガラスの適正なレベルを維持することを可能にし、これにより精製セクション20に送入されている溶融ガラスの流れと整合させるように精製セクション20からの溶融ガラスの流出を制御するより複雑な方法の必要性が排除される。しかしながら、排出開口部47は、例えば、調整可能ブッシングと溶融ガラスの排出速度を監視するセンサとを使用することにより、精製セクション20から供給溶融ガラスを排出するのに好適なあらゆる開口部として具現化することができる。排出開口部47から出る熱量を低減するために、外側断熱シェル45の蓋部分52を片持ちにし、排出開口部47の上に延在させることができる。
【0023】
内部キャビティ41は、精製セクション20の長さによって定められた縦軸53に対して連続した2つの主要ゾーン48及び49を有することができる。上流又は精製ゾーンである第1のゾーンでは、溶融ガラスは比較的低密度であり(例えば、高均質性のガス状介在物)、下流又は送出ゾーンである第2のゾーン49では、溶融ガラスは所望密度、或いは少なくともより高い密度(例えば、低均質性のガス状介在物)が達成される。
【0024】
第1のゾーン48と第2のゾーン49との間の移行部は、スキマーブロック50によって定められる。スキマーブロック50は、溶融ガラス中に下方に延びて、高均質性のガス状介在物(例えば、比較的低密度)を有する溶融ガラスが下流に移動するのを防ぐように構成される。図示のように、スキマーブロック50は、外側断熱シェル45の天井部分によって支持することができ、或いは、精製セクション20の側壁(図示せず)によって支持することができる。スキマーブロック50は、溶融ガラス内のある深さまで延びて、高均質性のガス状介在物を有する溶融ガラスが下流に移動するのを防ぐのに好適な形状及び寸法を得ることができる。例えば、スキマーブロック50は、縦軸53に沿った約7.9センチメートル(3インチ)の厚みを有することができ、溶融ガラス内におよそ15.24センチメートル(6インチ)下方に延びて、下流壁43からおよそ0.6メートル(2フィート)に位置付けることができることが分かっている。スキマーブロックの下端と精製チャンネルの床面との間の好適な高さは、約2インチ(5cm)から約3インチ(7.9cm)の範囲内にある。このような寸法は必須ではなく、所望の用途に合わせて修正できることを十分に理解されたい。更にまた、スキマーブロック50は、適切な耐火材料で形成することができ、或いは、目的とする用途に好適な他の何れかの材料で形成することができる。また、2つ以上のスキマーブロックを使用することもできる。
【0025】
溶融ガラスが精製セクション20を通過して移動するときに該溶融ガラス加熱するために、精製セクション20内に熱源(図示せず)を設けることができる。熱源は、限定ではないが、酸素-燃料バーナー、空気-燃料バーナー、又は電気抵抗素子を挙げることができ、これらの各々は当該技術分野で公知である。以下で更に説明するように、熱源は、精製セクション20内部にある溶融ガラスの粘度を低下させるように構成され、これにより精製プロセスが促進される。
【0026】
溶融装置12及び精製セクション20の外側断熱シェル45の厚みによって生じる物理的干渉に起因して、精製セクション20の供給開口部46は、溶融装置スパウト16の直ぐ下に位置付けることができないことが想起される。従って、精製セクション20は運搬トレイ(デリバリートレイ)30を含むことができる。運搬トレイ30は、溶融装置スパウト16と供給開口部46との中間に位置付けられ、精製セクション20によって支持することができるが、送出トレイ30は、あらゆる好適な手段で支持できる。例えば、例示的な実施形態において図示された送出トレイ30は、外側断熱シェル45の水平上面54上に位置づけられる。送出トレイ30は、溶融装置スパウト16から排出された溶融ガラスのストリーム17を受けて、溶融ガラスを精製セクション20の供給開口部46に最小限の熱損失で水平方向に移動できるように構成される。代替の実施形態において、溶融ガラスのストリーム17は、送出トレイ30を必要とせずに、精製セクション20の供給開口部46に直接流れ込むように構成できる点は理解されたい。
【0027】
図4に示すように、送出トレイ30は、開放面55を有する内部スペース31を定めることができる。送出トレイ30によって定められた開放面55は、精製セクション20に向かって下流側に面することができる。例えば、送出トレイ30は、上流壁32、2つの側壁33、及び床面34を含むことができ、全て適切な耐火材料で作製される。床面34は、実質的に水平な平面に沿って平坦であり、上流壁32及び側壁33も平坦であるが、実質的に垂直な平面に沿っている。これらの壁に対して他の構成を使用してもよい。内部スペース31の開放面55は、上流壁32の下流側の2つの側壁33によって定められ、溶融ガラスが送出トレイ30の縁部を流出し精製セクション20に入ることが可能となる。任意選択的に、2つの側壁33の一部は互いに向かって内向きに角度を付けることができ、これにより内部スペース31の開放面55が制限される。代替の実施形態において、送出トレイ30によって定められる開放面55は、オーバーフロースパウトを有するより閉鎖された内部スペース31を形成するために、上流壁32及び2つの側壁33の垂直高さよりも低い垂直高さを有する下流壁(図示せず)を含むことができる。
【0028】
送出トレイ30の一部分は片持ちにされ、精製セクション20の供給開口部46の上に延在するようにすることができる。この構成は、溶融ガラスが送出トレイ30から凝固ガラスの層を覆って精製セクション20に流れ込むときに、供給開口部46から出る熱を溶融ガラスに伝達することによって精製セクション20からの熱排出を再捕捉する。また、精製セクション20からの熱は、送出トレイ30内のガラスの好ましくない凝固を防ぐために送出トレイ30の床面34の温度を維持するのに役立つことができる。上述のように、外側断熱シェル45の一部分は、溶融ガラスが送出トレイ30に沿って水平に移動するときの溶融ガラスからの放射熱損失を低減させるために、送出トレイ30の上に延在することができる。
【0029】
図2及び図3を再び参照すると、精製セクション20は、溶融装置スパウト16から排出される溶融ガラスのストリーム17に接触及び非接触状態になる移動をするように取付けることができる。精製セクション20は、全体的に参照符号70で表されるフレーム組立体によって支持することができる。フレーム組立体70は、図1において矢印56で示されるように、精製セクション20が溶融装置12に対して水平方向に選択的に移動できるように適切な支持を精製セクション20に与えるように構成される。フレーム組立体70は、該フレーム組立体70に回転可能に取付けられた複数のホイール72を含むことができる。複数のホイール72は、軌道74のセット又は同様のものの上で移動するように取り付けることができるが、軌道74のセット上へのホイール72の取り付けは必須ではない。代替として、フレーム組立体70は、限定ではないが、コンベアシステム又は複数のローラーを含む、あらゆる好適な方式で水平移動するように取り付けることができる。フレーム組立体70は、例えばチェーン及びスプロケット構成に適合されたモーター(図示せず)のような、フレーム組立体70の選択的移動を可能にするのに好適なあらゆる機構を含むことができる。フレーム組立体72はまた、例えばブレーキ組立体(図示せず)のような、その移動を制限する機構を含むことができる。
【0030】
図示のように、フレーム組立体70は、縦軸53に沿って精製セクション20を移動するように構成される。しかしながら、精製セクション20は、縦軸53に直角な経路に沿うことを含む、溶融装置12に対してあらゆる方向で移動するように取付けることができる点も理解されたい。更に、精製セクション20は、本発明の範囲から逸脱することなく、垂直方向に移動するように取付けることができる。
【0031】
ここで、本発明に従って供給溶融ガラスを下流側のガラス形成装置60に送出する方法を説明する。固体状態の供給ガラスバッチ材料が溶融装置12に搬送される。液中燃焼プロセスを用いて、溶融装置12は、ガラスバッチ材料に熱を伝達し、これによりガラスバッチを溶融して溶融ガラスを形成する。溶融装置に提供される図示されない他の熱源を利用してもよいことを理解されたい。溶融ガラスのストリーム17が、溶融装置12から溶融装置スパウト16を経由して排出される。熔融炉スパウト16から排出された溶融ガラスのストリーム17は、液中燃焼プロセスからのガス状介在物を包含し、従って、ガラス形成装置60に向けて下流側に送出する前に溶融ガラスを精製することが望ましい。
【0032】
上述のように、精製セクション20は、溶融装置スパウト16から排出された溶融ガラスのストリーム17と接触及び非接触状態になる移動をするように取付けられる。図2に示すように、精製セクション20は、最初は溶融ガラスのストリーム17と非接触状態で位置決めされる。この配置は、精製セクション20への溶融ガラスの送出の前に、溶融装置スパウト16からの溶融ガラスの流れを開始させ、且つ閾値又は十分な流量条件を確立できるようにする。この十分な流量は、溶融装置スパウト16から排出される所定流量の溶融ガラスの安定した流れであり、システム10を通過する溶融ガラスの連続した自由な流れを可能にすることができる。十分な流量を確保するため、溶融装置スパウト16から排出される溶融ガラスのストリーム17が検出又は測定され、十分な流量条件が確実に達成されるようにすることができる。流量を検出する方法は、液体の流量を測定するあらゆる適切な方法とすることができる。例えば、図1に示された任意選択的なスキャナ57を使用して、溶融ガラスのストリーム17の流量を測定することができる。精製セクション20は、溶融ガラスのストリーム17と非接触状態で位置決めされるが、オーバーフローコレクタ80は、溶融装置スパウト16から排出されている溶融ガラスのストリーム17を受けるように所定位置に配置することができる。オーバーフローコレクタ80は、溶融ガラスのストリーム17を受けるのに好適なあらゆる装置とすることができる。
【0033】
溶融ガラスの十分な流量が達成されると、図3に示すように、精製セクション20は、溶融装置12に向けて水平方向に移動されて、溶融装置スパウト12から排出されている溶融ガラスのストリーム17と接触する。これにより、溶融ガラスが精製セクション20内に移動して、精製及び後続の下流側のガラス成形装置60への送出が可能になる。
【0034】
精製セクション20が、溶融ガラスのストリーム17と接触して位置決めされると、溶融ガラスは送出トレイ30に流れ込むことが可能になる。送出トレイ30は、最小限の熱損失で、供給溶融ガラスを水平方向に移動させて精製セクション20に溶融ガラスを送出すように構成される。送出トレイ30に流れ込む溶融ガラスが蓄積し、内部スペース31を部分的に充填する。溶融ガラスが、送出トレイ30の内部スペース31に入ると、溶融ガラスの層が内部スペース31の内部表面に沿って固化又は凝固する。この固化ガラスの層(図示せず)は、溶融装置スパウト16から送出トレイ30に流れ込む溶融ガラスの直接衝突から送出トレイ30の耐火材料を保護し、これにより耐火材料の浸食を最小限にする。固化ガラスの層(図示せず)はまた、溶融ガラスが送出トレイ30に沿って水平方向に移動するときに流れる溶融ガラスのための更なる断熱層を提供することができ、これによりシステム10から失われる熱を最小限にする。次いで供給溶融ガラスは、開放面55から下流側縁部を越えて精製セクション20の供給開口部46に流れ込む。
【0035】
溶融ガラスが、開放面55から送出トレイ30の下流側縁部を越えて流れ出て、精製セクション20に入ると、溶融ガラスは、供給開口部46から出る熱に曝され、従って、精製セクション20からの熱を再捕捉する。この熱伝達は、溶融ガラスが溶融装置スパウト16から送出トレイ30に送出されるときに溶融ガラスから失われる熱を部分的に補う。この熱の再捕捉は、システム10を通過するガラスの移動を損なう可能性のある、溶融ガラスの粘度の増大を防ぐのに役立つ。
【0036】
上記のように、精製セクション20は、耐火材料でライニングされた内部キャビティ41を定めることができる。精製セクション20内部の溶融ガラスのレベルは、図3において水平破線Yによって表される。溶融ガラスに熱を伝達してその粘度を低下させ、溶融ガラス内部のガス状介在物が増大した速度で溶融ガラスの表面まで上昇できるようにするために、熱源(図示せず)が設けられる。ガス状介在物は、溶融ガラスの表面まで上昇し、溶融ガラスが精製セクション20の第1のゾーン48の長さを下って移動するにつれて漸次的に放出される。スキマーブロック50は、溶融ガラスの表面に沿って位置する高均質性のガス状介在物(例えば、泡沫状)を含有する溶融ガラスが精製セクション20の第2のゾーン49に下流側に移動するのを阻止するように構成される。ガス状介在物が溶融ガラスから放出されるにつれて、溶融ガラスの密度が増大し、内部キャビティ41の底部に沈下する。所望密度にまで精製された溶融ガラスは、スキマーブロック50の真下を通過して精製セクション20の第2のゾーン49に入ることが可能になる。
【0037】
精製セクション20は、内部キャビティ41の長さに沿って溶融ガラスの密度勾配を確立するように機能することを十分に理解されたい。この勾配は、高均質性のガス状介在物(少なくとも20容積%のガス)を有する低密度溶融ガラスから、低均質性のガス状介在物(約10容積%未満のガス)を有する高密度の溶融ガラスにまで及ぶことができる。1つの例示的な実施形態において、この勾配は、約40%のガスに達する高均質性のガス状介在物から約5%未満のガスに達する低均質性のガス状介在物にまで拡がる。別の例示的な実施形態において、低均質性のガス状介在物は、約2容積%未満に達する。ガラス成形プロセスが許容可能なガス状介在物の量は、成形プロセスの性質に依存し、強化材を作製するプロセスは、ウール繊維を作製するプロセスよりも一般的に許容度が低い。更に、一部の成形プロセスは、ガス状介在物の実質的に全てが比較的小さなサイズのものである限り、より多くの量のガス状介在物を許容する。
【0038】
上記のように、所望密度まで十分に精製された溶融ガラスは、スキナーブロック50の直ぐ下から第2のゾーン49に入る。溶融ガラスのレベルが、指示レベルYに達すると、排出開口部47は、精製供給溶融ガラスを精製セクション20から前床61内に排出する。溶融ガラスは、溶融ガラスが精製セクション20に供給される流量に等しい流量で精製セクション20から排出される。精製セクション20内部の溶融ガラスの指示レベルYは、このようにして維持される。次いで、精製セクション20から排出された供給溶融ガラスは、前炉61によって下流側のガラス成形装置60に更に送出される。
【0039】
特手の実施形態の上記の説明は例証として与えられている。所与の開示内容から、当業者であれば全体としての発明の概念を理解するだけでなく、開示された装置及び方法に対する様々な変更及び修正を明確に分かるであろう。従って、全てのこのような変更及び修正は、本明細書で説明され請求項に記載された全体としての発明の概念及びそのあらゆる均等物の技術的思想及び範囲内にあるものとして包含することが求められる。
【符号の説明】
【0040】
10 システム
12 溶融装置
16 溶融装置スパウト
17 溶融ガラスのストリーム
20 精製セクション
57 スキャナ
60 ガラス形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを精製して送出する方法であって、
供給ガラスを溶融装置内で溶融する段階と、
前記溶融装置から溶融ガラスのストリームを排出する段階と、
前記溶融装置によって排出された溶融ガラスを精製し、且つこの溶融ガラスをガラス成形装置に向けて下流側に送出するように形成され、前記溶融ガラスのストリームと接触及び非接触にする移動をするように取付けられた精製セクションを提供する段階と、
前記精製セクションを前記溶融ガラスのストリームと接触及び非接触にするように移動させ、前記ガラス形成装置を前記溶融ガラスのストリームと接続及び非接続にする段階と、を含む、方法。
【請求項2】
前記精製セクションを前記溶融ガラスのストリームに接触するように移動させる段階の前に、前記溶融装置から排出される前記溶融ガラスのストリームの予め決められた流量を達成させる段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融装置から排出される前記溶融ガラスのストリームの流量を検出する段階を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記精製セクションが前記溶融ガラスのストリームと非接触状態に位置決めされているときに、前記溶融装置から排出された前記溶融ガラスのストリームをオーバーフローコレクタによって収集する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記精製セクションが送出トレイを含み、該送出トレイは、前記溶融装置から排出される前記溶融ガラスのストリームを受けて、前記精製セクションに前記溶融ガラスのストリームを送出するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶融ガラスを精製して送出する方法であって、
溶融ガラスを提供するように溶融装置内で供給ガラスを溶融する段階であって、溶融プロセスによって前記溶融ガラス内部にガス状介在物を生じさせる、前記溶融する段階と、
前記ガス状介在物を有する前記溶融ガラスを受入れて前記溶融ガラスを精製するよう構成された精製セクションを提供する段階と、
前記ガス状介在物を有する前記溶融ガラスのストリームを前記溶融装置から前記精製セクション内に排出する段階と、
前記ガス状介在物を有する前記溶融ガラスを精製し、高均質性の前記ガス状介在物を有する溶融ガラスから低均質性の前記ガス状介在物を有する溶融ガラスの範囲にわたる勾配を確立する段階と、
を含む、方法。
【請求項7】
前記精製セクション内部に支持され前記溶融ガラス中に下向きに延在するスキマーブロックによって、低均質性の前記ガス状介在物を有する前記溶融ガラスを高均質性の前記ガス状介在物を有する前記溶融ガラスから分離する段階を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記精製セクション内の溶融ガラスに熱を伝達し、その粘度を低下させて泡合体及び成長を促進させ、これにより前記溶融ガラス内部のガス状介在物を増大した速度で表面まで上昇することを可能にする段階を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記勾配が、およそ40容積%を超えるガスを有する溶融ガラスからおよそ10容積%未満のガスを有する溶融ガラスの範囲にわたる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
溶融ガラスを精製して送出する装置であって、
溶融ガラスのストリームを排出するように構成された排出スパウトを有し、供給溶融ガラスを生成するための溶融装置と、
前記溶融ガラスを受入れて精製し、前記溶融ガラスをガラス形成装置に向けて下流側に送出するように構成された精製セクションと、
を備え、前記精製セクションは、前記溶融ガラスのストリームと接触及び非接触状態になる移動をするように取付けられ、これにより前記精製セクションが前記溶融ガラスのストリームと接触しているときに前記溶融ガラスが前記精製セクションを通過して移動し、前記精製セクションが前記溶融ガラスのストリームと非接触状態のときに前記溶融ガラスが前記精製セクションをバイパスする、ことを特徴とする装置。
【請求項11】
前記溶融ガラスのストリームと接触及び非接触状態になる移動をするように前記精製セクションに取り付けられた送出トレイを更に備え、前記送出トレイが、前記溶融装置から前記溶融ガラスのストリームを受入れて前記溶融ガラスを前記精製セクションに向けて下流側に送出するように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記送出トレイが、溶融ガラスを前記送出トレイから前記精製セクションの上向きに面する供給開口部に排出するように構成されたオーバーフロースパウトを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記送出トレイの一部分が、前記精製セクションの供給開口部の上に片持ちにされ、前記供給開口部から出る熱を再捕捉するようになっている、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記精製セクションが、前記溶融装置から排出される前記溶融ガラスのストリームと接触及び非接触状態になる前記精製セクションの移動をさせるように構成された可動フレーム組立体上に支持される、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記フレーム組立体が、前記溶融装置に対する水平方向の移動をするように取り付けられる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記フレーム組立体が、軌道システムに沿った移動をするように取り付けられる、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
溶融ガラスを精製して送出する装置であって、
ガス状介在物を有する供給溶融ガラスを生成する溶融装置であって、前記溶融装置が前記ガス状介在物を有する前記溶融ガラスのストリームを排出するように構成された排出スパウトを含む、前記溶融装置と、
前記ガス状介在物を有する前記溶融ガラスのストリームを受入れて、高均質性の前記ガス状介在物を有する溶融ガラスから低均質性の前記ガス状介在物を有する溶融ガラスの範囲にわたる勾配を確立するように、前記溶融ガラスを精製するように構成され、前記低均質性のガス状介在物を有する前記溶融ガラスをガラス成形装置に向けて下流側に送出するように更に構成された精製セクションと、
を備える、装置。
【請求項18】
前記精製セクションが、およそ2.2メートルの長さ及び0.3メートルの幅の内部キャビティを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記精製セクションが、前記溶融ガラス内に下向きに延びるスキマーブロックによって分離された第1のゾーン及び第2のゾーンを含み、前記スキマーブロックが、前記高均質性のガス状介在物を有する溶融ガラスが前記第2のゾーンに流入するのを阻止するように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記勾配が、およそ40容積%を超えるガスを有する溶融ガラスからおよそ10容積%未満のガスを有する溶融ガラスの範囲にわたる、請求項17に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−508255(P2013−508255A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535352(P2012−535352)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/053464
【国際公開番号】WO2011/050123
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508076428)オーシーヴィー インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー (43)