説明

潜熱蓄熱ユニット及び触媒コンバーター

【課題】内燃機関、特に自動車のもの、の排気系用の潜熱蓄熱ユニットを提供する。
【解決手段】構造が単純で熱応力が低減された潜熱蓄熱ユニット(1)は少なくとも1つの蓄熱板(2)を備え、該蓄熱板(2)は2枚の板体(3、4)からなり、該2枚の板体(3、4)は重ね合わされて、蓄熱材(18)で充填される蓄熱空間(7)を区画するとともにそれぞれが波型構造(5、6)を有し、一方の板体(3)の波型構造(5)と他方の板体(4)の波型構造(6)とが角度をなすよう設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関、特に自動車の内燃機関、の排気系用の潜熱蓄熱ユニットであって請求項1の前提部に記載の特徴を有するものに関する。本発明はまた潜熱蓄熱ユニットを備えた触媒コンバーターに関する。
【0002】
特許文献1が開示する潜熱蓄熱ユニットにおいては、複数の板体が積み重ねられ、それぞれが波型構造を有している。隣り合う板体はそれぞれの波型構造が互いに平行となるように設けられている。よって一方の板体の波型構造が、その波の谷の部分において、もう一方の板体の波型構造に、こちらの波の山の部分において、線状に接触する。この線状の接触箇所に沿って板体を、例えば溶接により、互いに固定することができる。結果、複数の溝状の蓄熱空間が並んで形成され、それらの各々に蓄熱材が充填される。
【0003】
潜熱蓄熱ユニットにおいて、蓄熱材として、好ましくは相転移物質が用いられる。相転移温度領域において比較的多量の熱を潜熱として蓄熱できるからである。蓄熱材の相転移は通常体積変化を伴う。蓄熱材は融解時に通常膨張する。これにより潜熱蓄熱ユニットが破壊されるおそれがある。このため蓄熱材の融解時の熱の加わり方に気を配る必要がある。蓄熱材の一部が先に融解して、まだ融解してない固相部分に閉じ込められて膨張を阻害されるようなことがないようにしなければならない。したがって、潜熱蓄熱ユニットの構成に応じてその設置環境を考慮する必要がある。
【0004】
一方、特許文献2によれば、要は、潜熱蓄熱ユニットにおいて蓄熱材用に余分の容積を割り当てることで蓄熱材の膨張に必要な容積を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009034655号
【特許文献2】独国特許出願公開第102009034654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は冒頭で言及したタイプの潜熱蓄熱ユニットおよびそれを備えた触媒コンバーターの改良された実施形態を提案することであり、それらはとりわけ低減された熱応力を特徴とする。加えて吸熱/放熱時の熱伝達の向上を図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を独立請求項に記載の構成で達成する。好ましい実施形態の構成は各従属請求項に記載のとおりである。
【0008】
本発明の基本思想は次のとおりである。潜熱蓄熱ユニットに少なくとも1つの蓄熱板を設ける。蓄熱板は2枚の板体を有し、これら板体は重ね合わされて、蓄熱材で充填される蓄熱空間を区画する。板体はまたそれぞれ波型構造を有する。各蓄熱板において、2枚の板体は一方の板体の波型構造と他方の板体の波型構造とが角度をなすよう配置される。その結果、各蓄熱板の2枚の板体が、それぞれの相対する表面において、波型構造に沿ってほぼ点状にのみ接触する。このようにして単一で、共通の、連続した蓄熱空間が各蓄熱板の2枚の板体の間に形成される。ここで2枚の板体がそれぞれの波型構造に関して相異なった空間配置とされていることで、蓄熱板の構成、ひいては潜熱蓄熱ユニットの構成の柔軟性が高まる。波型構造が相異なる角度で設けられていることで、とりわけ各蓄熱板の板体がほぼあらゆる方向に塑性膨張でき、その際に蓄熱板に過度の構造応力が生じることがない。
【0009】
各波型構造は例えば互いに平行に形成された複数の波からなる。これらの波は波型構造の縦方向(波越え方向)に並び、波型構造の横方向(波沿い方向)、つまり縦方向と直交する方向、に延びている。
【0010】
好ましくは、各板体を長方形に形成する。そうすることで例えばそのような板体を1枚あるいは複数枚収容する筐体を特に簡単に作製することができる。長方形の板体はそれ自体に縦方向(長辺沿い方向)と横方向(短辺沿い方向)がある。
【0011】
蓄熱板において2枚の板体がそれぞれの波型構造同士が角度をなすように設けられているとき、各板体の波型構造の縦方向はその板体自体の縦方向と角度をなす。例えば、波型構造の縦方向と板体の縦方向は互いに45度の角度をなす。
【0012】
特に好ましくは、各蓄熱板内における2枚の板体の縦方向を互いに平行とする一方でそれぞれの波型構造の縦方向を板体自体の縦方向に対して反対方向に角度をなすようにする。この場合対称配置が好ましい。例えば、一方の波型構造の縦方向を2枚の板体の縦方向に対して+45度とする一方で他方の波型構造の縦方向を2枚の板体の縦方向に対して−45度とする。結果、2つの波型構造の縦方向が互いになす角度は90度となる。
【0013】
各波型構造の断面形状は例えば円弧状、正弦波状、台形波状、あるいは三角波状である。
【0014】
板体の材質としては金属または合金が適している。各板体は例えば適当な板金から形成される。
【0015】
本発明による潜熱蓄熱ユニットにおいて、蓄熱材として相転移物質を用いるのが好ましい。
【0016】
一実施形態において、板体は蓄熱空間内に複数の接触箇所を有し、これら接触箇所において互いに接触し、これら接触箇所の一部または全部において互いに固定される。例えば接触箇所において半田付けまたは溶接による接合が施される。波型構造の波の断面形状にもよるが、接触は点状であるのが好ましい。だたし基本的には線状あるいは面状の接触も可能である。重要なのは板体同士が複数の離散した接触箇所において接触し合うことである。つまり横方向に各波の全幅にわたって連続して線状に延びる領域で接触するようなことはない。本実施形態の潜熱蓄熱ユニットにおいて、各接触箇所が波の横方向(波沿い方向)に占める領域は比較的小さい。
【0017】
一実施形態において、潜熱蓄熱ユニットは蓄熱板を少なくとも2つ備える。これらの蓄熱板は積み重ねられて蓄熱板スタックを形成し、隣り合う蓄熱板の間に流路が形成される。この流路に流体、とりわけ気体、その中でも特に排気、を通すことにより、潜熱蓄熱ユニットに熱を供給したり、潜熱蓄熱ユニットから熱を排出/吸収したりすることができる。
【0018】
基本的には、各流路を側方から区切る板体はそれぞれの波型構造が互いに平行となるように設けてよい。こうすると各流路は複数の溝からなる。好ましい実施形態においては、蓄熱板間において、各流路を側方から区切る板体はそれぞれの波型構造が互いに角度をなすように設けられる。これにより、各流路は各蓄熱板内の蓄熱空間と同等の剛性構造を有し、流体の流れが頻繁に方向転換して乱流となり熱伝達を促進する。
【0019】
基本的に、隣り合う蓄熱板間で長方形の板体の縦方向を互いに平行とする一方、流路内においてはそれぞれの波型構造が板体自体の縦方向に対して反対方向に角度をなすようにする。
【0020】
この場合、互いに平行に設けられた板体の縦方向が流路の縦方向となり、これを流路の貫流方向とも呼ぶ。流路を側方から区切る波型構造は流路の縦方向に対して互いに反対方向に角度をなす。この結果、流体の流れが何度も屈折することにより流体と蓄熱板との間の熱伝達を促進する。
【0021】
一実施形態において、隣り合う蓄熱板間で板体は流路内に複数の接触箇所を有し、これら接触箇所において互いに接触し、これら接触箇所の一部または全部において互いに固定される。これにより蓄熱板スタック内の蓄熱板が互いに固定される。
【0022】
一実施形態において、各流路は側壁により側方から区切られる。側壁は流路の入口開口から蓄熱板スタックに沿って前記流路の出口開口に達するよう設けられる。これにより流路の貫流方向が定まる。蓄熱板スタック内に3つ以上の蓄熱板を設る場合、側壁により各々の流路の貫流方向を互いに平行にする。さらに流路同士を共通の入口と出口により並列接続する。
【0023】
一実施形態において、側壁は蓄熱板の周縁を曲げて重ね合わせることにより形成される。この場合周縁は線状、より好ましくは面状の接触領域を形成し、ここで周縁が合わさって側壁を形成し、側壁が互いに固定される。固定は例えば半田付けまたは溶接で行われる。
【0024】
一実施形態において、板体の少なくとも1つには、前記蓄熱空間と反対側の表面に活性触媒被膜が形成される。板体が複数設けられて蓄熱板スタックを形成している場合、流路を区画する面の少なくとも1つに活性触媒被膜を形成するとよい。こうすることで、潜熱蓄熱ユニットに触媒コンバーターの機能を統合することができる。とりわけ潜熱蓄熱ユニットが統合された触媒コンバーターの製作が容易になる。
【0025】
一実施形態において、各蓄熱板の蓄熱空間内に毛細管構造、特に別体の追加部材として構成されたもの、が設けられ、この毛細管構造は2枚の板体の波型構造を構成する波の一部または全部にわたって設けられている。蓄熱材は例えば相転移物質であり、これが液相の時に毛細管構造はそれを蓄熱空間内に可能な限り均一に分布させる働きをする。温度が下がると凝固すなわち相転移が起こり、蓄熱材は蓄熱空間内にほぼ均一に分布した状態で凝固する。これにより、蓄熱材の凝固後、蓄熱空間内のほぼ全域で適当な膨張容積が得られる。この膨張容積が、後に蓄熱材が再び液化する際にその膨張分を吸収するため、蓄熱板の構造に有害な応力が生じることがない。
【0026】
そのような毛細管構造は例えば繊維のマットやフリースのマットで実現できる。セラミックや金属の網構造部材や発泡構造部材としてもよい。
【0027】
一実施形態において、各蓄熱板は周縁にて閉じられていて、この周縁において前記板体は互いに面接触し互いに固定される。固定は例えば半田付けまたは溶接で行われる。これにより、各蓄熱板を外界から密閉された蓄熱空間を持つように作製することが殊に容易になる。
【0028】
蓄熱板はおおむね平坦に構成するとよい。特に好ましくは、前述の周縁が接触面を形成していれば蓄熱板の組み立てが容易である。この接触面に関して、2枚の板体のそれぞれの波型構造を逆向きに突出させるとよい。例えば、一方の板体の波型構造を接触面の片側にのみ突出させ、他方の板体の波型構造を接触面の反対側にのみ突出させる。これにより当然、波型構造同士が接触面において互いに接触して、既述の接触箇所を蓄熱空間内で形成する。各波の端部、つまりそれらの横方向の端部、は周縁においてまたは周縁に向かって先細りにするとよい。
【0029】
各波の端部、つまりそれらの横方向の端部、は周縁においてまたは周縁に向かって先細りにするとよい。板体は例えば連続した、波型のついた巻材を適当なサイズにカットして作製する。そうすればあとは周縁部分だけを成型加工すれば済む。あるいは、連続した、平坦な巻材をカットして平板を得、これに波型構造を深絞りなどの成型技術で形成してもよい。各蓄熱板に充填口を少なくとも1つ備えるとよい。これにより、板体を接合した後に蓄熱空間に蓄熱材を充填することができる。ここで蓄熱材としての相転移物質は固相、例えば流動性のある顆粒や粉末、の状態で充填してもよいし、液相の状態で充填してもよい。例えば各蓄熱板の下部に液相の蓄熱材用の充填口を、上部に空気孔を備えてもよい。各蓄熱板は蓄熱材の充填の後で恒久的に気密に密閉されてもよい。
【0030】
一実施形態において、各蓄熱板の作製に用いる2枚の板体は、同一部品として構成される。これらは別体として作製され、継ぎ合わされて各蓄熱板を形成する。
【0031】
あるいは、各蓄熱板の2枚の板体を、単一の連続した板材で一体に形成してもよい。これを180度折り曲げて蓄熱板を作製する。このとき曲げ部が蓄熱板の周縁に来る。
【0032】
特に好ましくは、2枚の板体を連続した、つまり中断のない、巻材を折り曲げて一体に形成する。
【0033】
本発明によれば、内燃機関、特に自動車の内燃機関、の排気系用の触媒コンバーターは排気入口と排気出口を有する筐体を備える。そしてこの筐体内に上記のようなタイプの潜熱蓄熱ユニットを備える。基本的にはこの潜熱蓄熱ユニットに加えてさらに触媒コンバーターエレメントを少なくとも1つ設ける。それに加えて、またはそれに代えて、所望の触媒コンバーター効果を、潜熱蓄熱ユニット内の流路に適当な活性触媒被膜を形成することで得てもよい。これにより特に小型化と一体化が可能となる。潜熱蓄熱ユニットがその側壁ともども触媒コンバーターの筐体内に収容される。よって触媒コンバーターは潜熱蓄熱ユニットをその側壁ともども包み込む形となる。こうする代わりに、潜熱蓄熱ユニットを触媒コンバーターの筐体に統合して、潜熱蓄熱ユニットの側壁が触媒コンバーターの筐体の側壁の少なくとも一部をなすようにしてもよい。
【0034】
本発明の他の重要な特徴や効果は、従属請求項、図面、および図面に基づいた本明細書内の記載の該当箇所から理解されるとおりである。
【0035】
上に述べた、また下にこれから述べるいずれの特徴も、具体的に言及されている組み合わせ以外のどのような組み合わせでも、あるいは単独でも、本発明の範囲を逸脱しない限り実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】蓄熱板を備えた潜熱蓄熱ユニットの概略斜視図である。
【図2】蓄熱板の斜視図である。
【図3】蓄熱板の分解斜視図である。
【図4】相異なる実施形態a〜dにおける板体の概略断面図である。
【図5】毛細管構造を備える蓄熱板の分解斜視図である。
【図6】毛細管構造の斜視図である。
【図7】蓄熱板スタックを備えた潜熱蓄熱ユニットの概略断面図である。
【図8】別の実施形態における、図7と同様の蓄熱板スタックを備えた潜熱蓄熱ユニットの断面図である。
【図9】一体型の蓄熱板の概略断面図である。
【図10】一体型の蓄熱板スタックの概略断面図である。
【図11】充填口を備えた蓄熱板の概略分解斜視図である。
【図12】他の実施形態における充填口を示す、図11と同様の図である。
【図13】充填口を2つ備えた蓄熱板の斜視図である。
【図14】潜熱蓄熱ユニットが組み込まれた触媒コンバーターの概略縦断面図である。
【図15】潜熱蓄熱ユニットが統合された触媒コンバーターの概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。同一、類似、または機能上同等の部材は同一の参照符号で示す。
【0038】
図面は全て模式図であり、各図の内容は以下のとおりである。図1は蓄熱板を備えた潜熱蓄熱ユニットの概略斜視図である。図2は蓄熱板の斜視図である。図3は蓄熱板の分解斜視図である。図4は相異なる実施形態a〜dにおける板体の概略断面図である。図5は毛細管構造を備える蓄熱板の分解斜視図である。図6は毛細管構造の斜視図である。図7は蓄熱板スタックを備えた潜熱蓄熱ユニットの概略断面図である。図8は別の実施形態における、図7と同様の蓄熱板スタックを備えた潜熱蓄熱ユニットの断面図である。図9は一体型の蓄熱板の概略断面図である。図10は一体型の蓄熱板スタックの概略断面図である。図11は充填口を備えた蓄熱板の概略分解斜視図である。図12は他の実施形態における充填口を示す、図11と同様の図である。図13は充填口を2つ備えた蓄熱板の斜視図である。図14は潜熱蓄熱ユニットが組み込まれた触媒コンバーターの概略縦断面図である。図15は潜熱蓄熱ユニットが統合された触媒コンバーターの概略縦断面図である。
【0039】
図1に本発明に係る潜熱蓄熱ユニット1を示す。潜熱蓄熱ユニット1は内燃機関、特に自動車の内燃機関、において使用されるもので、少なくとも1つの蓄熱板2を備える。蓄熱板2は2枚の板体3、4からなり、これら板体3、4は重ね合わされていてそれぞれが波型構造5、6を有している。2枚の板体3、4の間に蓄熱空間7が形成される。波型構造5、6に関して、板体3、4は一方の板体3の波型構造5と他方の板体4の波型構造6とが互いに角度をなすように組み合わされている。波型構造5、6が互いに角度をなすことで、蓄熱空間7は剛性構造を有し、2枚の板体3、4の間で共通の連続した蓄熱空間7を形成する。結果、蓄熱板2はその内部に単一の連続した蓄熱空間7を有している。蓄熱空間7の複雑な形状は、波型構造5、6の波の谷同士が向き合うことで板体3、4のそれぞれから他方へ溝が開いた形になっていることによる。これらの溝は互いに対して開いていてかつ波型構造5、6と同様互いに角度をなしている。
【0040】
図2、図3に示すように、波型構造5、6はそれぞれ、互いに平行な複数の波8からなる。これらの波8は波型構造5、6の縦方向(波越え方向)9に隣り合い、波型構造5、6の横方向10(波沿い方向)に延びている。本例において、板体3、4は長方形であり、そのため縦方向11(長辺沿い方向)と横方向(短辺沿い方向)12を持つ。波型構造5、6のそれぞれにおいて、その縦方向9と横方向10は直交している。板体3、4のそれぞれにおいて、その縦方向11と横方向12は直交している。板体3、4のそれぞれにおいて、波型構造5、6の縦方向9は板体3、4自体の縦方向11に対して角度をなしている。角度は本例においては約45度である。蓄熱板2において、2枚の板体3、4それぞれの縦方向11は互いに平行である。これに対して、蓄熱板2において、2つの波型構造5、6それぞれの縦方向9は、板体3、4の縦方向11に対して反対方向に角度をなしている。図示の例において、波型構造5の縦方向9は両板体3、4の縦方向11に対して+45度の角度をなしているのに対して、波型構造6の縦方向9は両板体3、4の縦方向11に対して−45度の角度をなしている。
【0041】
図1に示すように、板体3、4は蓄熱空間7内に複数の接触箇所13を有し、そこで板体3、4が互いに接触する。これら接触箇所13の全部または一部において板体3、4を互いに固定することができる。接触箇所13はしたがって例えば半田付け箇所または溶接箇所である。
【0042】
図1〜図3に示すように、蓄熱板2は周縁14において閉じられているとよい。周縁14では板体3、4が互いに面接触し固定されている。図1において、そのような閉じられた周縁における接触領域を15で示す。接触領域15は半田付けまたは溶接による接合により形成される。図示の実施形態では、蓄熱板2をおおむね平坦に構成し、前述の周縁14が接触面16上に位置するようにする。この接触面16において2枚の板体3、4は周縁で互いに接触する。さらに、図示の実施形態においては、板体3、4それぞれの波型構造5、6が上述の接触面16で互いに接触するように、板体3、4の形状を決める。これにより接触領域15と接触箇所13の両方が接触面16上に位置することになる。結果、一方の板体3の波型構造5は接触箇所13を除けば接触面16に関して他方の板体4とは反対側に位置することになる。他方の板体4の波型構造6も同様である。
【0043】
図2に示すように、各波8の波沿い方向の端部17は周縁14に向かって先細っていてよい。
【0044】
図4a〜図4bに示すように、各波8あるいは波型構造5、6の断面形状として、様々な形状が考えられる。例えば図4aには正弦波状の波型構造が示されている。図4bには円弧状の波型構造が示されている。図4cには三角波状の波型構造が示されている。図4dには台形波状の波型構造が示されている。言うまでもなく、波型構造5、6をこれ以外の形状にしてもよい。
【0045】
板体3、4は金属、その中でも特に板金で作製されるとよい。
【0046】
潜熱蓄熱ユニット1の蓄熱空間7には蓄熱材18が充填される。蓄熱材18は好ましくは相転移物質であり、例えば塩の単体または混合物である。
【0047】
図5、図6に示すように、毛細管構造19を蓄熱空間7に設けてもよい。毛細管構造19は、蓄熱空間7を区画する2枚の波型構造5、6の複数の波8にわたって設けられる。毛細管構造19は蓄熱空間7全体にわたる、つまり蓄熱空間7において両波型構造5、6の全ての波8にわたる寸法にするとよい。板体3、4同士の接触箇所13における固定は毛細管構造19を介して行えばよい。あるいは、毛細管構造19を接触箇所13に触れないように蓄熱空間7に設けてもよい。例えば、毛細管構造19において、接触箇所13に相当する箇所を開けて(隙間を設けて)おくとよい。毛細管構造19は例えば繊維のマット、フリースのマット、網構造部材、発泡構造部材などである。ここでは毛細管構造19は液相の蓄熱材に対して毛細管作用を発揮するように設計/構成される。毛細管構造19の作用により、蓄熱材18が蓄熱板2内の位置とは関係なく蓄熱空間7のほぼ全体に行きわる。このため蓄熱材18は液相からの凝固時に収縮して蓄熱空間7中に隙間すなわち空き空間を生じる。都合がよいことに蓄熱材18は再液化により膨張するときにこの隙間に即座に入り込めるので、その際に蓄熱板2に過度の応力が生じることがない。
【0048】
図7、図8に示すように潜熱蓄熱ユニット1には複数の蓄熱板2を備えるとよい。図7、図8に示す例においては、蓄熱板2が2つ設けられているが、これは一つの例に過ぎず、言うまでもなく、蓄熱板2を3つ以上設けてもよい。複数の蓄熱板2は積み重ねられて蓄熱板スタック20をなし、積層方向21は個々の蓄熱板2が広がる平面に対して直角である。隣り合う蓄熱板2の間には流路22が形成され、この流路22に流体流を通すことでできる。好ましくは、流体流は気体流であり、その中でも特に排気流であるが、液体流であっても構わない。
【0049】
板体3、4の波型構造5、6のうち、流路22を区切っているものは隣り合う蓄熱板2に属するが、これらの波型構造5、6同士は互いに角度をなしていてもよい。これにより流路22も剛性構造とすることができる。複数の蓄熱板2が同一形状の場合には各蓄熱空間7の形状は流路22の形状とほぼ同じになる。違うのは蓄熱空間7が蓄熱材を閉じ込める必要から外界に対して閉じているのに対して、流路22は少なくともそれを貫く一方向に開いていなければならない点である。図7に、あくまで一つの例として、流路22の貫流方向23(縦方向23)を示す。ここでは貫流方向23は蓄熱板2の板体3、4の縦方向11と平行である。
【0050】
図8において、隣り合う蓄熱板2の板体3、4は流路22内に複数の接触箇所24を有しており、そこで板体3、4ひいては蓄熱板2が互いに接触している。ここでもこれら接触箇所24の全部または一部において蓄熱板2同士を固定することができる。接触箇所13はしたがって例えば半田付け箇所または溶接個所である。
【0051】
図8に示すように、各流路22を側壁25によって側方から区切ってもよい。側壁25は蓄熱板スタック20沿いに、流路22の入口開口26(図14、図15)から流路22の出口開口27(図14、図15)まで延びている。図8に示す実施形態においては側壁25が蓄熱板2の周縁28を曲げて重ね合わせることにより形成されている。この場合の接触領域を29で示す。接触領域29での接触は面接触である。同時に接触領域29において半田付けまたは溶接による気密な接合を施してもよい。
【0052】
板体3、4の少なくとも一方の、蓄熱空間7と反対側の表面、つまり蓄熱板スタック20において流路22側の表面、に活性触媒被膜30を形成してもよい。これにより潜熱蓄熱ユニット1に触媒コンバーターとしての機能を付加することができる。
【0053】
図9に示す蓄熱板2の実施形態においては、2枚の板体3、4が一枚の連続した板31を曲げ部32で180度折り曲げて作製されている。よって単一の板材31の、2枚の板体3、4となるそれぞれの部分が重なり合う。曲げ部を32で示す一方、板材31の長さ方向の両端部を33で示す。板体3、4はまたこれらを別々の部材として作製しそれらを重ね合わせて蓄熱板2としてもよい。好ましくは板体3、4を同一の部材で構成して同一の部品とする。
【0054】
図10に示す実施形態においては、蓄熱板スタック20が一枚の連続した巻材34を何度も折り曲げて作製されている。ここでも曲げ部を32で示し、巻材34の長さ方向の両端部を33で示す。蓄熱板スタック20はまた、まず個々の蓄熱板2を別々に作製してからそれらを重ね合わせて作製してもよい。
【0055】
図11〜図13に示すように、各蓄熱板2には少なくとも1つの充填口35を設けるとよい。板体3、4の組み立て後、充填口35を通して蓄熱材18を蓄熱空間7に充填することができる。蓄熱板2の内部は共通の連続した蓄熱空間7となっているので、充填口35が1つあれば蓄熱空間7全体の充填に十分である。図11、図12においては充填口35が1つ設けられ、これを通して固相、例えば流動性のある顆粒や粉末、の状態の蓄熱材18を充填する。図11に示す実施形態においては管片36を用いて充填口35を形成している。図12に示す実施形態においては充填口35が板体3の少なくとも1つと一体に型打ち部37を介して成形される。
【0056】
図13に示す実施形態においては、充填口35が2つ設けられ、それぞれが管片36を用いて形成されていて、1つが充填用に、もう1つ空気孔として用いられる。これにより蓄熱空間に例えば液相の蓄熱材18を充填することができる。
【0057】
図14、図15に本発明に係る触媒コンバーター38を示す。触媒コンバーター38は内燃機関、特に自動車の内燃機関、の排気系統における使用に適したもので、筐体39を備え、この筐体39に排気入口40と排気出口41を備える。筐体39内に上述した構成の潜熱蓄熱ユニット1が設けられる。ここで図14に示すように潜熱蓄熱ユニット1は筐体39内に軸受材42を介して設けられる。これとは異なる図15に示す実施形態におけるように、筐体39の少なくとも一部を潜熱蓄熱ユニット1の側壁25で形成してもよい。特に図15に示す触媒コンバーター38の実施にあたっては、排気入口40を有する入口側テーパー部43と排気出口41を有する出口側テーパー部44とを潜熱蓄熱ユニット1の両端面に取り付け、潜熱蓄熱ユニット1の外周面が2つのテーパー部43、44とともに触媒コンバーター38の筐体39を形成するように構成するとよい。
【0058】
これらの実施形態の触媒コンバーター38においては、潜熱蓄熱ユニット1が、各流路22内の活性触媒被膜30の働きの結果、触媒コンバーターとしても用いられている。言うまでもなく、他の実施形態として、例えば筐体39内において、潜熱蓄熱ユニット1の上流または下流に従来の触媒コンバーターを少なくとも1つ設けた構成も可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 潜熱蓄熱ユニット
2 蓄熱板
3、4 板体
5、6 波型構造
7 蓄熱空間
8 波
9 縦方向
10 横方向
11 縦方向
12 横方向
13 接触箇所
14 周縁
15 接触領域
16 接触面
17 端部
18 蓄熱材
19 毛細管構造
20 蓄熱板スタック
21 積層方向
22 流路
23 貫流方向
24 接触箇所
25 側壁
26 入口開口
27 出口開口
28 周縁
29 接触領域
30 活性触媒被膜
31 板材
32 曲げ部
33 端部
34 巻材
35 充填口
36 管片
37 型打ち部
38 触媒コンバーター
39 筐体
40 排気入口
41 排気出口
42 軸受材
43 入口側テーパー部
44 出口側テーパー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関、特に自動車の内燃機関、の排気系用の潜熱蓄熱ユニット(1)であって、
少なくとも1つの蓄熱板(2)を備え、
前記蓄熱板(2)は2枚の板体(3、4)を有し、
前記2枚の板体(3、4)は重ね合わされて、蓄熱材(18)で充填される蓄熱空間(7)を区画し、
前記2枚の板体(3、4)はそれぞれ波型構造(5、6)を有し、一方の板体(3)の波型構造(5)と他方の板体(4)の波型構造(6)とが角度をなすよう設けられている
ことを特徴とする潜熱蓄熱ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の潜熱蓄熱ユニットにおいて、
前記板体(3、4)は前記蓄熱空間(7)内に複数の接触箇所(13)を有し、該接触箇所(13)において互いに接触し、
前記板体(3、4)は前記接触箇所(13)の一部または全部において互いに固定されている。
【請求項3】
請求項1または2に記載の潜熱蓄熱ユニットにおいて、
前記蓄熱板(2)は少なくとも2つ設けられ、積み重ねられて蓄熱板スタック(20)を形成しており、
隣り合う蓄熱板(2)の間に流路(22)が形成されている。
【請求項4】
請求項3に記載の潜熱蓄熱ユニットにおいて、
前記隣り合う蓄熱板(2)間で、前記流路(22)を側方から区切る前記板体(3、4)の前記波型構造(5、6)同士が角度をなすよう設けられている。
【請求項5】
請求項3または4に記載の潜熱蓄熱ユニットにおいて、
前記流路(22)は側壁(25)によって側方から区切られ、
前記側壁(25)は前記流路(22)の入口開口(26)から蓄熱板スタック(20)に沿って前記流路(22)の出口開口(27)に達するよう設けられている。
【請求項6】
請求項5に記載の潜熱蓄熱ユニットにおいて、
前記側壁(25)は前記蓄熱板(2)の周縁(28)を曲げて重ね合わせることにより形成されている。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の潜熱蓄熱ユニットにおいて、
前記板体(3、4)の少なくとも一方の、前記蓄熱空間(7)と反対側の表面に活性触媒被膜が形成されている。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の潜熱蓄熱ユニットにおいて、
各前記蓄熱板(2)の前記蓄熱空間(7)内に毛細管構造(19)が設けられ、該毛細管構造(19)は前記2枚の板体(3、4)の前記波型構造(5、6)を構成する波(8)の一部または全部にわたって設けられている。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の潜熱蓄熱ユニットにおいて、
各前記蓄熱板(2)は周縁(14)にて閉じられており、該周縁(14)において前記板体(3、4)は互いに面接触し互いに固定されている。
【請求項10】
内燃機関、特に自動車の内燃機関、の排気系用の触媒コンバーターであって、
排気入口(40)と排気出口(41)を有する筐体(39)を備え、
前記筐体(39)内に請求項1から9のいずれかに記載の潜熱蓄熱ユニット(1)を設けた
ことを特徴とする触媒コンバーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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