説明

潅水施肥装置の濾過装置洗浄方法

【課題】果菜類及び花き類を含む作物の潅水施肥栽培に関し、汚濁物を含む水源を使用する潅水施肥装置の濾過装置を自動洗浄する。
【解決手段】原水の異物を除去する濾過装置を介設した潅水施肥装置において、
前記濾過装置内の汚濁物排出洗浄を、濾過装置のドレン排出パイプのドレン電磁弁を開とし潅水施肥するチューブの電磁弁を閉止し、取水源の原水電磁弁を開にしまたは潅水ポンプを稼動させて行うか、又は取水源の潅水ポンプを停止又は原水電磁弁を閉とし、潅水施肥するチューブの電磁弁を閉とし、濾過装置のドレン排出パイプのドレン電磁弁を開として行うことを特徴とする潅水施肥装置の濾過装置洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物栽培での潅水施肥栽培に活用する潅水施肥装置の濾過装置洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作物栽培での潅水施肥栽培に活用する潅水施肥装置は、農業用水としての水源を一般に河川、溜池、井戸等を単独又は併用する。この際、水源からの汚泥などを濾過装置により濾過除去して、作物栽培での潅水施肥栽培を安定維持する必要がある。
潅水施肥装置は、取水源に連通する送水パイプに、潅水ポンプまたは電磁弁を介設し、この下流に原水の異物を除去する濾過装置を介設し、その下流に肥料を混入する肥料ポンプ付肥料混入部を介設しその下流に栽培圃場に設置した複数の点滴チューブを分岐接続しものである。
この潅水施肥装置における濾過装置は原水の異物を除去するものであるが、この濾過装置について従来公知例を次に紹介する。
特開2006−320317号公報(以下、特許文献1という)には、撒液システムに採用される濾過装置についての記載がある。
この例の濾過装置は、井戸や河川から汲み上げられた農業用水が流入する入水室を有し、この上端側に単繊維からなる経糸と緯糸とを編み込んだ布を袋状に縫製した濾過装置が装着された構成となって、入水室の上端側の開口に被さっている濾過装置の農業用水中に含まれている砂や泥等の異物による目詰まりが起こりにくい撒液システムで、上部に排気・排水のできるバルブを有した内部のデイスクの表面を汚濁水を通さない布で覆った濾過装置の利用に関する記述がある。
【0003】
特開平9−252670号公報(以下、特許文献2いう)には、限られた液圧・撒液量しか利用できない状況でも、その撒液量を均一化させ、上部から細かい雨状の水等の液体の撒液を行い、これにより、作物の栽培中撒液むらを生じることなく、撒液を均一に行うことができる撒液用チューブを提供する記述がある。
【0004】
特開2000−176319号公報(以下、特許文献3という)には、より広い領域への散水を可能とし、かつ散水高さを余り必要とせずに潅水用チューブ近傍位置に適正な潅水強度を確保し得る散水孔を有する潅水用チューブ及び潅水用チューブの製造方法を提供する記述がある。
【0005】
特許文献1に、特許文献2、特許文献3に開示されているような撒液用チューブは、小孔を設けたものである。また、スプリンクラーなどのような撒液体についても、液を散布するための小孔が設けられた構成となったものが多い。そのため、撒液用チューブ等の撒液体に供給される液体中に砂や泥等の異物が混じっていると、これらの異物が撒液用の小孔に詰まってしまい、うまく撒液できなくなってしまう。従って、撒液用チューブに供給される液体は、砂や泥といったような撒液用の小孔を閉塞するような異物が混じっていないことが望ましいとする記述がある。
【0006】
しかし、潅水のために掘削された井戸や河川から汲み上げた水は、多くの場合砂や泥等の異物が混じっている。そのため、従来の撒液システムでは、液体を圧送するためのポンプと撒液用チューブ等の撒液体との間に砂等の異物を捕捉可能な濾過装置を備えた濾過装置を配している。
【0007】
従来技術において採用されている濾過装置の多くは、撒液用チューブのような撒液体の小孔を閉塞する程度の微細な砂等を液体から除去するために、多数の繊維を束ねて形成されたマルチフィラメントと称されるものを織り込んだ濾過装置を採用している。そのため、従来の撒液システムでは、液体中に含まれる砂等の異物による撒液体の小孔の閉塞が起こりにくく、農地に好適に撒液できる。
【特許文献1】特開2006−320317
【特許文献2】特開平9−252670
【特許文献3】特開2000−176319
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の撒液システムに採用される濾過装置は、取水源からの給水が停止し、水圧がなくなった状態で濾過装置排水弁を手動で開閉し、汚濁物を排出するものであり、濾過装置の洗浄が簡略化できる等の利点があるものの、汚濁物が含まれる水を多量に利用する場合には、濾過装置内部を開け、適時に内部の洗浄が必要である。多量の水を使用する面積が大きい圃場の散水では、洗浄の頻度が多くなる。
本発明は、作物栽培での潅水施肥栽培に祭し、取水源の汚濁物質を濾過装置で除去するにあたり、濾過装置のドレーン排出パイプの排水弁と取水源の潅水ポンプまたは電磁弁及び栽培圃場に設置した点滴チューブの電磁弁を制御して、濾過装置を自動洗浄することによって、点滴チューブなどにおける目詰まりを長期に防止して、水圧の安定した潅水と、潅水えの施肥を適切に行わしめる潅水施肥装置を提供するものである
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決したものでありその特徴とする技術条件は次の通りである。
「取水源に連通する送水パイプに、潅水ポンプまたは原水電磁弁を介設し、この下流に原水の異物を除去する濾過装置を介設し、その下流に栽培圃場に設置した複数の点滴チューブを分岐接続し、前記濾過装置のドレン排出パイプにドレン電磁弁と前記各点滴チューブの上流にチューブ電磁弁を設置した潅水施肥装置において、
前記濾過装置内の汚濁物排出洗浄を、濾過装置のドレン排出パイプのドレン電磁弁を開とし前記各点滴チューブ上流のチューブ電磁弁を閉止し、取水源の原水電磁弁を開にしまたは潅水ポンプを稼動させて行うか、又は取水源の潅水ポンプを停止又は原水電磁弁を閉とし、各点滴チューブ上流のチューブ電磁弁を閉とし、濾過装置のドレン排出パイプのドレン電磁弁を開として行うことを特徴とする潅水施肥装置の濾過装置洗浄方法。」

前記濾過装置内の汚濁物排出洗浄を、濾過装置のドレン排出パイプのドレン電磁弁を開とし前記各点滴チューブ上流のチューブ電磁弁を閉止し、取水源の原水電磁弁を開にし、または潅水ポンプを稼動させて行う場合は、潅水施肥の開始前に行うことが好ましい。
又、前記濾過装置内の汚濁物排出洗浄を取水源の潅水ポンプを停止又は原水電磁弁を閉とし、各点滴チューブ上流のチューブ電磁弁を閉とし、濾過装置のドレン排出パイプのドレン電磁弁を開として行う場合は潅水施肥を終了後に行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の前提とする前記構成の潅水施装置において、濾過装置内の汚濁物排出洗浄を含む一連の制御と作用効果の一例を次に紹介する。
潅水施肥開始時には、取水源の潅水ポンプを始動又は原水電磁弁を開にし、濾過装置のドレン排出パイプのドレン電磁弁を開にし、点滴チューブ上流のチューブ電磁弁を閉とし、取水源からの水圧によって、濾過装置のドレーン排出パイプ及びドレン電磁弁内の汚濁物を濾過装置のドレン排出パイプ及びドレン電磁弁内を設定した時間内に洗い流す。
次に、濾過装置のドレン排出パイプのドレン電磁弁を閉とし、取水源の潅水ポンプを始動又は原水電磁弁を開とし、点滴チューブ上流のチューブ電磁弁を開とし潅水施肥を行う。
潅水施肥終了後は、取水源の潅水ポンプを停止又は原水電磁弁を閉とし、点滴チューブ上流のチューブ電磁弁を閉とし、濾過装置のドレン排出パイプのドレン電磁弁を開として濾過装置内の汚濁物排出洗浄を行う。つまりこの各電磁弁の操作で濾過装置内の水圧が大気圧になり、ドレン排出パイプの開状態のドレン電磁弁から外気が間断的に取り込まれながら滞留水が自流排出されて濾過装置内が水圧変動を繰り返す。この水圧変動の反動ピストン作用で濾過装置内の汚濁物が滞留水と共に自流で外に排出される。これで濾過装置を長期間解体すること無く洗浄することが出来、解体メンテナンスの頻度を著しく低減することができる。
このように本発明は、汚濁物を含み、水質が比較的不良な畑地潅漑用のダム等の取水原から供給された水を用い、自動洗浄システムとして利用すると、濾過装置の目詰まりによって、濾過装置後に設置し計測できる水圧計の水圧の表示は、当初設定した値1.5kg/cm2以下に低下することがなく、潅水施肥に障害となる目詰まりは見られず、約2週間解体メンテナンスが不要であり、濾過装置のメンテナンスを省略できる効果は大である。
尚、粘土を含む汚濁水が供給される場合は、濾過装置内部に粘土が付着し、洗浄が不十分となることもあるため、場合によっては、濾過装置内の手動洗浄が必要となることもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態は次に示す実施1により詳細に説明するが、以下に本発明の技術条件の定義や意義などについて説明する。
本発明において、濾過装置とは、濾過装置本体内において、入水パイプと出水パイプ間の通水路に濾過体を設置し、濾過体と入水パイプ間に連通するドレン排出パイプを設置し、ドレン排出パイプにドレン電磁弁を介設したものを言う。
【実施例1】
【0012】
図1により、本発明の装置を点滴施肥潅水栽培としての果菜類栽培システムに適用した例を図1に紹介する。
図1において、本例の潅水施肥装置は、原水が蓄えられた井戸又は貯水槽1等の取水源に連通する送水パイプ18に、潅水ポンプ2または原水電磁弁4を介設し、この下流に原水の異物を除去する濾過装置5を介設し、その下流に肥料を混入する肥料ポンプ12a,12b付肥料混入部6を介設し、その下流に栽培圃場10に設置した複数の点滴チューブ9を分岐接続し、各点滴チューブの上流にチューブ電磁弁7a〜7dを介して、この複数の点滴チューブ9から、果菜類の栽培圃場10に水及び/又は肥料を給液する。一方、前記濾過装置のドレン排出パイプ17にドレーン電磁弁20を設置して濾過装置5の洗浄を可能にし、更に前記潅水ポンプ2、肥料ポンプ12a,12bと、前記原水電磁弁4、ドレーン電磁弁20、チューブ電磁弁7a〜7d、を制御する潅水施肥制御盤13を設けたものである。
【0013】
潅水施肥制御装置による潅水施肥実施の場合は、潅水施肥制御盤13が働いて、潅水ポンプ起動装置14が作動し、原水の電磁弁4または潅水ポンプ2および圃場に潅水を行うチューブ電磁弁7a〜7dを制御し潅水する。必要ならば肥料タンク11a、11bの肥料を肥料ポンプ12a、12bで吸い上げ、所定量の肥料を肥料混入部6において原水に混入する。
図2に示す濾過装置5おいて、通常は、空気抜き孔21に接続した空気抜きバルブ22、それに接続した中空のパイプ24を地上部まで誘導し、その一端をU字型に持ち上げ水封管23を作り、潅水施肥開始時に空気抜きバルブ22より排出された少量の水がU字型の水封管23から排出されるように空気抜きバルブ22を常に少量開口させておく。これにより、潅水施肥開始時に、濾過装置5の内部に空気が溜まることを防ぐと共に洗浄の際濾過装置5内に微量の空気混入水を吸引させて装置内を高水圧解除して洗浄効果をより良好なものとする。
【0014】
濾過装置5のドレン排出パイプ19のドレーン電磁弁20は、口径が小さいものでは、水平に設置すると、ドレーン電磁弁20より、空気が入りにくく、洗浄がうまく行われないため、下方からの空気が入りやすいようにドレン排出パイプ19に垂直に取り付ける必要がある。口径が大きいものでは、水平に設置しても、空気の取り込みがおきるため、洗浄がうまくいく。
また、動作に一定の圧力を要するドレーン電磁弁では、水圧がゼロの状態では作動せず、濾過装置5内の汚濁水の排水ができない。水圧がゼロで作動する、ダイアフラム式ねじ込み形電磁弁が有効である。
【0015】
潅水施肥制御盤13は、前記潅水の開始前に、使用する原水中の汚濁物を除去し潅水に供するための濾過装置5の洗浄を、排水部に取り付けたドレーン電磁弁20を開け、チューブ電磁弁7a〜7dを閉止し原水電磁弁4または潅水ポンプ2を開けて潅漑水を給水し、濾過装置5とドレーン電磁弁20の内部を洗浄しながら任意に設定される時間排水する。
次に電子式のドレーン電磁弁20を閉じ、原水電磁弁4または潅水ポンプ2および系統電磁弁のチューブ電磁弁7a〜7dを開け圃場に潅水を行う。
この潅水終了後に、原水電磁弁4を閉止しまたは潅水ポンプ2を停止してチューブ電磁弁7a〜7dを閉じ、同時に濾過装置5のドレーン電磁弁20を開けることにより、前記反動ピストン作用で濾過装置5内の汚濁物が滞留水と共に自流で外に排出される。これで濾過装置5を長期間解体すること無く洗浄する。これらの洗浄の際、空気抜きバルブ22は微量開口しているのでここから濾過装置5内に微量の空気混入水が吸引され装置内圧力を下げ円滑な洗浄排水を行う。
【産業上の利用可能性】
【0016】
前述の如く、汚濁物を含み、水質が比較的不良な畑地潅漑用のダム等の取水原から供給された水を用いた潅水施肥装置の自動洗浄システムとして本発明を利用すると、濾過装置の目詰まりによって、濾過装置後に設置し計測できる水圧計の水圧の表示は、当初設定した値1.5kg/cm2以下に低下することがなく、潅水施肥に障害となる目詰まりは見られず、約2週間解体メンテナンスが不要であり、濾過装置のメンテナンスを省略できる効果は大である。このため本発明は野菜園、果実園、茶園等の潅水施肥に有効に活用され農産業にに寄与するところ多大なものがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の潅水施肥装置の洗浄方法の実施例の全体説明図である。
【図2】図1に示す潅水施肥装置例の濾過装置5部の詳細図である。
【符号の説明】
【0018】
1 井戸又は貯水槽
2 潅水ポンプ
3 水圧を有する取水源
4 原水電磁弁
5 濾過装置
6 肥料混入部
7a〜7d チューブ電磁弁
8a、8b 水分計
9a〜9d 点滴チューブ
10a〜10d 栽培圃場
11a、11b 肥料タンク
12a、12b 肥料ポンプ
13 潅水施肥制御盤
14 潅水ポンプ起動装置
18 送水パイプ
19 ドレーン排出パイプ
20 ドレーン電磁弁
21 空気抜き孔
22 空気抜きバルブ
23 水封管
24 中空パイプ
25 排水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水源に連通する送水パイプに、潅水ポンプまたは原水電磁弁を介設し、この下流に原水の異物を除去する濾過装置を介設し、その下流に栽培圃場に設置した複数の点滴チューブを分岐接続し、前記濾過装置のドレン排出パイプにドレン電磁弁と前記各点滴チューブの上流にチューブ電磁弁を設置した潅水施肥装置において、
前記濾過装置内の汚濁物排出洗浄を、濾過装置のドレン排出パイプのドレン電磁弁を開とし前記各点滴チューブ上流のチューブ電磁弁を閉止し、取水源の原水電磁弁を開にしまたは潅水ポンプを稼動させて行うか、又は取水源の潅水ポンプを停止又は原水電磁弁を閉とし、各点滴チューブ上流のチューブ電磁弁を閉とし、濾過装置のドレン排出パイプのドレン電磁弁を開として行うことを特徴とする潅水施肥装置の濾過装置洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−100704(P2009−100704A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277347(P2007−277347)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(306015489)有限会社 平田電気計装 (4)
【出願人】(591224788)大分県 (31)
【Fターム(参考)】