説明

溶融物の中の温度の光ファイバによる較正及び測定

測定信号の平衡のために改良した方法、及び前記方法を実施するための単純で信頼性の高い機能を有する装置を立案することである。既知の基準温度を有する標準物質が光ファイバの1端部に配置され、標準物質が少なくとも基準温度まで加熱され、基準温度が達成されたときに、光ファイバが受信した信号を較正信号として測定装置へ供給し、そこで基準温度に対する理論値と比較され、その差が較正のために使用される方法により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(光ファイバにより得た)測定信号を較正するための方法、及び対応する測定装置に関する。加えて、本発明は、溶けた物体(溶融物)の中の温度を光ファイバにより測定するための方法、並びに測定装置、及びその装置の使用に関する。ここで、溶融物は、純粋な金属(例えば、鉄、銅、又は鋼)又は合金の溶融物、及び氷晶石溶融物、塩溶融物、又はガラス溶融物の両方として理解される。
【背景技術】
【0002】
その種の装置は、例えば、 DE 199 34 299 A1 で開示される。そこでは、放射線検出器が測定システムを較正するために使用され、第2放射線検出器が放射線源により放出される放射線を測定するために使用される。
【0003】
温度センサの較正は、例えば、 GB 2 155 238 A 及び DE 195 32 077 A1 で開示される。そこでは、熱電対チップから隔離された標準物質が、較正のために使用される。これは、熱電対の問題のない機能を保証し、破壊を防止するために必要である。その種の破壊的効果は、例えば、 U.S. 3,499,310 で開示される。そこでは、熱電対が化学反応から標準物質を用いて(例えば、コーティングにより)保護されることが明確に開示される。
【0004】
他の装置は、例えば、 JP 63-125906, U.S. 4,576,486 及び U.S. 5,364,186 で開示される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の問題は、測定信号の平衡のために改良した方法、及び前記方法を実施するための(単純で信頼性の高い機能を有する)対応する装置を立案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、前記方法に対する問題が、既知の基準温度を有する標準物質が光ファイバの1端部に配置され、標準物質が少なくとも基準温度まで加熱され、基準温度が達成されたときに、光ファイバが受信した信号を較正信号として測定装置へ供給し、そこで基準温度に対する理論値と比較され、その差が較正のために使用される方法により解決される。更に詳細には、標準物質を有する光ファイバの端部は溶融金属(例えば、溶融した鉄、又は鋼)に浸され、そこで加熱される。基本的に、信号の受信は、(特に、較正信号が電圧値から温度値に変換され、基準温度に対する理論値と比較される)既知の方法で進行する。ここで、標準物質は、光ファイバの端部へ直接的に(即ち、従来技術で必要な光ファイバと標準物質の間の隔離配置なしに)配置される。
【0007】
本発明による温度測定方法は、本発明による較正プロセスの後又は間に、光ファイバが溶融物の中に浸され、取得した光信号が溶融物の温度の値として評価されることを含む。較正に対する時間的接近のために、高い精度の温度測定が可能である。各温度測定の前に、較正が追加支出なしに可能である。更に詳細には、標準物質の基準温度が溶融物の融点温度より低いことは有利である。更に、標準物質が測定される溶融物に浸され、そこで標準物質の基準温度まで加熱され、その後で溶融物の温度が測定されることは有用である。
【0008】
石英ガラス(及び/又は、サファイア)が、光ファイバとして使用されることは有利である。何故ならば、この方法で、測定を高温の溶融物の中で行えるからである。加えて、プラスチック・ファイバ(及び/又は、石英ガラス・ファイバ)とサファイアの組合せが、光ファイバとして使用できることが有用である。プラスチック・ファイバと石英ガラスの組合せも可能である。
【0009】
溶融物の不充分な冷却を防止するため、例えば、冷却中に、標準物質と接触する光ファイバの端部が振動するように設定できる。振動は、少なくとも間欠的に、溶融物の冷却の間ずっと行われることが好ましい。
【0010】
本発明による方法は、光ファイバの較正(又は、減衰量の決定)のために使用できる。もし、その種の材料が標準物質として使用されるなら、基準温度は純粋な金属の融点温度でもよい。合金の標準物質としての使用に対して、例えば、液相線温度、固相線温度、又は共融点が基準温度として使用できる。プランクの法則によると、較正曲線を500℃より高温で外挿法により推定することが可能である。従って、例えば、銀を標準物質として用いる較正が961.8℃の温度において実現でき、それにより高い精度が、溶融鉄の中の約1550℃における測定に対しても達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明によると、測定信号の平衡のための装置は、光ファイバ、光ファイバのための保持具、及び光ファイバから出力される信号を受信するため光ファイバに接続された測定装置を有し、既知の基準温度を有する標準物質が(直接的に)光ファイバの1端部に配置されること、光ファイバが標準物質の基準温度において受信し測定装置へ較正信号として供給される信号と、基準温度に対する理論値に対応する信号のための比較器を測定装置が有すること、及び較正のための差を出力(及び/又は、処理)するために評価ユニットを備えることにより特徴付けられる。標準物質を光ファイバの端部に直接配置することにより、高い精度の測定が単純な構造により達成される。
【0012】
問題は、溶融物の中の温度を測定するための(光ファイバを有する)装置に対して、本発明による平衡装置が、光ファイバを溶融物の中に浸漬するための浸漬端部、及び温度に対する値として受信した光信号(及び/又は、電気信号)の評価のための評価ユニットを有するという点で解決される。
【0013】
装置に対して、標準物質が光ファイバの端部を少なくとも端面で少なくとも部分的に覆うこと、及び/又は標準物質が光ファイバの端部に沿って配置されることは有用である。何故ならば、この方法で、光信号受信がイネーブルされるからである。更に、光ファイバの端部が、放射線を受けるための自由表面を少なくとも部分的に有することは有用である。更に詳細には、標準物質がコンパクトな物体、ワイヤ、ワイヤ・メッシュ、又は管として形成されること、及び光ファイバが石英ガラス、及び/又はサファイアから形成されることは有利である。加えて、光ファイバが、プラスチック・ファイバ及び/又は石英ガラス・ファイバの組合せを有することは有利である。また、プラスチック・ファイバと石英ガラスの組合せも可能である。
【0014】
溶融物の不充分な冷却を防止するため、バイブレータが光ファイバ、光ファイバ保持具、又は光ファイバ・ガイドに備えられる。光ファイバ(特に、標準物質と接触する端部)が、このバイブレータにより振動させられる。
【0015】
本発明による装置は、光ファイバの較正(又は、減衰量(従って、伝搬損失)の決定)のために使用される。この場合の用語「平衡」は、較正(又は、減衰量の決定)を意味する。
【実施例1】
【0016】
光ファイバ1は、測定装置2の1端部に接続される。保持具は、ボール紙、又は他の材料(例えば、鋼、又はセラミック)から成る。測定装置2は光ファイバ1により外側へ誘導された複数の信号を検出し、信号を理論的基準値と比較するために備えられる。この方法で、(光ファイバ1の他の端部に配置された)標準物質3が発生した値が、測定装置2に記憶された理論的基準値(例えば、基準温度)と比較される。2つの値の間の起こり得る差は、測定装置を較正するために使用される。従って、測定装置2は、データを出力(及び/又は、処理)するための評価ユニットを含む。純粋な金属(例えば、銀)が標準物質3として使用される場合、金属の融点温度(例えば、銀は961.8℃)が基準温度として使用される。
【0017】
光ファイバ1は保持具4により保持され、この保持具により誘導される。自由に動く光ファイバ1に関して、光ファイバ1はループ5状で測定装置2まで送られる。光ファイバ1の1端部に配置された標準物質3は、(例えば、溶解炉の内部の)溶融金属6に浸漬される。溶融金属6は、例えば、溶融鉄、又は鋼である。この場合、標準物質3は、例えば、銀である。基準温度は、銀の融点温度である。銀の融点温度は、溶融鉄(又は、溶融鋼)の融点温度よりも低い。標準物質3を有する光ファイバ1の端部は、溶融金属6へ保持具4の助けにより浸漬される。そこでは、標準物質3が、最初に融点温度まで加熱される。この方法で、光ファイバ1を通して測定装置2に供給された信号は対応する理論値と比較されて、測定装置2を較正する。標準物質3を融解させた後、このことは、溶融金属6の実際の融点温度まで更に加熱する。この方法で光ファイバ1により測定装置2へ誘導された信号は評価され(例えば、温度に対応する電気的値に変換され)、測定装置2で更に処理される。電気信号は、光学表示される温度値に変換できる。この方法で、測定装置2が最初に較正され、次に溶融金属6の実際の温度が測定される。図4では、温度プロファイルが、これら一連の処理ステップの間にプロットされる。ここで、達成された最初のプラトー値は標準物質3(銀)の融点温度を表し、次のプラトー値は溶融金属6の温度を表す。図示されない振動装置は、保持具4に堅固に配置される。その種の振動装置は、例えば、 DE 44 33 685 A1 で開示される。
【0018】
図2は、溶融金属の中に浸漬される光ファイバ1の端部の断面を示す。光ファイバ1は、スリーブ(クラッド)7、及びコア8を有する。端部では、光ファイバ1は側面に沿って、及び端面上を標準物質3により囲まれる。標準物質3は、当業者に既知の方法で保持される。保持は、例えば、図3に示される方法で、1端部に近くて標準物質3を有する(光ファイバ1の)浸漬端部を囲む石英管9の内部で実現される。ここで、光ファイバ1は、セラミック管10(例えば、アルシント)により誘導される。セラミック管10は、接着剤(例えば、LiSiO2接着剤14)により、同心状に配置された2つの他のセラミック管11,12の中に固定される。また、これら複数のセラミック管も、アルシントから形成される。セラミック管10,11,12は接点ブロック13に固定され、光ファイバは接点ブロック13を通して誘導される。接点ブロック13は、(図3に示されない)保持具4に接続される。ここで、セラミック管12は、保持具4の開口端の中で、例えば、接着剤により固定される。セラミック管12の端部の開口は、接着剤14,15により閉じられる。セラミック管11の内部では、接着剤16も配置される部品を固定するために使用できる。また、接続部品17を有する接点ブロック13も、他の構成要素の中で光コネクタとして機能する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】測定装置の斜視図である。
【図2】光ファイバの詳細な断面図である。
【図3】本発明による測定(又は、較正)装置の浸漬端部の断面図である。
【図4】測定曲線である。
【符号の説明】
【0020】
1 光ファイバ
2 測定装置
3 標準物質
4 保持具
5 ループ
6 溶融金属
7 スリーブ(クラッド)
8 コア
9 石英管
10,11,12 セラミック管
13 接点ブロック
14,15,16 接着剤
17 接続部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の基準温度を有する標準物質(3)が光ファイバ(1)の1端部に配置され、前記標準物質(3)が少なくとも前記基準温度まで加熱され、及び前記基準温度が達成されたときに、前記光ファイバ(1)が受信した信号を較正信号として測定装置(2)へ供給し、そこで前記基準温度に対する理論値と比較され、その差が較正のために使用されることを特徴とする、光ファイバにより得た測定信号を較正するための方法。
【請求項2】
前記較正信号が電圧値から温度値に変換され、前記基準温度に対する理論値と比較されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2の何れか1つに記載の方法による較正プロセスの後、光ファイバ(1)が溶融物(6)の中に浸され、取得した光信号が前記溶融物(6)の温度の値として評価されることを特徴とする、溶融物の中の温度を光ファイバ(1)により測定するための方法。
【請求項4】
前記標準物質(3)の前記基準温度が前記溶融物(6)の融点温度より低いことを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記標準物質(3)が測定される前記溶融物(6)に浸され、そこで前記標準物質(3)の前記基準温度まで加熱され、その後で前記溶融物(6)の温度が測定されることを特徴とする、請求項3又は4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
石英ガラス、又はサファイアが前記光ファイバ(1)として使用されることを特徴とする、請求項1から5の何れか1つに記載の方法。
【請求項7】
プラスチック・ファイバ、及び/又は石英ガラス・ファイバとサファイアの組合せが、前記光ファイバ(1)として使用されることを特徴とする、請求項1から5の何れか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記光ファイバの端部が少なくとも間欠的に振動するように設定されることを特徴とする、請求項1から7の何れか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記光ファイバの較正、又は減衰量の決定のために使用されることを特徴とする、請求項1から8の何れか1つに記載の方法。
【請求項10】
光ファイバ(1)、前記光ファイバ(1)のための保持具、及び前記光ファイバ(1)から出力される信号を受信するため前記光ファイバ(1)に接続された測定装置を有し、既知の基準温度を有する標準物質(3)が前記光ファイバ(1)の1端部に配置されること、前記光ファイバ(1)が前記標準物質(3)の前記基準温度において受信し測定装置(2)へ較正信号として供給される信号と、前記基準温度に対する理論値に対応する信号のための比較器を前記測定装置(2)が有すること、及び較正のための差を出力、及び/又は処理するために評価ユニットを備えることにより特徴付けられる、測定信号の平衡のための装置。
【請求項11】
請求項10に記載の平衡装置が、光ファイバ(1)を溶融物(6)の中に浸漬するための浸漬端部、及び温度に対する値として受信した光信号、及び/又は電気信号の評価のための評価ユニットを有することを特徴とする、溶融物の中の温度を光ファイバ(1)により測定するための装置。
【請求項12】
前記標準物質(3)が前記光ファイバ(1)の端部を少なくとも端面で少なくとも部分的に覆うこと、及び/又は前記標準物質(3)が前記光ファイバ(1)の端部に沿って配置されることを特徴とする、請求項10又は11の何れか1つに記載の装置。
【請求項13】
前記光ファイバ(1)の端部が、自由表面を少なくとも部分的に有することを特徴とする、請求項10から12の何れか1つに記載の装置。
【請求項14】
前記標準物質(3)がコンパクトな物体、ワイヤ、ワイヤ・メッシュ、又は管として形成されることを特徴とする、請求項10から13の何れか1つに記載の装置。
【請求項15】
前記光ファイバ(1)が石英ガラス、又はサファイアから形成されることを特徴とする、請求項10から14の何れか1つに記載の装置。
【請求項16】
前記光ファイバ(1)が、プラスチック・ファイバ、及び/又は石英ガラス・ファイバとサファイアの組合せを有することを特徴とする、請求項10から14の何れか1つに記載の装置。
【請求項17】
前記光ファイバ(1)がバイブレータに接続されることを特徴とする、請求項10から16の何れか1つに記載の装置。
【請求項18】
前記光ファイバ(1)の較正、又は減衰量の決定のために使用されることを特徴とする、請求項10から17の何れか1つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−513933(P2009−513933A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518030(P2006−518030)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006828
【国際公開番号】WO2005/005946
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】