説明

潤滑グリース組成物

(i)基油;ならびに(ii)(a)C12−C24ヒドロキシカルボン酸のリチウム石鹸および(b)C−C12ジカルボン酸のアルカリ土類金属塩を含む増粘剤系を含む潤滑グリース組成物。本発明による潤滑グリース組成物は、優れた油放出性特性と共に、耐水性および剪断安定性の向上を示す。本発明の潤滑グリース組成物はまた、従来のリチウムベースグリース組成物に存在するよりも低レベルのリチウムを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑グリース組成物に関し、特に、改善された耐水性、改善された剪断安定性および優れた油放出特性を有する潤滑グリース組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潤滑の主な目的は、摩擦および摩耗を最小限にするための、相互に対して移動する固体表面の分離である。この目的のために最も頻繁に使用される物質は、油およびグリースである。潤滑剤の選択は、特定の用途によって主に決定される。
【0003】
潤滑グリースは、大きい圧力が存在する場合、軸受からの油垂れが望ましくない場合、または接触表面の運動が不連続であるため軸受内の分離を維持することが困難な場合に使用される。簡素な設計、シーリング要件の減少、および保守の必要性低下のため、グリースは、電気モータの玉軸受およびころ軸受、家電製品、自動車車輪軸受、工作機械、航空機付属品および採掘工具を潤滑するためにほぼ例外なく最初に考慮される。グリースは、小型ギア駆動装置の潤滑および多くの低速滑動用途にも使用される。
【0004】
潤滑グリースは、デュアル・マス・フライホイール用途での最適な潤滑剤である。デュアル・マス・フライホイールは、変速機歯車の過剰なガタつきをなくし、ギアチェンジ/シフト作業を減少させ、燃料経済性を向上させる。デュアル・マス・フライホイールは通例、標準マニュアル変速機を有する軽量ディーゼルトラックおよびより高性能の高級車に装着されて、駆動系の振動を減衰させる。これにより長期にわたって損傷なく、車両をさらに長期間運転することができる。
【0005】
潤滑グリースは主に流体潤滑剤、例えば油、および増粘剤から成る。本質的に、油潤滑に通常選択されるのと同じ種類の油が、グリースの配合に使用される。リチウム、カルシウム、ナトリウム、アルミニウムおよびバリウムの脂肪酸石鹸が、増粘剤として最も普通に使用される。リチウム塩が有機錯化剤、例えばアゼライン酸、セバシン酸と反応するリチウム錯体石鹸も、グリース組成物で増粘剤として普通に使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より高い性能に対するこれまでにない要求の高まりにより、潤滑特性の改善、および特に高い滴点、耐水性の改善、剪断安定性の改善、油放出特性の低下、ならびに雑音および密度プロフィールの改善を示すグリースを提供することが所望であろう。
【0007】
さらにリチウム金属は供給が不足してきているため、従来のリチウム錯体グリース組成物で使用されるよりも低レベルのリチウムを使用するグリース調合物を提供することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、
(i)基油;ならびに
(ii)(a)C12−C24ヒドロキシカルボン酸のリチウム石鹸および(b)C−C12ジカルボン酸のアルカリ土類金属塩を含む増粘剤系;
を含む潤滑グリース組成物が提供される。
【0009】
本発明により、耐水性を向上させるための以下に記載するような潤滑組成物の使用がさらに提供される。
【0010】
本発明により、剪断安定性を向上させるための以下に記載するような潤滑組成物の使用がさらに提供される。
【0011】
本発明により、油放出性を低下させるための以下に記載するような潤滑組成物の使用が
さらに提供される。
【0012】
本発明により、デュアル・マス・フライホイール用途における以下に記載するような潤滑グリース組成物の使用がさらに提供される。
【0013】
驚くべきことに、本発明のグリース組成物が、特にマスフライホイール用途または連結用途で、優れた耐水性、剪断安定性および油放出性特性、ならびに優れた減摩特性、良好な安定性、良好な摩耗特性、遠心力に対する高い耐性およびグリース寿命の延長を示すことが見出されている。本発明のグリース組成物は、従来のリチウムベースのグリース組成物で使用されるよりも低レベルのリチウムを含有するという観点からも好都合である。
【0014】
本発明の潤滑グリースは、必須構成要素として基油を含む。
【0015】
本発明による方法で使用される基油組成物に関して特別の制限はなく、各種の従来の鉱油および合成油は便利に使用され得る。本記載の目的のために、「基油」という用語は、グリース基材も含むことを意味する。
【0016】
好ましくは、潤滑組成物は潤滑組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%の、好ましくは少なくとも50重量%の、さらに好ましくは少なくとも70重量%の基油を含む。
【0017】
本発明で使用する基油組成物は、1つ以上の鉱油および/または1つ以上の合成油の混合物を好都合に含み得る。
【0018】
本明細書で使用するための基油は、好ましくは(ASTM D445により)40℃にて10から2000mm/秒の運動粘性率を有する。
【0019】
鉱油は、水素化仕上げプロセスおよび/または脱ろうによってさらに精製され得る、パラフィン型、ナフテン型、または混合パラフィン/ナフテン型の液体石油および溶媒処理または酸処理潤滑鉱油を含む。
【0020】
本発明の潤滑油組成物で使用するために好適な基油は、グループI、グループIIまたはグループIII基油、ポリアルファオレフィン、フィッシャー−トロプシュ由来基油およびこの混合物を含む。
【0021】
本発明の「グループI」基油、「グループII」基油および「グループIII」基油とは、アメリカ石油協会(API)カテゴリI、IIおよびIIIの定義に従う潤滑油基油を意味する。このようなAPIカテゴリは、API Publication 1509,15th Edition,Appendix E,April 2002に定義されている。
【0022】
本発明の潤滑油組成物の基油として便利に使用され得る好適なフィッシャー−トロプシュ由来基油は、例えばEP 0 776 959、EP 0 668 342、WO 97/21788、WO 00/15736、WO 00/14188、WO 00/14187、WO 00/14183、WO 00/14179、WO 00/08115、WO 99/41332、EP 1 029 029、WO 01/18156およびWO 01/57166に開示されているものである。
【0023】
合成油は炭化水素油、例えばオレフィンオリゴマー(PAO)、2塩基酸エステル、ポリオールエステル、および脱ろうされたろう様ラフィネートを含む。Shell Groupにより「XHVI」(商標)という名称で販売されている合成炭化水素基油が便利に使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、基油はRoyal Dutch/Shell Group of Companiesから「HVI」または「MVIN」という名称で販売されている鉱物起源の基油である。
【0025】
本発明の別の実施形態において、潤滑組成物はポリアルキレングリコール基油を含む。本発明による潤滑組成物で使用されるポリアルキレングリコール基油に関して特定の制限はなく、各種の従来のポリアルキレングリコールが便利に使用され得る。
【0026】
本発明により使用されるポリアルキレングリコール(PAG)は、1から6個の炭素原子(−R−O−)を有するアルキレンオキシド単位をモノマー単位として示し得る。
【0027】
ポリアルキレングリコールは水素末端基、アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルアリールオキシおよび/またはヒドロキシ末端を示し得る。アルキルアリールオキシ基はアリールアルキル(アルキレン)オキシ基を意味するものとして、アルキルアリール基はアリールアルキル(アルキレン)基(例えばアリールCHCH−)を意味する意味するものとしても理解されるべきである。アルコキシ型を含むアルキル型の末端基、またはアルキルアリール型、アリールオキシ型およびアルキルアリールオキシ型を含むアリール型の末端基は、アリール型に基づいて好ましくは6から24個の炭素原子、特に好ましくは6から18個の炭素原子、およびアルキル型に基づいて好ましくは1から12個の炭素原子を示す。
【0028】
ポリアルキレングリコールはホモポリマー、即ちポリプロピレングリコール(および/またはポリプロピレンオキシド)かまたはコポリマー、ターポリマーなどのいずれかであり得る。後者の場合では、モノマー単位はランダム分布またはブロック構造を示し得る。ポリアルキレングリコールがホモポリマーではない場合、これらのポリアルキレングリコールの、すべてのモノマー単位の好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%がポリプロピレンオキシド(PO)から産生可能であり、またすべてのモノマー単位の好ましくは少なくとも20%がエチレンオキシド(EO)を使用することによって産生可能である(PO/EOコポリマー)。さらなる実施形態により、これらのポリアルキレングリコールの、すべてのモノマー単位の好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%はブチレンオキシド(BO)から得ることができ、さらに、すべてのモノマー単位の好ましくは少なくとも20%は、エチレンオキシドを使用して得ることができる(BO/EOコポリマー)。
【0029】
本明細書の好ましい実施形態において、すべてのモノマー単位の好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも80%がプロピレンオキシドから産生可能であり、残りはエチレンオキシドから産生可能である。
【0030】
本明細書の特に好ましい実施形態において、ポリアルキレングリコールはプロピレンオキシドのホモポリマーである。ポリプロピレンホモポリマーの好適な例は、Dow Chemicalsから商標名シナロック(登録商標)、例えばシナロック(登録商標)100−150Bで市販されている。
【0031】
(ポリ)アルコールが使用されるとき、開始化合物はポリマー中に包含され、本発明の意味に従って、ポリマー鎖の末端基とも呼ばれる。好適な開始基は活性水素を含む化合物(例えば水)、n−ブタノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ネオペンチルグルコール(例えばペンタエリスリトール)、エチレンジアミン、フェノール、クレゾールまたは他の(C−C16(モノ、ジまたはトリ)アルキル)芳香族、(ヒドロキシアルキル)芳香族、ヒドロキノン、アミノエタノールアミン、トリエチレンテトラミン、ポリアミン、ソルビトールもしくは他の糖から成る。他のC−H酸性化合物、例えばカルボン酸またはカルボン酸無水物も、開始化合物として使用できる。他の好適な開始化合物は、より長鎖のアルコール、例えばC10−C18アルコールを含む。
【0032】
好ましくは、ポリアルキレングリコールは、側基または末端基として例えばポリマー鎖に挿入されたアリール基または対応する複素芳香族基を含み、;基は必要な場合、直鎖または分枝アルキル基またはアルキレン基によって置換され得て、アルキル基またはアルキレン基は全体で好ましくは1から18個の炭素原子を示す。
【0033】
環式エーテルアルコール、例えばヒドロキシフルフリルまたはヒドロキシテトラヒドロフラン、窒素複素環または硫黄複素環も開始物質として使用できる。このようなポリアルキレングリコールはWO 01/57164に開示されており、この教示は参照により本明細書に組み入れられている。
【0034】
好ましくは、本発明によるポリアルキレングリコールは、200から6000g/モルの、さらに好ましくは400から4000g/モルの、なおさらに好ましくは1000から3000g/モルの、およびとりわけ2000から3000g/モルの平均分子量(数平均)を有する。
【0035】
本発明によって使用されるポリアルキレングリコールは、開始化合物としての、ポリアルコールを含むアルコールをオキシラン、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドと反応させることによって産生することができる。反応後に、これらは末端基として遊離ヒドロキシ基1個のみを有する。ヒドロキシ基を1個のみ有するポリアルキレングリコールは、2個の遊離ヒドロキシ基を有するものより好ましい。例えばさらなるエーテル化ステップの後に遊離ヒドロキシ基をもはや含まないポリアルキレングリコールは、安定性、吸湿性、および適合性に関して特に好ましい。末端ヒドロキシル基のアルキル化によって、熱安定性の上昇がもたらされる。それゆえ本発明によるとりわけ好ましい実施形態において、PAG基油はエンドキャップPAG、即ち遊離ヒドロキシル基が存在しない場合を含む。
【0036】
好ましくは、潤滑組成物は潤滑組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%の、好ましくは少なくとも50重量%の、さらに好ましくは少なくとも70重量%のPAG基油を含む。(1つ以上の)PAG基油のみを基油として使用することがなおさらに好ましい。
【0037】
本発明の好ましい実施形態により、PAG基油は、40℃にて(ASTM D445により)32から690mm/秒の、好ましくは100から300mm/秒の、さらに好ましくは150から250mm/秒の運動粘性率を有する。
【0038】
基油がポリアルキレングリコール基油であるとき、鉱物または合成起源の従来使用されたいずれの潤滑油とも併用され得る。しかし本発明の一実施形態において、基油は1つ以上のポリアルキレングリコール基油のみから成る。
【0039】
本発明の潤滑グリース組成物は基油に加えて、C12−C24ヒドロキシカルボン酸のリチウム石鹸およびC−C12ジカルボン酸のアルカリ土類金属塩を含む増粘剤系をさらに含む。
【0040】
グリース中に存在する増粘剤系の量は、組成物の重量により、好ましくは2%から30%、好ましくは5%から20%である。
【0041】
好ましくは、ヒドロキシC12−C24カルボン酸のリチウム石鹸は、C16−C20ヒドロキシカルボン酸である。特に好ましいヒドロキシカルボン酸は、ヒドロキシステアリン酸、例えば9−ヒドロキシ、10−ヒドロキシ、または12−ヒドロキシステアリン酸、さらに好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸である。9−10位に2重結合を有する12−ヒドロキシステアリン酸の不飽和形であるレシノール酸も使用できる。他の好適なヒドロキシ脂肪酸は、12−ヒドロキシベヘン酸および10−ヒドロキシパルミチン酸を含む。
【0042】
−C12ジカルボン酸は、好ましくはC−C12、さらに好ましくはC−C10の脂肪族ジカルボン酸である。好適な酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ドデカン2酸およびセバシン酸を含む。アゼライン酸およびセバシン酸はとりわけ好ましい。
【0043】
−C12ジカルボン酸のアルカリ土類金属塩中に存在するアルカリ土類金属は、好ましくはカルシウムおよびマグネシウム、ならびにこの混合物から選択される。
【0044】
基油が鉱油である場合、特に良好な潤滑性能は、アルカリ土類金属がマグネシウムであるときに観察されている。基油がポリアルキレングリコールである場合、特に良好な潤滑性能は、アルカリ土類金属がカルシウムであるときに観察されている。
【0045】
12−C24ヒドロキシ脂肪酸およびC−C12脂肪族ジカルボン酸は好ましくは、20:1から1:1の、好ましくは10:1から1:1の、さらに好ましくは8:1から3:1の重量比で存在する。
【0046】
上記の増粘剤系を含む本発明のグリース組成物は、従来のリチウム錯体ベースのグリースよりも低レベルのリチウム金属が使用されるようにする観点から特に有利である。本明細書のグリース組成物に存在するリチウムの量は好ましくは、リチウム石鹸およびリチウム錯体石鹸のみをベースとして、C−C12ジカルボン酸のいずれのアルカリ土類金属塩も含有しない、従来のリチウム錯体ベースのグリース組成物と比較して、約40から50重量%減少する。
【0047】
本明細書のグリース組成物は、C−C12ジカルボン酸のアルカリ土類金属塩を形成するために、基油、アルカリ土類金属水酸化物または酸化物およびC−C12ジカルボン酸を含むプレスラリを作製するステップを含むプロセスによって調製される。プロセスの別のステップにおいて、このプレスラリは、基油、水酸化リチウムおよびC12−C24ヒドロキシカルボン酸を含む混合物に添加される。
【0048】
各種の従来のグリース添加剤は、ある所望の特徴、例えば酸化安定性、粘着性、超高圧特性および腐食抑制をグリースに与えるために、本発明の潤滑グリース中に本利用分野で通常使用される量で包含され得る。好適な添加剤は、1つ以上の超高圧剤/抗摩耗剤、例えば亜鉛塩(例えば亜鉛ジアルキルまたはジアリールジチオリン酸)、ホウ酸、置換チアジアゾール、例えばジアルコキシアミンを置換有機リン酸、アミンリン酸、天然または合成起源の硫化鯨油、硫化ラード、硫化エステル、硫化脂肪酸エステル、および同様の硫化物質と反応させることによって作製したポリマー性窒素/リン化合物、例えば式(OR)P=O(式中、Rはアルキル、アリールまたはアラルキル基である。)による有機リン酸類、およびトリフェニルホスホロチオネート;1つ以上の過剰塩基金属含有洗剤、例えばカルシウムもしくはマグネシウムアルキルサリチル酸またはアルキルアリールスルホン酸;1つ以上の無灰分散添加剤(例えばポリイソブテニルコハク酸無水物とアミンまたはエステルの反応生成物);1つ以上の酸化防止剤(例えばヒンダードフェノールまたはアミン、例えばフェニルアルファナフチルアミン);1つ以上の防錆添加剤;1つ以上の摩擦調節添加剤;1つ以上の粘度指数改良剤;1つ以上の流動性降下添加剤;および1つ以上の粘着剤を含む。固体物質、例えば黒鉛、微粉化二硫化モリブデン、タルク、金属粉末、および各種のポリマー(例えばポリエチレンろう)も特殊な特性を与えるために添加することができる。
【0049】
摩擦レベルを低下させるために、当業者はたいてい有機モリブデンベース調合物の使用を試みており、特許文献にはこのような潤滑組成物の提案が多数ある。
【0050】
本発明はここで、以下の実施例への参照により説明される:
(実施例1から4および比較実施例AおよびB)
以下の実施例の潤滑グリースを以下の手順によって調製した。事前製造スラリは、10%の基油、セバシン酸、水酸化カルシウムまたは酸化マグネシウムおよび水30mlを混合して、この混合物を20分間撹拌することによって調製した。事前製造スラリを50%の基油、12−ヒドロキシステアリン酸、水酸化リチウム1水和物および水100mlと共にオートクレーブに添加した。オートクレーブを閉じて、145℃に加熱した。排気温度に達した後、排気弁を開いて、蒸気を30分間放出した。蒸気圧が0バールであるときに、排気弁をなお開いたまま、215℃の温度まで加熱を開始した。215℃の温度に達した後、オートクレーブを1℃/分のジャケット冷却によって165℃に達するまで冷却した。165℃に達した後、残りの50%の基油を容器に添加した。次に生成物を80℃に冷却して、いずれの添加物も容器に添加した。次に生成物を3ロールミルによってホモジナイズした。
【0051】
調製したグリースの組成を下の表1および表2に示す。実施例1および2ならびに比較実施例Aは鉱油をベースとする。実施例1によるグリース組成物は、鉱油基油、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムおよびセバシン酸カルシウムの混合物を含む。実施例2は、セバシン酸カルシウムの代わりにセバシン酸マグネシウムを含有することを除いて実施例1と同じである。比較実施例Aは、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムおよびセバシン酸リチウム(即ちセバシン酸カルシウムまたはマグネシウムを含まない。)の混合物を含むことを除いて実施例1および2と同じである。実施例3および4ならびに比較実施例Bは、ポリアルキレングリコール基油をベースとする。実施例3によるグリース組成物は、ポリアルキレングリコール基油、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムおよびセバシン酸カルシウムの混合物を含む。実施例4は、セバシン酸カルシウムの代わりにセバシン酸マグネシウムを含有することを除いて実施例3と同じである。比較実施例Bは、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムおよびセバシン酸リチウム(即ちセバシン酸カルシウムまたはマグネシウムを含まない。)の混合物を含むことを除いて実施例3および4と同じである。
【0052】
【表1】

1.Dow Chemicalsから市販されているポリプロピレングリコールホモポリマー
2.Shell Oil Companyから市販されている、40℃にて110mm−1の粘度および95の粘度指数を有する鉱油
3.米国のChimturaから市販
4.ドイツ、LudwigshafenのRaschigから市販
5.スイスのCIBA Geigy Specialtiesから市販
6.ベルギーのCorm Van Loockeから市販
【0053】
【表2】

1.Dow Chemicalsから市販されているポリプロピレングリコールホモポリマー
2.Shell Oil Companyから市販されている、40℃にて110mm−1の粘度および95の粘度指数を有する鉱油
3.米国のChimturaから市販
4.ドイツ、LudwigshafenのRaschigから市販
5.スイスのCIBA Geigy Specialtiesから市販
6.ベルギーのCorm Van Loockeから市販
【0054】
潤滑特性の測定
多様な異なる潤滑特性を測定するために、実施例1から4ならびに比較実施例AおよびBのグリースに各種の標準試験方法を施した。使用した各種の試験方法を以下に挙げる。
【0055】
未混和ちょう度はDIN ISO 2137を使用して測定した。混和ちょう度はDIN ISO 2137を使用して測定した。
【0056】
ロール試験後の混和ちょう度はISO 2137/ASTM−D1831を使用して測定した。
【0057】
混和ちょう度の差はISO 2137/ASTM−D1831を使用して測定した。
【0058】
油放出性は、DIN 51817/IP121/ASTMD6184/98を使用して測定した。
【0059】
結果
結果を下の表3および4に示す。
【0060】
【表3】

7.25℃にて測定
8.80℃にて50時間行う
9.10重量%水中で80℃にて24時間行う
10.120℃にて18時間行う
11.120℃にて7日間行う
【0061】
【表4】

7.25℃にて測定
8.80℃にて50時間行う
9.10重量%の水中で80℃にて24時間行う
10.120℃にて18時間行う
11.120℃にて7日間行う
【0062】
考察
表3(鉱油をベースとするグリース)からわかるように、実施例1のグリース(12−ヒドロキシステアリン酸リチウムおよびセバシン酸カルシウムを含有)は、比較実施例Aのグリース(12−ヒドロキシステアリン酸リチウムおよびセバシン酸リチウムを含有)に匹敵する油放出性特性を示す。表3からさらにわかるように、実施例2のグリース(12−ヒドロキシステアリン酸リチウムおよびセバシン酸マグネシウムを含有)は、比較実施例Aのグリースと比較して油放出性特性の著しい低下を示す。
【0063】
表4(ポリアルキレングリコールベースのグリース)からわかるように、実施例3のグリース(12−ヒドロキシステアリン酸リチウムおよびセバシン酸カルシウムを含有)は、比較実施例Bのグリース(12−ヒドロキシステアリン酸リチウムおよびセバシン酸リチウムを含有)と比較してオイル放出性特性の著しい低下を示す。表4からさらにわかるように、実施例4のグリース(12−ヒドロキシステアリン酸リチウムおよびセバシン酸マグネシウムを含有)は、比較実施例Bと比べて匹敵する油放出性を示す。
【0064】
表3からわかるように、実施例1および2のグリースは、比較実施例Aのグリースと比べて剪断安定性特性が改善されている(ロール試験後の混和ちょう度およびロール試験後の混和ちょう度の差について、比較実施例Aよりも低い値を有する実施例1および2によって証明されるように)。表4からわかるように、実施例3および4のグリースは、比較実施例Bのグリースと比べて剪断安定性特性が改善されている(ロール試験後の混和ちょう度およびロール試験後の混和ちょう度の差について、比較実施例Bよりも低い値を有する実施例3および4によって証明されるように)。
【0065】
表3からわかるように、実施例1および2のグリースは、比較実施例Aのグリースと比べて耐水性特性が改善されている(ロール試験後の混和ちょう度(24時間/80℃/10%水)およびロール試験後の混和ちょう度の差(24時間/80℃/10%水)について、比較実施例Aよりも低い値を有する実施例1および2によって証明されるように)。表4からわかるように、実施例3および4のグリースは、比較実施例Bのグリースと比べて耐水性特性が改善されている(ロール試験後の混和ちょう度(24時間/80℃/10%水)およびロール試験後の混和ちょう度の差(24時間/80℃/10%水)について、比較実施例Bよりも低い値を有する実施例3および4によって証明されるように)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)基油;ならびに
(ii)(a)C12−C24ヒドロキシカルボン酸のリチウム石鹸および(b)C−C12ジカルボン酸のアルカリ土類金属塩を含む増粘剤系;
を含む潤滑グリース組成物。
【請求項2】
12−C24ヒドロキシカルボン酸がC16−C20ヒドロキシカルボン酸である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
12−C24ヒドロキシカルボン酸が12−ヒドロキシステアリン酸である、請求項1または2に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
−C12ジカルボン酸がアゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、ピメリン酸およびドデカン2酸ならびにこの混合物から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項5】
−C12ジカルボン酸がアゼライン酸、セバシン酸およびこの混合物から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記アルカリ土類金属がカルシウム、マグネシウムおよびこの混合物から選択される、請求項1から5のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項7】
基油が鉱油基油、ポリアルキレングリコールル基油、およびこの混合物である、請求項1から6のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項8】
(i)C−C12ジカルボン酸のアルカリ土類金属塩を形成するために、基油、アルカリ土類金属水酸化物または酸化物およびC−C12ジカルボン酸を含むプレスラリを作製するステップ;ならびに
(ii)ステップ(i)で調製したプレスラリを、基油、水酸化リチウムおよびC12−C24ヒドロキシカルボン酸を含む混合物に添加するステップ;
を含む、請求項1から7のいずれかに記載の潤滑組成物を調製する方法。
【請求項9】
デュアル・マス・フライホイール用途における請求項1から8のいずれかに記載の潤滑グリース組成物の使用。
【請求項10】
油放出性を低下させるための請求項1から8のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。
【請求項11】
耐水性を改善するための請求項1から8のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。
【請求項12】
剪断安定性を改善するための請求項1から8のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。

【公表番号】特表2012−509951(P2012−509951A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536894(P2011−536894)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065691
【国際公開番号】WO2010/058021
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】