説明

溶質含有固体製品から溶質を除去する方法及び装置

【課題】固体及び/又は油に熱を加えることで油及び固体がしばしば変性するのを防止する。
【解決手段】抽出チャンバ(24)に導かれた抽出容器の全体にわたって液体状態を維持する溶媒によって、溶質含有固体製品から溶質を除去するための方法及び装置である。溶媒と溶質とは、雑物として容器(42)に集められ、分離容器(48)において互いに分離される。抽出チャンバ(24)と分離容器(48)との両方において、溶媒が液体状態に維持されるような温度及び圧力に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、溶質含有固体製品から溶質を除去する方法及び装置に関し、より詳しくは、油含有製品から油を浸出する溶媒によって、油含有固体製品から油を除去する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油含有固体製品から油を除去するための方法は、当業者に知られている。そうした工程のいくつかは、抽出チャンバにおいて行われ、油含有製品に対して溶媒が噴霧又はその他の方法で注入され、固体製品から油を浸出させる。結果として、油と溶媒との混合物からなる雑物が生じ、これは、油−溶媒の分離チャンバへと運ばれる。
いくつかの工程においては、所定の抽出温度及び圧力の値では液体であるが、雰囲気温度及び圧力の値では通常はガスであるような、液体の溶媒が使用される。抽出チャンバ内で液体状態の溶媒を用いて固体製品から油を浸出させた後、油は液体のままであるが、溶媒はガス状になるような温度に加熱された分離チャンバの内部で雑物は油と溶媒との別々の成分に分離され、油と溶媒とを容易に区別して収集できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そうした従来技術の工程に関連したひとつの問題点は、固体及び/又は油に熱を加えることで、油及び固体がしばしば変性して、好ましくないことである。変性は、溶質又は固体製品の、あらゆる物理的、化学的、又は分子的な変化である。このことは、従来技術の工程において、比較的高い油の変性温度にしばしば達する、雑物の分離過程中に真実である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る溶質含有固体製品から溶質を分離する方法は、
− 所定の抽出圧及び温度の値を有する抽出チャンバを提供する段階と、
− 前記抽出圧を雰囲気圧よりも高く維持するように制御する段階と、
− 前記抽出温度を前記溶質及び前記固体製品のいずれをも変性させることがない温度に制御する段階と、
− 前記溶質含有固体製品を前記抽出チャンバに供給する段階と、
− 前記抽出圧及び温度の値において主として液体状態である溶媒を提供する段階であって、前記溶質は、前記抽出圧及び温度の値において、前記溶媒に可溶性であるような、上記溶媒を提供する段階と、
− 液体状態である前記溶媒を、前記抽出チャンバ内の前記溶質含有製品に注入し、前記溶媒を用いて前記固体製品から前記溶質を浸出させる段階と、
− 前記溶質の少なくとも一部分が浸出された前記固体製品と、前記溶媒と前記固体製品から浸出された前記溶質との混合物からなる雑物とを区別して回復する段階と、
− 前記雑物を、所定の分離温度及び圧力の値を有する分離ユニットへと運ぶ段階であって、前記分離温度及び圧力の値において前記溶媒は主として液体状態に維持され、前記分離ユニットの温度の値が、前記溶質を変性させない温度に維持されるように制御される上記段階と、
− 前記分離ユニットにおいて、液体−液体の分離工程を介して、前記溶質から前記溶媒を分離する段階と、
− 前記分離ユニットにおいて分離された前記溶媒と前記溶質とを区別して回復する段階と、を備え、
前記溶媒は、前記工程の全体にわたって主として液体状態に維持される、ことを特徴とする。
【0005】
ひとつの実施形態においては、前記溶媒は雰囲気温度及び圧力の値においてはガス状態であるが、前記抽出温度及び圧力の値においては主として液体状態である。
【0006】
ひとつの実施形態においては、前記抽出温度及び分離温度は雰囲気温度と等しくて、前記溶媒は、前記抽出圧力及び分離圧力が雰囲気圧力より高く維持されることで、前記工程の全体にわたって主として液体状態に維持される。
【0007】
ひとつの実施形態においては、前記分離ユニットから回復された前記溶媒は、追加的な前記溶質含有材料から追加的な溶質を抽出するために、前記抽出チャンバ内において再利用され、前記溶媒は、閉ループ回路内において使用され、前記閉ループ回路の全体にわたって主として液体状態に維持される。
【0008】
ひとつの実施形態においては、前記液体−液体分離工程は、分子重量、比重、及び粘性差による分離工程のうちのひとつである。
【0009】
ひとつの実施形態においては、前記工程はバッチ工程であって、前記溶質含有固体製品を前記抽出チャンバに供給する段階は、溶質含有固体製品のバッチを前記抽出チャンバに装荷することによって達成されている。
【0010】
他の実施形態においては、前記工程は連続工程であって、前記溶質含有固体製品を前記抽出チャンバに供給する段階は、溶質含有製品を前記抽出チャンバに通して連続的に循環させて、少なくとも一部分の油が抽出された固体製品を前記抽出チャンバの出口から連続的に回復する。
【0011】
ひとつの実施形態においては、前記抽出チャンバは、多数の抽出チャンバ部分から構成され、該チャンバ部分を通して、前記溶質含有製品が順次循環して、溶質含有固体製品から溶質を抽出し、それぞれの抽出チャンバ部分には対応する抽出チャンバパラメータが定められ、少なくともいくつかの抽出チャンバパラメータは、ひとつの抽出チャンバと他の抽出チャンバとで異なっている。
【0012】
ひとつの実施形態においては、前記溶媒を前記抽出チャンバに注入する段階は、渦巻形の溶媒の噴霧パターンを形成可能な、前記抽出チャンバ内に延びた少なくともひとつの噴霧ノズルによって達成される。
【0013】
ひとつの実施形態においては、前記溶質含有製品を前記抽出チャンバに連続的に循環させる段階は、撹拌パドルに設けられた螺旋状部分によって達成され、前記段階はさらに、前記溶質含有製品の粒子を撹拌し、自由に浮遊する固体製品粒子の形成を促進し、その少なくとも一部分を前記渦巻状の溶媒の噴霧パターンに運び入れる段階を備えている。
【0014】
ひとつの実施形態においては、前記抽出圧を雰囲気圧力の値よりも高く維持するように制御する段階は、前記溶媒の蒸気及び前記溶媒に反応しないガスのひとつ、油、及び固体製品のひとつを前記抽出チャンバに注入するガス注入器によって達成される。
【0015】
また、本発明に係る油含有固体製品から油を分離する装置は、
− 抽出チャンバと、
− 前記抽出チャンバに溶媒を注入する溶媒注入器であって、油含有固体製品から油を浸出して、溶媒と油との混合物からなる雑物を形成するための上記溶媒注入器と、
− 雑物を収集するために前記抽出チャンバに設けた雑物出口と、
− 前記雑物出口に連結され、雑物を油と溶媒との成分に分離する、液体−液体分離ユニットと、を備え、
前記抽出チャンバに注入された溶媒は主として液体状態に維持され、油含有製品から油を浸出させて、溶媒と共に雑物を形成し、前記液体−液体分離ユニット内にて主として液体状態に維持される、ことを特徴とする。
【0016】
ひとつの実施形態においては、装置はさらに、
− 前記抽出チャンバの上流側に配置された入口バルブであって、前記抽出チャンバと雰囲気との間に流体の通路を許容せずに、前記油含有固体製品を前記抽出チャンバに入れるような上記入口バルブと、
− 前記抽出チャンバの下流側に配置された出口バルブであって、前記抽出チャンバと雰囲気との間に流体の通路を許容せずに、油が浸出された固体製品を前記抽出チャンバから排出するような上記出口バルブと、
− 前記入口バルブから前記抽出チャンバを通して前記出口バルブへ前記固体製品を循環させるためのインペラと、を備え、
前記装置は、前記入口バルブに固体製品を連続的に供給し、固体製品から連続的に油を浸出し、固体製品を前記出口バルブから連続的に排出し、前記雑物出口から雑物を連続的に収集する、ことを特徴とする。
【0017】
ひとつの実施形態においては、前記出口バルブの下流側に安全溶媒抽出ユニットをさらに備え、固体製品に熱を加えることで、残留溶媒蒸気を取り除く。
【0018】
さらに、本発明に係る入口と出口とを形成するバルブは、前記入口から前記出口への固体製品の通過を許容しつつ、前記入口と出口との間における流体の交換を防止するような上記バルブにおいて、
− 前記入口と前記出口との間に延びた内側通路と、
− 前記内側通路の前記入口と出口との中間に設けた流体排出ポートであって、前記流体排出ポートは、真空ポンプに連通し、フィルターを備え、前記流体排出ポートを通る流体の通過を許容するが、固体製品が前記流体排出ポートを通過することは阻止するような上記流体排出ポートと、
− 前記内側通路内に配置されて回転可能な回転バルブ部材であって、前記回転バルブ部材は、液密式に前記内側通路に係合して細長い横断通路を有する本体を備え、前記回転バルブ部材は、前記横断通路が前記バルブの内側通路と同一の広がりをもって連通し、前記本体が前記流体排出ポートを閉塞する第1の位置と、前記横断通路が前記流体排出ポートと見当が合わされて連通し、前記本体が前記バルブの内側通路を閉塞する第2の位置との間において回転可能であるような上記回転バルブ部材と、
− 前記細長い横断通路の内部における2つの限界位置の間において長手方向に可動なピストンと、を備えていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、一般的には、油抽出工程の全体にわたって液体状態に維持される溶媒によって、溶質含有固体製品から溶質を除去する方法及び装置に関する。ひとつの実施形態においては、溶媒は、雰囲気温度及び圧力の値においては、通常はガス状態であるが、本発明の方法及び装置においては、液体状態で使用され、そのために、溶媒がこの液体状態に維持されるように、装置内の圧力及び温度の値を維持する。他の実施形態においては、溶媒は、雰囲気温度及び圧力の値において、既に液体状態であって、本発明の装置内でこの液体状態に維持される。
【0020】
本発明のひとつの実施形態によれば、溶質含有製品は、所定の量の油又は脂肪を含む固体製品である。固体製品は、例えば、溶かして脂肪を採った動物の組織や、産業、商業、又は国内の含油廃棄物、含油危険物、含油産業副産物、油含有砂、地層、鉱物、岩の組成物、油で揚げた又は染み込んだ非食用及び食用の豆、及びその外皮及び皮、種及びその外皮及び皮及び/又は殻、ナッツ及びその外皮、皮及び/又は殻、樹木の葉及び枝及び根、植物の葉及び軸、根元から出ている葉及び枝及び根、有機、哺乳類、又は水生の海洋生命あらゆる種類の穀物及び野菜などであって、有機的に固有に含まれ、保持又は懸濁した脂肪及び天然油から固体を分離するためのものである。
【0021】
溶媒は、所定の抽出圧力及び温度の値において前記溶質が溶解可能な、任意の適当な溶媒である。ひとつの実施形態では、前述したように、溶媒は雰囲気温度及び圧力の値においてはガス状態であるが、抽出圧力及び温度の値においては液体状態に維持される。溶媒は、例えば、プロパン又はブタンの混合物、または、冷媒などである。
本発明による方法及び装置では、多くの異なる溶媒を用いることができ、溶媒の厳密な性質は、ほとんど、油含有製品と、油含有製品に含まれる油とに依存する。
【0022】
より詳しくは、本発明による、溶質含有固体製品から溶質を分離する方法は、
− 所定の抽出圧及び温度の値を有する抽出チャンバを提供する段階と、
− 抽出圧を雰囲気圧よりも高く維持するように制御する段階と、
− 抽出温度を溶質及び固体製品のいずれをも変性させることがない温度に制御する段階と、
− 溶質含有固体製品を抽出チャンバに供給する段階と、
− 抽出圧及び温度の値において主として液体状態である溶媒を提供する段階であって、溶質は、抽出圧及び温度の値において、溶媒に可溶性であるような、上記溶媒を提供する段階と、
− 溶媒を、抽出チャンバ内の溶質含有製品に注入し、溶媒を用いて固体製品から溶質を浸出させる段階と、
− 溶質の少なくとも一部分が浸出された固体製品と、溶媒と固体製品から浸出された溶質との混合物からなる雑物とを区別して回復する段階と、
− 雑物を、所定の分離温度及び圧力の値を有する分離ユニットへと運ぶ段階であって、分離温度及び圧力の値において溶媒は主として液体状態に維持され、分離温度の値が、溶質を変性させない温度に維持されるように制御される上記段階と、
分子重量、比重、及び粘性差による分離工程のうちのひとつによって、分離ユニット内にて溶質から溶媒を分離する段階と、
− 分離ユニットにおいて分離された溶媒と溶質とを区別して回復する段階と、を備え、
溶媒は、前記工程の全体にわたって主として液体状態に維持される、ことを特徴とする。
本発明による工程は、連続的に又はバッチ工程として達成される。
【0023】
図1は、本発明による工程を連続工程として実行するために使用される、装置20のひとつの実施形態を模式的に示している。
装置20は、供給原料入口バルブ22を備え、該入口バルブが結合された、抽出チャンバ24と総称される連続的な隣接した抽出チャンバ24a,24b,24c,24d,24eは、事実上、単一の抽出チャンバにおける抽出チャンバの一部分であり、というのは、後述するように、これらは互いに連通しているからである。しかしながら、不図示の変形例による実施形態においては、抽出チャンバ24は、適当なバルブによって流体的に隔離されていても良い。
【0024】
抽出チャンバ24の下流側には、固体製品出口バルブ26が設けられ、任意的事項である安全溶媒抽出ユニット28に結合されている。油と固体製品とを区別して回復するために装置20で処理されるべき、油含有製品ないし供給原料は、従って、供給原料入口バルブ22から供給されて、連続的に隣接した抽出チャンバ24を逐次循環し、後述するように、所定の割合の油が、油含有固体製品から抽出される。油が抽出された固体製品は、次に、固体製品出口バルブ26を通して運ばれて、安全溶媒抽出ユニット28の下流側にある、装置20の出口へと向かう。
【0025】
入口バルブ22と出口バルブ26とは、固体製品の連続的な又は実質的に連続的な通過を許容するが、その他の流体の通過は阻止する。従って、固体製品は、バルブ22,26を自由に通過するが、抽出チャンバ24と雰囲気との間には流体の交換は存在しない。
ひとつの実施形態においては、油含有固体製品の処理を容易にするために、固体製品は、粒状又はペレット型にて入口バルブ22に供給され、固体製品の最大粒子サイズは、最適化された油の収量が得られるように、経験的に選択され及び/又は計算される。
【0026】
抽出チャンバ24の内部は、所定の抽出圧力及び温度の値に設定されて維持される。より詳しくは、抽出圧は、雰囲気圧の値より高く維持されるように制御され、抽出温度は、油又は油含有固体製品を変性させることがない温度に維持されるように制御される。これらの抽出温度及び圧力の値は、抽出チャンバ24の内部にて、溶媒が液体状態に維持されるように設定され、一方、ひとつの実施形態においては、この同一の溶媒は、雰囲気温度及び圧力の値ではガス状態である。例えば、抽出温度は、例えば1℃(33゜F)〜40℃(104゜F)の間など、雰囲気温度に実質的に等しく、抽出圧は、例えば約10バールなど、雰囲気圧の値を大きく越えた値に維持される。しかしながら、これらの例示的な抽出温度及び圧力の値は制限的にみなされるものではなく、というのは、それらは油、油含有製品、及び使用される溶媒の性質に応じて変化するためである。それでも、抽出チャンバ24の内部を雰囲気温度に維持することは、ほとんどの油及び固体製品の変性を防ぐ助けになるという利点を有し、というのは、それらは本来、雰囲気温度に見い出されるからである。
【0027】
抽出圧を雰囲気圧よりも高く維持するひとつの方法は、ガス注入ポンプ29aをガス注入器29に接続して、抽出チャンバ24にガスを注入することである。図1には、すべての抽出チャンバ24のために、単一のガス注入器29を示しているけれども、複数のガス注入器を設けても良いことを理解されたい。注入されるガスの性質については後述する。
装置20の内部には、閉ループの液体溶媒回路が設けられ、液体状態の溶媒が循環されて、抽出チャンバ24に供給された、油含有製品から油を抽出するために使用される。より詳しくは、装置20には主溶媒タンク30が設けられ、該タンクの内部には溶媒が収容されて、主として液体状態に維持されるような温度及び圧力の値になっている。溶媒ポンプ32は、主溶媒タンク30から溶媒マニホールド34へと溶媒を運び、後者は、多数の独立して制御される噴霧ノズル36a,36b,36c,36d,36e(全体を噴霧ノズル36と称する)の形態である溶媒注入器に接続され、溶媒を対応する抽出チャンバ24に注入する。
【0028】
抽出圧力及び温度の値において、溶質は溶媒に溶解可能であるから、抽出チャンバ24内に溶媒が噴霧されると、溶媒は油含有固体製品から油を浸出させ、溶媒と油とは雑物を形成し、雑物は、例えばフィルタ(図1には不図示)を介して、固体製品の粒子が通り抜けるのを防ぎつつ、雑物が通り抜けられるようにして回復される。雑物は、全体を雑物出口通路38と称する、対応する雑物出口通路38a,38b,38c,38d,38eを通して集められる。全体を雑物ポンプ40と称する、雑物ポンプ40a,40b,40c,40d,40eは、雑物通路38に接続され、抽出チャンバ24からの雑物の流出を確保する。従って、回復された雑物は、雑物収集タンク42へと運ばれる。単一の雑物タンクを示したけれども、それぞれの抽出チャンバに対応した、別々の雑物タンクを使用しても良いことを理解されたい。ポンプ44は、雑物タンク42から粒子フィルタ46を介して分離ユニット48へと雑物を運び、ここで、油は、液体状態の溶媒から、例えば、分子重量、比重、及び粘性差による分離工程のうちのひとつである公知の液体−液体分離工程によって分離される。また、分離ユニット48の内部は、所定の分離温度及び圧力の値に維持され、分離温度及び圧力の値において、溶媒は主として液体状態に維持され、分離ユニットの温度の値は、油を変性させない温度に維持されるように制御される。ひとつの実施形態においては、分離温度及び圧力の値は、抽出温度及び圧力の値と同一であって、例えば、それぞれ雰囲気温度と10バールである。
【0029】
分離ユニット48内で油から分離された溶媒は、ポンプ50によって主溶媒タンク30へ戻され、一方、溶媒から分離された油は、あらゆる残留溶媒の蒸気があればこれを除去する、任意的事項である分離ユニット52を通り抜けた後に、油出口に集められる。
閉ループの溶媒回路の全体にわたって、溶媒は主として常に液体状態に維持される。本願の明細書及び特許請求の範囲において、溶媒は液体状態に維持されると記述しているけれども、装置20の内部の対応する周辺領域が溶媒の蒸気で飽和しない限り、いくらかの液体状態の溶媒は実際には気化し、従って事実上いかなる場合であってもいくらかの溶媒の蒸気が存在するであろうことを理解されたい。溶媒は、装置20の内部において、常に、完全な液体状態であるわけではない。従って、溶媒が液体状態に維持されると記述されている場合、注入器36を通して注入されたアクティブな溶媒が、固体製品から油を浸出させ、油と共に雑物を形成し、液体状態で分離されるように分離ユニット48に運ばれ、次に、注入器36に注入されるように再使用されることを称している。従って、装置20の非飽和領域において自然に気化する溶媒の割合は別として、溶媒は「主として」液体状態に維持されると言うことができる。
【0030】
閉ループの溶媒回路を液体状態に維持することは、例えば、温度をおよそ雰囲気温度の値に一定に維持し、閉ループの溶媒回路の内部を雰囲気圧力の値よりも高い圧力に維持することで達成される。このことは特に有利で、装置20の内部を循環する油及び固体製品が変性するのを防ぐ助けになるが、というのは、従来技術の装置においてしばしば見られたように、これらが大量の熱にさらされることがないからである。
【0031】
装置20の正常な動作モードにおいては、すべてではないにせよ、ほとんどの液体状態の溶媒は、抽出チャンバ24の内部の雑物を介して回復される。しかしながら、いくつかの場合には、溶媒は、抽出チャンバ24から出るときに固体製品から完全に除去されず、特に、いくらかの溶媒の蒸気が抽出チャンバ24内に残留し、固体製品に捕捉されたままに残される。従って、出口バルブ26の下流側に配置された任意的事項である安全溶媒抽出ユニット28を使用し、熱を加えて固体製品の残留溶媒を除去し、装置20から不用意に溶媒が排出されることを防止する。この熱のレベルは比較的低く、というのは、任意的事項である安全溶媒抽出ユニット28の温度は、内部で処理される固体製品が変性する温度に比べて充分に低いからである。
【0032】
安全溶媒抽出ユニット28において固体製品から溶媒が除去されたならば、溶媒は回復され、液化され、適当な配管(図示せず)によって、主溶媒タンク30へと運ばれる。同じことは、分離ユニット52で回復された溶媒の蒸気についても言える。本発明による油抽出工程中に、溶媒の最少部分に正味の損失がある場合には、装置20に、ポンプ55aを備えた補助溶媒タンク55を具備し、必要な追加的な溶媒をマニホールド34に分配させる。
【0033】
変形例としては、安全溶媒抽出ユニット28で回復された溶媒の蒸気が、ガス注入器29に運ばれて、抽出チャンバ24の内部を雰囲気圧力よりも高く維持するために再使用される。実際に、溶媒の蒸気が充填された抽出チャンバ24を有することで、その内部を所望の圧力に維持することが可能である。これは、固体製品から油を浸出するために液体状態において抽出チャンバ24に注入された溶媒が、本発明の工程の全体にわたって主として液体状態に維持されるという事実を変化させるものではない。実際に、溶媒の蒸気は必要な圧力を維持するために使用され、ガス状態の溶媒と液体状態の溶媒との間には自然な交換が生じるけれども、液体状態の溶媒は主として液体状態に維持される。変形例としては、抽出チャンバ24の圧力を雰囲気圧力よりも高く設定して維持するために溶媒の蒸気が使用されないならば、油や溶媒又は固体製品と反応しないその他のガス、例えば、不活性ガス又は窒素などその他の非反応性のガスをガス注入器29に使用しても良い。
【0034】
任意的事項である加熱装置53は、抽出チャンバ24と出口バルブ26との間に設けられる。加熱装置53は、例えば、加熱要素53aの形態である加熱手段を備え、固体製品をわずかに加熱してからセンサ装置51に送り出し、センサ装置は排出された固体製品の油含有量を検出する。この油含有量の検出は、装置20の出口にて固体製品に所望の油含有量を得るために、オペレータが抽出チャンバのパラメータを適切に設定する助けになる。センサ51などの公知のセンサは、任意的事項としては一定の温度にて動作し、加熱要素53の目的は、従って、この一定の温度に固体製品を維持することである。
【0035】
図1に示したひとつの実施形態においては、入口及び出口のバルブ22,26は、それぞれ真空ポンプ54と圧縮機56とに接続され、(a)装置20の外部の雰囲気からガス及び流体(例えば、空気)が抽出チャンバ24内にしみ込むことを防止し、及び(b)装置20の内部からガス及び流体(例えば溶媒の蒸気)がバルブ22,26を通って装置20外へしみ出ることを防止するために必要な適切な圧力差を提供する。より詳しくは、バルブ22,26は中間チャンバを具備し、中間チャンバの中には真空が作られて、その内部にある空気などすべての流体を除去した後、固体製品が下流側に運ばれるのを許容する。抽出チャンバ24の内部には正の圧力が存在するので、圧縮機56がさらに動作して、ガスをバルブ22,26に送り戻す。いくつかの特定の実施形態によるバルブ22,26について説明するけれども、本発明はそれらに制限されないことを理解されたい。
【0036】
図2は、第1の実施形態による入口バルブ22を示している。バルブ26については詳述しないが、バルブ26はバルブ22と同様であることを理解されたい。図2に示した実施形態においては、入口バルブ22は中空のハウジング200を備え、該ハウジングは、雰囲気の環境に開かれた供給原料入口開口部204を形成する内側通路202と、抽出チャンバ24に通じる供給原料出口開口部206と、入口及び出口の開口部204,206の間に延在する供給原料の流れ軸線とを備えている。入口開口部204には、螺旋状部分208が設けられる。入口開口部は、ホッパーの底端部に配置され、少なくとも部分的に供給原料で充填される。
【0037】
また、ハウジング200は、幅広の中間部分210を備え、円筒形の内側通路部分212を形成し、その中には、相補的な円筒形の回転バルブ部材214が、供給原料の流れ軸線に対して垂直な回転軸線を中心として回転可能に設けられる。回転バルブ部材214は、本体215を形成し、該本体は、バルブの内側通路202に液密式に係合する。回転バルブ部材214は、横断通路216を備え、その中には、ピストン218が、回転バルブ部材の横断通路216の2つの末端に対応する第1及び第2の限界位置の間において長手方向に可動になっている。
【0038】
空気排気ポート220は、固体物フィルタ222を備え、流体の通過を許容しつつ、固体物の通過を阻止し、該空気排気ポートは、ハウジングの中間部分210の片側に設けられて、バルブの内側通路202から角度的に隔てられ、90゜の角度をなして、図2の右手側にある。空気排気ポート220は、選択的に動作する真空ポンプ(図1の符号54)に真空通路224を介して接続され、ガス源(図1の符号56)に接続されたガス通路226もまた空気排気ポート220に連通している。ガス通路226を循環するガスは、溶媒の蒸気、または、例えば窒素などの任意のその他の適当なガスであって、溶媒や油又は固体製品と化学的に反応しないものである。
【0039】
溶媒排気ポート228は、固体物フィルタ230を備え、流体の通過を許容しつつ固体物の通過を阻止し、該溶媒排気ポートは、バルブ内側通路202に対して、ハウジングの中間部分210における空気排気ポートとは反対側の側部に設けられ、すなわち図2における左手側に設けられる。従って、溶媒排気ポート228は、バルブ内側通路202から90゜の角度だけ隔てられ、空気排気ポートからは180゜の角度だけ隔てられる。溶媒排気ポート228は、選択的に動作する真空ポンプ(図1の符号54)に真空通路232を介して接続され、外部の雰囲気に結合された空気通路234に接続されている。
【0040】
使用に際しては、バルブ22は初期には図2に示した位置にあって、回転バルブ部材214は、横断通路216がバルブ内側通路202と同一の広がりをもつように位置決めされ、ピストン218は、供給原料入口開口部204に最も近い、横断通路216の末端又は末端付近である第1の限界位置に配置される。回転バルブ214がこの位置にあるとき、ピストン218は、抽出チャンバ24の内部の圧力が雰囲気圧力よりも高いことに起因して、第1の限界位置へ向けて常に付勢される。
【0041】
供給原料は、例えば、油含有粒状の固体材料の形態であって、螺旋状部分208によって、及び重力によって、バルブ22の供給原料入口開口部204を下る。供給原料が徐々に供給されると、ピストン218は、抽出チャンバ24の内部の圧力による付勢に抗して、第2の限界位置へ向けて徐々に押し込まれる。最終的には、ピストン218は、図3に示すように、第2の限界位置に達する。
【0042】
この時点において、回転バルブ部材214は図4に示すように時計まわりに90゜回転し、横断通路216の開いた端部、すなわち、ピストン218で閉鎖されていない横断通路216の端部が、空気排気ポート220に見当合わせされる。次に、排気ポート220に、そして横断通路216に、真空が作られ、横断通路216から真空通路224を介してあらゆる流体を吸い出して、横断通路216から流体をパージする。固体は、フィルタ222によって、横断通路216内に維持される。これは、結果的に、供給原料が充填された横断通路216の内部からすべての空気を除去し、あらゆる空気が抽出チャンバ24に流入するのを防止する。いったん真空が得られたならば、真空ポンプは停止して、溶媒の蒸気などのガスがガス通路226を介して横断通路に注入され、横断通路216の圧力は、抽出チャンバ24の内部の圧力と実質的に等しくなる。
【0043】
いったんこれが達成されたならば、回転バルブ部材214は、2回目の回転を行い同じく時計まわりに90゜回転して図5に示した状態になって、横断通路216の開いた端部は、バルブ22の供給原料出口開口部206と見当合わせされる。重力の力と、螺旋状部分208が供給原料入口開口部204に新たな供給原料を供給してピストン218が押し下げることによって、横断通路216に存在していた供給原料は、供給原料出口開口部206を通して押し出される。
【0044】
回転バルブ部材214が、図4に示すように、その開いた端部を空気排気ポートに見当合わせされたとき、その閉じた端部、すなわち、ピストン218によって閉鎖された端部は、同時に、溶媒排気ポート228に見当合わせされることに留意されたい。次に、真空通路232を介して真空が作られ、横断通路の末端にある小さな領域内に存在するすべての溶媒をパージするが、というのは、ピストン218が正確にその第2の限界位置に配置されていないかも知れず、また、それゆえに、小さな領域が存在するだろうからである。従って、ガス排気ポート228は、バルブ22からあらゆるガスが不用意に流出することを防止することを助ける。ピストン218は平坦な対向する上面及び底面を有するように示したけれども、ピストンは、凸面の対向する上面及び底面であって、回転バルブ部材214の外面と同一の曲率半径を有するように形成しても良いことに留意されたい。真空通路232を介して流体をパージしていた真空ポンプがいったん停止すると、雰囲気圧の空気が空気通路234を介して注入され、先にパージされた流体で残された空洞を充填する。従って、回転バルブ部材がさらに90゜回転すると、ピストン218とハウジングの内壁との間に存在していたすべての溶媒は、既にパージされており、溶媒が不用意に雰囲気に排出されることを防止する。
【0045】
図6は、本発明の別の実施形態によるバルブ組立体300を示していて、前述したバルブ22に類似した、一対のバルブ22a,22bを備えている。バルブ22a,22bの頂部には、ホッパー302が据え付けられ、ホッパー302における一対のテーパの付いた底部開口部304,306は、バルブ22a,22bの供給原料入口開口部204,204へのアクセスを提供する。取り外し可能なカバー308は、ホッパー302の内側チャンバへのアクセスを許容する。一対のモータ310,312は、バルブ22a,22bの螺旋状部分208,208を制御する。バルブ22a,22bのそれぞれの供給原料出口開口部206,206は、漏斗314に開かれ、漏斗の出口開口部316は抽出チャンバ24(図6には不図示)に通じている。
【0046】
使用に際しては、バルブ22a,22bは、前述したバルブ22と同様に働く。ホッパー302に位置する供給原料は、両方のバルブ22a,22bに同時に、それぞれの供給原料入口開口部204,204を介して徐々に供給される。供給原料は、バルブ22について前述したように、バルブ22a,22bのそれぞれの出口開口部306,306に放出され、漏斗314は、入って来る供給原料を抽出チャンバ24(図6には不図示)の入口へ導く。
【0047】
ひとつの実施形態においては、バルブ22a,22bは、互いにオフセットした規則的なサイクルを有する。より詳しくは、それぞれの回転バルブ部材214,214は、常に90゜の角度オフセットがあるように制御され、従って、まず一方のバルブ22aから、次に他方のバルブ22bからと、交互に供給原料を放出する。
図1に示した本発明の実施形態においては、連続して連結された5つの抽出チャンバ24a,24b,24c,24d,24eが示されている。供給原料は、入口バルブ22を通して供給された後に抽出チャンバ24へ運ばれ、連続的に次々とすべての5つの抽出チャンバ24に運ばれることになっており、すなわち、まず抽出チャンバ24aを通り、次に抽出チャンバ24bを通るなどして、抽出チャンバ24eに達した後、抽出チャンバ組立体の外部へ運び出されて、加熱チャンバ53へ向かう。
抽出チャンバ24に沿って連続的に固体製品を運ぶための運搬手段が設けられ、例えば、抽出チャンバ組立体の全体にわたって延びた、単一のインペラの形態をとる。
それぞれの抽出チャンバ24の内部には、所定の抽出チャンバの溶媒注入パラメータに従って、溶媒が分配される。より一般的には、抽出チャンバ24は、油抽出工程に影響を及ぼす、所定の抽出チャンバパラメータを有する。これらの抽出チャンバパラメータは、処理されるそれぞれの油含有固体製品に従って、固体製品から集められる油に従って、及び使用される溶媒に従って、設定される。これらのパラメータはさらに、異なる抽出チャンバ24において異なる抽出チャンバパラメータが望ましいならば、それぞれの抽出チャンバ24毎に変更される。変更されるパラメータには、限定はしないが、使用されるインペラのタイプとその幾何学形状、インペラが螺旋状部分などの回転可能なインペラである場合には、インペラの回転速度、抽出チャンバのサイズ、抽出チャンバ24に分配される溶媒の流量、抽出チャンバ24から流出する雑物の流量、特定の溶媒の噴霧パターンなどの溶媒を分配する方法などが含まれる。
【0048】
これらのパラメータを制御する目的は、それぞれの抽出チャンバ24の内部における油浸出工程を較正し、結果的に、抽出チャンバ組立体の全体にわたる油浸出工程を較正することである。実際には、例えば、油の回復を最大にしたり、排出される固体製品内の油の割合を所定値にするなど、装置の出口における最終製品の所定の仕様及び比較的精密な油回復パラメータなどを満足することがしばしば望ましい。
【0049】
図7及び図8は、ひとつの実施形態による抽出チャンバ24を示していて、対向する上流側及び下流側の端部400,402がそれぞれ形成され、中空のハウジング404が形成する抽出通路406が、抽出チャンバの上流側及び下流側の端部400,402の間に延びている。それぞれの抽出チャンバ24の下流側端部402は、連続して隣接する抽出チャンバ24の上流側端部400に連通し、最後の抽出チャンバ24eは、加熱チャンバ53に連通している。従って、抽出チャンバ24の全体にわたって、同一の抽出圧力及び温度の値が維持される。螺旋状部分408の形態の動力駆動インペラは、内側通路406を延通し、螺旋状部分408は、加熱チャンバ53を含み、入口バルブ22から出口バルブ26まで、抽出チャンバ組立体の全体にわたって延在している。また、螺旋状部分408は、抽出チャンバ24の指定された領域において、多数の撹拌パドル410を一体的に取り付けられて備えている。マニホールド34に結合された噴霧ノズル36は、内側通路406の内部に延びている。
【0050】
図7及び図8に示した実施形態においては、固体製品の粒子は、螺旋状部分408によって運ばれて撹拌され、それぞれの抽出チャンバ24の第1の位置においては撹拌パドル410によってさらに撹拌され、自由に浮遊する製品粒子の流れパターンを吹き込み、例えば、図8の参照符号412の破線で示したパターンに従わせる。同時に、噴霧ノズル36は、注入された溶媒が渦巻状の噴霧パターンになるように溶媒を注入し、例えば、図8の参照符号414の破線で模式的に示した噴霧パターンに従わせる。この溶媒の渦巻状のパターンは、いくらかの自由に浮遊する固体製品の粒子を渦巻状に運び、固体製品の粒子に対する溶媒の作用を高め、従って、油の浸出を高める。
【0051】
溶媒を抽出チャンバに注入し、循環している固体製品から油を浸出するためには、他の代替的な溶媒注入手段も案出することができる。
【0052】
従って、抽出チャンバ24に注入された溶媒は、油含有製品から所定の割合の油を浸出させ、溶媒と油との混合物としての雑物を形成する。
抽出チャンバ24における噴霧ノズル36の下流側には、フィルタ418の下方に、雑物収集樋416が設けられる。インペラ408によって運ばれた雑物は、樋416に流入して収集され、固体製品の粒子は、フィルタ418によって通路406内に維持される。適当なフィルタは、使用される溶媒のタイプ、集められる油のタイプ、及び処理される固体製品のタイプに従って選択されることを理解されたい。樋416に集められた雑物は、樋416に連通した対応する雑物出口通路38(図1)を通して運び去る。
【0053】
抽出チャンバ24は、2つの異なる作用の部分を形成し、すなわち、第1の溶媒注入部分においては、撹拌された固体材料の粒子に溶媒が注入され、第2の雑物収集部分においては、雑物が集められる。撹拌パドル410と噴霧ノズル36とは、溶媒注入部分のみに存在し、フィルタ418と樋416とは、雑物収集部分のみに存在する。
従って、本発明によれば、油含有固体製品から油を抽出するための連続的な工程が提供され、固体製品は連続的に入口バルブ22に供給され、抽出チャンバ24を通って連続的に循環し、出口バルブ26から連続的に集められる。同時に、それぞれの抽出チャンバ24においては、所定の割合の油が、油含有製品から連続的に抽出され、抽出チャンバ組立体の全体の出口からは、最終的な割合の油が抽出される。想定されるひとつの実施形態によれば、センサ51に類似した、公知の構成の適当なセンサ(図示せず)を設けて、それぞれの抽出チャンバ24の出口において固体製品に残されている油の割合を検出し、制御機構(図示せず)を使用して、それぞれの抽出チャンバ24の抽出チャンバパラメータを動的に制御し、所望の残留油の割合をもつ固体製品を、装置20の出口から得る。例えば、固体製品から回復されるべき油が、50%、90%、又は100%と定められたならば、制御機構はそれぞれの抽出チャンバ24を別々に動的に制御して、溶媒の流量、溶媒の噴霧パターンの構成、インペラ螺旋状部分の回転速度、及び任意のその他の抽出チャンバパラメータを変更して、それぞれの抽出チャンバ24の出口にて検出された油の割合に応じて、所望の結果が得られるように油抽出パラメータを変更する。
【0054】
本発明によれば、固体製品が連続的に運ばれる一連の抽出チャンバ24は、(望むならば)、すべてではないにせよ、極めて重要な割合の油を、固体製品から抽出することができる。実際には、ひとつの抽出チャンバ24を通る固体製品のそれぞれの通過によって、油は固体製品から浸出され、従って、一連の抽出チャンバ24を設けることで、固体製品中の油の割合は、指数関数的にゼロに向かい、最終的にはゼロに達する。また、この油の抽出は、前述したように、抽出チャンバの内部の油の抽出を動的に制御する手段によって較正される。実際には、出願人が知る従来技術とは対照的に、本発明で使用される油抽出工程においては、装置の出口に設けた及び/又はすべての個別の抽出チャンバ24の出口に設けたセンサによる検出結果に応じて、装置20の動作中に抽出チャンバパラメータが変更される。例えば、溶媒の噴霧パターンや、流量、及びインペラの速度などの、抽出チャンバパラメータを動的に制御し、最終的に変更することで、油抽出の割合は選択的に制御される。
【0055】
抽出チャンバの系列を頼りにするのに加えて、油抽出の選択的な割合は、それぞれの抽出チャンバの内部で油が抽出されるやり方を頼りにする。実際に、抽出チャンバパラメータが動的に変更できるだけでなく、それぞれの抽出チャンバ24の内部における固体製品の粒子の特定の撹拌と共に、それぞれの抽出チャンバ24の噴霧ノズル36によって生成された溶媒の渦巻とによって、それぞれの抽出チャンバ24における高い抽出率が可能になる。
【0056】
高い抽出率は、装置20のオペレータの選択又は可能性として称されることを理解されたい。実際に、土壌の汚染除去などのある種の事例では、最大限の油抽出が望ましく、食品の準備などのその他の事例では、排出される固体製品に所定の割合の油を含むことが望ましい。
【0057】
例えば、約10バールといった、雰囲気圧よりも高い抽出圧を有することは、与えられた温度において雰囲気圧では通常はガス状態である溶媒を液体状態で使用できると共に、工程の効率を高めることから有利である。実際に、抽出圧力が重大であるならば、より細かい目のフィルタ418を用いて雑物を移送することができ、フィルタ418を通る雑物の通路を促進できる。
【0058】
分離ユニット48と抽出チャンバ24とのそれぞれにおける、それぞれの分離圧力と抽出圧力とは異なっていても良いことに留意されたい。
図9には、本発明の別の実施形態を示していて、バッチ工程の装置500を模式的に示している。装置500は、抽出チャンバ502を備え、供給原料の入口504は、いったん供給原料を抽出チャンバ502に供給した後に、ドア(図示せず)によって閉じられる。抽出チャンバ502は、第1の粗い目のフィルタ506と、第2の細かい目のフィルタ510に通じる出口508とを具備する。使用に際しては、油含有固体製品からなる供給原料のバッチを供給原料入口504に供給し、抽出チャンバ502のドアを閉じ、バッチ式の油抽出工程が開始される。
【0059】
油の抽出を達成するため、主溶媒タンク512からの溶媒が、溶媒注入ポンプ514によって抽出チャンバ502に注入される。従って、注入された溶媒は、油含有製品から所定の割合の油を浸出させ、油と溶媒との混合物からなる雑物が形成される。雑物は、粗い目のフィルタ506を通して集められ、粗い固体製品の粒子は抽出チャンバ502内に保持され、次に、細かい目のフィルタ510を通って、固体製品の微粒子が細かい目のフィルタ510に保持される。従って、集められた雑物は、液体−液体分離ユニット516に運ばれ、適当な液体−液体分離工程、例えば、分子重量、比重、及び粘性差による分離工程のうちのひとつなどによって、油は溶媒から分離される。油から分離された溶媒は、主溶媒タンク512へと戻され、溶媒から分離された油は油出口518に集められる。
また、溶媒蒸気ポンプ522を含む溶媒蒸気回路520が設けられ、残留溶媒蒸気を抽出チャンバ502から運んで、溶媒を溶媒タンク512へと戻し、溶媒は、固体材料のバッチが処理されたならば、液体状態へと凝結する。これは、固体製品を取り出すために抽出チャンバ502のドアが開かれたとき、溶媒の蒸気が雰囲気に排気されることを防止する。
【0060】
図9の実施形態においては、抽出チャンバ502と主溶媒タンク512との圧力及び温度の値が制御されて、溶媒の閉ループ回路の全体にわたって、溶媒を主として液体状態に維持する。ポンプ522でタンク512に運び戻された溶媒の蒸気は、溶媒の蒸気が凝結するような温度及び圧力の状態にさらされる。連続的工程を示した第1の実施形態と同様に、溶媒は、閉ループ回路の全体にわたって主として液体状態に維持され、溶媒を蒸発させて溶媒から油を分離するような熱の使用を防止する。このように、熱が存在しないことは、油が変性するのを防ぐ。
特許請求の範囲から逸脱しない、本発明の更なる変形例は、当業者にとって明らかであり、本発明に包含されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明による、油含有製品から油を除去する連続工程を実行するための装置を示した模式図である。
【図2】図2は、図1の装置における入口バルブを示した模式的な拡大図である。
【図3】図3乃至図5は、図2のバルブにおける回転バルブ部材を縮小して示した模式的な断面図であって、3つの位置にある回転バルブ部材を順に示し、矢印にてバルブ部材の回転とピストンの直線変位とを示唆している。
【図4】図3乃至図5は、図2のバルブにおける回転バルブ部材を縮小して示した模式的な断面図であって、3つの位置にある回転バルブ部材を順に示し、矢印にてバルブ部材の回転とピストンの直線変位とを示唆している。
【図5】図3乃至図5は、図2のバルブにおける回転バルブ部材を縮小して示した模式的な断面図であって、3つの位置にある回転バルブ部材を順に示し、矢印にてバルブ部材の回転とピストンの直線変位とを示唆している。
【図6】図6は、本発明の他の実施形態によるバルブ組立体を示した模式的な断面図であって、図2のバルブに類似した2つのバルブを具備している。
【図7】図7は、本発明による抽出チャンバを模式的に示した長手方向の断面図である。
【図8】図8は、図7の線VIII−VIIIに沿った模式的な断面図である。
【図9】図9は、本発明による、油含有製品から油を除去するバッチ工程を実行するための、別の装置を示した模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶質含有固体製品から溶質を分離する方法であって、
− 所定の抽出圧及び温度の値を有する抽出チャンバを提供する段階と、
− 前記抽出圧を雰囲気圧よりも高く維持するように制御する段階と、
− 前記抽出温度を前記溶質及び前記固体製品のいずれをも変性させることがない温度に制御する段階と、
− 前記溶質含有固体製品を前記抽出チャンバに供給する段階と、
− 前記抽出圧及び温度の値において主として液体状態である溶媒を提供する段階であって、前記溶質は、前記抽出圧及び温度の値において、前記溶媒に可溶性であるような、上記溶媒を提供する段階と、
− 液体状態である前記溶媒を、前記抽出チャンバ内の前記溶質含有製品に注入し、前記溶媒を用いて前記固体製品から前記溶質を浸出させる段階と、
− 前記溶質の少なくとも一部分が浸出された前記固体製品と、前記溶媒と前記固体製品から浸出された前記溶質との混合物からなる雑物とを区別して回復する段階と、
− 前記雑物を、所定の分離温度及び圧力の値を有する分離ユニットへと運ぶ段階であって、前記分離温度及び圧力の値において前記溶媒は主として液体状態に維持され、前記分離温度の値が、前記溶質を変性させない温度に維持されるように制御される上記段階と、
− 前記分離ユニットにおいて、液体−液体の分離工程を介して、前記溶質から前記溶媒を分離する段階と、
− 前記分離ユニットにおいて分離された前記溶媒と前記溶質とを区別して回復する段階と、を備え、
前記溶媒は、前記工程の全体にわたって主として液体状態に維持される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記溶媒は雰囲気温度及び圧力の値においてはガス状態であるが、前記抽出温度及び圧力の値においては主として液体状態であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出温度及び分離温度は雰囲気温度と等しくて、前記溶媒は、前記抽出圧力及び分離圧力が雰囲気圧力より高く維持されることで、前記工程の全体にわたって主として液体状態に維持されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離ユニットから回復された前記溶媒は、追加的な前記溶質含有材料から追加的な溶質を抽出するために、前記抽出チャンバ内において再利用され、前記溶媒は、閉ループ回路内において使用され、前記閉ループ回路の全体にわたって主として液体状態に維持されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液体−液体分離工程は、分子重量、比重、及び粘性差による分離工程のうちのひとつであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程はバッチ工程であって、前記溶質含有固体製品を前記抽出チャンバに供給する段階は、溶質含有固体製品のバッチを前記抽出チャンバに装荷することによって達成されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記工程は連続工程であって、前記溶質含有固体製品を前記抽出チャンバに供給する段階は、溶質含有製品を前記抽出チャンバに通して連続的に循環させて、少なくとも一部分の油が抽出された固体製品を前記抽出チャンバの出口から連続的に回復することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出チャンバは、多数の抽出チャンバ部分から構成され、該チャンバ部分を通して、前記溶質含有製品が順次循環して、溶質含有固体製品から溶質を抽出し、それぞれの抽出チャンバ部分には対応する抽出チャンバパラメータが定められ、少なくともいくつかの抽出チャンバパラメータは、ひとつの抽出チャンバと他の抽出チャンバとで異なっていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒を前記抽出チャンバに注入する段階は、渦巻形の溶媒の噴霧パターンを形成可能な、前記抽出チャンバ内に延びた少なくともひとつの噴霧ノズルによって達成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記溶質含有製品を前記抽出チャンバに連続的に循環させる段階は、撹拌パドルに設けられた螺旋状部分によって達成され、前記段階はさらに、前記溶質含有製品の粒子を撹拌し、自由に浮遊する固体製品粒子の形成を促進し、その少なくとも一部分を前記渦巻状の溶媒の噴霧パターンに運び入れる段階を備えていることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抽出圧を雰囲気圧力の値よりも高く維持するように制御する段階は、前記溶媒の蒸気及び前記溶媒に反応しないガスのひとつ、油、及び固体製品のひとつを前記抽出チャンバに注入するガス注入器によって達成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
油含有固体製品から油を分離する装置であって、
− 抽出チャンバと、
− 前記抽出チャンバに溶媒を注入する溶媒注入器であって、油含有固体製品から油を浸出して、溶媒と油との混合物からなる雑物を形成するための上記溶媒注入器と、
− 雑物を収集するために前記抽出チャンバに設けた雑物出口と、
− 前記雑物出口に連結され、雑物を油と溶媒との成分に分離する、液体−液体分離ユニットと、を備え、
前記抽出チャンバに注入された溶媒は主として液体状態に維持され、油含有製品から油を浸出させて、溶媒と共に雑物を形成し、前記液体−液体分離ユニット内にて主として液体状態に維持される、
ことを特徴とする装置。
【請求項13】
装置がさらに、
− 前記抽出チャンバの上流側に配置された入口バルブであって、前記抽出チャンバと雰囲気との間に流体の通路を許容せずに、前記油含有固体製品を前記抽出チャンバに入れるような上記入口バルブと、
− 前記抽出チャンバの下流側に配置された出口バルブであって、前記抽出チャンバと雰囲気との間に流体の通路を許容せずに、油が浸出された固体製品を前記抽出チャンバから排出するような上記出口バルブと、
− 前記入口バルブから前記抽出チャンバを通して前記出口バルブへ前記固体製品を循環させるためのインペラと、を備え、
前記装置は、前記入口バルブに固体製品を連続的に供給し、固体製品から連続的に油を浸出し、固体製品を前記出口バルブから連続的に排出し、前記雑物出口から雑物を連続的に収集する、
ことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記液体−液体分離ユニットは、分子重量、比重、及び粘性差による分離工程のうちのひとつを用いる分離ユニットであることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項15】
溶媒を提供するために前記溶媒注入器に結合された主溶媒タンクをさらに備え、前記分離ユニットは前記主溶媒タンクに結合されて、前記分離ユニットにおいて油から分離された液体状態の溶媒を前記主溶媒タンクへと戻し、前記溶媒は前記装置の閉ループ回路内を循環し、前記装置の内部において主として液体状態に維持されることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記抽出チャンバは、多数の連続した隣接する抽出チャンバ部分から構成され、前記インペラは前記固体製品を前記抽出チャンバ部分に通して順次循環させ、前記溶媒注入器はそれぞれの前記抽出チャンバ部分に溶媒を注入し、前記雑物出口はそれぞれの前記抽出チャンバ部分に雑物を収集することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記溶媒注入器は、前記抽出チャンバ内に延びた、渦巻形の溶媒の噴霧パターンを形成可能な、少なくともひとつの噴霧ノズルを具備していることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項18】
前記インペラは、撹拌パドルに設けられた螺旋状部分を備え、自由に浮遊する固体製品粒子の形成を促進し、その少なくとも一部分を前記渦巻状の溶媒の噴霧パターンに運び入れることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記出口バルブの下流側に安全溶媒抽出ユニットをさらに備え、固体製品に熱を加えることで、残留溶媒蒸気を取り除くことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項20】
入口と出口とを形成するバルブであって、前記入口から前記出口への固体製品の通過を許容しつつ、前記入口と出口との間における流体の交換を防止するような上記バルブにおいて、
− 前記入口と前記出口との間に延びた内側通路と、
− 前記内側通路の前記入口と出口との中間に設けた流体排出ポートであって、前記流体排出ポートは、真空ポンプに連通し、フィルターを備え、前記流体排出ポートを通る流体の通過を許容するが、固体製品が前記流体排出ポートを通過することは阻止するような上記流体排出ポートと、
− 前記内側通路内に配置されて回転可能な回転バルブ部材であって、前記回転バルブ部材は、液密式に前記内側通路に係合して細長い横断通路を有する本体を備え、前記回転バルブ部材は、前記横断通路が前記バルブの内側通路と同一の広がりをもって連通し、前記本体が前記流体排出ポートを閉塞する第1の位置と、前記横断通路が前記流体排出ポートと見当が合わされて連通し、前記本体が前記バルブの内側通路を閉塞する第2の位置との間において回転可能であるような上記回転バルブ部材と、
− 前記細長い横断通路の内部における2つの限界位置の間において長手方向に可動なピストンと、
を備えていることを特徴とするバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−522821(P2008−522821A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546616(P2007−546616)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/041646
【国際公開番号】WO2006/065236
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507198370)アプライド アンビエント エクストラクション プロセス コンサルタンツ リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】