説明

漁船用集魚灯装置

【課題】発光ダイオードから成る数多くの集魚灯を、安定的に点灯させることができ、しかも燃料費を大幅に削減することができる漁船用集魚灯装置を提供する。
【解決手段】この漁船用集魚灯装置2は、漁船の航行用エンジン1により駆動される発電機3aと、発電機3aからの出力される電力から充電に用いる直流電力を生成する充電装置3と、上記充電装置3から出力される直流電力により充電を行うバッテリー4と、上記バッテリー4から供給される直流電力を交流電力に変換するインバーター6と、発光ダイオードから成る集魚灯9と、上記インバーター6から供給される交流電力を直流電力に変換し、この変換した直流電力を上記集魚灯9に供給する電源装置7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光ダイオードから成る集魚灯を備えた漁船用集魚灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、烏賊釣り漁等においては、漁場において集魚灯(メタルハライドランプや高輝度放電ランプ等)を点灯させる漁等が行われている。そして、このような漁を行う漁船には、航行用エンジンの他に、集魚灯専用の発電機を駆動する専用エンジンを搭載し、操業中には、漁船が潮で流されないように、航行用エンジンと、上記発電機用エンジンの両方のエンジンを駆動して漁を行っている。
また、近年では、消費電力の少ない発光ダイオードから成る集魚灯も提案されている(特許文献1)。
【0003】
一方、船舶ではないが、自動車の技術分野においては、特許文献2に開示されているように、自動車のエンジンによって発電機を駆動し、この発電機で発電された電力を二次電池に充電し、この二次電池から供給される電力でヘッドライトを点灯させることが行われている。更に、特許文献3は、高電圧二次電池によってヘッドライトを点灯させる技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−236214号公報
【特許文献2】特開平05−270330号公報
【特許文献3】特開2005−205968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、集魚灯を用いる漁船の操業中は、上記のように、漁場において、漁船が潮で流されないようにするために、航行用エンジンを常に駆動し、別途、集魚灯を点灯させるために、発電機駆動用の専用エンジンも駆動しなければならない。
このように、操業中に二つのエンジンを駆動させることは、燃料がそれだけ多く必要となるため、燃料代が高騰した昨今においては、燃料費が漁師にとって大きな負担となっている。
また、特許文献1には、上記発光ダイオードから成る集魚灯を使用して燃料費を削減することも開示されているが、特許文献1に開示されている集魚灯の点灯システムも、発電機駆動用の専用エンジンを使用するものであるし、その電力供給システム自体の供給安定性もあまり高くなく、数多くの集魚灯を安定的に点灯させることができないという問題もあった。
また、自動車の分野で使用されている特許文献2又は特許文献3に開示された二次電池搭載システムを利用して、上記発光ダイオードから成る漁船用の集魚灯を点灯させることも考えられるが、自動車の分野で使用されている二次電池搭載システムの規模を単に大きくしたとしても、数多くの集魚灯を安定的に点灯させることは容易でない。
【0006】
この発明は、発光ダイオードから成る数多くの集魚灯を、安定的に点灯させることができ、しかも燃料費を大幅に削減することができる漁船用集魚灯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明の漁船用集魚灯装置は、漁船の航行用エンジンにより駆動される発電機の電力によって充電に用いる直流電力を生成する充電装置と、上記充電装置から出力される直流電力により充電を行う二次電池と、上記二次電池から供給される直流電力を交流電力に変換するインバーターと、発光ダイオードから成る集魚灯と、上記インバーターから供給される交流電力を直流電力に変換し、この変換した直流電力を上記集魚灯に供給する電源装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成であれば、上記充電装置の発電機は、漁船の航行用エンジンによって駆動されるので、発電機用エンジンを別途備える必要がなく、発電機用エンジンを駆動するための燃料を削減することができる。また、上記二次電池から供給される直流電力をそのまま集魚灯に供給するのではなく、上記二次電池の直流電力を上記インバーターによって交流電力に変換し、更に上記電源装置によって再び直流電力に変換するので、上記発光ダイオードから成る集魚灯を数多く備える場合でも、上記直流電力を上記集魚灯に安定的に供給することが可能になる。
【0009】
上記の漁船用集魚灯装置において、上記充電装置から出力される直流電力を上記インバーターに供給する電力供給ラインを備えるのがよい。これによれば、上記充電装置における供給電力量に対して上記二次電池の充電容量を小さくした場合でも上記インバーターには上記電力供給ラインによって電力が供給されるので、このように上記二次電池の充電容量を小さくしてコスト低減や重量減を図りつつ集魚灯に十分な電力を供給することが可能になる。また、このように上記電力供給ラインによって上記充電装置から上記インバーターに電力が供給されると、上記集魚灯の点灯時における上記二次電池の電気の減り量も少なくなるので、上記集魚灯を長時間点灯させることが可能になり、また、漁の後における上記二次電池に対する充電完了時間を短くすることができる。
【0010】
また、上記漁船用集魚灯装置は、上記充電装置と上記二次電池と上記インバーターと上記電源装置と上記集魚灯からなるセットを複数備えたものでもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明の漁船用集魚灯装置であれば、発電機用エンジンを別途備える必要がないので漁船の燃料代を節約することができると共に、発光ダイオードから成る集魚灯を安定的に点灯させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態に係る漁船用集魚灯装置の1セットを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示しているように、漁船用集魚灯装置2は充電装置3を備えており、この充電装置3によって二次電池(以下、バッテリーという)4の充電を行うようになっている。
【0014】
各充電装置3における発電機3aは、漁船の航行用エンジン1によって駆動される。上記発電機3aは、例えば、整流回路を備えた発電機であって直流電力を出力する。また、上記充電装置3は、モーターリレー3b及びレギュレーター3cを備えており、上記発電機3aが出力する直流電力の変動を抑制して安定した直流電力を生成すると共に上記バッテリー4の電圧を監視しながら充電電流を断続的に上記バッテリー4に供給することによって高速充電が行えるようになっている。また、上記充電装置3は上記バッテリー4の満充電を検知したときにはモーターリレー3bの動作によって充電電力の供給を停止する自動停止制御も行う。更に、上記充電装置3には電力供給ライン5が設けられており、この電力供給ライン5によって上記バッテリー4をスルーしてインバーター6に上記充電装置3が出力する直流電力が供給されるようにしている。
【0015】
上記バッテリー4は例えばリチウムポリマーバッテリーから成る。また、上記バッテリー4は、この実施形態では、充電電圧がDC24Vのものが用いられており、このようなバッテリー4を1台の充電装置3に対して4台接続している。また、この実施形態のバッテリー4は、入力端子と出力端子とを備えており、上記充電装置3の充電電力の供給を上記入力端子で受けながら、上記出力端子から電力の供給(放電)が行えるようになっている。そして、この実施形態では、上記4台のバッテリー4の出力端子に2台のインバーター6を接続している。
【0016】
上記インバーター6の入力部には上記バッテリー4から供給される直流電力及び上記電力供給ライン5から供給される直流電力が入力される。そして、インバーター6は、上記入力部から入力した直流電力を交流電力に変換し、この交流電力をインバーター6の出力部に接続された電源装置7に供給する。この実施形態では、上記インバーター6として、出力電圧がAC100V仕様のものを用いている。また、このインバーター6は、上記バッテリー4の電圧を監視して出力電力に対して入力電力が過少となるような事態が生じたときには動作を停止するといった制御等も行うようになっている。
【0017】
上記電源装置7は、上記インバーター6から供給されるAC100Vを直流電力に変換し、この直流電力によって集魚灯9を点灯駆動する。すなわち、この電源装置7によって上記バッテリー4の出力であるDC24Vが安定した集魚灯9用の直流電力になる。そして、この実施形態では、各電源装置7に出力端子が設けられており、出力端子と集魚灯9とをリード線8によって接続できるようにしている。
【0018】
上記集魚灯9は、烏賊釣り用であれば烏賊が好む青色光を発光する発光ダイオードが用いられマトリクス状に配置収納される。また、背面には放熱のためのフィンが設けられる。
【0019】
上記集魚灯9は、図示していない船上に設置した取り付け台に吊り下げられるなどして海面を照らすことができるように設けられる。一方、上記充電装置3、バッテリー4、インバーター6及び電源装置7は、船内に設けられる。そして、この船内に設けた上記電源装置7から上記リード線8によって上記船上の集魚灯9に電力が供給されることになる。
【0020】
このような漁船用集魚灯装置10を搭載する漁船の航行用エンジン1を始動して漁場へと向かうとき、上記始動された航行用エンジン1によって上記充電装置3の発電機3aが駆動され、この充電装置3によって上記バッテリー4に充電が行われることになる。漁港から漁場までに1時間から2時間程度かかるとすると、その間にバッテリー4の充電(高速充電)を完了することが可能である。漁場に着き、上記電源装置7の図示していないスイッチをオンし、上記集魚灯9を点灯させると、発光ダイオードから出射される特定色の波長光に惹かれて漁船の回りに目当ての獲物が集まってくることになる。漁場に着いても航行用エンジン1が停止されることはなく、この航行用エンジン1によって発電機3aに発電をさせることができる。
また、漁場から帰港の際にも上記バッテリー4に充電される。
【0021】
このように、漁船に上記漁船用集魚灯装置10を搭載すると、この漁船用集魚灯装置10の上記発電機3aは漁船の航行用エンジン1によって駆動されるので、発電機用エンジンを別途備える構成に比べて燃料代を節約することができる。また、上記バッテリー4から供給される直流電力を直流電力のままで集魚灯9に供給するのではなく、上記バッテリー4の直流電力を上記インバーター6によって交流電力に変換し、更に上記電源装置7によって再び直流電力に変換して集魚灯9に供給するので、上記集魚灯9を数多く配備する場合でも、直流電力を上記集魚灯9に安定的に供給することが可能になる。
【0022】
また、この実施形態では、上記充電装置3に電力供給ライン5を設け、この電力供給ライン5によって上記バッテリー4をスルーして上記インバーター6に上記充電装置3が出力する直流電力が供給されるようにしている。このように電力供給ライン5を備えると、上記充電装置3における供給電力量に対して上記バッテリー4の充電容量を小さくした場合でも上記インバーター6には上記電力供給ライン5によって電力が供給されるので、このように上記バッテリー4の充電容量を小さくしてコスト低減や重量減を図りつつ集魚灯9に十分な電力を供給することが可能になる。換言すれば、上記充電装置3の供給電力を上記バッテリー4への充電に充てると共に上記電力供給ライン5によってインバーター6にも供給するので、上記バッテリー4と上記電力供給ライン5によるトータルの供給電力で上記充電装置3の発電電力を集魚灯9に供給できることになり、いたずらにバッテリー4を増やしてしまうという事態を回避することができることになる。また、このように上記電力供給ライン5によって上記充電装置3から上記インバーター6に電力が供給されると、上記集魚灯9の点灯時における上記バッテリー4の電気の減り量も少なくなるので、上記集魚灯9を長時間点灯させることが可能になり、また、漁の後における上記バッテリー4に対する充電完了時間を短くすることができる。
【0023】
なお、上記実施形態では、上記電源装置7の出力端子の全てに上記青色光を出射する発光ダイオードから成る集魚灯9を接続したが、一部の出力端子に或いは追加の出力端子に船上作業用灯を接続するようにしてもよい。この船上作業用灯は例えば白色光を出射する発光ダイオードを備えるものである。また、集魚灯9を消灯して上記船上作業用灯だけを点灯させているときには、消費電力は少なくなるので、上記充電装置3が出力する電力の殆どはバッテリー4への充電に充てられる状態になる。また、漁を終えて帰港するときにも上記充電装置3が出力する電力の殆どはバッテリー4への充電に充てられる状態になる。
【0024】
また、上記実施形態では上記充電装置3と上記バッテリー4と上記インバーター6と上記電源装置7と上記集魚灯9からなるセットを1セット備えた漁船用集魚灯装置を示したが、複数セットを備える漁船用集魚灯装置としてもよいものである。
【0025】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 航行用エンジン
2 漁船用集魚灯装置
3 充電装置
3a 発電機
4 バッテリー(二次電池)
5 電力供給ライン
6 インバーター
7 電源装置
8 リード線
9 集魚灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漁船の航行用エンジンにより駆動される発電機の電力によって充電に用いる直流電力を生成する充電装置と、上記充電装置から出力される直流電力により充電を行う二次電池と、上記二次電池から供給される直流電力を交流電力に変換するインバーターと、発光ダイオードから成る集魚灯と、上記インバーターから供給される交流電力を直流電力に変換し、この変換した直流電力を上記集魚灯に供給する電源装置とを備えたことを特徴とする漁船用集魚灯装置。
【請求項2】
上記充電装置から出力される直流電力を上記インバーターに供給する電力供給ラインを備えたことを特徴とする請求項1に記載の漁船用集魚灯装置。
【請求項3】
上記充電装置と上記二次電池と上記インバーターと上記電源装置と上記集魚灯からなるセットを複数セット備えて成る請求項1又は請求項2に記載の漁船用集魚灯装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−170446(P2012−170446A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38586(P2011−38586)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(592006040)東亜無線電機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】