説明

潤滑剤及びグリース

【課題】優れた摩擦係数低減効果を有する潤滑剤を提供すること。優れた摩擦係数低減効果を有するグリースを提供すること。
【解決手段】下記一般式(1):


(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、又は下記一般式(2):


(式中、Rは水素原子又はメチル基、Bは−(CH−、−(CH−O−、−CO−O−(CH−又は−CO−O−(CH−O−を示し、mは5〜20を示す。)で表される不飽和結合を有する基を示す。Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物であること特徴とする潤滑剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリジニウム塩型イオン性液晶化合物を主成分とする潤滑剤及びそれを用いたグリースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶化合物を添加剤として用いる潤滑油組成物は、研究されている。例えば、特許文献1には、相対運動可能な機械コンポ−ネントのボデイの間に導入したサ−モトロピック液晶体等を相転移させることにより、二つの固体ボデイ間に働く摩擦力を簡単に変える方法、特許文献2には、基油と液晶とからなる潤滑油組成物に、摩擦調整剤を添加した潤滑油組成物、特許文献3には、液晶化合物と弗素油を含有することを特徴とする潤滑油組成物、特許文献4には基油と有機モリブデン化合物と液晶とを含有する潤滑油組成物等が開示されている。そして、特許文献1〜4には、潤滑油組成物に、液晶化合物を添加することにより、摩擦係数を低減することが出来る旨が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特表平2−503326号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平6−128582号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平7−82582号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2004−182855号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1〜4の潤滑油組成物等の潤滑剤では、摩擦係数の低減には限界があり、更なる摩擦係数の低減が求められている。
【0005】
従って、本発明の課題は、優れた摩擦係数低減効果を有する潤滑剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、新規な潤滑剤について鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物が、優れた摩擦係数低減効果を有することを見出し本発明を完成するに到った。
【0007】
即ち、本発明(1)は、下記一般式(1):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、又は下記一般式(2):
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Bは−(CH−、−(CH−O−、−CO−O−(CH−又は−CO−O−(CH−O−を示し、mは5〜20を示す。)
で表される不飽和結合を有する基を示す。Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物であること特徴とする潤滑剤を提供するものである。
【0012】
また、本発明(2)は、下記一般式(1):
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、又は下記一般式(2):
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Bは−(CH−、−(CH−O−、−CO−O−(CH−、−CO−O−(CH−O−、mは5〜20を示す。)
で表される不飽和結合を有する基を示す。Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物が、希釈成分により希釈されており、
前記一般式(1)で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物の含有量が0.001質量%を超える量であること
を特徴とする潤滑剤を提供するものである。
【0017】
また、本発明(3)は、前記本発明(1)又は(2)いずれかの潤滑剤と、増稠剤と、からなることを特徴とするグリースを提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れた摩擦係数低減効果を有する潤滑剤を提供することができる。また、本発明によれば、優れた摩擦係数低減効果を有するグリースを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の潤滑剤は、下記一般式(1):
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、又は下記一般式(2):
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Bは−(CH−、−(CH−O−、−CO−O−(CH−又は−CO−O−(CH−O−を示し、mは5〜20を示す。)
で表される不飽和結合を有する基を示す。Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物である。
【0024】
本発明の潤滑剤は、前記一般式(1)で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物である。
【0025】
前記一般式(1)の式中のRは、炭素数8〜22の直鎖状又は分岐状のアルキル基、あるいは、前記一般式(2)で表される不飽和結合を有する基である。Rに係るアルキル基としては、具体的には、オクチル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。Rに係る前記一般式(2)で表される不飽和結合を有する基の式中のRは、水素原子又はメチル基を示し、Bは、−(CH−、−(CH−O−、−CO−O−(CH−又は−CO−O−(CH−O−を示し、mは5〜20を示す。そして、前記一般式(1)の式中のRとしては、炭素数8〜12のアルキル基が好ましい。
【0026】
前記一般式(1)の式中のRは、炭素数1〜5のアルキル基を示す。Rに係るアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。そして、前記一般式(1)の式中のRとしては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0027】
前記一般式(1)の式中のAは酸素原子(−O−)、NH(−NH−)、CH(−CH−)又は硫黄原子(−S−)であり、Aは酸素原子(−O−)、NH(−NH−)、CH(−CH−)又は硫黄原子(−S−)であり、AとAは、同一であっても、異なる組合せであってもよく、AとAが共に酸素原子であることが好ましい。
【0028】
前記一般式(1)の式中のXは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素等のハロゲン原子である。
【0029】
そして、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物のうち、前記一般式(1)の式中のRが炭素数8〜12のアルキル基、Rが炭素数1〜3のアルキル基、AとAが共に酸素原子であるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物が特に好ましい。
【0030】
本発明の潤滑剤において、前記一般式(1)で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物は、1種又は2種以上の併用であってもよい。
本発明の潤滑剤において、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物を2種以上併用し、それらの配合割合を適宜選択することにより、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物を1種単独で使用する場合に比べ、液晶状態を示す温度範囲を広くすることができる。このため、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物を2種以上併用したものは、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物の1種単独に比べ、使用できる温度範囲を広くとることができるという利点を有する。
【0031】
前記一般式(1)で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物は、例えば、下記反応式(11)に従って、化合物(3)から化合物(5a)を合成し、更に化合物(5b)又は化合物(5c)を合成し、引き続き、下記反応式(11)に従って反応を行うことにより製造される(例えば、特開平10−53585号公報、特開平10−338691号公報、特開2000−86656号公報、特開2000−86723号公報参照)。
反応式(11):
【0032】
【化7】

【0033】
(式中、R、R及びXは前記と同義。A及びAは、酸素原子又は硫黄原子を示す。Rはアルキル基、X’、X”はハロゲン原子を示す。)
【0034】
本発明の潤滑剤は、前記一般式(1)で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物が、希釈成分によりされていてもよい。このとき、前記一般式(1)で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物は、1種又は2種以上であってもよい。
本発明の潤滑剤は、希釈成分で希釈されている場合も、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物を2種以上併用し、それらの配合割合を適宜選択することにより、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物を1種単独で使用する場合に比べ、液晶状態を示す温度範囲を広くすることができる。このため、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物を2種以上併用したものは、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物の1種単独に比べ、使用できる温度範囲を広くとることができるという利点を有する。
【0035】
本発明の潤滑剤に係る希釈成分としては、鉱油、合成油又はこれらの混合物等の潤滑油基油、イオン性液体、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物を溶解可能な溶媒などが挙げられる。これらのうち、希釈成分が、イオン性液体であることが、潤滑剤の使用の際の蒸発を抑制できる点、また、凝固点が低いため低温域でも良好に使用できる点で好ましい。
【0036】
希釈成分に係る潤滑油基油としては、特に制限されず、潤滑油組成物の基油として通常使用されているものであればよく、鉱油系、合成系を問わない。
【0037】
希釈成分としては、鉱油系潤滑油基油として、例えば、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系、又はこれらの混合系炭化水素油等の油が挙げられる。
【0038】
希釈成分としては、合成系潤滑油基油として、例えば、ポリα−オレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、トリメリット酸エステル等のポリエステル、リン酸エステル、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、シリコーン油、フッ素油、アルキルフェニルエーテル油、アルキルビフェニル油、ポリフェニルエーテル油等が挙げられる。
【0039】
希釈成分としての合成系潤滑油基油に係るポリα−オレフィンは、炭素数2〜14、好ましくは4〜12の範囲の、分岐を有する或いは分岐を有しないオレフィン炭化水素から選択された、任意の1種の単独重合体又は2種以上の共重合体である。希釈成分としての合成系潤滑油基油に係るポリα−オレフィンは、平均分子量100〜約2000、好ましくは200〜約1000のオリゴマーであり、特に水素化によって不飽和結合が除去されたものが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、エチレン・α−オレフィンオリゴマー、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等が好ましい。ポリブテンとしては、例えば、イソブテンを主体とし、ブテン−1、及びブテン−2の単量体混合物を共重合させて得られるものが好ましい。また、α−オレフィンオリゴマーとしては、炭化水素の熱分解又は低級オレフィンの3量化〜6量化により得られる炭素数6〜12のα−オレフィン混合物を共重合したものが挙げられる。また、デセンのごとき単独モノマーから得られるオリゴマーも好適である。
【0040】
このポリα−オレフィンオリゴマーは、塩化アルミニウム、フッ化硼素等のフリーデルクラフト型触媒、チーグラー触媒及び酸化クロム等の酸化物触媒等を使用して製造される。また、ポリα−オレフィンオリゴマーの水素化は、反応生成物から触媒を除去した後、加温、加圧下において、例えばニッケル−モリブデン/アルミナのような水素化触媒と接触させることにより行われる。
【0041】
希釈成分としての合成系潤滑油基油に係るジエステルは、炭素数4〜14の脂肪族二塩基酸あるいは芳香族二塩基酸と炭素数4〜14の脂肪族アルコールとを反応させて得られる。このようなジエステルとしては、例えばジオクチルアジペート、ジ−(1−エチルプロピル)アジペート、ジ−(3−メチルブチル)アジペート、ジ−(1,3−ジメチルブチル)アジペート、ジ−(2−エチルブチル)アジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ−(イソオクチル)アジペート、ジ−(イソノニル)アジペート、ジ−(3,5,5トリメチルヘキシル)アジペート、ジ−(イソデシル)アジペート、ジ−(ウンデシル)アジペート、ジ−(トリデシル)アジペート、ジ−(イソテトラデシル)アジペート、ジ−(2、2、4−トリメチルペンチル)アジペート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、イソノニル)〕アジペート、ジ−(1−エチルプロピル)アゼレート、ジ−(2−エチルブチル)アゼレート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジ−(イソオクチル)アゼレート、ジ−(イソノニル)アゼレート、ジ−(3,5,5トリメチルヘキシル)アゼレート、ジ−(イソデシル)アゼレート、ジ−(トリデシル)アゼレート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、イソノニル)〕アゼレート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、デシル)〕アゼレート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、イソデシル)〕アゼレート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル)〕アゼレート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、デシル)〕アゼレート、ジ−(n−ブチル)セバケート、ジ−(イソブチル)セバケート、ジ−(1−エチルプロピル)セバケート、ジ−(3−メチルブチル)セバケート、ジ−(1,3−ジメチルブチル)セバケート、ジ−(2−エチルブチル)セバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−〔2−(2’−エチルブトキシ)エチル〕セバケート、ジ−(2,2,4−トリメチルペンチル)セバケート、ジ−(イソノニル)セバケート、ジ−(3,5,5トリメチルヘキシル)セバケート、ジ−(イソデシル)セバケート、ジ−(イソウンデシル)セバケート、ジ−(トリデシル)セバケート、ジ−(イソテトラデシル)セバケート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、イソノニル)〕セバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)グルタレート、ジ−(イソウンデシル)グルタレート及びジ−(イソテトラデシル)グルタレート、ジ−n−ブチルフタレート、ジ−n−ヘキシルフタレート、ジ−n−ヘプチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート等が挙げられる。
【0042】
希釈成分としての合成系潤滑油基油に係るポリオールエステルは、炭素数5〜9のネオペンチルポリオール、例えば、ネオペンチルグリコール(以下、ネオペンチルグリコールを、NPGとも記載する。)、トリメチロールプロパン(以下、トリメチロールプロパンを、TMPとも記載する。)又はペンタエリスリトール(以下、ペンタエリスリトールを、PEとも記載する。)等と炭素数4〜18の有機酸とを反応させて得られる。このようなポリオールエステルの具体例としては、NPG・ジ−(ヘプタノエート)、NPG・ジ−(2ーエチルブチレート)、NPG・ジ−(シクロヘキサノエート)、NPG・ジ−(ヘプタノエート)、NPG・ジ−(イソヘプタノエート)、NPG・ジ−(オクタノエート)、NPG・ジ−(2−エチルヘキサノエート)、NPG・ジ−(イソオクタノエート)、NPG・ジ−(イソノナノエート)、NPG・ジ−(イソデカノエート)、NPG・ジ−{混合(ヘキサノエート,ヘプタノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘキサノエート,オクタノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘキサノエート,ノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,オクタノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,ノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,イソオクタノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,イソノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(イソオクタノエート,イソノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(ブタノエート,トリデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(ブタノエート,テトラデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(ブタノエート,ヘキサデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(ブタノエート,オクタデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘキサノエート,イソオクタノエート,イソノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘキサノエート,イソオクタノエート,イソデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,イソオクタノエート,イソノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,イソオクタノエート,イソデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(オクタノエート,イソノナノエート,イソデカノエート)}、TMP・トリ−(ペンタノエート)、TMP・トリ−(ヘキサノエート)、TMP・トリ−(ヘプタノエート)、TMP・トリ−(オクタノエート)、TMP・トリ−(ノナノエート)、TMP・トリ−(イソペンタノエート)、TMP・トリ−(2−エチルブチレート)、TMP・トリ−(イソペンタノエート)、TMP・トリ−(イソオクタノエート)、TMP・トリ−(2−エチルヘキサノエート)、TMP・トリ−(イソノナノエート)、TMP・トリ−(イソデカノエート)、TMP・トリ−〔混合(ブチレート、オクタデカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ヘキサノエート、ヘキサデカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ヘプタノエート、トリデカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(オクタノエート、デカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(オクタノエート、ノナノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ブチレート、ヘプタノエート、オクタデカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ペンタノエート、ヘプタノエート、トリデカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ヘキサノエート、ヘプタノエート、オクタノエート)〕、TMP・トリノナノエート、TMP・トリ−〔混合(ヘプタノエート、ノナノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ヘプタノエート、オクタノエート、ノナノエート)〕、又、PE・テトラ(ペンタノエート)、PE・テトラ(ヘキサノエート)、PE・テトラ(イソペンタノエート)、PE・テトラ(2−エチルブチレート)、PE・テトラ(ヘプタノエート)、PE・テトラ(イソヘプタノエート)、PE・テトラ(イソオクタノエート)、PE・テトラ(2−エチルヘキサノエート)、PE・テトラ(ノナノエート)、PE・テトラ(イソノナノエート)及びPEと炭素数4〜9の直鎖状又は分岐状カルボン酸の混合物とのエステル等が挙げられる。
【0043】
また、希釈成分としての合成系潤滑油基油に係るポリオールエステルとしては、NPG、TMP及びPE以外のネオペンチルポリオール、例えば、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパンジオール、トリメチロールエタン及びトリメチロールヘキサンと有機酸単独、又は混合したポリオールエステル等も挙げられる。
【0044】
希釈成分としての合成系潤滑油基油に係るリン酸エステルとしては、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、プロピルフェニルジフェニルフォスフェート、ジプロピルフェニルフェニルフォスフェート、トリプロピルフォスフェート、ジブチルフェニルフェニルフォスフェート、ブチルフェニルジフェニルフォスフェート、トリブチルフェニルフォスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)フォスフェート、トリアルキルフェニルフォスフェート、アルキルフェニルフェニルフォスフェート等が挙げられる。
【0045】
希釈成分としての合成系潤滑油基油に係るアルキルベンゼン又はアルキルナフタレンは、分岐又は直鎖のα−オレフィンとベンゼン、トルエン又はナフタレン等の芳香族炭化水素をフッ化水素、硫酸、塩化アルミニウム等の触媒を用いてアルキル化して得られ、主としてジアルキル化芳香族炭化水素を含む油である。アルキル基としては、主として炭素数12のもので直鎖又は分岐のいずれのものもこれに属する。
【0046】
希釈成分としての合成系潤滑油基油に係るポリオキシアルキレングリコールは、アルキレン基の炭素数が2〜5、好ましくは2〜3の直鎖状又は分岐状アルキレンオキシドの開環重合体である。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、或いはそれらの混合物、好ましくはプロピレンオキシドであり、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールを挙げることができ、分子量範囲100〜2000のもの、好ましくは200〜1000のものである。分子の両端がアルキル基のもの、片端がアルキル基で片端がヒドロキシル基のもの、両端ともヒドロキシル基のものが含まれる。このアルキル基は、通常炭素数が1 〜18の範囲のものである。
【0047】
本発明の潤滑剤に係る希釈成分は、2種以上の鉱油系潤滑油基油の混合物又は2種以上の合成油系潤滑油基油の混合物であって差し支えなく、鉱油系潤滑油基油と合成油系潤滑油基油の混合物であっても差し支えない。そして、上記混合物における2種以上の潤滑油基油の混合比は、任意に選択される。本発明の潤滑剤に係る潤滑油基油には、粘度に関して特別な限定条件はないが、通常は40℃における動粘度が1〜1000mm2/sの範囲にあることが好ましく、5〜800mm2/sの範囲にあることがより好ましい。
【0048】
希釈成分に係るイオン液体は、カチオンとアニオンとの塩であり、常温(25℃)、常圧(0.1MPa)で液体であり、且つ沸点を持たない物質であれば、特に制限されず、公知のものが挙げられる。希釈成分に係るイオン液体としては、例えば、イミダゾリウム化合物、4級アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物、ホスホニウム化合物が挙げられる。また、希釈成分に係るイオン液体としては、下記一般式(12):
【0049】
【化8】

【0050】
(式中のRが5〜7のアルキル基、Rが1〜5のアルキル基、Aが酸素原子又は硫黄原子、Aが酸素原子又は硫黄原子、Yがハロゲン原子を示す。)
で表されるピリジニウム塩型イオン液体が挙げられる。
【0051】
希釈成分に係る前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物を溶解可能な溶媒としては、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物を溶解可能なものであれば特に制限されず、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール等のアルコールが挙げられる。
【0052】
本発明の潤滑剤中、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン液晶化合物の含有量は、0.001質量%を超える量、好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
【0053】
本発明の潤滑剤は、更に、必要に応じて、例えば、摩擦防止剤、極圧剤、油性剤等の摩擦調整剤、あるいは、その他添加剤を含有することができる。
【0054】
極圧剤及び磨耗防止剤としては、例えば、硫黄系化合物、リン系化合物、モリブデン系化合物等が挙げられる。
【0055】
極圧剤及び磨耗防止剤に係る硫黄系化合物としては、例えば、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類が挙げられる。より具体的には、極圧剤及び磨耗防止剤に係る硫黄系化合物としては、一般式(RO)P=S (式中、Rはアルキル基、アリル基、フェニル基を示し、同一又は異種でもよい)で示される化合物(例えば、トリアルキルフォスフォロチオネート、トリフェニルフォスフォロチオネート、アルキルジアリルフォスフォロチオネート等);一般式 R−S−R(式中、rは1〜8の整数、R及びRは、炭素数4〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基を示す。)で表される硫化オレフィン(例えば、ジイソブチルジサルファイド、ジオクチルポリサルファイド、ジ−t−ノニルポリサルファイド、ジ−t−ブチルポリサルファイド、ジベンジルポリサルファイド、ジフェニルサルファイド、ジフェニルジサルファイド);ポリイソブチレン又はテルペン類等のオレフィン類を硫黄等の硫化剤で硫化した硫化オレフィン類;スルファライズドスパームオイル及びスルファライズドジペンテン等の硫化油脂類;キサンチックジサルファイド等のチオカーボネート類;一級アルキルジチオリン酸亜鉛、二級アルキルジチオリン酸亜鉛、アルキル−アリルジチオリン酸亜鉛、アリルジチオリン酸亜鉛等のジチオリン酸亜鉛系添加剤等が挙げられる。
【0056】
極圧剤及び磨耗防止剤に係るリン系化合物としては、例えば、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、リン酸トリエステル類、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類、及びこれらのエステル類とアミン類、アルカノールアミン類との塩等が挙げられる。極圧剤及び磨耗防止剤に係るリン系化合物の具体例としては、例えば、ベンジルジフェニルフォスフェート、アリルジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、エチルジフェニルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、ジクレジルフェニルフォスフェート、エチルフェニルジフェニルフォスフェート、ジエチルフェニルフェニルフォスフェート、プロピルフェニルジフェニルフォスフェート、ジプロピルフェニルフェニルフォスフェート、トリエチルフェニルフォスフェート、トリプロピルフェニルフォスフェート、ブチルフェニルジフェニルフォスフェート、ジブチルフェニルフェニルフォスフェート、トリブチルフェニルフォスフェート等のリン酸エステル、トリイソプロピル亜リン酸エステル、ジイソプロピル亜リン酸エステル等の亜リン酸エステル、ヘキサメチルフォスフォリックトリアミド、n−ブチル−n−ジオクチルホスフィネート、ジ−n−ブチルヘキシルホスホネート、アミンジブチルホスホネート、ジブチルホスホロアミデート等を挙げることができる。
【0057】
極圧剤及び磨耗防止剤に係るモリブデン系化合物としては、例えば、無機モリブデン化合物、有機モリブデン化合物が挙げられる。極圧剤及び磨耗防止剤に係る無機モリブデン化合物の具体例としては、例えばモリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸銅、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸バリウム等のモリブデン酸金属塩、二硫化モリブデン塩等が挙げられる。極圧剤及び磨耗防止剤に係る有機モリブデン化合物の具体例としては、例えばジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジアルキルジチオリン酸モリブデン(MoDTP)モリブデン酸アミン塩等が挙げられるが、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンが好ましい。ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンとしては、例えばジブチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジペンチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジヘキシルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジヘプチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジオクチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジノニルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジデシルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジウンデシルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジドデシルジチオカルバミン酸モリブデン、ジトリデシルジチオカルバミン酸モリブデン、ジブチルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジペンチルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジヘキシルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジヘプチルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジオクチルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジノニルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジデシルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジウンデシルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジドデシルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、及びジトリデシルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン等が挙げられる。
【0058】
また、上記の硫黄系、ジチオリン酸亜鉛系、リン系化合物、モリブデン系化合物等は、1種単独で使用されてもよく、2種以上組み合わせて添加されてもよい。
【0059】
油性剤としては、脂肪族モノカルボン酸、例えばカプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられ、また、脂肪族ジカルボン酸としてはアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、その他炭素数15〜30の脂肪族ジカルボン酸、及びこれら脂肪族(ジ)カルボン酸のエステル、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪族アミン塩、脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0060】
これらの油性剤は、1種単独又は2種以上の混合のいずれで使用されてもよい。油性剤は、機械的摩擦部表面に吸着し、単に、摩擦又は摩耗性を改善しうるのみでなく、本発明の潤滑剤と協同して潤滑性をより向上させることができる。
【0061】
本発明の潤滑剤は、更に、慣用の潤滑油組成物用の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、錆止め剤、腐食防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、ゴム膨潤剤、消泡剤、着色剤等の添加剤を含有することができ、これらの添加剤は1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0062】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物など、潤滑油に一般的に使用されているものであれば、いずれのものであってもよく、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)などのビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛などのジアルキルジチオリン酸亜鉛類、フェノチアジン類等が挙げられる。
【0063】
金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ土類金属スルフォネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリチレート、アルカリ土類金属ホスフォネート等が挙げられる。
【0064】
無灰分散剤としては、例えば、アルケニルコハク酸イミド、ベンジルアミン、アルキルポリアミン、又はそのこれらのホウ素化合物や硫黄化合物による変性品、アルケニルコハク酸エステル等が挙げられる。
【0065】
錆止め剤としては、例えば、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル、石油スルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート等が挙げられる。
【0066】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系の化合物等が挙げられる。
【0067】
粘度指数向上剤としては、非分散型粘度指数向上剤や分散型粘度指数向上剤が使用でき、具体的には、ポリメタクリレート類や、エチレン−プロピレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリスチレン、スチレン−ジエン共重合体等のオレフィンコポリマー類等が挙げられる。
【0068】
流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマーなどが使用できる。
【0069】
消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーンやフルオロシリコーンなどのシリコーン類が挙げられる。
【0070】
これらの慣用の潤滑油組成物用の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、錆止め剤、腐食防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、ゴム膨潤剤、消泡剤、着色剤等の添加剤の添加量は任意であるが、通常、潤滑剤全量に対して、消泡剤の含有量は0.0005〜1質量%、粘度指数向上剤の含有量は1〜30質量%、腐食防止剤の含有量は0.005〜1質量%、その他の添加剤の含有量は、それぞれ0.1〜15質量%程度である。
【0071】
本発明のグリースは、本発明の潤滑剤を含有する。そして、本発明のグリースは、本発明の潤滑剤と、増稠剤とを混合することにより製造される。つまり、本発明のグリースは、本発明の潤滑剤と、増稠剤とからなる。
【0072】
本発明のグリースに係る増稠剤としては、特に制限されず、通常のグリース組成物に使用される増稠剤であればよい。
【0073】
本発明のグリースでは、本発明の潤滑剤に、増稠剤を配合したものが、基グリースとして使用される。本発明のグリースに係る増稠剤としては、例えば、石鹸系又はコンプレックス石鹸系増稠剤、テレフタラメート系増稠剤、ウレア系増稠剤、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロ化エチレン―プロピレン共重合体等の有機非石鹸系増稠剤、無機非石鹸系増稠剤等が挙げられる。これらの増稠剤は1種単独でもよく、あるいは、2種以上の組み合わせでもよい。増稠剤の量は特に限定されるものではないが、通常好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜20質量%である。本発明のグリースに係る基グリースの稠度は、特に限定されないが、通常100〜500程度である。
【0074】
本発明の潤滑剤が、従来の液晶化合物に比べ、摩擦低減効果を発揮するのは、例えば、後述する合成例2で得られたピリジニウム塩型イオン性液晶化合物を、潤滑剤として用いた場合を例にとると、図1に示すように、潤滑剤中のピリジニウム塩型イオン性液晶化合物が、摩擦係数の増加の一つの因子となる金属表面の凹凸部へ積極的に作用し、ピリジニウム塩型イオン性液晶化合物分子が、金属表面に対して規則的に、垂直配向した皮膜が、効率的に形成され、境界潤滑剤領域での摩擦係数を、効率的に低減するものと考えられる。
【0075】
このため、本発明の潤滑剤を金属摩擦面に塗布する等、本発明の潤滑剤で金属摩擦面の前処理を行って、液晶配列を金属摩擦面の表面に形成させ、これに、公知の潤滑剤又は本発明の潤滑剤を添加して使用することもできる。
【0076】
本発明の潤滑油のうち、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物である潤滑剤、及び前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物がイオン性液体で希釈された潤滑剤は、イオン性の液晶化合物、あるいは、イオン性の液晶化合物とイオン性液体なので、潤滑剤の使用の際の蒸発が抑制され、また、凝固点が低いので、低温域においても使用されることができる。
【0077】
また、本発明の潤滑剤のうち、前記一般式(1)で表わされるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物が希釈成分で希釈された潤滑剤、及び本発明のグリースは、例えば、無段変速機油、手動又は自動変速機油、エンジン油、ギヤ油やパワーステアリング油等の車両用潤滑油、内燃機関用潤滑油の他、工作機械用潤滑油等、コンピューターのハードディスク、テープ、カード等の情報記録媒体、携帯電話等の精密機器用モータあるいは摺動部の潤滑油又はグリースとして有用である。
【0078】
以下、本発明を実施例により説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0079】
(合成例)
<ジエチル−2−アルキルマロネイトの合成(第一工程)>
下記の反応式により、ジエチル−2−アルキルマロネイト(4−1)を合成した。
【0080】
【化9】

【0081】
(式中、Rは、n−C15(合成例1)又はn−C1021(合成例2)を示す。)
500ml三角フラスコに150mlのエタノールを入れ、金属ナトリウム(0.3mol)を溶解後、ジエチルマロン酸(3−1)(0.3mol)を加え、冷却後、アルキルブロマイド(0.3mol)を加えた。エチレングリコール浴中30℃で18時間還流した。溶媒を減圧除去後、ジエチルエーテル(300ml)を加え、分液漏斗中で、冷希塩酸300ml(12N塩酸:水=30ml:300ml)、続いて冷蒸留水100mlで洗浄した。エーテル層を得た後、水層を、ジエチルエーテル100mlを加えて再抽出した。分液によって得たジエチルエーテル溶液は無水硫酸ナトリウムで約1日脱水した。ろ過し、ジエチルエーテルを減圧除去後、残渣を減圧蒸留してジエチル−2−アルキルマロネイト(4−1)を得た。
【0082】
<2−アルキル1,3−プロパンジオールの合成(第二工程)>
下記の反応式により、2−アルキル1,3−プロパンジオール(5a−1)を合成した。
【0083】
【化10】

【0084】
(式中、Rは、n−C15(合成例1)又はn−C1021(合成例2)を示す。)
【0085】
500mlの三つ口丸底フラスコに100mlのジエチルエーテルを入れ、リチウムアルミニウムハイドライドを(2倍量mol数)入れ、そこに、氷冷しながら第一工程で得られたジエチル−2−アルキルマロネイト(4−1)(0.23mol)をジエチルエーテル100mlに溶解させた溶液を、滴下漏斗でゆっくり滴下した。その後、エチレングリコール浴中で40℃で、4時間還流した。反応後、氷冷下で酢酸エチル(0.3mol)をジエチルエーテル100mlに溶解させた溶液を、滴下漏斗でゆっくりと滴下した。次に飽和アンモニウム水溶液50mlを、滴下漏斗で一滴ずつゆっくりと加えた。その後、フラスコをジエチルエーテルで満たし、室温(25℃)で3時間撹拌した。ろ過し、残渣を300mlのジエチルエーテルに溶かし24時間撹拌した。ジエチルエーテルに無水硫酸ナトリウムを加え、約1日脱水した後、ジエチルエーテルを減圧除去し、残渣として2−アルキル1,3−プロパンジオール(5a−1)を得た。
【0086】
<4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジンの合成(第三工程)>
下記の反応により、4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン(8−1)を合成した。
【0087】
【化11】

【0088】
(式中、Rは、n−C15(合成例1)又はn−C1021(合成例2)を示す。)
【0089】
反応装置として、ディーン−スターク−トラップ(Dean−Stark−Trap)を用いた。100ml三角フラスコに、ベンゼン60ml及び第二工程で得られた2−アルキル1,3−プロパンジオール(5a−1)(0.03mol)を入れ、更に、ピリジン−4−アルデヒド(等mol数)を溶解した。次いで、p−トルエンスルホン酸を10g加えpH1以下にする。pHを確認後、三角フラスコに、ディーン−スターク−トラップを取り付け、シリコーン浴中で135℃〜140℃で5時間還流する。冷却後、ジエチルエーテル(300ml)に溶解し、炭酸ナトリウム水溶液(30g/300ml)で洗浄し、水溶液が塩基性であることを確かめた後、蒸留水(100ml)で洗浄し、ジエチルエーテル層を得た。その後、ジエチルエーテル層を、無水硫酸ナトリウムで約1日脱水した。ろ過し、ジエチルエーテルを減圧除去し残渣を得た。シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーで、初めにヘキサン300mlを流し、次いで、ベンゼン300mlを流して分離した。目的物はベンゼン溶媒中に溶出した。これを溶媒除去した後、特級ヘキサンで3〜4回再結晶して精製し、4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン(8−1)を得た。
【0090】
<N−アルキル−4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジニウムブロマイド(第四工程)の合成>
下記の反応により、N−アルキル−4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジニウムブロマイド(1−1)を合成した。
【0091】
【化12】

【0092】
(式中、Rは、n−C15(合成例1)又はn−C1021(合成例2)を示し、Rは、C(合成例1、合成例2)を示す。)
【0093】
200ml三つ口丸底フラスコ中で、特級アセトニトリル30mlに、第三工程で得られた4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン(8−1)(0.0017mol)と、エチルブロマイド(10倍mol)とを溶解させ、窒素気流下でシリコーン浴中で100℃で24時間還流した。アセトニトリルを減圧除去し、ヘキサン30ml、ジエチルエーテル30mlの混合溶液で再沈澱させ、約一日攪拌洗浄し、不溶物を得た後、真空乾燥し、N−アルキル−4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジニウムブロマイド(6a)を得た。得られたN−アルキル−4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジニウムブロマイド(1−1)のH−NMR及びIR分析結果を表1に、相転移温度の測定結果を表2に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

1)Cry:結晶、SmA:スメクチックA液晶相、Iso:等方性液体
【0096】
(実施例1〜2及び比較例1〜2)
表3に示す組成の潤滑剤を調製し、また、イソプロピルアルコールを潤滑剤とするものを比較例2とした。
【0097】
【表3】

【0098】
<摩擦係数の評価>
ボールオンプレートの往復摺動試験器に、真ちゅうの無電解ニッケルめっき板を置き、実施例1〜2及び比較例1〜2の潤滑油2滴を滴下した状態で、下記条件による往復摺動し、摩擦係数を測定した。その結果を図2に示す。
試験サンプル:無電解ニッケルめっき板
摩擦速度:10mm/sec
摩擦時間:30分間
往復ストローク:5mm
摩擦相手材:JIS SUJ2球 直径4.8mm
荷重:100g
【0099】
本発明の潤滑剤(実施例1〜2)は、比較例1及び比較例2のものより、摩擦係数が低くなっていることが分かる。つまり、本発明の潤滑剤は、摩擦係数低減効果を発揮することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】金属表面界面での本発明の潤滑剤の存在状態を示す図である。
【図2】実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の摩擦係数の経時変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】


(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、又は下記一般式(2):
【化2】



(式中、Rは水素原子又はメチル基、Bは−(CH−、−(CH−O−、−CO−O−(CH−又は−CO−O−(CH−O−を示し、mは5〜20を示す。)
で表される不飽和結合を有する基を示す。Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物であること特徴とする潤滑剤。
【請求項2】
下記一般式(1):
【化3】


(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、又は下記一般式(2):
【化4】



(式中、Rは水素原子又はメチル基、Bは−(CH−、−(CH−O−、−CO−O−(CH−又は−CO−O−(CH−O−を示し、mは5〜20を示す。)
で表される不飽和結合を有する基を示す。Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Aは酸素原子、NH、CH又は硫黄原子を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物が、希釈成分により希釈されており、
前記一般式(1)で表されるピリジニウム塩型イオン性液晶化合物の含有量が0.001質量%を超える量であること
を特徴とする潤滑剤。
【請求項3】
前記希釈成分がイオン性液体であることを特徴とする請求項2記載の潤滑剤。
【請求項4】
前記一般式(1)の式中のA及びAが酸素原子であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の潤滑剤。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の潤滑剤と、増稠剤と、からなることを特徴とするグリース。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−221314(P2009−221314A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66037(P2008−66037)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(304023994)国立大学法人山梨大学 (223)
【出願人】(501358002)株式会社バルビス (6)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】