説明

滝口吐水口を有する吐水装置

【課題】吐水の形を従来に増して一層綺麗な滝状の流れの形とすることができ、吐水の美観を更に良好とすることのできる滝口吐水口を吐水パイプの先端部に有する吐水装置を提供する。
【解決手段】開口形状が正面視において左右方向に横長の扁平形状をなし、吐水を滝状に吐水する滝口吐水口64を吐水パイプ44の先端部に有する吐水装置22において、滝口吐水口64の左右方向である長手方向の両端の内面64aの形状を、上流側から下流側の出口に向かって開口の長手方向幅を漸次拡げる末広がり形状となすとともに、末広がり形状をなす部分よりも上流部位にストレーナ74-1,74-2を整流部材として水路を横切る状態に設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は吐水を滝状に吐出する滝口吐水口を吐水パイプの先端部に有する吐水装置に関し、詳しくは見た目に綺麗で美しい滝状吐水を吐出するための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口形状が使用者から見た正面視において左右方向に横長の扁平形状をなし、吐水を滝状に吐出する滝口吐水口を吐水パイプの先端部に有する吐水装置が、バスタブに給水を行う水栓の吐水装置等として公知である。
例えば下記特許文献1,特許文献2,特許文献3にこの種の滝口吐水口を有する吐水装置の一例が開示されている。
【0003】
この種吐水装置においては、滝口吐水口における長手方向(左右方向)両端の内面の形状を、上流側から下流側の出口に向かって開口の長手方向幅を漸次拡げる末広がり形状となした方が、吐水口から出た吐水の長手方向幅をより幅広とでき、吐水の形を滝の流れに一層近い形状とすることができる。
滝口吐水口の形状をこのような形状とする点については、下記特許文献3に開示されている。
【0004】
ところで、扁平な形状の滝口吐水口より吐出された吐水は、真円形状の吐水口から吐出された吐水に比べて、吐水口からの吐出後の形状を保ち難く、吐出後に乱れを生じ易い性質がある。
【0005】
而して滝状吐水の場合、真円形状の吐水口からの吐水に対して乱れを生じたときに、その美観が大きく損なわれてしまう。
滝状吐水の特徴は見た目に美しい点にあり、そのような滝状吐水が乱れを生じると逆に美観を大きく損ねてしまう。
【0006】
特に上記のように吐水口の長手方向両端の内面形状を末広がり形状となし、吐水パイプに沿って流れて来た水流を、吐水口の部分で末広がり形状となした場合には一層吐水口からの吐出後の形状に乱れを生じ易い。
【0007】
【特許文献1】実開平1−124866号公報
【特許文献2】特開2001−20332号公報
【特許文献3】特開2007−262738号公報
【特許文献4】実開平2−144059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情を背景とし、滝状吐水の形を従来に増して一層綺麗な形の流れとすることができ、吐水の美観を更に良好とすることのできる、滝口吐水口を吐水パイプの先端部に有する吐水装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して請求項1のものは、開口形状が正面視において左右方向に横長の扁平形状をなし、吐水を滝状に吐水する滝口吐水口を吐水パイプの先端部に有する吐水装置において、前記滝口吐水口の前記左右方向である長手方向の両端の内面の形状を、上流側から下流側の出口に向かって開口の長手方向幅を漸次拡げる末広がり形状となすとともに、該末広がり形状をなす部分よりも上流部位に、通水用の細孔を面状に分散形成して成るストレーナを整流部材として水路を横切る状態に設けてあることを特徴とする。
【0010】
請求項2のものは、請求項1において、前記滝口吐水口の前記長手方向と直交方向の短手方向の両端の内面形状を、前記上流側から下流側の出口に向かって互いに平行に延びるストレート形状若しくは該出口に向かって開口の短手方向幅を漸次狭める末細り形状となしてあることを特徴とする。
【0011】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記ストレーナが、水流の流れの方向に離隔して複数配置してあることを特徴とする。
【0012】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記滝口吐水口を有する、前記吐水パイプとは別体をなす吐水口部材が該吐水パイプの先端部に取り付けてあり、該吐水口部材に前記ストレーナが保持させてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0013】
以上のように本発明は、滝口吐水口の左右方向である長手方向の両端の内面の形状を、上流側から下流側の出口に向かって開口の長手方向幅を漸次拡げる末広がり形状となすとともに、その末広がり形状をなす部分よりも上流部位に、通水用の細孔を面状に分散形成して成るストレーナを整流部材として水路を横切る状態に設けたものである。
【0014】
吐水パイプの内部を先端部の滝口吐水口に向かって流れて来た水流は、吐水パイプの曲りの形状や慣性力の微妙な相違等によって流路断面の各部で流れの向きや勢い等が必ずしも均等でなく、これをそのまま滝口吐水口を経て外部に吐出させたときに、形状的な乱れを生じ易い。
【0015】
しかるに本発明に従って滝口吐水口における上記の末広がり形状をなす部分よりも上流部位にストレーナを整流部材として水路を横切る状態に設けておいた場合、吐水パイプを滝口吐水口に向かって流れて来た水流は、そのストレーナを通過することで、それまでの水流分布の不均等がそこで解消されて均等な流れに変換され、そしてその均等な流れに変換された水流が、上記の滝口吐水口における長手方向両端の内面の末広がり形状に案内されて、滝口吐水口から吐出される。
このとき、滝口吐水口から吐出された吐水は綺麗に滝状に拡がった形となり、従来に増してより幅広で且つ綺麗な滝状の流れとなる。
【0016】
本発明では、滝口吐水口の上記の長手方向と直交方向の短手方向の両端の内面形状を、上流側から下流側の出口に向かって互いに平行に延びるストレート形状若しくは出口に向かって開口の短手方向幅を漸次狭める末細り形状となしておくことができる(請求項2)。
【0017】
滝口吐水口における長手方向の両端の内面形状のみならず、短手方向の両端の内面の形状をも末広がり形状としてしまうと、滝口吐水口における入口部分と出口部分とで流路面積が大きく異なってしまい、水流の中心部と吐水口内面に接する外周部とで流速に差が生じる等して水の流れが全体に1つにまとまり難くなり、そのことが吐水の形を乱す要因となってしまう。
【0018】
そこでこの請求項2では、短手方向の内面形状を末広がり形状としないで、少なくとも平行なストレート形状若しくは末細り形状となしたもので、このようにすることで、長手方向に幅広く拡がった滝状吐水を実現しつつ、吐水の形に乱れが生じるのを防止することが可能となる。
【0019】
本発明ではまた、上記のストレーナを水流の流れの方向に離隔して複数配置しておくことができる(請求項3)。
このようになしておいた場合、複数のストレーナによって、滝口吐水口に流れ込む水流を複数段階に亘って整流化作用することができ、滝口吐水口からの吐水をより一層綺麗な滝状吐水となすことができる。
【0020】
尚このストレーナは本来異物除去の働きを有しているものであり、この場合ストレーナを互いに接触した状態で重ねて配置してしまうと、複数のストレーナが重なった状態で、1つ1つのストレーナの目よりも細かい単一のストレーナが形成されたのと同様の状況となり、そこで目詰まりを生じ易くなってしまう。
【0021】
而してそのような目詰まりが生じると、そのことが滝状吐水の形を乱してしまう原因となり、滝状吐水の美観を大きく損ねてしまう。
しかるにストレーナを水流の流れの方向に離隔して複数配置しておくことでこうした問題を回避することができ、且つそれぞれのストレーナによって複数段に水流の流れを整流化することができる。
【0022】
本発明ではまた、滝口吐水口を有する吐水口部材を吐水パイプと別体に構成してこれを吐水パイプの先端部に取り付け、そしてその吐水口部材に、上記のストレーナを保持させておくことができる(請求項4)。
【0023】
このようにしておけば容易にストレーナを吐水パイプの先端部に設けることができ、また吐水口部材を吐水パイプから外すことによって、ストレーナの目詰まりの掃除等のメンテナンスを容易に行うことができる。
またストレーナを上記の末広がり形状部分に対し可及的に近い位置に位置させておくことができるため、ストレーナにて流れを整え、整流化した状態の水流をそのまま滝口吐水口へと流入させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に本発明を手洗用の水栓に適用した場合の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は手洗器で、12は手洗器10における鉢部、14はその鉢部12の排水口を開閉するポップアップ式の排水栓である。
16は手洗器10におけるカウンタ部で、このカウンタ部16に手洗用の水栓18が取り付けられている。
水栓18はここでは湯水混合水栓で、水栓本体20と吐水装置22とを有しており、それらがカウンタ部16に離隔して取り付けられている。
ここで水栓本体20と吐水装置22とには、それぞれ着座プレート24,26が設けられており、それらをカウンタ部16に着座させる状態に、水栓本体20と吐水装置22とがカウンタ部16に取り付けられている。
【0025】
図2は水栓18を単独で示している。同図に示しているように水栓本体20はここではシングルレバー式のもので、ハウジングの内部に混合弁を有しており、その混合弁における可動弁体に対してレバーハンドル28が作動的に連結されている。
この水栓18では、レバーハンドル28を図中左右回動操作することで湯水の混合比率の変化即ち吐水の温度調節が行われ、また上下回動操作することで吐止水及び吐水の水量調節が行われる。
【0026】
水栓本体20には、水,湯の供給管を接続するための接続口30が設けられている。供給管を通じて送られた水,湯は、この接続口30から水栓本体内部に入り込み、そこで混合弁によって水と湯との混合が行われる。
その混合水は、水栓本体20から延び出した流出管32へと流出し、更にこの流出管32に接続された可撓性のホース34を通じて吐水装置22へと送られる。
尚、吐水装置22の側には上記の排水栓14を操作するための操作棒36が上下に移動可能に設けられている。
【0027】
水栓本体20,吐水装置22はそれぞれカウンタ部16の取付穴への挿通部38,40を有しており、それら挿通部38,40に雄ねじ部42が設けられている。
水栓本体20,吐水装置22は、各挿通部38,40をカウンタ部16の取付穴に下向きに挿通し、そしてカウンタ部16の裏側で各雄ねじ部42に固定ナットを締め込むことで、カウンタ部16に取付固定される。
【0028】
図2において、44は吐水装置22の主要素をなす吐水パイプで全体が逆U字状のグースネック形状をなしている。
ここで吐水パイプ44は、横断面形状が内周形状及び外周形状ともに左右方向(使用者から見た正面視において左右方向)に長い横長の矩形状をなし、且つ全長に亘って同一の横断面形状をなす金属製(この例では真ちゅう製)の角パイプ材を用いて構成してある。
【0029】
図3,図4及び図5に吐水装置22の先端部の構造が具体的に示してある。
図に示しているように吐水装置22の先端部は、角パイプ材から成る吐水パイプ44に対して、吐水口部材46をその取付用の取付部材48とともに組み付けて構成してある。
【0030】
取付部材48は、ここでは金属製(この例では真ちゅう製)のもので、全体として矩形筒状をなしている。
詳しくは、全体の外周形状が吐水パイプ44の内周形状に対応した横長の矩形状をなしており、図6にも示しているようにその外周面全体が四隅に直角の角部Kを有する矩形状の雄嵌合面50を成している。
【0031】
取付部材48は、角部Kを吐水パイプ44の内周形状の角部Kに合致させる状態に、吐水パイプ44の先端の開口から内部に挿入されて吐水パイプ44の内周面に嵌合し、図4及び図5に示しているようにその嵌合状態の下で、図中上端側が吐水パイプ44に対して全周溶接(ろう付又ははんだ付)されて吐水パイプ44にシール状態で接合されている。
【0032】
図4及び図5中52はその溶接による接合部を表している。
この溶接による接合部52は、同時に取付部材48の外周面と吐水パイプ44の内周面とを全周に亘りシールするシール部としての働きもなしている。
尚この取付部材48には、図4及び図5に示しているように雄嵌合面50から中心側に僅かに引き込んだ位置で図中上向きに4角環状に立ち上がる堤部54を有している。
【0033】
ここで吐水パイプ44に対する取付部材48の溶接は次のようにして行うことができる。
即ち、図8(I)に示しているように取付部材48を吐水パイプ44内部に挿入し、且つ取付部材48の外周位置に溶接材料56を環状に配置した状態で、吐水パイプ44の外側からバーナ等でこれを加熱し溶接材料56を溶かすことで、吐水パイプ44に対する取付部材48の溶接を全周に亘って行うことができる。
【0034】
この取付部材48はその内周面が、吐水パイプ44の角部Kに対応した部分が曲面をなし且つ全周に亘り角部を形成することなく連続した面を成すシール面を兼ねた雌嵌合面58とされている。
ここではこのシール面を兼ねた雌嵌合面58は、図3に示しているように図中左右方向に平行に延びる前,後の内面60と、その両端を前,後に結ぶ半円形状の曲面62で繋いだ形状の横長の楕円ないし長円形状、詳しくはトラック楕円形状(グラウンドのトラック形状)をなしている。
【0035】
一方、吐水口部材46はここでは樹脂製(この実施形態ではPPO樹脂(ポリフェニレンオキシド樹脂)製)で、全体として筒状をなしており、その内側に吐水パイプ44の管軸方向に貫通した滝口吐水口(以下単に吐水口とする)64を有している。
【0036】
ここで吐水口64は、正面視において左右方向に長く、前後方向に短い横長の扁平なスリット形状をなしており、吐水を滝状に吐出するものとされている。
この吐水口64は、図4に示しているように左右方向である長手方向両端即ち図4中左,右位置の内面が吐水口64の上流側(具体的には入口付近でそれよりも僅かに下流部位)から図中下端の出口に向かって進むにつれ、吐水口64の長手方向幅(左右方向幅)を漸次拡げる形状の傾斜面とされている。
詳しくは、図中左位置,右位置のそれぞれの内面が、吐水口64の軸線に対し出口側に進むにつれて、その軸線から離れる方向に互いに等しい角度で傾斜する傾斜面とされている。
【0037】
一方これと直角方向である前後方向(図5では左右方向)即ち短手方向の前,後位置の内面は、上流側から下流側の図中下端の出口に向かって互いに平行に延びるストレート形状の面とされている。
但し前,後位置の内面を、図9に示すように上流側から出口に向かって吐水口64の短手方向幅(前,後方向幅。但し図9では左右方向幅)を漸次狭小化するような傾斜形状の面としておくこともできる。
【0038】
尚、吐水口64の長手方向両端の内面は、それぞれ入口からその付近の僅かに下流部にかけての部分が、吐水口64の軸線と平行方向に延びるストレート形状の面とされている。
またこの吐水口部材46の内面には、図4に示しているように管軸方向に縦に延びる整流板66が一体に設けてある。
【0039】
この吐水口部材46は、図3及び図7に示すように上部の外周面が、取付部材48の雌嵌合面58に対応したトラック楕円形状の雄嵌合面68とされている。
この雄嵌合面68には、周方向に環状をなす保持溝70が形成されていて、そこに弾性を有するシール部材としてのOリング72(図4及び図5参照)が保持されている。
【0040】
吐水口部材46は、この雄嵌合面68を取付部材48の雌嵌合面58に嵌合させることによって、取付部材48を介して吐水パイプ44に取り付けられる。
このとき、雄嵌合面68の保持溝70に保持されたOリングは、雄嵌合面68と取付部材48の雌嵌合面58とによって全周に亘り径方向に弾性圧縮され、その弾性圧縮状態の下で取付部材48と吐水口部材46との間を全周に亘り水密にシール作用する。
【0041】
この吐水口部材46には、メッシュ部材,パンチングメタル材等から成り、通水用の細孔を全面に亘って分散形成した異物除去用のストレーナ74-1,74-2が整流部材として水路を横切る状態にストレーナ保持部材76を介して取り付けられ保持されている。
【0042】
このストレーナ保持部材76は、外周面及び内周面がそれぞれトラック楕円形状をなす所定厚みのリング状をなしており、そしてその図中上面の取付面78-1にストレーナ74-1が、また下面の取付面78-2にストレーナ74-2がそれぞれ固着状態に取り付けられ、それらストレーナ74-1,74-2が図中上下に離隔して位置する状態にストレーナ保持部材76に保持されている。
【0043】
このリング状をなすストレーナ保持部材76には、図中下向きに突出する、正面形状が逆T字状の係合片80が設けられていて、この係合片80が、吐水口部材46の雄嵌合面68に形成された対応する逆T字状の係合溝82に係合せしめられ、それらの係合作用によって、ストレーナ保持部材76が吐水口部材46の上端に取り付けられ、一対のストレーナ74-1,74-2とともに保持されている。
【0044】
吐水口部材46にはまた、図中上下方向(吐水パイプ44の管軸方向)の中間位置に、径方向外方に突出した4角形状の当接部84が設けられている。
吐水口部材46は、取付部材48への挿入時にこの当接部84が取付部材48の図中下端に当接することによって、その挿入量が規定される。
【0045】
吐水口部材46にはまた、その先端(図中下端)に吐水口64を残して吐水パイプ44の先端開口を閉鎖する横長の矩形状の閉鎖部86が設けられている。
吐水口部材46は、吐水パイプ44内部への挿入状態で、この閉鎖部86が吐水パイプ44の先端内周面に内嵌状態に嵌合し、吐水パイプ44の先端の開口の、吐水口64周りの部分を閉鎖する。
【0046】
吐水口部材46は、図7に示すようにその前面と後面とが前後対称形状をなしており、そしてそれぞれの面に左右方向に細長い矩形状の係合凹部88が設けられている。
尚前面と後面とが対称形状とされているのは、吐水口部材46を取り付ける際に前後の向きが逆向きであっても取付可能とするためである。
【0047】
図3において、90はこの係合凹部88において吐水口部材46を吐水パイプ44に脱着可能に固定するための固定部材(ここでは樹脂製)であって、吐水パイプ44にはこれに対応して左右に長穴形状をなす貫通の固定孔92が設けられている。
【0048】
固定部材90は、図5に示しているようにその左右端部に、左右方向に弾性を有する弾性爪93を有しており、またそれら一対の弾性爪93の間に、吐水口部材46の係合凹部88に係合する係合突部94を有している。
ここで一対の弾性爪93のそれぞれには、図5中上下に互いに逆方向に傾斜する傾斜形状のカム面95と96とが設けられている。
また係合突部94の付根部には段付部98が設けられている。
【0049】
この固定部材90による吐水口部材46の吐水パイプ44への固定は次のようにして行われる。
即ち、図5に示しているように吐水口部材46を吐水パイプ44内部に挿入し、そして雄嵌合面68を取付部材48の雌嵌合面58に嵌合させた状態の下で、固定部材90を吐水パイプ44の固定孔92に押し込むと、一対の弾性爪93がカム面95のカム作用で互いに接近する方向に弾性変形し、その弾性変形を伴って固定部材90が固定孔92に嵌め込まれる。
このとき、吐水パイプ44の固定孔92を通過した一対の弾性爪93が、カム面96において固定孔92の縁部に係合し、吐水パイプ44に固定される。
【0050】
またこのとき、固定部材90の係合突部94が吐水口部材46の係合凹部88の内部に入り込んで係合し、ここにおいて吐水口部材46が吐水パイプ44、具体的には取付部材48から抜止状態に固定される。
この固定部材90は、このようにして吐水パイプ44に嵌込状態に固定した後において、必要が生じたとき容易にこれを取り外すことができる。
【0051】
詳しくは、固定部材90の段付部98にマイナスドライバー等の工具の先端部を当てて抜出方向の力を加えると、固定部材90の一対の弾性爪93がカム面96のカム作用で互いに接近する方向で弾性変形して、吐水パイプ44の固定孔92に対する一対の弾性爪93の係合が解除され、ここにおいて固定部材90を吐水パイプ44から外すことができる。
而して固定部材90を外すことによって、吐水口部材46を取付部材48及び吐水パイプ44から容易に外部へと抜き出すことができる。
【0052】
図8は、本実施形態における吐水口部材46の取付けの手順を示している。
上述したようにこの実施形態では、図8(I)に示すように取付部材48を溶接材料56とともに吐水パイプ44内部且つ一定深さの奥部まで挿入し、その状態で吐水管44周りから溶接材料56をバーナ等にて炙り加熱することで溶接材料56を溶かし、取付部材48を吐水パイプ44に溶接接合する。
【0053】
そしてその後、一対のストレーナ74-1,74-2をストレーナ保持部材76にて吐水口部材46に組み付けた状態の下で、吐水口部材46を吐水パイプ44の先端開口からその内部に挿入し、そして吐水口部材46の雄嵌合面68を、取付部材48の雌嵌合面58に嵌合させる。
そしてその後、固定部材90を吐水パイプ44の固定孔92に嵌め込むことで、吐水口部材46を吐水パイプ44から抜止状態に且つ脱着可能に固定することができる。
【0054】
この実施形態の場合、図2のホース34を通じて吐水パイプ44に送られた水は、吐水パイプ44の内周面を直接の流水面として吐水パイプ44に沿って先端側まで流れ、そして先ず吐水口部材46に保持された一対のストレーナ74-1,74-2を通過して流れる。
このとき、水の流れは一対のストレーナ74-1,74-2によって2段階に整流され、吐水口部材46の基端部位において先ずこれらストレーナ74-1,74-2によって流れが整えられる。
【0055】
以上のように本実施形態において、吐水パイプ44の内部を先端部の吐水口64に向かって流れて来た水流は、吐水パイプ44の曲りの形状や慣性力の微妙な相違等によって流路断面の各部で流れの向きや勢い等が必ずしも均等でなく、これをそのまま吐水口64を経て外部に吐出させたときに、形状的な乱れを生じ易い。
【0056】
しかるにこの本実施形態に従って吐水口64における上記の末広がり形状をなす部分よりも上流部位にストレーナ74-1,74-2を整流部材として水路を横切る状態に設けておいた場合、吐水パイプ44を吐水口64に向かって流れて来た水流は、そのストレーナ74-1,74-2を通過することで、それまでの水流分布の不均等がそこで解消されて均等な流れに変換され、そしてその均等な流れに変換された水流が、上記の吐水口64における長手方向両端の内面64aの末広がり形状に案内されて、吐水口64から吐出される。
このとき、吐水口64から吐出された吐水は綺麗に滝状に拡がった形となり、従来に増してより幅広で且つ綺麗な滝状の流れとなる。
【0057】
尚、整流部材としてのストレーナを吐水口64の出口辺りに設けた場合には、吐水口64から吐出された吐水の形状,外観にストレーナによる影響が表れ、見た目に綺麗で美しい滝状吐水を実現することができない。
【0058】
図10(ロ)は、吐水口64の出口付近にストレーナを設けたときの吐水の状態を表したものである。
同図に示しているようにこの場合の吐水の形状,外観は、水流がストレーナを通って出てきたことが明らかに分ってしまうような形状,外観を呈する。
一方図10(イ)は、本実施形態に従って構成した吐水装置からの吐水の形状,外観を表したもので、同図に示しているようにこの場合には、ストレーナ74-1,74-2による影響が吐水の形状,外観に表れず、綺麗で美観に優れた良好な滝状吐水を実現することができる。
【0059】
本実施形態では、吐水口64の上記の長手方向と直交方向の短手方向の両端の内面64bの形状を、上流側から下流側の出口に向かって互いに平行に延びるストレート形状(図8参照)若しくは出口に向かって開口の短手方向幅を漸次狭める末細り形状(図9参照)となしている。
【0060】
吐水口64における長手方向の両端の内面形状のみならず、短手方向の両端の内面の形状をも末広がり形状としてしまうと、吐水口64における入口部分と出口部分とで流路面積が大きく異なってしまい、水流の中心部と吐水口64内面に接する外周部とで流速に差が生じる等して水の流れが全体に1つにまとまり難くなり、そのことが吐水の形を乱す要因となってしまう。
【0061】
そこで本実施形態では、短手方向の内面64bの形状を末広がり形状としないで、少なくとも平行なストレート形状若しくは末細り形状となしたもので、このようにすることで、長手方向に幅広く拡がった滝状吐水を実現しつつ、吐水の形に乱れが生じるのを防止することができる。
【0062】
本実施形態ではまた、上記のストレーナ74-1,74-2を水流の流れの方向に離隔して配置していることから、ストレーナ74-1,74-2によって、吐水口64に流れ込む水流を2段階に亘って整流化作用することができ、吐水口64からの吐水をより一層綺麗な滝状吐水となすことができる。
【0063】
ここでストレーナ74-1,74-2は本来異物除去の働きを有しているものであり、この場合ストレーナ74-1,74-2を互いに接触した状態で重ねて配置してしまうと、ストレーナ74-1,74-2が重なった状態で、1つ1つのストレーナの目よりも細かい単一のストレーナが形成されたのと同様の状況となり、そこで目詰まりを生じ易くなってしまう。
【0064】
而してそのような目詰まりが生じると、そのことが滝状吐水の形を乱してしまう原因となり、滝状吐水の美観を大きく損ねてしまう。
しかるにストレーナ74-1,74-2を水流の流れの方向に離隔して配置しておくことで、こうした問題を回避することができ、且つそれぞれのストレーナ74-1,74-2によって2段に水流の流れを整流化することができる。
【0065】
本実施形態ではまた、吐水口64を有する吐水口部材46を吐水パイプ44と別体に構成して、これを吐水パイプ44の先端部に取り付け、そしてその吐水口部材46に上記のストレーナ74-1,74-2を保持させていることから、容易にストレーナ74-1,74-2を吐水パイプ44の先端部に設けることができ、また吐水口部材46を吐水パイプ44から外すことによって、ストレーナ74-1,74-2の目詰まりの掃除等のメンテナンスを容易に行うことができる。
またストレーナ74-1,74-2を上記の末広がり形状部分に対し可及的に近い位置に位置させておくことができるため、ストレーナ74-1,74-2にて流れを整え、整流化した状態の水流をそのまま吐水口64へと流入させることができる。
【0066】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態である吐水装置を備えた水栓を手洗器に設置状態で示す図である。
【図2】図1の水栓を単独で示す図である。
【図3】同実施形態の吐水装置を各部品に分解して示す斜視図である。
【図4】同実施形態の吐水装置の要部の縦断面図及び横断面図である。
【図5】図4とは90°異なった方向の縦断面図及びその一部の拡大図である。
【図6】同実施形態における取付部材の単品の斜視図である。
【図7】同実施形態における吐水口部材の単品の斜視図である。
【図8】同実施形態における吐水口部材の取付けの手順を説明するための説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態の要部の図である。
【図10】(イ)は本実施形態の吐水装置からの吐水の形状,外観を表した図、(ロ)は比較例の吐水装置からの吐水の形状,外観を表した図である。
【符号の説明】
【0068】
22 吐水装置
44 吐水パイプ
46 吐水口部材
64 滝口吐水口
64a,64b 内面
74-1,74-2 ストレーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口形状が正面視において左右方向に横長の扁平形状をなし、吐水を滝状に吐水する滝口吐水口を吐水パイプの先端部に有する吐水装置において
前記滝口吐水口の前記左右方向である長手方向の両端の内面の形状を、上流側から下流側の出口に向かって開口の長手方向幅を漸次拡げる末広がり形状となすとともに、
該末広がり形状をなす部分よりも上流部位に、通水用の細孔を面状に分散形成して成るストレーナを整流部材として水路を横切る状態に設けてあることを特徴とする滝口吐水口を有する吐水装置。
【請求項2】
請求項1において、前記滝口吐水口の前記長手方向と直交方向の短手方向の両端の内面形状を、前記上流側から下流側の出口に向かって互いに平行に延びるストレート形状若しくは該出口に向かって開口の短手方向幅を漸次狭める末細り形状となしてあることを特徴とする滝口吐水口を有する吐水装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記ストレーナが、水流の流れの方向に離隔して複数配置してあることを特徴とする滝口吐水口を有する吐水装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記滝口吐水口を有する、前記吐水パイプとは別体をなす吐水口部材が該吐水パイプの先端部に取り付けてあり、該吐水口部材に前記ストレーナが保持させてあることを特徴とする滝口吐水口を有する吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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