説明

潜函工法における漏気回収装置

【課題】簡素な構成により、ケーソン作業室内から外方に漏れた漏気を回収し、好ましくは漏気中に含まれる空気と地下水とを確実に分離して還元させる。
【解決手段】本発明に係る漏気回収装置は、ケーソン本体11の刃口部14よりも上方となる外周面に開口する漏気回収孔24と、一端が漏気回収孔24に繋がり、他端が大気に連通する漏気回収通路25と、一端が漏気回収通路25の漏気回収孔24に近い部分に繋がる送気通路26と、送気通路26の他端に繋がる圧縮空気送気手段(例えばエアーコンプレッサー18)とを備えてなることを特徴とする。漏気回収孔24はケーソン本体11外周面の水平方向に沿って複数箇所に配置されている。また、漏気回収通路25の大気連通側端部に地下水還元手段(例えば分離用貯留槽31)を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜函工法における漏気回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋脚基礎構造などの構築に用いられる工法として、ケーソンを水底地盤中に沈設する潜函工法が知られている。潜函工法では、筒状のケーソン本体の下端に地盤に貫入する刃口部を設けるとともに、ケーソン本体の内周側に天井スラブを形成し、刃口部の内周側かつ天井スラブの下方にケーソン作業室を隔成して、ケーソン作業室内に圧縮空気を供給しながら、その内部地盤を掘削してケーソン本体を地盤中に沈設する。
【0003】
この場合、ケーソン作業室内に供給された圧縮空気は、その一部がケーソン本体の刃口部先端を潜り抜けて外部に漏気しやすく、このような漏気をそのまま放置しておくと、地盤中の透水層を通って思わぬ場所に噴出し、隣接構造物等に悪影響を及ぼすことになる。
【0004】
そこで、従来では、ケーソン本体の刃口部直上外面に漏気回収装置を設けたが、回収効率が悪かった。回収効率を上げる方法として、特許文献1に開示されているように、ケーソン本体の刃口部直上外面に漏気回収フィルターを周回形成し、この漏気回収フィルターにケーソン本体の内部側から揚水管を接続し、この揚水管の他端に接続した真空ポンプ等の揚水手段を作動させることにより、ケーソン作業室からケーソン本体の刃口部先端を潜り抜けて外部に漏れた漏気を漏気回収フィルターで吸入して回収するようにした漏気回収装置が提案されている。
【特許文献1】特開2002−88770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような漏気回収装置では、揚水手段としての真空ポンプを個別に用意しなければならないため、漏気回収装置の構成が複雑化するという難点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、簡素な構成により、ケーソン作業室内から外方に漏れた漏気を回収でき、好ましくは漏気中に含まれる空気と地下水とを確実に分離して還元することができ、さらに漏気の量を最小限に抑制することのできる潜函工法における漏気回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明は、筒状のケーソン本体の外周壁下端に、地盤に貫入する刃口部を設けるとともに、前記外周壁の内周側に天井スラブを形成し、前記刃口部の内周側かつ前記天井スラブの下方にケーソン作業室を隔成し、前記ケーソン作業室内に圧縮空気を供給しながら、その内部地盤を掘削して前記ケーソン本体を地盤中に沈設し、その際に前記ケーソン作業室内から前記刃口部を潜って外部に漏れた圧縮空気を回収する潜函工法における漏気回収装置において、前記ケーソン本体の外周面に開口する漏気回収孔と、一端が前記漏気回収孔に繋がり、他端が大気に連通する漏気回収通路と、一端が前記漏気回収通路の前記漏気回収孔に近い部分に繋がる送気通路と、前記送気通路の他端に繋がる圧縮空気送気手段とを備えてなる潜函工法における漏気回収装置としたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記漏気回収孔を前記ケーソン本体外周面の水平方向に沿って複数箇所に配置した潜函工法における漏気回収装置としたことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記漏気回収通路の大気連通側端部に地下水還元手段を設けた潜函工法における漏気回収装置としたことを特徴とする。
【0010】
そして、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記地下水還元手段を、前記漏気回収通路に流入する地下水と漏気とを分離し、前記地下水を地下に、前記漏気を大気中に、それぞれと還元させる分離用貯留槽とした潜函工法における漏気回収装置としたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記地下水還元手段を、前記漏気回収通路の大気連通側端部を前記ケーソン本体の前記天井スラブ上に設けられる荷重水貯留部の水面上に開口させた潜函工法における漏気回収装置としたことを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の構成に加え、前記漏気回収通路の大気連通側端部に、前記圧縮空気の漏気を検出する漏気検出装置と、この漏気検出装置の作動に連動して警報を発令する警報装置とを設けた潜函工法における漏気回収装置としたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の構成に加え、前記漏気回収孔に土砂等の詰まりを防止する詰まり防止手段を設けた潜函工法における漏気回収装置としたことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記圧縮空気送気手段として、前記ケーソン作業室内に圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段を兼用した潜函工法における漏気回収装置としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、圧縮空気送気手段により送気通路から漏気回収通路に圧縮空気を送気し、これにより漏気回収孔に負圧を発生させてケーソン外部に漏れた空気を漏気回収孔から吸入して回収するため、従来からケーソン作業室に圧縮空気を供給するために備えられている圧縮空気供給手段をそのまま圧縮空気送気手段として用いることができ、これにより真空ポンプ等の機材を個別に用意する必要なくなり、簡素な構成によってケーソン作業室内から外方に漏れた漏気を確実に回収することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、複数設けられた漏気回収孔により、より効率良く漏気を回収することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、地下水還元手段により、漏気中に含まれる空気と地下水とを分離して還元することができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、簡素な構成により、漏気中に含まれる空気と地下水とをより確実に分離して還元することができる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、漏気回収通路の大気連通側端部の高さを低くして揚程を低め、地下水と漏気の抜出を容易にすることができる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、漏気が検出されると同時に警報が発令されるため、これに連動してケーソン作業室に供給する圧縮空気の量を減少させれば、ケーソンからの漏気の量を最小限に抑制することができる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、漏気回収孔の詰まりを防止してケーソン外部への漏気回収性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図4に基づいて説明する。
[実施の形態1]
【0023】
図1は、本発明の実施の形態1に係る漏気回収装置10が適用されたケーソン本体11の縦断面図であり、図2は図1のII矢視による平面図であり、図3は図1のIII部を拡大した縦断面図である。
【0024】
ケーソン本体11は、一般に鉄筋コンクリートで筒状に形成され、その外周部をなす外周壁12の下端に、刃口部14が設けられるとともに、外周壁12の内周側に水平面状の天井スラブ15が形成され、天井スラブ15の下方かつ刃口部14の内周側にケーソン作業室16が隔成されている。
【0025】
ケーソン本体11は、この実施の形態1では水平断面形状が正方形に形成されているが、丸型、楕円形、三角形、多角形等でも良い。刃口部14は、その先端部から上方に向かうに連れ、かつケーソン本体11の中方に向かうに連れて厚みが増す楔状断面である。
【0026】
ケーソン作業室16には外部から送気管17が接続され、送気管17の外端側にはエアーコンプレッサ18等の圧縮空気供給手段が接続される。図中に符号19および20で示した部分は、下端がケーソン作業室16に繋がるマンロックとマテリアルロックである。
【0027】
潜函工法では、このように形成されたケーソン本体11を、その刃口部14を地盤G中に貫入させ、エアーコンプレッサ18の圧縮空気を送気管17からケーソン作業室16内に供給しながらケーソン作業室16の内部に設置した図示しない掘削装置によりケーソン作業室16内部の地盤Gを掘削し、ケーソン本体11をその自重により地盤G中に沈降させて最終的に橋脚等の基礎として地盤G中に深く埋設する。なお、ケーソン本体11の重量を増して、地盤G中の揚圧力に対抗して沈設させるために、ケーソン本体11の天井スラブ15上に荷重水21が貯留される場合が多い。
【0028】
漏気回収装置10は、漏気回収孔24と、漏気回収通路25と、送気通路26と、圧縮空気送気手段と地下水還元手段等を備えて構成されている。圧縮空気送気手段としては、先述のエアーコンプレッサ18が兼用されている。
【0029】
漏気回収孔24は、図3にも拡大して示すように、ケーソン本体11の刃口部14の下端よりも0.1m〜3m程度上方となる外周面に開口しており、土砂等の詰まりを防止する詰まり防止手段として、フィルター28が嵌め込まれている。このフィルター28により、ケーソン作業室16内において地盤Gが掘削される際の土砂や泥等が漏気回収孔24に詰まることを防止し、漏気の回収性を向上させることができる。
【0030】
漏気回収通路25は、外周壁12内部の外表面近くに、例えば金属パイプを鉛直方向に埋設することにより形成され、その一端(下端)が外方に直角に屈曲して漏気回収孔24に繋がり、他端が漏気回収孔24よりも高い位置で大気に連通している。この実施形態では、漏気回収通路25が漏気回収孔24から外周壁12の内部を上方に延びてケーソン本体11の上端部から外部上方に抜けている。
【0031】
漏気回収孔24と漏気回収通路25は、ケーソン本体11の外周面の水平方向に沿って複数箇所に配置されている。本実施形態では、四角形断面に形成されたケーソン本体11(外周壁12)の各隅角部と、外周壁12の4辺の中間部との合計8箇所に漏気回収孔24と漏気回収通路25とがそれぞれ等間隔に設けられているが、この数はケーソン本体11の大きさに応じて増減するため、8箇所のみに限定されない。また、このように漏気回収孔24をケーソン本体11の外周面の水平方向に沿って複数箇所に配置しつつ、鉛直方向にも多段に設けて漏気回収孔24の数を増やしても良い。
【0032】
8本の漏気回収通路25の上端は、ケーソン本体11の上部で環状に配設された漏気連結管30にそれぞれ連通する。漏気連結管30は、ケーソン本体11の上部開口部の形状に沿う四角い環状に形成され、その4辺がなす隅角部と各辺の中間部に8本の漏気回収通路25の上端が繋がる。漏気連結管30の一辺は漏気延長管30aとして水平に延び、この漏気延長管30aの自由端部が大気に開放されている。なお、漏気連結管30を設けずに、各漏気回収通路25をケーソン本体11の内部で集合させて1本に纏め、この纏めた管をケーソン本体11の外部に引き出して大気に連通させる構成としても良い。
【0033】
漏気延長管30aには地下水還元手段としての分離用貯留槽31が接続されている。この分離用貯留槽31は気液分離タンク状に構成され、その一面に漏気延長管30aが接続され、反対側の面から空気還元パイプ32と地下水還元パイプ33とが延出している。空気還元パイプ32には漏気検出装置35が接続され、さらにこの漏気検出装置35に警報手段としてのブザー36が接続されている。
【0034】
このため、漏気回収通路25は漏気連結管30と漏気延長管30aと分離用貯留槽31と空気還元パイプ32を経て大気に連通している。
【0035】
漏気検出装置35は漏気延長管30a内を大気開放側に向かって流れる空気を漏気として検出するものである。漏気検出装置35が漏気を検出するとブザー36が作動して警報が発令される。ブザー36の代わりに点滅ランプ等の視覚的警報手段を用いても良い。
【0036】
一方、送気通路26は、漏気回収通路25と同様に外周壁12の内部に金属パイプ等を鉛直方向に埋設することにより形成されている。送気通路26は漏気回収通路25と同じく8本が配設され、その各々が漏気回収通路25の内側に平行し、各送気通路26の一端が、近接する漏気回収通路25の下端付近、即ち漏気回収孔24に近い部分に繋がり、そこから外周壁12の内部を漏気回収通路25の内側に沿って上方に延び、他端がケーソン本体11の外部上方に抜けている。
【0037】
8本の送気通路26の上端は、ケーソン本体11の上部で環状に配設された送気連結管38にそれぞれ連通する。送気連結管38は、漏気連結管30と同様に、ケーソン本体11の上部開口部の形状に沿う四角い環状に形成され、平面視で漏気連結管30の内周側に配設されて、その4辺がなす角部と各辺の中間部に8本の送気通路26の上端が繋がっている。
【0038】
送気連結管38の一辺は送気延長管38aとして水平に延び、この送気延長管38aの自由端側が送気管17に接続されて、最終的に圧縮空気送気手段であるエアーコンプレッサ18に繋がっている。送気延長管38aの中間部には流量調整バルブ39が接続されている。なお、送気連結管38を設けずに、各送気通路26をケーソン本体11の内部で集合させて1本に纏め、この纏めた管をケーソン本体11の外部に引き出して送気管17に接続する構成としても良い。
【0039】
以上のように構成された漏気回収装置10を備えたケーソン本体11を用いて潜函工事を行う際には、前述のように、エアーコンプレッサ18の圧縮空気を送気管17からケーソン作業室16内に供給しながら、ケーソン作業室16内部の地盤Gを掘削し、ケーソン本体11をその自重により地盤G中に沈降させて行く。
【0040】
この作業に伴い、ケーソン作業室16内部に地下水Wを溜めるが、地下水Wの水位は送気管18から供給される圧縮空気の圧力を加減することにより調整される。エアーコンプレッサ18から送気される圧縮空気の圧力を増してケーソン作業室16の内部気圧を高めることにより、地下水Wの水位を下げて掘削作業性を向上させることができる。
【0041】
しかし、ケーソン作業室16内における地下水Wの水位が低下すると、圧縮空気の一部が刃口部14の先端を潜り抜けて外部に漏気しやすくなる。このようにケーソン作業室16内から外部に漏れた漏気は、以下のように漏気回収装置10により回収される。
【0042】
即ち、送気延長管38aの流量調整バルブ39を開くことにより、エアーコンプレッサ18の圧縮空気の一部が送気延長管38aと送気連結管38を経て8本の送気通路26に分配され、漏気回収通路25の下端付近に圧縮空気が送気される。漏気回収通路25の内部には漏気回収孔24から地下水が自然流入しているため、送気通路26から漏気回収通路25の下端付近に圧縮空気が送気されることにより、漏気回収通路25内部の地下水が押し上げられて上方に揚水され、これにより漏気回収通路25内を上方に向かって流れる気液流F(図3参照)が形成され、漏気回収孔24に負圧が発生する。
【0043】
このため、図1中に矢印で示すように、ケーソン作業室16内から刃口部14の先端を潜り抜けて外部に漏れた空気(漏気)が、ケーソン11の外周面に沿って上方に流れる途中で漏気回収孔24に吸入され、このように吸入された空気が漏気回収通路25を上方に流れる上述の気液流Fに混合し、漏気連結管30と漏気延長管30aとを経て分離用貯留槽31に流入する。
【0044】
分離用貯留槽31に流入した気液流は、水と空気(漏気)とに分離され、水は地下水還元パイプ33を経て地中に還元され、空気は空気還元パイプ32を経て大気中に還元される。
【0045】
この漏気回収装置10によれば、非常に簡素な構成によってケーソン作業室16内部から外部に漏れた漏気を回収することができ、しかも漏気中に含まれる空気と地下水とを確実に分離して還元することができる。
【0046】
特に、ケーソン作業室16に圧縮空気を供給するための圧縮空気供給手段として備えられているエアーコンプレッサ18を、そのまま圧縮空気送気手段として用いることができるため、従来のように漏気を吸引する負圧を生むための真空ポンプ等の機材を個別に用意する必要がなく、非常に簡素な構成によって確実に漏気を回収することができる。
【0047】
また、漏気回収孔をケーソン11外周面の水平方向に沿って複数箇所に配置したため、ケーソン作業室16からの漏気をより効率良く回収することができる。
【0048】
さらに、漏気回収通路25の大気連通側端部である漏気延長管30aに地下水還元手段としての分離用貯留槽31を接続したため、漏気中に含まれる空気と地下水とを確実に分離して還元することができ、建設工事に伴いがちな環境の破壊を最小限に留めることができる。
【0049】
また、分離用貯留槽31の空気還元パイプ32に漏気検出装置35とブザー36とを設けたため、空気還元パイプ32に空気が流れた場合にはそれが漏気検出装置35により漏気として直ちに検出され、さらにブザー36が作動して警報が発令される。従って、これに連動してケーソン作業室16に供給する圧縮空気の量を減少させれば、ケーソン作業室16からの漏4気を最小限に抑制することができる。
[実施の形態2]
【0050】
図4は、本発明の実施の形態2に係る漏気回収装置50が適用されたケーソン本体11の縦断面図である。ここにおいて、漏気回収装置50以外の構成は、図1に示す実施の形態1のものと同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
漏気回収装置50は、漏気回収孔51と、漏気回収通路52と、送気通路53と、圧縮空気送気手段と、地下水還元手段等を備えて構成されている。圧縮空気送気手段はエアーコンプレッサ18である。
【0052】
漏気回収孔51の形状、構造、設置位置等は実施の形態1における漏気回収装置10の漏気回収孔24と同様である。
【0053】
漏気回収通路52は金属管等により形成され、その凡そ下半分程が外周壁12の内部に埋設され、その下端が外方に直角に屈曲して漏気回収孔51に繋がっている。また、漏気回収通路52の中間部以上の部分は内方に直角に屈曲してケーソン本体11の天井スラブ15上に設けられる荷重水貯留部54内に進入してから上方に延び、その先端開口部52aが荷重水21の水面上に開口し、かつ大気に連通している。
【0054】
このように、漏気回収通路52の先端開口部52aを荷重水21の水面上に開口させることにより、漏気回収通路52自体が地下水還元手段として機能する。
【0055】
送気通路53は、実施の形態1における送気通路26と同様に、その一端が漏気回収通路52の漏気回収孔51に近い部分に繋がり、送気通路53の上端はケーソン本体11の上部で環状に配設された送気連結管55に繋がる。送気連結管55の一辺は送気延長管55aとして水平に延び、この送気延長管55aの自由端側が送気管17に接続されて、最終的に圧縮空気送気手段であるエアーコンプレッサ18に繋がっている。送気延長管55aの中間部には流量調整バルブ56が接続される。
【0056】
流量調整バルブ56を開くと、エアーコンプレッサ18の圧縮空気の一部が送気延長管55aと送気連結管55とを経て8本の送気通路53に分配され、漏気回収通路52の下端付近に圧縮空気が送気される。漏気回収通路52の内部には漏気回収孔51から地下水が自然流入しているため、送気通路53から漏気回収通路52の下端付近に圧縮空気が送気されることにより、漏気回収通路52内部の地下水が押し上げられて上方に揚水され、これにより漏気回収通路52内を上方に向かって流れる気液流が形成され、漏気回収孔51に負圧が発生する。
【0057】
このため、図4中に矢印で示すように、ケーソン作業室16内から刃口部14の先端を潜り抜けて外部に漏れた空気(漏気)が、ケーソン11の外周面に沿って上方に流れる途中で漏気回収孔51に吸入され、このように吸入された空気が漏気回収通路52内を上方に流れる上述の気液流に混合し、この気液流が漏気回収通路52の先端開口部52aから荷重水貯留部54に放流される。
【0058】
荷重水貯留部54に放流された気液流は空気と水とに分離され、水は荷重水21としてそのまま荷重水貯留部54に貯留され、空気は大気中に還元される。荷重水貯留部54における過剰な荷重水21は図示しないウォーターポンプにより外部に排出される。
【0059】
この漏気回収装置50によれば、漏気回収通路52を非常に短く形成できるため、漏気回収通路52内を上方に流れる気液流の揚程(水頭)を小さくでき、揚水を容易にすることができる。従って、ケーソン本体11の規模が同じであるならば、この漏気回収装置50の方が実施の形態1における漏気回収装置10よりも少ないエネルギー(負圧)で漏気を回収することができる。
【0060】
また、漏気回収通路52の大気連通側端部を荷重水21の水面上に開口させることにより、漏気回収通路52自体を地下水還元手段として機能させたため、専用の地下水還元手段を別途設ける必要がなく、漏気回収装置50を非常に簡素化することができる。
【0061】
なお、上記実施の形態1,2の漏気回収装置10(50)において、図5に好適な例を示すように、送気通路26(53)が漏気回収通路25(52)に繋がる接続区間26a(53a)を、送気通路26(53)の下端から漏気回収通路25(52)に向かって上昇するように傾斜させて、接続区間26a(53a)を鋭角な角度で漏気回収通路25(52)に合流させれば、漏気回収通路25(52)内を上方に向かって流れる気液流Fの流速を高めて漏気回収孔24(51)に発生する負圧を大きくし、漏気の回収性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態1に係る漏気回収装置が適用されたケーソン本体の縦断面図である。
【図2】同実施の形態1に係る図1のII矢視による平面図である。
【図3】同実施の形態1に係る図1のIII部を拡大した縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る漏気回収装置が適用されたケーソン本体の縦断面図である。
【図5】同実施の形態1,2のより好適な例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10 漏気回収装置
11 ケーソン本体
12 外周壁
14 刃口部
15 天井スラブ
16 ケーソン作業室
17 送気管
18 圧縮空気送気手段であるエアーコンプレッサ
21 荷重水
24 漏気回収孔
25 漏気回収通路
26 送気通路
28 詰まり防止手段であるフィルター
31 地下水還元手段である分離用貯留槽
35 漏気検出装置
36 警報装置であるブザー
54 荷重水貯留部
G 地盤
W 地下水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーソン本体の外周壁下端に、地盤に貫入する刃口部を設けるとともに、前記外周壁の内周側に天井スラブを形成し、前記刃口部の内周側かつ前記天井スラブの下方にケーソン作業室を隔成し、前記ケーソン作業室内に圧縮空気を供給しながら、その内部地盤を掘削して前記ケーソン本体を地盤中に沈設し、その際に前記ケーソン作業室内から前記刃口部を潜って外部に漏れた圧縮空気を回収する潜函工法における漏気回収装置において、
前記ケーソン本体の外周面に開口する漏気回収孔と、
一端が前記漏気回収孔に繋がり、他端が大気に連通する漏気回収通路と、
一端が前記漏気回収通路の前記漏気回収孔に近い部分に繋がる送気通路と、
前記送気通路の他端に繋がる圧縮空気送気手段と、
を備えてなることを特徴とする潜函工法における漏気回収装置。
【請求項2】
前記漏気回収孔を前記ケーソン本体外周面の水平方向に沿って複数箇所に配置したことを特徴とする請求項1に記載の潜函工法における漏気回収装置。
【請求項3】
前記漏気回収通路の大気連通側端部に地下水還元手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の潜函工法における漏気回収装置。
【請求項4】
前記地下水還元手段は、前記漏気回収通路に流入する地下水と漏気とを分離し、前記地下水を地下に、前記漏気を大気中に、それぞれと還元させる分離用貯留槽であることを特徴とする請求項3に記載の潜函工法における漏気回収装置。
【請求項5】
前記地下水還元手段は、前記漏気回収通路の大気連通側端部を前記ケーソン本体の前記天井スラブ上に設けられる荷重水貯留部の水面上に開口させたものであることを特徴とする請求項3に記載の潜函工法における漏気回収装置。
【請求項6】
前記漏気回収通路の大気連通側端部に、前記圧縮空気の漏気を検出する漏気検出装置と、この漏気検出装置の作動に連動して警報を発令する警報装置とを設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の潜函工法における漏気回収装置。
【請求項7】
前記漏気回収孔に土砂等の詰まりを防止する詰まり防止手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の潜函工法における漏気回収装置。
【請求項8】
前記圧縮空気送気手段として、前記ケーソン作業室内に圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段を兼用したことを特徴とする請求項1に記載の潜函工法における漏気回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−209581(P2009−209581A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53515(P2008−53515)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000207780)大豊建設株式会社 (77)