説明

滑り面を有するべら型針

【課題】ホールドダウン/ノックオーバ・シンカを有しないための、べら型針を提供する。
【解決手段】好ましくはその最も外側の端にカムあるいは延長部24を具備したべらからなる、シンカ無しで動作する編み機に特に適したべら型針16であって、カムあるいは延長部は滑り面28を備える。この滑り面28は相補的に滑り面或いはランナの表面を移動でき、一時的にべら16が開位置から外れて回転するのを防ぐ。それに伴う部材の摩耗は滑り面28に集中する。スプーン19あるいはべらヘッド、とくにその端23の損害、変形あるいは損傷が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は編機のための、特にホールドダウン/ノックオーバ・シンカを有しない編機のための、べら型針に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、編成シリンダ(針頭)の円周上に針溝を有する編成シリンダを含む編み機を開示する。べら型針はこれらの針溝に着座し、当該針は長さ方向において移動可能なように配置される。いくつかのセグメントから成り編成シリンダを囲む環状の静止カムアッセンブリが、長さ方向の移動を制御するために設けられ、当該カムアッセンブリは少なくとも2本の制御経路を有する。べら型針は、当該制御経路に係合するフット(足)を有する。例えば、この結果、偶数番号のべら型針は一の制御経路によって動かされ、そして、奇数番号の編み針は他方の制御経路によって動かされる。この結果、偶数および奇数番号の編み針は、位置に関して相互にずらされた2つのシャフトに送り出されるので、他のグループの針が送り出されるときに一のグループの針が編み地が上昇するのを防止する。結果として、ホールドダウン/ノックオーバ・シンカは不要となる。
【0003】
この構成を考慮して、編み糸ガイドが用いられ、そして、当該ガイドは送り出された編み針のすぐ近くに位置して編み針のべらと接触するようになる。この動作は、べらをそれらの開位置(すなわち、後方位置)に保持するために望ましいであろう。しかしながら、編み糸ガイドとべらとの接触は、べら上、特に当該べらのスプーン(匙)に、望ましくない鋭いエッジのような摩耗を生ずる結果となる。
【0004】
上述した編み機はいかなるホールドダウン・シンカも必要としないので、べら型針を相互に非常に密に配置することができるため、編み機は特に非常に小さい編み目を有する良質なニットの生産が可能である。本来シンカのために必要とされる構造上のスペースが、べら型針に利用できる。しかしながら、上述したようなべら型針の摩耗は望ましくはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/074486号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これを考慮し、本発明の目的は改良されたべら型針を提供することである。この目的は、請求項1に記載されたべら型針により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のべら型針はべらにカムを有し、当該カムは滑り面を備える。このカムは、編み糸ガイドの当接手段の対応する滑り面と接触するのに、例えば独立したランナとして当該そのランナに沿って移動する形で、適している。この結果、カムはべらを当接手段の滑り面で支えることができ、べらがその後方位置から回転し出すのを防止できる。換言すれば、当接手段に用意される滑り面は、開位置のべらを保持し、べらのカムは、滑り面を動くか、或いはこれに沿って摺動する。
【0008】
通常、カムに生じる摩耗は許容されうる。さらに、カムの滑り面は、滑り面を摺動させることで鋭い周辺縁のない平坦な区域または小面が形成されるよう構成される。
【0009】
好ましくは、カムは軸から離れて伸びるべらのスプーンの端に設けられる。これは、べらの回転軸受支えから最も遠い端である。あるいは、カムは他の位置に、例えばスプーンとべらとの軸間に設けられてもよい。
【0010】
好ましくは、べらはべらの回転軸が垂直に位置するべら中心面に関して対称になるように形成される。特に、カムは、好ましくはこのようなべら中心面に関して対称になるように設けられる。任意に、例えば編み機の回転の方向が明らかに定まっているとき、カムを、その代わりにべら中心面に関して非対称であるように配置してもよい。
【0011】
カムに設けられる滑り面は、べらの横方向に対して、同様にべらの長さ方向に対して、好ましくはやや冠状に、すなわち、凸状に湾曲している。滑り面の湾曲は、縦および横方向において異なっていてもよい。湾曲はまた、わずかに球形でもよい。凸面の、冠状の滑り面は、摩耗によって生じた平面区域を有してもよく、その場合、滑り面上の鋭いエッジ形成の危険度が非常に低下するか、好ましくは存在しない。
【0012】
カムの冠状の滑り面は、好ましくは、べらのスプーンの縁によって定められる平面を越えて伸びる。スプーンに鋸カットを有する針、当該針はフックを収容するための凹所を有するスプーンを備えたべらを有するもの、において、スプーンの縁は縁がスプーンの凹所の境界を示していることを表す。雄べら−雌フックの編み針(すなわち、フックにべらヘッドの下部端を受け入れるための凹所を有する編み針)において、「スプーン縁」は ― この場合 ― この部分に凹所を有しないべらヘッドの下部端として見られることとなる。カムが端より上に盛り上がっているが、それは縁がランナの編み糸ガイドの滑り面から遠ざけられることを確実にする摩耗予備(リザーブ)であることを意味する。ここで、前記ランナは編み糸ガイドに対して固定して設けられる。他の機械部品とのスプーンの縁の接触や縁の摩耗が防止される。
【0013】
好ましくは、カムは、べらのスプーンより狭い。好ましくは、カムの幅は、ほぼべらの軸の幅に対応する。その結果、カムが編成動作を損なわないことが可能になる。
【0014】
好ましくは、カムは、スプーンより短い。べらの長さ方向において測ると、カムの長さは、好ましくはスプーンの長さの2/3より大きくはない。また、この寸法は編成作業を損なわないよう計算される。加えて、べらの慣性はカムによってわずかに増加するだけなので、べら針の動的性質は良好なまま保たれる。
【0015】
本発明の有利な実施例のさらなる詳細は、図面または従属請求項の説明から明らかである。その場合、説明は本発明の本質的な側面およびそのほかの状況に限定される。図面は、補足として参照される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】いくつかの本発明の編み針から成る編成システムの概略説明図。
【図2】図1の編成システムの更なる概略説明図。
【図3】図1および2の編成システムのべら型針の全体配置図の詳細の斜視図。
【図4】図3と比較して拡大された、図3のべら型針のスプーンの独立した斜視図。
【図5】図3のべら型針の側面図。
【図6】図5のべら型針のべらの下側の平面図。
【図7】べら型針、すなわち、雄べら−雌フック針、の改変された実施例の側面図。
【図8】図7のべら型針のべらの下側の概略平面図。
【図9】図8のべらの詳細、そして、異なるサイズの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、編み機の編成サイトを示す。編み糸ガイド1は、好ましくは編み機に固定された状態で保持される。当該編み糸ガイドは、その一端に、編み糸3を供給するための小穴として働く、少なくとも一つの通路開口2を有する。送り出されたべら型針4(4a乃至4l)および5(5a乃至5k)は滑り面6に沿って移動する。加えて、滑り面8を有するランナ7を設けてもよい。滑り面8は滑り面6と共に1つの平面に配置されてもよく、そして、べら型針4、5のための当接手段を構成する。ランナ7は、編み糸ガイド1の台形の切り欠きに配置されてもよい。ランナ7は編み糸ガイド1に、または編成サイトに相対して静止した、編み機の他の部分に固定されてもよい。加えて、図1から明らかなように、ランナ7は開始表面10を有するわずかに曲がった端9を有してもよい。
【0018】
滑り面6および8は、べら型針4、5に設けられたべら16を開位置に保持するために設けられる。これを達成するために、べら型針4および/または5の少なくとも幾つかは図3から明らかなような、そしてべら型針4の例を参照して説明されるような、特定の様式で製作される。
【0019】
べら型針4は、一端にフック(足)13が設けられた縦長の針幹12を有する針本体11を備える。縦長の針幹12のフックは先端14を終端としている。針幹には針幹の長さ方向に伸びるべら溝15が設けられ、ここでべら16は、当該溝において回動可能に支持されている。これはべら16に対するのと同様に針幹12に対して直角な方向にある回転軸を定める、べら16のためのべら軸受支え17により達成される。ここまでは、べら型針4は基本的に従来のべら型針に対応している。
【0020】
べら16は、べら溝15内に達する軸18を有し、べら軸受支え17に回動可能に支持される。そのために、軸18は、ピンまたはべら溝15を区切る側壁上の突起と係合するのに適当な受け入機構を備えている。べら軸受支え17から離れたところにあるその端に、軸18はスプーンの形状を有するべらヘッド19を支持し、それは、図3に示すように側壁に用意される凹所20、21において、着座するように動く事が出来る。スプーン19は、軸18よりわずかに広くて縁や段がないように当該軸に接合する。その上側(後方位置において)およびそのフック14に向う側(閉位置において)に、スプーン19は、「鋸カット」とも呼ばれる凹所22を有する。図5に示される閉位置から明らかであるように、凹所22はその凹所22によって、閉位置においてフック13の先端14が受け入れられるように形成される。凹所22は、好ましくはほぼ1つの平面にあり稜線によって縁どられている。
【0021】
スプーン19の端、軸18の反対側にあるのは、基本的に軸18をまっすぐ延長した位置にある延長部24である。これは、図4から明らかである。そこで、延長部24は、凹所22の軸側の端点26と凹所のカム側端点27とを接続する線25として示される、べら16の長さ方向25に沿って伸びる。カム24はこの線25上に盛り上がる滑り面28を有する。好ましくは、滑り面28はわずかに王冠状、すなわち、凸状になる。それは、図5に示すように、滑り面28の表面をなぞる線29により示されるように、線25に盛り上がる。その結果として、滑り面28は、べらの長さ方向について曲がっている。加えて、好ましくは当該滑り面はべらの横方向において曲がっている。
【0022】
そのようにして、滑り面28も、凹所22の稜線23によって、定められる平面よりも盛り上がる。稜線23自体が曲がっておらず平面にある場合であっても、これは少なくとも部分的に正しい。
【0023】
べらの長さ方向25において、延長部は、べら軸18の端点26と凹所22の端点27との間で計測される距離より小さい。換言すれば、べらの長さ方向で、カム24は鋸カット22の長さより小さい。
【0024】
以上記載したべら型針4は、以下の様に作動する。
【0025】
図1で示すように、4a乃至針4lおよび5a乃至5kは、異なる曲線30、31をたどって送り出される2つの異なる針のグループに関連している。これは、図1により示され、加えて、図2により概略的に図示される。針4は、位置4l、4k他に従い送り出され、それから位置4c、4bおよび4aに対応して針は再び格納される。針5は、針5h乃至5dの位置に従い送り出され、それから針5は、針5、5bおよび5aの位置に対応して、再び格納される。その時、送り出された針4および5のべら16は、連続的に開位置にある。この開位置を維持するために、べら16のカム24は、滑り面6および8に沿って動いてもよい。滑り面28の王冠状の湾曲とそれがスプーン19の稜線23より上に盛り上がっている結果として、早期脆弱化あるいは稜線23の損傷、特に、稜線23の面取りまたはそれに沿ったばりの形成は効果的に防止される。このためには、滑り面28の最も高い位置が線25に対して0.03mmの寸法があれば充分である。しかしながら、好ましくは、寸法、すなわち滑り面28の最も高い地点はこれよりわずかに大きい。
【0026】
図7〜9は、本発明の他の例示的実施形態を示す。この実施例は、雄べら−雌フックのべら型針32に関する。この針は、そのフック13の上側に凹所33(「鋸カット」)を有し、べら34の端が当該凹所に着座するよう動いてもよい。
【0027】
図9からも明らかなように、べら34は、その軸35に隣接して、凹部のないべらヘッド36を有する。その自由端に、べらヘッド36はカム37として終端している。カム37と軸35との間に、べらヘッド36は、図7の閉位置により示されているように、フックの凹所にそれ自体が座すような、好ましくはまっすぐな稜線38を有する。図9において、特に、稜線は、破線で示される。それは、べら34に直角に伸びて、べら34の仮想の中心面40に対して直角で伸びる平面39を定める。(この種の中心面40 ― 稜線23により構成される平面39と同じ ― は、図1〜6のべら型針4、5およびべら16においても想定されるべきであるが、これらは示されていない。)稜線38は、起点41から端点42まで伸び、この区域において、好ましくは直線である。カム37は−好ましくは中心面40に対し垂直に広がるその滑り面43により、そして、平面40内で曲がっているその滑り面43により−この平面39を越えて伸びる。滑り面43は、平面39の上方に、好ましくは少なくとも0.03mm伸びる。閉位置において、図7に示されているように、滑り面43はフック13の方へ曲がり、当該フックの方向に凸面形を有する。
【0028】
図示されたようなスプーン型の凹所(図4〜6)を有する針の場合、そして、フック型の凹所(図7〜9)を有する針の場合、カム24または37は、描かれたように、中心面40にたいして対称形に、および、それに代えて、非対称であるように配置されてもよい。さらにまた、カム24または37は、代わりとして、軸18とスプーン19との間に、または、軸35とべらヘッド36との間に配置されてもよい。どの実施例においても、滑り面28または38は、フック13に面するカム側に配置される。
【0029】
シンカなしで動作する編み機に特に適しているべら型針には以下が具備される。すなわち好ましくはその最も外側の端上にカムまたは延長部24または37を有するべら16、34であって、前記カムまたは延長部は滑り面28、43を備える。例えば、滑り面28、43は、すべりまたはランナ面6、8に沿って補完的に動かしてもよく、一時的にべら16、32がその開位置から軸周りに旋回して出るのを防止する。材料の相応する摩耗は、滑り面28、43に集中する。スプーン19またはべらヘッド36、特にその端23またはその端38の損傷、変形また他の部分の欠損は防止される。
【符号の説明】
【0030】
1 編み糸ガイド
2 通路開口
3 編み糸
4,5 べら型針
6 滑り面
7 ランナ
8 滑り面
9 端
10 開始表面
11 針本体
12 針幹
13 フック(足)
14 先端
15 べら溝
16 べら
17 べら軸受支え
18 軸
19 べらヘッド、スプーン
20,21 凹所
23 端
24 延長部/カム
25 線
26,27 終点
28 滑り面
29 線
30,31 曲線
32 べら型針
33 凹所
34 べら
35 針幹
36 べらヘッド
37 カム、延長部
38 端
39 平面
40 中心面
41 起点
42 終点
43 滑り面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にフック(13)を有する針幹(12)と、
軸(18、35)と、当該針幹(12)上の軸により移動可能で、当該フック(13)に向かって或いは当該フックから離れて移動可能なように支持され、閉位置において、当該フック(13)を閉じるために当該フック(13)に対して当接するべらヘッド(19、36)を有するべら(16、34)と
からなり、
カム(24、37)が当該べらヘッド(19、36)に設けられ、当該カムは滑り面(28、43)を有する
編み機の、特にシンカを有しない編み機ためのべら型針(4、32)。
【請求項2】
前記カム(24、37)が前記軸(18、35)から離れて伸びる前記べらヘッド(19、36)の端に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のべら型針。
【請求項3】
前記カム(24、37)が前記べらヘッド(19、36)と軸(18、35)との間に設けられることを特徴とする請求項1に記載のべら型針。
【請求項4】
前記べらヘッド(19、36)、前記軸(18、35)および前記カム(24、37)の各々は、べら中心面(40)に関して、対称的に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のべら型針。
【請求項5】
前記べらヘッド(19、36)は、前記フック(13)に面する底面を有し、前記カム(24、37)の前記滑り面(28、43)が、当該底面を越えて伸びる
ことを特徴とする請求項1に記載のべら型針。
【請求項6】
前記滑り面(28、43)は丸みを帯びる
ことを特徴とする請求項1に記載のべら型針。
【請求項7】
前記滑り面(28、43)は頂点が前記べら中心面(40)に位置する冠状の高台を有する
ことを特徴とする請求項5に記載のべら型針。
【請求項8】
前記カム(24、37)の前記べらの長さ方向(25)に測ったときの長さは、前記べらの長さ方向(25)に測ったときの鋸カット(22)あるいはエッジ(38)の幅より小さい
ことを特徴とする請求項1に記載のべら型針。
【請求項9】
前記カム(24、37)の前記べらの長さ方向(25)に測ったときの長さは、前記べらの長さ方向(25)に測ったときの鋸カット(22)あるいはエッジ(38)の幅の2/3より小さい
ことを特徴とする請求項1に記載のべら型針。
【請求項10】
前記カム(24、37)は、前記べらヘッド(19、36)の幅より小さな幅を有することを特徴とする請求項1に記載のべら型針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−168714(P2010−168714A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−282300(P2009−282300)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(598132646)グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト (77)
【Fターム(参考)】