説明

滅菌用包装袋

【課題】シール不良を確実に検出することができる滅菌用包装袋を提供する。
【解決手段】注射器等の滅菌処理が必要な医療用器具等の被包装体を包装するものであり、ガスバリア性を有する透明な柔軟性シート11と、ガス透過性及び菌バリア性を有する所定幅の滅菌シート13とを用いて、被包装体を包み込みながら製袋される。柔軟性シート11の幅方向の両端縁の内面が滅菌シート13の幅方向の両端縁の外面にヒートシールされていると共に、長手方向の両端部において、柔軟性シート11同士及び柔軟性シート11と滅菌シート13とがヒートシールされている。柔軟性シート11の幅方向の両端縁には、内面側に多数の斜線SLが一定間隔で印刷されたシール不良検出用表示12が施されており、柔軟性シート11の幅方向の端縁が部分的に内面側に折り込まれると、多数の斜線SLが、逆「く」字状の線に変化するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、注射器やカテーテルのように、滅菌処理が必要な医療用器具を包装する滅菌用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の滅菌用包装袋としては、例えば、図9に示すようなものがある。この滅菌用包装袋50は、同図に示すように、内面にシーラント層が積層された、ガスバリア性を有する柔軟性シート51と、ヒートシール性、ガス透過性及び菌バリア性を有する所定幅の滅菌シート52とから構成されており、図10に示すように、医療用器具等の被包装体Gを収容した状態で、柔軟性シート51の両側縁の内面が滅菌シート52の両側縁の外面にヒートシールされていると共に、両端部において、柔軟性シート51同士及び柔軟性シート51と滅菌シート52とがヒートシールされている。なお、図9における網掛け表示領域がヒートシール部分である。
【0003】
従って、この滅菌用包装袋50によって被包装体である医療用器具等を包装した状態で、過酸化水素ガス等を用いたガス滅菌や蒸気滅菌等の滅菌処理を施すと、滅菌シート52を通って滅菌ガス等が袋内に侵入し、侵入した滅菌ガス等によって袋内が滅菌処理されるようになっている。なお、滅菌シート52は、菌バリア性を有しているので、医療用器具等を包装した後に菌が袋内に侵入することはなく、袋内が滅菌処理された状態に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−299717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、柔軟性シート51の両側縁の内面を滅菌シート52の両側縁の外面にヒートシールする際、何らかの要因で、図11に示すように、柔軟性シート51の側縁が部分的に内面側に折れ込んでしまうことがあるが、そのようにして折れ込んだ柔軟性シート51の側縁部分は、ヒートシール性を有していない外面が滅菌シート52の外面に接触することになるので、その部分はヒートシールされることがなく、袋全体として菌バリア性を確保することができなくなる。
【0006】
従って、こういったシール不良が発生した滅菌用包装袋に医療器具等の被包装体が収容された不良品は、目視や撮像手段を有する検査器等で検出して分別除去する必要があるが、上述したガスバリア性を有する柔軟性シート51は、通常、透明であり、しかも、ヒートシール性を有していない柔軟性シート51の外面と滅菌シート52の外面とは熱によって擬似接着するので、シール不良を検出しにくく、不良品を確実に分別除去することができないといった問題がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、シール不良を確実に検出することができる滅菌用包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、ガスバリア性を有する柔軟性シートに、ガス透過性及び菌バリア性を有する滅菌シートを部分的に接合してなる包材によって形成された滅菌用包装袋であって、前記柔軟性シートの端縁内面が前記滅菌シートの外面にヒートシールされており、前記滅菌紙にヒートシールされる前記柔軟性シートの端縁部分には、その端縁部分が折れ込んだときに異なるデザインに変化するシール不良検出用表示を施したことを特徴とする滅菌用包装袋を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、請求項1に係る発明の滅菌用包装袋は、滅菌シートにヒートシールされる柔軟性シートの端縁部分に、その端縁部分が折れ込んだときに異なるデザインに変化するシール不良検出用表示を施しているので、柔軟性シートの端縁部分のデザインの変化を目視または検出器等によって検出することで、シール不良が発生しているか否かを確実に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係る滅菌用包装袋の一実施形態を示す正面図である。
【図2】(a)は同上の滅菌用包装袋における柔軟性シートと滅菌シートとのヒートシール部分を示す部分拡大正面図、(b)は同上の滅菌用包装袋における柔軟性シートと滅菌シートとのヒートシール部分を示す部分拡大断面図である。
【図3】同上の柔軟性シートを示す断面図である。
【図4】(a)は同上の滅菌用包装袋における柔軟性シートの幅方向の一方の端縁が部分的に内面側に折り込まれた状態を示す部分拡大正面図、(b)は同上の滅菌用包装袋における柔軟性シートの幅方向の一方の端縁が部分的に内面側に折り込まれた状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】他の実施形態である滅菌用包装袋における柔軟性シートと滅菌シートとのヒートシール部分を示す部分拡大正面図である。
【図6】同上の滅菌用包装袋における柔軟性シートの幅方向の一方の端縁が部分的に内面側に折り込まれた状態を示す部分拡大正面図である。
【図7】他の実施形態である滅菌用包装袋における柔軟性シートと滅菌シートとのヒートシール部分を示す部分拡大正面図である。
【図8】同上の滅菌用包装袋における柔軟性シートの幅方向の一方の端縁が部分的に内面側に折り込まれた状態を示す部分拡大正面図である。
【図9】従来の滅菌用包装袋を示す正面図である。
【図10】同上の滅菌用包装袋を示す断面図である。
【図11】同上の滅菌用包装袋における柔軟性シートと滅菌シートとのヒートシール部分を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、この発明に係る滅菌用包装袋1を示している。この滅菌用包装袋1は、注射器、カテーテル等の滅菌処理が必要な医療用器具等(以下、被包装体と言う。)を包装するものであり、ピロー包装機により、被包装体を包材によって包み込みながら製袋される。
【0012】
前記包材は、図1及び図2(a)、(b)に示すように、ガスバリア性を有する透明な柔軟性シート11と、ガス透過性及び菌バリア性を有する所定幅の滅菌シート13とから構成されており、柔軟性シート11の幅方向の両端縁の内面が滅菌シート13の幅方向の両端縁の外面にヒートシールされていると共に、長手方向の両端部において、柔軟性シート11同士及び柔軟性シート11と滅菌シート13とがヒートシールされている。なお、図1における網掛け表示部分がヒートシール部分を示している。
【0013】
前記柔軟性シート11は、図3に示すように、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム等の単層フィルム等からなる厚さ10〜30μm程度の基材層11aと、この基材層11aの内面側に積層されたエチレン・ビニルアルコールコポリマ(EVOH)からなる単層フィルムやEVOHとポリアミドとを共押出しした2層構造または3層構造のラミネートフィルムからなるガスバリア層11bと、このガスバリア層11bの内面側に積層された未延伸ポリエチレンフィルムや未延伸ポリプロピレンフィルム等からなる厚さ30〜150μm程度のシーラント層11cとから構成されており、図2(b)に示すように、幅方向の両端縁には、内面側に多数の斜線SLが一定間隔で印刷されたシール不良検出用表示12が施されている。
【0014】
前記滅菌シート13は、ガス透過性及び菌バリア性を有していれば、その材質等にも特に限定されず、紙製、樹脂製等、種々市販のものを使用することができる。具体的には、例えば、高圧で紡糸された、0.5〜10ミクロンの高密度ポリエチレン連続性極細長繊維をランダムに積層した後、これを熱と圧力だけでシート状にしたデュポン社製の タイベック(登録商標)等が挙げられる。
【0015】
以上のように、この滅菌用包装袋1は、滅菌シート13にヒートシールされる透明の柔軟性シート11の端縁部分に、一定間隔で印刷された多数の斜線SLからなるシール不良検出用表示12が施されているので、柔軟性シート11の幅方向の両側縁の内面を滅菌シート13の幅方向の両端縁の外面にヒートシールする際、何らかの要因で、図4(a)、(b)に示すように、柔軟性シート11の幅方向の一方の端縁が部分的に内面側に折れ込んだ場合、柔軟性シート11の端縁は、ヒートシール性に乏しい外面が滅菌シート13の外面に接触することになるので、その部分はヒートシールされることがなく、袋全体として菌バリア性を確保することができなくなる。
【0016】
しかしながら、同図(b)に示すように、柔軟性シート11の幅方向の一方の端縁が部分的に内面側に折り込まれると、同図(a)に示すように、シール不良検出用表示12を形成している多数の斜線SLが、逆「く」字状の線CLに変化することになるので、このシール不良検出用表示12のデザインの変化を目視または検出器等によって検出することで、シール不良が発生しているか否かを確実に把握することができ、シール不良が発生している滅菌用包装袋1を確実に分別除去することができる。
【0017】
図5及び図6はシール不良検出用表示の変形例を示している。図5に示すように、柔軟性シート11における幅方向の両端縁の内面には、その先端に、赤色または黒色のように、白色に対して明確に区別することができる色彩の直線Lを印刷した後、その直線Lを覆うように所定幅で白色のベタ印刷BWを施したシール不良検出用表示12Aを採用すると、柔軟性シート11の幅方向の一方の端縁が部分的に内面側に折り込まれると、図6に示すように、その折り込まれた部分には、直線Lが全く表示されない領域ができるので、この直線Lの有無を目視または検出器等によって検出することで、シール不良が発生しているか否かを確実に把握することができ、シール不良が発生している滅菌用包装袋1を確実に分別除去することができる。
【0018】
また、図7に示すシール不良検出用表示12Bのように、柔軟性シート11の幅方向に延びる多数の直線HLを一定間隔で印刷した場合も、柔軟性シート11の幅方向の一方の端縁が部分的に内面側に折り込まれると、図8に示すように、デザインが変化することになるが、直線HLの長さが短くなるだけで、デザインが顕著に変化するわけではないので、上述した各実施形態のように、線の形状が変化したり、線が消えたりするといった大きな変化が起こるようなデザインにしておくことが望ましい。
【0019】
なお、上述した各実施形態では、斜線SLや直線Lを印刷したシール不良検出用表示12、12Aを採用しているが、これに限定されるものではなく、柔軟性シート11の幅方向の端縁が内面側に折り込まれることによって、異なるデザインに変化するものであれば、線以外に文字配列やイラスト等、種々のデザインを採用することができる。このとき、斜線SLのようなシール不良検出用表示12の場合は、折り込まれた表示部分が外面側から確認することができるように柔軟性シート11が透明であることが好ましく、直線Lのようなシール不良検出用表示12Aの場合は、直線Lを目立たせるような色を背景色とするベタ印刷を柔軟性シート11に施しておくか、或いは不透明のフィルムや金属箔等を柔軟性シート11の一層に設けることにより、柔軟性シート11を不透明にしておくことが好ましい。
【0020】
また、上述した各実施形態では、3方シールタイプのピロー包装袋について説明したが、これに限定されるものではなく、平袋、サイドガセット袋、底ガセットを備える自立袋等についても本発明を適用することができる。
【0021】
また、上述した各実施形態では、滅菌シート13を袋の長手方向に配設したが、これに限定されるものではなく、袋の幅方向に配設することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、注射器やカテーテルのように、滅菌処理が必要な医療用器具を包装する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 滅菌用包装袋
11 柔軟性シート
11a 基材層
11b ガスバリア層
11c シーラント層
12、12A、12B シール不良検出用表示
13 滅菌シート
SL 斜線
CL 逆「く」字状の線
L、HL 直線
BW 白色のベタ印刷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性を有する柔軟性シートに、ガス透過性及び菌バリア性を有する滅菌シートを部分的に接合してなる包材によって形成された滅菌用包装袋であって、
前記柔軟性シートの端縁内面が前記滅菌シートの外面にヒートシールされており、
前記滅菌紙にヒートシールされる前記柔軟性シートの端縁部分には、その端縁部分が折れ込んだときに異なるデザインに変化するシール不良検出用表示を施したことを特徴とする滅菌用包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−196318(P2012−196318A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62515(P2011−62515)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】