説明

潜像を有する画像形成体

【課題】光照射や紫外線照射あるいはブラックライト照射または蛍光等照射等の光源の違いにより基材表面上に所望の潜像を有する画像を極めて短時間に容易に浮き上がり形成し、その画像を長時間にわたって保持することのできる潜像を有する画像形成体を提供する。
【解決手段】
基材表面上に少なくとも不透明模様層と紫外線を透過する部分と紫外線を透過しない部分よりなる透明模様層が形成されていることを特徴とする潜像を有する画像形成体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射や紫外線照射により基材表面に所望の潜像を有する画像を形成する、潜像を有する画像形成体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面に塗料等を塗工して、該基材に画像を形成されることが行われている。また、一般に基材の表面に画像を形成する場合、基材の表面に予め劣化変色を防止するための下塗り用の塗料を塗工して下地層を形成している。
【0003】
さらに、この下地層の表面に、所望の画像を形成するための上塗り用の塗料を塗工し、再度硬化させ、これによって基材に所望の画像を形成している。
【0004】
また、図4に示すような光照射で劣化変色可能な基材表面に、変色模様を形成する方法(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0005】
この方法は、図4に示すよう、基材104表面に紫外線吸収剤105を含有する光硬化型樹脂組成物で、形成すべき画像の形状に塗工した後、この基材104に光照射して塗工膜を硬化させるとともに、基材非塗工部を劣化変色させる。
【0006】
さらに、図5に示すような光照射で劣化変色可能な基材101表面に、変色模様102を形成する方法(例えば、特許文献2参照。)も知られている。
【0007】
この方法は、図5に示すよう、基材101表面に形成すべき画像に対応する透光部を有する板状体を介して光を照射し、透光部に対応する基材101表面を劣化変色させたる。そして、その後、該基材101上に紫外線吸収剤を含有する光硬化型樹脂組成物を塗工し、再度光照射により、該被覆塗工膜を硬化させる。
【0008】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平5−31444号公報
【特許文献2】特開平5−31445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記図4あるいは図5に示すような従来から多く使用されていた画像形成は基材に光照射して塗工膜を硬化させる手段と基材を劣化変色させる手段が必要であった。そして、基材の劣化が激しい場合、紫外線吸収剤の量を増加させたり、塗工膜の膜厚が厚くなるように塗工しなければならない問題があった。さらに、観察光源が光照射により常に同じ画像形成体の表示であった。
【0010】
また、光硬化型樹脂組成は硬化性樹脂成分と光重合開始剤と紫外線吸収剤とを必須成分として含有したものが限定使用されていた。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、次のような潜像を有する画像形成体を提供することを目的とする。
【0012】
すなわち、本発明の第1の目的は、基材に光照射して塗工膜を硬化させる手段に限定されたり、基材を劣化変色させることなく潜像を有する画像が形成される潜像を有する画像形成体を提供することである。
【0013】
また、本発明の第2の目的は、観察光源の違いにより、潜像を有する画像が表示される潜像を有する画像形成体を提供することである。
【0014】
また、本発明の第3の目的は、様々な色相や退色性能をもった材料により潜像を有する画像が表示される潜像を有する画像形成体を提供することである。
【0015】
また、本発明の第4の目的は、様々な蛍光顔料や染料を適宜選択使用することができ、且つ、ブラックライト下で潜像を有する画像が表示される潜像を有する画像形成体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記問題点を解決するために、まず本発明の請求項1に係る発明は、
基材表面上に少なくとも不透明模様層と紫外線を透過する部分と紫外線を透過しない部分よりなる透明模様層が形成されていることを特徴とする潜像を有する画像形成体である。
【0017】
また、請求項2に係る発明は、前記不透明模様層が、紫外線により色相が変化することを特徴とする請求項1記載の潜像を有する画像形成体である。
【0018】
さらに、請求項3に係る発明は、前記不透明模様層が、色材よりなることを特徴とする請求項1記載の潜像を有する画像形成体である。
【0019】
また、請求項4に係る発明は、前記不透明模様層が、蛍光色材よりなることを特徴とする請求項1記載の潜像を有する画像形成体である。
【発明の効果】
【0020】
一層が紫外線を透過する部分と紫外線を透過しない部分よりなる透明模様層で形成されているために観察光源の違いにより潜像を有す画像形成体が形成できる。
【0021】
また、様々な色相や退色性能をもった材料を適宜選択することにより、潜像を有する画像形成体を表示することができる。
【0022】
さらに、様々な色相や発色や退色性能をもった色材を適宜選択することにより、潜像を有する画像形成体の色を調整することができる。
【0023】
また、様々な蛍光顔料や染料を適宜選択することにより、ブラックライト下で潜像を有する画像形成体を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の潜像を有する画像形成体を実施の形態に沿って以下に図面を参照にしながら詳細に説明する。図1〜図3は本発明の実施例を示す。
【0025】
図1は本発明の潜像を有する画像形成体の一実施例の断面を示す断面図である。また、図2および図3は本発明の潜像を有する画像形成体の他の一実施例の断面を示す断面図である。
【0026】
本発明の潜像を有する画像形成体は図1に示すように基材1と不透明模様層2と透明模様層5とから形成されている。そして、透明模様層5は紫外線を透過する紫外線透過部3と紫外線を透過しない紫外線遮蔽部4が設けられている。
【0027】
また、本発明の潜像を有する画像形成体は図2に示すように基材1と不透明模様層2と透明模様層5を形成した後、透明模様層の表面にオーバーフイルム層6を設けることもできる。さらに、図3に示すようにオーバーフイルム層6の表面にオーバーコート層7を設けても良い。
【0028】
前記基材1は紙、フイルム等のシート、合板、樹脂の板状のもの等が使用できる。
【0029】
また、本発明の潜像を有する画像形成体に形成されている不透明模様層は染料、蛍光材、顔料等の色材を用いることができる。また、紫外線により色相を変化させるために、それぞれ異なる色材を混色して使用することもできる。
【0030】
前記染料としては、例えば、C.I.ベイシックイエロー1、C.I.ベイシックイエロー40、C.I.ベイシックオレンジ22、C.I.ベイシックレッド1、C.I.ベイシックレッド13、C.I.ベイシックバイオレット7、C.I.ベイシックバイオレット10、C.I.ベイシックバイオレット11、C.I.ベイシックバイオレット16などの他、C.I.ダイレクトイエロー85、C.I.ダイレクトオレンジ8、C.I.ダイレクトレッド9等が例示される。
【0031】
また、前記蛍光材としては、可視光線の波長領域にほとんど吸収を示さず、無色で、有色の蛍光を発する化合物も使用することができる。そして、赤色発光物質としては、例えば、ユーロピウムに、4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン、4,4,4−トリフルオロ−1−フェニル−1,3−ブタンジオなどの配位子を1種または2種以上配位させた錯体が例示される。
【0032】
さらに、緑色発光物質としては、例えば、3−(2−キノリルメチレン)イソインドリン−1−オン等が例示される。また、青色発光物質としては、蛍光増白剤として知られている、C.I.フルオレッセントブライトニングエージェント52、C.I.フルオレッセントブライトニングエージェント55、C.I.フルオレッセントブライトニングホワイテックスWS52、C.I.フルオレッセント112、C.I.フルオレッセントブライトニングエージェント135、C.I.フルオレッセント162、C.I.フルオレッセントブライトニングエージェント184等が例示される。
【0033】
また、前記顔料は、特に限定されないが、黄色、橙色、赤色のアゾ顔料等が使用できる。そして、これらのアゾ顔料は、平均粒径0.07〜1.5μmに微分散して用いることが好ましい。
【0034】
本発明の潜像を有する画像形成体に形成されている透明模様層3の紫外線遮蔽部4は紫外線吸収剤を含む透明樹脂、またはEB硬化型樹脂およびヘキサメチレンジイソシアネートよりなる2液硬化型樹脂等が好ましい。尚、本発明での紫外線(Ultraviolet:UV)とは、波長が可視光線より短くX線より長い電磁波とする。また、波長は380nm〜14nmの範囲の電磁波を定義する。UV−A:波長315〜400nm、UV−B:波長280〜315nmで、315nm〜400nmの波長域(UV―A)も当然含まれる。
【0035】
また、本発明の潜像を有する画像形成体に形成されている透明模様層3の紫外線透過部5は紫外線吸収剤を含まない透明樹脂より形成されている。特に不透明模様層2よりも耐
光性の優れた透明樹脂が望ましい。さらに、電離放射線硬化型樹脂、ヘキサメチレンジイソシアネートよりなる2液硬化型樹脂等がより望ましい。
【実施例】
【0036】
上記の本発明について以下実施例を拳げて更に具体的に説明する。
<実施例1>
基材として塩化ビニルフイルムを用いた。また、不透明模様層はポリアゾ系赤インキをグラビア法で塗工形成した。さらに、透明模様層の紫外線遮蔽部は紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系)を含む2液硬化型ポリウレタン樹脂により模様をグラビア法で塗工形成した。また、紫外線透過部は紫外線吸収剤を含まない2液硬化型ポリウレタン樹脂を塗工形成し、そして、潜像を有する画像形成体を作成した。
【0037】
<実施例2>
次ぎに、不透明模様層を蛍光剤で赤色のアゾ顔料を含むインキでグラビア法により塗工形成した以外は、実施例1と同様に潜像を有する画像形成体を作成した。
【0038】
<比較例1>
透明模様層の紫外線透過部を除いた以外は実施例1と同様に潜像を有する画像形成体を作成した。
【0039】
<比較例2>
透明模様層の紫外線透過部5を除いた以外は実施例2と同様に潜像を有する画像形成体を作成した。
【0040】
(1)性能比較
上記、実施例1および比較例1で作成した潜像を有する画像形成体の未試験のものをそれぞれ3波長型昼白色蛍光灯(FHF32EX−N、以下蛍光灯)光源下、および一般蛍光水銀灯(HF400X、以下水銀灯)光源下に置いて目視により評価した。また、紫外線カーボンアーク灯式耐光性試験機(スガ試験機株式会社製)で200時間照射した。そして、その後、それぞれ蛍光灯光源下に置いて目視により評価した。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
(2)性能比較
次ぎに、実施例2および比較例2で作成した潜像を有する画像形成体の未試験のものをそれぞれ蛍光灯光源下、およびブラックライト蛍光灯(FL20S・BLB、以下ブラックライト)光源下に置いて目視により評価した。また、紫外線カーボンアーク灯式耐光性試験機にて200時間照射した。そして、その後、それぞれ蛍光灯光源下に置いて目視により評価した。その結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の潜像を有する画像形成体はシールやラベル等包装用部材として優れていることはもとより、広告媒体や装飾部材等をはじめ広い分野に利用できる素晴らしい発明である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の潜像を有する画像形成体の一実施例の概略断面を示す断面図である。
【図2】本発明の潜像を有する画像形成体の他の一実施例の概略断面を示す断面図である。
【図3】本発明の潜像を有する画像形成体の他の一実施例の概略断面を示す断面図である。
【図4】従来作製されている画像形成体の概略断面を示す断面図である。
【図5】従来作製されている画像形成体の概略断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…基材
2…不透明模様層
3…紫外線透過部
4…紫外線遮蔽部
5…透明模様層
6…オーバーフィルム
7…オーバーニス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面上に、少なくとも、不透明模様層と、紫外線を透過する部分と紫外線を透過しない部分よりなる透明模様層が形成されていることを特徴とする潜像を有する画像形成体。
【請求項2】
前記不透明模様層が、紫外線により色相が変化することを特徴とする請求項1記載の潜像を有する画像形成体。
【請求項3】
前記不透明模様層が、色材よりなることを特徴とする請求項1記載の潜像を有する画像形成体。
【請求項4】
前記不透明模様層が、蛍光色材よりなることを特徴とする請求項1記載の潜像を有する画像形成体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−326898(P2006−326898A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150686(P2005−150686)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】