説明

溶融亜鉛めっき鋼板及び製造方法

本発明はめっき層と鋼基板との付着性が高い溶融亜鉛めっき鋼板を提供し、溶融亜鉛めっき鋼板の製造分野に属する。この溶融亜鉛めっき鋼板の鋼基板と亜鉛めっき層との間のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度Al/Znの比率は0.9〜1.2である。めっき層中にГ相を形成せず、δ相が薄く、ξ相が少なく、めっき層の大部分がη相からなり、めっき層の付着性、引っかき抵抗性、耐摩耗性を著しく向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板製造分野に属し、めっき層の付着性が高い溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融亜鉛めっき鋼板は、良い耐食性、優れる塗布性及びきれいな外観を持つので、家電用板、車のボディー用板などの製造業で広く応用されている。めっき膜の付着性及び塗布した後の耐食性を確保するように、溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層に対する要求は、めっき層と基板との付着力が強く、打ち抜きによる変形する際に脱落せず、また、良い溶接性、耐食性及びリン化性を持つべきである。しかし、溶融亜鉛めっき鋼板は、実際に応用される打ち抜き加工過程においてめっき層の粉化や剥離などの問題があり、めっき層の破壊、更にめっき層の耐食性及び付着性に影響を及ぼす。
【0003】
中国特許(公開番号CN17011130A 、公開日2005年11月23日)及び日本特許(特開2002-4019)、(特開2002-4020)中には、溶融亜鉛めっき鋼板の表面粗さを制御することによって打ち抜く時の金型への接着を抑制する方法、及び深絞り性を改善する方法が開示された。しかし、このような溶融亜鉛めっき鋼板について詳しく研究する際、以下のことを発見した。金型との摩擦距離が短い時、金型との接着の効果を制御できるが、摩擦距離が長ければ長いほどその効果が小さく、摩擦条件の違いによって改善効果が得られない場合がある。また、上記の方案では、このような粗さを向上する方法として、仕上げローラーの条件、圧延条件などを制御する方法が挙げられたが。実際に、亜鉛はローラー上に塊のように堆積し易いので、溶融亜鉛めっき鋼板の表面に所定の粗さを安定に形成し難い。また、日本特許(特許第2993404号)中には、母材にP:0.010〜0.10重量%、Si:0.05〜0.20重量%含有され、且つSi≧Pように満足するPを添加した鋼材を使用する時、めっき層の被膜の付着性を向上する技術が提案された。しかし、その他のP未添加の鋼板に対して、この方法は必ずしもめっき層の被膜の付着性を向上させることができるものではない。日本特許(特開2001-335908)には以下の技術が公開された。母材はC:0.05〜0.25重量%の低炭素鋼で、且つSi、Alを適当に添加した高強度残留オーステナイト鋼を使用する時、鋼にTi、Nbなどの固定結晶境界Cを適量に添加することによって、コーティング界面の強度を向上する。しかし、これは残留オーステナイト鋼に関する技術であり、残留オーステナイト相はない高強度鋼板に対して必ずしも十分な性能を得ることができない問題がある。
【0004】
亜鉛めっき鋼板のめっき層の付着性は、鋼基板の成分、プロセス条件の影響を受ける他に、主にめっき層の成分と組織構造の影響を受ける。粉化や剥離はめっき層の化学成分及び相構造と関連し、めっき層の粉化量はめっき層中の鉄の含有量の増加に伴って増加する。鋼板と亜鉛層との間は順次にΓ、δ、ζ及びη相であり、Γ相はFe5Zn21を元とする中間金属相であり、δ相はFeZn7を元とする中間金属相であり、ζ相はFeZn13を元とする中間金属相であり、η相は純亜鉛からなる微量の鉄を含有する固溶体である。めっき層の粉化はΓ相の両側の界面に極めて小さいひびを形成するものであり、拡大した後に全体のめっき層を渡って形成される。Γ層の厚みは1.0μmを超える時、粉化量はΓ層の厚みの増加に伴って増加し、めっき層中の鉄の含有量を約11%に制御して、厚いΓ層の形成を阻害できる。従って、粉化防止性能に影響を及ぼす主な要因はδ相(微結晶構造)とζ相(柱状構造)である。δ相は硬くて脆く、成形性に不利であり、ζ相の硬度は鋼基板と相当し、変形する時、めっき層中の残留応力を釈放することに有利になるが、ζ相の靱性が高く、金型に接着しやすく、めっき層表面に欠陥となり、又は剥離を生ずる。従って、めっき層中のζ相とδ相とは適当な割合を持つ時、めっき層は良い成形性を持つこととなる。めっきの表面ξ相が消失して、不均一の緻密のδ相が現れない時、めっき組織は最適なめっき組織である。
【0005】
製造時において、時々亜鉛溶液にアルミニウムを加えて亜鉛めっき層の靱性を向上させる時、溶融亜鉛めっき鋼板の鋼基板と亜鉛層との間のFe-Al中間遷移層中のアルミニウムの含有量は、めっき層の接着強度を評定する一つの重要な基準である。しかし、Fe-Al中間遷移層に高いアルミニウム量を含有することは、良いめっき層の接着力を得るための必要条件であるが、十分条件ではない。亜鉛はFe-Al中間遷移層中で不飽和溶解となり、且つ少ない亜鉛固溶体が形成される時であれば、その層は接着の役割を果たし、及びFeとZnの元素の拡散を防止する役割を果たすことができ、且つ、少量のδ相とζ相を有する薄いFe-Zn合金層を形成するからである。この時は、めっき層の付着性が良い。若しZnのFe-Al中間遷移層中の溶解度は過飽和となり、且つ亜鉛リッチな固溶体が生成される時であれば、中間層中のAlの絶対含有量は減少しないが、Alのパーセント含有量は著しく減少する。同時に、亜鉛の過飽和となるので、Fe-Al中間遷移層の均一性を破壊する。これにより、中間層に接着の役割、FeとZnの元素の拡散を防止する役割を喪失させ、且つ、多くのδ相とζ相を有する厚いFe-Zn合金層を形成して、亜鉛層の付着力を同時に弱くさせる。
【0006】
従来技術では、鋼板の成分を変更し、又は溶融亜鉛めっき鋼板の表面の粗さを制御することによって表面に被膜を形成させる技術でめっき層と鋼基板との付着性を改善するが、良い効果が得られなかった。現状においては、めっき層の成分と組織構造を制御することによってめっき層と鋼基板との付着性を改善する方法はまだない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする第1の課題は、めっき層と鋼基板との付着性が高い溶融亜鉛めっき鋼板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該技術課題を解決するために用いられる技術方案は以下の通りである。前記溶融亜鉛めっき鋼板の鋼基板と亜鉛めっき層との間のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度Al/Znの比率は0.9〜1.2である。
【0009】
更に、本発明は、めっき層と鋼基板との付着性が高いと共に、めっき層の組織構造が優れた溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。前記溶融亜鉛めっき鋼板の鋼基板と亜鉛めっき層との間のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度Al/Znの比率は0.9〜1.2であり、亜鉛めっき層の結晶粒子配向Zn(002)のピーク強度は25000〜35000ctsである。
【0010】
本発明が解決しょうとする第2の課題は、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供するものである。当該方法で作られる鋼基板と亜鉛めっき層との間のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度Al/Znの比率は0.9〜1.2である。
【0011】
上記の技術課題を解決するために用いられる技術方案は以下の通りである。鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は455〜485℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.16〜0.25%であり、ユニット速度は100〜120m/min、冷却区間の高スパン温度は210〜245℃であり、鋼板の冷却率は0〜90%である。
【0012】
次は好ましい技術方案の1つ目である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は455〜465℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.16〜0.18%であり、ユニット速度は100〜110m/min、冷却区間の高スパン温度は210〜220℃であり、鋼板の冷却率は0%である。
【0013】
次は好ましい技術方案の2つ目である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は475〜485℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、ユニット速度は100〜110m/min、鋼板の冷却率は0%であり、冷却区間の高スパン温度は235〜245℃であり、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.16≦Al≦0.18%である。
【0014】
次は好ましい技術方案の3つ目である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は475〜485℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.18<Al≦0.21%であり、ユニット速度は100〜110m/min、鋼板の冷却率は0%であり、冷却区間の高スパン温度は235〜245℃である。
【0015】
次は好ましい技術方案の4つ目である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は455〜465℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.16〜0.18%であり、ユニット速度は110〜120m/minであり、鋼板は亜鉛釜から出た後、風冷で強制冷却を行い、冷却率は70〜90%である(冷風ノズルを全部閉鎖した冷却率は0%である自然冷却に対して、冷風ノズルを開く割合は70〜90%である)。
【0016】
次は好ましい技術方案の5つ目である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は455〜465℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.21〜0.25%であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、ユニット速度は100〜110m/minであり、冷却率は0%であり、冷却区間の高スパン温度は235〜245℃である。
【0017】
また更に、前記亜鉛めっきを行う鋼板の成分は重量パーセンテージで計算すると、C:0.03〜0.07%、Mn:0.01〜0.03%、Si:0.19〜0.30%、P:0.006〜0.019%、S: 0.009~0.020%、Al:0.02〜0.07を含有し、その他はFeである。
【0018】
前記亜鉛めっきを行う鋼板の厚みは0.8mmであり、亜鉛めっきを行った後の亜鉛層の重量は180〜195g/m2であり、亜鉛層表面をSiO2で不動態化する。
【発明の効果】
【0019】
(1)本発明の溶融亜鉛めっきのプロセス条件は、鋼板の基材と亜鉛めっき層との間のFe-Al中間遷移層はFe、Zn間の相互拡散を阻止でき、Fe-Zn合金層の形成を抑制させ、めっき層中にГ相を形成せず、δ相が薄く、ξ相が少なく、めっき層の大部分がη相からなる。溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層の付着性を向上し、亜鉛層の亜鉛粉の脱落、剥離などの現象を減少する。
【0020】
(2)本発明の溶融亜鉛めっきのプロセス条件は、溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層の結晶粒子配向を最適化させ、めっき層の引っかき抵抗性、耐摩耗性及び付着性を著しく向上する。
【0021】
(3)本発明の溶融亜鉛めっきの製造プロセスは簡単で、低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実験例1のめっき層の断面の電子プローブ(EPMA1600型)による表面波スペクトルの走査クロマトグラムである。
【図2】実験例1と比較例6、11のめっき層の走査型電子顕微鏡(SEM)による断面形態であり、(a)は実験例1、(b)は比較例6、(c)は比較例11である。
【図3】光学金属相顕微鏡(OLYMPUS BX51型)の倍率が100である金属相写真であり、(a)は実験例1で、(b)は比較例6である。
【図4】実験例1と比較例6、11のめっき層のFe-Al中間遷移層のAlとZn元素の原子パーセンテージ変化の略図である。
【図5】は実験例1〜5と比較例6〜10、11〜15のめっき層のFe-Al中間遷移層中(図1に示す)の2〜4位置のAlとZn元素の平均原子パーセンテージ変化の略図である。
【図6】実験例1と比較例6、11のめっき層中の鋼基板から亜鉛層表面の各位置(図1に示す)までのFe、ZnとAl元素の重量パーセンテージ変化及びめっき層中の金属相組織であり、(a)は実験例1で、(b)は比較例6で、(c)は比較例11である。
【図7】実験例1と比較例6、11の典型的なXRD回折図形であり、(a)は実験例1、(b)は比較例6で、(c)は比較例11である。
【図8】U字形の曲げ試料の形状の略図であり、1は曲げ試験機の取り付け具、2は曲げ試料である。
【図9】実験例1〜5の試料と比較例6〜10、11〜15の試料の亜鉛粉脱落量の平均値及び偏差である。
【図10】実験例1と比較例6、11のめっき層の引っかき痕の中間位置の典型的な輪郭測量図であり、1は実験例1で、2は比較例6で、3は比較例11である。
【図11】実験例1と比較例6、11のめっき層の往復スライド摩耗試験を行った後にSEMで観察される摩耗痕の形態である。
【図12】実験例16と比較例21のめっき層のFe-Al中間遷移層のAlとZn元素の原子パーセンテージ変化である。
【図13】実験例16〜20と比較例21〜25のめっき層のFe-Al中間遷移層のAlとZn元素の平均原子パーセンテージである。
【図14】実験例16と比較例21のめっき層中のFe、AlとZn元素の重量パーセンテージ変化及び金属相組織であり、(a)は実験例16で、(b)は比較例21である。
【図15】実験例16と比較例21の典型的なXRD回折図形であり、(a)は実験例16で、(b)は比較例21である。
【図16】実験例16〜20の試料と比較例21〜25の試料の亜鉛粉脱落量の平均値及び偏差である。
【図17】実験例16と比較例21のめっき層の引っかき痕の中間位置の輪郭測量の結果であり、1は比較例21で、2は実験例16である。
【図18】実験例21と26及び比較例26と30の典型的なXRD回折図形であり、(a)は実験例21で、(b)は実験例26で、(c)は比較例26で、(d)は比較例30であり、縦座標は回折強度で、横座標は2θ/°である。
【図19】実験例21〜30の試料、比較例26〜30及び比較例31〜35の試料の亜鉛粉脱落量の平均値及び偏差である。
【図20】実験例21と26及び比較例26と30のめっき層の引っかき痕の中間位置の輪郭測量の結果であり、1は実験例21で、2は実験例26で、3は比較例26で、4は比較例30である。
【図21】実験例31と比較例36のめっき層のFe-Al中間遷移層のAlとZn元素の原子パーセンテージ変化である。
【図22】実験例31〜35と比較例36〜40のめっき層のFe-Al中間遷移層のAlとZn元素の平均原子パーセンテージである。
【図23】実験例31と比較例36のめっき層中のFe、AlとZn元素の重量パーセンテージ変化及び金属相組織であり、(a)は実験例31で、(b)は比較例36である。
【図24】実験例31と比較例36の典型的なXRD回折図形であり、(a)は実験例31、(b)は比較例36である。
【図25】実験例31〜35の試料及び比較例36〜40の試料の亜鉛粉脱落量の平均値及び偏差である。
【図26】実験例31及び比較例36のめっき層の引っかき痕の中間位置の輪郭測量の結果であり、1は比較例36で、2は実験例31である。
【図27】実験例36と比較例41のめっき層のFe-Al中間遷移層のAlとZn元素の原子パーセンテージ変化である。
【図28】実験例36〜42と比較例41〜47のめっき層のFe-Al中間遷移層のAlとZn元素の平均原子パーセンテージである。
【図29】実験例36と比較例41のめっき層のFe、ZnとAl元素の重量パーセンテージ変化及び金属相組織であり、(a)は実験例36の重量パーセンテージ変化で、(b)は実験例36の金属相組織で、(c)は比較例41の重量パーセンテージ変化で、(d)は比較例41の金属相組織である。
【図30】実験例36〜42の試料及び比較例41〜47の試料の亜鉛粉脱落量の平均値及び偏差である。
【図31】実験例36及び比較例41のめっき層の引っかき痕の中間位置の輪郭測量の結果であり、1は実験例36で、2は比較例41である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次は具体的な実施形態によって実施例を併せて本発明について更に説明する。実施例はただ本発明を説明するためであり、如何なる方式で本発明を限定するものではない。
【0024】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板基材と亜鉛めっき層との間のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度Al/Znの比率は0.9〜1.2である。更に、亜鉛めっき層の結晶粒子配向Zn(002)のピーク強度は25000〜35000ctsである。
【0025】
溶融亜鉛めっき鋼板の具体的な製造方法は以下の通りである。
鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は455〜485℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.16〜0.25%であり、ユニット速度は100〜120m/minであり、冷却区間の高スパン温度は210〜245℃であり、鋼板の冷却率は0〜90%である。めっきを行った鋼板は亜鉛釜から垂直で上向きに冷却塔の第一転向ローラーまで引き出されて、これは予冷区間(一般に15〜30m)という。亜鉛めっき層を第一転向ローラーまでに凝固させるために、エアーナイフの上方に設置される一列の冷風ノズルのみによって、冷風を吹き出すことによって強制冷却を行う。帯状の鋼板は第一転向ローラーを経て冷却塔の水平冷却区間に進入して、これは高スパン区間という。高スパン区間に4組の送風機を設置して温度を調節する。高スパン温度は鋼板を搬送して高スパン区間に進入する時の温度である。
【0026】
次は好ましい技術方案の1つ目である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は455〜465℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.16〜0.18%であり、ユニット速度は100〜110m/min、冷却区間の高スパン温度は210〜220℃であり、鋼板の冷却率は0%である。当該溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、溶融亜鉛めっきのプロセス中の冷却区間の高スパン温度によって、Fe-Al中間遷移層中のAl/Znの割合を制御して、Fe-Zn合金層の形成を抑制して、めっき層の付着性を向上する。その中、前記鋼板の冷却速度は0%であるとは、予冷区間に冷風ノズルをすべて閉鎖し、熱輻射及び対流のみによって自然冷却する。当該方法で作られる鋼板の基材と亜鉛めっき層との間のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度Al/Znの比率は0.9〜1.2である。
【0027】
次は好ましい技術方案の2つ目である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は475〜485℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、ユニット速度は100〜110m/min、鋼板の冷却率は0%であり、冷却区間の高スパン温度は235〜245℃であり、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.16≦Al≦0.18%である。当該方法で作られる鋼板の基材と亜鉛めっき層との間のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度Al/Znの比率は0.9〜1.2であり、且つ、亜鉛めっき層の結晶粒子配向Zn(002)のピーク強度は25000〜35000ctsである。
【0028】
次は好ましい技術方案の3つ目である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は475〜485℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.18<Al≦0.21%であり、ユニット速度は100〜110m/min、鋼板の冷却率は0%であり、冷却区間の高スパン温度は235〜245℃である。当該方法で作られる鋼板の基材と亜鉛めっき層との間のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度Al/Znの比率は0.9〜1.2であり、且つ、亜鉛めっき層の結晶粒子配向Zn(002)のピーク強度は25000〜35000ctsである。
【0029】
上記の二つの溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、溶融亜鉛めっきのプロセス中の鋼板のめっき浴に入る温度によって、Fe-Al中間遷移層中のAl/Znの割合を制御して、Fe-Zn合金層の形成を抑制して、めっき層の最適な結晶粒子配向を調整して、めっき層の付着性を向上する。
【0030】
次は好ましい技術方案の4つ目である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は455〜465℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.16〜0.18%であり、ユニット速度は110〜120m/minであり、鋼板は亜鉛釜から出た後、風冷で強制冷却を行い、冷却率は70〜90%である(冷風ノズルを全部閉鎖して冷却率は0%である自然冷却に対して、冷風ノズルを開くの割合は70〜90%である)。当該方法で作られる鋼板の基材と亜鉛めっき層との間のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度Al/Znの比率は0.9〜1.2であり、且つ、亜鉛めっき層の結晶粒子配向Zn(002)のピーク強度は25000〜35000ctsである。当該溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、溶融亜鉛めっきのプロセス中の鋼板が亜鉛釜を出る冷却速度によって、Fe-Al中間遷移層中のAl/Znの割合を制御して、Fe-Zn合金層の形成を抑制して、めっき層の最適な結晶粒子配向を調整して、めっき層の付着性を向上する。
【0031】
次は好ましい技術方案の5つ目である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。鋼板は酸洗、アニールをした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は455〜465℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のAlの重量パーセンテージ含有量は0.21〜0.25%であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%より小さく、ユニット速度は100〜110m/minであり、冷却率は0%であり、冷却区間の高スパン温度は235〜245℃である。当該方法で作られる鋼板の基材と亜鉛めっき層との間のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度Al/Znの比率は0.9〜1.2であり、且つ、亜鉛めっき層の結晶粒子配向Zn(002)のピーク強度は25000〜35000ctsである。当該溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、溶融亜鉛めっきのプロセス中のめっき浴中のアルミニウムの含有量によって、Fe-Al中間遷移層中のAl/Znの割合を制御して、Fe-Zn合金層の形成を抑制して、めっき層の最適な結晶粒子配向を調整して、めっき層の付着性を向上する。
【0032】
上記の亜鉛めっきを行う鋼板の成分は重量パーセンテージで計算すると、C:0.03〜0.07%、Mn:0.01〜0.03%、Si:0.19〜0.30%、P:0.006〜0.019%、S: 0.009~0.020%、Al:0.02〜0.07%を含有し、その他はFeである。
【0033】
前記亜鉛めっきを行う鋼板の厚みは0.8mmであり、亜鉛めっきを行った後の亜鉛層の重量は180〜195g/m2であり、亜鉛層表面をSiO2で不動態化する。
【実施例1】
【0034】
溶融亜鉛めっき鋼板の実験例1〜5及び比較例6〜15の作製及び性能測定
厚みは0.8mmで、成分はC:0.03〜0.07%、Mn:0.01〜0.03%、Si:0.19〜0.30%、P:0.006〜0.019%、S: 0.009~0.020%、Al:0.02〜0.07%、その他はFe及び避けられない不純物であるDX51D冷間圧延鋼板は酸洗、アニールされた後、表1に列挙される各溶融亜鉛めっきのプロセス条件下で溶融亜鉛めっき作業を行い、亜鉛釜中のめっき浴の初期温度は450℃であり、めっき浴中のFeの含有量は0.03%より小さく、Alの含有量は0.160〜0.180%であり、ユニット速度は100m/min、冷却区間の高スパン温度は240℃であり、冷却率は0%である。めっき浴に入る時の鋼板温度を475〜485℃に調整して、溶融亜鉛めっき作業を行い、1〜5号の実験例の試料が得られた。めっき浴に入る時の鋼板温度をそれぞれ455〜465℃と440〜450℃に調整して、溶融亜鉛めっき作業を行い、6〜10号と11〜15号の比較例の試料が得られた。亜鉛層の重量を180〜195g/m2に制御し、亜鉛層表面をSiO2で不動態化する。
【0035】
【表1】

【0036】
溶融亜鉛めっき鋼板の実験例1〜5及び比較例6〜15の性能測定:
(1)めっき層のFe-Al中間遷移層、断面形態及び組織構造
めっき層のFe-Al中間遷移層の厚みは数十から数百ナノメートルまでの間であり、通常な金属相試料作製方法によってこの中間層を表示し難い。本発明の金属相試料作製は傾斜封入試料を用いて、封入試料材料はベークライト粉である。三枚の溶融亜鉛めっき鋼板の試料を502強力接着剤で接着させ、水平面との傾斜角度が30°を呈する傾斜ブロックに並べて放置して、そして、熱封入プレス機で封入を行い、研削と研磨をした鋼板の可視範囲は約1倍を増大し、各めっき層と鋼基板との界面間のFe-Al中間遷移層はすべて明らかに表示できる。
【0037】
めっき層のFe-Al中間遷移層中の各主な元素の原子及び重量パーセンテージは電子プローブ(EPMA1600型)による表面波スペクトルの走査、及びスポット組成分析で測定を行う。EPMAに使用される試料はすべて傾斜封入の未エッチングの金属相の試料を用いる。EPMAの表面波スペクトルの走査結果により、あらゆる実験例と比較例はすべて図1に示す浅黒いバンド、即ちFe-Al中間遷移層を有し、両縁はそれぞれ鋼基板と亜鉛層である。実験例と比較例の各めっき層の断面を鋼基板から亜鉛層表面まで等間隔でスペクトルスポット組成分析を行い、具体的な位置は図1に示し、その中の0は鋼基板位置、1〜5はFe-Al中間遷移層位置、6〜12は亜鉛層位置である。
【0038】
めっき層の典型的な金属相試料はEPMAの測定による得られたEPMA線走査クロマトグラムで表示され、Al元素は中間層における含有量が最も高く、Zn元素は鋼基板からめっき層表面まで次第に増加し、Fe元素は鋼基板からめっき層表面まで次第に減少する。
【0039】
図2は実験例1、比較例6及び比較例11の金属相試料を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した断面形態である。傾斜封入試料を用いるので、各亜鉛層と鋼基板との間の厚みの数十から数百ナノメートルまでのFe-Al中間遷移層をすべて明らかに表示でき、緻密な結晶粒子の形態を呈する。傾斜封入試料であるので、Fe-Al中間遷移層の幅及び全体のめっき層の幅を比較しない。図中の実験例1は微細の均一な純亜鉛の樹枝状結晶を有する断面形状である。比較例6のめっき層中に多いひびがあり、それらの間に硬くて脆い組織が形成されることを表明し、加工において亜鉛層が極めて脱落し易い。比較例11の中間層とめっき層との間に既にひびが形成され、めっき層は既に接着性を喪失した。
【0040】
金属相試料は研削及び研磨をして、2%のニタル(nital)のエッチング溶液でエッチングを行った後、高性能の光学金属相顕微鏡(OLYMPUS BX51型)で金属相の撮影を行い、対物レンズの拡大倍率は100倍である。図3は実験例と比較例の金属相の写真である。図3(a)からめっき層中にFe-Al中間遷移層、薄いδ相、及び少量の分散したξ相があり、めっき層の大部分は純亜鉛層η相からなる。めっき層の付着性を測定することによって、この実験例(1)のめっき層は良い付着性を有する。若しZnのFe-Al中間遷移層中の溶解度は過飽和となり、且つジンクリッチ固溶体が生成される時であれば、その時、中間層中のAlの絶対含有量は減少しないが、Alのパーセント含有量は著しく減少する。同時に、亜鉛の過飽和となるので、Fe-Al中間遷移層の均一性を破壊する。これにより、中間層に接着の役割、及び拡散を防止する役割を喪失させ、且つ、厚いFe-Al合金層が形成され、δ相とξ相は増加され、亜鉛層の付着力を同時に悪くする。図3(b)に示す比較例(6)の金属相写真のように、Fe-Al中間遷移層が形成されるが、Alのパーセント含有量は減少し、Fe-Zn合金層を増加させ、厚いδ相とξ相が形成され、純亜鉛層η相が薄く、亜鉛層の付着力は実験例1に対して著しく弱くなる。
【0041】
図4は実験例1と比較例6、11のめっき層のFe-Al中間遷移層のAlとZn元素の原子パーセンテージ変化の略図である。図5は実験例1及び比較例6と11のめっき層のFe-Al中間遷移層中の2〜4位置のAlとZn元素の平均原子パーセンテージである。表2には実験例と比較例の各めっき層のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度及びAl/Znの比率が列挙される。以上の結果から、実験例のFe-Al中間遷移層中のAl元素の原子パーセント含有量は比較例より大きく、Zn元素の原子パーセント含有量は比較例とほぼ同じであるが、実験例のAl/Znの比率は0.9より大きく、比較例のAl/Znの比率は0.358〜0.553の間である。
【0042】
めっき層組織中の各相の元素の重量パーセンテージはEPMAのスペクトルスポット組成分析によって測定を行う。めっき層の各相のFe、Zn元素の重量パーセンテージによって、また、めっき組織の金属相写真を照合して、めっき層中に存在するδ相、ζ相及びη相を判断できる。図6は実験例1(図6a)、及び比較例6(図6b)と比較例11(図6c)のめっき層中の鋼基板から亜鉛層表面までの各位置のFe、ZnとAl元素の重量パーセンテージ変化及びめっき層中の金属相組織を示す。表2には亜鉛層の7〜12の六つの位置に測定される相組織の類別によって実験例と比較例の各めっき層の相組織が列挙される。表2から実験例のめっき層中のδ相とξ相とも少なく、純亜鉛層η相が多い。比較例のめっき層中に厚いδ相とξ相を有し、純亜鉛層η相が薄い。
【0043】
付着性が良い溶融亜鉛めっき鋼板に対して、鋼基板とめっき層との間に高いAl含有量を含有するFe-Al中間遷移層が形成され、且つ、亜鉛はFe- Al中間遷移層中に不飽和溶解となり、且つ少ない亜鉛固溶体が形成される時であれば、その層は接着の役割、及びFe-Znの元素の拡散を防止する役割を果たすことができ、且つ薄いFe-Zn合金層を形成し、δ相とξ相は減少し、その時、めっき層の付着性が良い。
【0044】
【表2】

【0045】
(2)めっき層の結晶粒子配向
めっき層表面に如何なる処理を行わず、X線回折(XRD)上でそれぞれめっき層に小角X線回折(視射角5°)を行い、めっき層の回折ピーク強度を測定する。実験例1及び比較例6と11のめっき層表面は5°視射角時の典型的な回折図形を図7に示す。表2には各試料のZn(002)ピークの回折強度が列挙される。表2から鋼板のめっき浴に入る温度を475〜485℃に上昇した後、実験例の試料1〜5のめっき層の結晶粒子はZn(002)方向の最適な配向を呈し、Zn(002)ピークの回折強度は著しく増強し、すべて34000ctsより大きい。鋼板のめっき浴に入る温度は≦465℃である比較例6〜15では、Zn(002)ピークの回折強度は14000〜17000ctsの間である。
【0046】
(3)めっき層の脱落防止性能
U字形曲げ試験によってめっき層の脱落防止性能を検査する。曲げ試験は中国国家基準GB/T 232-1999(金属材料 曲げ試験方法)に基づき行い、試料の作製ではGB/T 2975-1998(鋼及び鋼製品の力学性能の試験試料の位置及び試料作製)を参照する。図8は曲げ試料の最終形状を示す。試料はワイヤー切断機で加工して、試験前にエタノールで試料の表面を拭き取り、そして、すべての試料の曲げ箇所の内外表面に同じ大きさの透明粘着テープを貼り付け、試料は粘着テープと共に曲げ試験機上で曲げ加工を行い、粘着テープによって曲げ箇所に剥落した亜鉛粉を収集して、各めっき層の亜鉛粉の脱落量をICP法で測定を行う。図9は実験例と比較例の試料の亜鉛粉脱落量の平均値及び偏差を示し、実験例の試料の亜鉛粉脱落量はすべて比較例の試料の亜鉛粉脱落量より明らかに小さい。表3は下記の基準に基づき実験例と比較例の各試料のめっき層の脱落防止性能を評価する。◎は非常に良い(亜鉛粉の脱落量は≦0.0100mg)。○良い(亜鉛粉の脱落量は≦0.0100〜0.0300mgの間)。△少し良くない(亜鉛粉の脱落量は≦0.0300〜0.0360mgの間)。×悪い(亜鉛粉の脱落量は≧0.0440mg)。
【0047】
(4)引っかき抵抗性
引っかき抵抗性試験は米国のCETR UMT-2型多機能性の摩擦磨耗試験機上で完成し、引っかき抵抗性試験は引っかき試験装置の部分を用いて、引っかき試験の圧力水頭はシャベル形状のダイヤモンドで、頭部の曲率半径は800μmである。引っかき試験は線形増加の荷重方式を用いて、荷重が0.5Nから2Nに増加することを採用する。試験した後、Ambios XP2型の表面形状測定装置で各めっき層の試験した引っかき痕の輪郭の形態を測量する。図10は実験例1及び比較例6と11のめっき層の引っかき痕の中間位置の典型的な輪郭測量結果を示す。図10から実験例1中のめっき層の引っかき痕の深さは、すべて比較例6と11より明らかに小さい。表3は下記の基準に基づき実験例と比較例の各試料のめっき層の引っかき抵抗性を評価する。○は良い(引っかき痕の深さ≦7.00μm)。少し良くない(引っかき痕の深さは7.00〜8.00μmの間である)。悪い(引っかき深さ≧8.00μm)。
【0048】
(4)めっき層の耐磨耗性
めっき層の耐磨耗性試験は米国のCETR UMT-2型多機能性の摩擦磨耗試験機の往復スライド摩擦試験の平台上で完成される。 上方試料(相対する磨耗試料)は直径が10mmのステンレス円球であり、下方試料は熔融亜鉛鋼板である。往復スライド摩擦磨耗試験の試験バラメータは以下の通りである。垂直荷重Fn=2N 、往復変位幅値D=2mm、相対運動速度V=2mm/s、運行時間t=1000s、循環回数N=500。試験した後、Ambios XP2型の表面形状測定装置で各めっき層の試験した磨耗痕の輪郭の形態を測量する。図11は実験例1(図11a)及び比較例6(図11b)と11(図11c)の往復スライド摩耗試験を行った後にSEMで観察される摩耗痕のすべての形態を示す。図11から実験例1(図11a)の磨耗程度は一番軽い。比較例6(図11b)の磨耗幅は増大する。比較例11(図11c)の磨耗痕の幅は最も大きく、損傷は最も酷い。表3には実験例と比較例の各試料を100回摩擦循環した平均摩擦係数が列挙される。下記の基準に基づき磨耗輪郭を評価する。○は良い(磨耗痕の深さ≦8.00μm)。少し良くない(磨耗痕の深さは8.00〜10.00μmの間である)。悪い(磨耗痕深さ≧10.00μm)。
【0049】
(5)めっき層の付着性の総合評価
表3は下記の基準に基づき実験例と比較例の各試料のめっき層の付着性を総合評価する。○良い(良い○の統計数は2個以上、少し良くない△は多くとも1個のみである)。△少し良くない(良い○の統計数は1個、少し良くない△は2個である)。悪い(悪い×の統計数は2個以上、少し良くない△は2個である、悪い×の統計数は1個ある)。
【0050】
【表3】

【0051】
表3の評価結果から、本発明は溶融亜鉛めっきのプロセス過程における鋼板の亜鉛釜に入る温度を475〜485℃に上昇して、他のプロセスを変えない条件下で得られた溶融亜鉛めっき鋼板(実験例1〜5)を従来の鋼板(比較例6〜15)と比較して、めっき層のFe-Al中間遷移層中のAl/Znの比率はすべて0.9より大きく、めっき層中のδ相とξ相とも減少し、純亜鉛層η相は増加する。且つ、実験例(試料1〜5)のめっき層の結晶粒子はZn(002)方向の最適な配向を呈し、Zn(002)ピークの回折強度は著しく増強し、すべて34000ctsより大きい。めっき層の脱落防止性能、引っかき抵抗性及び耐磨耗性は著しく向上し、めっき層と基材との付着性は明らかに改善される。
【0052】
上記の実験例と比較例では、Fe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度の比率を測定すること、及びめっき層中に存在する各相組織、めっき層の結晶粒子の最適な配向、且つ各めっき層を対照する付着性の評価によって以下のことを判断できる。Al/Zn比率は0.9より大きく、且つめっき層中は主にη相であり、めっき層のZn(002)ピークの回折強度は34000ctsより大きい時であれば、めっき層の付着性が良い。
【実施例2】
【0053】
溶融亜鉛めっき鋼板の実験例16〜20及び比較例21〜25の作製及び性能測定
DX1冷間圧延鋼板の厚みは0.8mmで、成分はC:0.03〜0.07%、Mn:0.01〜0.03%、Si:0.19〜0.30%、P:0.006〜0.019%、S:0.009~0.020%、Al:0.02〜0.07%、その他はFe及び避けられない不純物である。DX1冷間圧延鋼板は酸洗、アニールされた後、表4に列挙される溶融亜鉛めっきのプロセス条件下で溶融亜鉛めっき作業を行い、その中、亜鉛釜中のめっき浴の初期温度は450℃であり、めっき浴中のFeの含有量は0.03%より小さく、ユニット速度は100m/min、冷却区間の高スパン温度は240℃であり、冷却率は0%である。めっき浴に入る時の鋼板温度を475℃に調整して、めっき浴中のAlの含有量を0.18%<Al≦0.21%に調整して、溶融亜鉛めっき作業を行い、16〜20号の実験例の試料が得られる。めっき浴に入る時の鋼板温度を460℃に調整して、めっき浴中のAlの含有量を0.16〜0.17%に調整して、溶融亜鉛めっき作業を行い、21〜25号の比較例の試料が得られた。亜鉛層の重量を約180〜195g/m2に制御し、亜鉛層表面をSiO2で不動態化する。
【0054】
【表4】

【0055】
溶融亜鉛めっき鋼板の実験例16 〜20及び比較例21〜25の性能測定:
以下の測定方法及び評価基準はすべて実施例1と同様である。
(1)めっき層のFe-Al中間遷移層及び組織構造
実験例16〜20のめっき層断面の電子プローブ(EPMA1600型)による表面波スペクトルの走査クロマトグラムの結果は、実験例1と同様である(図1を参照)。図12は典型的な実験例16〜20と比較例21〜25のめっき層のFe-Al中間遷移層中のAlとZn元素の原子パーセンテージ変化を示す。図13は実験例16〜20と比較例21〜25のめっき層のFe-Al中間遷移層中の2〜4位置のAlとZn元素の平均原子パーセンテージを示す。表5には実験例16〜20と比較例21〜25の各めっき層のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度及びAl/Znの比率が列挙される。以上の結果から、実験例16〜20のめっき層のFe-Al中間遷移層中のAl元素の原子パーセント含有量は比較例21〜25より極めて大きく、Zn元素の原子パーセント含有量は比較例の各試料と比較して少し増加するが、実験例16〜20のFe-Al中間遷移層中のAl/Znの比率は0.963〜1.134の間で、比較例21〜25のAl/Znの比率は0.421〜0.499の間である。実験例16〜20のAl/Znの比率は比較例21〜25より極めて大きく、且つ上記の実験例1〜5のFe-Al中間遷移層のAl/Zn比率より大きい。
【0056】
図14は実験例16〜20と比較例21のめっき層中のFe、Zn及びAl元素の重量パーセンテージ変化及びめっき層中の金属相組織を示す。表5には実験例16〜20と比較例21〜25の各めっき層の相組織が列挙される。表5から実験例16〜20のめっき層中のδ相とξ相とも少なく、純亜鉛層η相が多い。比較例のめっき層中に厚いδ相とξ相を有し、純亜鉛層η相が薄い。
【0057】
【表5】

【0058】
(2)めっき層の結晶粒子配向
実験例16及び比較例21のめっき層表面は5°視射角時の典型的な回折図形を図15に示す。表5には各試料のZn(002)ピークの回折強度が列挙される。表5から溶融亜鉛めっきのプロセスのめっき浴中のAlの含有量を0.18<Al ≦0.21%に制御した後、実験例16〜20のめっき層の結晶粒子は同様にZn(002)方向の最適な配向を呈し、Zn(002)ピークの回折強度は著しく増強し、すべて24000ctsより大きい。めっき浴中のAlの含有量が0.16〜0.17%に制御される比較例21〜25では、Zn(002)ピークの回折強度は15000cts以下である。
【0059】
(3)めっき層の脱落防止性能
図16は実験例16〜20と比較例21〜25の亜鉛粉脱落量の平均値及び偏差を示す。図16から、めっき浴中のAlの含有量は0.18<Al ≦0.21%である時、実験例16〜20の亜鉛粉脱落量はすべて比較例21〜25より明らかに小さく、且つ上記の実験例1〜6より明らかに小さい。圧延鋼板のめっき浴に入る温度を上昇すると共に、めっき浴中のAlの含有量を増加することによって、更にめっき層の脱落防止性能を向上するに有利になることを明らかになる。
【0060】
(4)引っかき抵抗性
図17は実験例16及び比較例21のめっき層の引っかき痕の中間位置の輪郭測量結果を示す。図17から、めっき浴中のAlの含有量は0.18<Al ≦0.21%である時、実験例16中のめっき層の引っかき痕の深さは比較例21より明らかに小さい。
【0061】
(5)めっき層の耐磨耗性
表6には実験例16〜20と比較例21〜25の各試料を100回摩擦循環した平均摩擦係数が列挙される。
【0062】
(6)めっき層の付着性の総合評価
【0063】
【表6】

【0064】
表6の評価結果から、本発明は溶融亜鉛めっきのプロセス過程における圧延鋼板の亜鉛釜に入る温度を475℃に上昇し、且つめっき浴中のAlの含有量を0.18<Al ≦0.21%に制御して、他のプロセスを変えない条件下で得られた溶融亜鉛めっき鋼板(実験例16〜20)を従来の鋼板(比較例21〜25)と比較して、めっき層のFe-Al中間遷移層中のAl/Znの比率は0.963〜1.134の間で、且つ実験例1〜6より高い。めっき層中のδ相とξ相とも明らかに減少し、純亜鉛層η相は増加する。且つ、最適な配向を呈するZn(002)結晶粒子が形成される。めっき層の脱落防止性能、引っかき抵抗性及び耐磨耗性は著しく向上し、めっき層と基材との付着性は明らかに改善される。
【実施例3】
【0065】
溶融亜鉛めっき鋼板の実験例21〜30及び比較例26〜35の作製
厚みは0.8mmで、成分はC:0.03〜0.07%、Mn:0.01〜0.03%、Si:0.19〜0.30%、P:0.006〜0.019%、S: 0.009~0.020%、Al:0.02〜0.07%、その他はFe及び避けられない不純物であるDX51D冷間圧延鋼板を酸洗、アニールした後、表7に列挙される溶融亜鉛めっきのプロセス条件下で溶融亜鉛めっき作業を行い、その中、亜鉛釜中のめっき浴の温度は450℃であり、めっき浴中のFeの含有量は0.03%より小さく、Alの含有量は0.16〜0.18%で、めっき浴に入る時の鋼板温度は460℃で、ユニット速度は110〜120m/minである。鋼板は亜鉛釜から出た後、風冷で鋼板に強制冷却を行い、冷却率は70〜90%で、21〜30号の実験例の試料が得られる。冷却率を30〜50%に調整した時、26〜30号の比較例の試料が得られる。冷却率を0%(空気自然冷却)に調整した時、31〜35号の比較例の試料が得られる。亜鉛層の重量を約180g/m2に制御し、亜鉛層表面をSiO2で不動態化する。以下の方法によって、めっき層の結晶粒子配向及びめっき層の脱落防止性能、引っかき抵抗性、耐磨耗性などのめっき層の付着性について評価を行う。
【0066】
【表7】

【0067】
溶融亜鉛めっき鋼板の実験例21 〜30及び比較例26〜35の性能測定:
以下の測定方法及び評価基準はすべて実施例1と同様である。
(1)めっき層の結晶粒子配向
実験例21と26及び比較例26と30のめっき層表面は5°視射角時の典型的な回折図形を図18に示す。図18から実験例21と26のめっき層中のZnの最大回折ピークZn(002)の強度は比較例26と30より遥かに高く、Znの最大ピークはZn(101)からZn(002)に転移する。表8には各試料のZn(002)ピークの回折強度が列挙される。表8から冷却率はそれぞれ30〜50%及び0%である比較例と比較して、実験例の冷却率は70〜90%に向上した後、Zn(002)ピークの回折強度は増強され、すべて27000ctsより大きい。めっき層の結晶粒子はZn(002)方向の最適な配向を呈する。
【0068】
(3)めっき層の脱落防止性能
図19は実験例と比較例の試料の亜鉛粉脱落量の平均値及び偏差を示す。実験例の亜鉛粉脱落量はすべて比較例より明らかに小さい。
【0069】
(3)引っかき抵抗性
図20は実験例21と26及び比較例26と30のめっき層の引っかき痕の中間位置の輪郭測量結果を示す。図20から、実験例中のめっき層の引っかき痕の深さは比較例より明らかに小さい。
【0070】
(4)めっき層の耐磨耗性
表8には実験例と比較例の各試料を100回摩擦循環した平均摩擦係数が列挙される。
【0071】
(6)めっき層の付着性の総合評価
【0072】
【表8】

【0073】
表8の評価結果から、本発明は溶融亜鉛めっきのプロセス過程における鋼板の冷却率を70〜90%に向上し、他のプロセスを変えない条件下で得られた溶融亜鉛めっき鋼板(実験例)を従来の鋼板(比較例)と比較して、めっき層の結晶粒子はZn(002)方向の最適な配向を呈する。めっき層の脱落防止性能、引っかき抵抗性及び耐磨耗性は著しく向上し、めっき層と基材との付着性は明らかに改善される。
【実施例4】
【0074】
溶融亜鉛めっき鋼板の実験例31〜35及び比較例36〜40の作製
DX1の冷間圧延鋼板の厚みは0.8mmで、成分はC:0.03〜0.07%、Mn:0.01〜0.03%、Si:0.19〜0.30%、P:0.006〜0.019%、S: 0.009~0.020%、Al:0.02〜0.07%、その他はFe及び避けられない不純物である。DX1冷間圧延鋼板を酸洗、アニールした後、表9に列挙される溶融亜鉛めっきのプロセス条件下で溶融亜鉛めっき作業を行い、その中、亜鉛釜中のめっき浴の初期温度は450℃であり、めっき浴中のFeの含有量は0.03%より小さく、めっき浴に入る時の鋼板温度は460℃で、ユニット速度は100m/minで、冷却区間の高スパン温度は240℃で、冷却率は0%である。めっき浴中のAlの含有量を0.21〜0.25%に調整して溶融亜鉛めっき作業を行い、31〜35号の実験例の試料が得られる。めっき浴中のAlの含有量を0.16〜0.18%に調整して溶融亜鉛めっき作業を行い、36〜40号の比較例の試料が得られる。亜鉛層の重量を約180〜195g/m2に制御し、亜鉛層表面をSiO2で不動態化する。
【0075】
【表9】

【0076】
溶融亜鉛めっき鋼板の実験例31〜35及び比較例36〜40の性能測定:
以下の測定方法及び評価基準はすべて実施例1と同様である。
(1)めっき層のFe-Al中間遷移層及び組織構造
実験例31の典型的なめっき層断面の電子プローブ(EPMA1600型)による表面波スペクトルの走査クロマトグラムの結果は、実験例1と同様である(図1を参照)。図21は典型的な実験例31と比較例36のめっき層のFe-Al中間遷移層中のAlとZn元素の原子パーセンテージ変化を示す。図22は実験例31〜35の試料と比較例36〜40の試料のめっき層のFe-Al中間遷移層中の2〜4位置のAlとZn元素の平均原子パーセンテージを示す。表10には実験例と比較例の各めっき層のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度及びAl/Znの比率が列挙される。以上の結果から、実験例のめっき層のFe-Al中間遷移層中のAl元素の原子パーセント含有量は比較例より極めて大きく、Zn元素の原子パーセント含有量は比較例の各試料と比較して少し増加するが、実験例のAl/Znの比率は0.940〜1.125の間で、比較例のAl/Znの比率は0.421〜0.499の間である。実験例のAl/Znの比率は比較例より極めて大きい。
【0077】
図23は実験例31と比較例36のめっき層中のFe、Zn及びAl元素の重量パーセンテージ変化及びめっき層中の金属相組織を示す。表10には実験例と比較例の各めっき層の相組織が列挙される。表10から実験例のめっき層中のδ相とξ相とも少なく、純亜鉛層η相が多い。比較例のめっき層中に厚いδ相とξ相を有し、純亜鉛層η相が薄い。
【0078】
【表10】

【0079】
(2)めっき層の結晶粒子配向
実験例31及び比較例36のめっき層表面は5°視射角時の典型的な回折図形を図24に示す。表10には各試料のZn(002)ピークの回折強度が列挙される。表10から溶融亜鉛めっきのプロセスのめっき浴中のAlの含有量を0.21〜0.25%に制御した後、実験例試料31〜35のめっき層の結晶粒子はZn(002)方向の最適な配向を呈し、Zn(002)ピークの回折強度は著しく増強し、すべて24000ctsより大きい。めっき浴中のAlの含有量が0.16〜0.18に制御される比較例36〜40では、Zn(002)ピークの回折強度は15000cts以下である。
【0080】
(3)めっき層の脱落防止性能
図25は実験例31〜35と比較例36〜40の亜鉛粉脱落量の平均値及び偏差を示す。図25から、めっき浴中のAlの含有量は0.21〜0.25%である時、実験例31〜35の亜鉛粉脱落量はすべて比較例36〜40より明らかに小さい。
【0081】
(4)引っかき抵抗性
図26は実験例31及び比較例36のめっき層の引っかき痕の中間位置の輪郭測量結果を示す。図26から、めっき浴中のAlの含有量は0.21〜0.25%である時、実験例中のめっき層の引っかき痕の深さは比較例より明らかに小さい。
【0082】
(5)めっき層の耐磨耗性
表11には実験例と比較例の各試料を100回摩擦循環した平均摩擦係数が列挙される。
【0083】
(6)めっき層の付着性の総合評価
【0084】
【表11】

【0085】
表11の評価結果から、本発明は溶融亜鉛めっきのプロセス過程におけるめっき浴中のAlの含有量を0.21〜0.25%に制御して、他のプロセスを変えない条件下で得られた溶融亜鉛めっき鋼板(実験例)を従来の鋼板(比較例)と比較して、めっき層のFe-Al中間遷移層中のAl/Znの比率は0.940〜1.125の間である。めっき層中のδ相とξ相とも減少し、純亜鉛層η相は増加する。且つ、最適な配向を呈するZn(002)結晶粒子が形成される。めっき層の脱落防止性能、引っかき抵抗性及び耐磨耗性は著しく向上し、めっき層と基材との付着性は明らかに改善される。
【実施例5】
【0086】
溶融亜鉛めっき鋼板の実験例36〜42及び比較例41〜47の作製
厚みは0.8mmで、成分はC:0.03〜0.07%、Mn:0.01〜0.03%、Si:0.19〜0.30%、P:0.006〜0.019%、S: 0.009~0.020%、Al:0.02〜0.07%、その他はFe及び不純物であるDX1冷間圧延鋼板を酸洗、アニールした後、表12に列挙される溶融亜鉛めっきのプロセス条件下で溶融亜鉛めっき作業を行い、その中、亜鉛釜中のめっき浴の温度は450℃であり、めっき浴中のFeの含有量は0.03%より小さく、Alの含有量は0.16〜0.18%で、めっき浴に入る時の鋼板温度は460℃で、ユニット速度は100m/minで、冷却率は0%である。冷却区間の高スパン温度を210〜220℃に調整して、36〜42号の実験例の試料が得られる。冷却区間の高スパン温度を240〜260℃に調整して、41〜47号の比較例の試料が得られる。亜鉛層の重量を約180〜195g/m2に制御し、亜鉛層表面をSiO2で不動態化する。
【0087】
【表12】

【0088】
溶融亜鉛めっき鋼板の実験例36〜42及び比較例41〜47の性能測定:
(1)めっき層のFe-Al中間遷移層及び組織構造
実験例36の典型的なめっき層断面の電子プローブ(EPMA1600型)による表面波スペクトルの走査クロマトグラムの結果は、実験例1と同様である(図1を参照)。図27は典型的な実験例36と比較例41のめっき層のFe-Al中間遷移層中のAlとZn元素の原子パーセンテージ変化を示す。図28は実験例36〜42の試料と比較例41〜47の試料のめっき層のFe-Al中間遷移層中の2〜4位置のAlとZn元素の平均原子パーセンテージを示す。表13には実験例と比較例の各めっき層のFe-Al中間遷移層中のAlとZnの原子濃度及びAl/Znの比率が列挙される。以上の結果から、実験例のめっき層のFe-Al中間遷移層中のAl元素の原子パーセント含有量は比較例より大きく、Zn元素の原子パーセント含有量は比較例より小さく、実験例のAl/Znの比率は0.757〜0.884の間で、比較例のAl/Znの比率は0.131〜0.535の間である。実験例のAl/Znの比率は比較例より極めて大きい。
【0089】
図29には実験例36と比較例41のめっき層中のFe、Zn及びAl元素の重量パーセンテージ変化及びめっき層中の金属相組織を示す。表13は実験例と比較例の各めっき層の相組織が列挙される。表10から実験例のめっき層中のδ相とξ相とも少なく、純亜鉛層η相が多い。比較例のめっき層中に厚いδ相とξ相を有し、純亜鉛層η相が薄い。
【0090】
(2)めっき層の脱落防止性能
図30は実験例36〜42と比較例41〜47の亜鉛粉脱落量の平均値及び偏差を示す。図30から、実験例36〜42の亜鉛粉脱落量はすべて比較例41〜47より明らかに小さい。
【0091】
(3)引っかき抵抗性
図31は実験例36及び比較例41のめっき層の引っかき痕の中間位置の輪郭測量結果を示す。図26から、冷却区間高スパン温度を210〜220℃に調整する時、実験例中のめっき層の引っかき痕の深さは比較例より明らかに小さい。
【0092】
(4)めっき層の耐磨耗性
表13には実験例と比較例の各試料を100回摩擦循環した平均摩擦係数が列挙される。
【0093】
(5)めっき層の付着性の総合評価
【0094】
【表13】

【0095】
表13の評価結果から、本発明は溶融亜鉛めっきのプロセス過程における冷却区間の高スパン温度を210〜220℃に制御して、他のプロセスを変えない条件下で得られた溶融亜鉛めっき鋼板(実験例)を従来の鋼板(比較例)と比較して、めっき層のFe-Al中間遷移層中のAl/Znの比率は0.757〜0.884の間である。めっき層中のδ相とξ相とも減少し、純亜鉛層η相は増加する。めっき層の脱落防止性能、引っかき抵抗性及び耐磨耗性は著しく向上し、めっき層と基材との付着性は明らかに改善される。
【図2(a)】

【図2(b)】

【図2(c)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融亜鉛めっき鋼板であって、
鋼基板と亜鉛めっき層との間にFe-Al中間遷移層を有し、前記Fe-Al中間遷移層のAlとZnの原子濃度Al/Znの比率は0.9〜1.2であることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
前記亜鉛めっき層の結晶粒子配向Zn(002)のピーク強度は25000〜35000ctsであることを特徴とする請求項1記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
鋼板を酸洗し、アニールした後、溶融亜鉛めっき作業を行い、前記溶融亜鉛めっき作業では、めっき浴に入れる時の鋼板温度は455〜485℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量%は0.03%以下であり、めっき浴中のAlの重量%は0.16〜0.25%であり、冷却区間の高スパン温度は210〜245℃であり、鋼板の冷却率は0〜90%であること、
を特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項4】
溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入れる時の鋼板温度は455〜465℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量%は0.03%以下であり、めっき浴中のAlの重量%は0.16〜0.18%であり、ユニット速度は100〜110m/min、冷却区間の高スパン温度は210〜220℃であり、鋼板の冷却率は0%であること、
を特徴とする請求項3記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項5】
溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は475〜485℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量%は0.03%以下であり、ユニット速度は100〜110m/min、鋼板の冷却率は0%であり、冷却区間の高スパン温度は235〜245℃であり、めっき浴中のAlの重量%は0.16%以上、0.18%以下であること、
を特徴とする請求項3記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項6】
溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は475〜485℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量%は0.03%以下であり、めっき浴中のAlの重量%は0.18以上、0.21%以下であり、ユニット速度は100〜110m/min、鋼板の冷却率は0%であり、冷却区間の高スパン温度は235〜245℃であること、
を特徴とする請求項3記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項7】
溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は455〜465℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のFeの重量%は0.03%以下であり、めっき浴中のAlの重量%は0.16以上、0.18%以下であり、ユニット速度は110〜120m/minであり、鋼板は亜鉛釜から出た後、風冷で強制冷却を行い、冷却率は70〜90%であること、
を特徴とする請求項3記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
溶融亜鉛めっき作業の過程では、めっき浴に入る時の鋼板温度は455〜465℃であり、亜鉛釜中のめっき温度は450〜460℃であり、めっき浴中のAlの重量%は0.21以上、0.25%以下であり、めっき浴中のFeの重量パーセンテージ含有量は0.03%以下であり、ユニット速度は100〜110m/minであり、鋼板の冷却率は0%であり、冷却区間の高スパン温度は235〜245℃であること、を特徴とする請求項3記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記亜鉛めっきを行う鋼板の成分は重量%で、C:0.03〜0.07%、Mn:0.01〜0.03%、Si:0.19〜0.30%、P:0.006〜0.019%、S: 0.009~0.020%、Al:0.02〜0.07%を含有し、その他はFeである、ことを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記亜鉛めっきを行う鋼板の厚みは0.8mmであることを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記亜鉛めっきを行う鋼板に亜鉛めっきを行った後の亜鉛層の重量は180〜195g/m2であり、亜鉛層表面をSiO2で不動態化することを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

【図8】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図11(c)】
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【図1】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16】
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【図17】
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【図18a】
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【図18b】
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【図18c】
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【図18d】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23a】
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【図23b】
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【図24a】
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【図24b】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29a】
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【図29b】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2011−529527(P2011−529527A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520310(P2011−520310)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/CN2009/073004
【国際公開番号】WO2010/012235
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511023118)パンガン グループ スチール ヴァンディウム アンド チタニウム カンパニー リミテッド (1)
【出願人】(511023129)パンガン グループ リサーチ インスティチュート カンパニー リミテッド (2)
【出願人】(511023130)パンガン グループ パンジフア アイロン アンド スチール リサーチ インスティチュート カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】