説明

滅菌装置。

【課題】外部表示灯を用いずに、操作者に滅菌状況を報知することができる仕組みを提供すること。
【解決手段】滅菌室の内部を照らす照明と状態に応じて照明の照明色を変更する変更部と照明色の変更が滅菌室の外部から確認できる第1のガラス窓とを備える滅菌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
滅菌装置を使用する操作者は滅菌処理が完了したかを知る必要がある。
滅菌器を操作するものが滅菌状況を確認する技術としては以下のような技術が開示されている。
先行文献1においては、滅菌容器内の変化を検知し、滅菌処理中の検知部の変化を観察自在とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−178902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術では、外部表示灯を設置しなければならず、外部表示灯用に余分なスペース確保に問題があるといった課題がある。
本願発明は、外部表示灯を用いずに、操作者に滅菌状況を報知することができる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、滅菌室の内部を照らす照明と、状態に応じて前記照明の照明色を変更する変更部と、前記照明色の変更が前記滅菌室の外部から確認できる第1のガラス窓と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、前記照明を大気圧で格納する格納室を更に備え、前記照明は、前記滅菌室の内部と前記格納室の境界にある第2のガラス窓を介して前記滅菌室の内部を照らすことを特徴とする。
また、前記滅菌装置は滅菌室を真空にして滅菌すること。
また、前記第1のガラス窓は真空用の耐圧ガラス窓であることを特徴とする。
また、前記第2のガラス窓は真空用の耐圧ガラス窓であることを特徴とする。
また、前記滅菌装置は過酸化水素ガスの滅菌装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明により、外部表示灯を用いずに、操作者に滅菌状況を報知することができる仕組みを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】滅菌装置のハードウエア構成を示す図である。
【図2】滅菌装置のハードウエア構成を示す図である。
【図3】滅菌装置のハードウエア構成を示す図である。
【図4】滅菌方法のフローチャートを示す図である。
【図5】滅菌処理中の滅菌室内部の圧力の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を説明する。
図1は、本願発明の滅菌装置のハードウエア構成を示す図である。
10は被滅菌物である。好ましくは内視鏡(長尺医療用具)である。内視鏡の内部には内腔がある。
11は滅菌室である。
【0010】
12は滅菌室ドア(扉)である。滅菌室ドア(扉)は正方形または長方形の面(パネル)でできており、滅菌室に対向している面が滅菌室ドア(扉)12の内壁である。滅菌室に対向している面の裏側の面が滅菌室ドア(扉)12の外壁である。
60は圧力センサーであり、滅菌室11の内部の圧力を測定する。
107は支持棒である。滅菌室ドア12と回転部108を連結している。
【0011】
108は滅菌室ドア12を上下(昇降)移動させるための回転部である。図示しない回転部制御部により自動で滅菌室ドア12を上下(昇降)移動させ開閉させることが可能となる。回転部108はモータ制御で、滅菌室ドア12を上下(昇降)移動させ開閉させる。
滅菌室ドア12が開いた場合には、閉じた場合よりも低い位置になる。
【0012】
201はガラス窓(第1のガラス窓)である。真空度が20パスカル程度まで耐えられる真空用の耐圧ガラス窓であり、滅菌室11の内部と滅菌室11の外部(滅菌装置700の外)との境界に配置するように、滅菌室ドア12の一部に組み込まれている。ガラス窓201は滅菌室11の外部から内部が観察できようにビューポートとして機能する。
【0013】
滅菌室11は、滅菌室11の内部で圧力が真空圧まで変動する圧力容器であるため、ビューポート(窓)を滅菌室11の一部または滅菌室ドア12の一部に設置することは困難である。
滅菌処理は30分から場合によっては20時間行われることがあり、正常に処理をされていれば滅菌処理の途中で滅菌室ドア12を開けることはない。
逆に、長時間にわたって滅菌処理されるので、処理に異常があれば滅菌室ドア12を早く開けて、滅菌状態を確認する必要がある。
ビューポート201により滅菌室11の内部を確認できるとともに、照明色の変更により滅菌処理の状態を把握(確認)することができるという効果を奏する。
【0014】
501はガラス窓(第2のガラス窓)である。真空度が20パスカル程度まで耐えられる真空用の耐圧ガラス窓であり、滅菌室11の内部と格納室503との境界に配置するように、滅菌室11の一部に組み込まれている。
尚、ガラス窓501の大きさは、照明の大きさ(面積)と同じ大きさであれば十分である。
502は照明である。
薄型のLED照明であることが好ましい。また照明の明るさ(照度)は、被滅菌物10が確認できる程度に十分に明るいことが望ましい。
A、B、Cは照明色がそれぞれ異なる同じ薄型のLED照明である。例えばAは白色、Bは赤色、Cは緑色の薄型のLED照明である。
照明502が点灯する一例としては、
Aの白色は滅菌処理の待機(READY)中に点灯する。(状態1)
Bの赤色は滅菌処理中に異常(ERROR)が発生してした時に点灯する。(状態2)
Cの緑色は滅菌処理が正常に実行(PROCESS)されているに点灯する。(状態3)
照明502により、滅菌室11の内部を照らすとともに操作者に滅菌処理の異常を報知することができるという効果を奏する。
503は照明502を大気圧雰囲気で格納する格納室である。尚、照明502を配置するための格納室は空間及びスペースであってもよい。
504は変更部(切替制御部)である。
状態に応じて照明502の照明色を変更する。すなわち状態に応じて点灯する適切な照明502を選択し切り替える。
505は滅菌処理中の異常を検知する異常検出部である。
異常検出部が検出する状態2である異常の例としては、
滅菌室11を真空にする(排気する)ことができないといったような圧力の異常に関するもの(エラー種別1)
滅菌室11に滅菌ガスを導入することができないといったような滅菌ガスの異常に関するもの(エラー種別2)
がある。
その他、滅菌室11の温度に関する異常であってもよい。
図2を説明する。
図2は、本願発明の滅菌装置700のハードウエア構成を示す図である。
図2は、滅菌装置700の正面(滅菌装置の外側)から見た図である。
201はガラス窓(第1のガラス窓)である。
12は滅菌室ドア(扉)である。
図3を説明する。
図3は、本願発明の滅菌装置のハードウエア構成を示す図である。
図3は、滅菌装置700を横から見た図の断面図である。
10は被滅菌物であり、滅菌室内部に収納され滅菌処理される医療用器具である。被滅菌物には複雑な形状の内腔があるものとする。
【0015】
11は滅菌室(チャンバー)であり、医療用器具を滅菌処理できる体積が76リットルの筐体である。滅菌室内部の圧力は大気圧から真空圧までの圧力を維持することができる。
滅菌室内部の温度は、滅菌処理中において、50℃に維持されている。
12は滅菌室のドアであり、滅菌室に被滅菌物10や、被滅菌物を収納した被滅菌物10を出し入れするドアである。
21は真空ポンプであり、滅菌室内部の圧力を真空圧にすることができる。
40は気化弁であり、気化室と滅菌室11との導通を開閉できる弁である。
30は気化室であり、過酸化水素溶液供給装置から供給された過酸化水素溶液を気化する。
22は大気開放弁であり、滅菌室と外気(大気)との導通を開閉できる弁である。
なお、滅菌室11に供給されるガスは大気でなくてもよく、エアーでもよい。
50は過酸化水素溶液供給装置であり、気化室に過酸化水素の液体を供給する。
過酸化水素溶液供給装置が供給する過酸化水素の溶液の濃度は59wt%と98wt%との間の濃度である。
60は圧力センサーであり、滅菌室11の内部の圧力を測定する。
<第1の実施例>
図4を説明する。
図4は、本願発明の滅菌装置による、被滅菌物の内腔を滅菌する滅菌方法(滅菌処理のステップ)の実施例である。
ステップS101では、大気開放弁を閉じ、真空ポンプを作動することで、滅菌室内部を真空圧に維持する(予備真空工程)。
【0016】
ステップS102では、ステップS103が予め設定されている所定の回数(4回程度)実行されたかを判定する(判断工程)。つまりステップS103からステップS106まで何回繰り返されたかを判定する。所定の回数繰り返された場合は、ステップS107の換気工程に進む。
【0017】
ステップS103では、真空ポンプを停止し、気化弁を開けることで気化室において予め準備した過酸化水素の蒸気が、滅菌室内部に供給され、過酸化水素の蒸気が滅菌室内部に拡散する(過酸化水素拡散工程)。拡散時間は予め設定された所定の時間(60秒から480秒までの間)であり、拡散時間の間、滅菌室内部の圧力は上昇し、所定の時間になると所定の圧力であるP1(第1の圧力)に達する。またステップS103では大気開放弁は閉まったままである。図5の301から302までがステップS103に該当する。
【0018】
ステップS104では、大気開放弁を開けることで滅菌室外部からガス(大気)が、滅菌室内部に供給され、過酸化水素の蒸気を被滅菌物の内腔に導入する。導入時間は予め設定された所定の時間(5秒から10秒までの間)であり、導入時間の間、滅菌室内部の圧力は急激に上昇し、所定の時間で所定の圧力であるP2(第2の圧力)に達する。またステップS104では真空ポンプは停止したままである。図5の302から303までがステップS104に該当する。
【0019】
ここでは、過酸化水素の蒸気を内腔の深部に導入するととともに、内腔の深部に導入した過酸化水素の蒸気を一旦液体に凝結させる(過酸化水素凝結工程)ことが重要であり、蒸気を液体に凝結させるためには滅菌室の圧力を短時間で、大気圧まで急激に上昇させる必要がある。
【0020】
この急激な上昇とは、76リットルの容積で1500パスカルであった滅菌室内部の圧力を5秒から10秒の短時間で、大気圧(P2)に達する所定の圧力上昇の速度にて滅菌室内部に大気を急激に供給することである。
その他ここでは、気化室で過酸化水素の蒸気を準備するために気化弁は閉じる。
ステップS105では、滅菌室内部の圧力を測定する圧力センサーにより、所定の圧力である大気圧(P2)に達したかを判断する。
【0021】
ステップS106では、大気圧(P2)に達した場合には、大気開放弁を閉じ、真空ポンプを作動して大気圧である滅菌室内部を排気する。滅菌室内部排気の初期過程では、滅菌室内部の圧力の低下(減圧)に伴って、ステップS104にて、被滅菌物の内腔で凝結し、被滅菌物の内腔を滅菌した過酸化水素の液体は被滅菌物の内腔で再び気化(蒸気になる)する(過酸化水素気化工程)ことになる。
【0022】
本願発明では、導入したガスにより、一旦大気圧で被滅菌物の内腔で凝結した過酸化水素の液体が、減圧により過酸化水素の蒸気に再度気化する瞬間が、滅菌効果が最も高いと考えており、この高い滅菌効果によりステップS104において内腔の深部にて一旦凝結させた過酸化水素の液体を一定の期間残留させて高い滅菌効果を得るのではなく、一旦凝結させた過酸化水素の液体を一定の期間残留させなくてもよいので、直ちにステップS106の真空工程を開始することができる。
【0023】
つまり一定の時間、過酸化水素の蒸気や液体を、被滅菌物の内腔に残留させて、滅菌効果を高めることではなく、凝結及び気化といった過酸化水素の状態変化を滅菌室内部の急激な圧力変化を利用して実行することで、瞬間的に高い滅菌効果を得ることが可能となる。
【0024】
すなわち、本願発明によれば、被滅菌物の内腔に、過酸化水素の蒸気や液体を内腔の深部に一定の期間を残留させて滅菌効果を高める必要がなくなり、短時間で、真空工程を開始することができるという効果を奏する。
【0025】
初期過程を含んだ真空時間は予め設定された所定の時間であり、真空時間の間、滅菌室内部の圧力は徐々に減少し、所定の時間になると真空圧であるP0に達する。図5の303から304までがステップS106に該当する(真空工程)。
【0026】
真空ポンプを作動することで、大気圧である滅菌室内部を排気する。ステップS104にて液体に凝結した、滅菌室内部で被滅菌物の表面を滅菌した過酸化水素の液と被滅菌物の内腔を滅菌した過酸化水素の液及び、ステップS106にて再度気化した、滅菌室内部で被滅菌物の表面を滅菌した過酸化水素の蒸気と被滅菌物の被滅菌物の内腔を滅菌した過酸化水素の蒸気を除去(回収)することができる。
ステップS107では、滅菌室内部を換気する(換気工程)。
滅菌処理が終了する。
図5を説明する。
図5は、本願発明の滅菌装置による、被滅菌物の内腔を滅菌する滅菌処理中に滅菌室内部の圧力の時間変化<第1の実施例>を示した図である。
【0027】
P0の圧力は、大気開放弁と気化弁を閉め、滅菌室内部を真空ポンプで真空引きした後の圧力であり、20パスカルと100パスカルとの間であり真空圧である。
【0028】
P1の圧力は、過酸化水素の蒸気が滅菌室内部に拡散した後の圧力であり、1000パスカルと4000パスカル(好ましくは1500パスカル)との間である。
P2の圧力は、滅菌室内部にガス(大気)を供給し、過酸化水素の蒸気が内腔で凝結した後の圧力であり、大気圧である。
301はステップS103の過酸化水素拡散工程を開始する前の圧力(P0)である。
302はステップS103の過酸化水素拡散工程が終了した時の圧力(P1)である。
302はステップS104の過酸化水素凝結工程を開始する前の圧力(P1)である。
303はステップS104の過酸化水素凝結工程が終了した時の圧力(大気圧)である。
303はステップS106の過酸化水素気化工程を開始する前の圧力(大気圧)である。
304はステップS106の真空工程が終了した時の圧力(P0)である。
305はステップS107の換気工程を開始する前の圧力(P0)である。
【符号の説明】
【0029】
10 被滅菌物(内視鏡)
11 滅菌室
12 滅菌室ドア
201 ビューポート(ガラス窓)
502 照明
504 変更部
700 滅菌装置(過酸化水素ガス滅菌装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌室の内部を照らす照明と、
状態に応じて前記照明の照明色を変更する変更部と、
前記照明色の変更が前記滅菌室の外部から確認できる第1のガラス窓と、
を備えることを特徴とする滅菌装置。
【請求項2】
前記照明を大気圧で格納する格納室を更に備え、
前記照明は、前記滅菌室の内部と前記格納室の境界にある第2のガラス窓を介して
前記滅菌室の内部を照らすことを特徴とする請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項3】
前記滅菌装置は滅菌室を真空にして滅菌することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の滅菌装置。
【請求項4】
前記第1のガラス窓は真空用の耐圧ガラス窓であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の滅菌装置。
【請求項5】
前記第2のガラス窓は真空用の耐圧ガラス窓であることを特徴とする請求項2に記載の滅菌装置。
【請求項6】
前記滅菌装置は過酸化水素ガス滅菌装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の滅菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−81559(P2013−81559A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222380(P2011−222380)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(390002761)キヤノンマーケティングジャパン株式会社 (656)
【出願人】(390010582)株式会社エルクエスト (33)
【出願人】(392022064)キヤノンライフケアソリューションズ株式会社 (25)
【Fターム(参考)】