説明

溶融媒体浴を用いるディップ成形ゴム物品の硫化

【課題】細孔を有さないゴム物品を提供すること。
【解決手段】細孔を有さないゴム物品は、硫化剤を含む浸漬媒体中でディップ成形し、次いで化学的に不活性な加熱液体浴に、このディップ形成体を浸すことによって調製される。特に効果的な液体浴は、溶融無機塩である。さらに、すでに硫化した物品を硫化剤の溶液に浸して、この物品のゴムにこの溶液から硫化剤を吸収または吸入させ、次いで、このゴムおよび吸収された硫化剤を、加熱液体浴に浸して、硫化度を増大することによって、硫化したゴムの物品の引張り特性は、非常に効果的な程度まで改善され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、ゴム物品、特に、ディップ成形によって形成されたゴム物品の分野に属する。特に、本発明は、ディップ形成されたゴム物品の加硫の方法に取り組む。
【背景技術】
【0002】
(2.発明の背景)
天然ゴムラテックスは、弾性のディップ成形された医療デバイスおよび医療デバイス構成要素の構築材料として、広範に使用されてきた。天然ゴムラテックスから作製される医療デバイスおよび構成要素の例は、手術用手袋、検査用手袋、指サック、カテーテルのバルーン、子宮温熱切除用バルーン、カテーテルカフ、コンドーム、避妊ペッサリー、留置尿排液カテーテル、および男性用外部尿排液カテーテルである。他の例は、医学ならびにこれらおよび類似の医療デバイスの製造および使用の当業者に明らかである。ディップ成形技術はまた、非医療用途の弾性デバイスを作製する際に使用される。これらとしては、玩具の風船、産業用手袋、家事用手袋、および他の類似のデバイスが挙げられる。これらのデバイスはまた、医療用と非医療用との両方が、天然ゴムではなく合成ゴムラテックス材料から形成され得る。いくつかの場合において、合成材料は、例えば、天然ゴムが何らかの理由で不適切であるとみなされる場合、または合成材料が利点を与える場合に、好ましい。
【0003】
ラテックスディップ成形プロセスにおいて、浸漬型がラテックス浴に浸漬され、次いでこの浴から引き抜かれ、熱空気中で乾燥され、そして熱空気中で加硫される。いくつかの場合において、このラテックスは、予備加硫される。すなわち、ラテックス中のゴム粒子が、浸漬工程の前に、部分的にかまたは完全に加硫されている。予備加硫されたラテックスは、改善された湿潤ゲルおよび乾燥ゲルの強度を有するフィルムを生成し、そして浸漬および熱空気乾燥の後にさらなる加硫が実施される場合には、引張り特性が改善される。予備加硫の利点は、浸漬後の加硫のために必要な時間を少なくするかまたは排除することによって、プロセス時間を減少させることである。いくつかのディップ成形プロセスにおいて、化学的凝析剤が、ラテックス中または浸漬型上に含まれ、そして熱感作された凝固剤の浸漬方法が適用されて、より大きなフィルム厚を有する物品を製造する。複数の浸漬がまた、いくつかのプロセスにおいて使用される。これらおよび他の方法の詳細は、ラテックスディップ成形の当業者に周知である。プロセスおよびその改変物のさらなる説明は、非特許文献1に見出される。
【0004】
浸漬型が浴から除かれた後にラテックスフィルム上で実施される加硫は、個々のゴム粒子内と合体したゴム粒子間との両方で、共有結合を形成するよう働く。この段階と浸漬前との両方での加硫に関する問題は、粒子の外側表面が、粒子の内側より多く加硫剤に曝露されて、表面硬化の効果およびゴムの均一性の損失を生じることである。
【0005】
ゴムラテックスに対するディップ成形プロセスにおいて、硫黄が主要な加硫剤であるが、種々の加硫促進剤、活性剤、硫黄供与体、およびブースターが、頻繁に、同様に含まれる。天然ゴムと合成ゴムとの両方のラテックスに関する予備加硫の方法および処方の説明は、非特許文献2に見出される。硫黄を使用せずに実施される予備加硫方法は、フリーラジカル架橋を利用する方法であり、これは、種々の手段(化学増感剤の存在下での高エネルギー照射を含む)によって達成され得る。この様式で予備加硫される天然のラテックスは、「照射により加硫された天然ゴムラテックス」(RVNRL)と称される。このようなラテックスおよびこれらの調製において使用される加硫プロセスの説明は、非特許文献3に見出される。
【0006】
RVNRL製のゴムフィルムは、ラテックスをフィルムに単に鋳造し、次いでこのフィルムを乾燥することによって、製造される。フィルムの鋳造後に加硫が行われず、そして硬化性の薬剤が引き続いて添加されない限り、何もなされ得ない。このプロセスによって作製されるフィルムは、27.1メガパスカル(3930psi)までの引張り強度を有する。このことは、多くの浸漬成形ゴムデバイス(例えば、手術用手袋のような)の要件を満たすが、これらのフィルムの引張り強度は、後加硫工程(浸漬段階の後)が包含された多くの硫黄で加硫されたフィルムにおいて達成されるもの程高くはない。RVNRLフィルムはまた、硫黄で加硫されたフィルムより100%引張り係数の値が低い。RVNRLフィルムはまた、共有結合によって真の粒子の一体化を達成するための手段を欠くことに悩まされる。このことは、真に一体化された細孔のないラテックスゴムフィルムをRVNRLから形成することを困難にする。さらなる欠点は、照射設備に接近する必要性であり、このことは、多くのゴム製造に対して好都合な位置ではないかもしれず、そしてこのことは、製造費用を有意に増加させる。
【0007】
フリーラジカル架橋によるラテックスの予備加硫の代替の手段は、有機過酸化物およびヒドロペルオキシドの使用を包含する手段である。これらの物質を用いて予備加硫されるラテックスは、「過酸化物により加硫される天然ゴムラテックス」(PVNRL)と称される。このようなラテックスおよびこれらを調製するための方法の説明は、発明の名称「Curing Natural Rubber Latex With a Peroxide」の、G.Stottに対して1959年1月13日に発行された、特許文献1に見出される。この特許に開示されるプロセスは、天然ゴムラテックスを、(乾燥ゴム重量に基づいて)2%のジターシャリーブチルペルオキシドの存在下で、圧力容器中170℃の温度で15分間過熱する工程を包含する。次いで、このラテックスを冷却し、そしてフィルムを鋳造し、そして乾燥させて、251kg/cm(3739psi)程度に高い引張り強度を有する、加硫ゴムフィルムを得た。このフィルムは、乾燥後の加硫なしで、乾燥によって単純に形成された。不運なことに、市販の規模でのこのプロセスの利用は、大きくかつ高価な加熱圧力容器を必要とし、そして予備加硫が、このプロセスの必須の部分である。
【0008】
有機過酸化物ではなくヒドロペルオキシドを用いて予備加硫されたラテックスは、発明の名称「Vulcanization of Latex With Organic Hydroperoxide」の、W.S.Roppに対して1961年3月14日に発行された、特許文献2に記載されている。この特許において、天然ゴムラテックスが、加圧下250°F(121℃)で約1時間、クメンヒドロペルオキシドとともに過熱されることによって、予備加硫される。得られる冷却ラテックスをフィルムに鋳造し、次いで風乾する。この生成物は、2775psiの最大引張り強度を有した。Stottの特許においてと同様に、市販の規模でのこのプロセスの利用は、大規模な過熱加圧容器を必要とし、そして引張り強度は、硫黄で加硫されたラテックスまたはStottの有機過酸化物で予備加硫されたラテックスのものほど良好ではない。
【0009】
過酸化水素を予備加硫剤として活性化化学物質とともに使用することは、発明の名称「Vulcanization of Latex With Organic Hydroperoxide」の、B.K.Rodawayに対して1973年8月28日に発行された、特許文献3に開示されている。この特許の方法は、圧力容器を用いずに、より低い温度で実施される。この特許は、天然ゴムラテックスがこの方法で予備加硫され、フィルムに鋳造され、そして乾燥されて、124kg/cm(1760psi)の引張り強度を有する生成物を生じる実施例を詳述する。従って、その利点にかかわらず、このプロセスは劣った(interior)強度を有するラテックスフィルムを生成する。予備加硫の後にこのラテックスに硫黄硬化系を添加することが、鋳造後の加硫を可能にする可能性が示唆されるが、このことは、硫黄硬化化学物質の使用を包含し、これは、過酸化物プロセスが一般に回避することを意図されるものである。さらなる実施例において、ポリクロロプレンおよび他の合成ラテックスの硬化は、過酸化水素および活性剤を用いて実施され、各場合の生成物は、劣った引張り特性を有する。
【0010】
本発明の背景を形成する技術のさらなる開示は、発明の名称「Preparation of Crosslinked Polymer Latex From Aqueous Emulsion of Solvent/Polymer Solution of Precursor Latex Particle Size」の、O.W.Burkeに対して1975年7月1日に発行された、特許文献4に見出される。この特許に開示されるプロセスにおいて、ジクミルペルオキシドが、合成ポリマーラテックスと、6000psiの圧力下で混合され、そしてこの混合物が、特定されない上昇温度に、言及されない時間にわたって供される。フィルム形成の開示はない。
【0011】
本発明の背景を形成するなおさらなる方法は、「液体浴中での連続加硫」(LCM Vulcanizaion)として公知のものであり、これらは、押し出されたゴムのプロフィールに対して使用される。LCM Vulcanizationにおいて、固体の一定のプロフィールの形状が押出され、次いで熱液体浴(例えば、融解塩、熱油、または溶融鉛)あるいは熱流体媒体(例えば、流動化砂粒子)に沈められる。本質的に全ての酸素分子が、硬化環境から排除される。熱液体浴または流体媒体の使用は、押出されたゴムの壁の薄いプロフィールへの非常に迅速な熱移動速度を提供するためである。種々のLCM Vulcanization法の記載は、非特許文献4、および発明の名称「Method of Forming an Improved Wiper Blade」の、M.L.Hyerに対して1991年1月1日に発行された、特許文献5に見出される。これらの参考文献は、ディップ成形されたフィルムへのこのプロセスの応用を開示しない。
【0012】
ディップ成形によって形成されたラテックス物品は、この物品の壁を通る病原体または他の所望でない物質の通過が防止されるべきである場合には、細孔なしでなければならない。細孔のない壁は、ラテックスのゴム粒子間の良好な一体化および接着を必要とする。このことを達成するために、多くの試みがなされてきたが、これは困難な目的であるままである。例えば、過剰の加硫は、粒子の一体化を抑制する傾向がある。予備加硫の程度を決定する単純な手段は、クロロホルム凝集試験として公知の試験である。この試験の説明は、非特許文献5に見出され得る。
【0013】
本明細書中に引用される全ての特許および刊行物は、本明細書中に参考として援用される。
【非特許文献1】Pendle,Dipping with Natural Latex(Malaysian Rubber Producers’ Association発行)(1995)
【非特許文献2】Blackley,D.C.,Polymer Latices:Science and Technology,第2版、第13章(ChapmanおよびHall、1997)
【非特許文献3】Zin,W.M.B.W.、「Semi industrial scale RVNRL preparation,products manufacturing and properties」、Radiat.Phys.Chem.,52(1−6),611−616頁(1998)
【非特許文献4】Hoffman,Rubber Technology Handbook,394−398頁(Hanser Publishers,1994)
【非特許文献5】The Vanderbilt Latex Handbook,第3版、110頁(R.T.Vanderbilt Company,Inc.,Norwalk,Connecticut,USA)
【特許文献1】米国特許第2,868,859号
【特許文献2】米国特許第2,975,151号
【特許文献3】米国特許第3,755,232号
【特許文献4】米国特許第3,892,697号
【特許文献5】米国特許第4,981,637号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
加硫剤を浸漬媒体に含め、そして浸漬型を化学的に不活性な加熱された液体浴に浸漬することにより湿ったフィルムを加硫することによる、ディップ成形プロセスによって、細孔のないゴム物品が調製され得ることが、ここで発見された。この加熱浴の温度は、フィルムの加硫の間にこのフィルムにおける任意の合体したゴム粒子の少なくとも部分的な融解および/または軟化を引き起こすために十分に高く、そしてこれらの条件下で加硫を起こすために必要な時間は、熱空気における加硫のために代表的に使用される時間より有意に短い。得られるフィルムは、干渉性であり、そして本質的に細孔がない。
【0015】
本発明の別の局面は、既に加硫された物品を加硫剤の溶液に浸漬して、この物品のゴムにこの溶液から浸漬剤を吸着またはインビジョンさせ、次いでこのゴムおよびインビジョンされた加硫剤を、実質的に酸素分子を含まず化学的に不活性の加熱された液体浴に浸漬させることによって、加硫ゴムの物品の引張り特性が非常に効果的な程度まで改善され得るという発見に属する。この物品をこの浴から回収した後に、引張り特性は、同じ量および型の加硫剤が元の加硫に含まれる場合に製品が有する引っ張り特性より有意に大きい。
【0016】
本発明は、全てのゴム材料(天然と合成との両方)の物品を作製する際に、有用である。本発明の特定の局面に関して、特に、ディップ成形後の単一段階の加硫のための加熱液体浴の使用に属する局面に関して、好ましいゴム材料は、シス−1,4−ポリイソプレン以外のものである。
【0017】
したがって、本発明は以下を提供する。
項目1 cis−1,4−ポリイソプレン以外のゴムの実質的に細孔を有さない物品の調製のための方法であって、上記方法は、以下:
(a)熱硫化可能組成物を含む液体媒体に、形成部材を浸漬する工程であって、上記組成物は、以下:
(i)cis−1,4−ポリイソプレン以外のゴム形成物質:および
(ii)硫化剤、を含み、
上記形成部材は、上記物品の外面に対して外形相補性を有する外面を有する、工程;
(b)上記形成部材を上記液体媒体から、上記外面上に上記熱硫化可能組成物のフィルムが残るような様式で引き出す、工程;
(c)上記形成部材部材上に上記液体フィルムを有する上記形成部材を、上記硫化剤により上記ゴム形成物質の硫化が生じるのに十分な温度および時間、化学的に不活性な液体浴に浸す、工程;ならびに
(d)上記液体浴から上記形成部材を引き出し、上記実質的に細孔を有さないゴム物品を上記形成部材から分離する、工程、
を包含する、方法。
項目2 上記工程(a)の液体媒体がラテックスである、項目1に記載の方法。
項目3 上記ゴム形成物質が、天然ゴムおよびポリクロロプレンからなる群から選択されるメンバーである、項目1に記載の方法。
項目4 上記工程(c)の液体浴が、溶融無機塩およびそれらの混合物からなる群から選択されるメンバーである、項目1に記載の方法。
項目5 上記ゴム形成物質が、天然ゴムであり、上記工程(c)の温度が、約150℃〜約235℃である、項目1に記載の方法。
項目6 上記硫化剤が、有機ペルオキシドである、項目1に記載の方法。
項目7 硫化ゴムの物品の引張り強さを増大するための方法であって、上記方法は、以下:
(a)硫化剤の溶液に上記物品を浸して、上記物品に上記溶液から上記第2の硫化剤を吸収させる、工程;
(b)上記吸収された硫化剤を含む上記物品を、上記硫化剤により上記硫されたゴムのさらなる硫化を引き起こすのに十分な温度および時間、化学的に不活性な液体浴に浸す、工程;ならびに
(c)上記物品を上記液体浴から引き出す、工程、
を包含する、方法。
項目8 ゴムの実質的に細孔を有さない物品の調製のための方法であって、上記方法は、以下:
(a)熱硫化可能組成物を含む液体媒体に、形成部材を浸漬する工程であって、上記組成物は、以下:
(i)ゴム形成物質;および
(ii)第1の硫化剤、
を含み、
上記形成部材は、上記物品の外面に対して外形相補性を有する外面を有する、工程;
(b)上記形成部材を上記液体媒体から、上記外面上に上記熱硫化可能組成物のフィルムが残るような様式で引き出す、工程;
(c)上記形成部材部材上に上記液体フィルムを有する上記形成部材を、上記第1の硫化剤により上記ゴム形成物質の硫化が生じるのに十分な温度および時間、化学的に不活性な液体浴に浸す、工程;
(d)上記形成部材上の硫化したゴムのフィルムを有する上記形成部材を、上記液体浴から引き出す、工程;
(e)上記工程(d)で形成された硫化したゴムの上記フィルムを、第2の硫化剤の溶液に浸して、上記溶液から上記第2の硫化剤を吸収させる、工程;
(f)上記吸収された第2の硫化剤を含む上記フィルムを、上記第2の硫化剤によって上記ゴム形成物質のさらなる硫化を引き起こすのに十分な温度および時間、第2の化学的に不活性な液体浴に浸す、工程;ならびに
(g)上記第2の液体浴から上記フィルムを引き出して、上記実質的に細孔を有さない物品を達成する、工程、
を包含する、方法。
項目9 上記ゴムが、cis−1,4−ポリイソプレンであり、上記液体浴が、溶融無機塩およびそれらの混合物からなる群から選択されるメンバーである、項目8に記載の方法。
項目10 実質的に細孔を有さない、cis−1,4−ポリイソプレン以外のゴムのディップ成形物品であって、上記物品は、以下:
(a)熱硫化可能組成物を含む液体媒体に、形成物品を浸漬する工程であって、上記組成物は、以下:
(i)cis−1,4−ポリイソプレン以外のゴム形成物質;および
(ii)硫化剤、
を含み、
上記形成部材は、上記物品の外面に対して外形相補性を有する外面を有する、工程;
(b)上記形成部材を上記液体媒体から、上記外面上に上記熱硫化可能組成物のフィルムが残るような様式で引き出す、工程;
(c)上記形成部材部材上に上記フィルムを有する上記形成部材を、上記硫化剤により上記ゴム形成物質の硫化が生じるのに十分な温度および時間、化学的に不活性な液体浴に浸す、工程;ならびに
(d)上記形成物品を上記液体浴から引き出し、上記ゴム物品の実質的に細孔を有さない物品を上記形成部材から分離する、工程、
を包含する、方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の多くの利点には、浸漬部分の望ましくない酸化の危険のない、より迅速な加硫速度がある。本発明はまた、粒子が架橋されそしてそれらをより完全に加熱するとき粒子を部分的に融解することによって、より優れた粒子組み込み、従って、より密着性(coherent)のラテックス粒子を提供する(これは、粒子が表面硬化する傾向を減少する)。予備加硫(すなわち、浸漬段階の前に浸漬液体に行われる加硫)は、多くの場合、除外され得、これは、過酸化物硬化系または硫黄硬化系であるラテックスに対する利点を提供する(ここで、予備加硫は、硬化時間を減少し、そしてディップ成形操作の間に放出され得るニトロソアミンの量を減少させるために一部使用される)。あるいは、本発明の後加硫(浸漬工程に続くその発生をいう)は、硫黄に基づく化学物質の添加の必要なしに生成物の引張り特性を改善し得る。後加硫はまた、予備加硫に使用される反応とは異なる反応を使用して実行され得る。例えば、過酸化物の使用を伴う後加硫は、硫黄、過酸化物または照射により予備加硫されるラテックスで実行され得る。ニトロソアミン形成に感受性である系において、本発明は、形成されるニトロソアミンの量を減少するかまたは除外する。ポリクロロプレンラテックス、ニトリルラテックスまたはこの二つの混合物が使用される場合、有機過酸化物の使用による後加硫は、非常に少量の過酸化物で達成され得る。過酸化物に基づく加硫系および照射に基づく加硫系を用いて、本発明の使用は、このような系を用いて以前に得られたよりも高い100%の引張り係数を有し、そして引張り強度の減少のない生成物を提供する。硫黄に基づく系を用いて、高温の酸素を含まない環境は、熱空気の加硫の間に代表的に生成されるヒドロペルオキシドによって引き起こされる分解を妨げるのに役立つ。このような分解は、ラテックスのエージングの一部の原因である。過酸化物の基づく系のような非硫黄含有系における本発明の使用は、より長い貯蔵時間を有する生成物を生じる。なおさらに、熱空気硬化の必要性およびその固有の非効率さを除くことは、熱い媒体の浴が容易に断熱されるので、エネルギーのかなりの節約を提供する。さらなるエネルギーの節約はまた、予備加硫および熟成を除去する場合に得られる。これらおよび他の目的および利点が達成される手段、ならびに特に、プロセスおよびその好ましい実施形態は、以下の記載から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(本発明および特定の実施形態の詳細な説明)
浸漬形成剤およびフィルムがプロセスの浸漬段階の後に浸される液体浴は、迅速な加熱移動をフィルムに提供する加熱液体である。本目的に最も望ましく、従って好ましい液体媒体のさらなる特性は、浸漬形成剤上のフィルムに移動するかまたは拡散する傾向を欠くこと(媒体自身がフィルムの所望の構成でないかぎり)であり、その質は、周りの環境(大気の環境とゴム形成材料との両方、ならびに材料と混合され得る種々の種)および加硫温度における残りの液体の質に関して安定である。本目的のために使用され得る液体媒体の例は、融解無機塩、オイル、グリコール、液化金属、水、およびブライン溶液である。これらのうち、融解無機塩、シリコーンオイル、およびグリコールが好ましく、そして融解無機塩、が最も好ましい。適切な融解無機塩の例は、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ならびにカリウム、ナトリウムおよびリチウムのハライド、ならびにこの群の塩の組み合わせである。このタイプの塩の組み合わせは、Heatbath Corporation,Detroit,Michigan,USA;およびHubbard−Hall Inc.,Inman,South Carolina,USAのような供給業者から市販される。適切な商業的塩混合物の例は、Hubbard−Hall,IncのQUICK CURE 275であり、この主成分は、硝酸カリウム(約50重量%)、亜硝酸ナトリウム(約30重量%)、および硝酸ナトリウム(10重量%未満)であり、溶融温度は、約315°F〜650°F(157℃〜343℃)の範囲である。他の例は、Heatbath CorporationのPARCURE 275およびPARCURE300である。
【0020】
加熱された液体媒体浴は、好ましくは、先行技術の熱空気加硫方法において使用される温度を有意に越えるが、加硫されるゴムの安定性に対して有害な効果を有するほど高くない温度で使用される。ゴムが、例えば、天然ゴムである場合、450°F(232℃)を越えないことが最も良く、スチレンブタジエンゴムまたはポリクロロプレンラッテクスの場合には、575°F(302℃)を越えないことが最も良い。本発明の全範囲についての好ましい温度範囲は、約100℃〜約350℃である。ポリクロロプレンおよびスチレン−ブタジエンゴムについて、好ましい温度範囲は、約150℃〜約300℃であるが、天然ゴムについて、好ましい温度範囲は、約150℃〜約235℃である。操作温度および曝露時間の選択は、迅速な硬化を達成することならびにエネルギーの経済的な使用および他のプロセスのコストを維持することの両方についての考慮に委ねられる。他の考慮は、特定のタイプのゴムおよび特定の硬化系とともに存在し得る。有機過酸化物硬化系において、例えば、好ましい温度および時間は、存在する本質的に全ての過酸化物の切断を生じる温度および時間である、これは、一般的に、6〜8の半減期で達成される。硫黄に基づく硬化系では、加硫戻りおよび毒性を避けることがしばしば考慮される。しかし、全ての場合において、完全な硬化に必要な時間は、先行技術の熱空気硬化プロセスに必要とされるよりもかなり少ない。本発明の好ましい硬化条件は、350°F(177℃)で9分である。
【0021】
本発明は、幅広い範囲のゴムおよびゴム置換組成物(ラテックスおよび有機溶液の両方を含む)に適用可能である。
【0022】
ラテックスのうち、最も一般的に使用されるラテックスは、天然ゴムである。天然ゴムは、Hevea brasiliensis,Parthenum argentatum(「グアユールゴムノキ」としても通常知られる)、およびFicus elasticaゴムの木を含む、いくつかの供給源から得られ得る。非Hevea供給源由来の天然ゴムラテックスを得るための方法は、Cornishに対する1996年12月3日に発行された、米国特許第5,580,942号(「Hypoallergenic Natural Rubber Products From Parthenum Argentatum(Gray) and Other Non−Hevea Brasiliensis Species」)に記載される。天然ゴムラテックスは、いくつかのグレードで入手可能であり、高アンモニアラテックス、低アンモニアラテックスなどが挙げられる。全てのこのような多様性は、本発明における使用に適切である。本発明はまた、ラテックスに存在するタンパク質の量を減少させるために処理された天然ゴムラテックスに拡張される。これらのプロセスのいくらかは、水を分離し、そして除去するために遠心分離する工程を包含し、そして他のものは、二重遠心分離する工程(最初の遠心分離が、水の添加および第2の遠心分離によって続けられる)を包含する。なお他のプロセスは、タンパク質を消化するための酵素の使用を包含する。酵素法の説明は、Tanakaらに対する、米国特許番号第5,610,212号(「Means for Mechanically Stabilizing Deproteinized Natural Rubber Latex」、1997年3月11日)、同第5,569,740号(「Deproteinized Natural Rubber Latex and Its Production Process」、1996年10月29日)、および同第5,585,459号(「Process for Producing Raw Rubber」、1996年12月17日)に見出される。市販の脱タンパク質ゴムラテックスの例は、ALLOTEXであり、Tillotson Healthcare Corporation,Rochester,New Hampshire,USAから得られ得る。
【0023】
一般に、合成ゴムラテックスは、同様に、本発明の実施に有用である。例は、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、スチレンイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ニトリルゴム、スチレンブロックコポリマー、およびブチルゴムである。ポリクロロプレンラテックスの例は、E.I.DuPont de Nemours,Inc.Wilmington,Delaware,USAから入手可能な、NEOPRENE 750、およびニトリルラテックスの例は、Heveatex Corporation,Fall River,Massachusetts,USAから入手可能な、NITRILE LATEX#Ol7071がある。ラテックスの混合物もまた使用され得る。これらの混合物のいくつかは、「Polyisoprene−Neoprene Meteorological Balloons」と題された、Siscoらに対する、1971年12月7日に発行された、米国特許第3,626,052号に記載される。ここで、ポリクロロプレンラテックスは、ポリイソプレンラテックスと混合されて気象観測気球が作製される。
【0024】
本発明はまた、ゴムラテックスと同様な様式で使用されるポリマー分散体に拡張する。1つの例は、ポリウレタン熱可塑性エラストマーの水性分散体である。このタイプの市販の分散体は、The Dow Chemical Company,Midland,Michigan,USAから入手可能なINTACTAである。このようなポリマー分散体は、炭素−炭素に重結合を欠き、従って、硫黄に基づく架橋に感受性ではない。これらの分散体について、硫黄に基づく系以外の硬化系を使用する本発明の実施形態が使用され得る。本発明のプロセスによって形成される医療用診察用手袋のようなポリウレタン製品は、溶媒に対して増加した耐性を示す。
【0025】
ラテックスおよびポリマー分散体に加えて、本発明はまた、有機溶液に適用する。これらの溶液を形成する際に使用される有機溶媒は、ゴム、ゴム置換またはポリマーに対して不活性であり、かつ蒸発によってディップ成形されたフィルムから容易に除去される任意の溶媒である。この溶媒は、好ましくは、脂肪族炭化水素、飽和または不飽和、直鎖、分枝または環式、あるいはエーテル、エステル、アルコールまたはアミンである。代表的な溶媒は、5〜8個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ペンテン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、およびシクロペンテン)、ならびに複素環式化合物(例えば、テトラヒドロフラン)である。
【0026】
幅広い種々の加硫剤が本発明の実施に使用され得る。有用な加硫化剤としては、有機過酸化物、硫黄含有化合物、セレン含有化合物、およびタリウム含有化合物が挙げられる。有機過酸化物は、例えば、単一でまたは組み合わせて使用され得、そして最も一般的なタイプは、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、およびジアルキルペルオキシドである。好ましい有機過酸化物は、ジアルキルペルオキシド、特に、ジクミルペルオキシド(DICUP Rとして、Hercules Incorporated,Wilmington,Delaware,USAから入手可能)がある。他の有用なジアルキルペルオキシドは、2,5−ジメチル−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)吉草酸ブチル、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、t−ブチル3−イソプロペニルクミルペルオキシド、ビス(3−イソプロペニルクミル)ペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルペルオキシベンゾエート、およびビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシドである。
【0027】
同時薬剤(coagent)および他の添加物は、しばしば、有機過酸化物とともに使用されて、特定の特性を有する生成物を達成する。特定の同時薬剤はまた、単一のペルオキシドラジカルに1つより多い炭素−炭素架橋を作製させることによって、ペルオキシドの架橋効率に追加する。同時薬剤はまた、伸長および引裂き強度のようなポリマーの特定の特性を増強するために、共有結合によってポリマーネットワークに組み込まれ得る。これらの同時薬剤のいくつかは、アクリレートおよびメタクリレート化学に基づく。しかし、全てが本発明の方法および生成物に含まれるのに適する。適切な同時薬剤の例は、Sartomer Company,Inc.,Exton,Pennsylvania,USAから入手可能な、SARET516、SARET517、SARET521、およびSARET634である。これらの同時薬剤は、アクリル酸およびメタクリル酸の多官能性塩である。同時薬剤のこの群の内、SARET634(その主成分は、ジメタクリル酸亜鉛である)およびSARET521(その主成分は二官能性アクリレートエステルである)が最も好ましい。トリメチルプロパン トリメチルアクリレートが別の例である。このような同時薬剤のより広範な説明は、「Inhibiting Prevulcanization of Rubber With Polyfunctional Methacrylate Monomers as Cross−Linking Coagents with Peroxides」と題された、Cowperthwaiteらに対する、1973年8月7日に発行された米国特許第3,751,878号、および「Free Radical Cured Rubber Employing Acrylate or Methacrylate Esters of Hydroxybenzene and Hydroxynaphthalene Compounds as Co−Curing Agents」と題された、Cottmanらに対して、1994年5月10日に発行された米国特許第5,310,811号に見出される。
【0028】
ペルオキシド以外のフリーラジカル加硫剤は、上に参照される、米国特許第3,892,697号に開示される。
【0029】
硫黄ベース硫化システムは、小さな硫黄含有分子と硫黄含有ポリマーとの両方を含む。硫黄ベース硫化化学物質の例としては、以下がある:
メルカプトチアゾール、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびその塩、特に、その亜鉛塩;
チウラムスルフィドおよびチウラムジスルフィド、例えば、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、およびテトラエチルチウラムジスルフィド;
グアニジン;
チオウレアおよび飽和チオウレア;
チオカルバニリドおよび飽和チオカルバニリド、例えば、o−ジメチル−チオカルバニリドおよびその異性体およびアルキルホモログ;
亜鉛アルキルジチオカルバメート、例えば、亜鉛ジメチルジチオカルバメート、およびこれらの物質を含む促進剤;
ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムまたはジメチルジチオカルバミン酸カリウム;
ジアルキルチオカルバミン酸セレニウム、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸セレニウム;
2−ベンゾチアジル−N,N−ジエチルチオカルバミルスルフィド;
キサンテン(例えば、ジブチルキサントゲンジスルフィドおよびキサントゲンポリスルフィド);
アルキルフェノールスルフィド;
ジペンタメチレンテトラスルフィド;
硫黄含有ポリマー(例えば、Thiokol VA−3);
4,4−ジチオモルホリン;
種々のジスルフィド(例えば、ベンゾチアジル(bensothiazyl)ジスルフィドおよびビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド)。
【0030】
本発明のディップ成形された物品が、ヒトの皮膚と接触させて使用することが意図される場合、好ましい配合成分は、生体適合性であるフィルムを提供する成分である。硫黄硫化システムのための目的に役立つ配合成分の例は、キサントゲン化合物(例えば、ジイソプロピルキサントゲンポリスルフィド、ジベンジルジチオカルバメート、およびより高度なアルキル亜鉛ジチオカルバメート)である。過酸化物硫化システムのために、好ましい配合成分は、ジカミルペルオキシド(dicumyl peroxide)である。
【0031】
強化剤および他の添加剤はまた、本発明のいくつかの実施形態に含まれる。強化剤の例としては、フィームドシリカ、カーボンブラック、およびチョップトファイバーである。例えば、医用グローブの引裂き強度を改善するためのカットファイバーの使用は、2000年2月8日に発行された米国特許第6,021,524号(Wuら、表題「Cut Resistant Polymeric Films」)に開示され、そしてディップフィルムの引裂き強度を改善するためのフィームドシリカの使用は、1999年2月16日に発行された米国特許第5,872,173号(Anand、表題「Synthetic Latex Compositions and Articles Produced Therefrom」)に開示される。酸化防止剤およびオゾン分解防止剤はまた、環境老化に対して保護するために含まれ得る。色素および染料はまた、ラバーデバイスの形成および製造の当業者に公知の他の任意の添加剤として含まれ得る。
【0032】
本発明に従って、ラテックスディップ成形および硫化のための例示的な手順は、以下の通りである:
1.天然ゴムまたは合成ゴムのラテックスのいずれかは、硫化剤および可能であれば、酸化防止剤、安定剤またはそれらの両方で配合される。有機過酸化物硫化を使用する場合、しばしば、有機過酸化物を含むラテックス分散物に単に添加するだけで充分である。
【0033】
2.この工程でのラテックスの予備硫化は任意であり、そして本発明の全ての実施形態に必要とされない。使用される場合、予備硫化は、ウェットゲルの強度を改善し得る。
【0034】
3.ディップ成形剤は、必要に応じて、凝析剤含有液体の浴中にこの形成剤を浸すことによって化学的凝析剤でコーティングされ、次いで、成形剤を取り除き、そして乾燥する。
【0035】
4.凝析剤でコーティングされるか、またはされていないディップ成形剤を、配合されたラテックスで充填された浴に浸す。
【0036】
5.このディップ成形剤は、この浴からゆっくりと取り出される。この成形剤が、凝析剤コーティングを有する場合、ここで、その表面上にウェットラテックスゲルを有する。凝析剤コーティングが適用されない場合、この成形剤は、その表面上に液体ラテックスフィルムを有する。
【0037】
6.一般に、掃引ガスまたは部分的な真空のいずれかの状態で、従来のオーブンの温かい空気中でエバポレートすることによって、ディップ形成剤の表面上のラテックスフィルム中の過剰の水を除去する。このプロセスは、エバポレーションを効率良くするために、赤外線、マイクロ波、または高周波、または任意の他のタイプのエネルギーで補われる。真空乾燥は、真空前に、高温の空気に乾燥ラテックスを曝露する必要性が避けられるので利点がある。
【0038】
7.このラテックスは、ラテックスを硫化するに充分な時間、ディップ成形剤を高温液体媒体浴に浸すことによって硫化される。
【0039】
8.硫化されたラテックスフィルムを含むディップ成形剤は、高温媒体浴から除去され、そして空気または水の流れのいずれかで冷却される。水は、凝固された塩のような、任意の過剰の凝固された熱移動媒体を洗い落とすために使用され得る。
【0040】
9.硫化されたラテックス物品は、ディップ成形剤から、手動でまたは機械的に剥ぎ落される。
【0041】
本発明に従う、溶媒のディップ成形および硫化のための例示的な手順は、以下の通りである:
1.合成ゴムまたは天然ゴムのエラストマーの固体顆粒を、セメントを形成するための適切な溶媒に溶解する。適切な配合剤は、このセメント中に分散されるか、または溶解される。有機過酸化物を含むラテックス手順に使用されるものと同様の配合剤が使用され得る。
【0042】
2.全ての配合剤が、このセメント中で均一に分散される場合、予備硫化は必要ではない。このセメントをディップタンク中に配置し、そしてディップ形成剤を、このセメント中に浸す。
【0043】
3.このディップ成形剤を、このディップタックからゆっくりと取り出し、このディップ成形剤の表面上にセメントのフィルムを残す。
【0044】
4.溶媒を、このディップ成形剤からエバポレートし、表面上に均一なポリマーフィルムを残す。自然乾燥または温かい空気での乾燥により、溶媒の除去を達成し得る。
【0045】
5.このポリマーフィルムを、加熱した液体媒体浴中においてこのディップ成形剤を浸すことによって硫化する。適切な時間後に、このディップ成形剤を浴から取り出し、そして空気または水流中で冷却する。
【0046】
6.次いで、このディップ成形剤を水中で浸漬して、フィルムとディップ成形剤との間の接着を破壊するのを助ける。
【0047】
7.この硫化ラテックス物品を、このディップ成形剤から手動でまたは機械的に剥ぎ取る。
【0048】
本発明は、配合されたラテックスまたは溶液の予備硫化および成熟のための必要性を実質的に排除する一方で、予備硫化は、他の例外的に低いウェットゲルまたはドライゲル強度を有するラテックスに有用である。予備硫化は、任意の従来の方法によって達成され得る。このような方法としては、硫黄予備硫化、過酸化物予備硫化、および高エネルギー放射での予備硫化が挙げられるが、これらに限定されず、これらの方法の全ては、先行技術において実施され得る。良好なウェットゲル強度は、フルムを乾燥した場合に、フィルム中に亀裂が形成するのを防止するのに有用である。天然ゴムの場合において、ウェットゲルおよびドライゲルの両方の強度は、予備硫化なしで一般に必要とされる。しかし、数種の合成ラテックスのゲル強度は低く、そして予備硫化は、この加工を改善し得るが、本質的あではない。高いエネルギー放射による予備硫化はまた、必要とされる硫化化学物質の量を減少させるのに有用であり得、従って、最終製品において所望されない残留化学物質のレベルを減少させるのに有用である。
【0049】
ディップフィルムまたは物品が硫化される範囲を決定することが、しばしば有用である。通常に使用される方法は、硫化フィルムの円形ディスクを切り出し、そして溶媒浴中にディスクを浸漬して、直径の変化を測定する。この試験の細かい例およびポリイソプレンラテックスとの使用は、1965年11月2日に発行された米国特許第3,215,649号(Preissら、表題「Synthetic Latex」)に見出される。同様の試験方法は、他のタイプの硫化ポリマーに利用可能であり、そして当業者に周知である。
【0050】
ディップ成形部分が硫化される後に、さらなる硫化が製品の特性をさらに改善する最適に手段として実施され得る。好ましい方法は、この硫化されたフィルムにさらなる量の硫化剤を吸収させる方法であり、続いて、温かい液体浴中で第2の熱処理をする方法である。この硫化剤は、第1の工程(ディップ成形工程の直後の工程)において使用されるのと同一または異なり得る。同様に、加熱高温浴は、先に使用された浴と同一または異なり得る。
【0051】
例えば、ジカミルペルオキシドを用いて硫化されたフィルムに関して、この硫化ラバーフィルムは、n−ペンタン、n−ヘキサン、トルエン、または酢酸エチルのような溶媒中のジカミルペルオキシド中で浸漬され得る。過酸化物溶液は、充分にフィルムを膨張させ、これにより、ジカミルペルオキシドおよび溶媒を、硫化されたフィルムに均一に浸透させる。次いで、このフィルムを、溶媒から取り出し、そして溶媒をエバポレートし、フィルム中に予想可能な量のジカミルペルオキシドを残す。次いで、このフィルムを、適切な時間、前述のように温かい液体浴中に浸す。この適切な時間とは、ラテックス中での浸漬開始後に使用されるのと同一時間であり得る。次いで、このフィルムを取り出し、そして水中でリンスする。他の硫化剤または硫化剤の組み合わせは、同様の実施と置換され得る。
【0052】
この2工程(ポスト硫化プロセス)において硫化される架橋剤の物理学的な性質は、単一のポスト硫化のみが実施された架橋剤のプロセスと異なり、そしてしばしば良好である。従って、この第二のポスト硫化は、既に硫化されたフィルムの再加工およびそのフィルム特性の増強を可能にする。これは、例えば、右心カテーテルのバルーンの場合において特に有用であり、ここで、第二のポスト硫化は、空気の膨張圧および放出圧の有意により高いレベルを達成し得る。ジカミルペルオキシドの例に戻ると、良質の右心カテーテルに関するジカミルペルオキシドの代表的な範囲は、約1〜約1.5phr(乾燥ゴムのパーツハンドレット比(perts hundred ratio)、またはパーツパーハンドレッド重量(perts per hundred weight))である。この中で、ジカミルペルオキシドの0.2〜0.5の過剰なphrが、空気の膨張および放出特性の有意な改善を達成するために、引き続く加熱工程で吸収される。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は、例示の目的のために提供され、そして本発明の範囲を限定することを意図しない。これらの実施例において引用される全ての特許および刊行物は、本明細書中でその全体が参考として援用されている。
【0054】
(実施例1−比較)
この比較実施例は、ラテックスフィルムが有機過酸化物含有ラテックスからディップ成形され、次いで酸素含有環境中で硫化される場合に生じる分解特性を実証する。
【0055】
40%の固体のジカミルペルオキシドエマルジョンは、以下の成分と組み合わせることによって調製された:
ジカミルペルオキシド 100重量部
トルエン 35重量部
オレイン酸 5.6重量部
脱イオン化水 101重量部
30%のKOH水溶液 2.6重量部。
【0056】
60重量%の濃度の天然ゴムのラテックスの固体を使用して、Diversified Compounders,Inc.,Los Angeles,California,USAによって供給される。水性凝集剤含有の約35重量%の硝酸カルシウム、0.5重量%のIgepal CO−630界面活性剤(Rhone−Poulenic,Cranbury,New Jersey,USA)、および64.5重量%の脱イオン化水をまた使用した。透明なガラスチューブ32mm(直径)を、ディップ成形剤として使用した。
【0057】
1kgの天然ラテックスに21gのジカミルペルオキシドエマルジョンを添加した。得られた組成物を、実験室のミキサーで30分間、中位の剪断下で混合した。次いで、この混合物を、実験室のロールミルで30分間、回転させ、次いで、0.3絶対気圧で10分間脱気した。これにより、1.4phrのジカミルペルオキシドで処方された約1Lの天然ゴムを得た。
【0058】
このガラス形成剤を、凝集剤溶液中で浸漬し、5秒間休止し、取り出して、乾燥することなく、処方したラテックス中に浸漬させた。この成形剤を、5秒間ラテックス中で休止し、次いで取り出した。次いで、この成形剤を、60℃のオーブンの熱い空気中で60分間乾燥した。乾燥後に、この成形剤を熱い空気中に配置し、110℃のオーブンで硫化させた。1種の成形剤を10分毎に取り出し、そしてそのラテックスフィルムを試験した。10分間の間隔で50分間にわたって観測し、そしてこれらの結果を表Iに列挙する。
【0059】
(表1)
(比較実施例:浸漬フィルムの外見および物理的特性 対 110℃での熱気硬化オーブン中で費やされた時間)
【0060】
【表1】

【0061】
表1の観察は、有機過酸化物処方ラテックスから調製された浸漬ラテックスフィルムが、硬化環境中の酸素との相互作用に起因して、熱気オーブン中で首尾よく硬化され得ないことを示す。
【0062】
(実施例2−本発明に従うプロセス:天然ゴムラテックス)
この実施例は、実施例1と同じ材料を使用するが、溶融塩浴硬化を熱気硬化に換えた、本発明のプロセスを例示する。エタノール中の凝析剤溶液が使用され、この凝析剤溶液は、約20重量%の硝酸カルシウム、および0.5重量% Igepal CO−630、そして残りは、変性エタノールを含む。
【0063】
1kgの天然ゴムラテックスに、19.5gの過酸化ジクミルエマルジョンを添加し、そして得られた組成物を、ラボラトリーミキサーで30分間、中程度の剪断下で混合した。さらに、フュームしたシリカを、15重量%の水性分散系(CABO GUARD T−122)(Cabot Corporation,Boston Massachusetts,USAによって提供される)の形態で、2phrで添加した。30分間の混合後、この溶液を、ラボラトリーロールミルで30分間ロールし、次いで0.3絶対大気圧で10分間脱気した。これにより、1.3phrの過酸化ジクミルを用いて処方された約1リットルの天然ゴムラテックスを得た。
【0064】
ガラス形成剤を、凝析剤溶液に浸漬し、次いで、40℃で5分間乾燥し、次いで処方されたラテックスにゆっくりと浸漬し、ここで、この形成剤を、5秒間放置した。次いで、この形成剤を、ゆっくりと引き出し、そして60℃で60分間乾燥した。一旦乾燥されると、この形成剤およびその接着フィルムを、350°F(177℃)で9分間溶融塩浴に浸した。次いで、このフィルムを、塩浴から取出し、リンスし、ストリップし、そして引張り強度のために準備した。このフィルムは、半透明〜透明であり、そしてわずかに琥珀色であった。これは、多くのイオウ加硫したゴムフィルムより透明であった。
【0065】
標準的なコンドームリング引張り試料を調製し、そしてASTM仕様D3492に従って試験した。得られた引張り値を表IIに列挙する:
(表2)
(本発明の実施例−天然ゴム:引張り係数)
【0066】
【表2】

【0067】
試験試料の極限伸長は、706%であった。
【0068】
これらの結果は、この材料の引張り強度が、任意の既知の手段によって加硫された天然ゴムラテックスについての先に公開された値と比較した場合、顕著である。これらの結果と、ASTM標準D3577−98(「Standard Specification for Rubber Surgical Gloves」)およびASTM標準D3492(「Standard Specification for Rubber Contraceptives」)との比較は、この実施例において製造されたフィルムが、外科用グローブおよびコンドームの両方についての必要な引張り強度の要求に合致し得ることを示す。
【0069】
(実施例3−本発明に従うプロセス:ポリクロロプレン)
この実施例は、先の実施例と類似する手順を使用する、ポリクロロプレンに適用されるような本発明のプロセスを例示する。ポリクロロプレンは、60重量%の固体を含むラテックスであり、DuPont−Dow Elastomers,LLC,Wilmington,Delaware,USAによって供給され、そしてNEOPRENE 750として市販されている。
【0070】
実施例1におけるように、過酸化ジクミルエマルジョンを、このラテックス;に添加して、0.1phrの過酸化ジクミルを含む処方したラテックスを達成した。またこのラテックスに、フュームしたシリカ(強化剤)(これは、15重量%の水性分散系(Cabot Corporation,Boston Massachusetts,USAによって、CABO GUARD T−22として供給される)として添加される)を添加して、3phrのフュームしたシリカのレベルを達成した。
【0071】
ガラス形成剤を、水性凝析剤溶液(これは、約35重量%の硝酸カルシウム、および0.5重量% IGEPAL CO−630界面活性剤、そして残りは、脱イオン水を含む)に浸漬し、次いで、乾燥した。次いで、この形成剤を、処方されたラテックスに浸漬し、そしてラテックス中に5秒間放置し、次いで、ゆっくりと引き出し、そして60℃で60分間乾燥した。乾燥後、このラテックスフィルムを有する形成剤を、350°F(177℃)で9分間、先の実施例で使用された浴と同じ組成物を有する溶融塩浴に浸した。次いで、この形成剤およびフィルムを、塩浴から取出し、リンスし、ストリップし、そして引張り強度のために準備した。この得られたラテックスフィルムは、透明(琥珀色)であった。
【0072】
引張り測定を、3つの引張りリングを使用して、ASTM仕様D3492にしたがって行い、表IIIに列挙される引張り値を得た。
【0073】
(表III)
(本発明の実施例−ポリクロロプレン:引張り係数)
【0074】
【表3】

【0075】
これらの引張り値は、合成ゴム外科用グローブについてのASTM標準D−3577−98を通過するに十分以上である。
【0076】
(実施例4−本発明に従うプロセス:ポリウレタン)
この実施例は、特にフィルムが形成された後の熱可塑性ポリウレタンフィルムの改変における、ポリウレタンに適用されるような本発明のプロセスを例示する。
【0077】
2つの溶媒浸漬成形溶液を調製した。第一のものは、15重量% 熱可塑性ポリウレタン(MORTHANE PS49,Rohm and Haas Company,Chicago Heights,Illinois,USA)および85重量%のテトラヒドロフランからなる。コントロールフィルム(コンドームの形態)を、このフォームを有機溶液に浸漬することによって調製した(「Method of Forming a Polymeric Casing With Textured Surface」との名称の米国特許第4,954,309号(1990年9月4日にMcGlothlinらに発行された))。乾燥後、このように形成されたポリウレタンコンドームを、形成剤からストリッピングした。第二の浸漬成形溶液を、第一の溶液に、0.5phrの過酸化ジクミルを添加することによって形成し、そして第二の浸漬成形コンドームを、浸漬され乾燥されたコンドームを、次いで、350°F(177℃)の溶融塩浴(先の実施例において使用されたものと同じ)に9分間浸すことを除いて、第一の浸漬成形溶液と本質的に同じ様式で調製した。
【0078】
コントロールコンドームと試験コンドームの両方の一部分を、耐溶媒試験に供した。この試験に従って、両方のフィルムを、テトラヒドロフランに浸した。このコントールフィルムは、テトラヒドロフランに浸された場合に完全に溶解したが、第二のフィルム(これは、過酸化ジクミル処理によって架橋されている)は溶解せず、その代わり有意に膨潤した。この試験は、本発明のプロセスの結果としてポリウレタン(一般に代表的な熱可塑性エラストマーとして)からなる、浸漬成形された物品の特性の改善を例示する。
【0079】
(実施例5−本発明に従うプロセス:加硫天然ゴムラテックス)
この実施例は、2つの予め加硫された天然ゴムラテックス(1つはイオウによって、他方は放射線による)に適用される本発明のプロセスを例示する。このイオウで予め加硫されたラテックスは、60%固体REVULTEX HLA−21(Revertex Americas,St.Louis,Missouri,USAから)であった。放射線で予め加硫されたラテックスを、Guthrie Latex,Inc.Tucson,Arizonaから得、そして単に、「RVNRL」として販売されている。両方のラテックスは、それらの低レベルの残留化学物質、従ってそれらの低い毒性プロフィールについて注意のこと。低い毒性プロフィールのために、これらの材料の引張り強度は、多くの他の天然ゴムラテックスの引張り強度よりも低い。全ての先の実施例において使用されたような標準的な透明ガラスのコンドーム形成剤(直径32mm)を、浸漬形成剤として使用した。
【0080】
以下のような4つの調合されたラテックスを使用した:
1.REVULTEX HLA−21(イオウで予め加硫されたラテックス)(Revertex Americasによって供給される)。
【0081】
2.REVULTEX HLA−21(イオウで予め加硫されたラテックス)(Revertex Americasによって供給される)(1.0phrまで過酸化ジクミルを補充されている)。
【0082】
3.RVNRL(Guthrie Latex,Incによって供給される)。
【0083】
4.RVNRL(Guthrie Latex,Incによって供給される)(1.0phrまで過酸化ジクミルを補充されている)。
【0084】
1つのコンドームを、凝固溶液ならびに実施例3の浸漬手順および乾燥手順を使用して、これら3つのラテックスの各々から形成した。次いで、この全てを60℃で60分間乾燥させた。過酸化ジクミルを含まないラテックスから形成したこのコンドームを、熱風オーブン中150°F(66℃)で45分間さらに乾燥し、粉末化し、小片化し、そして取っておいた。過酸化ジクミルを含まないラテックスから形成したコンドームを、以前の実施例において使用したものと同じ記載の溶融塩浴への、350°F(177℃)での9分間の浸漬によってさらに処理した。4つ全てのコンドームをリンスし、粉末化し、そして小片化した。
【0085】
張力値を、以前の実施例に記載される標準的な手順を使用して、4つ全てのコンドームについて得た。この結果を、表IVに列挙する。
【0086】
(表IV)
本発明の実施例−前加硫した天然ゴム:張力係数
【0087】
【表4】

【0088】
表IVにおける記号「n/a」は、「適用不可」を意味する。なぜなら、最後の2列で示されるように、この伸長時または伸長前に、破壊が生じたためである。
【0089】
これらの結果は、両方の前加硫方法(硫黄ベースまたは放射線)の浸漬成形コンドームの特性が、本発明に従う後加硫によって増大することを示す。
【0090】
(実施例6−本発明に従うプロセス:第2の後加硫のための吸収による加硫剤の添加)
この実施例は、加硫されそして完全に形成された浸漬成形物品が、加硫剤の溶液にこの物品を最初に浸漬して、この溶液からこの薬剤を吸収し、次いで吸収後にこの物品を再加硫することによって第2の後加硫される、本発明の局面を示す。この実施例において使用するゴム材料は、n−ヘキサン中の10%溶液として供給される合成ポリイソプレンゴムであった。このポリイソプレンは、Goodyear Tire and Rubber Company,Akron,Ohio,USAからのNATSYN 2200であり、そしてこれを、中速剪断研究用ミキサーで攪拌することによって、ヘキサンに溶解した。得られた溶液を2つのバッチに分割し、そして最初のバッチを、過酸化ジクミルを1.5phrまで添加することによって補充し、一方、第2のバッチを、過酸化ジクミルを2.0phrまで添加することによって補充した。0.091インチ(0.23cm)の外径を有するステンレス鋼浸漬マンドレルを、順番に、この溶液に浸漬し、引き出し、風乾し、そして再浸漬し、これを約7回繰り返し、約0.010インチ(0.0254cm)の厚みの単一壁バルーンを構築した。温風オーブン中で徹底的に乾燥して本質的に溶媒の全てを除去した後、ポリイソプレンおよび過酸化ジクミルの乾燥混合物でコーティングされた浸漬成形機(former)の一部を、350°F(177℃)で9分間、溶融塩浴(以前の実施例において使用したものと同じ)に浸漬した。得られたバルーンを、水でリンスし、コーンスターチで粉末化し、そしてこの浸漬成形機から取り出した。次いで、各バルーンを、約1cm長のセグメントに切断して、右心カテーテルバルーンを形成した。
【0091】
1.5phrの過酸化ジクミル浸漬溶液から形成したバールンの6つを、酢酸エチル中に溶解した過酸化ジクミルからなる吸収溶液に30分間浸漬し、この溶液は、バルーンの過酸化ジクミル含有量0.5phrを生じるのに十分な濃度および十分な体積を有する。次いで、このバルーンを、この溶液から除去し、そして温風オーブン中で徹底的に風乾して、本質的に全ての酢酸エチルを除去した。次いで、このバルーンを、溶融塩浴(以前の実施例において記載した)に、350°F(177℃)で9分間浸漬した。次いで、このバルーンを除去し、水中でリンスし、乾燥し、そしてコーンスターチで粉末化した。
【0092】
各処理群からの代表的なバルーンを、膨張試験の固定物に備え付け、そして空気圧破裂試験に供して、膨張の際にこのバルーンを破裂するのに必要な圧力を決定した。この結果を、表Vに示す。
【0093】
(表V)
本発明の実施例−1段階対2段階の後加硫破裂圧
【0094】
【表5】

【0095】
これらの結果は、既に形成された浸漬成形ゴム物品による加硫剤の吸収、続いて温液浴中での加硫によって達成される2段階後加硫によって、物理特性における予想外の改善が、同レベルの加硫剤での1段階加硫と比較して達成されたことを実証する。
【0096】
(実施例7−天然ゴムラテックスを使用する比較:本発明に従う温液媒体硬化対先行技術の熱風硬化:)
この実施例は、先行技術の熱風硬化方法と比較して、本発明によって改善が提供されることを実証する。この比較において、硫黄ベースの硬化システムで補充した天然ゴムラテックスを使用した。
【0097】
天然ゴムラテックス(60%固形分)を、OCTACURE 590(Tiarco Chemical,Dalton,Georgia,USA)の名前を有する硬化システム(供給者に従って、化合されたラテックスが、2phrの酸化亜鉛、1.65phrの硫黄、0.5phrの亜鉛−2−メルカプトベンゾチアゾール、および0.75phrの不特定の抗酸化剤を含むような量)で補充した。このラテックスを脱気し、そして2つのコンドームを、実施例2に記載される様式で、その実施例に記載される凝固剤を使用して、このラテックスから調製した。次いで、このコンドームのうち1つを、なおこの成形機上にある間に、100℃で45分間、熱風中で加硫し、次いで、さらに60分間110℃で加硫した。第2のコンドーム(これもまた、この成形機上にある間に)を100℃で45分間乾燥させ、次いで、以前の実施例において使用したのと同じ記載の溶融塩浴中に、350°F(177℃)で9分間浸漬した。
【0098】
張力試験を、実施例2に記載するのと同じ様式で、両方のコンドームについて行った。この試験の結果を、表VIに列挙する。
【0099】
(表VI)
比較−熱風対溶融塩浴の後加硫張力係数
【0100】
【表6】

【0101】
表VIにおける記号「n/a」は、「適用不可」を意味する。なぜなら、最後の列で示されるように、この伸張時または伸張前に、破壊が生じたためである。
【0102】
これらのデータは、本発明が、前加硫の必要なしで天然ゴムラテックスに適用可能であることを実証し、そしてまた、本発明のプロセスが、先行技術のプロセスによって調製される対応する産物の特性を大きく超える張力特性を有する産物を生成することを示す。
【0103】
(実施例8−ラテックス混合物に対する本発明の適用)
この実施例は、ラテックスの混合物に対する本発明のプロセスの適用を実証する。
【0104】
混合物を、等重量部のShell IR−307合成ポリイソプレンラテックスおよびNEOPRENE 750ポリクロロプレンラテックスを合わせることによって調製した。実施例1に記載の過酸化ジクミル分散体を添加して、0.7phrの過酸化ジクミルを含むラテックスを達成した。1つのコンドームを、実施例2に記載の方法を使用してこのラテックスから作製し、次いで、以前の実施例において使用したものと同じ記載の溶融塩浴中に、350°F(177℃)で9分間浸漬し、次いでリンスし、そして粉末化した。このコンドームは不透明であり、そして琥珀色であった。試験試料を調製し、そして以前の実施例と同様に、張力係数測定を行った。この結果を、表VIIに列挙する。
【0105】
(表VII)
本発明の実施例−混合ラテックス:張力係数
【0106】
【表7】

【0107】
上記は、主に例示の目的で提供される。本明細書中に記載される本発明の材料およびその特性、ならびに操作条件、手順工程、および他のパラメータは、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の方法でさらに改変または置換され得ることが、当業者に容易に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムの実質的に細孔を有さない物品の調製のための方法であって、該方法は、以下:
(a)熱硫化可能組成物を含むラテックスに、形成部材を浸漬する工程であって、該組成物は、以下:
(i)ゴム形成物質:および
(ii)硫化剤、を含み、
該形成部材は、該物品の外面に対して外形相補性を有する外面を有する、工程;
(b)該形成部材を該ラテックスから、該外面上に該熱硫化可能組成物のフィルムが残るような様式で引き出す工程;
(c)該形成部材上に該液体フィルムを有する該形成部材を、該硫化剤により該ゴム形成物質の硫化が生じるのに十分な温度および時間、化学的に不活性な液体浴に浸すことによって該ゴム形成物質を硫化させる工程;ならびに
(d)該液体浴から該形成部材を引き出し、該実質的に細孔を有さないゴム物品を該形成部材から分離する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記ゴム形成物質が、天然ゴムおよびポリクロロプレンからなる群から選択されるメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(c)の液体浴が、溶融無機塩およびそれらの混合物からなる群から選択されるメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゴム形成物質が、天然ゴムであり、前記工程(c)の温度が、約150℃〜約235℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記硫化剤が、有機ペルオキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
硫化ゴムの物品の引張り強さを増大するための方法であって、該方法は、以下:
(a)硫化剤の溶液に該物品を浸して、該物品に該溶液から該硫化剤を吸収させる、工程;
(b)該物品を該硫化剤の溶液から引き出す工程;
(c)該吸収された硫化剤を含む該物品を、該硫化剤により該硫化されたゴムのさらなる硫化を引き起こすのに十分な温度および時間、化学的に不活性な液体浴に浸す、工程;ならびに
(d)該物品を該液体浴から引き出す、工程、
を包含する、方法。

【公開番号】特開2007−301999(P2007−301999A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128683(P2007−128683)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願2001−575676(P2001−575676)の分割
【原出願日】平成13年4月5日(2001.4.5)
【出願人】(507154099)エイペックス メディカル テクノロジーズ, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】