説明

滅菌装置

【課題】滅菌ガスにより処理室(2)内の滅菌処理を行う滅菌装置(1)において、滅菌性能の安定性を確保した上で処理効率を向上させる。
【解決手段】滅菌側循環通路(32)において、主通路(34)の一部である拡散用通路(34a)と過酸化水素供給通路(33)とを並列にし、拡散用通路(34a)側の風量と過酸化水素供給通路(33)側の風量の比率が10:1程度になるように定める。そして、滅菌ガス供給用通路(33)からの滅菌ガスを、その10倍の風量の拡散用通路(34a)のガスと共に処理室(2)へ流入させることで、処理室(2)内において滅菌ガスを広範囲に拡散しやくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌ガスにより処理室内の滅菌処理を行う滅菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の滅菌装置としては、密閉可能な処理室(例えば医薬品製造室)に、該処理室の気体を吸引する真空ポンプが設けられた気体吸引通路と、滅菌ガス発生器が設けられた滅菌ガス供給通路と、処理室内に無菌空気を供給する空気供給通路と、処理室内の気体を循環させながら触媒で滅菌ガスを分解する気体循環通路とが接続された装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の滅菌装置では、まず真空ポンプを起動して処理室を真空状態にした後、滅菌ガスである過酸化水素を処理室内に供給して滅菌処理を行う。次に、空気供給通路から処理室に無菌空気を導入し、過酸化水素を処理室内に拡散させる。そして、真空ポンプによる吸引工程、過酸化水素の供給工程、及び無菌空気の導入工程を数回繰り返して処理室の滅菌が終了すると、処理室から過酸化水素を除去する工程を行う。この工程では、気体循環通路の触媒により過酸化水素を分解しながら処理室の気体を循環させる。こうすることにより、処理室内の過酸化水素濃度を下げるようにしている。
【特許文献1】特開平10−328276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の滅菌装置では、滅菌ガスが処理室へ流入する時の風量が、滅菌ガス発生器での滅菌ガスの発生量に対応した風量になるので、比較的小さくなってしまい、処理室へ流入した滅菌ガスが処理室内で拡散しにくくなっていた。そして、滅菌ガスが拡散しにくい状態では、滅菌ガスが処理室の隅々までゆき渡りにくく、処理室における滅菌ガスの下限濃度を確保することが難しいので、滅菌性能のばらつきや不確実さといった問題が生じる。このため、特許文献1のように滅菌ガスを拡散させるために処理室に無菌空気を導入する工程を行ったり、処理室へ供給する高濃度の滅菌ガスの濃度をさらに高くするなどの対応策が必要となっており、滅菌装置の処理効率を低下させる要因になっていた。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、滅菌ガスにより処理室内の滅菌処理を行う滅菌装置において、滅菌性能の安定性を確保した上で処理効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、滅菌ガスにより処理室(2)内の滅菌処理を行う滅菌装置(1)を前提としている。そして、この滅菌装置(1)は、滅菌ガスを発生させる滅菌ガス発生器(31)と、吸入口と吹出口とが共に上記処理室に接続された循環通路(32)とを備え、上記循環通路(32)の一部が、上記滅菌ガス発生器(31)が設けられた滅菌ガス供給用通路(33)と滅菌ガスを拡散させるための拡散用通路(34a)との並列になっていることを特徴としている。
【0007】
この第1の発明では、循環通路(32)の一部において滅菌ガス供給用通路(33)と拡散用通路(34a)とが並列になっているので、循環通路(32)の吹出口から処理室(2)への風量が滅菌ガス供給用通路(33)と拡散用通路(34a)との合計風量になる。すなわち、滅菌ガス供給用通路(33)の風量が小さくても、拡散用通路(34a)の風量が加わるので、滅菌ガス発生器(31)で発生した滅菌ガスは比較的大きな風量で処理室(2)へ流入する。従って、従来のように滅菌ガスが小さな風量で処理室(2)へ流入する場合に比べて、処理室(2)へ流入する滅菌ガスは広範囲に拡散しやすくなるし、処理室(2)へ既に流入している滅菌ガスも攪拌されて拡散しやくすなる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、上記循環通路(32)は、上記拡散用通路(34a)の風量が上記滅菌ガス供給用通路(33)の風量よりも多くなるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
この第2の発明では、滅菌ガス供給用通路(33)よりも拡散用通路(34a)の方が風量が多くなるように循環通路(32)を構成している。従って、滅菌ガス供給用通路(33)の風量が小さくても、それ以上の風量が拡散用通路(34a)から加わるので、滅菌ガス発生器(31)で発生した滅菌ガスは、滅菌ガス供給用通路(33)の少なくとも2倍以上の風量で処理室(2)へ流入する。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、滅菌ガスを分解する滅菌ガス分解器(36)と、上記滅菌ガス分解器(36)が設けられ、上記循環通路(32)において上記滅菌ガス供給用通路(33)と並列に接続されている滅菌ガス分解用通路(35)とを備え、吸入口から上記循環通路(32)へ流入して処理室(2)へ戻る滅菌ガスの流通経路として、上記滅菌ガス分解用通路(35)と滅菌ガス供給用通路(33)の何れかを選択可能に構成されていることを特徴としている。
【0011】
この第3の発明では、処理室(2)内の滅菌ガスの濃度を低下させる際に、吸入口から循環通路(32)へ流入した処理室(2)内の滅菌ガスが滅菌ガス分解用通路(35)を流通し、滅菌ガス分解器(36)で分解されたガスが循環通路(32)の吹出口から処理室(2)へ戻る。循環通路(32)は、滅菌ガス供給用通路(33)と拡散用通路(34a)との並列部分の合計風量が流通可能に構成されている。従って、滅菌ガスを分解する際も、循環通路(32)での処理室(2)内のガスの循環を比較的大きな風量で行うことができる。
【0012】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、上記循環通路(32)は、複数の処理室(2a,2b,2c)を並列に接続しており、上記複数の処理室(2a,2b,2c)を選択的に滅菌処理可能に構成されていることを特徴としている。
【0013】
この第4の発明では、循環通路(32)において並列に接続された複数の処理室(2a,2b,2c)から滅菌処理が必要な処理室(2)を選択して、その処理室(2)のみの滅菌処理を行うことができる。この滅菌装置(1)では、上述したように、処理室(2)へ比較的大きな風量で滅菌ガスを供給することができる。
【0014】
第5の発明は、第1乃至第4の何れか1つの発明において、上記滅菌ガス発生器(31)が、上記滅菌ガスとして過酸化水素を含むガスを発生させることを特徴としている。
【0015】
この第5の発明では、過酸化水素を含むガスを用いて処理室(2)内の滅菌処理を行う。この種の滅菌ガスは、時間の経過と共に自然分解するし、濃度が高いほど不安定で自然分解しやすい。従って、従来のように、滅菌ガスを拡散させる工程を行って滅菌時間が長くなる場合や、供給する滅菌ガスの濃度をさらに高くする場合は、自然分解してしまう滅菌ガスの量が多くなる。一方、この第5の発明では、比較的大きな風量で滅菌ガスを処理室(2)へ流入させて処理室(2)内において広範囲に拡散させることができるので、滅菌ガスを拡散させる工程を行う必要や、処理室(2)へ供給する滅菌ガスの濃度をさらに高くする必要がない。よって、従来に比べて自然分解する滅菌ガスの量を減少させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、滅菌ガス供給用通路(33)からの滅菌ガスを拡散用通路(34a)のガスと共に処理室(2)へ流入させることで、比較的大きな風量で滅菌ガスを処理室(2)へ流入させて処理室(2)内において広範囲に拡散させることができる。従って、滅菌ガスは処理室(2)の隅々までゆき渡りやすいので、従来のように、滅菌ガスの導入後に無菌空気を処理室(2)に導入したり、滅菌ガスが処理室(2)内で拡散しにくいことを考慮して処理室(2)へ供給する滅菌ガスの濃度をさらに高くしたりする必要がない。つまり、滅菌ガスを処理室(2)に導入する工程のみで、安定した滅菌性能が得られるようになる。よって、滅菌性能の安定性を確保した上で処理効率を向上させることができる。
【0017】
上記第2の発明によれば、滅菌ガス供給用通路(33)よりも拡散用通路(34a)の方が風量が多くなるように循環通路(32)を構成し、滅菌ガス発生器(31)で発生した滅菌ガスが、滅菌ガス供給用通路(33)の少なくとも2倍以上の風量で処理室(2)へ流入するようにしている。従って、滅菌ガスが処理室(2)の隅々までゆき渡りやくなるので、滅菌ガスを処理室(2)に導入する工程のみで安定した滅菌性能が得られるようになる。よって、滅菌性能の安定性を確保した上で処理効率を向上させることができる。
【0018】
上記第3の発明によれば、処理室(2)内の滅菌ガスの濃度を低下させる際に、循環通路(32)での処理室(2)内のガスの循環を比較的大きな風量で行うことができる。従って、処理室(2)内の滅菌ガスの濃度を比較的短時間で低下させることができるので、滅菌ガスの希釈時間の短縮化を図ることができる。
【0019】
上記第4の発明によれば、複数の処理室(2)を選択的に滅菌処理可能な滅菌装置(1)が、比較的大きな風量で滅菌ガスを処理室(2)へ供給することができるようになっている。従って、滅菌処理が必要な処理室(2)の滅菌処理を短時間で確実に行うことができる。
【0020】
上記第5の発明によれば、滅菌ガスを拡散させる工程を行う必要や、処理室(2)へ供給する滅菌ガスの濃度をさらに高くする必要がないので、従来に比べて自然分解する滅菌ガスの量を減少させることができる。従って、この第5の発明のように、過酸化水素を含むガスを滅菌ガスとして用いる場合は、従来よりも発生させる滅菌ガスの濃度を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
−全体の構成−
この実施形態は、医薬品等の製造室を処理室として、該処理室内の空調と滅菌処理とを行う滅菌装置に関するものである。この実施形態の滅菌装置(1)の配管系統図を図1に示す。この滅菌装置(1)は、3部屋の処理室(2a,2b,2c)を対象とするもので、空調系統側回路(10)と滅菌系統側回路(30)とを備えている。
【0023】
この滅菌装置(1)の空調系統側回路(10)は、外気の温度と湿度を調節するとともに、各処理室(2)に給気通路(11)と還気通路(12)を介して接続された外気処理空調機(13)を備えている。給気通路(11)から処理室(2)への空気の入口と、処理室(2)から還気通路(12)への空気の出口には、フィルタ機構としてHEPAフィルタ(high efficiency particulate air filter)(14)が設けられている。
【0024】
還気通路(12)と給気通路(11)との間には戻し通路(15)が接続されており、給気通路(11)の一部と還気通路(12)の一部と戻し通路(15)とにより、処理室(2)の空気が循環する空調側循環通路(16)が構成されている。この空調側循環通路(16)には、給気側に空気の温度調節のみを行う顕熱空調機(17)が設けられ、排気側に空気を循環させる循環ファン(18)が設けられている。また、戻し通路(15)と給気通路(11)の合流箇所にはミキシングチャンバ(19)が設けられている。
【0025】
滅菌系統側回路(30)は、吸入口と吹出口とが共に上記処理室(2)に接続された滅菌側循環通路(32)と、過酸化水素分解通路(35)とを備えている。滅菌側循環通路(32)は、本発明に係る循環通路を構成し、3つの処理室(2a,2b,2c)を並列に接続している。滅菌側循環通路(32)において、主通路(34)の一部である拡散用通路(34a)と滅菌ガス供給用通路である過酸化水素供給通路(33)とは並列になっている。過酸化水素供給通路(33)には、滅菌ガス発生器である過酸化水素発生器(31)が設けられている。過酸化水素発生器(31)は、過酸化水素を含む滅菌ガスを生成する装置である。拡散用通路(34a)側の風量と過酸化水素供給通路(33)側の風量の比率は、10:1程度になるように定められている。なお、この風量の比率の10:1は単なる例示である。この風量の比率は、拡散用通路(34a)側の風量が過酸化水素供給通路(33)側の風量よりも多くなるように設定するのが望ましい。
【0026】
過酸化水素分解通路(35)は、滅菌ガス分解用通路を構成し、過酸化水素供給通路(33)と拡散用通路(34a)との並列部分をバイパスするように滅菌側循環通路(32)に接続されている。過酸化水素分解通路(35)は、滅菌側循環通路(32)において過酸化水素供給通路(33)と拡散用通路(34a)との並列部分と並列になっている。この過酸化水素分解通路(35)には、滅菌ガス分解器である過酸化水素分解器(36)が設けられている。過酸化水素分解通路(35)における過酸化水素分解器(36)の下流側には、一端が外気処理空調機(13)の還気通路(12)に接続された還気側通路(38)の他端が接続されている。また、滅菌側循環通路(32)における過酸化水素分解通路(35)の上流側には、外気処理空調機(13)から滅菌側循環通路(32)に外気を導入する給気側連通路(39)が接続されている。
【0027】
上記滅菌側循環通路(32)における処理室(2)への入口側は給気通路(11)側のHEPAフィルタ(14)に接続され、該滅菌側循環通路(32)における処理室(2)からの出口側は還気通路(12)側のHEPAフィルタ(14)に接続されている。
【0028】
−詳細な構成−
次に、滅菌装置(1)の構成の詳細について説明する。
【0029】
<空調系統側回路>
まず、空調系統側回路(10)の構成について説明する。
【0030】
上記外気処理空調機(13)は、ケーシング内が隔壁(13a)により第1通路(13b)と第2通路(13c)に分離されており、空気中の水分を吸脱着可能な吸着剤を担持したハニカム状の吸着ロータ(13d)が、上記隔壁(13a)に沿って設けられた回転軸(図示せず)を中心として回転可能に設けられている。第1通路(13b)には、上流側から順に、第1外気取り入れ口(13e)、第1冷却コイル(13f)、上記吸着ロータ(13d)、第2冷却コイル(13g)、第1加熱コイル(13h)、加湿器(13i)、ファン(13j)、及び給気口(13k)が設けられている。第2通路(13c)には、第2外気取り入れ口(13l)、第2加熱コイル(13m)、吸着ロータ(13d)、及び排気口(13n)が設けられている。排気口(13n)は、図示しない排気ファンに接続されている。
【0031】
第1通路(13b)では、第1冷却コイル(13f)により冷却された外気(第1空気)中の水分が吸着ロータ(13d)に吸着され、該第1空気が減湿される。第1空気はその後に第2冷却コイル(13g)、第1加熱コイル(13h)、及び加湿器(13i)により温度と湿度が調節され、給気口(13k)より吹き出される。吸着ロータ(13d)は連続的または断続的に回転しており、水分を吸着した部分がやがて第2通路(13c)内へ移動する。第2通路(13c)では、外気(第2空気)が第2加熱コイル(13m)で加熱されてから吸着ロータ(13d)を通過することにより、該吸着ロータ(13d)が再生される。吸着ロータ(13d)の再生された部分は、さらに回転して第1通路(13b)側へ移動することにより、再び第1空気を減湿することができるようになる。
【0032】
外気処理空調機(13)とミキシングチャンバ(19)との間の給気通路(11)には、中性能フィルタ(20)と、第1給気切換ダンパ(21a)とが設けられている。上記顕熱空調機(17)は、給気通路(11)におけるミキシングチャンバ(19)の下流側に設けられている。この顕熱空調機(17)は、上流側から順に、空気流入口(17a)、冷却コイル(17b)、ファン(17c)、及び空気流出口(17d)を有している。
【0033】
各処理室(2a,2b,2c)に対する給気通路(11)の接続部分には、給気側のHEPAフィルタ(14)が設けられている。給気通路(11)は各HEPAフィルタ(14)に対応して3本の給気管(11a,11b,11c)に分岐し、各給気管(11a,11b,11c)には、上流側から定風量装置(22a,22b,22c)と給気側気密ダンパ(23a,23b,23c)とが設けられている。
【0034】
各処理室(2a,2b,2c)に対する還気通路(12)の接続部分には、還気側のHEPAフィルタ(14)が設けられている。還気通路(12)は各HEPAフィルタ(14)に対応して3本の還気管(12a,12b,12c)に分岐し、各還気管(12a,12b,12c)には、上流側から還気側気密ダンパ(24a,24b,24c)と室圧制御ダンパ(25a,25b,25c)とが設けられている。この室圧制御ダンパ(25a,25b,25c)は、処理室(2)内の圧力を調整するために用いられる。
【0035】
還気通路(12)には、各還気管(12a,12b,12c)の合流箇所の下流側に上記循環ファン(18)が設けられている。また、還気通路(12)における循環ファン(18)と戻し通路(15)の間には還気調節ダンパ(26)が設けられ、該還気通路(12)における戻し通路(15)と外気処理空調機(13)の間には還気切換ダンパ(27)が設けられている。
【0036】
外気処理空調機(13)の還気通路(12)は、循環ファン(18)と還気調節ダンパ(26)の間で分岐した排気通路(28)が設けられている。この排気通路(28)には、排気調節ダンパ(29)が設けられている。この排気調節ダンパ(29)を開くことにより、外気処理空調機(13)の運転中に処理室(2)内の圧力が上昇しすぎるのを防止できる。
【0037】
<滅菌系統側回路>
次に滅菌系統側回路(30)の構成について説明する。
【0038】
滅菌側循環通路(32)は、上記主通路(34)と、上記過酸化水素供給通路(33)と、主通路(34)から分岐した3本の給気側通路(40a,40b,40c)と、主通路(34)から分岐した吸入側で分岐した分岐した3本の還気側通路(41a,41b,41c)とを備えている。各給気側通路(40a,40b,40c)は、給気通路(11)側の各HEPAフィルタ(14)に接続され、各還気側通路(41a,41b,41c)は、還気通路(12)側のHEPAフィルタ(14)に接続されている。
【0039】
各給気側通路(40a,40b,40c)には給気側ガスバルブ(42a,42b,42c)が設けられ、還気側通路(41a,41b,41c)には還気側ガスバルブ(43a,43b,43c)が設けられている。主通路(34)には、還気側から給気側に向かって順に、滅菌ガス循環ファン(44)と第1滅菌ガス切換バルブ(45a)が設けられている。上記過酸化水素発生器(31)を備えた過酸化水素供給通路(33)は、第1滅菌ガス切換バルブ(45a)と各給気側通路(40a,40b,40c)の間において主通路(34)の一部である拡散用通路(34a)と並列に接続されている。
【0040】
滅菌ガス循環ファン(44)と第1滅菌ガス切換バルブ(45a)の間には上記過酸化水素分解通路(35)の一端が接続され、該過酸化水素分解通路(35)の他端は、主通路(34)における過酸化水素供給通路(33)の下流端と各給気側通路(40a,40b,40c)の間に接続されている。過酸化水素分解通路(35)には、その上流側から順に、第2滅菌ガス切換バルブ(45b)、過酸化水素分解器(36)であるPt触媒、及び第3滅菌ガス切換バルブ(45c)が設けられている。また、過酸化水素分解通路(35)における過酸化水素分解器(36)とその下流側の第3滅菌ガス切換バルブ(45c)との間には、一端が外気処理空調機(13)の還気通路(12)に接続された上記還気側連通路(38)の他端が接続されている。この還気側連通路(38)には、第4滅菌ガス切換バルブ(45d)が設けられている。
【0041】
上記外気処理空調機(13)の給気通路(11)は、中性能フィルタ(20)と第1給気切換ダンパ(21a)の間で上記給気側連通路(39)に分岐している。この給気側連通路(39)は、滅菌側循環通路(32)の主通路(34)における還気側通路(41a,41b,41c)と滅菌ガス循環ファン(44)との間に接続されている。この給気側連通路(39)には、第2給気切換ダンパ(21b)が設けられている。
【0042】
−運転制御−
次に、この滅菌装置(1)の運転制御と具体的な運転動作に関して説明する。
【0043】
この滅菌装置(1)は、空調系統側回路(10)と滅菌系統側回路(30)の運転制御を行うコントローラ(制御手段)(50)を備えている。このコントローラ(50)は、処理室(2)を低湿度にするための準備運転と、処理室(2)内の滅菌処理を行う滅菌運転と、処理室(2)の滅菌完了後に過酸化水素濃度を下げるための希釈運転(第1希釈運転及び第2希釈運転)と、希釈完了後に処理室(2)の空調を行う定常運転とを行うように構成されている。滅菌運転前に処理室(2)を低湿度にする準備運転を行うのは、過酸化水素による滅菌を行う場合、処理室(2)内が低湿度である方が高い滅菌効果が得られるためである。
【0044】
<準備運転>
準備運転は、過酸化水素発生器(31)を停止した状態で、外気処理空調機(13)により処理室(2)の湿度を所定値以下に低下させる工程であり、後述の定常運転時の状態で外気導入量を約1/2とし、処理室(2)内を低湿にする運転である。なお、準備運転では、滅菌に備えて医薬品等の製造機器の開放と建具類の目張りが行われる。この準備運転の空気の流れを図2に示している。
【0045】
このとき、滅菌系統側回路(30)では、滅菌ガス循環ファン(44)及び過酸化水素発生器(31)は停止した状態となる。また、滅菌系統側回路(30)の各バルブ(42a,42b,42c)(43a,43b,43c)(45a,45b,45c,45d)は閉じた状態となり、第2給気切換ダンパ(21b)も閉じた状態となる。一方、空調系統側回路(10)の第1給気切換ダンパ(21a)、還気切換ダンパ(27)、還気調節ダンパ(26)、各定風量装置(22a,22b,22c)、各室圧制御ダンパ(25a,25b,25c)、各給気側気密ダンパ(23a,23b,23c)、及び各還気側気密ダンパ(24a,24b,24c)はそれぞれ開いた状態となり、排気調節ダンパ(29)は閉じた状態となる。
【0046】
この状態で、外気処理空調機(13)、顕熱空調機(17)、及び循環ファン(18)を運転すると、外気処理空調機(13)で温度と湿度が調節された空気が給気通路(11)を流れるときにミキシングチャンバ(19)、顕熱空調機(17)を順に通過し、低湿の空気が各給気管(11a,11b,11c)から給気側のHEPAフィルタ(14)を介して処理室(2)に供給される。
【0047】
処理室(2)の空気は排気側のHEPAフィルタ(14)を通って流出し、各還気管(12a,12b,12c)から還気通路(12)で合流し、循環ファン(18)により、一部がミキシングチャンバ(19)を通って顕熱空調機(17)へ、他の一部が外気処理空調機(13)へ送られる。準備運転は、空気を以上のように循環させて、処理室(2)内の室温が約25℃、相対湿度が約30%になるまで行われる。なお、処理室(2)内には、温度と湿度を検出するため、温度センサと湿度センサが設けられている。
【0048】
<滅菌運転>
準備運転が完了すると、空調機器を停止し、ダンパ類の設定を切り換えて滅菌運転に移行する。滅菌運転は、過酸化水素発生器(31)により発生した過酸化水素を含む滅菌ガスを滅菌系統側回路(30)の滅菌側循環通路(32)で循環させることにより処理室(2)に所定濃度の過酸化水素を供給する工程である。この滅菌運転時の滅菌ガスの流れを図3に示している。
【0049】
このとき、空調系統側回路(10)では、外気処理空調機(13)、顕熱空調機(17)、及び循環ファン(18)が停止し、各給気切換ダンパ(21a,21b)、還気切換ダンパ(27)、還気調節ダンパ(26)、及び排気調節ダンパ(29)が閉鎖される。また、各定風量装置(22a,22b,22c)、各室圧制御ダンパ(25a,25b,25c)、各給気側気密ダンパ(23a,23b,23c)、各還気側気密ダンパ(24a,24b,24c)も停止または閉鎖される。一方、滅菌系統側回路(30)では、滅菌ガス循環ファン(44)及び過酸化水素発生器(31)が運転され、各給気側ガスバルブ(42a,42b,42c)と各還気側ガスバルブ(43a,43b,43c)が開かれる。また、第1滅菌ガス切換バルブ(45a)は開放され、第2滅菌ガス切換バルブ(45b)、第3滅菌ガス切換バルブ(45c)、第4滅菌ガス切換バルブ(45d)は閉鎖される。
【0050】
この状態で、滅菌ガス循環ファン(44)と過酸化水素発生器(31)を運転すると、過酸化水素発生器(31)で発生した過酸化水素を含む滅菌ガスが主通路(34)の空気と合流し、給気側通路(40a,40b,40c)から給気側のHEPAフィルタ(14)を通って処理室(2)に供給される。
【0051】
処理室(2)内の滅菌ガスは還気側のHEPAフィルタ(14)を通って流出し、各還気側通路(41a,41b,41c)から主通路(34)で合流する。合流した滅菌ガスは滅菌循環ファン(44)により一部が過酸化水素供給通路(33)を流れ、残りが拡散用通路(34a)を流れる。上述したように、拡散用通路(34a)を流れる風量と過酸化水素供給通路(33)を流れる風量の比率は、約10:1に設定されている。こうすることにより、過酸化水素供給通路(33)の風量が小さくても、拡散用通路(34a)の風量が加わるので、過酸化水素発生器(31)で発生した滅菌ガスは比較的大きな風量で処理室(2)へ流入する。従って、処理室(2)へ流入する滅菌ガスは広範囲に拡散しやすくなるし、処理室(2)へ既に流入している滅菌ガスも攪拌されて拡散しやくすなる。
【0052】
一方、過酸化水素発生に伴う室内圧力の上昇をコントロールするため、処理室(2)内には圧力センサ(図示せず)が設けられている。そして、滅菌運転中に処理室(2)の室内圧力が上昇したり、室内湿度が上昇したりすると、図に太い破線で流れを示すように、過酸化水素分解通路(35)の過酸化水素分解器(36)から還気側連通路(38)を通じて、処理室(2)の滅菌ガスの一部を分解してから外気処理空調機(13)に還気する。過酸化水素分解器(36)を通して過酸化水素を含む滅菌ガスを外気処理空調機(13)に戻すのは、外気処理空調機(13)やダクト類の腐食を防止するためである。
【0053】
この運転時、第2滅菌ガス切換バルブ(45b)と第4滅菌ガス切換バルブ(45d)が開かれ、外気処理空調機(13)が運転される。そして、第2給気切換ダンパ(21b)を開いて、外気処理空調機(13)により湿度を調節した空気の風量を調節しながら滅菌側循環通路(32)に戻すことで、室内湿度や室内圧力を調節できる。処理室(2)内の湿度が上昇し、結露が生じたりすると滅菌効果が著しく低下するため、室内湿度の上限は例えば約50%に設定される。なお、処理室(2)の室圧上昇を防止するだけであれば、処理室(2)の滅菌ガスを過酸化水素分解器(36)で分解してから外気処理空調機(13)を通じて外気に放出してもよい。
【0054】
滅菌運転は、過酸化水素を含む滅菌ガスを滅菌側循環通路(32)によって以上のように循環させて、処理室(2)の過酸化水素濃度が約500ppmになり、その濃度で所定時間が経過するまで行われる。なお、過酸化水素濃度を検出するため、滅菌側循環通路(32)の還気側には過酸化水素濃度センサが設けられている(図示せず)。
【0055】
<希釈運転>
滅菌運転の完了後、処理室(2)内の過酸化水素濃度は約500ppmになっている。この高濃度の状態では、外気処理空調機(13)、顕熱空調機(17)、HEPAフィルタ(14)で処理をした無菌空気を処理室(2)に導入するとともに処理室(2)のガスを室外へ放出することはできないので、処理室(2)内の過酸化水素濃度が5〜10ppm程度になるまでは滅菌ガス中の過酸化水素を触媒により分解する第1希釈運転を行う(図4)。その後、外気処理空調機(13)、顕熱空調機(17)、HEPAフィルタ(14)で処理をした無菌空気を処理室(2)に導入するとともに処理室(2)のガスを室外へ放出する第2希釈運転を行う(図5)。第2希釈運転時に室外へ放出されるガスの過酸化水素濃度は十分に低いので、大気中への影響はない。
【0056】
(第1希釈運転)
第1希釈運転は、過酸化水素発生器(31)を停止して処理室(2)のガスを滅菌側循環通路(32)で循環させながら過酸化水素分解器(36)で過酸化水素濃度が第1の設定値(5〜10ppm)以下になるまで分解する工程であり、図4に空気の流れを示している。
【0057】
このとき、空調系統側回路(10)の設定は基本的に滅菌運転時と同じであり、外気処理空調機(13)、顕熱空調機(17)、及び循環ファン(18)は停止しており、各ダンパ(21a,21b)(23a,23b,23c)(24a,24b,24c)(25a,25b,25c)(26)(27)(29)や定風量装置(22a,22b,22c)などは閉鎖または停止している。一方、滅菌系統側回路(30)では、滅菌ガス循環ファン(44)は運転されるが過酸化水素発生器(31)が停止し、各給気側ガスバルブ(42a,42b,42c)と各還気側ガスバルブ(43a,43b,43c)は開かれたままである。また、第1滅菌ガス切換バルブ(45a)は閉鎖され、第2滅菌ガス切換バルブ(45b)及び第3滅菌ガス切換バルブ(45c)は開放され、第4滅菌ガス切換バルブ(45d)は閉鎖される。
【0058】
この状態で、滅菌ガス循環ファン(44)を運転すると、処理室(2)内のガスが滅菌側循環通路(32)を循環する際に過酸化水素分解器(36)を通過し、そのガス中の過酸化水素が分解される。第1希釈運転は、過酸化水素濃度センサによる検出値(過酸化水素濃度)が5〜10ppmになるまで行われる。
【0059】
なお、第1希釈運転時に各給気側気密ダンパ(23a,23b,23c)や各還気側気密ダンパ(24a,24b,24c)からのガスの漏れ等が生じて処理室(2)の圧力が低下した場合には、図に太い破線で流れを示すように、外気処理空調機(13)を運転するとともに第2給気切換ダンパ(21b)を開き、処理室(2)内を所定圧力(例えば数100Pa)に維持する操作を行う。
【0060】
このように第1希釈運転でも、処理室(2)内のガスを滅菌側循環通路(32)の吸入口と吹出口とから出し入れするので、処理室(2)内のガスの循環を比較的大きな風量で行うことができる。従って、処理室(2)内において入れ換わるガスの単位時間当たりの量が多くなり、処理室(2)内の滅菌ガスの濃度を比較的短時間で低下させることができる。
【0061】
(第2希釈運転)
第2希釈運転は、外気処理空調機(13)からフィルタ機構である給気側のHEPAフィルタ(14)を介して空気を処理室(2)に供給しながら過酸化水素濃度が第1の設定値(5〜10ppm)よりも低い第2の設定値(1ppm)以下になるまで排気を行う換気工程である(図5)。この第2の設定値は、処理室(2)内に作業者が入室可能な濃度に設定されている。このように第2希釈運転で空調系統側回路(10)を使っているのは、滅菌系統側回路(30)での低風量の希釈運転(第1希釈運転)を続けたのでは過酸化水素濃度が第2の設定値に達するまでに相当長い時間を要するため、大風量での運転を行うこととしたものである。
【0062】
このとき、空調系統側回路(10)の設定と滅菌系統側回路(30)の設定は、基本的には準備運転と同じである。ただし、準備運転では還気調節ダンパ(26)が開放され、排気調節ダンパ(29)が閉鎖されていたのに対して、この第2希釈運転では還気調節ダンパ(26)が微小開度に設定され、排気調節ダンパ(29)が全開に近い開度に設定される。
【0063】
この状態で、外気処理空調機(13)、顕熱空調機(17)、及び循環ファン(18)を運転すると、外気処理空調機(13)と顕熱空調機(17)で温度と湿度が調節され、給気側のHEPAフィルタ(14)で浄化された無菌空気が処理室(2)に供給され、処理室(2)内で過酸化水素を含む滅菌ガスと均一に混合する。希釈された過酸化水素を含む滅菌ガスは、還気側のHEPAフィルタ(14)を通って処理室(2)から流出する。この過酸化水素を含む滅菌ガスは、排気調節ダンパ(29)を通って大部分が排気され、一部が還気調節ダンパ(26)を通ってミキシングチャンバ(19)へ流入した後に外気処理空調機(13)からの空調空気と混合され、さらに顕熱空調機(17)へと流れていく。
【0064】
第2希釈運転では、空調空気及び過酸化水素を含む滅菌ガスが以上のようにして循環することにより、処理室(2)の過酸化水素濃度が約1ppm以下になるまで行われる。排気調節ダンパ(29)が全開に近い開度に設定されているのは、室内圧力を建屋漏気上の対策により、定常値よりも低い圧力(例えば約15Pa)に保持するためである。
【0065】
なお、還気調節ダンパ(26)と排気調節ダンパ(29)の開度は運転状態に合わせて適宜変更してもよい。例えば、本実施形態では還気調節ダンパ(26)を微小開度に開いて過酸化水素を含むガスの一部を顕熱空調機(17)へ戻す(空調側循環通路(16)で循環させる)ようにしているが、必ずしも過酸化水素を含む滅菌ガスの一部を顕熱空調機(17)へ戻さなくてもよい。
【0066】
また、第1希釈運転から第2希釈運転への移行時には、室圧の急激な変化を避けるため、外気処理空調機(13)、顕熱空調機(17)及び循環ファン(18)をスロースタートし、安定した移行を行うとよい。
【0067】
<定常運転>
定常運転は、外気処理空調機(13)により処理した外気を取り入れながら空調側循環通路(16)で顕熱空調機(17)を介して空調空気を循環させる工程である。この定常運転の空気の流れを図6に示している。
【0068】
このとき、空調系統側回路(10)の設定と滅菌系統側回路(30)の設定は、基本的には準備運転と同じである。ただし、準備運転では排気調節ダンパ(29)が閉鎖されていたのに対して、この定常運転では排気調節ダンパ(29)が所定開度に設定される。
【0069】
この状態で、外気処理空調機(13)、顕熱空調機(17)、及び循環ファン(18)を運転すると、外気処理空調機(13)と顕熱空調機(17)で温度と湿度が常設され、給気側のHEPAフィルタ(14)で浄化された無菌空気が処理室(2)に供給される。処理室(2)の無菌空気は、還気側のHEPAフィルタ(14)を通って処理室(2)から流出する。この無菌空気は、一部が排気調節ダンパ(29)を通って排気され、大部分が還気調節ダンパ(26)を通ってミキシングチャンバ(19)へ流入した後に外気処理空調機(13)からの空調空気と混合され、さらに顕熱空調機(17)へと流れていく。
【0070】
定常運転では、空調された無菌空気が空調系統側回路(10)で以上のようにして循環することにより、処理室(2)の温度と湿度が設定値に維持されるとともに、無菌状態が維持される。
【0071】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、滅菌ガス供給用通路(33)からの過酸化水素を含む滅菌ガスを、その10倍の風量の拡散用通路(34a)のガスと共に処理室(2)へ流入させることで、かなり大きな風量で滅菌ガスを処理室(2)へ流入させて処理室(2)内において広範囲に拡散させることができる。従って、滅菌ガスは処理室(2)の隅々までゆき渡りやすいので、従来のように、滅菌ガスの導入後に無菌空気を処理室(2)に導入したり、滅菌ガスが処理室(2)内で拡散しにくいことを考慮して処理室(2)へ供給する滅菌ガスの濃度をさらに高くしたりする必要がない。つまり、滅菌ガスを処理室(2)に導入する工程のみで、安定した滅菌性能が得られるようになる。よって、滅菌性能の安定性を確保した上で処理効率を向上させることができる。
【0072】
なお、本実施形態の滅菌装置(1)は、自然分解しやすい過酸化水素を含むガスを滅菌ガスとして使用する場合により効果的である。つまり、この種の滅菌ガスは、時間の経過と共に自然分解するし、濃度が高いほど不安定で自然分解しやすいので、滅菌ガスを拡散させる工程を行って滅菌時間が長くなる場合や、供給する滅菌ガスの濃度をさらに高くする場合は、自然分解してしまう滅菌ガスの量が多くなる。従って、この滅菌装置(1)では、滅菌ガスとして過酸化水素を含むガスを用いると、滅菌ガスが処理室(2)内に拡散しやすくなることで得られる効果がより大きくなり、発生させる滅菌ガスの濃度を低下させることができる。
【0073】
また、この実施形態によれば、処理室(2)内の過酸化水素の濃度を低下させる際にも、処理室(2)内のガスの循環を大きな風量で行うことができる。従って、処理室(2)内の過酸化水素の濃度を短時間で低下させることができるので、第1希釈運転の時間の短縮化を図ることができる。
【0074】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0075】
例えば、上記実施形態では、滅菌ガス発生器(31)が、過酸化水素を含むガスを滅菌ガスとして発生させるが、例えば、ホルマリンガス、エチレンオキサイドガスなどを発生させるようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、すべての処理室(2a,2b,2c)を同時に滅菌する運転について説明したが、各処理室(2a,2b,2c)を個別に滅菌する運転を行ってもよい。この場合、滅菌を行う処理室(2a,2b,2c)に応じてバルブの開閉をするとよく、その処理室(2)の滅菌処理を短時間で確実に行うことができる。また、処理室(2a,2b,2c)は3室に限らず、3室以外の複数室であってもよいし、1室であってもよい。
【0077】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明は、滅菌ガスにより処理室内の滅菌処理を行う滅菌装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係る滅菌装置の配管系統図である。
【図2】図1の滅菌装置において準備運転の動作を示す図である。
【図3】図1の滅菌装置において滅菌運転の動作を示す図である。
【図4】図1の滅菌装置において第1希釈運転の動作を示す図である。
【図5】図1の滅菌装置において第2希釈運転の動作を示す図である。
【図6】図1の滅菌装置において定常運転の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 滅菌装置
2 処理室
31 過酸化水素発生器(滅菌ガス発生器)
32 滅菌側循環通路(循環通路)
33 過酸化水素供給通路(滅菌ガス供給用通路)
34a 拡散用通路
35 過酸化水素分解通路(滅菌ガス分解用通路)
36 過酸化水素分解器(滅菌ガス分解器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌ガスにより処理室(2)内の滅菌処理を行う滅菌装置であって、
滅菌ガスを発生させる滅菌ガス発生器(31)と、
吸入口と吹出口とが共に上記処理室に接続された循環通路(32)とを備え、
上記循環通路(32)の一部は、上記滅菌ガス発生器(31)が設けられた滅菌ガス供給用通路(33)と滅菌ガスを拡散させるための拡散用通路(34a)との並列になっていることを特徴とする滅菌装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記循環通路(32)は、上記拡散用通路(34a)の風量が上記滅菌ガス供給用通路(33)の風量よりも多くなるように構成されていることを特徴とする滅菌装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
滅菌ガスを分解する滅菌ガス分解器(36)と、
上記滅菌ガス分解器(36)が設けられ、上記循環通路(32)において上記滅菌ガス供給用通路(33)と並列に接続されている滅菌ガス分解用通路(35)とを備え、
吸入口から上記循環通路(32)へ流入して処理室(2)へ戻る滅菌ガスの流通経路として、上記滅菌ガス分解用通路(35)と滅菌ガス供給用通路(33)の何れかを選択可能に構成されていることを特徴とする滅菌装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つにおいて、
上記循環通路(32)は、複数の処理室(2a,2b,2c)を並列に接続しており、
上記複数の処理室(2a,2b,2c)を選択的に滅菌処理可能に構成されていることを特徴とする滅菌装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つにおいて、
上記滅菌ガス発生器(31)は、上記滅菌ガスとして過酸化水素を含むガスを発生させることを特徴とする滅菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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