説明

溶融加工可能な組成物

溶融加可能なポリマー組成物に関係する溶融加工の問題に対処するための、フッ化ビニリデンを比較的高濃度で含むフッ素化コポリマーを含有するフルオロポリマー加工助剤を使用する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料の溶融加工性を向上させるための組成物に係り、さらに詳しくは、溶融加工可能な熱可塑性炭化水素ポリマーの加工性の向上に適した特定のフルオロポリマー加工助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは、ポリオレフィンなどのポリマー材料の溶融加工における加工助剤としてしばしば使用される。ポリマー材料は、溶融加工の際に、得られる物質に望ましくない欠陥を生じさせるようなある特定の粘弾性を有している。このことは、臨界剪断速度が存在する所定の押出可能なポリマーの押出成形加工において特に認められる。臨界剪断速度とは、それを超えると押出物の表面に溶融欠陥を生じる剪断速度である。溶融欠陥は、押出物表面の粗さとして現れ、一般にメルトフラクチャーと称される。メルトフラクチャーは、主として、ポリマーのレオロジーとポリマーが加工される際の温度および速度との関数である。メルトフラクチャーは、表面光沢がない「鮫肌」の形態をとり、さらに重大になると、押出し方向にほぼ直交する方向の隆起として現れる。より厳しい場合には、押出物に、表面が大きく変形する「連続メルトフラクチャー」を生じることもある。
【0003】
フルオロポリマーは、多くのポリマー材料に対してメルトフラクチャーの発生を抑制することができる。フルオロポリマーは、一般に約2重量%以下の量でポリマー材料に混入される。メルトフラクチャーの問題を解決するために、フルオロポリマーの補助としてある種の添加剤を使用してもよい。ある特定の加工系におけるメルトフラクチャーの発生の防止に一般に必要とされる高価なフルオロポリマーの量を減少させるために、従来から知られる添加剤が、通常、フルオロポリマーと組み合わされる。
【0004】
メルトフラクチャーを生じさせないために必要なフルオロポリマーの量は、メルトフラクチャーを生じさせないために必要な時間と同様、ポリオレフィン、フルオロポリマーの種類、加工装置および加工条件により変化する。ポリオレフィンの加工に関係する企業は、彼らのそれぞれのプロセスで効率を向上させるために、常に、改良されたフルオロポリマーを探し求めている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,855,360号明細書
【特許文献2】米国特許第3,051,677号明細書
【特許文献3】米国特許第3,318,854号明細書
【特許文献4】米国特許第2,968,649号明細書
【特許文献5】米国特許第5,830,947号明細書
【特許文献6】米国特許第5,284,184号明細書
【非特許文献1】ローウェンダール・C(Rauwendaal,C)著、「ポリマー・エクストルージョン」、ハンセン・パブリッシャーズ(Hansen Publishers)、1986年、p.23−48
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱可塑性炭化水素ポリマーの溶融加工に伴う問題を解消する点において、従来の加工助剤よりもより効果的なフルオロポリマー加工助剤に関する。一つの態様では、本発明は、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーおよびフルオロポリマーを含むフルオロポリマー加工助剤である。このフルオロポリマーは、フッ化ビニリデンと少なくとも1種の他のモノマーとの共重合単位を有し、そのフルオロポリマーにおけるフッ化ビニリデンの含有量は65重量%より多い。このフルオロポリマー加工助剤を、熱可塑性炭化水素ポリマーとブレンドして溶融加工可能な組成物を生成することにより、標準加工助剤の系と比較してより少ない量のフルオロポリマー加工助剤で、溶融欠陥のない押出物が得ることができる。溶融加工可能な組成物中のフルオロポリマー加工助剤の含有量は、400ppm以下であることが好ましい。
【0007】
本発明の別の態様では、フルオロポリマー加工助剤は、熱可塑性炭化水素ポリマーとブレンドされて、溶融加工可能な組成物を生成する。一つの好ましい実施形態では、フルオロポリマー加工助剤中のフルオロポリマーは、フッ化ビニリデンと少なくとも1種の他のモノマーとの共重合単位を有する熱可塑性コポリマーであり、フルオロポリマーにおけるフッ化ビニリデン含有量は85重量%より多い。この好ましい実施形態を、溶融加工可能な組成物に組み合わせることにより、押出した際に溶融欠陥のない押出物を得ることができる。
【0008】
本発明の溶融加工可能な組成物は、フィルム、シート、パイプ、ワイヤまたはケーブルなどの製品の製造に使用される。
【0009】
本発明の目的のために、本出願で使用される以下の用語は次のように定義される。
【0010】
「ポリマー加工助剤」とは、例えば、メルトフラクチャーを減少させるなど、ポリマーの加工性を向上させることができる熱可塑性またはエラストマー性フルオロポリマーをいう。
【0011】
「溶融加工可能な組成物」とは、混合物中の少なくとも1種の成分の融点に近い温度条件での加工に耐えられるような組成物または材料をいう。
【0012】
「標準加工助剤系」とは、同一成分、具体的には、60重量%のフッ化ビニリデンと40重量%のヘキサフルオロプロピレンからなるフルオロポリマーを含有する熱可塑性炭化水素ポリマー、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーであって、類似の試験方法、装置および条件によるムーニー粘度(ML1+10、121℃、ASTM DI646)が36であるものをいう。
【0013】
「溶融欠陥」とは、溶融加工可能な組成物の加工中に発生し、押出物に現れる欠陥をいい、例えば、メルトフラクチャー、ダイビルドアップ、化学的ゲル形成または物理的ゲル形成などが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の組成物は、ポリマー材料を溶融加工するときに生じる溶融欠陥を減少させるものである。本発明の目的のためには、溶融加工可能なポリマー材料または組成物は、組成物の少なくとも一部が溶融した状態で加工することが可能なものである。本発明の組成物の加工には、従来から知られる加工法および装置を用いることができる。溶融加工法の例としては、押出成形、射出成形、バッチ混合(batch mixing)および回転成形(rotomolding)が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。本発明は、キャストフィルム押出しまたはインフレーションなどに好ましく適用される。
【0015】
溶融加工可能な組成物は、一般に、1種もしくはそれ以上の溶融加工可能な熱可塑性炭化水素ポリマーおよびフルオロポリマー加工助剤を含む。本発明の目的のためには、フルオロポリマー加工助剤は、フルオロポリマー成分およびポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含む。
【0016】
フルオロポリマー加工助剤が添加される熱可塑性炭化水素ポリマーとしては、従来の溶融加工可能なポリマーが挙げられる。特に好ましいのは、オレフィンの単独重合または共重合で得られる熱可塑性炭化水素ポリマーや、1種以上のオレフィンと、そのようなオレフィンと共重合が可能な1種以上のモノマー、例えば、ビニルアセテートなどのビニルエステル化合物とのコポリマーである。
【0017】
好ましいオレフィンは、一般構造式CH2=CHR(但し、Rは水素またはアルキルラジカルであり、このアルキルラジカルは一般に10個以下、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する)で表されるものである。上記構造に合致する代表的なオレフィンは、(特許文献1)に十分に開示されており、ここにその全体を開示するものである。
【0018】
好ましい熱可塑性炭化水素ポリマーとしては、ポリオレフィン(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP))、ポリオレフィンコポリマー(例えば、エチレン−ブテン、エチレン−オクテン、エチレンビニルアルコールなど)またはこれらの組み合わせが挙げられる。特に好ましいのは、ポリオレフィンである。
【0019】
一般に、熱可塑性炭化水素ポリマーは、通常約30重量%を超える量で溶融加工可能な組成物中に含まれる。当業者は、ポリマー性バインダーの量が、ポリマーのタイプ、加工装置、加工条件および所望の最終生成物などにより変化することを知っている。熱可塑性炭化水素ポリマーは、粉末、ペレット、顆粒または他の押出成形が可能な形態で使用される。
【0020】
本発明に有用なフルオロポリマー加工助剤に含まれるフルオロポリマーは、フッ化ビニリデンと、少なくとも1種の他のモノマーとのコポリマーであり、フルオロポリマー中のフッ化ビニリデンの含有量は、少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも75重量%である。特に好ましい実施形態では、フッ化ビニリデン含有量は、少なくとも85%である。フッ化ビニリデンの特に好ましい含有量では、得られるフルオロポリマーは、一般に、熱可塑性ポリマーであると考えられる。
【0021】
フッ化ビニリデンと組み合わされて本発明のフルオロポリマーを生成するモノマーの例としては、ヘキサフルオロプロピレンなどの他のフッ素化ポリマーまたはプロピレンなどの非フッ素化ポリマーが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。フッ素化ビニリデンと共に使用する好ましいコモノマーは、パーフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびペンタフルオロプロピレンである。特に好ましいのは、(特許文献2)(レックスフォード(Rexford))および(特許文献3)(ホン(Honn)ら)に記載されているようなパーフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンの共重合により得られるフッ素化ポリマーや、(特許文献4)(ペイルソープ(Pailthorp)ら)に記載されているようなパーフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合により得られるポリマーである。パーフルオロプロピレンの含有量が約15〜約50モルパーセントであり、場合により5〜30モルパーセントまでテトラフルオロエチレンが添加される、パーフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのエラストマーコポリマーは、特に有用である。フルオロポリマー加工助剤中のフルオロポリマーの量は、一般に約400ppm以下、好ましくは約200ppm以下である。
【0022】
本発明の目的のために、従来より知られるポリ(オキシアルキレン)ポリマーが、フルオロポリマー加工助剤の1成分として使用される。ポリ(オキシアルキレン)ポリマーとしては、ポリ(オキシアルキレン)ポリオール類およびそれらの誘導体が挙げられる。(特許文献1)および(特許文献5)には、本発明で使用されているフルオロポリマー加工助剤と共に使用するのに適した各種ポリ(オキシアルキレン)ポリマーが開示されており、ここにその全体を開示するものとする。本発明に有用なポリ(オキシアルキレン)ポリオール類の別の例としては、ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company,Midland,MI)からカーボワックス(Carbowax)の商標で販売されているもの、例えばカーボワックス(Carbowax)8000などが挙げられる。フルオロポリマー組成物中のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの量は、一般に、フルオロポリマーに対するポリ(オキシアルキレン)ポリマーの比が1:1またはそれ以上となるように組成物に添加される。
【0023】
一般に、ポリオレフィン加工業者であれば、溶融加工において、従来から知られる他の添加剤を必要に応じて使用することができることを知っている。そのような添加剤の例としては、光安定剤、酸化防止剤、粘着防止剤、スリップ剤、潤滑剤、充填剤、難燃剤、発泡剤、成核剤、清澄剤、着色剤、カップリング剤、相溶化剤、静電防止剤、防曇剤、熱安定剤、可塑剤、補強剤、金属捕集剤、酸/塩基掃去剤、殺虫剤またはこれらの組み合わせが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0024】
溶融加工可能な組成物中のフルオロポリマー加工助剤の量は、数種の変数、例えば、熱可塑性炭化水素ポリマー、溶融加工装置のタイプ、加工条件、その他に依存する。当業者であれば、所望の熱可塑性炭化水素ポリマーの加工を容易にする、適当なフルオロポリマー加工助剤を選択することができる。好ましい実施形態では、フルオロポリマー加工助剤は、組成物に対して0.005〜2.0重量%の割合で使用される。ポリマー加工助剤の割合は0.01〜.05%であることがより好ましく、0.02〜0.2重量%であることがよりいっそう好ましい。
【0025】
本発明の溶融加工可能な組成物は、様々な方法のいずれによっても調製することができる。フルオロカーボンポリマー、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーおよび他の任意成分の熱可塑性炭化水素ポリマーへの添加は、ポリマーに補助剤を加えるために好適に使用されている手段であればいかなる手段でも行なうことができる。したがって、フルオロポリマーおよびポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、バンバリーミキサーまたは混合押出機で炭化水素ポリマーに添加することができる。一般に、混合操作は、フルオロカーボンポリマーおよびポリ(オキシアルキレン)ポリマーが熱可塑性炭化水素ポリマー全体に一様に分布するように、ポリマーの融点より高温で行なわれる。フルオロカーボンポリマーおよびポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、それぞれを溶液から個別に熱可塑性炭化水素ポリマー樹脂上にコーティングして、コーティングされた樹脂のマスターバッチを製造することができ、得られたマスターバッチは、その後、押出組成物中のフルオロカーボンポリマーおよびポリ(オキシアルキレン)ポリマーの濃度が所望の値となるよう、適当な量のコーティングされていない炭化水素樹脂とドライブレンドされる。フルオロポリマー加工添加剤およびホストポリマーは、例えば、粉末、ペレットまたは顆粒状生成物の形態で使用することができる。
【0026】
得られた溶融加工可能な組成物は、最終製品の形状に直接押出してもよく、あるいは、所望の粒子径または粒度分布のペレットその他に粉砕した後、押出成形機に供給してもよい。この押出機は、ブレンドされた混合物を溶融加工して、最終製品の形状に成形するもので、一般的には一軸スクリュー押出機である。
【0027】
最適な操作温度は、ブレンド物の融点、溶融粘度および熱安定性に応じて選択されるが、通常は溶融加工は180〜280℃の温度で実施される。本発明の溶融加工可能な組成物の加工には、押出機などの種々の溶融加工装置を使用することができる。本発明の使用に適した押出機は、例えば(非特許文献1)に記載されている。押出機のダイの設計は、加工すべき所望の押出物に応じて変わる。例えば、環状のダイは、(特許文献6)(ヌーン(Noone)ら)に記載されているように、燃料ラインのホースを製造するのに有用なチューブの押出しに使用される。(特許文献6)の記載は、参照によってここにすべて組み込まれる。
【0028】
本発明は、標準的な加工助剤系に比べて、溶融欠陥を防止するために必要なフルオロポリマー加工助剤の量を減少させる。本発明の目的のためには、標準加工助剤系は、類似の試験方法、装置および条件において、同じ成分、具体的には同じ熱可塑性炭化水素ポリマーおよびポリ(オキシアルキレン)ポリマーを、60重量%のフッ化ビニリデンおよび40重量%のヘキサフルオロプロピレンからなるフルオロポリマーと共に含む系であると認識される。本発明は、このように従来から認められているフルオロポリマー加工助剤より大きく改善されている。例えば、本発明では、実施例でさらに示すように、現在この分野で使用されている従来のフルオロポリマー加工助剤の使用量の50%未満で、溶融欠陥を防止することができる。好ましくは、本発明では、溶融加工可能な組成物に含まれるフルオロポリマー加工助剤の量が200ppm未満のレベルで、溶融欠陥を防止することができる。
【0029】
溶融欠陥の減少は、全体的なパフォーマンスを決定する1つのメカニズムではあるが、本発明の使用によって、溶融圧力、溶融温度、質量流量などの他の加工特性が良い方向に影響されることを、当業者であれば理解する。
【0030】
フルオロポリマー加工助剤をポリオレフィンに加える際の潜在的な問題が、物理的および化学的なゲルの形成であることは、この分野では知られている。いずれの場合も、ゲルが存在するポリオレフィンフィルムは、製品の適用において物理特性が低く、外観も不良となる。したがって、加工中にフルオロポリマー加工助剤がゲルを形成しないことが強く望まれている。物理的なゲルの形成は、ポリオレフィン系に分散しにくいフルオロポリマー加工助剤を使用することによって生じる。結果として、分散状態の悪いフルオロポリマー粒子乃至ゲルが形成される。使用するフルオロポリマー加工助剤が熱的に不安定であるか、またはポリオレフィン樹脂に対して化学的に活性であると、化学的なゲルの形成もまた起こり得る。これによって、化学的なゲル粒子を生じさせるような有害な影響(例えば、架橋)がポリオレフィン樹脂にもたらされる。いずれの場合にも、最終的な押出品(例えばフィルム)にゲル物質が存在することは許容されない。フルオロポリマー加工助剤は、所望のレベルのパフォーマンスを与えることができ、ゲルを形成することはない。
【実施例】
【0031】
以下の実施例で本発明をさらに詳しく説明する。
【0032】
【表1】

【0033】
ポリマーフィルムのメルトフラクチャー%の測定試験
押出し試行の間、10分間隔でインフレーションフィルム試料を採取した。試料を平らに置き、カミソリの刃で一端に沿って開いた。その後、溶融欠陥を含む部分を目視により容易に見分けられるよう、オーバーヘッドプロジェクター上に置いた。フィルムの押出し方向に直角に引かれた線に沿って、フィルムの欠陥を含む部分の幅を測定した。欠陥を含む幅の和をフィルム試料の全幅で除して溶融欠陥乃至メルトフラクチャーの割合を求めた。
【0034】
PPAの同定
本実施例で調べたPPA配合物の化学組成を表1に示す。これらの物質はフルオロポリマーおよび、ある場合にはポリ(オキシアルキレン)ポリマーすなわちカーボワックス8000(Carbowax 8000)を含有している。
【0035】
【表2】

【0036】
比較例1.FX−5920Aのメルトフラクチャー防止性能
比較例1において、まず、以下の手順に従って、ポリオレフィン1中にFX−5920Aを3%含有するコンセントレートを調製した。具体的には、204.3gのダイナマーFX−5920A(Dynamar FX−5920A)を6.61Kgのポリオレフィン1とドライブレンドした。ブレンド物を、円錐形の二重反転スクリューおよびアキュレート(Accurate)製の開螺旋型乾燥材料供給器(ウィスコンシン州、ホワイトウォーターのアキュレート・カンパニー(Accurate Co.,Whitewater,WI)から商業的に入手可能)を装着した、19mm、L:Dが15:1のハーケ・レオコード・ツィン・スクリュー・エクストルーダ(Haake Rheocord Twin Screw Extruder)(ニューハンプシャー州ニューイントンのハーケ・インコーポレーティッド(Haake Inc.,Newington,NH)から商業的に入手可能)を使用して混練した。コンピュータソフトウェア、ハーケRC9000(Haake RC9000)制御データ(ニューハンプシャー州ニューイントンのハーケ・インコーポレーティッド(Haake Inc.,Newington,NH)から商業的に入手可能)により、押出しパラメータを制御し、実験データを記録した。50g/minの割合で材料を押出機に供給し、各ゾーンをそれぞれ次の温度、すなわち165℃/190℃/200℃として加工した。実験の間、ダイの温度も200℃に維持した。実験の間、加工パラメータ(すなわち、溶融圧、トルク)を記録した。材料を標準の直径1/8インチ、4ストランドダイ(ニューハンプシャー州ニューイントンのハーケ・インコーポレーティッド(Haake Inc.,Newington,NH)から商業的に入手可能)を通して押出し、水で急冷し、ペレットとした。試料は、その後、コンセントレート中でのPPAの良好な分散を確実にするため、同じ条件で再度押出しを行い、ペレットにした。
【0037】
40mm、L/Dが24/1の溝付押出機を備えたキーフェル(Keifel)製インフレーションフィルム製造機を使用して、フィルムを製造した。ダイは、螺旋状のものであり、直径40mm、ダイギャップは1.25mmであった。冷却した空気を用いる調節可能なシングルリップ(single lip)の空冷環を使用して冷却した。絞りおよびサイジングケージ(sizing cage)の使用により、バブル安定性をさらに良好にした。公称厚さ50ミクロンのフィルムを製造した。
【0038】
約210℃の溶融温度を維持するために、キーフェル(Kiefel)製押出機およびダイ部の温度を、それぞれ135、190、220および210℃にセットした。スクリューを約50rpmに維持し、18.2kg/時間の送出量とした。これは剪断速度220s-1に相当した。
【0039】
各評価試験の前に、インフレーションフィルム製造機に前回評価試験のフルオロポリマーが残っていないことを確実にしておく必要があった。これを、約9kgの充填ポリオレフィンコンセントレート(例えば、70%CaCO3のマスターバッチ、#HM−10、ヘリテージ・プラスチックス(Heritage Plastics))を押出すことによって行った。その後、ベースとなる樹脂、ポリオレフィン1を30分間押出し、平衡の加工条件が達成され、得られたフィルムにメルトフラクチャーが十分に発生することを確認した。
【0040】
所要量のフルオロポリマーコンセントレートのペレット状樹脂を秤量することによって、押出し試料を調製した。その後、最小限の手順で比較例1を分析した。この方法では、得られるフィルムからメルトフラクチャーが完全になくなるまで、60分毎に通常の方法で、系中のPPA濃度を順次増加させた。比較例1では、実験はまず200ppmのFX−5920Aから開始し、系からメルトフラクチャーが消失するまで、60分毎に順次200ppmづつ増加させた。メルトフラクチャーのレベルを、前記手順に従って分析した。また、試料中のゲルの存在を目視により分析した。
【0041】
比較例2. FX−5920Aのメルトフラクチャー防止性能
次の点を除いて比較例1と同様にして比較例2を実施した。ポリオレフィン1に代えてポリオレフィン2を使用した。約1500ppmのスリップ剤と7500ppmの粘着防止剤を配合物に添加した。インフレーションフィルムのダイギャップを0.6mmに変更した。公称厚さ25ミクロンでフィルムを製造した。約2150℃の溶融温度を維持するために、押出機およびダイ部の温度をそれぞれ210、230、235および230℃にセットした。スクリューを約30rpmに維持し、11.8kg/時間の送出量とした。これは剪断速度520s-1に相当した。
【0042】
比較例3. FX−5920Aのメルトフラクチャー防止性能
次の点を除いて比較例1と同様にして比較例3を実施した。ポリオレフィン1に代えてポリオレフィン3を使用し、1500ppmのスリップ剤と7500ppmの粘着防止剤を配合物に添加した。
【0043】
比較例4. FX−5920Aのメルトフラクチャー防止性能
次の点を除いて比較例1と同様にして比較例4を実施した。ポリオレフィン1に代えてポリオレフィン4を使用した。約1500ppmのスリップ剤と7500ppmの粘着防止剤を配合物に添加した。インフレーションフィルムのダイギャップを0.6mmに変更した。公称厚さ25ミクロンのフィルムを製造した。約210℃の溶融温度を維持するために、押出機およびダイ部の温度をそれぞれ205、215、235および210℃にセットした。スクリューを約15rpmに維持し、6.8kg/hrの送出量とした。これは剪断速度300s-1に相当した。
【0044】
比較例5. PPA1のメルトフラクチャー防止性能
FX−5920Aに代えてPPA1を使用したことを除いて比較例3と同様にして比較例5を実施した。
【0045】
比較例6. FX−5920Aのメルトフラクチャー防止性能
次の点を除いて比較例1と同様にして比較例6を実施した。ポリオレフィン1に代えてポリオレフィン5を使用した。2%の市販スリップ剤/粘着防止剤複合コンセントレート(A・シュルマン(A.Schulman)から商業的に入手可能)を配合物に添加した。45mm、L/Dが25/1の押出機およびデュアルリップ(dual lip)の空冷環を備えた実験室規模のコリン(Collin)製インフレーションフィルム製造機を使用した。インフレーションフィルムのダイギャップを0.6mmに変更した。公称厚さ25ミクロンのフィルムを製造した。約210℃の溶融温度を維持するために、押出機およびダイ部の温度をそれぞれ205、205、210、220および205℃にセットした。スクリューを約46rpmに維持し、11.0kg/時間の送出量とした。これは剪断速度430s-1に相当した。
【0046】
比較例7. PPA3のメルトフラクチャー防止性能
FX−5920Aに代えてPPA3を使用したことを除いて比較例3と同様にして比較例7を実施した。
【0047】
比較例8. PPA3Aのメルトフラクチャー防止性能
FX−5920Aに代えてPPA3Aを使用したことを除いて比較例3と同様にして比較例8を実施した。
【0048】
実施例1. PPA1Aのメルトフラクチャー防止性能
FX−5920Aに代えてPPA1Aを使用したことを除いて比較例1と同様にして実施例1を実施した。
【0049】
実施例2. PPA1Aのメルトフラクチャー防止性能
FX−5920Aに代えてPPA1Aを使用したことを除いて比較例2と同様にして実施例2を実施した。
【0050】
実施例3. PPA1Aのメルトフラクチャー防止性能
FX−5920Aに代えてPPA1Aを使用したことを除いて比較例3と同様にして実施例3を実施した。
【0051】
実施例4. PPA1Aのメルトフラクチャー防止性能
FX−5920Aに代えてPPA1Aを使用したことを除いて比較例4と同様にして実施例4を実施した。
【0052】
実施例5. PPA1Aのメルトフラクチャー防止性能
FX−5920Aに代えてPPA1Aを使用したことを除いて比較例6と同様にして実施例5を実施した。
【0053】
【表3】

【0054】
表2から、様々なホスト樹脂(比較例1〜5)中での標準フルオロポリマー加工添加剤(FX−5920A)や、PEGを含有しない高VDFコポリマー(PPA1)に比べた場合、製造されたフィルムにおけるメルトフラクチャーを防止するために必要とされる、PEGを含有する高VDFコポリマー(PPA1A)の量が大きく低減されたことがわかる。さらに、表2から、VDF単独重合体はPEGを含有するものも含有しないものも(PPA3およびPPA3A)、得られたフィルムにゲルが存在するが、標準フルオロポリマー加工添加剤(FX−5920A)、PPA1およびPPA1Aではゲルは存在しないことがわかる。
【0055】
比較例9. FX−5920Aのメルトフラクチャー防止性能
次の点を除いて比較例3と同様にして比較例9を実施した。FX−5920Aに代えてPPA2を使用した。
【0056】
実施例6. FX−5920Aのメルトフラクチャー防止性能
次の点を除いて比較例9と同様にして実施例6を実施した。PPA2に代えてPPA2Aを使用した。
【0057】
【表4】

【0058】
本発明の一般原理の上記開示と前記の詳細な説明から、当業者であれば本発明において各種の変更が許容されることは容易に理解できよう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ制限されるべきものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種もしくはそれ以上の熱可塑性炭化水素ポリマー、
(b)(i)ポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、
(ii)フッ化ビニリデンと少なくとも1種の他のモノマーとの共重合単位を有し、フッ化ビニリデンの含有量が65重量%より多いフルオロポリマーと
を含むフルオロポリマー加工助剤
を含有する溶融加工可能な組成物であって、押出した際に、標準加工助剤系と比較してより少ない量の前記フルオロポリマー加工助剤で、溶融欠陥のない押出物が得られる溶融加工可能な組成物。
【請求項2】
フルオロポリマーにおける前記フッ化ビニリデンの含有量が75重量%より多い請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フルオロポリマー加工助剤におけるポリ(オキシアルキレン)ポリマーとフルオロポリマーとの比が1:1以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記溶融加工可能な組成物におけるフルオロポリマーの含有量が400ppm以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
光安定剤、酸化防止剤、粘着防止剤、スリップ剤、潤滑剤、充填剤、難燃剤、発泡剤、成核剤、清澄剤、着色剤、カップリング剤、相溶化剤、静電防止剤、防曇剤、熱安定剤、可塑剤、補強剤、金属捕集剤、酸/塩基掃去剤、殺虫剤またはこれらの組み合わせをさらに含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
フルオロポリマーが熱可塑性ポリマーである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
(a)1種もしくはそれ以上の熱可塑性炭化水素ポリマー、
(b)(i)ポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、
(ii)フッ化ビニリデンと少なくとも1種の他のモノマーとの共重合単位を有し、フルオロポリマーにおけるフッ化ビニリデンの含有量が85重量%より多い熱可塑性コポリマーと
を含むフルオロポリマー加工助剤
を含有する溶融加工可能な組成物であって、押出した際に、溶融欠陥のない押出物が得られる溶融加工可能な組成物。
【請求項8】
前記フルオロポリマー加工助剤におけるポリ(オキシアルキレン)ポリマーとフルオロポリマーとの比が1:1以上である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記溶融加工可能な組成物におけるフルオロポリマーの含有量が400ppm以下である請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
(a)1種もしくはそれ以上の熱可塑性炭化水素ポリマー、
(b)(i)ポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、
(ii)フッ化ビニリデンと少なくとも1種の他のモノマーとの共重合単位を有し、フッ化ビニリデンの含有量が65重量%より多いフルオロポリマーと
を含むフルオロポリマー加工助剤
を含有する溶融加工可能な組成物であって、溶融加工可能な組成物におけるフルオロポリマーの量が200ppm未満である溶融加工可能な組成物。
【請求項11】
フルオロポリマーにおける前記フッ化ビニリデンの含有量が75重量%より多い請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記フルオロポリマー加工助剤におけるポリ(オキシアルキレン)ポリマーとフルオロポリマーとの比が1:1以上である請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
光安定剤、酸化防止剤、粘着防止剤、スリップ剤、潤滑剤、充填剤、難燃剤、発泡剤、成核剤、清澄剤、着色剤、カップリング剤、相溶化剤、静電防止剤、防曇剤、熱安定剤、可塑剤、補強剤、金属捕集剤、酸/塩基掃去剤、殺虫剤またはこれらの組み合わせをさらに含有する請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
フルオロポリマーが熱可塑性ポリマーである請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
(a)ポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、
(b)フッ化ビニリデンと少なくとも1種の他のモノマーとの共重合単位を有し、フッ化ビニリデンの含有量が65重量%より多いフルオロポリマーと
を含むフルオロポリマー加工助剤であって、溶融加工可能な組成物に添加されると、標準加工助剤系と比較してより少ない量で、溶融欠陥のない押出物が得られるフルオロポリマー加工助剤。
【請求項16】
フルオロポリマーが熱可塑性コポリマーであり、そのフルオロポリマーにおけるフッ化ビニリデンの含有量が85重量%より多い請求項15に記載の組成物。


【公表番号】特表2007−510775(P2007−510775A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538044(P2006−538044)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/033607
【国際公開番号】WO2005/047386
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】