説明

溶融押出可能なポリマー用加工助剤

押出可能な組成物であって、非フッ素化の溶融加工可能なホストポリマーと、前記押出可能な組成物の総重量を基準にして約25重量百万分率〜約50重量%のフルオロポリマーとを含み、前記フルオロポリマーが、前記フルオロポリマーの総重量を基準にして45〜95モルパーセントのテトラフルオロエチレン(TFE)および前記フルオロポリマーの総重量を基準にして5〜55モルパーセントの3,3,3−トリフルオロプロピレン(TFP)の共重合単位から実質的になる、押出可能な組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融押出可能な、すなわち溶融加工可能なポリマー、特に非フッ素化の熱可塑性ポリマーの、押出特性を改善するフルオロエラストマー加工助剤に関する。より具体的には、本発明は、テトラフルオロエチレン(TFE)および有効量の3,3,3−トリフルオロプロピレン(TFP)に基づくフルオロエラストマー加工助剤を上記ポリマーに組み込むことによる、そのようなポリマーの溶融押出を改善するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子量熱可塑性ポリマー(例えば、ポリアミド、ポリエステルおよびポリオレフィンなど)を成形品(例えば、管、パイプ、電線被覆、またはフィルム)とする溶融押出は周知の手順により達成され、回転スクリューが、押出機バレルを通して粘性ポリマー溶融物をダイに押し込み所望の形態にポリマーを成形し、次いで、その押出物、すなわち成形品は、クエンチされるかまたは融点より低い温度にゆっくりと冷却されてダイオリフィスの形となる。
【0003】
単位生産費を下げるために、ポリマーを可能な限り高速で押出すことが望ましい。より高い押出速度は、押出スクリューの回転速度を上昇させることにより容易に得られ得る。しかしながら、この技術は、加工されるポリマーの粘弾特性により課せられる制限を受ける。流動不安定性は、ある臨海条件(例えば、粘度および材料処理量)を超えたときに起こり得る。非常に高い押出速度においては、剪断発熱により容認し得ない量のポリマーの熱分解が生じ得、ある種のポリマーについては、押出物の変形(例えば、表面溶融破壊(すなわち、サメ肌)、粘着滑り(stick−slip)、および全体溶融破壊(gross melt fracture))が認められた。
【0004】
フルオロポリマー加工助剤技術における進歩の大部分は、比較的非極性の脂肪族ポリマー(例えば、ポリオレフィンまたは改質ポリオレフィン)における加工助剤の使用に集中していた。非脂肪族極性ポリマー(例えば、ポリアミドおよびポリエステル)が潜在的に適切なホスト樹脂として記載される場合でさえ、それらの使用が例示されることはめったにない。
【0005】
Blatzによる米国特許第3,125,547号明細書は、溶融押出可能なオレフィンおよび改質オレフィンの加工性を改善するための、加工温度において流体状態である0.01〜2.0重量%のフルオロポリマーの使用について記載している。加工性を改善するのに有用であることが確認されたフルオロポリマーには、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンのモノマー単位を含むフルオロポリマーがあるが、但し、原子フッ素と炭素との比率が少なくとも1:2である。特に好ましいのは、フルオロカーボンゴム(例えば、ヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのコポリマー)である。
【0006】
Finlayによる米国特許第4,529,784号明細書は、式R1CH=CR23の硬化部位モノマーであって、式中、R1およびR2は、独立して、水素およびフッ素から選択され、R3は、独立して、水素、フッ素、アルキルおよびペルフルオロアルキルから選択される硬化部位モノマーを有する、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(メチルビニル)エーテルとの弾性コポリマーについて記載している。これらの弾性コポリマーは、優れた架橋安定性ならびに有機塩基および他の流体に対して優れた抵抗性を示すことが認められたが、それらが、非極性ポリマーまたは極性ポリマーのいずれにとっても加工助剤として有効であることは示されていない。
【0007】
Chapmanらによる米国特許第5,464,904号明細書は、ポリオレフィンにおける加工助剤として用いるための部分的に結晶質のTFE−HFPポリマーの使用について開示している。この特許は、TFE−HFPポリマーの溶融終点温度(end−of−melting temperature)がホスト樹脂の加工温度から20℃以内である場合に、非常に優れた成果が得られることを教示している。
【0008】
Anolickらによる米国特許第6,486,280(B1)号明細書は、他の用途と共に、ポリオレフィン(例えば、高分子量の高密度ポリエチレンおよび直鎖状の低密度エチレンコポリマー、すなわち非極性ポリマー)における加工助剤として使用され得る非晶質テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン(TFE−HFP)コポリマーについて記載している。極性ポリマーの加工性については述べられていない。記載された非晶質コポリマーには、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)に由来する繰返し単位、1種以上の第二のモノマー、その残りとしてテトラフルオロエチレン(TFE)を含み、第二のモノマーが3,3,3−トリフルオロプロペンであり得るものがある。
【0009】
Lavalleeらによる米国特許第6,780,481号明細書は、特定のフルオロポリマーの非脂肪族ホスト樹脂用加工助剤としての使用について開示している。これらのフルオロポリマーは、少なくとも2種のモノマーを含み、その内少なくとも1種はフッ素化されている。これらのフッ素化モノマーは、3,3,3−トリフルオロプロピレン(TFP)を除外する基準に基づいて選択される。
【0010】
Dillonらによる米国特許第6,380,313号明細書は、置換ペルフルオロビニルエーテルに由来する単位を含むように改変されたフルオロポリマーを開示している。これらのフルオロポリマーは、極性の非炭化水素ホスト樹脂または攻撃的な添加剤(例えば、ヒンダードアミン光安定剤)を含む炭化水素ホスト樹脂における使用に適している。ペルフルオロビニルエーテルモノマーに加えて、権利請求されるフルオロポリマーは、選択基準に基づいて3,3,3−トリフルオロプロピレン(TFP)を除外する60〜99.9重量%のフルオロモノマーを含む。
【0011】
Chapmanらによる米国特許第5,132,368号明細書は、ホスト樹脂および0.002〜0.5重量%のフルオロポリマーを含む押出可能な組成物を開示している。非極性のポリオレフィン樹脂ならびに極性の脂肪族および非脂肪族ホスト樹脂の両方が例示されている。このフルオロポリマーは、ポリ−TFEまたはペルフルオロモノマーと共重合させたTFEから選択され、特定の官能基を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、溶融押出可能な、すなわち溶融加工可能なポリマーの押出特性を改善する、改善された経済的なフルオロポリマー加工助剤が依然として必要とされている。そのようなポリマーの押出特性の改善は、以下の属性のうちの1つ以上を通して認められ得る:(i)低減したダイ圧力;(ii)所与のスクリュー速度に対して増大した押出量;(iii)低減した溶融欠陥(例えば、溶融破壊)発生;または(iv)そのようなポリマーが押出の間にダイリップ堆積(die lip build−up)を引き起こす傾向の低減。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、押出可能な組成物であって、前記押出可能な組成物の総重量を基準にして約25重量百万分率〜約50重量%のフルオロポリマーを含む非フッ素化の溶融加工可能なポリマー(すなわち、ホストポリマー)を含み、前記フルオロポリマーは、以下のモノマー:
A)前記フルオロポリマーの総重量を基準にして45〜95モルパーセントのテトラフルオロエチレン(TFE);および
B)前記フルオロポリマーの総重量を基準にして5〜55モルパーセントの3,3,3−トリフルオロプロピレン(TFP)
の共重合単位から実質的になる、組成物である。
【0014】
ホスト樹脂の最終成形工程の間のホスト樹脂中のフルオロポリマーの典型的な濃度は、押出可能な組成物の総重量を基準にして25〜2000ppmの範囲にわたる。溶融加工可能なポリマー中の約50重量%までのより高い濃度のTFE−TFPフルオロポリマーが、最終成形工程の間の押出機への投与を容易にするためのマスターバッチとして有用である。
【0015】
好ましい実施形態において、TFEは、フルオロポリマーの総重量を基準にして少なくとも70モルパーセントのレベルでフルオロポリマー中に存在し、TFPは、フルオロポリマーの総重量を基準にして少なくとも15モルパーセントのレベルでフルオロポリマー中に存在する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、溶融加工可能なポリマーの押出特性を、上記ポリマーに、上記ポリマーの総重量を基準にして約25重量百万分率〜約50重量%のフルオロポリマーを組み込むことにより改善するための方法であって、上記フルオロポリマーは、以下のモノマー:
A)前記フルオロポリマーの総重量を基準にして45〜95モルパーセントのテトラフルオロエチレン(TFE);および
B)前記フルオロポリマーの総重量を基準にして5〜55モルパーセントの3,3,3−トリフルオロプロピレン(TFP)
の共重合単位から実質的になる、方法である。
【0017】
押出の間、上記フルオロポリマーは、加工装置の内部表面上に薄層として堆積すると考えられる。薄層として、上記フルオロポリマーは、(i)ホストポリマーの溶融破壊の発生をより高い剪断速度まで遅らせ得る滑り速度を誘発すること、(ii)ダイ前面へのホストポリマーまたは添加物の堆積に起因するダイ堆積の発生を減少させること、ならびに(iii)流動するホストポリマーの剪断応力を低減させ、それによりダイ上流の圧力を低減させること、および/または所与のスクリュー速度(rpm)に対する押出量を増大させることに資する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に従って生成され、試験された試料組成物について、対照組成物と共に、MPaでのダイ圧力を押出量(g/分)と比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、トリフルオロプロピレン(TFP)が、テトラフルオロエチレン(TFE)と共重合させる場合に、金属接着促進剤として作用するという発見にある。TFEと容易に共重合するTFPの存在は、TFEの結晶性を効果的に妨げ、それにより、結果として得られるフルオロポリマー組成物の溶融温度(Tm)を、本明細書に記載されるホストポリマーの加工温度よりも低くすることが認められた。さらに、共重合TFP単位を含むポリマーは、加工装置の内部表面上に迅速に堆積するのに十分な金属接着性を示すが、極性ホストポリマー(例えば、ポリアミド(ナイロン)およびポリエステル(例えば、ポリエチレン(テレフタレート)(PET))には強力に接着しない。したがって、TFPを含む本発明のフルオロポリマー組成物は、極性および非極性ホストポリマー樹脂の両方の助剤として有効に機能し得る。
【0020】
一実施形態によれば、本発明は、種々の押出成形品において商業的価値を有する非フッ素化の溶融押出可能な、すなわち溶融加工可能なポリマーの改善された押出加工性を提供する組成物に関する。本発明に係る有用な非フッ素化の溶融加工可能なポリマーの例としては、炭化水素樹脂、ポリアミド、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、およびポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。用語「非フッ素化(の)」は、ポリマー中に存在するフッ素原子と炭素原子との比率が、1:1未満であることを意味している。
【0021】
本発明に係る有用な非フッ素化の溶融加工可能なポリマーは、種々のポリマー種から選択され得る。そのようなポリマーは、50.0g/10分以下、好ましくは20.0g/10分以下、特に5.0g/10分未満のメルトインデックス(ASTM D1238に従い、2160g荷重を用いて190℃で測定)を有する炭化水素ポリマーを包含する。これらの炭化水素ポリマーは、エチレンと、プロピレンと、任意選択的に非共役ジエンモノマー(例えば、1,4−ヘキサジエン)との弾性コポリマーであり得る。一般に、炭化水素ポリマーは、式CH2=CHRのモノオレフィンであって、式中、RがHまたはアルキル基(通常、炭素原子が8以下のもの)であるモノオレフィンの単独重合または共重合によって得られるあらゆる熱可塑性炭化水素ポリマーも包含する。特に、本発明は、高密度および低密度のポリエチレンの両方(例えば、0.85〜0.97g/cm3の範囲内の密度を有するポリエチレン);ポリプロピレン;ポリブテン−1;ポリ(3−メチルブテン);ポリ(メチルペンテン);およびエチレンとアルファ−オレフィン(例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、およびオクタデセン)とのコポリマーに適用され得る。炭化水素ポリマーはまた、ビニル芳香族ポリマー(例えば、ポリスチレン、およびスチレンとブタジエンまたはイソプレンとのコポリマー)も包含し得る。特定の炭化水素ポリマーは異なる溶融特性を示すため、本発明の実施は、一部の炭化水素ポリマーにおいて、他の炭化水素ポリマーにおけるよりも大きな有用性を有し得る。例えば、ポリプロピレンおよび高分子ではない分枝ポリエチレンなどの炭化水素ポリマーは、より低い温度でも好都合な溶融流れ特性を有するため、押出条件を調節することによって、表面荒さ、ダイ堆積、または過剰なダイ圧力を回避し得る。これらの炭化水素ポリマーは、通常とは異なる厳しい押出条件下でのみ本発明に係るフルオロポリマー押出助剤の使用を必要とし得る。しかしながら、他のポリマー(例えば、高分子量の高密度ポリエチレン、直鎖状の低密度ポリエチレンコポリマー、高分子量のポリプロピレン、および他のオレフィンとのプロピレンコポリマー、特に、分子量分布が狭いもの)は、このような押出条件の変化の自由度を許容しない。押出物の表面の品質またはダイ圧力の減少における改善が、本発明に係る本明細書に記載されたフルオロポリマーを用いることにより得られるのは、特にこれらの樹脂を用いる場合である。
【0022】
本発明に係る本明細書に記載されたフルオロポリマーを組み込むことにより利益が得られ得る他の非フッ素化の溶融加工可能なポリマーとしては、ポリアミドおよびポリエステルが挙げられる。本発明の実施において有用なポリアミドの具体的な例には、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6/10、ナイロン11およびナイロン12がある。好適なポリエステルとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(ブチレンテレフタレート)、ならびにそれらとテレフタル酸またはシクロヘキサンジメタノールとのコポリマーが挙げられる。最良の結果は、ホスト樹脂が少なくとも0.6dl/g、好ましくは少なくとも0.7dl/gの固有粘度を有するポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマーである場合に認められた。
【0023】
本発明から利益が得られ得る溶融加工可能なポリマーは、界面剤(interfacial agent)も含み得る。界面剤とフルオロエラストマーとの重量比は、0.1〜3.0の範囲にわたり得るが、通常は、0.2〜2.0の範囲内である。本発明に係る方法において、二種以上の界面剤が使用され得、全界面剤とフルオロエラストマーとの重量比は、0.1〜3.0の範囲内である。
【0024】
「界面剤」とは、フルオロエラストマー加工助剤ともいずれのホストポリマーとも異なる化合物であって、1)押出温度において液体状態(または溶融状態)であり、2)ホストポリマーおよびフルオロエラストマーよりも低い溶融粘度を有し、かつ3)押出可能な組成物中のフルオロエラストマー粒子の表面を自由に濡らすことにより特徴づけられる化合物を意味する。そのような界面剤の例としては、i)シリコーン−ポリエーテルコポリマー;ii)脂肪族ポリエステル(例えば、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(乳酸)およびポリカプロラクトンポリエステル)(好ましくは、このポリエステルは、ジカルボン酸とポリ(オキシアルキレン)ポリマーとのブロックコポリマーではない);iii)芳香族エステル(例えば、フタル酸ジイソブチルエステル);iv)ポリエーテルポリオール(好ましくは、ポリアルキレンオキシドではない)(例えば、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール);v)カルボン酸(例えば、ヒドロキシ−ブタン二酸);vi)脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノラウラートおよびトリグリセリド);およびvii)ポリ(オキシアルキレン)ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、用語「ポリ(オキシアルキレン)ポリマー」は、米国特許第4,855,360号明細書において規定されるポリマーおよびそれらの誘導体のことをいう。そのようなポリマーとしては、ポリエチレングリコールおよびそれらの誘導体が挙げられる。
【0025】
TFEとTFPとのコポリマーを調製するための好ましい方法は、米国特許出願第11/712,252号明細書に記載される通りのセミバッチ乳化重合プロセスである。このセミバッチプロセスでは、第一の気体モノマー混合物は、水溶液を含む反応器に導入される。この反応器は、典型的に、完全には水溶液で満たされず、蒸気空間が残っている。この水溶液は、フルオロ界面活性剤分散剤(例えば、パーフルオルオクタン酸アンモニウム、3,3,4,4−テトラヒドロトリデカフルオロオクタン酸アンモニウム、Zonyl(登録商標)FS−62(DuPontから入手可能)またはZonyl(登録商標)1033D(DuPontから入手可能)など)を、任意選択的に含み得る。任意選択的に、この水溶液は、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝液または酢酸緩衝液)を、重合反応のpHを制御するために含み得る。緩衝液の代わりに、塩基(例えば、NaOH、NH4OH、またはCsOH)を、pHを制御するために用い得る。代替的に、または追加的に、pH緩衝液または塩基は、単独または他の成分(例えば、重合開始剤または連鎖移動剤)と組み合わせて、重合反応の間の異なる時に反応器に添加され得る。また、任意選択的に、最初の水溶液は、重合開始剤(例えば、水溶性無機過酸化物または有機過酸化物(例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム(または他の過硫酸塩)、過酸化ジ−t−ブチル、二コハク酸ペルオキシド、およびt−ブチルペルオキシブチレート))を含み得る。開始剤は、無機過酸化物と還元剤との組み合わせ(例えば、過硫酸アンモニウムと亜硫酸アンモニウムとの組み合わせ)であり得る。
【0026】
反応器に装入される第一の気体混合物(「最初の装入材料(charge)」と呼ぶことがある)の量は、約0.3MPaと10MPaの間の反応器圧力を生じるように設定される。第一の気体混合物の組成は、95〜100モルパーセントのTFEおよび0〜5モルパーセントのTFPからなる。最初のモノマー装入材料が5モルパーセントより多くのTFPを含む場合、重合速度は不経済に遅くなり得、または反応器は10MPa超過させて加圧しなければならず、望ましくない加工上の問題を引き起こし得る。
【0027】
典型的には機械的攪拌により反応混合物を攪拌しながら、第一の気体モノマー混合物を水溶液中に分散させる。その結果得られる混合物を、「反応混合物」と呼ぶ。
【0028】
任意選択的に、連鎖移動剤も、上記プロセスのこの時点で導入され得る。連鎖移動剤の全量を一度に添加してもよく、または、100パーセントの第二の気体モノマー混合物(以下に規定される通り)が反応器に添加される時点までにわたって添加してもよい。
【0029】
セミバッチ反応混合物の温度は、重合工程の間、約25℃〜130℃の範囲内に維持されるが、30℃〜90℃が最適な範囲である。重合は、開始剤が熱分解するかまたは還元剤と反応し、その結果生じたラジカルが分散させたモノマーと反応してポリマー分散液を形成する時に始まる。
【0030】
追加量のモノマーが、制御された温度で所望の反応器圧力を維持するために、重合の間にわたり制御された速度で添加され得る。第二の気体モノマー混合物中のモノマーの相対比は、結果として生じるフルオロポリマー中の共重合モノマー単位の所望の比率とほぼ同じとなるように設定される。したがって、第二の気体モノマー混合物は、モノマー混合物中のモノマーの総モルを基準にして45モルパーセントと95モルパーセントの間のTFE、および5モルパーセントと55モルパーセントの間のTFPからなる。追加的な連鎖移動剤が、任意選択的に、重合プロセスのこの段階の間の任意の時点で反応器に添加され得る。追加的なフルオロ界面活性剤および重合開始剤も、この段階の間に反応器に供給され得る。
【0031】
形成されるコポリマーの量は、反応器に供給された第二の気体モノマー混合物の累積量にほぼ等しい。第二の気体モノマー混合物中のモノマーのモル比は、結果として生じるジポリマー(dipolymer)中の所望の共重合モノマー単位組成のモル比と必ずしも全く同じにはならない。なぜなら、第一の気体モノマー装入材料の組成は、正確に所望の最終ジポリマー組成物に要求される組成でなくてもよいため、あるいは、第二の気体モノマー混合物中の一部のモノマーが反応せずに、既に形成されているポリマー粒子中に溶解し得るためである。
【0032】
セミバッチ重合プロセスにおける総重合時間は、2〜30時間の範囲内である。結果として生じるジポリマー分散液は、従来技術により単離、濾過、洗浄および乾燥され得る。
【0033】
フルオロポリマー加工助剤はダイ内面にフルオロポリマー被覆を堆積させることにより機能すること、および大きな粒子の方が小さな粒子よりも迅速にフルオロポリマーの塊をダイ表面に移動させることが知られている(米国特許第6,642,310号明細書)。したがって、本発明を実施する際には、押出されるポリマー組成物中のTFE−TFPフルオロポリマー加工助剤の重量平均粒径を、押出工程においてポリマーがダイのすぐ前の地点(すなわち、ダイ入口)に達した時に、2ミクロンより大きいが10ミクロンより小さくなるように制御することが望ましい。最良の結果を得るには、ダイの直前で測定されるフルオロポリマーの重量平均粒径が、4ミクロンより大きく、さらには6ミクロンより大きくなるべきであり、但し、フルオロポリマーの重量平均粒径が、押出物の最も狭い断面積の約40%を超えない。フルオロポリマー粒子が最も狭い押出物の面積の約40%よりも大きくなると、これらのフルオロポリマー粒子が押出物において欠陥を形成し得る。
【0034】
本発明に係る使用のために生成された3つのTFE−TFPフルオロプラスチックまたはフルオロエラストマーを、以下の表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
具体的なコポリマーの調製を以下の実施例1に示す。
【実施例】
【0037】
実施例1
33Lの反応器に、0.50重量%のペルフルオロヘキシルエチルスルホン酸界面活性剤および14.4gのイソプロパノールを含む24Lの水を装入し、次いで548gの97重量%TFE/3重量%TFPモノマー混合物を装入して、80℃で250psigの圧力にした。200mlの7%過硫酸アンモニウム/5%リン酸二アンモニウム溶液を添加することにより、反応を開始させた。75重量%TFEと25重量%TFPとの混合物を反応器に供給することにより、反応器圧力を250psigに維持した。合計17.5gの過硫酸アンモニウムを、8000gのモノマーを重合するのに必要とした。この乳濁液を凍結凝固させ、広範囲にわたって洗浄して白色粉末を形成した。
【0038】
LLDPE中の押出試験用マスターバッチ
表1のTFE−TFPポリマーを、以下の表2に示すように、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(LL1001.59、Exxon−Mobil Corp.)に配合して、押出試験での使用に適したマスターバッチを生成した。40重量%ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と60重量%フッ化ビニリデン(VF2)とのコポリマーである、Viton(登録商標)FreeFlow(商標)40フルオロエラストマー加工助剤(DuPont Performance Elastomers LLCから入手可能)を、比較例として含めた。
【0039】
表2中のマスターバッチを、カムローターを備えたBrabender(登録商標)ミキシングボールを用いて混合した。各バッチの重さは60gであり、200℃の温度設定で3分間50rpmにて混合した。
【0040】
【表2】

【0041】
表2のマスターバッチを冷却し、造粒し、次いで、2重量%でLLDPEと混合して、1000ppm(百万分率)のフルオロポリマーを含む押出可能な組成物を得た。次いで、各押出可能な組成物を、温度設定を200℃、225℃、250℃(供給部から出口部)とし、ダイ温度を250℃として、35rpm(毎分回転数)にて作動する直径19.05mmの一軸スクリュー押出機により供給される2mm×40mmのキャピラリーダイを通過させた。各押出試験の前に、押出機およびダイを完全にパージして、微量のフルオロポリマーを、ポリエチレン中の珪藻土のコンパウンド(807193としてAmpacet Corp.から入手可能)を用いて除去した。次いで、このAmpacetコンパウンドを、純粋なLLDPEを用いて完全にパージした。純粋なLLDPEの押出の間にダイ圧力のベースライン条件が回復した時に、試験される押出可能な組成物を押出機に導入した。
【0042】
表3は、3つの本発明の押出可能な組成物および1つの比較の押出可能な組成物の押出物上に認められた、押出時間に応じた溶融破壊の減少を示している。本発明に従って生成され、試験されたポリマー加工助剤の全てが、2時間の押出時間内に、初期に存在した溶融欠陥をなくすのに有効であった。これは、従来のフルオロエラストマー添加剤を用いて認められた成果と類似している。したがって、全ての試料がダイ成形面への優れた接着性を示した。
【0043】
35rpmのスクリュー速度での2時間の押出後、ダイ圧力および押出量を記録した。次いで、押出機のrpmを、5分間50rpmに上昇させ、次いで、5分間75rpmに上昇させた。各5分間の後に、押出量およびダイ圧力を記録した。以下の表4に、本発明に従って生成され、試験された試料組成物および比較加工助剤についての記録されたダイ圧力MPa(メガパスカル)および対応する押出量(g/分)を示す。図1は、本発明の組成物が、一般的に、所与のダイ圧力に対し、従来のフルオロエラストマー助剤よりも大きな押出量を提供することをグラフにより示している。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
TFP部分が極性ポリマーの滑りを妨げないことを示すために、細管レオメーター実験を以下の通りに行った。本明細書に記載される通りに生成されたフルオロポリマー試験試料を、293l/秒の剪断速度ならびに表5および6に示される温度で、最初は空の、30°の流入角を有する0.762mm×15.24mmのキャピラリーダイに通した。次いで、ダイをレオメーターから取り外し、バレルを空にし、ダイの細管部分中のフルオロポリマー試料を荒らさないように再度取り付けた。次に、極性ポリマー(PETまたはナイロン−6)を細管バレルに入れ、同じ条件下で押出した。第二のポリマーがダイを流れて通過するにつれて、ダイ壁上に薄い層のみを残して大部分のフルオロポリマーを排除した。その結果得られた細管レオメーターによる見掛粘度の測定値が、残存するフルオロポリマー被覆上の極性ポリマーの滑りの尺度を与える。
【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
試験結果は、本発明に係る溶融加工可能なポリマー用加工助剤として生成され、用いられるフルオロポリマーが、極性ポリマーおよび非極性ポリマーの両方の押出において優れた性能を与える傾向があることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出可能な組成物であって、非フッ素化の溶融加工可能なホストポリマーと、前記押出可能な組成物の総重量を基準にして約25重量百万分率〜約50重量%のフルオロポリマーとを含み、前記フルオロポリマーが、以下のモノマー:
A)前記フルオロポリマーの総重量を基準にして45〜95モルパーセントのテトラフルオロエチレン(TFE);および
B)前記フルオロポリマーの総重量を基準にして5〜55モルパーセントの3,3,3−トリフルオロプロピレン(TFP)
の共重合単位から実質的になる、押出可能な組成物。
【請求項2】
押出可能な組成物であって、非フッ素化の溶融加工可能なホストポリマーと、前記押出可能な組成物の総重量を基準にして約25重量百万分率〜約50重量%のフルオロポリマーであって、以下のモノマー:
A)前記フルオロポリマーの総重量を基準にして45〜95モルパーセントのテトラフルオロエチレン(TFE);および
B)前記フルオロポリマーの総重量を基準にして5〜55モルパーセントの3,3,3−トリフルオロプロピレン(TFP)
の共重合単位から実質的になるフルオロポリマーと、界面剤とを含み、界面剤とフルオロポリマーとの重量比が0.1〜3.0の範囲にわたる、押出可能な組成物。
【請求項3】
TFEが、前記フルオロポリマーの総重量を基準にして少なくとも70モルパーセントのレベルで前記フルオロポリマー中に存在し、TFPが、前記フルオロポリマーの総重量を基準にして少なくとも15モルパーセントのレベルでフルオロポリマー中に存在し、かつ界面剤とフルオロポリマーとの重量比が0.2〜2.0である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
非フッ素化の溶融可能なポリマーの押出特性を改善するための方法であって、前記ポリマーに、前記ポリマーの総重量を基準にして約25重量百万分率〜約50重量%のフルオロポリマーを組み込む工程を含み、前記フルオロポリマーが、以下のモノマー:
A)前記フルオロポリマーの総重量を基準にして45〜95モルパーセントのテトラフルオロエチレン(TFE);および
B)前記フルオロポリマーの総重量を基準にして5〜55モルパーセントの3,3,3−トリフルオロプロピレン(TFP)
の共重合単位から実質的になる、方法。
【請求項5】
TFEが、前記フルオロポリマーの総重量を基準にして少なくとも70モルパーセントのレベルで前記フルオロポリマー中に存在し、かつTFPが、前記フルオロポリマーの総重量を基準にして少なくとも15モルパーセントのレベルで前記フルオロポリマー中に存在する、請求項1または4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融加工可能なポリマー中の前記フルオロポリマーの重量平均粒径が、2ミクロンより大きいが、10ミクロンより小さい、請求項1、2または4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融加工可能なポリマー中の前記フルオロポリマーの重量平均粒径が、2ミクロンより大きいが、10ミクロンより小さい、請求項3または5に記載の方法。
【請求項8】
界面剤を前記ポリマーに組み込む工程をさらに含み、界面剤とフルオロポリマーとの重量比が0.1〜3.0の範囲にわたる、請求項4に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−500890(P2011−500890A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528945(P2010−528945)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/078351
【国際公開番号】WO2009/048771
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(597035953)デュポン パフォーマンス エラストマーズ エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】