説明

漏斗型分離具

【課題】咀嚼能率測定方法において被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて咀嚼能率測定用材料の咬断片と唾液とを分離させる操作を容易に行うことができ、安価且つ容易に製作することができる漏斗型分離具を提供する。
【解決手段】被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて該咬断片と唾液とに分離させる漏斗型分離具1を、使用時に円錐形に形成される縦糸と横糸とがその交差部で溶着されている熱可塑性合成樹脂製網状シートから成り、円錐形に形成された際に互いに突き合わされる端縁部1a,1aにそれぞれ端縁部側が短く該端縁部1a,1aから離れた側が長い台形又は台形に近似した形状の舌片1b,1bが所定間隔で設けられており、該舌片1b,1bは円錐形に形成された際に端縁部側の短い辺がそれぞれ他方の端縁部側の短い辺間に係合する構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の咀嚼能率を測定するために被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて咀嚼能率測定用材料の咬断片と唾液とに分離させる漏斗型分離具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間が生命活動を維持するためには、咀嚼能率が良好であることが重要である。咀嚼は、単に食物を切断・粉砕・唾液との混合を行って嚥下し易くするのみならず、口腔内を刺激して各臓器の消化液の分泌を促進し、口腔内の自浄を行い、また食物と共に口腔内に侵入した異物の除去等を行う役目を為すのである。また咀嚼に障害がある場合は、その原因として口腔内の種々の疾患が原因になっている場合が多く、例えばう蝕・歯周病・咬合不適・義歯の不具合等が考えられる。従って、咀嚼を良好に行えない場合には、早急にその原因を究明して適切な治療を行うことが必要である。
【0003】
このように人間が生命活動を維持するために重要な咀嚼能率を測定する方法として、近年唾液又は所定温度の温水に溶解される成分を略均一に含有し、咬合に適した所定の硬さを有するグミゼリーを咀嚼能率の測定用材料として使用する咀嚼能率測定方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0004】
特許文献1に開示されている方法は、咀嚼能率測定用材料として唾液に溶解される成分を略均一に含有し、咬合に適した所定の硬さを有するグミゼリーを使用する咀嚼能率測定方法を開示するものであり、被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて咀嚼能率測定用材料の咬断片と唾液とを分離させ、唾液中に移行した咀嚼能率測定用材料の特定成分の量を検出試薬で測定しようとする方法を開示するものである。
【0005】
また特許文献2に開示されている方法は、咀嚼能率測定用材料として所定温度の温水に溶解される成分を略均一に含有し、咬合に適した所定の硬さを有するグミゼリーを使用する咀嚼能率測定方法を開示するものであり、被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて咀嚼能率測定用材料の咬断片と唾液とを分離させ、咀嚼能率測定用材料の咬断片を水洗した後に所定温度の温水中で攪拌して温水中に移行した咀嚼能率測定用材料の特定成分の量を検出試薬で測定しようとする方法を開示するものである。
【0006】
このように従来の咀嚼能率測定方法においては、被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて咀嚼能率測定用材料の咬断片と唾液とを分離させることが必要であるので、被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて咀嚼能率測定用食品の咬断片と唾液とを分離させる操作を容易に行うことができ、且つ安価且つ容易に製作することができる使い捨て可能な漏斗型分離具が用意されていると便利である。
【0007】
従来の使い捨て可能な漏斗型分離具としては、排出口周りの漏斗壁に、孔を多数設けた使い捨て取っ手付き多孔漏斗がある(例えば、特許文献3参照。)。この漏斗は、単なる紙製であるので唾液のような液体の使用に適さないばかりか、排出口周りの漏斗壁に設けた多数の孔が打ち抜き加工により形成された丸孔であるので、打ち抜き加工後に漏斗紙材から丸孔部分が完全に除去されているか否かを検査しなければならず、若し打ち抜かれた丸孔部分が漏斗紙材から除去されずに残ってしまっていると、咀嚼能率測定用材料の咬断片と唾液とを分離させる際に残っていた丸孔部分が咀嚼能率測定用材料の咬断片と唾液とのいずれかに混入して咀嚼能率の測定に支障を来たすという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−102606号公報
【特許文献2】再表2006−46377号公報
【特許文献3】実用新案登録第3135073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、咀嚼能率を測定する際に、被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて咀嚼能率測定用材料の咬断片と唾液とを分離させる操作を容易に行うことができ、従来の漏斗型分離具のように打ち抜き加工により形成された丸孔部分が漏斗紙材から除去されずに残ってしまうという欠点がなく、且つ安価且つ容易に製作することができる漏斗型分離具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、被験者の咀嚼能率を測定するために被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて咀嚼能率測定用材料の咬断片と唾液とを分離させる漏斗型分離具を、使用時に円錐形に形成される縦糸と横糸とがその交差部で溶着されている熱可塑性合成樹脂製網状シートから成り、円錐形に形成された際に互いに突き合わされる端縁部にそれぞれ端縁部側が短く該端縁部から離れた側が長い台形又は台形に近似した形状の舌片が所定間隔で設けられており、該舌片は円錐形に形成された際に端縁部側の短い辺がそれぞれ他方の端縁部側の短い辺間に係合する構成とすればよいことを究明して本発明を完成したのである。
【0011】
即ち本発明は、被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて該咬断片と唾液とに分離させる漏斗型分離具であって、使用時に円錐形に形成される縦糸と横糸とがその交差部で溶着されている熱可塑性合成樹脂製網状シートから成り、円錐形に形成された際に互いに突き合わされる端縁部にそれぞれ端縁部側が短く該端縁部から離れた側が長い台形又は台形に近似した形状の舌片が所定間隔で設けられており、該舌片は円錐形に形成された際に端縁部側の短い辺がそれぞれ他方の端縁部側の短い辺間に係合することを特徴とする漏斗状分離具である。
【0012】
そしてこのような漏斗型分離具において、熱可塑性合成樹脂製網状シートの網の目の広さが0,5〜2mm2であることが好ましいことも究明したのである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る漏斗状分離具は、使用時に円錐形に形成される縦糸と横糸とがその交差部で溶着されている熱可塑性合成樹脂製網状シートから成るので、耐水性を有すると共に、使用に供するまでは単なるシート状を成しているため保管等に場所を取ることがなく、また全体が網状であるので例えば円形の穴を穿設した場合のように穿設された部分がシート状の基材から切り取られずに残ってしまうという現象が生じることがなく、円錐形に形成された際に互いに突き合わされる端縁部にそれぞれ端縁部側が短く端縁部から離れた側が長い台形又は台形に近似した形状の舌片が所定間隔で設けられており、これらの舌片は円錐形に形成された際に端縁部側の短い辺がそれぞれ他方の端縁部側の短い辺間に係合して円錐形状を保持するので非常に使い勝手が良く、また構造が簡単なので安価且つ容易に製作することができるのである。
【0014】
また、熱可塑性合成樹脂製網状シートの網の目の広さが0,5〜2mm2であれば、前述した咀嚼能率測定用材料として咬合に適した所定の硬さを有するグミゼリーを使用した場合に咀嚼能率測定用材料の咬断片を漏斗型分離具内に残し、唾液のみを漏斗型分離具から流出させるのに好適なのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る漏斗型分離具の一実施例を示す平面図である。
【図2】図1の漏斗型分離具を円錐形に形成し、判り易いように輪郭を実線で示した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る漏斗型分離具の他の実施例を示す平面図である。
【図4】図3の漏斗型分離具を円錐形に形成し、判り易いように輪郭を実線で示した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明に係る漏斗型分離具について詳細に説明する。
【0017】
図面中、1は被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて咬断片と唾液とに分離させる本発明に係る漏斗型分離具であって、縦糸と横糸とがその交差部で溶着されている熱可塑性合成樹脂製網状シートから成るので耐水性を有している。
【0018】
この本発明に係る漏斗型分離具1を構成する縦糸と横糸とがその交差部で溶着されている熱可塑性合成樹脂製網状シートを構成する素材としては、高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,ポリプロピレン等が使用可能である。そして、その形状としては使用時に円錐形に形成されるものであるので、円錐形に形成された際に互いに突き合わされる端縁部1a,1aにそれぞれ端縁部側が短く端縁部から離れた側が長い台形又は台形に近似した形状の舌片1b,1bが所定間隔で設けられており、この舌片1b,1bは円錐形に形成された際に端縁部側の短い辺がそれぞれ他方の端縁部側の短い辺間に係合すると図2及び図4に示すように円錐形状に保持されるのである。
【0019】
この舌片1b,1bの端縁部側が短く端縁部から離れた側が長い台形又は台形に近似した形状とは、図1及び図2に示した実施例のように完全な台形状のみならず、図3及び図4に示した実施例のように端縁部から離れていく辺が円弧状であったり、端縁部から離れた辺が円弧状であったりするものも含むものである。即ち、円錐形に形成された際に端縁部側の短い辺がそれぞれ他方の端縁部側の短い辺間に係合すると、他方の端縁部側の短い辺間に位置した一方の端縁部側の短い辺は、他方の端縁部側の舌片1bの端縁部から離れていく辺間がその一方の端縁部側の短い辺の長さより短くなっていくので他方の端縁部側の短い辺間から外れることがなく、図2及び図4に示すように円錐形状に保持されるのである。そしてこのように円錐形に形成された際に端縁部側の短い辺がそれぞれ他方の端縁部側の短い辺間に係合させるには、熱可塑性合成樹脂製網状シートの弾性を利用すれば容易に行うことができるのである。
【0020】
この熱可塑性合成樹脂製網状シートの網の目の広さが0,5〜2mm2、より好ましくは0,5〜1,5mm2であれば、粘性を有している唾液が容易に流出すると共に、咀嚼能率測定用材料の咬断片が網目間から漏斗型分離具外に流出する可能性が低いのであり、また全体に網目を有しているので漏斗状分離具を傾けなくても唾液をスムースに流出させることができるのである。
【0021】
そしてこのような構成より成る漏斗型分離具は、縦糸と横糸とがその交差部で溶着されている熱可塑性合成樹脂製網状シートから成り耐水性を有しているので、使用に供するまでは単なるシート状を成しているため保管等に場所を取ることがなく、また円錐形に形成された際に互いに突き合わされる端縁部にそれぞれ端縁部側が短く端縁部から離れた側が長い台形又は台形に近似した形状の舌片が所定間隔で設けられており、これらの舌片は円錐形に形成された際に端縁部側の短い辺がそれぞれ他方の端縁部側の短い辺間に係合して円錐形状を保持するので非常に使い勝手が良く、また構造が簡単なので安価且つ容易に製作することができるのである。
【符号の説明】
【0022】
1 漏斗型分離具
1a 端縁部
1b 舌片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が一定時間咀嚼した咀嚼能率測定用材料の咬断片を唾液と共に吐き出させて該咬断片と唾液とに分離させる漏斗型分離具であって、使用時に円錐形に形成される縦糸と横糸とがその交差部で溶着されている熱可塑性合成樹脂製網状シートから成り、円錐形に形成された際に互いに突き合わされる端縁部(1a,1a)にそれぞれ端縁部側が短く該端縁部(1a,1a)から離れた側が長い台形又は台形に近似した形状の舌片(1b,1b)が所定間隔で設けられており、該舌片(1b,1b)は円錐形に形成された際に端縁部側の短い辺がそれぞれ他方の端縁部側の短い辺間に係合することを特徴とする漏斗状分離具(1)。
【請求項2】
熱可塑性合成樹脂製網状シートの網の目の広さが0,5〜2mm2である請求項1に記載の漏斗状分離具(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−182867(P2011−182867A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49139(P2010−49139)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】