説明

溶融流動性が改良されたポリカーボネート組成物

【課題】溶融流動性が改良されると共に、良好な光学特性および良好な加水分解耐性を備えるポリカーボネートを提供する。
【解決手段】式(I)の少なくとも1つのホスフィン


および少なくとも1つの脂肪族カルボン酸エステルを含有し、1形態ではさらに少なくとも1つのアルキルホスフェートをする組成物とする。少なくとも1つの脂肪族カルボン酸エステルがペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、プロパンジオール、ステアリルアルコール、セチルアルコールまたはミリスチルアルコールと、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸またはモンタン酸またはその混合物とのエステルを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願請求の範囲は、2009年9月30日に出願されたドイツ特許出願第10 2009 043 512.3号公報の利益を享受し、すべての有用な目的のためにその全体をここで参照して挿入する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、溶融流動性が改良されると共に、良好な光学特性および良好な加水分解耐性を備えるポリカーボネート組成物に関する。
【0003】
射出成形されるポリカーボネート部品の製造には、特に薄肉成形の場合、溶融流動性が十分に高く、射出成形手順が十分に満足のゆく状態で進行できることが求められる。このタイプの成形物は、用途の関数のように、非常に幅広く多様な周囲条件に曝され、幅広く多様な要求に対して十分満足のゆく対応をせねばならない。したがって、特にポリカーボネートは、習慣的に良好な光学特性と、さらにその処理特性を有さねばならない。さらに、比較的頻繁に起こるのだが、材料が湿潤に曝された場合でも、これらの特性が変化してはならず、この要求は比較的高温にまで及ぶ。
【0004】
経済的な重要性が増加したために、多くの用途分野で好適な材料であるタイプのポリカーボネートは、溶融エステル交換法として公知であり、溶融法とも呼ばれる方法によって、有機カーボネート、たとえば、ジアリールカーボネートとビスフェノールから、追加の溶媒を使用せずに、溶融中で製造される。
【0005】
溶融エステル交換法による芳香族ポリカーボネートの製造は公知であり、たとえば、「シュネル(Schnell)」,ケミストリー・アンド・フィジックス・オブ・ポリカーボネーツ(Chemistry and Physics of Polycarbonats),ポリマー・レビューズ(Polymer Reviews),Vol.9,インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers), ニューヨーク,ロンドン,シドニー1964に、D.C.プレボルセック(Prevorsek),B.T.デボナ(Debona)およびY.カーステン(Kersten),コーポレート・リサーチ・センター(Corporate Research Center),アライド・ケミカル・コーポレーション(Allied Chemical Corporation),モリスタウン,ニュージャージー07960,「ポリ(エステル)カーボネートコポリマーの合成」,ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(Journal of Polymer Science),ポリマー・ケミストリー・エディション(Polymer Chemistry Edition),Vol.19,75−90(1980)に、D.フライタグ(Freitag),U.グリゴ(Grigo),P.R.ミュラー(Mueller),N.ノウバートン(Nouvertne),ベイヤー(BAYER)AG,「ポリカーボネート」,エンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Encyclopedia of Polymere Science and Engineering),Vol.11,第2版,1988,ページ648−718に、および最後に、デス.U.グリゴ(Des. U. Grigo),K.キルヒャー(Kircher)およびP.R.ミュラー「ポリカーボネート」,ベッカー/ブラウン(Becker/Braun),クンストストッフ−ハンドブッフ(Kunststoff-Handbuch)[プラスチックハンドブック],3/1巻,ポリカーボネート,ポリアセタール,ポリエステル,セルロースエステル[ポリカーボネート,ポリアセタール,ポリエステルおよびセルロースエステル],カール・ハンサー・ベラグ・ムニッヒ(Carl Hanser Verlag Munich),ビエンナ1992,ページ117−299に記載される。
【0006】
有機リン化合物、たとえば、ホスフィン、ホスフィン酸化物、ホスフィニト、ホスホニト、ホスフィト、ジホスフィン、ジホスフィニト、ジホスホニト、ジホスフィト、ホスフィネート、ホスホネート、ホスフェート、ジホスフィネート、ジホスホネートおよびジホスフェート化合物を含有する溶融ポリカーボネートは、たとえば、欧州特許出願第EP−A−1 412 412号公報、および特開JP−08−225736号公報およびJP−11−100497号公報にも記載される。欧州特許出願第EP−A−1 412 412号公報は、このように変性された溶融ポリカーボネートの改良された加水分解耐性特性を記載する。しかし、その開示には、ポリカーボネートの流動性または光学特性における改良の示唆は全く含まれていない。
【0007】
脂肪族脂肪酸エステルを含有する溶融ポリカーボネートはまた、文献、たとえば、米国特許出願第US−A−2004225047号公報または欧州特許出願第EP−A−561 638号公報に幅広く開示されており、これらは、このタイプのポリカーボネート成形組成物から製造される射出成形部品のモールド取り外し性および表面品質が改良されることを記載している。ポリカーボネート成形組成物の流動性または光学特性における改良の示唆は前記開示には見出せない。
【0008】
特開JP 02−219855号公報は、トリアルキルホスフェートと飽和脂肪酸のエステルとを含有するポリカーボネート成形組成物を記載するが、さらにリン化合物と組み合わせることを記載してはいない。加水分解耐性または流動特性についての示唆はない。この文献に述べられている特性の改良が溶融ポリカーボネートにも適用できるか否かを見極めることも不可能である。
【0009】
欧州特許第EP 561629号公報は溶融ポリカーボネート成形組成物の例を含んでおり、これは、ホスフィトと脂肪族脂肪酸エステルを含有し、改良されたモールド取り外し機能を有する。しかし、この開示は、流動特性または加水分解耐性の示唆を行っていない。しかし、比較例は、ホスフィトと脂肪族脂肪酸エステルを含有するこのタイプの成形組成物が、加水分解耐性に明らかに問題があり、これから製造される成形物の光学特性および機械特性に不都合な変化をもたらすことを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、溶融流動性と共に良好な加水分解耐性と良好な光学特性の点で改良された処理特性を有する溶融ポリカーボネートから、成形組成物を製造することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施の形態は、溶融ポリカーボネート、式(I)の少なくとも1つのホスフィン、および少なくとも1つの脂肪族カルボン酸エステルを含有する組成物であって:
【化1】

【0012】
ここで、
ArおよびArは、
同じまたは異なった、任意に置換されたアリール部分であり、
R’は任意に置換されたアリール部分または以下の(Ia)〜(Ih)の部分の1つであり、
【化2】

【0013】
ここで、
Rは任意に置換されたC〜C14−アリール部分であり、
nおよびmは、
それぞれ互いに独立して、1〜7の整数であり、部分(Ia)〜(Ic)のH原子は任意に置換基で置換され、但し、式(I)でAr部分が共にそれぞれ任意に置換された4−フェニル−フェニルまたは任意に置換されたα−ナフチルであるなら、R’も任意に置換された4−フェニル−フェニルまたは任意に置換されたα−ナフチルであってもよい。
【0014】
本発明の別の実施の形態は、さらに少なくとも1つのアルキルホスフェートを含有する上記組成物である。
【0015】
本発明の別の実施の形態は、前記溶融ポリカーボネートが式(IV)の化合物を含有する上記組成物であって、
【化3】

【0016】
ここで、
大括弧は繰り返し構造ユニットを示し、
YはHまたは式(X)の基であり、
【化4】

【0017】
ここで、
16は同じまたは異なった、H、C〜C20−アルキル、C、またはC(CHであり、かつ
uは0、1、2、または3であり、
MはArまたは多官能性基A、B、またはC、または基Dであり、
ここで、
Arは式(VIII)または(IX)の基であり、
【化5】

【0018】
ここで、
ZはC〜C−アルキリデン、C〜C12−シクロアルキリデン、S、SO、または単結合であり、
13、R14、およびR15は、互いに独立して任意に置換されたまたは非置換のC〜C18−アルキル部分、好ましくは置換または非置換フェニル、メチル、プロピル、エチル、ブチル、ClまたはBrであり、
r、s、およびtは互いに独立して0、1、または2であり、
多官能性基Aは次の式の基であり、
【化6】

【0019】
多官能性基Bは次の式の基であり、
【化7】

【0020】
多官能性基Cは次の式の基であり、
【化8】

【0021】
ここで、
Xは、Yまたは−[MOCOO]−Yであり、ここでMおよびYは上で規定されたものであり、
基Dは次の式の基であり、
【化9】

【0022】
多官能性基A,B、CおよびD全体は≧5mg/kgである。
【0023】
本発明の別の実施の形態は、前記少なくとも1つの式(I)のホスフィンが、式(I)の化合物、その酸化形態、またはその混合物である上記組成物である。
【0024】
本発明の別の実施の形態は、前記少なくとも1つの式(I)のホスフィンが、トリフェニルホスフィン、その酸化形態、またはその混合物である上記組成物である。
【0025】
本発明の別の実施の形態は、前記少なくとも1つの式(I)のホスフィンの80%までがその酸化形態である上記組成物である。
【0026】
本発明の別の実施の形態は、前記少なくとも1つのアルキルホスフェートが式(II)であり:
【化10】

【0027】
ここで、
、R、およびRは、同じまたは異なった、Hまたは線形、分岐、または環状アルキル基である上記組成物である。
【0028】
本発明の別の実施の形態は、前記少なくとも1つのアルキルホスフェートが、少なくとも1つのモノ−、ジ−またはトリイソオクチルホスフェートを含有する上記組成物である。
【0029】
本発明の別の実施の形態は、前記少なくとも1つの脂肪族カルボン酸エステルが式(III)の化合物である上記組成物であって:

(R−CO−O)−R−(OH)
ここで、o=1〜4およびp=3〜0 (III)

ここで、Rは、脂肪族飽和または不飽和、線形、環状または分岐アルキル部分であり、Rは、一〜四価の脂肪族アルコールR−(OH)o+pのアルキレン部分である。
【0030】
本発明の別の実施の形態は、前記少なくとも1つの脂肪族カルボン酸エステルがペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、プロパンジオール、ステアリルアルコール、セチルアルコールまたはミリスチルアルコールと、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸またはモンタン酸(montanic acid)またはその混合物とのエステルを含有する上記組成物である。
【0031】
本発明の別の実施の形態は、前記少なくとも1つの式(I)のホスフィンが、前記組成物の全重量に基づいて10〜2000mg/kgの量で使用される上記組成物である。
【0032】
本発明の別の実施の形態は、前記少なくとも1つのアルキルホスフェートが、前記組成物の全重量に基づいて0.5〜500mg/kgの量で使用される上記組成物である。
【0033】
本発明の別の実施の形態は、前記少なくとも1つの脂肪族カルボン酸エステルが、前記組成物の全重量に基づいて50〜8000mg/kgの量で使用される上記組成物である。
【0034】
本発明のまた別の実施の形態は、上記組成物を製造する方法であって、前記溶融ポリカーボネートを、ビスフェノールと炭酸ジエステルとの溶融エステル交換反応を介して製造することを包含する。
【0035】
本発明のまた別の実施の形態は、上記組成物を製造する方法であって、前記溶融ポリカーボネートを、ヒドロキシおよび/またはカーボネート末端基を含有するカーボネートオリゴマー、ビスフェノール、および炭酸ジエステルとの縮合を介して製造することを包含する。
【0036】
本発明のまた別の実施の形態は、上記組成物を製造する方法であって、前記少なくとも1つの式(I)のホスフィンおよび前記少なくとも1つのカルボン酸エステルを、前記溶融ポリカーボネートの溶融ストリームへと、最終縮重合段階から下流の補助押出し成形機を介して導入し、前記少なくとも1つの式(I)のホスフィン、前記少なくとも1つのカルボン酸エステル、および前記溶融ポリカーボネートをスタティックミキサー内で混合することを包含する。
【0037】
本発明のまた別の実施の形態は、上記組成物を製造する方法であって、前記少なくとも1つのカルボン酸エステルを、メンブランポンプまたは他の好適なポンプを用いて、補助押出し成形機から下流でスタティックミキサーから上流で、前記溶融ポリカーボネートの溶融ストリームへと計量添加することを包含する。
【0038】
本発明のまた別の実施の形態は、上記組成物から成る成形物である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
驚くべきことに、本発明による特定の有機リン化合物と脂肪族カルボン酸エステルとの組み合わせを含有する溶融ポリカーボネートは、上記特性の要求に非常に対応することを、新たに見出した。
【0040】
先行技術の不都合を解決するために、本発明の目的は、リン化合物として、特定のホスフィンと、特にトリアリールホスフィンと、適当ならばアルキルホスフェートとの混合物を含有し、かつ脂肪族カルボン酸エステルを含有する溶融ポリカーボネート成形組成物の製造を介して達成されたものである。成形組成物中に存在する脂肪族カルボン酸エステルは、脂肪族長鎖カルボン酸と、一価または多価脂肪族および/または芳香族ヒドロキシル化合物とのエステルである。本発明によるこれらの成形組成物は、改良された溶融流動性と共に、良好な光学特性と良好な加水分解耐性とを併せ持つことを特徴とする。
【0041】
したがって、本発明は、溶融ポリカーボネートとして公知のポリカーボネートから製造されるものであって、ジアリールカーボネートとビスフェノールから、かつ特定のホスフィン、特にトリアリールホスフィンと、適当ならばアルキルホスフェートおよび脂肪族カルボン酸エステルとを含有させて、溶融状態で製造されるポリカーボネート組成物を提供する。
【0042】
本発明に従って使用されるホスフィンは一般式(I)の化合物であり:
【化11】

【0043】
ここで、ArおよびArは、同じまたは異なった、非置換または置換アリール部分であり、
R’は非置換または置換アリール部分または以下の(Ia)〜(Ih)の部分の1つであり、
【化12】

【0044】
ここで、Rは非置換または置換C〜C14−アリール部分であり、「n」および「m」は、それぞれ互いに独立して、1〜7の整数であり、部分(Ia)〜(Ic)のH原子はまた、置換基で置換されてもよく、
式(I)でAr部分が共にそれぞれ4−フェニル−フェニルまたはα−ナフチルであるなら、R’もまた同様に4−フェニル−フェニルまたはα−ナフチルであってもよい。また、4−フェニル−フェニル部分およびα−ナフチル部分は置換基を備えてもよい。
【0045】
式(I)で好ましい部分Arはフェニル、4−フェニル−フェニルおよびナフチルである。
【0046】
アリール部分Arの好適な置換基は、F、CH、Cl、Br、I、OCH、CN、OH、アルキルカルボキシ、フェニル、シクロアルキル、アルキルである。
【0047】
部分(Ia)〜(Ic)のH原子にとって好適な置換基は、F、CH、アルキル、シクロアルキル、Cl、アリールである。
【0048】
好ましい「n」および「m」の数字は1、2、3、または4である。
【0049】
アリールはそれぞれ独立して、4〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族部分であり、これら中で、1つの環(C原子から成る芳香族環)当たり0、1、2、または3個の骨格炭素原子であるが、分子全体内では少なくとも1つの骨格炭素原子は、窒素、硫黄または酸素の群から選択されるヘテロ原子によって置換されてもよい。しかし、アリールは6〜24個の骨格炭素原子を有する炭素環式芳香族部分であるのが好ましい。同じことがアリールアルキル部分の芳香族部分、より複雑な基のアリール構造(たとえば、アリールカルボニル部分またはアリールスルホニル部分)にも当てはまる。
【0050】
〜C24−アリールの例は、フェニル、o−、p−、m−トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニルまたはフルオレニルであり、ヘテロ芳香族C〜C24−アリールについて、ここで、これら中で、1つの環(C原子から成る芳香族環)当たり0、1、2、または3個の骨格炭素原子であるが、分子全体内では少なくとも1つの骨格炭素原子は、窒素、硫黄または酸素の群から選択されるヘテロ原子によって置換されてもよく、このヘテロ芳香族C〜C24−アリールの例は、たとえば、ピリジル、ピリジルN−オキサイド、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、チエニル、フリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリルまたはイソキサゾリル、インドリジニル、インドリル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル、キナゾリニル、ベンゾフラニルまたはジベンゾフラニルである。
【0051】
本発明に従って好適なホスフィンの例は、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリ−p−tert−ブチルフェニルホスフィンまたはこれらの酸化物である。使用されるホスフィンは好ましくはトリフェニルホスフィンである。
【0052】
本発明に従って使用されるジアリールホスフィンの例は、1,2−ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、
【化13】

【0053】
[2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル]、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、シス−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エチレン。
【化14】

【0054】
[ビス(2−(ジフェニルホスフィノ)エチル)フェニルホスフィン]、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、
【化15】

【0055】
[4,5−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]、トリ(4−ジフェニル)ホスフィンおよびトリス(α−ナフチル)ホスフィンである。
【0056】
ジアリールホスフィンを、以下の文献からの情報を用いて製造してもよい:
イッスライブ(Issleib)ら,ケム.バー.(Chem. Ber.),92 (1959),3175-3182およびハートマン(Hartmann)ら,ザイツァー.アノーグ.ケ.(Zeitschr. Anorg. Ch.)287(1956)261-272。
【0057】
各種ホスフィンの混合物を使用することもできる。使用されるホスフィンの使用量は、組成物の全重量に基づいて、10〜2000mg/kg、好ましくは30〜800mg/kg、特に好ましくは50〜500mg/kgである。
【0058】
本発明による成形組成物は、使用されるホスフィンと共に、使用されるホスフィンに基づいて、80%までの対応するホスフィン酸化物を含有してもよい。
【0059】
本発明に従って任意に使用されるアルキルホスフェートは一般式(II)の化合物であり:
【化16】

【0060】
ここで、R〜Rは、H、または同じまたは異なった線形、分岐、または環状アルキル部分であってもよい。特に好ましくはC〜C18−アルキル部分である。C〜C18−アルキルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチルおよびn−オクチル、ピナシル、アダマンチル、異性体メチル部分、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルである。
【0061】
本発明に従って好適なアルキルホスフェートの例は、モノ−、ジ−およびトリヘキシルホスフェート、トリイソオクチルホスフェートおよびトリノニルホスフェートである。使用されるアルキルホスフェートは、好ましくは、トリイソオクチルホスフェート(トリス-2−エチルヘキシルホスフェート)である。各種モノ−、ジ−およびトリアルキルホスフェートの混合物を使用することもできる。使用されるアルキルホスフェートの使用量は、組成物の全重量に基づいて、500mg/kg以下、好ましくは0.5〜500mg/kg、特に好ましくは2〜500mg/kgである。
【0062】
本発明に従って使用される脂肪族カルボン酸エステルは、脂肪族長鎖カルボン酸と、一価または多価脂肪族および/または芳香族ヒドロキシル化合物とのエステルである。特に好ましく使用される脂肪族カルボン酸エステルは一般式(III)の化合物であり:
(R−CO−O)−R−(OH)
ここで、o=1〜4およびp=3〜0 (III)

ここで、Rは、脂肪族飽和または不飽和、線形、環状または分岐アルキル部分であり、Rは、一〜四価の脂肪族アルコールR−(OH)o+pのアルキレン部分である。
【0063】
〜C18−アルキル部分はRにとって特に好ましい。C〜C18−アルキルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチルおよびn−オクチル、ピナシル、アダマンチル、異性体メチル部分、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルである。
【0064】
アルキレンは直鎖、環状、分岐または非分岐C〜C18−アルキレン部分である。C〜C18−アルキレンの例は、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、n−ペンチレン、n−ヘキシレン、n−ヘプチレン、n−オクチレン、n−ノニレン、n−デシレン、n−ドデシレン、n−トリデシレン、n−テトラデシレン、n−ヘキサデシレンまたはn−オクタデシレンである。
【0065】
多価アルコールのエステルの場合には、エステル化されていない、フリーのOH基が存在することもできる。本発明に従って好適な脂肪族カルボン酸エステルの例は:グリセロールモノステアレート、パルミチルパルミテート、およびステアリルステアレートである。式(III)の各種カルボン酸エステルの混合物を使用することもできる。好ましく使用されるカルボン酸エステルは、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、プロパンジオール、ステアリルアルコール、セチルアルコールまたはミリスチルアルコールと、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸またはモンタン酸およびその混合物とのエステルである。特に好ましくは、ペンタエリスリチルテトラステアレート、グリセロールモノステアレート、ステアリルステアレートおよびプロパンジオールジステアレートおよびその混合物である。カルボン酸エステルの使用量は、組成物の全重量に基づいて、50〜8000mg/kg、好ましくは100〜7000mg/kgである。
【0066】
本発明に従って使用されるポリカーボネートは、好適なビスフェノールとジアリールカーボネートの、好適な触媒の存在中での溶融エステル交換反応を介して製造される。また、ポリカーボネートは、ヒドロキシおよび/またはカーボネート末端基を含有するカーボネートオリゴマーと、好適なジアリールカーボネートと、ビスフェノールとの縮合を介して製造されてもよい。
【0067】
好ましいカーボネートオリゴマーは、153〜15,000[g/mol]のモル重量を有し、式(IV)で記載される。
【化17】

【0068】
ここで、Y=H、または非置換または置換アリール部分。
【0069】
発明の内容で好適なジアリールカーボネートとは、ジ−C−〜ジ−C14−アリールエステル、好ましくはフェノールのまたはアルキル−またはアリール置換フェノールのジエステル、すなわち、ジフェニルカーボネート、ジクレジルカーボネートおよびジ−4−tert−ブチルフェニルカーボネートである。ジフェニルカーボネートは最も好ましい。
【0070】
好適なジ−C−〜ジ−C14−アリールエステルの中には、2個の異なるアリール置換基を含有する非対称なジアリールエステルもある。フェニルクレジルカーボネートおよび4−tert−ブチルフェニルフェニルカーボネートが好ましい。
【0071】
好適なジアリールエステルの中には、1以上のジ−C〜C14−アリールエステルの混合物もある。好ましい混合物は、ジフェニルカーボネート、ジクレジルカーボネートおよびジ−4−tert−ブチルフェニルカーボネートの混合物である。
【0072】
使用可能なジアリールカーボネートの量は、1モルのジフェノールに基づいて、1.00〜1.30mol、特に好ましくは1.02〜1.20molおよび最も好ましくは1.05〜1.15molである。
【0073】
本発明の内容では好適なジヒドロキシアリール化合物は式(V)に相当する化合物であり:
【化18】

【0074】
ここで、
は、置換または非置換フェニル、メチル、プロピル、エチル、ブチル、ClまたはBrであり、qは0、1、または2である。
【0075】
好ましいジヒドロキシベンゼン化合物は、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼンおよび1,2−ジヒドロキシベンゼンである。
【0076】
本発明の内容では好適なジヒドロキシジアリール化合物は式(VI)に相当する化合物であり:
【化19】

ここで、
ZはC〜C−アルキリデンまたはC〜C12−シクロアルキリデン、S、SO、または単結合であり、
、Rは、互いに独立して、置換または非置換フェニル、メチル、プロピル、エチル、ブチル、ClまたはBrであり、
r、sは互いに独立して、0、1、または2である。
【0077】
好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシビフェニール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,2−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0078】
最も好ましいジフェノールは1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシビフェニール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼンである。
【0079】
好適なジフェノールの中には1以上のジフェノールの混合物もあり;その結果ここではコポリカーボネートとなる。最も好ましい混合相手は、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシビフェニールおよび2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0080】
また、分岐剤を添加してもよく、例は、3個の官能性フェノール性OH基を含有する化合物である。分岐は非ニュートン流動作用の程度を増加させる。好適な分岐剤の中には、フロログルシノール、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ-フェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ヘキサキス(4−(4−ヒドロキシ-フェニルイソプロピル)フェニル)オルトテレフタレート、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ)メタン、1,4−ビス((4’,4”−ジヒドロキシトリフェニル)メチル)ベンゼンおよびイサチンビスクレゾール、ペンタエリスリトール、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸がある。
【0081】
本発明に従ってポリカーボネートを製造するのに好適な触媒の例は、一般式(VII)のものであり、
【化20】

【0082】
ここで、
、R10、R11およびR12は互いに独立して、同じまたは異なったC〜C18−アルキレン部分、C〜C10−アリール部分またはC〜C−シクロアルキル部分であり、Xは、対応する酸−塩基対H+X→HXが<11のpKを有する陰イオンであってもよい。
【0083】
好ましい触媒は、テトラフェニルホスホニウムフルオリド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートおよびテトラフェニルホスホニウムフェノレートである。テトラフェニルホスホニウムフェノレートが最も好ましい。ホスホニウム塩触媒の好ましい量の例は、ジフェノール1モル当たり10−2〜10−8モルであり、触媒の最も好ましい量は、ジフェノール1モル当たり10−4〜10−6モルである。重合速度を増加させるために、ホスホニウム塩に加えて共触媒を使用することが適当ならば、それも可能である。
【0084】
これらの共触媒は、たとえば、アルカリ金属およびアルカリ土金属の塩、たとえば、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのヒドロキシド、アルコキシドおよびアリールオキサイド、好ましくは、ナトリウムのヒドロキシド、アルコキシドまたはアリールオキサイド塩であってもよい。水酸化ナトリウムおよびナトリウムフェノレートは最も好ましい。共触媒の量は、たとえば、各場合、使用されるジヒドロキシジアリール化合物の重量に基づいて、ナトリウムの形態でそれぞれ計算して、1〜200μg/kg、好ましくは5〜150μg/kgおよび最も好ましくは10〜125μg/kgの範囲であってもよい。
【0085】
ポリカーボネートは段階的に製造されてもよく、温度は段階的に150〜400℃の範囲で管理されてもよく、各段階での所要時間は15分〜5時間であってもよく、各段階での圧力は1000〜0.01mbarであってもよい。温度は段階的に上がり、圧力は段階的に下がるのが、特に好ましい。
【0086】
好ましく使用される溶融ポリカーボネートは一般式(IV)を特徴とし、
【化21】

【0087】
ここで、大括弧は繰り返し構造ユニットを示し、MはArまたは多官能性基A、B、C、または基Dであり、ここで、Arは式(VIII)または(IX)、好ましくは(IX)によって表される基であってもよく、
【化22】

【0088】
ここで、
ZはC〜C−アルキリデンまたはC〜C12−シクロアルキリデン、S、SO、または単結合であり、
13、R14、およびR15は、互いに独立して置換または非置換C〜C18−アルキル部分、好ましくは置換または非置換フェニル、メチル、プロピル、エチル、ブチル、ClまたはBrであり、
r、s、tは互いに独立して0、1、または2であってもよく、
多官能性基Aは次の式の基であり、
【化23】

多官能性基Bは次の式の基であり、
【化24】

多官能性基Cは次の式の基であり、
【化25】

基Dは次の式の基であり、
【化26】

多官能性基A,B、CおよびD全体は≧5mg/kgであり、
ここで、Y=Hまたは式(X)の基であり、
【化27】

【0089】
ここで、
16は同じまたは異なった、H、C〜C20−アルキル、C、またはC(CHであってもよく、
uは0、1、2、または3であってもよく、
ここで、X=Yまたは−[MOCOO]−Yであり、ここでMおよびYは上で規定されたものである。
【0090】
本発明に従って使用されるポリカーボネートは、5,000〜80,000、好ましくは10,000〜60,000および最も好ましくは15,000〜40,000の平均分子量を有してもよく、これはゲル浸透クロマトグラフィーを介して決定される。
【0091】
Arは好ましくは:
【化28】

であり、
多官能基Aは好ましくは基A1:
【化29】

であり、
基Bは好ましくは基B1:
【化30】

であり、
多官能基Cは好ましくは基C1:
【化31】

であり、
基A1、B1およびC1において、Xは上で規定されるものである。基Dは好ましくは基D1:
【化32】

である。
【0092】
上で記載した溶融ポリカーボネートは単なる例を述べたに過ぎない。溶融ポリカーボネート中に存在する成分A〜Dの全量は≧5mg/kgである。
【0093】
本発明による組成物(溶融ポリカーボネート成形組成物)をたとえば、公知の方法で各構成要素を混合し、これらを溶融および溶融押出し法で、200℃〜400℃の温度で、常套の設備、たとえば、内部混練機、押出し成形機および二軸性システム内で化合させることによって製造してもよい。個々の構成要素の混合を、特に約20℃(室温)か、またはより高温で、連続的に行っても、そうでなければ同時に行ってもよい。しかし、本発明に従って使用される化合物を、溶融ポリカーボネート成形組成物中に、製造過程の異なるフェーズで、別々に導入しもよい。したがってたとえば、アルキルホスフェートおよび/またはホスフィンを、溶融ポリカーボネート中に、縮重合処理の際またはその最後に、脂肪族カルボン酸エステルを添加する前に、導入してもよい。
【0094】
本発明による化合物を添加する形態に、何ら制限はない。発明の化合物、および発明による化合物の混合物をそれぞれ、固体形態、たとえば、パウダーの形態で、溶液または溶融形態で、ポリマー溶融物に添加してもよい。有機リン化合物および脂肪族カルボン酸エステルの投入はたとえば、最終縮重合段階の下流の補助押出し成形機で行われるのが好ましい。大規模な工業的実施の形態では、たとえば、1時間当たり200〜1000kgのポリカーボネートの生産量を有する補助押出し成形機を操作するのが特に好ましい。
【0095】
ある好ましい実施の形態では、アルキルホスフェートの任意の投入は、たとえば、室温で液体形態で、ポリカーボネートと共に、補助押出し成形機のポリカーボネート供給システムのホッパーへと行われる。たとえば、メンブランポンプまたは他のいずれか好適なポンプを用いて、アルキルホスフェートを投入する。ホスフィンの添加は好ましくは、液体形態で、約80〜250℃の温度で、ポリカーボネート供給システムのホッパーの下流の、混合する成分を備える押出し成形機ゾーンに行われる。ここで、ホスフィンを、好ましくは2〜20barの圧力に保持され、好ましくは80〜250℃の温度に保持された循環路から取り出す。制御バルブを用いて、添加量を制御してもよい。
【0096】
補助押出し成形機の下流には、圧力を増すために、特に好ましくはギアポンプが設置されてもよい。使用されるカルボン酸エステルを好ましくは、補助押出し成形機の下流で、かつスタティックミキサーの上流で、メンブランポンプまたは他のいずれか好適なポンプを用いて、材料に計量添加してもよい。そして、好ましくはカルボン酸エステルの投入を、液体形態で、80〜250℃で、メンブランポンプを用いて、特に好ましくは50〜250barの高圧で、ギアポンプの下流で行う。場合によっては、カルボン酸エステルを、補助押出し成形機の混合ゾーンに、制御バルブを用いて溶融ストリームへと導入してもよい。
【0097】
ある特に好ましい実施の形態では、全添加剤を確実に良好に混合するために、スタティックミキサーは、補助押出し成形機の下流であって全ての添加剤投入ポイントの下流にある。そして、補助押出し成形機からのポリカーボネート溶融物を、ポリカーボネート溶融物のメインストリームに導入する。溶融物メインストリームと補助押出し成形機からの溶融物ストリームとの混合は、さらなるスタティックミキサーによって行われる。
【0098】
液体投入に代えて、ホスフィンとカルボン酸エステルの投入を、マスターバッチ(ポリカーボネートにおける添加剤の濃縮物)の形態で、または純粋な固体形態で、補助押出し成形機のポリカーボネート供給システムのホッパーによって、行ってもよい。このタイプのマスターバッチはさらなる添加剤を含有してもよい。
【0099】
たとえば、全ての添加剤を順次顆粒状のポリカーボネートに、化合させながら導入することも可能である。
【0100】
流動特性は、本発明による成形組成物の溶融粘度を、280℃〜320℃の温度で、せん断変化率の関数として、Pasで測定することを経て決定され、せん断変化率は50〜5000[l/s]変化し得る。毛管レオメータを、ISO11443に従って測定するために使用する。
【0101】
本発明による成形組成物の光学特性は、ASTM E313に従って、標準試験片における黄色指数(Yellowness Index)(YI)として公知の測定法を経て決定される。表1および表2はその結果を照合させたものである。
【0102】
本発明による成形組成物の加水分解耐性は、水中での沸騰試験として公知の測定法を経て決定され、沸騰試験では、標準試験片を、還流凝縮器において、250時間標準圧力で、純水中に配置する。これらの成形物の変化を目視で、ISO 180/ICによるノッチ衝撃耐性の測定を経て、かつ相対溶液粘度の測定を経て、決定する。相対溶液粘度イータ・レル(eta rel)を、ウッベローデ(Ubbelohde)粘度計で、25℃で塩化メチレンにおいて(0.5gのポリカーボネート/l)決定する。表3はその結果を照合させたものである。
【0103】
本発明による成形組成物をいずれのタイプの成形物の製造に使用してもよい。
【0104】
たとえば、これらを、射出成形、押出しおよびブロー成形法を経て製造してもよい。別の形態の方法は、予め製造されたシートまたはホイルから熱形成を経て成形物を製造するものである。
【0105】
本発明による成形物の例は、たとえば、家庭用装置、たとえば、ジュースプレス、コーヒーメーカー、ミキサー用の;事務機器、たとえば、モニター、プリンタ、複写機用の;シート、パイプ、電気配管、窓、ドア用のいずれのタイプの異形材、ホイル、包装部品、および建物センサ、内装設備およびアウトドア用品用の;電気技術分野における、たとえば、スイッチおよびプラグ用の異形材である。本発明による成形物はさらに、列車、船、飛行機、バス、他の自動車の内装設備および部品として、かつ自動車の車体部品としても使用されてもよい。
【0106】
本発明による成形物は透明でも半透明でもまたは不透明でもよい。特定の他の成形物は、光および光磁気データ記憶システム、たとえば、ミニディスク、コンパクトディスク(CD)またはデジタルバーサタイルディスク(DVD)、飲食料パッケージング、光学レンズおよびプリズム、照射目的のレンズ、自動車用ヘッドランプレンズ、建設車両用および自動車用施釉、たとえば、植物園用の何らかのタイプのパネル、およびツイン−ウェブサンドイッチパネルまたは空洞のあるパネルとして公知の製品である。
【0107】
上で記載した全ての参照文献を、全ての有用な目的のために、その全てを参照して挿入する。
【0108】
本発明を具体化したある特定の構造を示し、記載したが、当業者にとって、その一部の各種変更および再編を、基本的な発明の概念の精神および範囲から逸脱することなく、行うことができ、発明の概念はここで示され記載される特定の形態に限定されないことは、自明である。
【実施例】
【0109】
本発明に従って化合される材料を、10kg/時間の生産量のベルストルフ(Berstorff)、ハノーバからのZE25/3押出し成形機中で製造した。バレル温度は220〜260℃であった。各種添加剤を混合物に計量添加する形態は、ポリカーボネートパウダーとのパウダー混合物の形態で、全投入重量に基づいて5重量%であった。
【0110】
PC1は、添加剤を含まないビスフェノールAとDPCに基づくポリカーボネートであって、12.5cm/10分(300℃/1.2kg)の溶融体積流速(MVR)を有する。多官能性化合物A:343ppm,B:32ppm,C:18ppm,D:76ppm。
【0111】
PC2は、250ppmのトリフェニルホスフィン(TPP)と100ppmのトリイソオクチルホスフェート(TOF)を含むビスフェノールAに基づくポリカーボネートであって、12.5cm/10分(300℃/1.2kg)のMVRを有する。多官能性化合物A:340ppm,B:39ppm,C:15ppm,D:129ppm。
【0112】
PC3は、添加剤を含まないビスフェノールAに基づくポリカーボネートであって、19cm/10分(300℃/1.2kg)のMVRを有する。多官能性化合物A、B、CおよびDは検出限界未満。
【0113】
表1は、実施例1が添加剤を含まず、実施例2および3はリン添加剤を含有しないことを示している。実施例1〜3は比較例としての役割を果たす。
【0114】
実施例4および5は、リン添加剤(トリフェニルホスフィンTPPとトリイソオクチルホスフェートTOF)だけでなく、脂肪族カルボン酸エステル(グリセロールモノステアレート(GMS))をも含有し、本発明によるものである。
【0115】
本発明に従う実施例4および5を、本発明に従わない実施例1〜3と比べた場合、実施例4および5は、測定された溶融粘度に基づいて決定されるように、流動性が改善されており、YI値の低下から明らかなように、光学特性が改善される。
【0116】
表1に示される本発明による実施例は、したがって、発明に従わない実施例に比べて、光学特性の改良と流動性の改良の証拠を提供するものである。
【0117】
表2は、実施例6が添加剤を含まず、実施例7および8はリン添加剤を含有しないことを示している。実施例6〜8は比較例としての役割を果たす。
【0118】
実施例9、10および11は、本発明に従って、リン添加剤(トリフェニルホスフィンTPPとトリイソオクチルホスフェートTOF)だけでなく、脂肪族カルボン酸エステル(ペンタエリスリトールテトラステアレートPETS)をも含有する。
【0119】
本発明に従う実施例9〜11を、本発明に従わない実施例6〜8と比べた場合、実施例9〜11は、測定された溶融粘度に基づいて決定されるように、流動性が改善されており、YI値の低下から明らかなように、光学特性が改善される。
【0120】
表2に示される本発明による実施例は、したがって、発明に従わない実施例に比べて、光学特性の改良と流動性の改良の証拠を提供するものである。
【0121】
表3の実施例12は、トリフェニルホスフィンとペンタエリスリトールテトラステアレートを含有し、したがって本発明によるものである。
【0122】
実施例13はトリアルキルホスフィト(トリス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]ホスフィト)とペンタエリスリトールテトラステアレートを含有し、したがって本発明に従うものではない。
【0123】
表3で、本発明に従う実施例12を、本発明に従わない実施例13と比べた場合、実施例12は実質的により高い加水分解耐性を有する。本発明に従わない実施例13の場合には、水中に僅か50時間置いた後に、ノッチ衝撃耐性(脆性破壊)および溶液粘度が劇的に悪化するが、本発明による成形物は延性破壊を有するものの、溶液粘度は僅かしか低下しない。100ppm時間後、発明に従わない実施例13の場合には、成形物には、スパンコール効果として公知の効果によって引き起こされる曇りが観察されると共に、水処理後にさらに溶液粘度が悪化するが、発明による実施例12の場合には、ここでも溶液粘度の変化は僅かしか見られず、外観の変化はない。
【0124】
表3に示される本発明による実施例は、したがって、発明に従わない実施例に比べて、加水分解耐性の改良の証拠を提供するものである。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ポリカーボネート、式(I)の少なくとも1つのホスフィン、および少なくとも1つの脂肪族カルボン酸エステルを含有する組成物であって:
【化1】

ここで、
ArおよびArは、
同じまたは異なった、任意に置換されたアリール部分であり、
R’は任意に置換されたアリール部分または以下の(Ia)〜(Ih)の部分の1つであり、
【化2】

ここで、
Rは任意に置換されたC〜C14−アリール部分であり、
nおよびmは、
それぞれ互いに独立して、1〜7の整数であり、部分(Ia)〜(Ic)のH原子は任意に置換基で置換され、但し、式(I)でAr部分が共にそれぞれ任意に置換された4−フェニル−フェニルまたは任意に置換されたα−ナフチルであるなら、R’も任意に置換された4−フェニル−フェニルまたは任意に置換されたα−ナフチルであってもよい
組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのアルキルホスフェートをさらに含有する請求項1の組成物。
【請求項3】
前記溶融ポリカーボネートが、式(IV)の化合物を含有し、
【化3】

ここで、
大括弧は繰り返し構造ユニットを示し、
YはHまたは式(X)の基であり、
【化4】

ここで、
16は同じまたは異なった、H、C〜C20−アルキル、C、またはC(CHであり、かつ
uは0、1、2、または3であり、
MはArまたは多官能性基A、B、またはC、または基Dであり、
ここで、
Arは式(VIII)または(IX)の基であり、
【化5】

ここで、
ZはC〜C−アルキリデン、C〜C12−シクロアルキリデン、S、SO、または単結合であり、
13、R14、およびR15は、互いに独立して置換または非置換C〜C18−アルキル部分、好ましくは置換または非置換フェニル、メチル、プロピル、エチル、ブチル、ClまたはBrであり、
r、s、およびtは互いに独立して0、1、または2であり、
多官能性基Aは次の式の基であり、
【化6】

多官能性基Bは次の式の基であり、
【化7】

多官能性基Cは次の式の基であり、
【化8】

ここで、
Xは、Yまたは−[MOCOO]−Yであり、ここでMおよびYは上で規定されたものであり、
基Dは次の式の基であり、
【化9】

多官能性基A,B、CおよびD全体は≧5mg/kgである
請求項1の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの式(I)のホスフィンが、式(I)の化合物、その酸化形態、またはその混合物である請求項1の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの式(I)のホスフィンが、トリフェニルホスフィン、その酸化形態、またはその混合物である請求項1の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの式(I)のホスフィンの80%までがその酸化形態である請求項1の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアルキルホスフェートが式(II)であり:
【化10】

ここで、
、R、およびRは、同じまたは異なった、Hまたは線形、分岐、または環状アルキル基である請求項2の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアルキルホスフェートが、少なくとも1つのモノ−、ジ−またはトリイソオクチルホスフェート(トリス−2−エチルヘキシルホスフェート)を含有する請求項7の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの脂肪族カルボン酸エステルが式(III)の化合物であって:

(R−CO−O)−R−(OH)
ここで、o=1〜4およびp=3〜0 (III)

ここで、
は、脂肪族飽和または不飽和、線形、環状または分岐アルキル部分であり、Rは、一〜四価の脂肪族アルコールR−(OH)o+pのアルキレン部分である
請求項1の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの脂肪族カルボン酸エステルが、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、プロパンジオール、ステアリルアルコール、セチルアルコールまたはミリスチルアルコールと、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸またはモンタン酸またはその混合物とのエステルを含有する請求項1の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの式(I)のホスフィンが、前記組成物の全重量に基づいて10〜2000mg/kgの量で使用される請求項1の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのアルキルホスフェートが、前記組成物の全重量に基づいて0.5〜500mg/kgの量で使用される請求項2の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの脂肪族カルボン酸エステルが、前記組成物の全重量に基づいて50〜8000mg/kgの量で使用される請求項1の組成物。
【請求項14】
前記溶融ポリカーボネートを、ビスフェノールと炭酸ジエステルとの溶融エステル交換反応を介して製造することを包含する請求項1の組成物を製造する方法。
【請求項15】
前記溶融ポリカーボネートを、ヒドロキシおよび/またはカーボネート末端基を含有するカーボネートオリゴマー、ビスフェノール、および炭酸ジエステルとの縮合を介して製造することを包含する請求項1の組成物を製造する方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの式(I)のホスフィンおよび前記少なくとも1つのカルボン酸エステルを、前記溶融ポリカーボネートの溶融ストリームへと、最終縮重合段階から下流の補助押出し成形機を介して導入し、前記少なくとも1つの式(I)のホスフィン、前記少なくとも1つのカルボン酸エステル、および前記溶融ポリカーボネートをスタティックミキサー内で任意に混合することを包含する請求項1の組成物を製造する方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのカルボン酸エステルを、メンブランポンプまたは他のいずれか好適なポンプを用いて、補助押出し成形機から下流でスタティックミキサーから上流で、前記溶融ポリカーボネートの溶融ストリームへと計量添加することを包含する請求項1の組成物を製造する方法。
【請求項18】
請求項1の組成物から成る成形物。

【公開番号】特開2011−80059(P2011−80059A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−220878(P2010−220878)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】