説明

滑り止めテープ及びパレット形成部材

【課題】載荷面に載置された載荷物が載荷面において滑ることを抑えつつ載荷面からの剥離を抑えることの可能な滑り止めテープ、及び該滑り止めテープを備える合成樹脂製パレットを提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン樹脂からなるパレット形成部材の載荷面に熱溶着により貼り付けられてブレンドポリマーからなる滑り止めテープであって、ブレンドポリマーは、ポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーを30〜50質量%含み、メタロセン触媒系ポリエチレンを25〜45質量%含み、メタロセン触媒系ポリプロピレンを含むとともに、重量平均分子量が15万以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂からなるパレット形成部材に熱溶着により貼り付けられて載荷物の滑りを抑える滑り止めテープ、及び該滑り止めテープが熱溶着されたパレット形成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載のように、メタロセン触媒系ポリエチレンを主成分とし、これに他のポリマーや各種添加剤が配合された合成樹脂からなる滑り止めテープが知られている。また特許文献2に記載のように、載荷面において載荷物が滑ることを抑える滑り止めテープと、該滑り止めテープが貼り付けられた合成樹脂製パレットとが知られている。特許文献2に記載の滑り止めテープは、メタロセン触媒系エチレン/α−オレフィン共重合ポリマーに、ポリプロピレン樹脂及び相溶剤が配合された合成樹脂からなる。そして、ポリオレフィン樹脂からなる合成樹脂製パレットの載荷面に、上述した滑り止めテープが熱溶着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−35747号公報
【特許文献2】特開2001−315778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、合成樹脂製パレットが利用される場合には、丸みを帯びていない縁部を有するドラム缶等が上述した滑り止めテープの上に載置される場合がある。このとき、滑り止めテープの上に載置された載荷物の荷重は、該滑り止めテープのうちで上記縁部の載置される一部分に局所的に集中する。そして、この状態から滑り止めテープの上を載荷物が摺動したり転動したりすると、滑り止めテープにおける上記一部分を載荷物の動きに追随させるような力、換言すると、合成樹脂製パレットから滑り止めテープを引き剥がすような力が上記一部分に作用することになる。その結果、滑り止めテープと合成樹脂製パレットとの熱溶着部のうち、上述した一部分では、滑り止めテープの全幅に渡って波立つように滑り止めテープが剥離することとなる。そして、このようにして局所的に発生した滑り止めテープの剥離が、載荷物の摺動とともに滑り止めテープの長手方向に少しずつ拡大する。そのため、最終的には滑り止めテープの全体が合成樹脂製パレットから完全に離れる虞がある。なお、このような問題は、ポリプロピレン樹脂製パレットに滑り止めテープが熱溶着された構成において顕著に認められる。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、載荷面に載置された載荷物が載荷面において滑ることを抑えつつ載荷面からの剥離を抑えることの可能な滑り止めテープ、及び該滑り止めテープを備えるパレット形成部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における滑り止めテープは、ポリプロピレン樹脂からなるパレット形成部材の載荷面に熱溶着により貼り付けられてブレンドポリマーからなる滑り止めテープであって、前記ブレンドポリマーは、ポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーを30〜50質量%含み、メタロセン触媒系ポリエチレンを25〜45質量%含み、メタロセン触媒系ポリプロピレンを含むとともに、重量平均分子量が15万以上である。
【0007】
本発明者らは、ブレンドポリマーからなる滑り止めテープを鋭意研究した結果、前記ブレンドポリマーが、ポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーを30〜50質量%含み、メタロセン触媒系ポリエチレンを25〜45質量%含み、メタロセン触媒系ポリプロピレンを含むとともに、前記ブレンドポリマーの重量平均分子量が15万以上となるようにすることによって、載荷面における載荷物の滑りと滑り止めテープの載荷面からの剥離とが抑えられることを見出した。そして、本発明の滑り止めテープは、30〜50質量%のポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーと、25〜45質量%のメタロセン触媒系ポリエチレンとからなるブレンドポリマーであって、その重量平均分子量が15万以上の値になるように、メタロセン触媒系ポリプロピレンを配合したことを要旨とする。
【0008】
この発明では、合成樹脂製パレットの材料たるポリプロピレン樹脂との熱溶着力が一般的に高いポリプロピレンの中でも、特にメタロセン触媒系ポリプロピレンを含有したブレンドポリマーによって滑り止めテープが形成されている。これにより、メタロセン触媒系ポリプロピレンが含有されないブレンドポリマーからなる滑り止めテープが熱溶着された構成と比較して、ポリプロピレン樹脂からなる構造物(パレット形成部材)と滑り止めテープとの熱溶着力を高めることができる。
【0009】
それゆえに、このような滑り止めテープがポリプロピレン樹脂からなるパレット形成部材の載荷面に熱溶着される場合には、滑り止めテープが載荷面から引き剥がされ難くなる。例えば、底部にエッジ形状を有する載荷物の重量がエッジ形状と滑り止めテープとの接触部において局所的に作用しつつ載荷面上を載荷物が摺動するとしても、その接触部において滑り止めテープが全幅にわたり剥離する、すなわち全幅剥離する可能性を低減させることができるようになる。
【0010】
また上記接触部における局所的な全幅剥離が載荷物の摺動や転動によって滑り止めテープの長手方向に少しずつ拡大することを抑制することが可能にもなる。これにより、滑り止めテープがパレット形成部材から完全に分離してしまう可能性をさらに低くすること、ひいてはパレット形成部材において重要な機能である載荷物への防滑性能を長期間にわたり維持することもできる。
【0011】
ところで、上述の如くポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーとメタロセン触媒系ポリプロピレンとをブレンドポリマーに配合することによって、ポリプロピレン樹脂からなるパレット形成部材の載荷面と滑り止めテープとの熱溶着力を高めることが可能である。ただし、ポリプロピレン系の材料のみからなる滑り止めテープでは、上記防滑性能が十分に発現されない。この点、この発明では、滑り止めテープに上記防滑性能を発現させるべく、メタロセン触媒系ポリエチレンがブレンドポリマーに25〜45質量%含有されている。これにより、ポリプロピレン系の材料の配合比率が高いブレンドポリマーからなる滑り止めテープであっても、載荷物が載荷面において滑ることを抑えつつ滑り止めテープが載荷面から剥離することを抑えることができる。
【0012】
この発明における前記ブレンドポリマーは、発泡剤を含み、前記発泡剤による発泡倍率が1.05〜1.30倍となるように発泡させることが好ましい。
本発明者らは、さらに鋭意研究した結果、滑り止めテープを発泡させることにより、上述のように熱溶着部に全幅剥離が発生したとしても、この全幅剥離の拡大が抑制されることを見出した。そして、この発明では、発泡倍率が1.05〜1.30倍となる量の発泡剤がブレンドポリマーに含まれている。発泡剤の発泡効果によって滑り止めテープが膨張すると、その効果によって滑り止めテープは軟化するため、その剛性が低くなる。
【0013】
ところで、上述の如く載荷物の底部におけるエッジ形状と滑り止めテープとの接触部において載荷面から滑り止めテープを引き剥がすような強い力が作用すると、接触部にて滑
り止めテープが全幅剥離した後に、この全幅剥離が拡大しやすくなる、あるいは全幅剥離の部分で千切れやすくなる。この点、この発明では、発泡剤の発泡効果によって滑り止めテープが軟化するため、たとえ局所的な全幅剥離が滑り止めテープに発生したとしても、全幅剥離の部分で滑り止めテープが千切れやすくなり、この全幅剥離がテープ全体に少しずつ拡大したりすることを防止することができるようになる。ひいては滑り止めテープがパレット形成部材から完全に剥がれることを回避することができるようにもなる。
【0014】
加えて、上述の如き発泡作用によって滑り止めテープが軟化するため、載荷物の底部におけるエッジ形状が滑り止めテープにより食い込みやすくなる。そのため、滑り止めテープ自体の防滑性を向上させることができるようにもなる。
【0015】
この発明において、前記発泡剤は、アゾジカルボンアミドであり、前記発泡剤が前記ブレンドポリマーを0.05〜0.2質量%含むことが好ましい。
本発明者らは、さらに鋭意研究した結果、前記発泡剤がアゾジカルボンアミドであり、前記発泡剤が前記ブレンドポリマーに0.05〜0.2質量%含まれることによって、上述の如き発泡による効果が得られることを見出した。そして、この発明では、前記発泡剤がアゾジカルボンアミドであって、前記発泡剤が前記ブレンドポリマーに0.05〜0.2質量%含まれている。
【0016】
この発明では、発泡剤たるアゾジカルボンアミドが上記ブレンドポリマーに含まれる配合量を具体的に規定することにより、上記発泡倍率を実現することができる。それゆえに、上述の如く局所的な全幅剥離の拡大を防止することができるとともに、滑り止めテープが発現する載荷物への防滑性能を強化することができる。
【0017】
この発明では、ポリプロピレン樹脂からなるパレット形成部材であって、パレット形成部材の載置面には、滑り止めテープが熱溶着されており、前記滑り止めテープが上述の如き滑り止めテープであることが好ましい。
【0018】
この発明によれば、滑り止めテープがメタロセン触媒系ポリプロピレンを含むブレンドポリマーの成形品であるため、ポリプロピレン樹脂からなるパレット形成部材と滑り止めテープとの熱溶着性を向上させることができる。また滑り止めテープがメタロセン触媒系ポリエチレンを含むブレンドポリマーの成形品でもあるため、載荷物への防滑性能を維持することができる。それゆえに、パレット形成部材に要求される防滑性を満たしつつ、載荷物の重量が局所的に作用することによる全幅剥離、及びこの全幅剥離の拡大を抑えることの可能なパレット形成部材を提供することができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、載荷面に載置された載荷物が載荷面において滑ることを抑えつつ載荷面からの剥離を抑えることの可能な滑り止めテープ、及び該滑り止めテープを備えるパレット形成部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係るパレット形成部材の一実施の形態について、パレット形成部材により形成された合成樹脂製パレットを載荷面側から見た斜視構造を示す斜視図。
【図2】パレット形成部材により形成された合成樹脂製パレットを接地面側から見た斜視構造を示す斜視図。
【図3】試験例におけるドラム缶縁部での転動試験の態様を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明にかかる滑り止めテープ及びパレット形成部材を具体化した一実施の形
態について図を参照して説明する。
まず、四方差し合成樹脂製パレットたる合成樹脂製パレット1の全体構造について図1及び図2を参照して説明する。図1及び図2に示されるように、合成樹脂製パレット1は、互いに対向する上部パレット形成部材2と下部パレット形成部材3とが溶着された直方体形状に形成されている。上部パレット形成部材2は、矩形板状のデッキボード20と、デッキボード20から下部パレット形成部材3に向けて延びる筒状の上部桁21とを有している。一方、下部パレット形成部材3は、矩形板状の接地ボード30と、接地ボード30から上部パレット形成部材2に向けて延びる筒状の下部桁31とを有している。そして互いに対向する上部桁21の突端と下部桁31の突端とが溶着されることによって、合成樹脂製パレット1が形成されている。これら上部パレット形成部材2と下部パレット形成部材3とは、ポリプロピレン樹脂を用いたガスアシスト成形法によって成形されている。
【0022】
なお、上部パレット形成部材2のデッキボード20には、デッキボード20の外表面である載荷面20Tからデッキボード20の載荷側内表面20Sまでを貫通する複数の嵌合孔20Hが形成されている。複数の嵌合孔20Hの各々には、フォークリフトのフォーク等に対して合成樹脂製パレット1が滑ることを防止するべく、ゴム製のグロメットが嵌入されている。また上記パレット本体を構成するデッキボード20の載荷面20Tには、載荷面20Tに載置される物品が載荷面20Tに対して滑ることを防止するべく、複数の滑り止めテープ20Lが敷設されている。
【0023】
これらの滑り止めテープ20Lは、デッキボード20の載荷面20Tに熱溶着されている。滑り止めテープ20Lを載荷面20Tに熱溶着する方法としては、例えば載荷面20T及び滑り止めテープ20Lの貼り付け面が熱風によって溶融された状態でこれらが互いに押圧されるという方法がある。
【0024】
滑り止めテープ20Lは、ポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーを30〜50質量%含み、メタロセン触媒系ポリエチレンを25〜45質量%含み、残分の主成分であるメタロセン触媒系ポリプロピレンを含み、重量平均分子量が15万以上であるブレンドポリマーからなるテープである。
【0025】
ポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーが30質量%未満の場合には、上記防滑性能を維持するために、メタロセン触媒系ポリエチレンの配合量を多くすることが必要である。ところが、ポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーの代わりにメタロセン触媒系ポリエチレンを配合すると、滑り止めテープの素材の重量平均分子量が低下する。それゆえに、後述の如く滑り止めテープの素材の重量平均分子量を高めることによって抑制可能なブロッキングの度合いを抑制し難くなる。一方、メタロセン触媒系ポリエチレンの配合量を変えずにメタロセン触媒系ポリプロピレンの配合量を多くすると、分子量の偏差が上記熱可塑性エラストマーよりもメタロセン触媒系ポリエチレンの方が比較的小さいために、滑り止めテープの素材が溶解する温度が、メタロセン触媒系ポリプロピレンの配合量が少ないときに比べてより高くなる。その結果、滑り止めテープを製造する過程において、後述の如くメタロセン触媒系ポリエチレンの一部がより分解されやすくなる。そのため、エチレンが生成されやすくなるとともに、該エチレンを主成分とする混合物が、押出ダイスの吐出部においていわゆるヤニとして頻繁に付着する。それゆえに、滑り止めテープの製造が困難になる。
【0026】
またポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーが50質量%より高い場合、高価な原料である上記熱可塑性エラストマーの配合量が増大することによって、製造コストが高くなるという点において問題がある。
【0027】
一方、メタロセン触媒系ポリエチレンが25質量%未満の場合には、滑り止めテープ2
0Lがパレット形成部材において重要な機能である載荷物への上記防滑性能を十分に発現しないという点において問題がある。またメタロセン触媒系ポリエチレンが45質量%より高い場合、ポリプロピレン樹脂製パレット形成部材と滑り止めテープ20Lとの貼り付き強度が十分に得られないという点において問題がある。
【0028】
こうした滑り止めテープ20Lは、所定の幅と厚さを備えるように、溶融された上記ブレンドポリマーの押出成形によって形成される。この際、上記ブレンドポリマーを完全に溶融させるべく、押出成形時の溶融温度をメタロセン触媒系ポリエチレンよりも融点の高い熱可塑性エラストマーやメタロセン触媒系ポリプロピレンの溶融温度となるようにしている。そして、上述の如く高い溶融温度にてメタロセン触媒系ポリエチレンが溶融されるために、分子量の偏差が比較的に小さいメタロセン触媒系ポリエチレンであっても、その一部が分解されてしまう。その結果、エチレンが生成される。
【0029】
このようなエチレンの生成は、上記ブレンドポリマーの重量平均分子量が15万未満であるときに顕著となることが経験上判明している。詳述すると、実施例1,2に示す原料組成のブレンドポリマーの重量平均分子量が15万未満であるときには、上述した分解生成物であるエチレンを主成分とする混合物が、押出ダイスの吐出部においていわゆるヤニとして付着しやすくなる。このように押出ダイスの吐出部にヤニが付着しやすくなると、頻繁にヤニを除去する作業が必要となるため、滑り止めテープ20Lの安定的な連続成形が著しく妨げられる。
【0030】
これに対して、本実施形態におけるブレンドポリマーの重量平均分子量が15万以上であるため、上述したような押出成形時のヤニの発生が抑制される。上述の如き高い押出温度であっても、滑り止めテープ20Lの連続成形が著しく妨げられることがなくなる。一方、押出成形時のヤニの発生を抑制すべく、上記ブレンドポリマーの重量平均分子量を大きくし続けると、滑り止めテープ20Lが次第に剛直化することとなる。そして、このように剛直化が進行すると滑り止めテープ20Lの表面から柔軟性が失われていくため、滑り止めテープ20Lの防滑性能を次第に維持し難くなる。ちなみに、ブレンドポリマーの重量平均分子量は、135℃の温度条件の下、高温GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)測定装置を用いた定法による測定によって得られた値である。
【実施例】
【0031】
次に、この発明にかかる滑り止めテープ及びパレット形成部材の構成について実施例を挙げてさらに具体的に説明する。
実施例1の滑り止めテープ20Lにおけるブレンドポリマーの組成と、それらの配合率とを表1に示す。また、実施例2の滑り止めテープ20Lにおけるブレンドポリマーの組成とそれらの配合率とを表2に示す。また、比較例の滑り止めテープ20Lにおけるブレンドポリマーの組成とそれらの配合率とを表3に示す。なお、表1〜表3の各々には、ブレンドポリマーの組成と配合比率とに加え、滑り止めテープ20Lの幅及び厚さが併記されている。
【0032】
ちなみに、実施例1の滑り止めテープ20Lにおけるブレンドポリマーは、39.2質量%の熱可塑性プロピレンエラストマーと、34.3質量%のメタロセン触媒系ポリエチレンと、24.5質量%のメタロセン触媒系ポリプロピレンと、2.0質量%の着色剤とを含むブレンドポリマーである。
【0033】
実施例2の滑り止めテープ20Lにおけるブレンドポリマーは、実施例1のブレンドポリマーに発泡剤としてのアゾジカルボンアミドが配合されたブレンドポリマーである。
比較例の滑り止めテープ20Lにおけるブレンドポリマーは、上記実施例1,2とは異なり、メタロセン触媒系ポリプロピレンが配合されていないブレンドポリマーである。
【0034】
なお、高温GPC測定装置を用い、135℃の温度条件の下、上記実施例1,2の滑り止めテ−プ20Lにおける重量平均分子量を定法によって測定したところ、その重量平均分子量は、17万6千であった。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

これらの実施例1,2及び比較例に示される原料組成のブレンドポリマーからなる滑り止めテープ20Lを、ポリプロピレン製のパレット形成部材における載荷面に上述の如く熱風を用いて熱溶着させ、これらのパレット形成部材を構成部材とする合成樹脂製パレットを用いて以下の剥離試験を実施した。
【0038】
図3に示されるように、剥離試験では、ドラム缶の縁部によって滑り止めテープ20Lに局所的な負荷を与え、且つ該負荷がかかる場所においてドラム缶を転動させる(滑り止めテープ20Lを横断するように転がす)。そして、滑り止めテープ20Lが幅方向に剥離する度合いと、ドラム缶の転動によって滑り止めテープ20Lが千切れるか否かを評価した。
【0039】
なお、本試験では、載荷物として200Lの作動油を入れたドラム缶Dを用いてパレットの積載重量を200kgとした。また、試験温度は23±2℃とし、このドラム缶Dの縁部DEにおけるエッジ部が滑り止めテープ20L上においてテープの幅方向に最大1250回往復するように転動させた。そして、ドラム缶Dを250回往復させるごとに、上記の温度下で24時間以上常温放置した後、上述した滑り止めテープ20Lの剥離の度合いと滑り止めテープ20Lが千切れるか否かを評価した。
【0040】
【表4】

表4の試験結果に示すように、合成樹脂製パレット1の載荷面20Tに熱溶着された滑り止めテープ20Lを横切るようにドラム缶Dの縁部DEを250回往復させる(転動させる)と、実施例1,2の滑り止めテープ20Lを用いた試験では全幅剥離に至っていない。これに対し、比較例の滑り止めテープ20Lを用いた試験では全幅剥離に至っている。また千切れはいずれも発生していない。これにより、メタロセン触媒系ポリプロピレンを含有させることによりポリプロピレン樹脂との熱溶着力が高められたことが確認された。なお、滑り止めテープ20Lを横切るようにドラム缶Dの縁部DEを500回及び750回往復させたときも、250回往復させたときの試験結果と同じ結果であった。
【0041】
なお、滑り止めテープ20Lを横切るようにドラム缶Dの縁部DEを1000回往復させたときは、実施例2及び比較例の滑り止めテープ20Lが全幅剥離に至り、実施例1の滑り止めテープ20Lのみが全幅剥離に至らなかった。これにより、メタロセン触媒系ポリプロピレンを含有させることによりポリプロピレン樹脂との熱溶着力が高められるものの、実施例2の滑り止めテープ20Lでは発泡剤の発泡効果によって熱溶着力が低下したことが確認された。ただし、実施例2の滑り止めテープ20Lでは、全幅剥離が認められたものの、該全幅剥離した箇所にて千切れを生じさせていること、言い換えれば全幅剥離が滑り止めテープ20Lの長手方向に拡大していないことが確認された。
【0042】
したがって、滑り止めテープ20Lが発泡剤を含むことによって、全幅剥離が生じたとしても、その局所的な全幅剥離が滑り止めテープ20Lの長手方向に少しずつ伝線して拡大することを抑えることは可能である。ひいては滑り止めテープ20Lのすべてが合成樹脂製パレット1(上部パレット形成部材2)から分離することを抑えることが可能である。これは、発泡効果によって滑り止めテープ20Lが軟化した、換言すると滑り止めテープ20Lの剛性が低下したためである。
【0043】
そして、滑り止めテープ20Lを横切るようにドラム缶Dの縁部DEを1250回往復させたときは、実施例1,2及び比較例の滑り止めテープ20Lが全幅剥離に至った。また、この際、実施例1の滑り止めテープ20Lにおいては、全幅剥離した箇所にて千切れが生じていること、すなわち全幅剥離が滑り止めテープ20Lの長手方向に拡大していないことが確認された。それゆえに、実施例1の滑り止めテープ20Lであれば、全幅剥離の発生と、その全幅剥離が滑り止めテープ20Lの長手方向に拡大することを抑えることが可能である。ひいては滑り止めテープ20Lが合成樹脂製パレット1(上部パレット形成部材2)から分離することを抑えることが可能である。
【0044】
ちなみに、比較例の滑り止めテープ20Lでは、上述の如く滑り止めテープ20Lを横切るようにドラム缶Dの縁部DEを250回往復させたときであっても全幅剥離が発生した。また、滑り止めテープ20Lを横切るようにドラム缶の縁部を1250回往復させたときであっても一切千切れが生じていなかった。そして、滑り止めテープ20Lを横切るようにドラム缶Dの縁部DEを往復させる回数が多くなるにつれ、全幅剥離が滑り止めテープ20Lの長手方向に少しずつ伝線して拡大していくことが確認された。
【0045】
したがって、上述の試験例によれば、滑り止めテープ20Lがメタロセン触媒系ポリプロピレンを含むことにより、該滑り止めテープ20Lとポリプロピレン樹脂からなるパレット形成部材との熱溶着力が高められることが認められた。ただし、全幅剥離した部分にて滑り止めテープ20Lが千切れることも認められた。それゆえに、滑り止めテープ20Lとパレット形成部材との熱溶着力が低下するものの、全幅剥離の領域が拡大することを抑えることが可能である。
【0046】
また、メタロセン触媒系ポリプロピレンを含む滑り止めテープ20Lであっても、該滑り止めテープ20Lに与えられる負荷が蓄積すれば全幅剥離に至るが、この場合に全幅剥離した部分にて滑り止めテープ20Lが千切れることが認められた。そのため、滑り止めテープ20Lにおける熱溶着力が高められるとともに、全幅剥離の領域が拡大することも抑えることが可能である。
【0047】
次に、他の試験としてJIS Z 0602 1988 に準拠する載荷物の滑り試験、すなわち滑り止めテープの防滑性能を評価する試験を行った。その結果を表5に示す。ちなみに試験条件は、ビール大瓶(中身入り)が収容された1つのクレートを載荷物として用いて積載重量を27kgとし、載荷物の滑り方向を滑り止めテープの貼り付け方向とした。また、載荷面20Tを傾斜させる速度を45°/min以内とした。
【0048】
この際、ポリプロピレン製のクレートとポリエチレン製のクレートとを使用し、いずれもDRYのみの条件下にて試験を行った。ちなみに、DRYの条件とは、合成樹脂製パレット1及び滑り止めテープ20Lが乾いた状態であり、かつクレートも乾いた状態にあることをいう。
【0049】
また滑り止めテープ20Lが防滑性能を満たすと判断する基準として、クレートが滑落するパレットの傾きを、ポリプロピレン製のクレートでは30°以上あること、ポリエチレン製のクレートでは23°以上あることが必要であるとした。そして試験温度は23±2℃とし、この温度下で24時間以上常温放置してから本試験を行った。
【0050】
【表5】

表5に示すように、メタロセン触媒系ポリエチレンを70%以上含有するブレンドポリマーからなる比較例の滑り止めテープ20Lを用いた試験では、ポリプロピレン製のクレートが滑落した角度は39.2°であった。またポリエチレン製のクレートが滑落した角度は28.2°であった。
【0051】
これに対し、発泡剤が含まれないブレンドポリマーからなる実施例1の滑り止めテープ
20Lでは、ポリプロピレン製のクレートが滑落した角度は33.6°であった。またポリエチレン製のクレートが滑落した角度は25.1°であった。また、発泡剤が含まれるブレンドポリマーからなる実施例2の滑り止めテープ20Lでは、ポリプロピレン製のクレートが滑落した角度は35.2°であった。またポリエチレン製のクレートが滑落した角度は27.2°であった。
【0052】
これにより、いずれの場合においても、上述した滑り止めテープ20Lが防滑性能を満たすと判断する基準を満たしていることが確認された。また、メタロセン触媒系ポリエチレンの配合割合が少なくなると、滑り止めテープ20Lの防滑性能が低下することが認められた。また、発泡剤が含まれる滑り止めテープ20Lの方が、発泡剤が含まれない滑り止めテープ20Lに比べて防滑性能が高いことが確認された。これは、発泡作用により滑り止めテープ20Lが軟化し、クレートの底部が滑り止めテープ20Lに食い込みやすくなったことに起因していると考えられる。また、発泡効果の有無にかかわらず、メタロセン触媒系ポリエチレンの配合率を34.3質量%まで下げたとしても、実用性を満たす防滑性能を発揮させることが確認された。
【0053】
なお、本発明者らは、製品素材たる上記ブレンドポリマーの重量平均分子量を大きくしつつ、滑り止めテープ20Lの防滑性能が維持されているか否かを検証した。ここでも滑り止めテープ20Lが防滑性能を満たすと判断する基準として、クレートが滑落するパレットの傾きを、ポリプロピレン製のクレートでは30°以上あること、ポリエチレン製のクレートでは23°以上あることが必要であるとした。その結果、実施例1,2におけるブレンドポリマーの重量平均分子量が25万以下であるならば、滑り止めテープ20Lが防滑性能を満たしていることが確認された。
【0054】
また、実施例1,2に示す原料組成のブレンドポリマーを押出成形した滑り止めテープ20Lには、共にメタロセン触媒系ポリプロピレンが24.5重量%配合されているとしたが、これはあくまでも一例である。熱可塑性ポリプロピレンエラストマーが30〜50質量%であって、且つメタロセン触媒系ポリエチレンが25〜45質量%であるときには、ブレンドポリマーにメタロセン触媒系ポリプロピレンが含まれることによって、少なからずパレット形成部材から滑り止めテープ20Lが剥離することを抑えることが可能であった。
【0055】
なお、熱可塑性ポリプロピレンエラストマーが30〜50質量%であって、且つメタロセン触媒系ポリエチレンが25〜45質量%であるとき、その残分のメタロセン触媒系ポリプロピレンの配合率が低くなるほど、パレット形成部材から滑り止めテープ20Lが剥がれやすくなる傾向が認められた。また、残分のメタロセン触媒系ポリプロピレンの配合率が15質量%以上であれば、実施例2と同程度の結果を得られることが認められた。
【0056】
それゆえに、パレット形成部材から滑り止めテープ20Lが剥離することをより確実に抑える上では、熱可塑性ポリプロピレンエラストマーとメタロセン触媒系ポリエチレンとを合わせた配合率が85質量%以下であり、メタロセン触媒系ポリプロピレンが15質量%以上であることが好ましい。
【0057】
また、熱可塑性ポリプロピレンエラストマーが30〜50質量%であって、且つメタロセン触媒系ポリエチレンが25〜45質量%であるとき、メタロセン触媒系ポリプロピレンの配合率が高くなるほど、載荷物への防滑性能が失われることが認められた。また残分のメタロセン触媒系ポリプロピレンの配合率が35質量%以下であれば、実施例2と同程度の結果を得られることが認められた。
【0058】
それゆえに、パレット形成部材における防滑性能が低くなることを抑える上では、熱可
塑性ポリプロピレンエラストマーとメタロセン触媒系ポリエチレンとを合わせた配合率が65質量%以上であり、メタロセン触媒系ポリプロピレンが35質量%以下であることが好ましい。
【0059】
また、実施例2に示すような原料組成のブレンドポリマーを押出成形すると、配合されている発泡剤による発泡効果として、滑り止めテープ20Lの剛性を低めることができる。すなわち滑り止めテープ20Lが軟化するために、載荷物の底部が滑り止めテープ20Lにより食い込みやすくなる。その結果、滑り止めテープ20L自体の防滑性を向上させることが可能となる。
【0060】
ただし、発泡剤によるブレンドポリマーの発泡倍率が1.05より小さいと、押出成形された滑り止めテープ20Lが十分に軟化しないために、該滑り止めテープ20Lの防滑性能を向上させることは困難であることが認められた。一方、上記発泡倍率が1.30より大きいと、滑り止めテ−プ20Lが軟化し過ぎてしまうことが認められた。すなわち発泡倍率が1.30より大きいと、運搬中の振動等に起因して載荷物と滑り止めテープ20Lの表面とが擦れたときに、滑り止めテ−プ20Lから多量の削りカスが発生することが懸念される。これでは、滑り止めテープ20Lの耐久性を確保し難いとともに、上記削りカスを頻繁に掃除する必要も生じるため好ましくない。それゆえに、上記ブレンドポリマーが発泡剤を含むときには、ブレンドポリマーの発泡倍率は、1.05〜1.30倍であることが望ましい。
【0061】
また、実施例2に示す原料組成のブレンドポリマーを押出成形した滑り止めテープ20Lには、発泡剤であるアゾジカルボンアミドが0.12質量%配合されているとしたが、この値もあくまでも一例である。製造上の観点から、発泡剤を安定してブレンドポリマーに配合させることの可能な配合率であればよく、アゾジカルボンアミドを含む場合には0.05質量%以上とすることが好ましい。一方、同じく製造上の観点から、ブレンドポリマーの発泡倍率を上述の如く1.05〜1.30倍の範囲となるようにするためには、アゾジカルボンアミドの配合率をブレンドポリマーの全体質量の多くとも0.2質量%以下とすることが必要である。すなわち、上記ブレンドポリマーは、アゾジカルボンアミドを0.05〜0.2質量%含むことが望ましい。
【0062】
次に、上記実施例1,2及び比較例におけるブロッキングの度合いを以下に示す。ちなみにブロッキングとは、載荷面20Tと接地面との両方に滑り止めテープ20Lが熱溶着された新品の空パレットを積層保管した場合に起こる現象のことをいう。具体的には滑り止めテープ20L同士の貼り付きによってパレットの載荷面20Tと接地面とが分離しない現象のことをいう。このような、ブロッキングとは、合成樹脂製パレット1が積載保管された時に滑り止めテ−プ20Lから発生するオリゴマ−やモノマ−等の低分子量成分のブリードアウトによって引き起こされる現象である。このブリードアウトの度合いは、積載保管された合成樹脂製パレット1の温度、時間、及び積載重量によって大きく変動する。
【0063】
ブロッキングの度合いについての評価を実施するにあたり、載荷面20Tと接地面とに滑り止めテープ20Lを熱溶着した新品のポリプロピレン製の合成樹脂製パレット1を複数積層させた。次いで、この状態で40℃の室温中で1tの荷重を4週間に渡ってかけ続けた。そして、合成樹脂製パレット1同士が自重によって分離するまで、すなわち自由落下するまでに要する時間を測定することによってブロッキングの度合いについて評価した。
【0064】
その結果、実施例1の滑り止めテープはもとより、発泡剤が含まれる実施例2の滑り止めテープを使用した合成樹脂製パレット1が分離に要した時間は、比較例の滑り止めテー
プを使用した合成樹脂製パレット1が分離に要した時間よりも短い時間であった。これにより、ブロッキングの度合いが抑制されることが確認された。
【0065】
ちなみに、ブロッキングの度合いを抑制するためには、上述の如くその主因たるブリードアウトの発生を抑制することが効果的である。またブリードアウトは、素材の重量平均分子量が大きくなればなるほど抑制される。そのため、滑り止めテープ20Lの素材の重量平均分子量を大きくすればブロッキングの度合いも抑制される。それゆえに、上述した製造上における分解生成物の発生を抑えることに加え、このようなブロッキングを抑える上でも、上記重量平均分子量は、実用上15万以上であることが望ましい。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る滑り止めテープ及びパレット形成部材によれば、以下列記するような効果が得られるようになる。
(1)パレット形成部材の材料であるポリプロピレン樹脂との熱溶着力が一般的に高いポリプロピレンの中でも、特にメタロセン触媒系ポリプロピレンを含有したブレンドポリマーによって滑り止めテープ20Lが成形される。
【0067】
このような滑り止めテープ20Lが上記パレット形成部材の載荷面20Tに熱溶着される構造であれば、滑り止めテープ20Lが載荷面20Tから引き剥がされることを抑えることが可能となる。詳述すると、底部にエッジ形状を有する載荷物の重量が、エッジ形状と滑り止めテープ20Lとの接触部において局所的に作用しつつ載荷面20T上を載荷物が摺動するとしても、接触部にて滑り止めテープ20Lが全幅剥離する可能性を低減させることが可能である。
【0068】
また接触部における局所的な全幅剥離が載荷物の摺動や転動によって滑り止めテープ20Lの長手方向に少しずつ伝線して拡大することを抑えることが可能でもある。これにより、滑り止めテープ20Lがパレット形成部材から完全に分離してしまう可能性をさらに低減させ、ひいては合成樹脂製パレット1において重要な機能である載荷物への防滑性能を長期間にわたり維持することが可能である。
【0069】
また、25〜45質量%のメタロセン触媒系ポリプロピレンがブレンドポリマーに含有されるため、上記熱溶着力を実用上必要なレベルに維持することと、上記防滑性能を維持することとが可能となる。
【0070】
(2)15〜35質量%のメタロセン触媒系ポリプロピレンが含有されるブレンドポリマーによって滑り止めテープ20Lが成形される。これにより、パレット形成部材から滑り止めテープ20Lが剥がれることを抑えつつ、メタロセン触媒系ポリエチレンによってもたらされる上記防滑性能を維持することが、より確実に可能になる。
【0071】
(3)発泡倍率が1.05〜1.30倍になる発泡剤を含むブレンドポリマーによって滑り止めテープ20Lが成形される。この構成によれば、発泡剤の発泡効果によって滑り止めテープ20Lが軟化するため、滑り止めテープ20Lの剛性が低くなる。
【0072】
このため、上述の如く載荷物の底部におけるエッジ形状と滑り止めテープ20Lとの接触部において載荷面20Tから滑り止めテープ20Lを引き剥がすような強い力が作用すると、接触部において滑り止めテープ20Lが全幅剥離するとともに、千切れやすくなる。
【0073】
それゆえに、たとえ局所的な全幅剥離が滑り止めテープ20Lに発生したとしても、この全幅剥離が滑り止めテープ20L全体に少しずつ伝線して拡大する前に、滑り止めテープ20Lが千切れることとなる。ひいては、全幅剥離の拡大によって滑り止めテープ20
Lが上部パレット形成部材2から完全に分離してしまうことを回避することが可能となる。
【0074】
(4)ブレンドポリマーの中に発泡剤として0.05〜0.2質量%のアゾジカルボンアミドが含まれるため、上述の如く全幅剥離の拡大を防止することが可能になるとともに、滑り止めテープ20Lが発現させる載荷物への防滑性能を強化することが可能ともなる。
【0075】
(5)滑り止めテープ20Lがメタロセン触媒系ポリプロピレンを含むブレンドポリマーの成形品であるため、ポリプロピレン樹脂製の合成樹脂製パレット1との熱溶着性を向上させることが可能となる。また滑り止めテープ20Lがメタロセン触媒系ポリエチレンを含むブレンドポリマーの成形品でもあるため、載荷物への防滑性能を維持することが可能ともなる。
【0076】
それゆえに、合成樹脂製パレット1に要求される防滑性を満たしつつ、載荷物の重量が局所的に作用することによる全幅剥離、及びこの全幅剥離の伝線、拡大を抑えることが可能となる。そして、載荷物への防滑性能を長期間維持する合成樹脂製パレット1を提供することが可能となる。
【0077】
なお、上記実施の形態は、以下のような態様をもって実施することもできる。
・上記滑り止めテープ20Lがポリプロピレン樹脂製のスキッドパレットに熱溶着されるとしてもよい。これにより、スキッドパレットと滑り止めテープ20Lとの熱溶着力を向上させることができる。
【0078】
・上記実施の形態では、熱分解型の発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いることとしたがこれに限られず、例えば同じく熱分解型の発泡剤たるジニトロソペンタメチレンテトラミン等を用いるようにしてもよい。このようにしても、上記(3)〜(5)に準じた効果を得ることができる。
【0079】
・発泡剤がブレンドポリマーに含まれる量は、0.05質量%未満であっても、0.2質量%より高くてもよい。このような配合量であったとしても、発泡作用が発生する以上、上記(3),(5)に準じた効果を得ることができる。
【0080】
・メタロセン触媒系ポリプロピレンがブレンドポリマーに含まれる量は、15質量%未満であっても、35質量%より高くてもよい。このような配合量であったとしても、メタロセン触媒系ポリプロピレンによるポリオレフィン樹脂からなる合成樹脂製パレット1との熱溶着力が強化される以上、上記(1)に準じた効果を得ることができる。
【0081】
・30〜50質量%のポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーと、25〜45質量%のメタロセン触媒系ポリエチレンと、メタロセン触媒系ポリプロピレンとを含むブレンドポリマーには、これらの残分としてポリプロピレンとの親和性を高めるべく相溶化剤を配合してもよい。またこの相溶化剤としては、水素化ポリブタジエン系の樹脂を用いることが望ましい。このようにしても、上記(1)〜(5)に準じた効果を得ることはできる。
【0082】
・上記実施の形態では、ブレンドポリマーの主な配合剤としてメタロセン触媒系ポリエチレンを用いたがこれに限られず、例えば、メタロセン触媒系エチレン/α−オレフィン共重合ポリマーを用いてもよい。このようにしても、上記(1)〜(5)に準じた効果を得ることはできる。
【0083】
・合成樹脂製パレット1は、二方差しのパレットであっても、四方差しのパレットであってもよい。また、滑り止めテープ20Lは、合成樹脂製パレット1の載荷面20T以外の部分、例えば接地面にも熱溶着されるとしてもよい。
【0084】
・30〜50質量%のポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーと、25〜45質量%のメタロセン触媒系ポリエチレンと、メタロセン触媒系ポリプロピレンとを含むブレンドポリマーには、これらの残分が存在することがある。例えばポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーを30質量%含み、メタロセン触媒系ポリエチレンを25質量%含み、メタロセン触媒系ポリプロピレンを15質量%含むときのように、これらの配合比率の総和が100質量%に満たないときである。このとき、例えばブロックコポリマ−ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン、スチレンブタジエンゴム、着色剤、発泡剤、相溶化財等を上記残分として適宜配合することによって、配合比率の総和が100質量%となるようにしてもよい。ただし、滑り止めテ−プとしての実用上の必要特性、すなわち本発明の目的を満たすことが前提となることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
載荷面に載置された載荷物が載荷面において滑ることを抑えつつ載荷面からの剥離を抑えることの可能な滑り止めテープ、及び該滑り止めテープを備えるパレット形成部材を提供することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…合成樹脂製パレット、2…上部パレット形成部材、3…下部パレット形成部材、20…デッキボード、21…上部桁、20H…嵌合孔、20L…滑り止めテープ、20S…載荷側内表面、20T…載荷面、30…接地ボード、31…下部桁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂からなるパレット形成部材の載荷面に熱溶着により貼り付けられてブレンドポリマーからなる滑り止めテープであって、
前記ブレンドポリマーは、
ポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーを30〜50質量%含み、
メタロセン触媒系ポリエチレンを25〜45質量%含み、
メタロセン触媒系ポリプロピレンを含むとともに、
重量平均分子量が15万以上である
ことを特徴とする滑り止めテープ。
【請求項2】
前記ブレンドポリマーは、
前記ポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマーと前記メタロセン触媒系ポリエチレンとを合わせた配合率が65〜85質量%であって、
前記メタロセン触媒系ポリプロピレンを15〜35質量%含む
請求項1に記載の滑り止めテープ。
【請求項3】
前記ブレンドポリマーは、発泡剤を含み、
前記ブレンドポリマーの発泡倍率は、1.05〜1.30倍である
請求項1または2に記載の滑り止めテープ。
【請求項4】
前記発泡剤は、アゾジカルボンアミドであり、
前記ブレンドポリマーは、
前記発泡剤を0.05〜0.2質量%含む
請求項3に記載の滑り止めテープ。
【請求項5】
ポリプロピレン樹脂からなるパレット形成部材であって、
前記パレット形成部材の載荷面には、滑り止めテープが熱溶着されており、
前記滑り止めテープは、請求項1〜4のいずれか一項に記載の滑り止めテープである
ことを特徴とするパレット形成部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−91797(P2012−91797A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238352(P2010−238352)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(590000477)日本プラパレット株式会社 (24)
【出願人】(000207540)大日製罐株式会社 (13)
【Fターム(参考)】