滅菌された親水性コーティングを照射するための緩衝された膨潤性媒体
親水性ポリマーを有する代替膨潤性媒体を確認するために、6%PEG2000および0.9%NaClを含む膨潤性媒体が、加速保存試験において大気およびもっと高い温度で電子線滅菌および続く保存時に親水性コーティングを保護できないことが観察された。5分未満の、受け入れられない短い乾燥時間が得られた。しかし、生物学的緩衝剤がPEG2000を含むPEG2000および0.9%NaClを含む膨潤性媒体に添加されると、保存カテーテルの特性は従来の膨潤性媒体とともに保存されたカテーテルの特性と同等またはもっと良好であった。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
血管、消化器官および尿管系のようなヒトの空洞に導入するための医療器具を、親水性コーティングで、器具の導入時に、粘液性の膜に導入または接触される表面部分に、通常最小限で被覆することが知られている。そのようなコーティングは、乾燥時に特に滑りやすいわけではないが、好ましくは人体に導入される前に水で膨潤されると、非常に滑りやすくなる。したがって、親水性コーティングは、組織への傷害を最小にして実質的に痛みのない導入を確実にする。
【0002】
Gordonの米国特許第3,967,728号明細書は、使用前に未被覆カテーテル上に付着させて滑らかにする無菌潤滑剤の使用を開示する。
【0003】
WO86/06284(Astra Meditech Aktiebolag)は、被覆カテーテルのための湿潤および保存器具を開示し、そこではコーティングは、水、または食塩に殺菌化合物もしくは他の添加剤を含んでいてもよい水、を用いて湿潤され得る。
【0004】
WO94/16747は、表面、特に尿カテーテルのような医療器具の表面に、改良された水保持力を有する親水性コーティングを開示し、それは結合して親水性コーティングを形成する、少なくとも1つの化合物溶液を、1つ以上のプロセスのステップで表面に付着させることによる。最終ステップで、表面は、浸透圧促進剤を被覆され、その促進剤は親水性コーティングを形成するときに溶液中で、または付着される最後の溶液中で、溶解または得マルション化される。
【0005】
従来技術の大部分のコーティングは、コーティングが付着される医療器具の使用前にの即時の膨潤のために開発されている。しかしながら、多くの親水性コーティングは、その水保持力を失い、しかも特に照射またはオートクレーブを用いる滅菌後に、コーティングは長い時間、水中で保存されると、摩擦係数が増加することが見出された。
【0006】
EP1 131 112には、水保持力が劇的に増加され得、最初の摩擦係数は、親水性ポリマーを含む水性溶液と接触する間、親水性コーティングを有する医療器具の滅菌を実行することにより低く保持され得ることが記載されている。その親水性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドンもしくはN-ビニルピロリドンを含むコポリマー;ポリ[(メタ)アクリル酸]、または(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸エステルを含むコポリマー;ポリアクリルアミド;ポリ(ビニルアルコール)、および部分ケン化酢酸ビニルのコポリマー;ポリ(エチレングリコール);ポリ(ビニルメチルエーテル)、またはビニルメチルエーテルを含むコポリマー、たとえばポリ(ビニルメチルエーテル−コ−無水マレイン酸);無水マレイン酸もしくは無水マレイン酸エステルを含むコポリマー;または水溶性多糖類もしくはその誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンもしくはその誘導体が挙げられる。このように、親水性ポリマーは、このようなポリマー溶液で湿潤されるとき、照射を用いる滅菌に晒される間、上記の特性を保護するようにみえる。
【0007】
しかし、親水性コーティングを有する滅菌された医療器具を提供する方法に対する要求はまだある。さらに、水保持力、すなわちコーティングの最初の摩擦に悪影響を与えないで滅菌が実行されるように水性湿潤液体中で十分な量で親水性ポリマーを提供する新たな方法に対する要求もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,967,728号明細書
【特許文献2】WO86/06284
【特許文献3】EP1 131 112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、緩衝剤が自然の緩衝能なしに親水性ポリマーを含む膨潤性媒体に添加されるとき、電子線滅菌された、膨潤性媒体と接触親水性コーティングの貯蔵寿命が増加することを開示する。さらに、新たに提案される膨潤性媒体は、細胞毒性でなく、現在の安全基準に適合する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来、PVPのpH4付近の自然緩衝能は認識されていなかったが、pH4付近の、膨潤媒体中における、ある小さな緩衝能の存在が、たとえば親水性コーティングを有する尿カテーテルが滅菌され湿潤して保存されるとき、尿カテーテルの安定性および汚染微生物数の調節に重要であるようにみえる。
【0011】
その開示された発見は、驚くべきことにその電子線滅菌のために、SpeediCath(登録商標)のような、すぐ使用し得る尿カテーテル(すなわち、カテーテルは湿潤して保存される)のために膨潤性媒体中に、ある量の緩衝剤が存在しなければならないことを示す。特に、もしpH が3.7未満に低下すると、カテーテル上の親水性コーティングは破壊され得ることを示す。これは、多分、緩衝剤なしに、湿潤滅菌および続く保存中の酸生成の結果としてpHは3.7未満に低下するからである。この低いpHで、酸に影響を受けやすいポリマー、たとえばポリエステル、ポリウレタンおよびポリエーテル、の加水分解が受け入れられないほど高くなり得る。
【0012】
本発明の1つの態様は、親水性コーティングを含む医療器具に関し、その医療器具は、a)親水性ポリマー;およびb)分離した緩衝剤;を含む液体と接触している間に滅菌されている。
【0013】
関連した態様は、a)親水性ポリマー;b)分離した緩衝剤;を含む水性液体と接触している親水性コーティングを含む医療器具からなる、滅菌されたセットに関し、そのセットはその液体と接触している間に照射を用いて滅菌されている。
【0014】
この構成における器具は、医療器具に重要な要因である、乾燥時間(乾ききり時間:dry-out time)および摩擦の保持力を有して、少なくとも2年間保存され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】23℃で膨潤性媒体を保存した後のpH。pHは、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月;F:9ヶ月;G:12ヶ月;で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図2】40℃で膨潤性媒体を保存した後のpH。pHは、A:滅菌前;B:滅菌後;C:6ヶ月;D:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図3】50℃で膨潤性媒体を保存した後のpH。pHは、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ケ月;D:6ヶ月;E:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図4】60℃で膨潤性媒体を保存した後のpH。pHは、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図5】23℃で膨潤性媒体を保存した後の浸透圧。浸透圧(Osmol/kg)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月;F:9ヶ月;G:12ヶ月;で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図6】40℃で膨潤性媒体を保存した後の浸透圧。浸透圧(Osmol/kg)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:6ヶ月;D:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図7】50℃で膨潤性媒体を保存した後の浸透圧。浸透圧(Osmol/kg)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ヶ月;D:6ヶ月;E:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図8】60℃で膨潤性媒体を保存した後の浸透圧。浸透圧(Osmol/kg)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ヶ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図9】23℃で保存した後のカテーテルの乾燥時間。乾燥時間(分)は媒体中で保存後の時点で測定された。
【図10】40℃で保存した後のカテーテルの乾燥時間。乾燥時間(分)は媒体中で保存後の時点で測定された。
【図11】50℃で保存した後のカテーテルの乾燥時間。乾燥時間(分)は媒体中で保存後の時点で測定された。
【図12】60℃で保存した後のカテーテルの乾燥時間。乾燥時間(分)は媒体中で保存後の時点で測定された。
【図13】23℃で保存後、乾燥時間0分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月;F:9ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図14】40℃で保存後、乾燥時間0分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図15】50℃で保存後、乾燥時間0分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図16】60℃で保存後、乾燥時間0分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図17】23℃で保存後、乾燥時間5分後のいくつかのカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月;F:9ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図18】40℃で保存後、乾燥時間5分後のいくつかのカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図19】50℃で保存後、乾燥時間5分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ケ月;D:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図20】60℃で保存後、乾燥時間5分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図21】23℃で保存後の主観的滑りやすさ。主観的滑りやすさ(0〜5)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ケ月;D:6ヶ月;E:9ヶ月;F:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図22】40℃で保存後の主観的滑りやすさ。主観的滑りやすさ(0〜5)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:6ケ月;D:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図23】50℃で保存後の主観的滑りやすさ。主観的滑りやすさ(0〜5)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ケ月;D:6ヶ月;E:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図24】60℃で保存後の主観的滑りやすさ。主観的滑りやすさ(0〜5)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ケ月;D:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図25】23℃で保存後の主観的コーティング安定性。コーティング安定性(0〜5の尺度)は、媒体中で保存後の時点で測定された。
【図26】40℃で保存後の主観的コーティング安定性。コーティング安定性(0〜5の尺度)は、媒体中で保存後の時点で測定された。
【図27】50℃で保存後の主観的コーティング安定性。コーティング安定性(0〜5の尺度)は、媒体中で保存後の時点で測定された。
【図28】60℃で保存後の主観的コーティング安定性。コーティング安定性(0〜5の尺度)は、媒体中で保存後の時点で測定された。
【図29】コーティング乾燥時間vs.保存温度および時間にわたるpHの散布図。乾燥時間(分)が、変動するpHに対してプロットされた。R2=0.1451
【図30】乾燥時間0分後のコーティングの摩擦力vs.保存温度および時間と交差するpHの散布図。乾燥時間0分後のコーティングの摩擦力(mN)が、変動するpHに対してプロットされた。
【図31】乾燥時間5分後のコーティング摩擦力vs.保存温度および時間と交差するpHの散布図。乾燥時間5分後の摩擦力(mN)が、変動するpHに対してプロットされた。R2=0.1389
【図32】主観的コーティング滑りやすさvs.保存温度および時間と交差するpHの散布図。主観的滑りやすさ(0〜5)が、変動するpHに対してプロットされた。
【図33】主観的コーティング安定性vs.保存温度および時間と交差するpHの散布図。主観的安定性(0〜5)が、変動するpHに対してプロットされた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
医療器具は、カテーテル、内視鏡、喉頭鏡、供給用チューブ、排液用チューブ、ガイドワイヤー、コンドーム、ユリシ−ツ(urisheaths)、バリアコーティング、ステントおよび他のインプラント、体外血液路、膜、血液フィルター、循環補助器具、創傷ケア用包帯、および人工肛門バッグからなる群より選ばれ得る。最も関連する医療器具または医療器具部品は、カテーテルおよびカテーテル部品である。
【0017】
本発明の1つの態様において、照射による滅菌はβ−またはγ−照射により実施される。
【0018】
SpeediCath(登録商標)のための膨潤性媒体は、親水性ポリマーとしてPVP C−15を含む(WO0030696に記載されるように)。その重合化学のために、PVPはポリマー鎖あたり1つのカルボン酸基を自然に含み、1)滅菌後の出発pHが約4であり、および2)小さな緩衝能であるが、β−滅菌(電子線滅菌)および保存中に、さらなるpH増加を防止するのに十分に大きい。PVP C−15の緩衝能はpH4〜6で最も大きい。
【0019】
SpeediCath(登録商標)膨潤性媒体におけるPVP C−15が、緩衝剤を同時に添加しないでPEG2000(カルボン酸基を自然には含まない)で置換されると、カテーテルは滅菌および続く保存に耐えられなかった。親水性コーティング上で低pHで引き起こされる損傷のメカニズムは現在はわからないが、系における緩衝剤の存在が強制させるようにみえる。
【0020】
SpeediCath(登録商標)のために現在使用されている膨潤性媒体は、6%のPVP C−15および0.9%のNaCl(浸透圧の調節のため)を含む。PVP C−15以外の他の特性を持つ親水性ポリマーを有する膨潤性媒体の検討において、わずか6%のPEG2000および0.9%のNaClを含む膨潤性媒体は、加速保存安定性試験において、大気および比較的高い温度での電子線滅菌および続く保存中に、カテーテルを保護しないことが観察された。PEG2000を含む膨潤性媒体の使用は、滅菌および加速保存後に、5分間未満の、受け入れられない短い乾燥時間を持つカテーテルをもたらした。しかし、生物学的緩衝剤クエン酸ナトリウム(またはクエン酸ナトリウムとクエン酸の混合物)がPEG2000を含む膨潤性媒体に添加されると、保存されたカテーテルの性能は、従来のPVP C−15を含む膨潤性媒体で保存されたカテーテルの性能と同等以上であった。その膨潤性媒体は緩衝剤なしに、しかし代わって十分に高い出発pHで調製され得、したがって滅菌および延長された保存後でさえも、pH は3.7未満にならない主張され得るであろう。それが当を得てるとしても、高い出発pHを持つ膨潤性媒体は、1)空気から手当たり次第の量のCO2を吸収し、H2CO3/HCO3−/CO32−系から変動し得る緩衝能を獲得するであろうが、これは望ましくない;および2)膨潤性媒体の混合時間と滅菌時間の間に急速に成長するであろう。したがって、緩衝剤なしに(高い出発pHを有する)、膨潤性媒体の汚染微生物数は、現在の系よりももっと大きいであろうし、その結果、膨潤性媒体の製造と滅菌の間の保持時間は受け入れられないほど短いであろう。
【0021】
汚染微生物数に関して、膨潤性媒体のpHはできる限り低いのが理想的であるが、pH値約4が、製造時から滅菌時まで、良好に作用する。PVP C−15もしくはPEG2000のいずれか+クエン酸塩/クエン酸を含む膨潤性媒体は、この要件を充たす。SpeediCath(登録商標)膨潤性媒体における緩衝剤の存在は、上記の理由から良い考えであるが、緩衝能(したがって緩衝剤濃度も)はできる限り低く保持されるべきである。なぜなら高緩衝能は小さな創傷における痛みのレベルと互いに関係があり、同じ状況が尿道における小さな引っかき傷があるカテーテル使用者に当てはまるであろうからである。したがって、適切な妥協が、膨潤性媒体のための現在使用されている処方において、高コーティング安定性(pH3.7)、低汚染微生物数(できる限り低いpH,しかしpH値4が良好)、および低緩衝能(4mM未満、pH 4〜pH7.4)についての矛盾する要請の間に見出された:HClまたはNaOHでpH3.95に調節された、6%のPEG2000、0.88%のNaCl、および0.038%のクエン酸。
【0022】
自然な緩衝能なしに親水性ポリマーに添加するための、適切な分離した緩衝剤は、pKa値2〜6、たとえば2.5〜5.5、もっと好ましくは2.7〜5、を有する少なくとも1つの適切な酸強度定数Kaを有するべきである。KaおよびpKaは、次のように水中での酸−塩基平衡HA ⇔H++A-で定義される。
【0023】
Ka=[H+]×[A-]/[HA]; pKa=-log10(Ka)
最小pKa値2.7は、pH3.7で、適度な緩衝能を確実にし、それは滅菌および続く保存時に最小の許容pHである。逆に、最大pKa値5.0は、好適な出発pH4.0で、適度な緩衝能を確実にする。これらの要件を充たす緩衝剤は、モノカルボン酸、たとえばギ酸(pKa=3.75)、酢酸(4.75)、プロピオン酸(4.87)、3−ヒドロキシプロピオン酸(3.73)、2,3−ジヒドロキシプロピオン酸(3.64)、グルコン酸(3.56)、安息香酸(4.19)、シス−ケイ皮酸(3.89)、トランス−ケイ皮酸(4.44)、乳酸(3.85)、マンデル酸(3.85)、グリコール酸(3.83)、フェニル酢酸(4.28)、o-クロロ安息香酸(2.92)、m-クロロ安息香酸(3.82)、p-クロロ安息香酸(3.98)、1−ナフトエ酸(3.70)、2−ナフトエ酸(4.17)、o-トルイル酸(3.91)、m-トルイル酸(4.27)、p-トルイル酸(4.36)、N-アセチルグリシン(3.67)、および馬尿酸(3.80);ジカルボン酸、たとえばシュウ酸(pKa1=1.23、pKa2=4.19)、マロン酸(pKa1=2.83、pKa2=5.69)、コハク酸(pKa1=4.16、pKa2=5.61)、グルタル酸(pKa1=4.31、pKa2=5.41)、アジピン酸(pKa1=4.43、pKa2=5.41)、ピメリン酸(pKa1=pKa2=4.71)、フタル酸(pKa1=2.89、pKa2=5.51)、イソフタル酸(pKa1=3.54、pKa2=4.60)、テレフタル酸(pKa1=3.51、pKa2=4.82)、1,1−シクロへキサンジカルボン酸(pKa1=3.45、pKa2=6.11)、リンゴ酸(pKa1=3.40、pKa2=5.11)、α−酒石酸(pKa1=2.98、pKa2=4.34)、メソ−酒石酸(pKa1=3.22、pKa2=4.82)、イタコン酸(pKa1=3.85、pKa2=5.45)、およびフマル酸(pKa1=3.03、pKa2=4.44);トリおよびテトラカルボン酸、たとえばクエン酸(pKa1=3.14、pKa2=4.77、pKa3=6.39)、および1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸酸(pKa1=3.36、pKa2=4.38、pKa3=5.45、pKa3=6.63);アミノ酸、たとえばトリプトファン(pKa1=2.83、pKa2=9.39)、アスパラギン酸(pKa1=1.88、pKa2=3.65、pKa3=9.60)、グルタミン酸(pKa1=2.19、pKa2=4.25、pKa3=9.67)、アントラニル酸(o−アミノ安息香酸;pKa1=2.11、pKa2=4.95)、m−アミノ安息香酸(4.78)、p−アミノ安息香酸(pKa1=2.50、pKa2=4.87)、グルタチオン(3.59)、グリシルグリシン(3.14)、グリシルグリシルグリシン(pKa1=3.23、pKa2=8.09)、N−フェニルグリシン(pKa1=1.83、pKa2=4.39、pKa3=6.39)、カルノシン(β−アラニルヒスチジン;pKa1=2.73、pKa2=6.87、pKa3=9.73)、ナイアシン(3−ピリジンカルボン酸;4.85)、4−ピリジンカルボン酸(4.96);アミノスルホン酸、たとえばm−アミノベンゼンスルホン酸(3.73)、およびスルファニル酸(p−アミノベンゼンスルホン酸;3.23);ならびに無機酸、たとえばフッ化水素酸(3.45)、シアン酸(3.92)および亜硝酸(3.37)。大部分のpKa値は、The Chemical Rubber Company により発行された、The CRC Handbook of Chemistry and Physics の種々の版による。
【0024】
好適な緩衝剤は:
1.出発pH4.0および最小の許容し得るpH3.7の間でできる限り高い緩衝能を有し、β−滅菌および続く保存中に、pHがこの範囲に入るのを防止する。
2.pH4.0とpH7.4の間でできる限り低い緩衝能を有し、損傷された尿道を有する使用者により感じられる痛みを最小にする。
【0025】
したがって、特に好適な緩衝剤は、3.7〜4.0の間のpKa値を有する、ただ1つの緩衝活性基を持つ化合物を含み、たとえばモノカルボン酸、ギ酸、シス−ケイ皮酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、マンデル酸、グリコール酸、1−ナフトエ酸、o-トルイル酸、m-クロロ安息香酸、p-クロロ安息香酸、N-アセチルグリシン、馬尿酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、および無機シアン酸である。いくつかのの緩衝活性基(たとえば、ジ−、トリ−もしくはポリ酸、またはアミノ酸)を持つ、特に好適な緩衝剤は、1つまたはいくつかの、3.7〜4.0の間のpKa値を有し、そして他は3.7より小さいか、または8.9より大きい(4.0〜7.4の間の緩衝能は無視し得る)、化合物を含み、たとえばアスパラギン酸およびグルタチオンである。
【0026】
3.7未満の最大pKa値を有する緩衝剤は、pH4.0で比較的低緩衝能なので、好適とは少しいえない。しかし、pH4.0〜7.4の間の非常に低い緩衝能が最も重要であれば、3.7未満の最大pKa値を有する緩衝剤は、理想的である;これらは2,3−ジヒドロキシプロピオン酸、グルコン酸、o-クロロ安息香酸、グリシルグリシン、スルファニル酸、フッ化水素酸および亜硝酸を含む。いくつかの緩衝活性基を持つ、好適なとは少しいえない緩衝剤は、1つまたはいくつかの、3.7未満のpKa値を有し、そして他は8.9より大きいpKa値を有する化合物を含み、たとえばトリプトファンである。
【0027】
4.0〜8.9の間の、1つまたはいくつかのpKa値を有する緩衝剤は好適とは少しいえない。なぜなら4.0〜8.9の間の緩衝能は3.7〜4.0の間のpHの安定化に余り多くは寄与せず、そして同時に使用者により感じられる痛みに有意に寄与し得るからである。しかし、これらの緩衝剤の1つを使用することは、全く使用しないよりもなお良好である。それらは、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、トランス−ケイ皮酸、フェニル酢酸、2−ナフトエ酸、m-トルイル酸、p-トルイル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,1−シクロへキサンジカルボン酸、リンゴ酸、α−酒石酸、メソ−酒石酸、イタコン酸、フマル酸、クエン酸、および1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸酸、グルタミン酸、グリシルグリシルグリシン、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、N−フェニルグリシン、カルノシン、ナイアシン、および4−ピリジンカルボン酸を含む。
【0028】
膨潤性媒体の緩衝能βは、この分野での標準により測定された(たとえば、Niels Linnet:“pH measurements in theory and practice”1.ed., Radiometer A/S, Copenhagen, 1970参照)。
【0029】
β=db/dpH
ここで、dbは溶液中のpH変化dpHをもたらすのに要求される膨潤性媒体のLあたりの強塩基の量(モルで測定される)である。たとえば、もし13mL0.1M NaOH(=0.013mmol=13μmol)がある膨潤性媒体20mL中でpHを7.40から7.94に上昇させる必要があれば、pH7.67(7.40および7.94の平均値)での緩衝能βは:
β(7.67)=db/dpH=(0.65μmol/mL NaOH)/(7.94-7.40)=1.2μmol/(pH×mL)=1.2mM/pH
したがって、ある量によってpHを上昇させるのに必要なNaOHが多ければ多いほど、緩衝能は高くなる。理論によれば、緩衝活性物質の最大緩衝能は、基のpH=pKaでみられ、緩衝活性基の濃度の0.576倍に等しい。
【0030】
緩衝能データは、1mL膨潤性媒体をpH4.0から7.4ににするのに要求されるNaOHのμmol数として以下に示される。この緩衝能の単位は、μmol/mL=mmol/L=mMである。いくつかの場合には、緩衝能は、1mL膨潤性媒体をpH7.4から4.0ににするのに要求されるHClのμmol数として以下に示される。NaOHおよびHClでの滴定は原則として同一の緩衝能を正確に与えるべきであるが、実際にはHCl滴定から測定された緩衝能はNaOH滴定からの緩衝能よりもわずかに高い。これは、HCl滴定は高から低pH、すなわちアルカリ性から酸性溶液に移動し、アルカリ性試料が空気からCO2を吸収するのを防止するのが困難であるからである。上述のように、CO2はアルカリ性試料中で緩衝活性CO32−またはHCO3−に転換され、これは緩衝能の不自然に高い表示を生じる。しかし、対照測定は現在の系で問題がないことを示した。
【0031】
本発明の好適な態様において、分離した緩衝剤の緩衝能は、pH4からpH7.4の間隔で、8未満、たとえば7未満、好適には6未満、もしくは5未満、最も好適には4mM未満である。
【0032】
本発明の1つの態様において、分離した緩衝剤は親水性ポリマーと異なった化学品である。すなわち、たとえば、それは親水性ポリマーと異なったGCまたはHPLCスペクトルを有する。
【0033】
本発明の好適な態様において、湿潤性液体、すなわち親水性ポリマーと分離した緩衝剤を有する液体は、浸透圧増加剤をさらに含む。浸透圧増加剤は無機塩を含み、カチオンまたはアニオンは2.5〜8.9でpKa値を有さないので、pH4からpH7.4の間で緩衝成分の緩衝能に影響を与えない。このような無機塩は、カチオン[たとえば、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、モノアルキルアンモニウム、アンモニウム、アルカリ金属(すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、等)、アルカリ土類金属(すなわち、マグネシウム、カルシウム、等)、または3価金属(すなわち、スカンジウム、イットリウム、ランタン、等)の、アニオン[たとえば、塩化物、臭化物、ヨウ素化物、硝酸塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、亜塩素酸塩、チオシアネート、硫酸水素塩、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート、硫酸塩、チオ硫酸塩、炭酸塩、またはリン酸塩]との組み合わせを含む。他の浸透圧増加剤の例は、有機の、低分子量化合物であり、生理学的に受け入れられ、無刺激性であり、たとえば尿素またはグリセロールであるが、これらに限定されない。その液体は好ましくは使用において等浸透圧性であり、すなわち浸透圧は0.9%NaClの浸透圧に相当する。原則として、望ましい浸透圧は、クエン酸塩/クエン酸水素塩/クエン酸二水素塩/クエン酸または安息香酸塩/安息香酸のような溶液に緩衝剤を添加することにより達成され得る。2つの緩衝剤系の各成分の濃度は、緩衝剤の選ばれた出発pHおよびpKa値の間の差異により支配される。しかし、大部分の緩衝剤はNaClよりも高い分子量を有し、溶解された浸透圧増加剤の浸透圧は中性の分子およびイオンの合計モル濃度とともに直線的に増加する(たとえば、P.W.Atkins:”Physical Chemistry”, 2.ed., Oxford University Press, London, 1984, pp.228-33)ので、多くの場合、0.9%より多い緩衝剤は0.9%NaClと同一の浸透圧を得ることが要求されることになる。2.5〜8.9の、1つ以上のpKa値を有する緩衝剤は損傷した尿管を有する使用者に受け入れられない痛みを招くので、そのような量の緩衝剤は浸透圧増加剤として使用されるべきではない。
【0034】
膨潤性媒体:6%PEG2000、0.88%NaCl、0.038%クエン酸のための上記処方を用いる;HClまたはNaOHでpHを3.95に調節する。上記から明かなように、クエン酸は好適とはいえないクラスに属する。しかし、生物学的系で広い発生およびクエン酸の非毒性は、クエン酸を、ともかく緩衝剤のための良い選択とする。
【0035】
本発明の1つの態様は、pH4近く、たとえばpH3.7近くの自然な緩衝能なしに親水性ポリマーを利用する。このように、その使用は余分の緩衝剤の添加を要求する。
【0036】
種々の好適な態様において、pH近くで自然な緩衝能なしで親水性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル;N-アルキル置換のある、もしくはない、ポリ(メタ)アクリルアミド;ポリ(ビニルアルコール);部分ケン化ポリ(酢酸ビニル);ポリ(エチレングリコール);ポリ(エチレングリコール−コ−プロピレングリコール);ポリ(エチレングリコール)−ポリ(プロピレングリコール)ブロックコポリマー;エチレングリコールと他の1,2−エポキシドモノマー、たとえば1−ブテンオキシド、シス−およびトランス−2−ブテンオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、およびスチレンオキシドとのコポリマーおよびブロックコポリマー;ポリ(ビニルメチルエーテル);ポリ(2−エチル−4,5−ジヒドロオキサゾール)(たとえば、ISP CorporationからAquazolとして種々の分子量で利用し得る)および他の2−置換ポリ(4,5−ジヒドロオキサゾール);ポリ(2−ビニル−1−(3−スルフォプロピル)ピリジニウム分子内塩);ポリ(2−ビニル−1−(4−スルフォブチル)ピリジニウム分子内塩);ポリ(2−メチル−5−ビニル−1−(3−スルフォプロピル)ピリジニウム分子内塩);ポリ(4−ビニル−1−(3−スルフォプロピル)ピリジニウム分子内塩);ポリ(4−ビニル−1−(4−スルフォブチル)ピリジニウム分子内塩);ポリ(N,N−ジメチル−N−2−メタクリロイルオキシエチル−N−(3−スルフォプロピル)アンモニウム分子内塩);ポリ(N,N−ジメチル−N−3−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルフォプロピル)アンモニウム分子内塩);ポリ(N,N−ジエチル−N−2−メタクリロイルオキシエトキシエチル−N−(3−スルフォプロピル)アンモニウム分子内塩);ポリ(4−ビニル−N−メチルピリジニウム−コ−p−スチレンスルホネート);ポリ(N,N,N−トリメチル−N−メタクリルアミドプロピルアンモニウム−コ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネート);ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム−コ−2−メタクリロイルオキシエタンスルホネート);ポリ(N−オキシド)、たとえばポリ(2−ビニルピリジン−N−オキシド)およびポリ(4−ビニルピリジン−N−オキシド);ポリ(ビニルスルホン酸)および塩;ポリ(スチレンスルホン酸)および塩;ポリ(2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸)および塩;ポリ(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)および塩;ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)および塩;ポリ(3−ビニルオキシプロパンスルホン酸)および塩;ポリカルバモイルスルホネートの塩;スルフォン化エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーの塩;ポリ(4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(ジアリルジエチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(メタクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(N-アルキル−2−ビニルピリジニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(N-アルキル−4−ビニルピリジニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ならびにEncyclopedia of Polymer Science and Engineering, eds. H.F. Mark, N.M. Bikales, C.G. Overberger, and G. Menges, 2. ed., vol. 13, pp.292-4, wiley-interscience, New York,1988に記載されるような、1または2価のアニオン対イオンを有する、テトラアルキルアンモニウム塩を含むポリウレタン・アイオノマーからなる群より選ばれる。塩および1または2価のアニオンに対して用いられるカチオンは、2.5〜8.9でpKa値を有すべきでないので、pH4.0〜7.4で緩衝成分の緩衝能に影響を与えない。その塩のための適切なカチオンは、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、モノアルキルアンモニウム、アンモニウム、アルカリ金属(すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、等)、アルカリ土類金属(すなわち、マグネシウム、カルシウム、等)、および3価金属(すなわち、スカンジウム、イットリウム、ランタン、等)を含む。適切な1価アニオンは、塩化物、臭化物、ヨウ素化物、硝酸塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、亜塩素酸塩、チオシアネート、硫酸水素塩、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、およびp−トルエンスルホネートを含む。適切な2価アニオンは、硫酸塩、チオ硫酸塩、および炭酸塩を含む。他の好適な態様において、親水性ポリマーはpH4付近で自然な緩衝能のないモノマーのコポリマーである。pH4付近で自然な緩衝能のない、さらなる好適な親水性ポリマーは、カルボン酸基のない多糖類の群を含み(溶解性を改良し、β−滅菌時のゲル化を避けるために部分的に加水分解され得る)、たとえばアガロース;ι-、κ-、λ-、μ-およびν-カラギーナン、およびフルセラン;グアーガム;ローカストビーンガム;タマリンド粉;スクレログルカン;シゾフィラン;シュードニゲラン;ニゲラン;イソリケナン;アミロース;アミロペクチン;デンプンおよびアルキル化誘導体、たとえばヒドロキシエチルデンプン;グリコーゲン;プルラン;デキストラン;カロース;カードラン;パキマン;ラミナラン;リケナン;セルロースおよびアルキル化誘導体、たとえばヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;プスツラン;キチンのアルキル化誘導体、たとえばヒドロキシエチルキチン;イヌリン;レバン;α−アラビノフラナン(たとえばキシロピラノアラビノフラナン);β−D−ガラクタン(たとえば、Larix種からのアラビノガラクタン);α−D−マンナン(たとえば、キシロマンナン;アラビノキシロマンナン;ラムノマンナン;グルコマンナン;ガラクトフラノマンナン);β−D−マンナン(たとえば、ガラクトマンナン);およびβ−D−キシラン(たとえば、ローディメナンおよびアラビノキシラン)。
【0037】
多数の方法が、カテーテルまたは他の医療器具の滑りやすさを改良するための親水性表面コーティングの製造について知られている。これらの方法は、中間の乾燥とキュアリングを有する1つ以上のプロセスのステージにおいて、親水性表面を付与される基材が1つ以上(2つが最も多い)の層で被覆される事実に基づくことが多く、種々の方法、たとえば照射により開始される重合により、UV光により、グラフト重合により、ポリマー間網目構造(inter-polymeric network)の形成により、または直接的化学反応により、互いに反応に供される。公知の親水性コーティングおよびその適用方法は、たとえばデンマーク特許159,018、公開された欧州特許出願であるEP0389632、EP0379156およびEP0454293、欧州特許であるEP0093093B2、英国特許1,600,093、米国特許4,119,094、4,373,009、4,792,914、5,041,100、および5,120,816ならびにPCT公開のWO90/05162およびWO91/19756に開示されている。
【0038】
好適な態様において、親水性コーティングはPVPコーティングである。このようなコーティングは、医療器具に結合されたPVPを含む。
【実施例】
【0039】
本例は、本発明の種々の態様を示す。もし滅菌が2.7〜5のpKa値を有する緩衝剤で実施されると、コーティングは酸劣化に対抗して保護される。pH4からpH7.4の間の低緩衝能は使用者のために痛みを低減するが、親水性コーティングの種々の品質パラメータに対する影響を試験するために高緩衝剤濃度での実験を実施した。滅菌(すなわち、汚染微生物数を減少させること)の前に膨潤性媒体中の細菌の生成を最小にするためにpHは製造時に約4.0であるのが好適である。その実験の目的は、親水性コーティングのあるカテーテルのための膨潤性媒体(たとえばSpeediCath(登録商標)カテーテル)について、PVPをPEG2000で置換することが可能かどうか検討することであった。
【0040】
本例は、WO06117372で以前に公開された結果を確認するものであり、そこではPEG2000の即時の効果が例8、表3に示された。その実験において、摩擦力および水保持力はβ−滅菌後すぐに測定された。しかし、本データは、標準的保存試験条件で保存されるとき、コーティングが劣化することを示し、この劣化は緩衝剤の添加によるpHの調節により回避され得ることを示唆する。
【0041】
例1:クエン酸塩ありとなしにおけるPEG2000の試験
膨潤性媒体中で親水性ポリマーとして標準(PVP C−15)および新規(PEG2000)を用いて、異なるコーティングの保存安定性を評価した。余分の緩衝剤が膨潤性媒体のいくつかに添加され、膨潤性媒体中に親水性ポリマーのない対照も評価された。実験は、ICHガイドライン(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)にしたがって実施された。適用されたガイドラインは、”Stability Testing of New Drug Substances and Products, Q1A(R2)”および”Evaluation for Stability Data, Q1E”であった。
【0042】
膨潤性媒体
液体A:5.0kg6%PEG2000、0.9%NaCl
液体B:2kg6%PVP C−15、0.9%NaCl
液体C:2kg0.9%NaCl
液体D:2.5kg6%PEG2000、3%クエン酸三ナトリウム・2水和物
液体E:2.5kg6%PEG2000、2.0000%クエン酸三ナトリウム・2水和物、ならびに0.6532%無水クエン酸もしくは0.7145%クエン酸・1水和物
カテーテル
Cath 1:同一の製造バッチ(バッチ1)からの親水性コーティングを有する、800の男性用SpeediCath(登録商標)CH12カテーテル。これらはすべての5つの液体A〜Eに使用された。
Cath 2:もう1つの製造バッチ(バッチ2)からの親水性コーティングを有する、110の男性用SpeediCath(登録商標)CH12カテーテル。これらは専ら液体Aとともに使用された。
Cath 1:第3の製造バッチ(バッチ3)からの親水性コーティングを有する、110の男性用SpeediCath(登録商標)CH12カテーテル。これらは専ら液体Aとともに使用された。
【0043】
Cath 1、2および3に関して、次のルールが適用された:少なくとも30秒間、脱イオン水に膨潤された、3つの被覆され、未滅菌カテーテルの各摩擦が100mN未満であれば、そのバッチが含まれる。Cath 1、Cath2およびCath3からの結果は、他に記載がなければ、下の結果の部に一緒にされた。PVP K−90に基づく、親水性の架橋浸漬コーティングが、SpeediCath(登録商標)カテーテルのために使用された。PEG2000は、Clariantから入手された。PVP C−15およびPVP K−90は、ISPから入手された。ポリウレタンカテーテルは、Unomedical A/Sから入手された。親水性ポリウレタンは、いくつかのソース、たとえばCardio TechおよびThermedics (Lubrizol)から入手可能であった。
【0044】
カテーテルの一括(packaging)
異なるバッチからの次の数のカテーテル(Cath 1、Cath2およびCath3)が、膨潤性媒体(A,B,C,D,E)の1つの12mLと一括された。
【0045】
【表1】
【0046】
カテーテルの保存
A1と名づけられた160の試料が、下記の16の異なる保存条件に、各保存条件で10の同一試料に配分された。さらに、それらはスキームの記載に沿って名づけられた。大部分の測定において、0〜12ヶ月の保存からのデータが利用され得た。B1,C1,D1およびE1と名づけられた160の試料も、同様に配分され、名づけられた:
【0047】
【表2】
【0048】
A2と名づけられた110の試料およびA3と名づけられた110の試料が、下記の11の保存条件に、各保存条件で10の同一試料に配分された。さらに、それらはスキームの記載に沿って名づけられた。
【0049】
【表3】
【0050】
他のSpeediCath(登録商標)男性用CH12カテーテルが、膨潤性媒体Fとともに一括された:6%PEG2000、0.88%NaCl、0.038%クエン酸、pHはNaOHで3.95に調整された。試料は下記のF7と名づけられた。
【0051】
滅菌
A1〜E1の試料は、膨潤性媒体中で、一括されたカテーテルをすべて含み、滅菌前に評価されたFS試料(滅菌なし)を除いて、Mφrdrup(デンマーク)のSterigenicsでの2×25kGy β−滅菌に送られた。F7試料は、2×37.5kGyで滅菌された。
【0052】
カテーテルの評価
すべての場合において、10のカテーテルは、保存期間と保存温度の各組み合わせで利用され得た。これらの10のカテーテルは、次のように配分された:
1つのカテーテルは、細胞毒性の測定に用いられた。被覆されたカテーテルの一部が切断され、分析に使用された。
【0053】
4つのカテーテルは、乾燥期間の主観的評価に使用された。カテーテルは、3、5、7および9分間(カテーテルが広くは損傷されていないとき、主に保存期間の開始時および低保存温度で)、または1、3、5、および7分間(長い保存期間または高保存温度で損傷されたカテーテルについて)、コネクターにより垂直に取り付けられた。評価の間、人差し指および親指は、まずカテーテルの上部から下方に移動され、さらに数回、上下された。オペレータは0漢のスコアを決定した。ここで0は完全な乾燥、5は十分にすべりやすいものであった。乾燥時間は、スコアが3以上であった最後のときとして定義された。例として、もしスコアが3,5,7および9分後に5,5,4,3であると、乾燥時間は9分であった。一方、もしスコアが1、3,5および7分後に5,3,2,3であると、乾燥時間は3分であった。4つのカテーテルが使用されたが、これは単一の測定であった。乾燥時間は、少なくとも5分であるべきである。
【0054】
3つのカテーテルは、流れる微温水の下で指の間にカテーテルを擦る間に、安定性と滑りやすさの主観的評価するために使用された。安定性と滑りやすさは、0〜5の尺度で評価され、ここで、0は最も不良であり、5は完全であった。同一の保存期間後に評価された、異なるカテーテルは、ランダムな順序で評価された。これは三重の評価であった。理想的には、滑りやすさは、少なくとも4(「ほとんど完全に滑りやすい」)であるべきであり、安定性は5(「完全に安定」)であるべきである。
【0055】
2つのカテーテルは、摩擦測定のために使用された。Texture Analyzerが試料A1〜E1の測定に用いられた。Texture Analyzerの測定は、すべて荷重266gで、10mm/sの速度で行われた。摩擦ブロックの長さは35mmであり、摩擦はカテーテルの15cmにわたって測定された。すべての試験は、試料を分析機に置き、荷重をかけたすぐ後に開始された。摩擦試験機は、F7試料のために用いられた。摩擦試験機での測定は、荷重164gで、4mm/sの速度で行われた。摩擦ブロックの長さは21mmであり、摩擦はカテーテルの18.5cmにわたって測定された。すべての試験は、試料を摩擦試験機に置き、荷重をかけたすぐ後に開始された。
【0056】
これらの2つの異なる測定からの結果は比較し得ないが、異なる保存期間での摩擦力の進展を説明するために示される。両方の場合において、次の手順が採られた:
−1つのカテーテルは、膨潤性媒体からの引き揚げのすぐ後に(すなわち、乾燥期間0)測定された;
−他のカテーテルは、測定前に乾燥するために、コネクターに5分間、垂直に取り付けられた。これは、これは環境雰囲気(すなわち、23℃、湿度60〜70%)の室内で行われた。
【0057】
その結果は、カテーテルの上方で往復する摩擦ブロックの通路の平均摩擦力として評価された。摩擦ブロックの質量および実験室の相対湿度が記録された。これらは単一の測定であった。摩擦力は150mN,理想的には100mNであるべきである。
【0058】
膨潤性媒体
細胞毒性測定からの膨潤性媒体は、凝固点降下法の浸透圧計(GonotecからのOsmomat 030-D)を用いて浸透圧の測定に使用された。2〜3の測定が単一試料についてなされた。主観的評価および摩擦からの5つの、共同利用された膨潤性媒体が、緩衝能およびpH測定に用いられた。
【0059】
結果−膨潤性媒体のpH,緩衝能および浸透圧
pH測定は、23、40、50および60℃での保存について、図1〜図4に示される。試料{NaCl}(親水性ポリマー、緩衝剤なし)および{PEG+NaCl}(緩衝剤なし)のpHは、おそらくはカルボン酸の生成のために、保存中に急速に、着実に減少した。試料{NaCl}におけるカルボン酸の生成は、包装材料のポリエチレン内張りの酸化によるのであろう。明かに、{NaCl}と{PEG+NaCl}における緩衝剤の欠如は、これらの試料を、カルボン酸生成を伴うpH低下に影響を受けやすいものにした。逆に、すべての温度および時間で、試料{PEG+クエン酸}および{PVP+NaCl}のpHは、おおよそ一定のままであり、一方{PEG+クエン酸塩}のpHは滅菌後に多少減少し、ついで一定のままであった。試料{ PEG+0.04%クエン酸}のpHは滅菌の際に増加したが、ついで60℃で2週間後に少し低下した。したがって、試料{ PEG+0.04%クエン酸}のpHはさらなる保存の際に3.7未満に低下した:もしこれが生じるべきであれば、3.95より少し高い出発pHで膨潤性媒体を製造するか、またはクエン酸の濃度を増加させることが必要であろう。緩衝能測定は、表1に示される。
【0060】
【表4】
【0061】
PEG2000の大規模の酸化および劣化が生じて、大量の緩衝活性カルボン酸を生成した兆候として、緩衝されていないPEG2000を有するA1試料の緩衝能は、12ヵ月の保存後に劇的な温度増加とともに、増加した。一方、B1,D1,E1およびF7試料は、すべて緩衝剤を含むが、緩衝能の小さな増加または減少さえも示した。したがって、カルボン酸の生成は、緩衝剤の存在により、F7試料中の低濃度の緩衝剤でさえ、有効に停止された。これは、カルボン酸の生成は低pHで、一種の自動触媒プロセスにおいて進行することを示した。
【0062】
浸透圧データは図5〜図8に示される。浸透圧は、膨潤性媒体に溶解されるイオンおよび中性種の数の尺度である。この測定から得られる情報はpHおよび緩衝能の測定に関連する。しかし、少数の新カルボン酸基の生成はpHを低下させ、緩衝能を大いに増加し得るが、浸透圧はバルクの特性であり、溶解された種の数の大部分の変化が記録される。
【0063】
23および40℃で、大部分の浸透圧は、40℃で6〜12ヶ月の保存で強く増加させた、{PEG+NaCl}を除いて、少し低下した。これは、比較的小さな断片へのPEG2000の劣化を示した。緩衝されたPEG試料またはPVP試料には、このような劣化はみられなかった。50℃で、{PEG+NaCl}試料は同一の挙動を示した。すなわち、6〜12ヶ月での浸透圧の強い上昇である。逆に、{PEG+クエン酸塩}および{PEG+クエン酸}試料の浸透圧は6ヶ月後に最大値を通過し、ついで50℃で12ヵ月後に低下した。この点を良好に説明できないが、この試料におけるPEG劣化の最初の部分の間、多数の小さな、重合性物質が製造され(たとえば、ヒドロキシ酸またはジオール+ジ酸)、ついで比較的長い保存期間で結果として浸透圧の同時低下とともにポリエステルに重合されたことが可能である。いかなる場合でも、50℃で3〜6ヶ月で、{PEG+クエン酸塩}および{PEG+クエン酸}試料の浸透圧の幾分大きな増加は悩ました。60℃での保存後に、もっと正常なパターンが観察された:すべての試験された試料の浸透圧は3〜6ヶ月の保存期間で、次の順に増加した:{PEG+クエン酸}<{NaCl}≒{PVP+NaCl}<{PEG+クエン酸塩}<{PEG+NaCl}
したがって、緩衝されていないPEG試料に溶解された種の数は他の試料のそれよりもはるかに多く増加し、緩衝剤ありよりも緩衝剤なしのPEG2000のもっと大きな劣化速度を示した。さらに、60℃で2週間後に、{PEG+0.04%クエン酸}試料の浸透圧は一定のままであり、PEG2000の広い劣化は生じなかったことを示した。
【0064】
結果−親水性コーティングの乾燥時間、摩擦、主観的滑りやすさ、および主観的安定性試料の乾燥時間は図9〜図12に示される。膨潤性媒体中に親水性ポリマーなしの試料{NaCl}は、いかなる保存温度でも6ヶ月後に、大抵の場合、3ヶ月後も、他の試料よりも短い乾燥時間を有していた。これは、膨潤性媒体中の親水性ポリマーの存在が、長い保存の間、カテーテルの高い乾燥時間を維持するのに重要であることを暗示した。50および60℃で、緩衝されていない{PEG+NaCl}試料の乾燥時間は、{NaCl}試料のそれよりも長いが、{PEG+クエン酸}、{PEG+クエン酸塩}および{PVP+NaCl}のそれよりも短く、そのすべてはpH4付近でいくつかの緩衝能を有していた。したがって、これらの溶液のpH4付近での緩衝能は、高温での保存中に親水性コーティングの水結合能力を保護するようにみえた。しかし、40℃で、{PEG+NaCl}試料は、実際にすべての保存期間で試料の最高乾燥時間を有しており、23℃で{PEG+NaCl}試料は、その分野の中央にあった。現在、本発明者はこれらの観察を十分には説明できない。最も骨の折れる保存条件で、すなわち最高温度で、親水性ポリマーおよび緩衝剤は、保存時に、最初の長い乾燥時間を保持するために存在しなければならないといえば十分である。残念なことに、データは試料{PEG+0.04%クエン酸}に利用できなかった。
【0065】
動的摩擦力が環境雰囲気に調節された部屋で0〜5分の乾燥時間後に、2つの分離したカテーテルについて評価された。5分の乾燥時間後の摩擦は、それが、カテーテル使用者の状況に関連して最悪のシナリオを表したので、特に重要であった。9ヶ月保存までのデータのみがこの記載時に利用可能であった。上記のように、{PEG+0.04%クエン酸}試料および他の試料の摩擦は、2つの異なる設備を用いて測定された。しかし、その結果は、保存期間の増加とともに摩擦における傾向を説明するために同一の図に示された。乾燥時間0分でのすべての摩擦は、図13〜図16に示される。乾燥時間5分でのすべての摩擦は、{NaCl}試料(C1)からのすべてのデータ(表2に示される)および60℃での{PEG+NaCl}試料(A1)からのデータ(表3に示される)を除いて、図17〜図20に示される。したがって、表2は図17〜図20を補足し、表3は図20のみをさらに補足する。
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
膨潤性媒体中に親水性ポリマーを有さない{NaCl}試料にまず焦点をあてると、親水性コーティングの乾燥時間0分の摩擦は、滅菌されたときに増加した。これは、摩擦が滅菌の際に低下した、他のすべての試料と対照的であった。さらに、{NaCl}試料の摩擦は、いかなる温度で保存しても、他の試料のそれよりも高いレベルに増加した。これは、親水性ポリマーが膨潤性媒体中に存在しないとき、カテーテルの親水性コーティングが滅菌および続く保存時に劣化したことを暗示した。もっと劇的に、乾燥時間5分の{NaCl}試料のデータは、親水性コーティングがほとんど測定できない摩擦力818mN(表2参照)に達し、滅菌によりすっかり破壊されたことを示した。この破壊のメカニズムは知られていなかったが、親水性ポリマーがないことに関係することは明白であった。他のすべての試料(それらのすべては親水性ポリマーが膨潤性媒体中に存在する)の摩擦は、滅菌時に低下した。これは、膨潤性媒体中の親水性ポリマーの存在において、水和された、親水性コーティングはさらに架橋され、滅菌時にもっと滑りやすくなることを示した。
【0069】
しかし、親水性ポリマーを含む膨潤性媒体の間の個別の差異もあった。最長の保存期間で、乾燥時間0分後に、特に、{PEG+NaCl}試料の摩擦、さらには{PVP+NaCl}試料の摩擦は、他の試料の摩擦より少し高いという傾向があった。{PEG+0.04%クエン酸}試料カの摩擦は、滅菌の前後および23または60℃で2週間の保存後に、非常に低かった。しかし、上記のように、測定のその傾向は最も興味深い観察であり、これらの結果および他の結果は厳密には比較できない。乾燥時間5分後に、緩衝されていない{PEG+NaCl}試料は、40℃(図18)、50℃(図19)および特に60℃(表3)での最長の保存で他の試料の摩擦より高かった。{PEG+クエン酸塩}試料は、23および50℃で、比較的高い摩擦を有し、そして{PVP+NaCl}試料は、50℃での6ヶ月の保存後に上昇された摩擦力に達した(図19)。{PEG+0.04%クエン酸}試料の摩擦は、23℃で2週間後にわずかに増加し、60℃で2週間後に少しもっと増加したが、その結果はなお非常に満足すべきものである。これらの測定値は2つの総括的な結論に導いた:(1)膨潤性媒体はβ−滅菌および続く保存時に親水性コーティングを保護するために親水性ポリマーを含まなければならない、そして(2)親水性ポリマーの保護作用は、系内で緩衝能の存在(PVPにおけるように自然に、または添加された緩衝剤から「不自然に」)により大いに高められる。
【0070】
親水性コーティングの滑りやすさの主観的測定は、上記のように示される摩擦の客観的測定と比較して不必要にもみえる。しかし、実際には、ヒトの指先は非常に敏感な測定器具であり、試料にあり得る不均質性(たとえばドライスポットから)、および滑らかさの欠如(たとえば粒子の粗いコーティングから)のような、摩擦測定によっては明かにされない、コーティングについての特徴を感じ得る。したがって、主観的滑りやすさは、客観的摩擦測定への重要な補足であった。その結果は、図21〜図24に示される。その結果は{PEG+0.04%クエン酸}試料については利用できない。親水性ポリマーなしの{NaCl}試料はすべての保存期間および保存温度で最も低い評価をうけた、これらの試料の親水性コーティングは、他の試料よりも接触するのに少し快適でなかったことを示した。緩衝されていない試料{PEG+NaCl}も60℃で3〜6ヶ月後に、損傷されたが、緩衝された試料はすべての保存条件で受け入れられる主観的滑りやすさを示した。これは、(1)、膨潤性媒体中に親水性ポリマーを有する重大な必要性、および(2)膨潤性媒体中に緩衝剤を有する重大ではないが、なお重要な必要性、を示した。
【0071】
親水性コーティングの主観的安定性は図25〜図28に示される。大部分のコーティングは、いかなる保存温度でも保存期間を通して完全に安定であった。しかし、40℃で12ヵ月後に、{NaCl}および{PVP+NaCl}試料は基板カテーテルから幾分ゆるくなったが、これらの試料は50および60℃では影響されなかった。逆に、50℃で12ヵ月後、および60℃で6ヵ月後、{PEG+NaCl}試料は完全に安定というわけではなかったが、その試料は40℃で12ヵ月後は安定であった。これらの結果を理論的に説明するのは困難であるが、{PEG+クエン酸}および{PEG+クエン酸塩}試料は、いずれも膨潤性媒体中に大きな緩衝剤濃度を有するが、そのコーティング安定性は保存条件に影響されなかったという事実は残された。したがって、緩衝剤添加の効果は有益であるようにみえた。
【0072】
結果−親水性コーティングの、pHと乾燥時間の関係、摩擦、主観的滑りやすさ、pHおよび主観的安定性
pHと親水性コーティング特性の関係のもっと明確な絵を得るために、散布図が保存温度および保存期間にわたるすべての利用できるデータで構成された。これらの散布プロットが図29〜図33に示される。図29は、乾燥時間はpH増加とともに増加した、すなわち最も短い乾燥時間は最も低いpHで見出された、ことを示す。特に、乾燥時間4分以下で、15の観察のうちの2つのみが3.7より大きいpHであった。したがって、低pHは乾燥時間に消極的に作用するようにみえた。図30は、乾燥時間0分の摩擦力、すなわち湿潤カテーテルの摩擦を示す。4より大きいpHで、平均摩擦力のわずかな増加がみられた。しかし、もっと劇的に、いくつかの高摩擦力(190mNを超える)が、pH3.7以下で、しかし比較的高いpHではなく、観察された。これは、pH3.7以下で保存された試料の親水性コーティングはひどく損傷されたことを明確に示したので、pHは3.7未満に低下されるべきではない。同一の、しかしもっと明白な、パターンが、他のカテーテルで測定された摩擦力について図31で見られ、そこでは測定前に5分間、空気中で乾燥された:190mNを超えるすべての摩擦は、3.77未満のpHで見られ、220mNを超えるすべての摩擦は、3.7未満のpHで見られた。したがって、生成物のpHは、3.7未満に、好ましくは3.8未満に低下させるべきではない。この線に沿って、図32において、主観的コーティング安定性の、4未満の値(0〜5の尺度で)のすべては、pH3.83未満で生じたものであり、そして3.5未満のすべての値はpH3.7以下で見られた。したがって、これらの低pH値は避けられるべきである。最後に、主観的コーティング安定性の値vs.pHが図33に示される。親水性コーティングは多くの態様で損傷され得るが、カテーテル基板上で通常、安定である。したがって、図33において、0〜5の安定性尺度で5未満に評価されるのは5つの試料にすぎなかった。5つの試料の1つは、pH4.5で見られたが、他の4つの試料は3.2未満のpH値を有していた。したがって、恐らくは5未満の安定評価を持つ試料が少数であるために、この例でpH3.7未満でコーティング破壊が始まるということはあきらかではないが、データは親水性コーティングの安定性が主に低pH値で害されたことを示唆した。しかし、一緒に、図29〜図33に示されるデータは、カテーテル上の、親水性コーティングの劣化を防止するために、膨潤性媒体のpHは、約3.7、さらに約3.8、を超えて保持されるべきであるとの圧倒する証拠を示した。
【0073】
例2:他の緩衝剤を有するPEG2000の試験
次のが、膨潤性媒体が男性用SpeediCath(登録商標)カテーテルとともに保存され、2×37.5kGyの照射量で電子線滅菌された。ついで、膨潤性媒体の浸透圧、pHおよびpH7.4への緩衝能が測定された。さらに、カテーテルの摩擦が測定された。
【0074】
【表7】
【0075】
検討
−試料9の浸透圧は滅菌後に非常に低い。現時点ではこれを説明できない。
【0076】
−馬尿酸およびマンデル酸試料(2および9)は、残りの試料よりも滅菌後に高いpHを与えた。したがって、特にこれらの緩衝剤は系のpHを3.7〜3.8の重要な値のほうへ低下するのを防止した。
【0077】
−馬尿酸は、他の試料よりも滅菌後に低い緩衝能を与えた。これは、使用者の痛みを小さくさせる。ギ酸、m−クロロ安息香酸およびマンデル酸の緩衝能は、馬尿酸よりも大きかったが、乳酸およびグルコール酸よりも小さかった。しかし、PVP試料(No.8)は、滅菌後のpHは特に低くはなかったが、最も高い緩衝能を有していた。したがって、5mM 緩衝剤+155mM NaCl+6% PEG2000は、160mM NaCl+6% PVP C−15よりも低い緩衝能を有する膨潤性媒体を与えた。同時に、PEG2000試料は、いずれも滅菌後に3.7〜3.8の低いpH(親水性コーティングを攻撃する)を有しておらず、おそらく長い保存寿命を示す。一緒に、PEG2000含有膨潤性媒体のこれらの特徴は、使用者に有益であることを示すべきである。
【0078】
例3:PEG2000およびPVP C−15を含む膨潤性媒体の汚染微生物数(抗菌作用)
4つの異なる実験室培養が異なる殺菌ろ過された代替溶液(pH3.95)のアリコートに添加された。ついで、試料20mLが、0日、1日、3日、7日、および14日に、膜ろ過法で汚染微生物数について分析された。接種された試料は室温に保存された。殺菌ペプトン水をおよびPVP水を用いる比較試験も実施された。
【0079】
【表8】
検討
−B.subtilis, E.coli およびPs.aeruginosaは、どの膨潤性媒体中でも長い間は生存しなかった。しかし、B.subtilisは、ペプトン水に関して急速に姿を消した。
−どの膨潤性媒体もAsp.niger.を殺菌しなかった。
−この実験は、混合後に、しかし電子線滅菌の前に、膨潤性媒体中で生存する、微生物の能力に関係し、その後でカウントは0であったことが強調されなければならない。しかし、PEG2000を含む膨潤性媒体は、PVP C−15を含む膨潤性媒体のように、製造中の汚染後には抗菌物質として作用したことが示された。
例4:PEG2000に基づく膨潤性媒体のインビトロ細胞毒性
材料および方法
材料
SpeediCath(登録商標) lot.no.28412 KMI PVP C-15
SpeediCath(登録商標) lot.no.28412 KMI PEG 2000
試料の調製
カテーテルの抽出物は、カテーテルを管のみを含む5cmの小片に切断することにより行なわれた。3つの小片が合計容積9mLの培養媒体(10%FCSを有するDMEMおよびPen/Strep)中で培養された(抽出比3mL/cm2に相当する)。抽出は、湿った雰囲気で24時間、37℃で実施された。その手順は無菌状態で実施された。
抽出時間の終わりに、抽出媒体が集められ、そのpHは、すべての試料について8.0であることが測定された。すべての抽出媒体は汚染の兆候がなく、清浄であった。抽出物は殺菌ろ過されなかった。
インビトロ細胞毒性−溶出分析
インビトロ細胞毒性分析が、USP25/ISO 10993-5基準(溶出試験)にしたがって行なわれた。簡単には、対数成長相中のマウス(murine)繊維芽細胞が、細胞密度1.5×105細胞/ウェルで、24ウェルのクラスタートレイ中で接種された。細胞は、2mL/ウェル成長媒体を添加され、95%湿潤インキュベーター(5%CO2)中で48時間、37℃で培養された。試験抽出物の適用前に、細胞は正常な形態を有し、融合に近いことが検査された。培養媒体は除去され、未希釈試料、および培養媒体中で1+3希釈された試料と置き換えられた。培養媒体は、対照として使用された。すべての培養は、重複して行なわれた。細胞は、インキュベーター中で48時間、37℃で培養された。培養期間後に、細胞は顕微鏡評価により分析され、形態変化が各培養についての生存細胞のおおよそのパーセンテージと同様に記録された。顕微鏡分析の前に、培養は生存細胞を視覚化するために0.1%Neutral Red solution で培養された。
【0080】
【表9】
【0081】
結果および結論
どの試料についても細胞毒性はみられなかった、すなわちすべての細胞は毒性の兆候がなく健全であった。結果のスキームは表5に示される。
【0082】
【表10】
【背景技術】
【0001】
血管、消化器官および尿管系のようなヒトの空洞に導入するための医療器具を、親水性コーティングで、器具の導入時に、粘液性の膜に導入または接触される表面部分に、通常最小限で被覆することが知られている。そのようなコーティングは、乾燥時に特に滑りやすいわけではないが、好ましくは人体に導入される前に水で膨潤されると、非常に滑りやすくなる。したがって、親水性コーティングは、組織への傷害を最小にして実質的に痛みのない導入を確実にする。
【0002】
Gordonの米国特許第3,967,728号明細書は、使用前に未被覆カテーテル上に付着させて滑らかにする無菌潤滑剤の使用を開示する。
【0003】
WO86/06284(Astra Meditech Aktiebolag)は、被覆カテーテルのための湿潤および保存器具を開示し、そこではコーティングは、水、または食塩に殺菌化合物もしくは他の添加剤を含んでいてもよい水、を用いて湿潤され得る。
【0004】
WO94/16747は、表面、特に尿カテーテルのような医療器具の表面に、改良された水保持力を有する親水性コーティングを開示し、それは結合して親水性コーティングを形成する、少なくとも1つの化合物溶液を、1つ以上のプロセスのステップで表面に付着させることによる。最終ステップで、表面は、浸透圧促進剤を被覆され、その促進剤は親水性コーティングを形成するときに溶液中で、または付着される最後の溶液中で、溶解または得マルション化される。
【0005】
従来技術の大部分のコーティングは、コーティングが付着される医療器具の使用前にの即時の膨潤のために開発されている。しかしながら、多くの親水性コーティングは、その水保持力を失い、しかも特に照射またはオートクレーブを用いる滅菌後に、コーティングは長い時間、水中で保存されると、摩擦係数が増加することが見出された。
【0006】
EP1 131 112には、水保持力が劇的に増加され得、最初の摩擦係数は、親水性ポリマーを含む水性溶液と接触する間、親水性コーティングを有する医療器具の滅菌を実行することにより低く保持され得ることが記載されている。その親水性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドンもしくはN-ビニルピロリドンを含むコポリマー;ポリ[(メタ)アクリル酸]、または(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸エステルを含むコポリマー;ポリアクリルアミド;ポリ(ビニルアルコール)、および部分ケン化酢酸ビニルのコポリマー;ポリ(エチレングリコール);ポリ(ビニルメチルエーテル)、またはビニルメチルエーテルを含むコポリマー、たとえばポリ(ビニルメチルエーテル−コ−無水マレイン酸);無水マレイン酸もしくは無水マレイン酸エステルを含むコポリマー;または水溶性多糖類もしくはその誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンもしくはその誘導体が挙げられる。このように、親水性ポリマーは、このようなポリマー溶液で湿潤されるとき、照射を用いる滅菌に晒される間、上記の特性を保護するようにみえる。
【0007】
しかし、親水性コーティングを有する滅菌された医療器具を提供する方法に対する要求はまだある。さらに、水保持力、すなわちコーティングの最初の摩擦に悪影響を与えないで滅菌が実行されるように水性湿潤液体中で十分な量で親水性ポリマーを提供する新たな方法に対する要求もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,967,728号明細書
【特許文献2】WO86/06284
【特許文献3】EP1 131 112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、緩衝剤が自然の緩衝能なしに親水性ポリマーを含む膨潤性媒体に添加されるとき、電子線滅菌された、膨潤性媒体と接触親水性コーティングの貯蔵寿命が増加することを開示する。さらに、新たに提案される膨潤性媒体は、細胞毒性でなく、現在の安全基準に適合する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来、PVPのpH4付近の自然緩衝能は認識されていなかったが、pH4付近の、膨潤媒体中における、ある小さな緩衝能の存在が、たとえば親水性コーティングを有する尿カテーテルが滅菌され湿潤して保存されるとき、尿カテーテルの安定性および汚染微生物数の調節に重要であるようにみえる。
【0011】
その開示された発見は、驚くべきことにその電子線滅菌のために、SpeediCath(登録商標)のような、すぐ使用し得る尿カテーテル(すなわち、カテーテルは湿潤して保存される)のために膨潤性媒体中に、ある量の緩衝剤が存在しなければならないことを示す。特に、もしpH が3.7未満に低下すると、カテーテル上の親水性コーティングは破壊され得ることを示す。これは、多分、緩衝剤なしに、湿潤滅菌および続く保存中の酸生成の結果としてpHは3.7未満に低下するからである。この低いpHで、酸に影響を受けやすいポリマー、たとえばポリエステル、ポリウレタンおよびポリエーテル、の加水分解が受け入れられないほど高くなり得る。
【0012】
本発明の1つの態様は、親水性コーティングを含む医療器具に関し、その医療器具は、a)親水性ポリマー;およびb)分離した緩衝剤;を含む液体と接触している間に滅菌されている。
【0013】
関連した態様は、a)親水性ポリマー;b)分離した緩衝剤;を含む水性液体と接触している親水性コーティングを含む医療器具からなる、滅菌されたセットに関し、そのセットはその液体と接触している間に照射を用いて滅菌されている。
【0014】
この構成における器具は、医療器具に重要な要因である、乾燥時間(乾ききり時間:dry-out time)および摩擦の保持力を有して、少なくとも2年間保存され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】23℃で膨潤性媒体を保存した後のpH。pHは、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月;F:9ヶ月;G:12ヶ月;で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図2】40℃で膨潤性媒体を保存した後のpH。pHは、A:滅菌前;B:滅菌後;C:6ヶ月;D:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図3】50℃で膨潤性媒体を保存した後のpH。pHは、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ケ月;D:6ヶ月;E:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図4】60℃で膨潤性媒体を保存した後のpH。pHは、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図5】23℃で膨潤性媒体を保存した後の浸透圧。浸透圧(Osmol/kg)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月;F:9ヶ月;G:12ヶ月;で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図6】40℃で膨潤性媒体を保存した後の浸透圧。浸透圧(Osmol/kg)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:6ヶ月;D:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図7】50℃で膨潤性媒体を保存した後の浸透圧。浸透圧(Osmol/kg)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ヶ月;D:6ヶ月;E:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図8】60℃で膨潤性媒体を保存した後の浸透圧。浸透圧(Osmol/kg)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ヶ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図9】23℃で保存した後のカテーテルの乾燥時間。乾燥時間(分)は媒体中で保存後の時点で測定された。
【図10】40℃で保存した後のカテーテルの乾燥時間。乾燥時間(分)は媒体中で保存後の時点で測定された。
【図11】50℃で保存した後のカテーテルの乾燥時間。乾燥時間(分)は媒体中で保存後の時点で測定された。
【図12】60℃で保存した後のカテーテルの乾燥時間。乾燥時間(分)は媒体中で保存後の時点で測定された。
【図13】23℃で保存後、乾燥時間0分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月;F:9ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図14】40℃で保存後、乾燥時間0分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図15】50℃で保存後、乾燥時間0分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図16】60℃で保存後、乾燥時間0分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図17】23℃で保存後、乾燥時間5分後のいくつかのカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月;F:9ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図18】40℃で保存後、乾燥時間5分後のいくつかのカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図19】50℃で保存後、乾燥時間5分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ケ月;D:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図20】60℃で保存後、乾燥時間5分後のカテーテルの摩擦力。摩擦力(mN)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:2週間;D:3ケ月;E:6ヶ月で測定された。測定値は、□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸;●(点線):PEG+0.04%CA、で測定された。
【図21】23℃で保存後の主観的滑りやすさ。主観的滑りやすさ(0〜5)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ケ月;D:6ヶ月;E:9ヶ月;F:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図22】40℃で保存後の主観的滑りやすさ。主観的滑りやすさ(0〜5)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:6ケ月;D:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図23】50℃で保存後の主観的滑りやすさ。主観的滑りやすさ(0〜5)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ケ月;D:6ヶ月;E:12ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図24】60℃で保存後の主観的滑りやすさ。主観的滑りやすさ(0〜5)は、A:滅菌前;B:滅菌後;C:3ケ月;D:6ヶ月で測定された。測定値は、◆(長い点線):PEG+NaCl;□(実線および一点鎖線):PVP+NaCl;△(実線):NaCl;×(実線):PEG+クエン酸塩;*(実線および二点鎖線):PEG+クエン酸、で測定された。
【図25】23℃で保存後の主観的コーティング安定性。コーティング安定性(0〜5の尺度)は、媒体中で保存後の時点で測定された。
【図26】40℃で保存後の主観的コーティング安定性。コーティング安定性(0〜5の尺度)は、媒体中で保存後の時点で測定された。
【図27】50℃で保存後の主観的コーティング安定性。コーティング安定性(0〜5の尺度)は、媒体中で保存後の時点で測定された。
【図28】60℃で保存後の主観的コーティング安定性。コーティング安定性(0〜5の尺度)は、媒体中で保存後の時点で測定された。
【図29】コーティング乾燥時間vs.保存温度および時間にわたるpHの散布図。乾燥時間(分)が、変動するpHに対してプロットされた。R2=0.1451
【図30】乾燥時間0分後のコーティングの摩擦力vs.保存温度および時間と交差するpHの散布図。乾燥時間0分後のコーティングの摩擦力(mN)が、変動するpHに対してプロットされた。
【図31】乾燥時間5分後のコーティング摩擦力vs.保存温度および時間と交差するpHの散布図。乾燥時間5分後の摩擦力(mN)が、変動するpHに対してプロットされた。R2=0.1389
【図32】主観的コーティング滑りやすさvs.保存温度および時間と交差するpHの散布図。主観的滑りやすさ(0〜5)が、変動するpHに対してプロットされた。
【図33】主観的コーティング安定性vs.保存温度および時間と交差するpHの散布図。主観的安定性(0〜5)が、変動するpHに対してプロットされた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
医療器具は、カテーテル、内視鏡、喉頭鏡、供給用チューブ、排液用チューブ、ガイドワイヤー、コンドーム、ユリシ−ツ(urisheaths)、バリアコーティング、ステントおよび他のインプラント、体外血液路、膜、血液フィルター、循環補助器具、創傷ケア用包帯、および人工肛門バッグからなる群より選ばれ得る。最も関連する医療器具または医療器具部品は、カテーテルおよびカテーテル部品である。
【0017】
本発明の1つの態様において、照射による滅菌はβ−またはγ−照射により実施される。
【0018】
SpeediCath(登録商標)のための膨潤性媒体は、親水性ポリマーとしてPVP C−15を含む(WO0030696に記載されるように)。その重合化学のために、PVPはポリマー鎖あたり1つのカルボン酸基を自然に含み、1)滅菌後の出発pHが約4であり、および2)小さな緩衝能であるが、β−滅菌(電子線滅菌)および保存中に、さらなるpH増加を防止するのに十分に大きい。PVP C−15の緩衝能はpH4〜6で最も大きい。
【0019】
SpeediCath(登録商標)膨潤性媒体におけるPVP C−15が、緩衝剤を同時に添加しないでPEG2000(カルボン酸基を自然には含まない)で置換されると、カテーテルは滅菌および続く保存に耐えられなかった。親水性コーティング上で低pHで引き起こされる損傷のメカニズムは現在はわからないが、系における緩衝剤の存在が強制させるようにみえる。
【0020】
SpeediCath(登録商標)のために現在使用されている膨潤性媒体は、6%のPVP C−15および0.9%のNaCl(浸透圧の調節のため)を含む。PVP C−15以外の他の特性を持つ親水性ポリマーを有する膨潤性媒体の検討において、わずか6%のPEG2000および0.9%のNaClを含む膨潤性媒体は、加速保存安定性試験において、大気および比較的高い温度での電子線滅菌および続く保存中に、カテーテルを保護しないことが観察された。PEG2000を含む膨潤性媒体の使用は、滅菌および加速保存後に、5分間未満の、受け入れられない短い乾燥時間を持つカテーテルをもたらした。しかし、生物学的緩衝剤クエン酸ナトリウム(またはクエン酸ナトリウムとクエン酸の混合物)がPEG2000を含む膨潤性媒体に添加されると、保存されたカテーテルの性能は、従来のPVP C−15を含む膨潤性媒体で保存されたカテーテルの性能と同等以上であった。その膨潤性媒体は緩衝剤なしに、しかし代わって十分に高い出発pHで調製され得、したがって滅菌および延長された保存後でさえも、pH は3.7未満にならない主張され得るであろう。それが当を得てるとしても、高い出発pHを持つ膨潤性媒体は、1)空気から手当たり次第の量のCO2を吸収し、H2CO3/HCO3−/CO32−系から変動し得る緩衝能を獲得するであろうが、これは望ましくない;および2)膨潤性媒体の混合時間と滅菌時間の間に急速に成長するであろう。したがって、緩衝剤なしに(高い出発pHを有する)、膨潤性媒体の汚染微生物数は、現在の系よりももっと大きいであろうし、その結果、膨潤性媒体の製造と滅菌の間の保持時間は受け入れられないほど短いであろう。
【0021】
汚染微生物数に関して、膨潤性媒体のpHはできる限り低いのが理想的であるが、pH値約4が、製造時から滅菌時まで、良好に作用する。PVP C−15もしくはPEG2000のいずれか+クエン酸塩/クエン酸を含む膨潤性媒体は、この要件を充たす。SpeediCath(登録商標)膨潤性媒体における緩衝剤の存在は、上記の理由から良い考えであるが、緩衝能(したがって緩衝剤濃度も)はできる限り低く保持されるべきである。なぜなら高緩衝能は小さな創傷における痛みのレベルと互いに関係があり、同じ状況が尿道における小さな引っかき傷があるカテーテル使用者に当てはまるであろうからである。したがって、適切な妥協が、膨潤性媒体のための現在使用されている処方において、高コーティング安定性(pH3.7)、低汚染微生物数(できる限り低いpH,しかしpH値4が良好)、および低緩衝能(4mM未満、pH 4〜pH7.4)についての矛盾する要請の間に見出された:HClまたはNaOHでpH3.95に調節された、6%のPEG2000、0.88%のNaCl、および0.038%のクエン酸。
【0022】
自然な緩衝能なしに親水性ポリマーに添加するための、適切な分離した緩衝剤は、pKa値2〜6、たとえば2.5〜5.5、もっと好ましくは2.7〜5、を有する少なくとも1つの適切な酸強度定数Kaを有するべきである。KaおよびpKaは、次のように水中での酸−塩基平衡HA ⇔H++A-で定義される。
【0023】
Ka=[H+]×[A-]/[HA]; pKa=-log10(Ka)
最小pKa値2.7は、pH3.7で、適度な緩衝能を確実にし、それは滅菌および続く保存時に最小の許容pHである。逆に、最大pKa値5.0は、好適な出発pH4.0で、適度な緩衝能を確実にする。これらの要件を充たす緩衝剤は、モノカルボン酸、たとえばギ酸(pKa=3.75)、酢酸(4.75)、プロピオン酸(4.87)、3−ヒドロキシプロピオン酸(3.73)、2,3−ジヒドロキシプロピオン酸(3.64)、グルコン酸(3.56)、安息香酸(4.19)、シス−ケイ皮酸(3.89)、トランス−ケイ皮酸(4.44)、乳酸(3.85)、マンデル酸(3.85)、グリコール酸(3.83)、フェニル酢酸(4.28)、o-クロロ安息香酸(2.92)、m-クロロ安息香酸(3.82)、p-クロロ安息香酸(3.98)、1−ナフトエ酸(3.70)、2−ナフトエ酸(4.17)、o-トルイル酸(3.91)、m-トルイル酸(4.27)、p-トルイル酸(4.36)、N-アセチルグリシン(3.67)、および馬尿酸(3.80);ジカルボン酸、たとえばシュウ酸(pKa1=1.23、pKa2=4.19)、マロン酸(pKa1=2.83、pKa2=5.69)、コハク酸(pKa1=4.16、pKa2=5.61)、グルタル酸(pKa1=4.31、pKa2=5.41)、アジピン酸(pKa1=4.43、pKa2=5.41)、ピメリン酸(pKa1=pKa2=4.71)、フタル酸(pKa1=2.89、pKa2=5.51)、イソフタル酸(pKa1=3.54、pKa2=4.60)、テレフタル酸(pKa1=3.51、pKa2=4.82)、1,1−シクロへキサンジカルボン酸(pKa1=3.45、pKa2=6.11)、リンゴ酸(pKa1=3.40、pKa2=5.11)、α−酒石酸(pKa1=2.98、pKa2=4.34)、メソ−酒石酸(pKa1=3.22、pKa2=4.82)、イタコン酸(pKa1=3.85、pKa2=5.45)、およびフマル酸(pKa1=3.03、pKa2=4.44);トリおよびテトラカルボン酸、たとえばクエン酸(pKa1=3.14、pKa2=4.77、pKa3=6.39)、および1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸酸(pKa1=3.36、pKa2=4.38、pKa3=5.45、pKa3=6.63);アミノ酸、たとえばトリプトファン(pKa1=2.83、pKa2=9.39)、アスパラギン酸(pKa1=1.88、pKa2=3.65、pKa3=9.60)、グルタミン酸(pKa1=2.19、pKa2=4.25、pKa3=9.67)、アントラニル酸(o−アミノ安息香酸;pKa1=2.11、pKa2=4.95)、m−アミノ安息香酸(4.78)、p−アミノ安息香酸(pKa1=2.50、pKa2=4.87)、グルタチオン(3.59)、グリシルグリシン(3.14)、グリシルグリシルグリシン(pKa1=3.23、pKa2=8.09)、N−フェニルグリシン(pKa1=1.83、pKa2=4.39、pKa3=6.39)、カルノシン(β−アラニルヒスチジン;pKa1=2.73、pKa2=6.87、pKa3=9.73)、ナイアシン(3−ピリジンカルボン酸;4.85)、4−ピリジンカルボン酸(4.96);アミノスルホン酸、たとえばm−アミノベンゼンスルホン酸(3.73)、およびスルファニル酸(p−アミノベンゼンスルホン酸;3.23);ならびに無機酸、たとえばフッ化水素酸(3.45)、シアン酸(3.92)および亜硝酸(3.37)。大部分のpKa値は、The Chemical Rubber Company により発行された、The CRC Handbook of Chemistry and Physics の種々の版による。
【0024】
好適な緩衝剤は:
1.出発pH4.0および最小の許容し得るpH3.7の間でできる限り高い緩衝能を有し、β−滅菌および続く保存中に、pHがこの範囲に入るのを防止する。
2.pH4.0とpH7.4の間でできる限り低い緩衝能を有し、損傷された尿道を有する使用者により感じられる痛みを最小にする。
【0025】
したがって、特に好適な緩衝剤は、3.7〜4.0の間のpKa値を有する、ただ1つの緩衝活性基を持つ化合物を含み、たとえばモノカルボン酸、ギ酸、シス−ケイ皮酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、マンデル酸、グリコール酸、1−ナフトエ酸、o-トルイル酸、m-クロロ安息香酸、p-クロロ安息香酸、N-アセチルグリシン、馬尿酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、および無機シアン酸である。いくつかのの緩衝活性基(たとえば、ジ−、トリ−もしくはポリ酸、またはアミノ酸)を持つ、特に好適な緩衝剤は、1つまたはいくつかの、3.7〜4.0の間のpKa値を有し、そして他は3.7より小さいか、または8.9より大きい(4.0〜7.4の間の緩衝能は無視し得る)、化合物を含み、たとえばアスパラギン酸およびグルタチオンである。
【0026】
3.7未満の最大pKa値を有する緩衝剤は、pH4.0で比較的低緩衝能なので、好適とは少しいえない。しかし、pH4.0〜7.4の間の非常に低い緩衝能が最も重要であれば、3.7未満の最大pKa値を有する緩衝剤は、理想的である;これらは2,3−ジヒドロキシプロピオン酸、グルコン酸、o-クロロ安息香酸、グリシルグリシン、スルファニル酸、フッ化水素酸および亜硝酸を含む。いくつかの緩衝活性基を持つ、好適なとは少しいえない緩衝剤は、1つまたはいくつかの、3.7未満のpKa値を有し、そして他は8.9より大きいpKa値を有する化合物を含み、たとえばトリプトファンである。
【0027】
4.0〜8.9の間の、1つまたはいくつかのpKa値を有する緩衝剤は好適とは少しいえない。なぜなら4.0〜8.9の間の緩衝能は3.7〜4.0の間のpHの安定化に余り多くは寄与せず、そして同時に使用者により感じられる痛みに有意に寄与し得るからである。しかし、これらの緩衝剤の1つを使用することは、全く使用しないよりもなお良好である。それらは、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、トランス−ケイ皮酸、フェニル酢酸、2−ナフトエ酸、m-トルイル酸、p-トルイル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,1−シクロへキサンジカルボン酸、リンゴ酸、α−酒石酸、メソ−酒石酸、イタコン酸、フマル酸、クエン酸、および1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸酸、グルタミン酸、グリシルグリシルグリシン、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、N−フェニルグリシン、カルノシン、ナイアシン、および4−ピリジンカルボン酸を含む。
【0028】
膨潤性媒体の緩衝能βは、この分野での標準により測定された(たとえば、Niels Linnet:“pH measurements in theory and practice”1.ed., Radiometer A/S, Copenhagen, 1970参照)。
【0029】
β=db/dpH
ここで、dbは溶液中のpH変化dpHをもたらすのに要求される膨潤性媒体のLあたりの強塩基の量(モルで測定される)である。たとえば、もし13mL0.1M NaOH(=0.013mmol=13μmol)がある膨潤性媒体20mL中でpHを7.40から7.94に上昇させる必要があれば、pH7.67(7.40および7.94の平均値)での緩衝能βは:
β(7.67)=db/dpH=(0.65μmol/mL NaOH)/(7.94-7.40)=1.2μmol/(pH×mL)=1.2mM/pH
したがって、ある量によってpHを上昇させるのに必要なNaOHが多ければ多いほど、緩衝能は高くなる。理論によれば、緩衝活性物質の最大緩衝能は、基のpH=pKaでみられ、緩衝活性基の濃度の0.576倍に等しい。
【0030】
緩衝能データは、1mL膨潤性媒体をpH4.0から7.4ににするのに要求されるNaOHのμmol数として以下に示される。この緩衝能の単位は、μmol/mL=mmol/L=mMである。いくつかの場合には、緩衝能は、1mL膨潤性媒体をpH7.4から4.0ににするのに要求されるHClのμmol数として以下に示される。NaOHおよびHClでの滴定は原則として同一の緩衝能を正確に与えるべきであるが、実際にはHCl滴定から測定された緩衝能はNaOH滴定からの緩衝能よりもわずかに高い。これは、HCl滴定は高から低pH、すなわちアルカリ性から酸性溶液に移動し、アルカリ性試料が空気からCO2を吸収するのを防止するのが困難であるからである。上述のように、CO2はアルカリ性試料中で緩衝活性CO32−またはHCO3−に転換され、これは緩衝能の不自然に高い表示を生じる。しかし、対照測定は現在の系で問題がないことを示した。
【0031】
本発明の好適な態様において、分離した緩衝剤の緩衝能は、pH4からpH7.4の間隔で、8未満、たとえば7未満、好適には6未満、もしくは5未満、最も好適には4mM未満である。
【0032】
本発明の1つの態様において、分離した緩衝剤は親水性ポリマーと異なった化学品である。すなわち、たとえば、それは親水性ポリマーと異なったGCまたはHPLCスペクトルを有する。
【0033】
本発明の好適な態様において、湿潤性液体、すなわち親水性ポリマーと分離した緩衝剤を有する液体は、浸透圧増加剤をさらに含む。浸透圧増加剤は無機塩を含み、カチオンまたはアニオンは2.5〜8.9でpKa値を有さないので、pH4からpH7.4の間で緩衝成分の緩衝能に影響を与えない。このような無機塩は、カチオン[たとえば、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、モノアルキルアンモニウム、アンモニウム、アルカリ金属(すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、等)、アルカリ土類金属(すなわち、マグネシウム、カルシウム、等)、または3価金属(すなわち、スカンジウム、イットリウム、ランタン、等)の、アニオン[たとえば、塩化物、臭化物、ヨウ素化物、硝酸塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、亜塩素酸塩、チオシアネート、硫酸水素塩、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート、硫酸塩、チオ硫酸塩、炭酸塩、またはリン酸塩]との組み合わせを含む。他の浸透圧増加剤の例は、有機の、低分子量化合物であり、生理学的に受け入れられ、無刺激性であり、たとえば尿素またはグリセロールであるが、これらに限定されない。その液体は好ましくは使用において等浸透圧性であり、すなわち浸透圧は0.9%NaClの浸透圧に相当する。原則として、望ましい浸透圧は、クエン酸塩/クエン酸水素塩/クエン酸二水素塩/クエン酸または安息香酸塩/安息香酸のような溶液に緩衝剤を添加することにより達成され得る。2つの緩衝剤系の各成分の濃度は、緩衝剤の選ばれた出発pHおよびpKa値の間の差異により支配される。しかし、大部分の緩衝剤はNaClよりも高い分子量を有し、溶解された浸透圧増加剤の浸透圧は中性の分子およびイオンの合計モル濃度とともに直線的に増加する(たとえば、P.W.Atkins:”Physical Chemistry”, 2.ed., Oxford University Press, London, 1984, pp.228-33)ので、多くの場合、0.9%より多い緩衝剤は0.9%NaClと同一の浸透圧を得ることが要求されることになる。2.5〜8.9の、1つ以上のpKa値を有する緩衝剤は損傷した尿管を有する使用者に受け入れられない痛みを招くので、そのような量の緩衝剤は浸透圧増加剤として使用されるべきではない。
【0034】
膨潤性媒体:6%PEG2000、0.88%NaCl、0.038%クエン酸のための上記処方を用いる;HClまたはNaOHでpHを3.95に調節する。上記から明かなように、クエン酸は好適とはいえないクラスに属する。しかし、生物学的系で広い発生およびクエン酸の非毒性は、クエン酸を、ともかく緩衝剤のための良い選択とする。
【0035】
本発明の1つの態様は、pH4近く、たとえばpH3.7近くの自然な緩衝能なしに親水性ポリマーを利用する。このように、その使用は余分の緩衝剤の添加を要求する。
【0036】
種々の好適な態様において、pH近くで自然な緩衝能なしで親水性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル;N-アルキル置換のある、もしくはない、ポリ(メタ)アクリルアミド;ポリ(ビニルアルコール);部分ケン化ポリ(酢酸ビニル);ポリ(エチレングリコール);ポリ(エチレングリコール−コ−プロピレングリコール);ポリ(エチレングリコール)−ポリ(プロピレングリコール)ブロックコポリマー;エチレングリコールと他の1,2−エポキシドモノマー、たとえば1−ブテンオキシド、シス−およびトランス−2−ブテンオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、およびスチレンオキシドとのコポリマーおよびブロックコポリマー;ポリ(ビニルメチルエーテル);ポリ(2−エチル−4,5−ジヒドロオキサゾール)(たとえば、ISP CorporationからAquazolとして種々の分子量で利用し得る)および他の2−置換ポリ(4,5−ジヒドロオキサゾール);ポリ(2−ビニル−1−(3−スルフォプロピル)ピリジニウム分子内塩);ポリ(2−ビニル−1−(4−スルフォブチル)ピリジニウム分子内塩);ポリ(2−メチル−5−ビニル−1−(3−スルフォプロピル)ピリジニウム分子内塩);ポリ(4−ビニル−1−(3−スルフォプロピル)ピリジニウム分子内塩);ポリ(4−ビニル−1−(4−スルフォブチル)ピリジニウム分子内塩);ポリ(N,N−ジメチル−N−2−メタクリロイルオキシエチル−N−(3−スルフォプロピル)アンモニウム分子内塩);ポリ(N,N−ジメチル−N−3−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルフォプロピル)アンモニウム分子内塩);ポリ(N,N−ジエチル−N−2−メタクリロイルオキシエトキシエチル−N−(3−スルフォプロピル)アンモニウム分子内塩);ポリ(4−ビニル−N−メチルピリジニウム−コ−p−スチレンスルホネート);ポリ(N,N,N−トリメチル−N−メタクリルアミドプロピルアンモニウム−コ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネート);ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム−コ−2−メタクリロイルオキシエタンスルホネート);ポリ(N−オキシド)、たとえばポリ(2−ビニルピリジン−N−オキシド)およびポリ(4−ビニルピリジン−N−オキシド);ポリ(ビニルスルホン酸)および塩;ポリ(スチレンスルホン酸)および塩;ポリ(2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸)および塩;ポリ(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)および塩;ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)および塩;ポリ(3−ビニルオキシプロパンスルホン酸)および塩;ポリカルバモイルスルホネートの塩;スルフォン化エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーの塩;ポリ(4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(ジアリルジエチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(メタクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(N-アルキル−2−ビニルピリジニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ポリ(N-アルキル−4−ビニルピリジニウム塩、1または2価のアニオンを有する);ならびにEncyclopedia of Polymer Science and Engineering, eds. H.F. Mark, N.M. Bikales, C.G. Overberger, and G. Menges, 2. ed., vol. 13, pp.292-4, wiley-interscience, New York,1988に記載されるような、1または2価のアニオン対イオンを有する、テトラアルキルアンモニウム塩を含むポリウレタン・アイオノマーからなる群より選ばれる。塩および1または2価のアニオンに対して用いられるカチオンは、2.5〜8.9でpKa値を有すべきでないので、pH4.0〜7.4で緩衝成分の緩衝能に影響を与えない。その塩のための適切なカチオンは、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、モノアルキルアンモニウム、アンモニウム、アルカリ金属(すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、等)、アルカリ土類金属(すなわち、マグネシウム、カルシウム、等)、および3価金属(すなわち、スカンジウム、イットリウム、ランタン、等)を含む。適切な1価アニオンは、塩化物、臭化物、ヨウ素化物、硝酸塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、亜塩素酸塩、チオシアネート、硫酸水素塩、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、およびp−トルエンスルホネートを含む。適切な2価アニオンは、硫酸塩、チオ硫酸塩、および炭酸塩を含む。他の好適な態様において、親水性ポリマーはpH4付近で自然な緩衝能のないモノマーのコポリマーである。pH4付近で自然な緩衝能のない、さらなる好適な親水性ポリマーは、カルボン酸基のない多糖類の群を含み(溶解性を改良し、β−滅菌時のゲル化を避けるために部分的に加水分解され得る)、たとえばアガロース;ι-、κ-、λ-、μ-およびν-カラギーナン、およびフルセラン;グアーガム;ローカストビーンガム;タマリンド粉;スクレログルカン;シゾフィラン;シュードニゲラン;ニゲラン;イソリケナン;アミロース;アミロペクチン;デンプンおよびアルキル化誘導体、たとえばヒドロキシエチルデンプン;グリコーゲン;プルラン;デキストラン;カロース;カードラン;パキマン;ラミナラン;リケナン;セルロースおよびアルキル化誘導体、たとえばヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;プスツラン;キチンのアルキル化誘導体、たとえばヒドロキシエチルキチン;イヌリン;レバン;α−アラビノフラナン(たとえばキシロピラノアラビノフラナン);β−D−ガラクタン(たとえば、Larix種からのアラビノガラクタン);α−D−マンナン(たとえば、キシロマンナン;アラビノキシロマンナン;ラムノマンナン;グルコマンナン;ガラクトフラノマンナン);β−D−マンナン(たとえば、ガラクトマンナン);およびβ−D−キシラン(たとえば、ローディメナンおよびアラビノキシラン)。
【0037】
多数の方法が、カテーテルまたは他の医療器具の滑りやすさを改良するための親水性表面コーティングの製造について知られている。これらの方法は、中間の乾燥とキュアリングを有する1つ以上のプロセスのステージにおいて、親水性表面を付与される基材が1つ以上(2つが最も多い)の層で被覆される事実に基づくことが多く、種々の方法、たとえば照射により開始される重合により、UV光により、グラフト重合により、ポリマー間網目構造(inter-polymeric network)の形成により、または直接的化学反応により、互いに反応に供される。公知の親水性コーティングおよびその適用方法は、たとえばデンマーク特許159,018、公開された欧州特許出願であるEP0389632、EP0379156およびEP0454293、欧州特許であるEP0093093B2、英国特許1,600,093、米国特許4,119,094、4,373,009、4,792,914、5,041,100、および5,120,816ならびにPCT公開のWO90/05162およびWO91/19756に開示されている。
【0038】
好適な態様において、親水性コーティングはPVPコーティングである。このようなコーティングは、医療器具に結合されたPVPを含む。
【実施例】
【0039】
本例は、本発明の種々の態様を示す。もし滅菌が2.7〜5のpKa値を有する緩衝剤で実施されると、コーティングは酸劣化に対抗して保護される。pH4からpH7.4の間の低緩衝能は使用者のために痛みを低減するが、親水性コーティングの種々の品質パラメータに対する影響を試験するために高緩衝剤濃度での実験を実施した。滅菌(すなわち、汚染微生物数を減少させること)の前に膨潤性媒体中の細菌の生成を最小にするためにpHは製造時に約4.0であるのが好適である。その実験の目的は、親水性コーティングのあるカテーテルのための膨潤性媒体(たとえばSpeediCath(登録商標)カテーテル)について、PVPをPEG2000で置換することが可能かどうか検討することであった。
【0040】
本例は、WO06117372で以前に公開された結果を確認するものであり、そこではPEG2000の即時の効果が例8、表3に示された。その実験において、摩擦力および水保持力はβ−滅菌後すぐに測定された。しかし、本データは、標準的保存試験条件で保存されるとき、コーティングが劣化することを示し、この劣化は緩衝剤の添加によるpHの調節により回避され得ることを示唆する。
【0041】
例1:クエン酸塩ありとなしにおけるPEG2000の試験
膨潤性媒体中で親水性ポリマーとして標準(PVP C−15)および新規(PEG2000)を用いて、異なるコーティングの保存安定性を評価した。余分の緩衝剤が膨潤性媒体のいくつかに添加され、膨潤性媒体中に親水性ポリマーのない対照も評価された。実験は、ICHガイドライン(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)にしたがって実施された。適用されたガイドラインは、”Stability Testing of New Drug Substances and Products, Q1A(R2)”および”Evaluation for Stability Data, Q1E”であった。
【0042】
膨潤性媒体
液体A:5.0kg6%PEG2000、0.9%NaCl
液体B:2kg6%PVP C−15、0.9%NaCl
液体C:2kg0.9%NaCl
液体D:2.5kg6%PEG2000、3%クエン酸三ナトリウム・2水和物
液体E:2.5kg6%PEG2000、2.0000%クエン酸三ナトリウム・2水和物、ならびに0.6532%無水クエン酸もしくは0.7145%クエン酸・1水和物
カテーテル
Cath 1:同一の製造バッチ(バッチ1)からの親水性コーティングを有する、800の男性用SpeediCath(登録商標)CH12カテーテル。これらはすべての5つの液体A〜Eに使用された。
Cath 2:もう1つの製造バッチ(バッチ2)からの親水性コーティングを有する、110の男性用SpeediCath(登録商標)CH12カテーテル。これらは専ら液体Aとともに使用された。
Cath 1:第3の製造バッチ(バッチ3)からの親水性コーティングを有する、110の男性用SpeediCath(登録商標)CH12カテーテル。これらは専ら液体Aとともに使用された。
【0043】
Cath 1、2および3に関して、次のルールが適用された:少なくとも30秒間、脱イオン水に膨潤された、3つの被覆され、未滅菌カテーテルの各摩擦が100mN未満であれば、そのバッチが含まれる。Cath 1、Cath2およびCath3からの結果は、他に記載がなければ、下の結果の部に一緒にされた。PVP K−90に基づく、親水性の架橋浸漬コーティングが、SpeediCath(登録商標)カテーテルのために使用された。PEG2000は、Clariantから入手された。PVP C−15およびPVP K−90は、ISPから入手された。ポリウレタンカテーテルは、Unomedical A/Sから入手された。親水性ポリウレタンは、いくつかのソース、たとえばCardio TechおよびThermedics (Lubrizol)から入手可能であった。
【0044】
カテーテルの一括(packaging)
異なるバッチからの次の数のカテーテル(Cath 1、Cath2およびCath3)が、膨潤性媒体(A,B,C,D,E)の1つの12mLと一括された。
【0045】
【表1】
【0046】
カテーテルの保存
A1と名づけられた160の試料が、下記の16の異なる保存条件に、各保存条件で10の同一試料に配分された。さらに、それらはスキームの記載に沿って名づけられた。大部分の測定において、0〜12ヶ月の保存からのデータが利用され得た。B1,C1,D1およびE1と名づけられた160の試料も、同様に配分され、名づけられた:
【0047】
【表2】
【0048】
A2と名づけられた110の試料およびA3と名づけられた110の試料が、下記の11の保存条件に、各保存条件で10の同一試料に配分された。さらに、それらはスキームの記載に沿って名づけられた。
【0049】
【表3】
【0050】
他のSpeediCath(登録商標)男性用CH12カテーテルが、膨潤性媒体Fとともに一括された:6%PEG2000、0.88%NaCl、0.038%クエン酸、pHはNaOHで3.95に調整された。試料は下記のF7と名づけられた。
【0051】
滅菌
A1〜E1の試料は、膨潤性媒体中で、一括されたカテーテルをすべて含み、滅菌前に評価されたFS試料(滅菌なし)を除いて、Mφrdrup(デンマーク)のSterigenicsでの2×25kGy β−滅菌に送られた。F7試料は、2×37.5kGyで滅菌された。
【0052】
カテーテルの評価
すべての場合において、10のカテーテルは、保存期間と保存温度の各組み合わせで利用され得た。これらの10のカテーテルは、次のように配分された:
1つのカテーテルは、細胞毒性の測定に用いられた。被覆されたカテーテルの一部が切断され、分析に使用された。
【0053】
4つのカテーテルは、乾燥期間の主観的評価に使用された。カテーテルは、3、5、7および9分間(カテーテルが広くは損傷されていないとき、主に保存期間の開始時および低保存温度で)、または1、3、5、および7分間(長い保存期間または高保存温度で損傷されたカテーテルについて)、コネクターにより垂直に取り付けられた。評価の間、人差し指および親指は、まずカテーテルの上部から下方に移動され、さらに数回、上下された。オペレータは0漢のスコアを決定した。ここで0は完全な乾燥、5は十分にすべりやすいものであった。乾燥時間は、スコアが3以上であった最後のときとして定義された。例として、もしスコアが3,5,7および9分後に5,5,4,3であると、乾燥時間は9分であった。一方、もしスコアが1、3,5および7分後に5,3,2,3であると、乾燥時間は3分であった。4つのカテーテルが使用されたが、これは単一の測定であった。乾燥時間は、少なくとも5分であるべきである。
【0054】
3つのカテーテルは、流れる微温水の下で指の間にカテーテルを擦る間に、安定性と滑りやすさの主観的評価するために使用された。安定性と滑りやすさは、0〜5の尺度で評価され、ここで、0は最も不良であり、5は完全であった。同一の保存期間後に評価された、異なるカテーテルは、ランダムな順序で評価された。これは三重の評価であった。理想的には、滑りやすさは、少なくとも4(「ほとんど完全に滑りやすい」)であるべきであり、安定性は5(「完全に安定」)であるべきである。
【0055】
2つのカテーテルは、摩擦測定のために使用された。Texture Analyzerが試料A1〜E1の測定に用いられた。Texture Analyzerの測定は、すべて荷重266gで、10mm/sの速度で行われた。摩擦ブロックの長さは35mmであり、摩擦はカテーテルの15cmにわたって測定された。すべての試験は、試料を分析機に置き、荷重をかけたすぐ後に開始された。摩擦試験機は、F7試料のために用いられた。摩擦試験機での測定は、荷重164gで、4mm/sの速度で行われた。摩擦ブロックの長さは21mmであり、摩擦はカテーテルの18.5cmにわたって測定された。すべての試験は、試料を摩擦試験機に置き、荷重をかけたすぐ後に開始された。
【0056】
これらの2つの異なる測定からの結果は比較し得ないが、異なる保存期間での摩擦力の進展を説明するために示される。両方の場合において、次の手順が採られた:
−1つのカテーテルは、膨潤性媒体からの引き揚げのすぐ後に(すなわち、乾燥期間0)測定された;
−他のカテーテルは、測定前に乾燥するために、コネクターに5分間、垂直に取り付けられた。これは、これは環境雰囲気(すなわち、23℃、湿度60〜70%)の室内で行われた。
【0057】
その結果は、カテーテルの上方で往復する摩擦ブロックの通路の平均摩擦力として評価された。摩擦ブロックの質量および実験室の相対湿度が記録された。これらは単一の測定であった。摩擦力は150mN,理想的には100mNであるべきである。
【0058】
膨潤性媒体
細胞毒性測定からの膨潤性媒体は、凝固点降下法の浸透圧計(GonotecからのOsmomat 030-D)を用いて浸透圧の測定に使用された。2〜3の測定が単一試料についてなされた。主観的評価および摩擦からの5つの、共同利用された膨潤性媒体が、緩衝能およびpH測定に用いられた。
【0059】
結果−膨潤性媒体のpH,緩衝能および浸透圧
pH測定は、23、40、50および60℃での保存について、図1〜図4に示される。試料{NaCl}(親水性ポリマー、緩衝剤なし)および{PEG+NaCl}(緩衝剤なし)のpHは、おそらくはカルボン酸の生成のために、保存中に急速に、着実に減少した。試料{NaCl}におけるカルボン酸の生成は、包装材料のポリエチレン内張りの酸化によるのであろう。明かに、{NaCl}と{PEG+NaCl}における緩衝剤の欠如は、これらの試料を、カルボン酸生成を伴うpH低下に影響を受けやすいものにした。逆に、すべての温度および時間で、試料{PEG+クエン酸}および{PVP+NaCl}のpHは、おおよそ一定のままであり、一方{PEG+クエン酸塩}のpHは滅菌後に多少減少し、ついで一定のままであった。試料{ PEG+0.04%クエン酸}のpHは滅菌の際に増加したが、ついで60℃で2週間後に少し低下した。したがって、試料{ PEG+0.04%クエン酸}のpHはさらなる保存の際に3.7未満に低下した:もしこれが生じるべきであれば、3.95より少し高い出発pHで膨潤性媒体を製造するか、またはクエン酸の濃度を増加させることが必要であろう。緩衝能測定は、表1に示される。
【0060】
【表4】
【0061】
PEG2000の大規模の酸化および劣化が生じて、大量の緩衝活性カルボン酸を生成した兆候として、緩衝されていないPEG2000を有するA1試料の緩衝能は、12ヵ月の保存後に劇的な温度増加とともに、増加した。一方、B1,D1,E1およびF7試料は、すべて緩衝剤を含むが、緩衝能の小さな増加または減少さえも示した。したがって、カルボン酸の生成は、緩衝剤の存在により、F7試料中の低濃度の緩衝剤でさえ、有効に停止された。これは、カルボン酸の生成は低pHで、一種の自動触媒プロセスにおいて進行することを示した。
【0062】
浸透圧データは図5〜図8に示される。浸透圧は、膨潤性媒体に溶解されるイオンおよび中性種の数の尺度である。この測定から得られる情報はpHおよび緩衝能の測定に関連する。しかし、少数の新カルボン酸基の生成はpHを低下させ、緩衝能を大いに増加し得るが、浸透圧はバルクの特性であり、溶解された種の数の大部分の変化が記録される。
【0063】
23および40℃で、大部分の浸透圧は、40℃で6〜12ヶ月の保存で強く増加させた、{PEG+NaCl}を除いて、少し低下した。これは、比較的小さな断片へのPEG2000の劣化を示した。緩衝されたPEG試料またはPVP試料には、このような劣化はみられなかった。50℃で、{PEG+NaCl}試料は同一の挙動を示した。すなわち、6〜12ヶ月での浸透圧の強い上昇である。逆に、{PEG+クエン酸塩}および{PEG+クエン酸}試料の浸透圧は6ヶ月後に最大値を通過し、ついで50℃で12ヵ月後に低下した。この点を良好に説明できないが、この試料におけるPEG劣化の最初の部分の間、多数の小さな、重合性物質が製造され(たとえば、ヒドロキシ酸またはジオール+ジ酸)、ついで比較的長い保存期間で結果として浸透圧の同時低下とともにポリエステルに重合されたことが可能である。いかなる場合でも、50℃で3〜6ヶ月で、{PEG+クエン酸塩}および{PEG+クエン酸}試料の浸透圧の幾分大きな増加は悩ました。60℃での保存後に、もっと正常なパターンが観察された:すべての試験された試料の浸透圧は3〜6ヶ月の保存期間で、次の順に増加した:{PEG+クエン酸}<{NaCl}≒{PVP+NaCl}<{PEG+クエン酸塩}<{PEG+NaCl}
したがって、緩衝されていないPEG試料に溶解された種の数は他の試料のそれよりもはるかに多く増加し、緩衝剤ありよりも緩衝剤なしのPEG2000のもっと大きな劣化速度を示した。さらに、60℃で2週間後に、{PEG+0.04%クエン酸}試料の浸透圧は一定のままであり、PEG2000の広い劣化は生じなかったことを示した。
【0064】
結果−親水性コーティングの乾燥時間、摩擦、主観的滑りやすさ、および主観的安定性試料の乾燥時間は図9〜図12に示される。膨潤性媒体中に親水性ポリマーなしの試料{NaCl}は、いかなる保存温度でも6ヶ月後に、大抵の場合、3ヶ月後も、他の試料よりも短い乾燥時間を有していた。これは、膨潤性媒体中の親水性ポリマーの存在が、長い保存の間、カテーテルの高い乾燥時間を維持するのに重要であることを暗示した。50および60℃で、緩衝されていない{PEG+NaCl}試料の乾燥時間は、{NaCl}試料のそれよりも長いが、{PEG+クエン酸}、{PEG+クエン酸塩}および{PVP+NaCl}のそれよりも短く、そのすべてはpH4付近でいくつかの緩衝能を有していた。したがって、これらの溶液のpH4付近での緩衝能は、高温での保存中に親水性コーティングの水結合能力を保護するようにみえた。しかし、40℃で、{PEG+NaCl}試料は、実際にすべての保存期間で試料の最高乾燥時間を有しており、23℃で{PEG+NaCl}試料は、その分野の中央にあった。現在、本発明者はこれらの観察を十分には説明できない。最も骨の折れる保存条件で、すなわち最高温度で、親水性ポリマーおよび緩衝剤は、保存時に、最初の長い乾燥時間を保持するために存在しなければならないといえば十分である。残念なことに、データは試料{PEG+0.04%クエン酸}に利用できなかった。
【0065】
動的摩擦力が環境雰囲気に調節された部屋で0〜5分の乾燥時間後に、2つの分離したカテーテルについて評価された。5分の乾燥時間後の摩擦は、それが、カテーテル使用者の状況に関連して最悪のシナリオを表したので、特に重要であった。9ヶ月保存までのデータのみがこの記載時に利用可能であった。上記のように、{PEG+0.04%クエン酸}試料および他の試料の摩擦は、2つの異なる設備を用いて測定された。しかし、その結果は、保存期間の増加とともに摩擦における傾向を説明するために同一の図に示された。乾燥時間0分でのすべての摩擦は、図13〜図16に示される。乾燥時間5分でのすべての摩擦は、{NaCl}試料(C1)からのすべてのデータ(表2に示される)および60℃での{PEG+NaCl}試料(A1)からのデータ(表3に示される)を除いて、図17〜図20に示される。したがって、表2は図17〜図20を補足し、表3は図20のみをさらに補足する。
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
膨潤性媒体中に親水性ポリマーを有さない{NaCl}試料にまず焦点をあてると、親水性コーティングの乾燥時間0分の摩擦は、滅菌されたときに増加した。これは、摩擦が滅菌の際に低下した、他のすべての試料と対照的であった。さらに、{NaCl}試料の摩擦は、いかなる温度で保存しても、他の試料のそれよりも高いレベルに増加した。これは、親水性ポリマーが膨潤性媒体中に存在しないとき、カテーテルの親水性コーティングが滅菌および続く保存時に劣化したことを暗示した。もっと劇的に、乾燥時間5分の{NaCl}試料のデータは、親水性コーティングがほとんど測定できない摩擦力818mN(表2参照)に達し、滅菌によりすっかり破壊されたことを示した。この破壊のメカニズムは知られていなかったが、親水性ポリマーがないことに関係することは明白であった。他のすべての試料(それらのすべては親水性ポリマーが膨潤性媒体中に存在する)の摩擦は、滅菌時に低下した。これは、膨潤性媒体中の親水性ポリマーの存在において、水和された、親水性コーティングはさらに架橋され、滅菌時にもっと滑りやすくなることを示した。
【0069】
しかし、親水性ポリマーを含む膨潤性媒体の間の個別の差異もあった。最長の保存期間で、乾燥時間0分後に、特に、{PEG+NaCl}試料の摩擦、さらには{PVP+NaCl}試料の摩擦は、他の試料の摩擦より少し高いという傾向があった。{PEG+0.04%クエン酸}試料カの摩擦は、滅菌の前後および23または60℃で2週間の保存後に、非常に低かった。しかし、上記のように、測定のその傾向は最も興味深い観察であり、これらの結果および他の結果は厳密には比較できない。乾燥時間5分後に、緩衝されていない{PEG+NaCl}試料は、40℃(図18)、50℃(図19)および特に60℃(表3)での最長の保存で他の試料の摩擦より高かった。{PEG+クエン酸塩}試料は、23および50℃で、比較的高い摩擦を有し、そして{PVP+NaCl}試料は、50℃での6ヶ月の保存後に上昇された摩擦力に達した(図19)。{PEG+0.04%クエン酸}試料の摩擦は、23℃で2週間後にわずかに増加し、60℃で2週間後に少しもっと増加したが、その結果はなお非常に満足すべきものである。これらの測定値は2つの総括的な結論に導いた:(1)膨潤性媒体はβ−滅菌および続く保存時に親水性コーティングを保護するために親水性ポリマーを含まなければならない、そして(2)親水性ポリマーの保護作用は、系内で緩衝能の存在(PVPにおけるように自然に、または添加された緩衝剤から「不自然に」)により大いに高められる。
【0070】
親水性コーティングの滑りやすさの主観的測定は、上記のように示される摩擦の客観的測定と比較して不必要にもみえる。しかし、実際には、ヒトの指先は非常に敏感な測定器具であり、試料にあり得る不均質性(たとえばドライスポットから)、および滑らかさの欠如(たとえば粒子の粗いコーティングから)のような、摩擦測定によっては明かにされない、コーティングについての特徴を感じ得る。したがって、主観的滑りやすさは、客観的摩擦測定への重要な補足であった。その結果は、図21〜図24に示される。その結果は{PEG+0.04%クエン酸}試料については利用できない。親水性ポリマーなしの{NaCl}試料はすべての保存期間および保存温度で最も低い評価をうけた、これらの試料の親水性コーティングは、他の試料よりも接触するのに少し快適でなかったことを示した。緩衝されていない試料{PEG+NaCl}も60℃で3〜6ヶ月後に、損傷されたが、緩衝された試料はすべての保存条件で受け入れられる主観的滑りやすさを示した。これは、(1)、膨潤性媒体中に親水性ポリマーを有する重大な必要性、および(2)膨潤性媒体中に緩衝剤を有する重大ではないが、なお重要な必要性、を示した。
【0071】
親水性コーティングの主観的安定性は図25〜図28に示される。大部分のコーティングは、いかなる保存温度でも保存期間を通して完全に安定であった。しかし、40℃で12ヵ月後に、{NaCl}および{PVP+NaCl}試料は基板カテーテルから幾分ゆるくなったが、これらの試料は50および60℃では影響されなかった。逆に、50℃で12ヵ月後、および60℃で6ヵ月後、{PEG+NaCl}試料は完全に安定というわけではなかったが、その試料は40℃で12ヵ月後は安定であった。これらの結果を理論的に説明するのは困難であるが、{PEG+クエン酸}および{PEG+クエン酸塩}試料は、いずれも膨潤性媒体中に大きな緩衝剤濃度を有するが、そのコーティング安定性は保存条件に影響されなかったという事実は残された。したがって、緩衝剤添加の効果は有益であるようにみえた。
【0072】
結果−親水性コーティングの、pHと乾燥時間の関係、摩擦、主観的滑りやすさ、pHおよび主観的安定性
pHと親水性コーティング特性の関係のもっと明確な絵を得るために、散布図が保存温度および保存期間にわたるすべての利用できるデータで構成された。これらの散布プロットが図29〜図33に示される。図29は、乾燥時間はpH増加とともに増加した、すなわち最も短い乾燥時間は最も低いpHで見出された、ことを示す。特に、乾燥時間4分以下で、15の観察のうちの2つのみが3.7より大きいpHであった。したがって、低pHは乾燥時間に消極的に作用するようにみえた。図30は、乾燥時間0分の摩擦力、すなわち湿潤カテーテルの摩擦を示す。4より大きいpHで、平均摩擦力のわずかな増加がみられた。しかし、もっと劇的に、いくつかの高摩擦力(190mNを超える)が、pH3.7以下で、しかし比較的高いpHではなく、観察された。これは、pH3.7以下で保存された試料の親水性コーティングはひどく損傷されたことを明確に示したので、pHは3.7未満に低下されるべきではない。同一の、しかしもっと明白な、パターンが、他のカテーテルで測定された摩擦力について図31で見られ、そこでは測定前に5分間、空気中で乾燥された:190mNを超えるすべての摩擦は、3.77未満のpHで見られ、220mNを超えるすべての摩擦は、3.7未満のpHで見られた。したがって、生成物のpHは、3.7未満に、好ましくは3.8未満に低下させるべきではない。この線に沿って、図32において、主観的コーティング安定性の、4未満の値(0〜5の尺度で)のすべては、pH3.83未満で生じたものであり、そして3.5未満のすべての値はpH3.7以下で見られた。したがって、これらの低pH値は避けられるべきである。最後に、主観的コーティング安定性の値vs.pHが図33に示される。親水性コーティングは多くの態様で損傷され得るが、カテーテル基板上で通常、安定である。したがって、図33において、0〜5の安定性尺度で5未満に評価されるのは5つの試料にすぎなかった。5つの試料の1つは、pH4.5で見られたが、他の4つの試料は3.2未満のpH値を有していた。したがって、恐らくは5未満の安定評価を持つ試料が少数であるために、この例でpH3.7未満でコーティング破壊が始まるということはあきらかではないが、データは親水性コーティングの安定性が主に低pH値で害されたことを示唆した。しかし、一緒に、図29〜図33に示されるデータは、カテーテル上の、親水性コーティングの劣化を防止するために、膨潤性媒体のpHは、約3.7、さらに約3.8、を超えて保持されるべきであるとの圧倒する証拠を示した。
【0073】
例2:他の緩衝剤を有するPEG2000の試験
次のが、膨潤性媒体が男性用SpeediCath(登録商標)カテーテルとともに保存され、2×37.5kGyの照射量で電子線滅菌された。ついで、膨潤性媒体の浸透圧、pHおよびpH7.4への緩衝能が測定された。さらに、カテーテルの摩擦が測定された。
【0074】
【表7】
【0075】
検討
−試料9の浸透圧は滅菌後に非常に低い。現時点ではこれを説明できない。
【0076】
−馬尿酸およびマンデル酸試料(2および9)は、残りの試料よりも滅菌後に高いpHを与えた。したがって、特にこれらの緩衝剤は系のpHを3.7〜3.8の重要な値のほうへ低下するのを防止した。
【0077】
−馬尿酸は、他の試料よりも滅菌後に低い緩衝能を与えた。これは、使用者の痛みを小さくさせる。ギ酸、m−クロロ安息香酸およびマンデル酸の緩衝能は、馬尿酸よりも大きかったが、乳酸およびグルコール酸よりも小さかった。しかし、PVP試料(No.8)は、滅菌後のpHは特に低くはなかったが、最も高い緩衝能を有していた。したがって、5mM 緩衝剤+155mM NaCl+6% PEG2000は、160mM NaCl+6% PVP C−15よりも低い緩衝能を有する膨潤性媒体を与えた。同時に、PEG2000試料は、いずれも滅菌後に3.7〜3.8の低いpH(親水性コーティングを攻撃する)を有しておらず、おそらく長い保存寿命を示す。一緒に、PEG2000含有膨潤性媒体のこれらの特徴は、使用者に有益であることを示すべきである。
【0078】
例3:PEG2000およびPVP C−15を含む膨潤性媒体の汚染微生物数(抗菌作用)
4つの異なる実験室培養が異なる殺菌ろ過された代替溶液(pH3.95)のアリコートに添加された。ついで、試料20mLが、0日、1日、3日、7日、および14日に、膜ろ過法で汚染微生物数について分析された。接種された試料は室温に保存された。殺菌ペプトン水をおよびPVP水を用いる比較試験も実施された。
【0079】
【表8】
検討
−B.subtilis, E.coli およびPs.aeruginosaは、どの膨潤性媒体中でも長い間は生存しなかった。しかし、B.subtilisは、ペプトン水に関して急速に姿を消した。
−どの膨潤性媒体もAsp.niger.を殺菌しなかった。
−この実験は、混合後に、しかし電子線滅菌の前に、膨潤性媒体中で生存する、微生物の能力に関係し、その後でカウントは0であったことが強調されなければならない。しかし、PEG2000を含む膨潤性媒体は、PVP C−15を含む膨潤性媒体のように、製造中の汚染後には抗菌物質として作用したことが示された。
例4:PEG2000に基づく膨潤性媒体のインビトロ細胞毒性
材料および方法
材料
SpeediCath(登録商標) lot.no.28412 KMI PVP C-15
SpeediCath(登録商標) lot.no.28412 KMI PEG 2000
試料の調製
カテーテルの抽出物は、カテーテルを管のみを含む5cmの小片に切断することにより行なわれた。3つの小片が合計容積9mLの培養媒体(10%FCSを有するDMEMおよびPen/Strep)中で培養された(抽出比3mL/cm2に相当する)。抽出は、湿った雰囲気で24時間、37℃で実施された。その手順は無菌状態で実施された。
抽出時間の終わりに、抽出媒体が集められ、そのpHは、すべての試料について8.0であることが測定された。すべての抽出媒体は汚染の兆候がなく、清浄であった。抽出物は殺菌ろ過されなかった。
インビトロ細胞毒性−溶出分析
インビトロ細胞毒性分析が、USP25/ISO 10993-5基準(溶出試験)にしたがって行なわれた。簡単には、対数成長相中のマウス(murine)繊維芽細胞が、細胞密度1.5×105細胞/ウェルで、24ウェルのクラスタートレイ中で接種された。細胞は、2mL/ウェル成長媒体を添加され、95%湿潤インキュベーター(5%CO2)中で48時間、37℃で培養された。試験抽出物の適用前に、細胞は正常な形態を有し、融合に近いことが検査された。培養媒体は除去され、未希釈試料、および培養媒体中で1+3希釈された試料と置き換えられた。培養媒体は、対照として使用された。すべての培養は、重複して行なわれた。細胞は、インキュベーター中で48時間、37℃で培養された。培養期間後に、細胞は顕微鏡評価により分析され、形態変化が各培養についての生存細胞のおおよそのパーセンテージと同様に記録された。顕微鏡分析の前に、培養は生存細胞を視覚化するために0.1%Neutral Red solution で培養された。
【0080】
【表9】
【0081】
結果および結論
どの試料についても細胞毒性はみられなかった、すなわちすべての細胞は毒性の兆候がなく健全であった。結果のスキームは表5に示される。
【0082】
【表10】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と接触している間に滅菌される、親水性コーティングを含む医療器具であって、a)親水性ポリマー;およびb)カルボン酸、アミノ酸、アミノスルホン酸および無機酸からなる群より選ばれる、分離した緩衝剤、を含む医療器具。
【請求項2】
器具が親水性コーティングを有するカテーテルである請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
親水性コーティングがPVPコーティングである請求項1または2に記載の医療器具。
【請求項4】
滅菌が照射を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項5】
親水性ポリマーが緩衝能のない親水性ポリマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項6】
親水性ポリマーがpH4付近で緩衝能のない親水性ポリマーである請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項7】
分離した緩衝剤が2.7〜5の少なくとも1つのpKa値を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項8】
緩衝能が、pH4〜pH7.4で4mM未満である請求項5〜7のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項9】
水性液体と接触している親水性コーティングを含む医療器具からなる、滅菌されたセットであって、親水性コーティングは、a)親水性ポリマー;およびb)分離した緩衝剤を含み、そのセットはその液体と接触している間に照射を用いて滅菌されている、滅菌されたセット。
【請求項10】
器具が親水性コーティングを有するカテーテルである請求項9に記載の滅菌されたセット。
【請求項11】
親水性コーティングがPVPコーティングである請求項9または10に記載の滅菌されたセット。
【請求項12】
滅菌が照射を用いる請求項9〜11のいずれか1項に記載の滅菌されたセット。
【請求項13】
親水性ポリマーが緩衝能のない親水性ポリマーである請求項9〜12のいずれか1項に記載の滅菌されたセット。
【請求項14】
親水性ポリマーがpH4付近で緩衝能のない親水性ポリマーである請求項9〜13のいずれか1項に記載の滅菌されたセット。
【請求項15】
分離した緩衝剤が2.7〜5の少なくとも1つのpKa値を有する請求項9〜14のいずれか1項に記載の滅菌されたセット。
【請求項16】
緩衝能が、pH4〜pH7.4で4mM未満である請求項9〜15のいずれか1項に記載の滅菌されたセット。
【請求項17】
親水性コーティングを含む医療器具を照射を用いて滅菌する方法であって、該方法は医療器具を親水性コーティングを湿潤するための水性液体と接触させる段階を含み、その液体は親水性ポリマーの溶液および分離した緩衝剤を含み、十分な量の照射を用いて医療器具を滅菌する、滅菌する方法。
【請求項18】
器具が親水性コーティングを有するカテーテルである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
親水性コーティングがPVPコーティングである請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
親水性ポリマーが緩衝能のない親水性ポリマーである請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
親水性ポリマーがpH4付近で緩衝能のない親水性ポリマーである請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
分離した緩衝剤が2.7〜5の少なくとも1つのpKa値を有する請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
緩衝能が、pH4〜pH7.4で4mM未満である請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
液体と接触している間に滅菌される、親水性コーティングを含む医療器具であって、a)親水性ポリマー;およびb)カルボン酸、アミノ酸、アミノスルホン酸および無機酸からなる群より選ばれる、分離した緩衝剤、を含む医療器具。
【請求項2】
器具が親水性コーティングを有するカテーテルである請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
親水性コーティングがPVPコーティングである請求項1または2に記載の医療器具。
【請求項4】
滅菌が照射を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項5】
親水性ポリマーが緩衝能のない親水性ポリマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項6】
親水性ポリマーがpH4付近で緩衝能のない親水性ポリマーである請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項7】
分離した緩衝剤が2.7〜5の少なくとも1つのpKa値を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項8】
緩衝能が、pH4〜pH7.4で4mM未満である請求項5〜7のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項9】
水性液体と接触している親水性コーティングを含む医療器具からなる、滅菌されたセットであって、親水性コーティングは、a)親水性ポリマー;およびb)分離した緩衝剤を含み、そのセットはその液体と接触している間に照射を用いて滅菌されている、滅菌されたセット。
【請求項10】
器具が親水性コーティングを有するカテーテルである請求項9に記載の滅菌されたセット。
【請求項11】
親水性コーティングがPVPコーティングである請求項9または10に記載の滅菌されたセット。
【請求項12】
滅菌が照射を用いる請求項9〜11のいずれか1項に記載の滅菌されたセット。
【請求項13】
親水性ポリマーが緩衝能のない親水性ポリマーである請求項9〜12のいずれか1項に記載の滅菌されたセット。
【請求項14】
親水性ポリマーがpH4付近で緩衝能のない親水性ポリマーである請求項9〜13のいずれか1項に記載の滅菌されたセット。
【請求項15】
分離した緩衝剤が2.7〜5の少なくとも1つのpKa値を有する請求項9〜14のいずれか1項に記載の滅菌されたセット。
【請求項16】
緩衝能が、pH4〜pH7.4で4mM未満である請求項9〜15のいずれか1項に記載の滅菌されたセット。
【請求項17】
親水性コーティングを含む医療器具を照射を用いて滅菌する方法であって、該方法は医療器具を親水性コーティングを湿潤するための水性液体と接触させる段階を含み、その液体は親水性ポリマーの溶液および分離した緩衝剤を含み、十分な量の照射を用いて医療器具を滅菌する、滅菌する方法。
【請求項18】
器具が親水性コーティングを有するカテーテルである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
親水性コーティングがPVPコーティングである請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
親水性ポリマーが緩衝能のない親水性ポリマーである請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
親水性ポリマーがpH4付近で緩衝能のない親水性ポリマーである請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
分離した緩衝剤が2.7〜5の少なくとも1つのpKa値を有する請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
緩衝能が、pH4〜pH7.4で4mM未満である請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2011−524217(P2011−524217A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513877(P2011−513877)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050130
【国際公開番号】WO2010/003419
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050130
【国際公開番号】WO2010/003419
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】
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