説明

漏斗

【課題】密閉性を備えた容器に閉じ込めておく必要のある流体を他の容器に移す場合の作業を容易にすることのできる漏斗を提供する。
【解決手段】一方の容器20から他方の容器30に流体を注入する際に用いられるゴム状弾性体製の漏斗10であって、流体通路Tを形成する中空の胴体部11と、胴体部11の一端に設けられ、かつ一方の容器20に設けられたノズル21先端が押し付けられる被押付部12と、胴体部11の他端に設けられ、かつ他方の容器30に形成された注入口31の部分に取り付けられる被取付部13と、を備え、被押付部12は、ノズル21先端の出口21a開口部の周囲に沿って密着し、ノズル21内部の通路内及び流体通路T内によって形成される領域と外部領域とを遮断させる密着面12aを有しており、密着面12aは一端側に向かって拡径する湾曲面によって構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を注入する際に用いる漏斗に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある一方の容器からある他方の容器に流体を移す場合には、一般的に漏斗が用いられる。図4は一般的な漏斗の使用状態を示す概略図である。
【0003】
図示のように、他方の容器300に形成された注入口301の開口部に漏斗100を載置した状態で、一方の容器200内の流体(この場合液体)を漏斗100から他方の容器300へと移すことができる。このように、漏斗100を用いることで、他方の容器300の注入口301が狭くても、他方の容器300に流体をこぼすことなく簡単に移すことができる。
【0004】
しかし、このような一般的な漏斗100を用いることができるのは、流体が、密閉性を要する容器に閉じ込めておく必要のない場合である。
【0005】
例えば、流体が揮発性を有する液体の場合には、流体を、密閉性を備えた容器に閉じ込めておく必要がある。そのため、そのような流体を他の容器に移す場合には、外部領域とは遮断した状態の通路を形成させた状態で、該通路を通じて一方の容器から他方の容器に流体を移さなければならない。従って、上記のような一般的な漏斗100を用いることはできない。
【0006】
密閉性を備えた容器に閉じ込めておく必要のある流体を他の容器に移す場合の一例について、ガスライターの場合を例にして説明する。図5はガスライターにガスを注入する際の様子を示す概略図である。
【0007】
ガスライター500にガスを補充したい場合には、ガスボンベ400を用いてガスを注入することができる。この場合、ガスボンベ400に設けられたノズル401を、ガスライター500に形成されたガス注入口501に真直ぐに押し付ける。これにより、ガスボンベ500の内部圧力によって、ガス注入口501を通じてガスライター500内部のガスタンクにガスを充填することができる。なお、ガスライター500やガスボンベ400には、ガスを注入する際にのみ弁が開く弁機構などがそれぞれ備えられているが、それらに関しては、その説明を省略する。
【0008】
このように、ガスボンベ400に設けられたノズル401を、ガスライター500に形成されたガス注入口501に押し付けることで、外部領域とは遮断した状態の通路を形成させた状態で、ガスライター500にガスを注入することができる。
【0009】
しかしながら、上記の場合、ノズル401をガス注入口501に真直ぐに押し当てないと、完全に外部領域とは遮断した状態の通路を形成させることができず、ノズル401が傾いていると、ガスが漏れてしまったり、ガスを注入することができなかったりしてしまう。
【0010】
従って、ガスボンベ400を用いて、ガスライター500にガスを漏らすことなく確実に注入するのは手間のかかる作業であった。
【0011】
このように、密閉性を備えた容器に閉じ込めておく必要のある流体を他の容器に移す場
合には、一般的な漏斗を用いることができず、外部領域とは遮断した状態の通路を形成するために複雑な構造を要したり、上記のように手間のかかる作業となってしまったりしていた。
【特許文献1】特開2002−68394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、密閉性を備えた容器に閉じ込めておく必要のある流体を他の容器に移す場合の作業を容易にすることのできる漏斗を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0014】
すなわち、本発明の漏斗は、
一方の容器から他方の容器に流体を注入する際に用いられるゴム状弾性体製の漏斗であって、
流体通路を形成する中空の胴体部と、
該胴体部の一端に設けられ、かつ一方の容器に設けられたノズル先端が押し付けられる被押付部と、
前記胴体部の他端に設けられ、かつ他方の容器に形成された注入口の部分に、前記流体通路内及び他方の容器内によって形成される領域と外部領域とを遮断した状態で取り付けられる被取付部と、
を備え、
前記被押付部は、前記ノズル先端の出口開口部の周囲に沿って密着し、ノズル内部の通路内及び前記流体通路内によって形成される領域と外部領域とを遮断させる密着面を有しており、
該密着面は一端側に向かって拡径する湾曲面によって構成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の漏斗によれば、一方の容器内から他方の容器内に至る領域が、外部領域と遮断されるため、流体を移す(注入する)際に流体が外部に漏れることを防止できる。そして、本発明によれば、一方の容器に設けられたノズル先端の出口開口部の周囲に沿って密着する密着面が、一端側に向かって拡径する湾曲面によって構成される。従って、ノズル先端を被押付部(密着面)に押し付ける際に、ノズル先端がある程度傾いていても、ゴム状弾性体製の漏斗自体及び被押付部自体が弾性的に変形することと相俟って、密着面をノズル先端の出口開口部の周囲に沿って全周にわたって密着させることができ、流体の漏れを防止できる。
【0016】
また、前記湾曲面は球面であり、
該球面の曲率半径が、前記ノズル先端の出口開口部の周囲における球面形状の外壁面部分の曲率半径と略同寸法となるように設定されているとよい。
【0017】
こうすることで、ノズル先端を密着面に押し当てる際に、ノズルが大きく傾いた状態で押し当てた場合であっても、密着面をノズル先端の出口開口部の周囲に沿って全周にわたって密着させることができ、流体の漏れを防止できる。
【0018】
また、前記被押付部の先端の開口部分の内径が、前記ノズル先端の外径よりも大きくなるように設定されているとよい。
【0019】
これにより、ノズル先端を密着面に押し当てる際に、ノズルが大きく傾いた状態で押し当てた場合であっても、より一層、密着面をノズル先端の出口開口部の周囲に沿って全周
にわたって密着させることができ、流体の漏れを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、密閉性を備えた容器に閉じ込めておく必要のある流体を他の容器に移す場合の作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
(実施例)
図1及び図2を参照して、本発明の実施例に係る漏斗について説明する。図1は本発明の実施例に係る漏斗の模式的断面図である。図2は本発明の実施例に係る漏斗が使用されている状態を示す模式的断面図である。なお、図2においては、一方の容器と他方の容器については漏斗の付近の一部のみを示している。
【0023】
<漏斗>
図1及び図2を参照して、本発明の実施例に係る漏斗の構成について説明する。本実施例に係る漏斗10は、一方の容器20から他方の容器30に流体を移す(注入する)際に用いられる。なお、本実施例に係る漏斗10は、密閉性を備えた容器に閉じ込めておく必要のある流体(例えば、揮発性を有する液体)の移し変えを行う場合に特に有効に用いられる。ただし、そのような必要のない一般的な液体や粉体の移し変えの場合にも、一般的な漏斗の場合と同様に利用できる。本実施例では、一方の容器20も他方の容器30も密閉性を備えており、密閉性を備えた容器に閉じ込めておく必要のある流体を一方の容器20から他方の容器30に移す場合を例にして説明する。
【0024】
本発明の実施例に係るゴム状弾性体製の漏斗10は、中空の胴体部11と、胴体部11の一端に設けられる被押付部12と、胴体部11の他端に設けられる被取付部13とから構成される。
【0025】
胴体部11は、中空部分が流体通路Tとして利用される。また、本実施例に係る胴体部11は、胴体部11が弾性的に変形した際に、弾性復元力によって元の形に戻ろうとするのを抑制するために蛇腹形状となっている。
【0026】
被押付部12は、一方の容器20に設けられたノズル21の先端が押し付けられる部分である。そして、この被押付部12は、ノズル21の先端の出口21aの開口部の周囲に沿って密着する密着面12aを有している。この密着面12aは先端側(一端側)に向かって拡径する湾曲面で構成され、本実施例では、曲率半径がR1の球面によって構成されている。
【0027】
被取付部13は、外径側に向かって突出するように、孔の空いた円板形状の部分により構成されている。
【0028】
<漏斗の使用方法>
本実施例に係る漏斗10を用いる場合には、まず、被取付部13を、他方の容器30に形成された注入口31の部分に取り付ける。この注入口31の内周面には、環状溝32が形成されている。被取付部13を、この環状溝32に嵌め込むことによって、被取付部13を注入口31の部分に取り付けることができる。このとき、被取付部13は環状溝32
の内壁面に密着し、シールすることができる。これにより、胴体部11の中空部分である流体通路T内により形成される領域及び他方の容器30内により形成される領域(U2)と外部領域(A)とを遮断することができる。
【0029】
そして、漏斗10を他方の容器30に固定した後に、一方の容器20に設けられたノズル21の先端を、被押付部12に押し付ける。すると、被押付部12の密着面12aが、ノズル21の先端の出口21aの開口部の周囲に沿って全周にわたって密着する。これにより、胴体部11の中空部分である流体通路T内により形成される領域及び一方の容器20内により形成される領域(ノズル内部の通路内の領域(U1))と外部領域(A)とを遮断することができる。つまり、一方の容器20内から他方の容器30内に至る領域が外部領域(A)と遮断される。
【0030】
ここで、一方の容器20に設けられたノズル21の先端における出口21aの開口部の周囲の外壁面21bは、曲率半径がR2の球面形状で構成されている。そして、上述した被押付部12の密着面12aの曲率半径R1は、この外壁面21bの曲率半径R2と略同寸法(同寸法となるのが望ましい)となるように設定されている。従って、ノズル21の先端における出口21aの開口端縁の全周が、密着面12aに接してさえいれば、ノズル21の傾き(図2中矢印M参照)にかかわらず、密着面12aは出口21aの開口部の周囲に沿って全周にわたって密着する。
【0031】
このように、一方の容器20内から他方の容器30内に至る領域を外部領域(A)と遮断した状態で、一方の容器20から他方の容器30に、一方の容器20側の内圧等を利用して流体を移すことで、流体が揮発性を有する液体のようなものであっても、流体の外部への漏れを防止できる。
【0032】
なお、流体を移すための構造や機構(流体を移すときのみ弁が開き通常は弁を閉じておくための弁機構や流体を送り出すための構造や機構など)については、適宜、公知技術を採用すればよいので、その説明は省略する。
【0033】
<本実施例の優れた点>
本実施例に係る漏斗10によれば、一方の容器20に設けられたノズル21の先端の出口21aの開口部の周囲に沿って密着する密着面12aが、一端側に向かって拡径する湾曲面によって構成される。従って、ノズル21の先端を被押付部12に押し付ける際に、ノズル21の先端が傾いていても、ゴム状弾性体製の漏斗10自体及び被押付部12自体が弾性的に変形することと相俟って、密着面12aをノズル21の先端の出口21aの開口部の周囲に沿って全周にわたって密着させることができ、流体の漏れを防止できる。
【0034】
特に、本実施例では、密着面12aは球面で構成され、この球面の曲率半径R1が、ノズル21の先端の出口21aの開口部の周囲における球面形状の外壁面21bの部分の曲率半径R2と略同寸法となるように設定されている。従って、ノズル21の先端を密着面12aに押し当てる際に、ノズル21が大きく傾いた状態で押し当てた場合であっても、密着面12aをノズル21の先端の出口21aの開口部の周囲に沿って全周にわたって密着させることができ、流体の漏れを防止できる。
【0035】
このように、本実施例に係る漏斗10を用いれば、密閉性を備えた容器に閉じ込めておく必要のある流体を、一方の容器20から他方の容器30に移す場合において、ノズル21を被押付部12(密着面12a)に対して押し付ける際に、それほど正確に位置決めする必要はない。従って、流体を移す作業(注入する作業)を簡単に行うことができる。
【0036】
<その他>
上記実施例では、被押付部12の密着面12aとノズル21の先端における出口21aの開口部の周囲の外壁面21bが、いずれも曲率半径が略等しい球面によって構成される場合について説明した。このように構成することで、密着面12aに対するノズル21の傾きが大きな場合であってもシール性をより確実に保つことが可能となる。
【0037】
しかしながら、両者の球面の曲率半径が異なる場合であっても、密着面12aに対するノズル21の傾きの許容範囲は狭くなるものの、ノズル21がある程度傾いていてもシール性を発揮させることは可能である。また、密着面12aは、球面でなくても、一端側に向かって拡径する湾曲面(例えば、断面形状が楕円形)であれば、ノズル21がある程度傾いていてもシール性を発揮させることは可能である。さらに、ノズル21の先端における出口21aの開口部の周囲の外壁面21bについても、球面なくても湾曲面であれば、同様のことが言える。
【0038】
また、図3に示すように、被押付部12の先端の開口部分の内径D1が、ノズル21の先端の外径D2よりも大きくなるように設定すれば、より確実に、密着面12aをノズル21の先端の出口21aの開口部の周囲に沿って全周にわたって密着させることができる。これにより、密着面12aに対するノズル21のより大きな傾きに対しても対応することができる。また、上述した両者の球面の曲率半径が異なる場合においても、より適切にシール性を発揮させることができる。さらに、密着面12aまたは外壁面21bのうちの一方が球面で他方が球面でないような場合においても、より適切にシール性を発揮させることができる。
【0039】
結局、上記内径D1が上記外径D2よりも大きく、かつ、被押付部12の密着面12aを曲率半径R1の球面形状で構成し、ノズル21の先端における出口21aの開口部の周囲の外壁面21bを曲率半径R2の球面形状で構成し、R1=R2とする場合(説明の便宜上、条件1と称する)が最も有効である。この場合には、ノズル21の先端を被押付部12に押し付ける際に、ノズル21の先端の位置や傾きの許容範囲が広く、しかも、ノズル21の先端と被押付部12との接触面積が広くなるためシール性も高くなる。
【0040】
そして、内径D1が外径D2よりも大きければ、R1とR2が等しくなくても(条件2)、十分な効果が得られる。この条件2の場合でも、「接触面積」に関しては条件1の場合に比べて狭くなる傾向にあり、「ノズル21の先端の傾き」に関しても条件1の場合に比べて許容範囲が狭くなる傾向になってしまうものの、「ノズル21の先端の位置」に関しては、条件1の場合と同等の許容範囲となる。なお、R1>R2の場合とR1<R2の場合とでは、ノズル21の先端と被押付部12との接触位置や接触状態が相違する。しかし、いずれの場合でも、被押付部12の密着面12aをノズル21の先端の出口21aの開口部の周囲に沿って全周にわたって密着させ、シール性を発揮させることができることに関しては共通している。
【0041】
内径D1が外径D2よりも小さい場合(条件3)、条件1に比べれば、「ノズル21の先端の位置や傾き」の許容範囲が狭く、「接触面積」も狭くなってしまうが、ある程度の効果が得られることは上述の通りである。なお、条件1〜3では、被押付部12の密着面12a、及びノズル21の先端における出口21aの開口部の周囲の外壁面21bがいずれも球面形状で構成される場合について説明したが、これらを球面形状で構成しない場合でも、ある程度の効果が得られることについては既に説明した通りである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は本発明の実施例に係る漏斗の模式的断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例に係る漏斗が使用されている状態を示す模式的断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例に係る漏斗において被押付部の先端の開口部分の内径を工夫した例を示す模式的断面図である。
【図4】図4は一般的な漏斗の使用状態を示す概略図である。
【図5】図5はガスライターにガスを注入する際の様子を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
10 漏斗
11 胴体部
12 被押付部
12a 密着面
13 被取付部
20 一方の容器
21 ノズル
21a 出口
21b 外壁面
30 他方の容器
31 注入口
32 環状溝
T 流体通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の容器から他方の容器に流体を注入する際に用いられるゴム状弾性体製の漏斗であって、
流体通路を形成する中空の胴体部と、
該胴体部の一端に設けられ、かつ一方の容器に設けられたノズル先端が押し付けられる被押付部と、
前記胴体部の他端に設けられ、かつ他方の容器に形成された注入口の部分に、前記流体通路内及び他方の容器内によって形成される領域と外部領域とを遮断した状態で取り付けられる被取付部と、
を備え、
前記被押付部は、前記ノズル先端の出口開口部の周囲に沿って密着し、ノズル内部の通路内及び前記流体通路内によって形成される領域と外部領域とを遮断させる密着面を有しており、
該密着面は一端側に向かって拡径する湾曲面によって構成されることを特徴とする漏斗。
【請求項2】
前記湾曲面は球面であり、
該球面の曲率半径が、前記ノズル先端の出口開口部の周囲における球面形状の外壁面部分の曲率半径と略同寸法となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の漏斗。
【請求項3】
前記被押付部の先端の開口部分の内径が、前記ノズル先端の外径よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の漏斗。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate