説明

溶融金属浸漬プローブ

【課題】プローブの自動装着の際に万が一封止材に亀裂や破損が生じたとしても溶融金属の浸入を防止し、センサ信号の断線を阻止できるとともに、良好な試料採取にも寄与できる溶融金属浸漬プローブを提供せんとする。
【解決手段】筒状本体2の先端側に支持筒31によって支持されたセンサ部3を突設し、該センサ部3から延びるリード線30を筒状本体2内の隙間sを通じて基端側に配設してなり、この隙間sのプローブ先端側の開口部22を閉塞する仕切り部材1を設けるとともに、該仕切り部材1の先端側の筒状本体開口部20のセンサ部3周囲を封止材21で封止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属中に浸漬され、先端のセンサ部にて溶融金属の各種特性を測定するための溶融金属浸漬プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の溶融金属浸漬プローブとしては、従来、プローブを構成する筒状本体の先端にセンサ部を設け、該センサ部から延びるリード線を筒状本体内の隙間を通じて基端側に配設し、該プローブが取り付けられる基端側の金属製ホルダー内のリード線に電気的に接続して外部ケーブルから操作室の各計器に接続されたり、無線送信されたりする。筒状本体先端の開口部はセンサ部を残して周囲を耐火セメント等の封止材で封止され、内部に溶融金属が浸入してこないように構成されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
プローブは溶融金属浸漬前に自動で金属製ホルダーに装着されるが、この際、チャックでプローブ先端を掴むことにより封止材に亀裂や破損が生じる可能性があり、この亀裂・破損の箇所から溶融金属が内部に浸入し、リード線の破断等が生じる虞があるとともに、さらに浸入した溶融金属が採取室まで到達して纏わりついた状態で凝固し、採取試料が測定室から外れないといった虞もある。
【0004】
【特許文献1】特開2000−214127号公報
【特許文献2】特開2000−28438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、プローブの自動装着の際に万が一封止材に亀裂や破損が生じたとしても溶融金属の浸入を防止し、センサ信号の断線を阻止できるとともに、良好な試料採取にも寄与できる溶融金属浸漬プローブを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の課題解決のために、筒状本体の先端にセンサ部を備え、該センサ部から延びるリード線を前記筒状本体内の隙間を通じて基端側に配設してなる溶融金属浸漬プローブであって、前記筒状本体内における前記隙間がプローブ先端側で開口する位置に、該開口を閉塞する仕切り部材を嵌め込み、該仕切り部材の先端側の筒状本体開口部を前記センサ部を除き封止材で封止してなることを特徴とする溶融金属浸漬プローブを構成した。
【0007】
ここで、前記仕切り部材を紙製とすることが好ましい。
【0008】
また、前記筒状本体を構成している外装管の内側に、単又は複数の内管を内装し、前記外装管と前記単又は複数の内管とからなる部材間の何れかの間に前記リード線を配設する隙間を設けることが好ましい。
【0009】
この場合、前記仕切り部材を環状部材、或いは軸方向にスリットを設けた断面視略C字状部材、或いは半割状の複数の分割部材より構成することが好ましい。
【0010】
更に、前記仕切り部材を、前記隙間を形成している内側の内管の先端側に当接した状態で外側の内管又は外装管の内面に内嵌することが好ましい。
【0011】
また、前記仕切り部材を、前記センサ部を支持する支持筒の外周面と前記外側の内管又は外装管の内面との間に挟持される寸法に設定し、これら支持筒及び筒状本体の間を閉塞することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上にしてなる本願発明に係る溶融金属浸漬プローブは、センサのリード線を配線する隙間の開口位置に仕切り部材を嵌め込んで閉塞し、その上で封止材を封止したことから、封止材に亀裂や破損が生じても仕切り部材で溶融金属の隙間への浸入を確実に阻止でき、リード線の破断や採取室に溶融金属が纏わり付くといったことを防止することができる。
【0013】
また、仕切り部材を紙製としたので、封止材の亀裂や破損部から溶融金属が浸入してきても燃えにくく、かつ弾性があり、隙間の開口部分を確実に密封して溶融金属の隙間への浸入をより確実に阻止できる。
【0014】
また、筒状本体を構成している外装管の内側に、単又は複数の内管を内装し、前記外装管と前記単又は複数の内管とからなる部材間の何れかの間に前記リード線を配設する隙間を設けたので、筒体間でリード線を熱から確実に保護できるとともに、隙間を最小限にでき、当該隙間への溶融金属の浸入は仕切り部材で確実に阻止できる。
【0015】
また、仕切り部材を環状部材、或いは軸方向にスリットを設けた断面視略C字状部材、或いは半割状の複数の分割部材より構成したので、隙間への溶融金属の浸入を完全に阻止でき、とくにスリットを設けたものや分割部材で構成したものではリード線の配線が当該仕切り部材の設置後に行うこともでき、作業性についての自由度が向上する。
【0016】
また、仕切り部材を前記隙間を形成している内側の内管の先端側に当接した状態で外側の内管又は外装管の内面に内嵌したので、仕切り部材をしっかりと保持でき、隙間への溶融金属の浸入を確実に阻止できる。
【0017】
また、仕切り部材を、前記センサ部を支持する支持筒の外周面と前記外側の内管又は外装管の内面との間に挟持される寸法に設定し、これら支持筒及び筒状本体の間を閉塞したので、仕切り部材をしっかりと保持でき、隙間や内管のスリット溝等からの溶融金属の浸入をより確実に阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る溶融金属浸漬プローブの全体概略構成を示す断面図であり、図1〜4は代表的実施形態を示し、図中符号1は仕切り部材、2は筒状本体、3はセンサ部、4は中軸管、5は外装管、6は第1の内管、7は第2の内管をそれぞれ示している。
【0020】
本発明の溶融金属浸漬プローブPは、図1に示すように、筒状本体2の先端側に支持筒31によって支持されたセンサ部3が突設され、該センサ部3から延びるリード線30が筒状本体2内の隙間sを通じて基端側に配設されたものであり、特に、この隙間sのプローブ先端側の開口部22を閉塞する仕切り部材1を設けるとともに、該仕切り部材1の先端側の筒状本体開口部20のセンサ部3周囲を封止材21で封止することで、かりに封止材21に亀裂や破損が生じても仕切り部材1で溶融金属の隙間sへの浸入を確実に阻止でき、隙間s内のリード線30の破断や隙間sを通じて浸入した溶融金属が内部の採取室9に纏わり付くことを未然に防止できるものである。
【0021】
筒状本体2は、外装管5の内側に、第1の内管6、第2の内管7、第3の内管8が順に同軸状に内装された構造であり、内管6の基端側は内管7よりも突出し、該突出部分に中軸管4が内挿されている。内管7は、先端側においてセンサ部3の支持筒31を内管8を介して支持しており、また中央位置において後述する採取容器90や取込部92を内挿支持している。そして、内管6の内周面60と内管7の外周面71との間には隙間sが形成され、先端側のセンサ部3から基端側のコネクタ40に向けて軸方向にリード線30を配設するための通路として利用されている。また内管6の先端側は内管7、内管8よりも突出しており、当該突出部分と支持筒31との間に仕切り部材1を挿着することにより、前記隙間sの開口部22を塞ぎ、溶融金属の隙間sへの浸入が阻止されている。
【0022】
本例では、外装管5の内側に内管6、7、8を3つ設けたが、1つ又は2つ或いは4つ以上内装したものでもよい。その場合、外装管5を含めていずれかの管の間に上記リード線配設用の隙間(通路)を設けることができ、当該隙間を形成する外側の管の内周面に当接するように仕切り部材を設ければ隙間を塞ぐことは同じく可能である。外装管5、内管6、7、8は従来と同様、いずれも燃えにくい紙製とされている。
【0023】
センサ部3は、本例では内管7の先端部位に内管8を介して支持筒31を取り付け、その先端開口部に測温センサ36を突出状態で装着したものであり、測温センサ36は鉄製のカバー部材33で覆われた内部にアーチ状の石英保護管付き熱電対32が配設され、その頂点付近に熱電対の測温接点を有した測温部を備えている。熱電対32によって測定される測温値は、溶融金属の温度変化をリアルタイムに測温する為の手段として利用される。尚、センサ部3としてこのような測温センサ36を設けること以外に、酸素センサなど種々のセンサを代わりに或いは併設してもよい。また、センサー部3にサンプラーを併設することも可能である。更に、センサ部3から延びるリード線30は1本に纏めたもの又は複数本であってもよい。
【0024】
また本例では、筒状本体2の内部、具体的には第2の内管7の内面側に溶融金属採取室9を構成する採取容器90が内装されており、採取容器90の開口位置には、筒状本体2に開設された流入口91を介して外部に連通される溶融金属取込部92が設けられ、これら採取容器9内の採取室9から取込部92にわたってチタン製の脱酸材94が挿着されている。そして、流入口91から流入した溶融金属は前記取込部92から採取容器90内の採取室9に注ぎ込まれ、脱酸処理されて凝固した後、サンプルとして取り出され元素分析される。なお、採取容器90の底部とセンサ部3を支持する支持筒31との間には、採取容器90からの熱がリード線30に伝わらないよう板紙93が介装されている。
【0025】
筒状本体2の基端側には中軸管4が内嵌接合されており、この中軸管4はセンサ部3から導出されるリード線30が接続されるコネクタ40が内部に設けられ、図示しないサブスリーブの電気接点と接続して各センサからの信号を外部に伝送するように構成されている。
【0026】
センサ部3のリード線30の配線構造は、まず支持筒31先端の測温センサ36から支持筒31内をリード線30が配線され、図2,3に示すように、基端側の採取容器9底部の板紙93との間を支持筒31基端面に形成した横溝31bを通じて外周側に導出される。導出されたリード線30は、内管8、7にそれぞれ形成されたスリット溝83、73を利用して内管7とその外周側の内管6との間の隙間sに挿通され、基端側に導かれた後、内管7の基端側のスリット溝74を利用して内周側に位置する中軸管4のコネクタ40に接続される。尚、リード線30を内外に導くための上記スリット溝73、74、83の代わりに、例えば径方向の貫通穴を形成したものでもよい。
【0027】
内管6の突出部分と支持筒31との間に挿着される仕切り部材1は、紙製の環状部材(本例では扁平な筒状部材)で構成され、その寸法は少なくとも隙間sの開口部22を閉じるように設定され、本例においては基端面11が隙間sを形成している内側の内管7、8の先端部7a,8aにそれぞれ当接した状態で、支持筒31の外周面35と外側の第1の内管6の内周面60との間に挟持される寸法に設定されることで、支持筒31と第1の内管6との間を閉塞して隙間sの開口部22以外に、スリット溝73、83をも当該仕切り部材1で封鎖して内管7、8の間等への溶融金属の浸入も阻止できるように構成されている。
【0028】
尚、仕切り部材1の寸法については、少なくとも隙間sの開口部22を閉じつつ内周面は支持筒31の間に隙間を有する寸法にし、空いた内方空間に後述の耐火セメントを埋め込むようにしてもよい。また本来、クリアーランスゼロが理想であるが、溶融金属の浸入を防止できる程度のクリアーランスであればあってもよいことは勿論である。また、仕切り部材1の形状は本例のような環状部材とする以外に、たとえば図4(a)に示すように軸方向にスリット10を設けた断面視略C字状部材で構成し、スリットには耐火セメント等で封止したものでもよいし、また図中(b)に示すように半割状の複数の分割部材1A,1Bを組み合わせて構成してもよい。このようにスリット10を設けたり分割部材1A,1Bで構成することによりこれら仕切り部材1を装着してからリード線30を隙間sに配線することも可能となり配線の作業性が向上する。
【0029】
仕切り部材1を挿着した後、その先端側は封止材21で封止され筒状本体2内に溶融金属が浸入しないように封止されている。この封止材21としては従来と同様、耐火モルタルやセラミックス、鋳物砂によるシェルモールド製など、安価で耐熱性があり、各種成型が可能であり、センサ近傍に設置しても指示値に与える影響の少ない部材が使用される。また本例では、封止材21で封止した後、その先端側に筒状本体2の外径と略同じか若干大きな外径寸法を有する紙管34がセンサ部3を囲むように延設されており、自動装着時にチャックが当該紙管34の外周面を併せて掴むことで封止材21にチャックの力が集中することを回避し、亀裂や破損が生じにくいように工夫されている。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の代表的実施形態に係る溶融金属浸漬プローブを示す縦断面図。
【図2】同じく溶融金属浸漬プローブの要部を示す縦断面図。
【図3】同じく要部を示す一部破断分解斜視図。
【図4】(a),(b)は仕切り部材の変形例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0032】
P 溶融金属浸漬プローブ
s 隙間
1 仕切り部材
2 筒状本体
3 センサ部
4 中軸管
5 外装管
6 第1の内管
7 第2の内管
7a 先端部
8 第3の内管
8a 先端部
9 採取室
10 スリット
11 基端面
20 開口部
21 封止材
22 開口部
30 リード線
31 支持筒
31b 横溝
32 熱電対
33 カバー部材
34 紙管
35 外周面
36 測温センサ
40 コネクタ
60 内周面
71 外周面
73,74 スリット溝
83 スリット溝
90 採取容器
91 流入口
92 取込部
93 板紙
94 脱酸材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状本体の先端にセンサ部を備え、該センサ部から延びるリード線を前記筒状本体内の隙間を通じて基端側に配設してなる溶融金属浸漬プローブであって、前記筒状本体内における前記隙間がプローブ先端側で開口する位置に、該開口を閉塞する仕切り部材を嵌め込み、該仕切り部材の先端側の筒状本体開口部を前記センサ部を除き封止材で封止してなることを特徴とする溶融金属浸漬プローブ。
【請求項2】
前記仕切り部材を紙製とした請求項1記載の溶融金属浸漬プローブ。
【請求項3】
前記筒状本体を構成している外装管の内側に、単又は複数の内管を内装し、前記外装管と前記単又は複数の内管とからなる部材間の何れかの間に前記リード線を配設する隙間を設けてなる請求項1又は2の何れか1項に記載の溶融金属浸漬プローブ。
【請求項4】
前記仕切り部材を、環状部材、或いは軸方向にスリットを設けた断面視略C字状部材、或いは半割状の複数の分割部材より構成してなる請求項3記載の溶融金属浸漬プローブ。
【請求項5】
前記仕切り部材を、前記隙間を形成している内側の内管の先端側に当接した状態で外側の内管又は外装管の内面に内嵌してなる請求項3又は4記載の溶融金属浸漬プローブ。
【請求項6】
前記仕切り部材を、前記センサ部を支持する支持筒の外周面と前記外側の内管又は外装管の内面との間に挟持される寸法に設定し、これら支持筒及び筒状本体の間を閉塞してなる請求項5記載の溶融金属浸漬プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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