説明

潤滑剤用ポンプ装置

【課題】 カートリッジタンクの取付凸部の雄ネジがアダプタ部の取付凹部の雌ネジに対して、ねじ込みがなかったり、ねじ込みが緩くなる取り付け不良があっても、これを解消できるようにする。
【解決手段】 潤滑剤が充填されたカートリッジタンク1が着脱可能に取り付けられるアダプタ部21、アダプタ部21に着脱可能に設けられカートリッジタンク1を覆うカバー30を備え、アダプタ部21はカートリッジタンク1の取付凸部4の雄ネジ5が螺合する雌ネジ22を有するとともに取付凸部4の開口3の開口端面3aが接合する底面26aを有した取付凹部26を備え、カートリッジタンク1の取付凸部4に突出部10を設け、カバー30に、取付凸部4の開口端面3aが取付凹部26の底面26aに接合するまで、突出部10に衝止してカバー10の所定位置への移動を阻止する衝止部40を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や射出成形機等の産業機械等に潤滑等の目的で潤滑剤を供給する潤滑剤用ポンプ装置に係り、特に、潤滑剤が充填されたカートリッジタンクを、カートリッジタンク内の潤滑剤を吸引して吐出する潤滑ポンプに着脱可能に取り付けた潤滑剤用ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の潤滑剤用ポンプ装置としては、例えば、特許文献1(特開2009−63078号公報)に記載されたものが知られている。
図10に示すように、この潤滑剤用ポンプ装置Saは、流動状の潤滑剤が充填されるカートリッジタンク100と、カートリッジタンク100が着脱可能に取り付けられるアダプタ部111及びカートリッジタンク100内の潤滑剤を吸引して吐出するポンプ部112を有した潤滑ポンプ110と、アダプタ部111に着脱可能に設けられ装着時にカートリッジタンク100を覆うカバー130とを備えて構成されている。
【0003】
カートリッジタンク100は、潤滑剤が充填されるジャバラ筒状の容器本体101と、容器本体101に設けられ開口103が形成された取付凸部102とを備えて構成されている。この取付凸部102は、その外径が容器本体101の外径よりも小さく設定されており、その外周面に雄ネジ104が形成されている。
潤滑ポンプ110のアダプタ部111は、カートリッジタンク100の取付凸部102の雄ネジ104が螺合する雌ネジ118を有するとともに、取付凸部102の開口103の開口端面105が接合する底面113を有した取付凹部117を備えている。また、取付凹部117の底面113には、入口部114を有しカートリッジタンク100内の潤滑剤をポンプ部112に導く導通路115が備えられている。
【0004】
このカートリッジタンク100を潤滑ポンプ110に取り付けるときは、取付凸部102の雄ネジ104を取付凹部117の雌ネジ118にねじ込んで、取付凸部102の開口端面105をアダプタ部111の底面113に接合させてカートリッジタンク100をアダプタ部111に取り付けることにより行なう。この状態では、取付凸部102の開口103内に導通路115の入口部114が位置するようになる。その後、カバー130をアダプタ部111に装着する。
そして、この潤滑剤用ポンプ装置Saを作動させると、ポンプ部112によってカートリッジタンク100内の潤滑剤が吸引され、この吸引された潤滑剤が入口部114から導通路115を通ってポンプ部112内に入り、ポンプ部112から所望の位置に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−63078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来の潤滑剤用ポンプ装置Saにおいては、カートリッジタンク100の取り付け時に、取付凸部102の雄ネジ104をアダプタ部111の雌ネジ118にねじ込む際、ねじ込むことを忘れたり、また、ねじ込んでも作業者がねじ込み具合を判断しにくく、そのため、ねじ込みが緩かったりする事態が生じることがあった。このように、ねじ込みがなかったり、ねじ込みが緩いと、取付凸部102の開口端面105がアダプタ部111の底面113に接合しない状態となって、装置Saの作動時にポンプ部112が潤滑剤のみならずエアも吸引してしまい、そのため、ポンプ部112側にエアが混入してしまう不具合が生じるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、カートリッジタンクの取付凸部の雄ネジがアダプタ部の取付凹部の雌ネジに対して、ねじ込みがなかったり、ねじ込みが緩くなる取り付け不良があっても、作業者がこの事態を体感で認知することができるようにし、取り付け不良を解消して、ポンプ部側にエアが混入してしまう不具合を防止することができるようにした潤滑剤用ポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するため、本発明の潤滑剤用ポンプ装置は、流動状の潤滑剤が充填される容器本体と、該容器本体に連通する開口が形成され外周に雄ネジが形成された取付凸部とを有したカートリッジタンクを備え、
該カートリッジタンクが着脱可能に取り付けられるアダプタ部と、該アダプタ部に取り付けられたカートリッジタンク内の潤滑剤を吸引して吐出するポンプ部とを有した潤滑ポンプを備え、
該潤滑ポンプのアダプタ部を、上記カートリッジタンクの取付凸部の雄ネジが螺合する雌ネジを有するとともに該取付凸部の開口の開口端面が接合する底面を有した取付凹部と、該取付凹部の底面に設けられ該カートリッジタンク内の潤滑剤を上記ポンプ部に導く導通路とを備えて構成し、
上記アダプタ部に着脱可能に設けられ装着時に上記カートリッジタンクを覆うカバーを備え、
上記アダプタ部に、上記カバーの所定位置で該カバーを該アダプタ部に保持するための係合部を設ける一方、上記カバーに、上記アダプタ部の係合部に係合する被係合部を設けた潤滑ポンプ装置において、
上記カートリッジタンクの取付凸部に、突出部を設け、
上記カバーに、上記カートリッジタンクの取付凸部の雄ネジが上記アダプタ部の取付凹部の雌ネジに螺合し始めてから該取付凸部の開口端面が上記取付凹部の底面に接合するまで、上記突出部に衝止して該カバーの所定位置への移動を阻止する衝止部を設けた構成としている。
【0009】
これにより、カートリッジタンクを潤滑ポンプに取り付けるときは、カートリッジタンクの取付凸部の雄ネジをアダプタ部の取付凹部の雌ネジにねじ込み、取付凸部の開口端面を取付凹部の底面に接合させる。この状態で、カバーをカートリッジタンクに被せ、カバーの所定位置で、カバーの被係合部をアダプタ部の係合部に係合させて、カバーをアダプタ部に装着する。
【0010】
この際、もし、カートリッジタンクの取付凸部の雄ネジがアダプタ部の取付凹部の雌ネジに対して、ねじ込みがなかったり、ねじ込みが緩い取り付け不良があると、取付凸部の開口端面が取付凹部の底面に接合していない状態になるが、この場合には、カバーを装着する際に、カバーの衝止部がカートリッジタンクの取付凸部に設けた突出部に衝止し、カバーは所定位置への移動が阻止されるので、カバーをアダプタ部に保持することができなくなる。そのため、作業者は、カートリッジタンクがアダプタ部に対して取り付け不良になっていることを体感で認知することができるようになる。
【0011】
このように、カートリッジタンクが取り付け不良になっていることを認知したならば、再び、カバーを外して、カートリッジタンクの取付凸部の雄ネジをアダプタ部の取付凹部の雌ネジにしっかりとねじ込み、取付凸部の開口端面を取付凹部の底面に確実に接合させることができる。そして、この状態で、カバーを装着する。この場合、カバーの衝止部が突出部に当接しても、カバーは所定位置へ移動するので、カバーの被係合部をアダプタ部の係合部に係合させて、カバーをアダプタ部に装着することができる。
【0012】
即ち、従来においては、カートリッジタンクのねじ込みがなかったり、ねじ込みが緩いと、取付凸部の開口端面がアダプタ部の底面に接合しない状態となって、装置の作動時にポンプ部が潤滑剤のみならずエアも吸引してしまい、そのため、ポンプ部側にエアが混入してしまう不具合が生じることがあるが、カバーの装着の際に、このねじ込みがなかったり、ねじ込みが緩い取り付け不良に気がついて、この取り付け不良を解消できるので、ポンプ部側にエアが混入してしまう不具合を防止することができる。
また、カバーの被係合部がアダプタ部の係合部に係合した状態で、衝止部が突出部に当接していると、衝止部が押さえになってカートリッジタンクのガタツキを防止することができ、取付凸部の開口端面を取付凹部の底面により一層確実に接合させることができる。
【0013】
そして、必要に応じ、上記突出部を、上記取付凸部の基端部に該取付凸部の外周面から突出して設けられ上記容器本体の外径よりも大きな外径を有するフランジで構成している。
これにより、フランジの外径は容器本体の外径より大きいので、カバーをアダプタ部に装着すると、カバーが確実にカートリッジタンクを覆うとともに、カバーに設けられた衝止部が突出部に確実に衝止することができ、容易に取り付け不良を認知することができるようになる。
【0014】
また、必要に応じ、上記フランジを、上記取付凸部の基端部に着脱可能にした構成としている。
これにより、カートリッジタンクにフランジを取り付けて使用し、容器本体内の潤滑剤が無くなったならば、このカートリッジタンクからフランジを取り外して、このフランジを新たなカートリッジタンクに取り付けて使用することができる。即ち、フランジを再利用することができるので、製造コストを低減させることができる。また、フランジを取付凸部の基端部に一体形成した場合と比較して、カートリッジタンクを比較的容易に製造することができる。
【0015】
更に、必要に応じ、上記取付凸部の基端部外周に溝を形成し、上記フランジを、上記溝に嵌合する貫通孔と、外周縁から上記貫通孔に亘って形成され上記溝の直径と略同じ幅の切欠き部とを備えた板材で構成している。
これにより、フランジを取付凸部の基端部に取り付けるときは、切欠き部から取付凸部の溝に差し込んで貫通孔を溝に嵌合させることにより行なう。差し込むだけで取り付けることができるので、着脱を容易に行なうことができる。
【0016】
更にまた、必要に応じ、上記衝止部を、上記カバーの内側面に形成され、上記フランジに当接する段差部で構成している。
これにより、カバーをアダプタ部に装着すると、カバーの段差部がフランジに確実に衝止することができ、容易に取り付け不良を認知することができるようになる。また、カバーに段差部を形成するだけでよいので、比較的簡易な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の潤滑剤用ポンプ装置によれば、カートリッジタンクの取付凸部の雄ネジがアダプタ部の取付凹部の雌ネジに対して、ねじ込みがなかったり、ねじ込みが緩い取り付け不良があると、取付凸部の開口端面が取付凹部の底面に接合していない状態になるが、この場合には、カバーを装着する際に、カバーの衝止部がカートリッジタンクの取付凸部に設けた突出部に衝止し、カバーは所定位置への移動が阻止されるので、作業者は、カートリッジタンクがアダプタ部に対して取り付け不良になっていることを体感で認知することができるようになる。そのため、カートリッジタンクの取付凸部の雄ネジをアダプタ部の取付凹部の雌ネジにしっかりとねじ込まなければ、カバーを被せることができないことから、カートリッジタンクの取り付け不良を解消して、ポンプ部側にエアが混入してしまう不具合を防止することができるようになる。また、カバーの被係合部がアダプタ部の係合部に係合した状態で、衝止部が突出部に当接していると、衝止部が押さえになってカートリッジタンクのガタツキを防止することができ、取付凸部の開口端面を取付凹部の底面により一層確実に接合させることができるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る潤滑剤用ポンプ装置を示す正面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る潤滑剤用ポンプ装置を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るカートリッジタンクを示し、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る突出部を示し、(a)は平面図、(b)は横断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るアダプタ部を示し、(a)は正面図、(b)は正面断面図、(c)は平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るカバーを示し、(a)は正面断面図、(b)は正面要部断面図、(c)は底面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る覆栓を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る覆栓をアダプタ部に取り付けるときの状態を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る潤滑剤用ポンプ装置の作用を示す正面断面図である。
【図10】従来の潤滑剤用ポンプ装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る潤滑剤用ポンプ装置を説明する。
図1乃至図9には、本発明の実施の形態に係る潤滑剤用ポンプ装置Sを示している。本発明の潤滑剤用ポンプ装置Sは、流動状の潤滑剤が充填されるカートリッジタンク1と、カートリッジタンク1が着脱可能に取り付けられる樹脂製のアダプタ部21及びカートリッジタンク1内の潤滑剤を吸引して吐出するポンプ部29を有した潤滑ポンプ20と、潤滑ポンプ20のアダプタ部21に着脱可能に設けられ装着時にカートリッジタンク1を覆うカバー30とを備えて構成されている。
【0020】
カートリッジタンク1は、図1乃至図3に示すように、潤滑剤が充填され一端が閉塞される円筒状の容器本体2と、容器本体2の他端側に設けられるとともに容器本体2と同軸の開口3が形成される円筒状の取付凸部4とを備えて構成されている。取付凸部4の外周には雄ネジ5が形成されている。
容器本体2は、透明若しくは半透明の樹脂製であり、ジャバラ筒状に形成されている。この容器本体2には、流動状の潤滑剤が充填されている。潤滑剤としては、主にグリスが用いられ、また、必要に応じ、粘度の低いやわらかい、例えばオイル等であっても良い。
取付凸部4は、容器本体2の軸線を軸心として容器本体2から突出し、その外径が容器本体2の外径よりも小さく設定されており、その基端部4aの外周に溝6が形成されている。
【0021】
このカートリッジタンク1の取付凸部4には突出部10が設けられている。この突出部10は、取付凸部4の基端部4aに取付凸部4の外周面から突出して設けられ容器本体2の外径よりも大きな外径を有するフランジ11で構成されている。このフランジ11は、図1,図2及び図4に示すように、樹脂で成形され、溝6に嵌合する貫通孔12と、外周縁から貫通孔12に亘って形成され溝6の直径と略同じ幅の切欠き部13とを備えた略C字状の板材で構成されており、取付凸部4の基端部4aに対して着脱可能に設けられている。また、突出部10を構成するフランジ11の外周は、把持しやすいように、凸条部15と凹条部16とを交互に形成してある。
【0022】
潤滑ポンプ20のアダプタ部21は、図1,図2及び図5に示すように、カートリッジタンク1の取付凸部4の雄ネジ5が螺合する雌ネジ22を有するとともに、取付凸部4の開口3の開口端面3aが接合する底面26aを有した取付凹部26と、取付凹部26の底面26aに設けられ入口部23aを有しカートリッジタンク1内の潤滑剤をポンプ部29に導く管状の導通路23とを備えて構成されている。この入口部23aは、カートリッジタンク1の取り付け時に取付凸部4の開口3から容器本体2内部に挿通される。
更に、取付凹部26の外側には平面状の一般面25が形成され、この一般面には、カバー30の装着時にカバー30の後述の遊嵌部31の内側面に対峙し、取付凹部26と同軸に設けられるリング状のリング壁27が立設されている。
【0023】
カバー30は、図1,図2及び図6に示すように、樹脂製で透明に形成され、一端30aが閉塞されて他端30bに開放口32を有した円筒カップ状に形成されている。また、他端30bから後述の段差部41に至る部位は、アダプタ部21のリング壁27より大径且つ突出部10のフランジ11より大径でリング壁27に遊嵌する遊嵌部31として構成されている。このカバー30の開放口32の外径は、潤滑ポンプ20のアダプタ部21の外径と略同じ大きさに設定されている。
【0024】
また、図1,図2,図5及び図6に示すように、アダプタ部21及びカバー30には、カバー30を装着するための係合部28及び被係合部33が夫々設けられている。この係合部28及び被係合部33は、カバー30の開放口縁部32aをアダプタ部21の一般面25に当接させた状態で、カバー30をその軸線を中心に回転させることによりアダプタ部21の係合部28がカバー30の被係合部33に係合するように構成されている。
アダプタ部21の係合部28は、アダプタ部21のリング壁27の外周面に等角度間隔で3つ突設され、カバー30の被係合部33は、カバー30の遊嵌部31の内側面に等角度間隔で3つ突設されている。係合部28及び被係合部33の何れか一方(実施の形態では係合部28)はリング壁27及び遊嵌部31の円周方向に沿う係合凹部28dを備えて形成され、係合部28及び被係合部33の何れか他方(実施の形態では被係合部33)はリング壁27及び遊嵌部31の円周方向に沿い係合凹部28dにカバー30の円周方向の回動によって係脱する係合凸部33aを備えて形成されている。
【0025】
詳しくは、係合部28は、図5(a)に示すように、アダプタ部21のリング壁27の外周面に付設され周方向に直交する方向に延びて被係合部33の先端が衝止する衝止突部28aと、衝止突部28aの上端から周方向に延びて所定長さに形成される矩形状の爪部28bと、爪部28bの先端側に切欠き形成される鉤穴部28cとを備えて構成され、爪部28bと一般面25との間に係合凹部28dを形成している。
被係合部33は、図6に示すように、カバー30の他端30b側の遊嵌部31の内側面に付設され係合部28の爪部28bと一般面25との間の係合凹部28dに挿通されて係合される矩形状の係合凸部33aと、係合凸部33aに突設され係合凹部28dへの係合時に鉤穴部28cに係合される鉤部33bとを備えて構成されている。
【0026】
また、図1,図2及び図6に示すように、カバー30には、カートリッジタンク1の取付凸部4の雄ネジ5がアダプタ部21の取付凹部26の雌ネジ22に螺合し始めてから取付凸部4の開口端面3aが取付凹部26の底面26aに接合するまで、突出部10に衝止してカバー30の所定位置への移動を阻止する衝止部40が設けられている。この衝止部40は、カバー30の内側面に形成された段差部41で構成され、段差部41は、他端30bより所定深さ位置の内周に沿って形成されており、他端30bから段差部41に至る部位は、アダプタ部21のリング壁27より大径且つ突出部10のフランジ11より大径でリング壁27に遊嵌する遊嵌部31として構成されている。
【0027】
また、図1,図2,図7及び図8に示すように、実施の形態におけるカートリッジタンク1には、その取付凸部4の開口3を覆う樹脂製の覆栓50が設けられている。
この覆栓50には、アダプタ部21の入口部23aが取付凸部4の開口3に挿入された時、入口部23aによって切断される薄肉の切断溝51が形成されている。この切断溝51は、円周溝52と縦溝53とで構成されている。円周溝52は、アダプタ部21の入口部23aの口径よりも大きな径の円形状に形成されており、縦溝53は、円周溝52の中心及び円周溝52間に亘って十字状に4本形成されている。この円周溝52と縦溝53とで囲繞される部分には、4つの片部54が形成されている。
【0028】
また、円周溝52の外側には外周部55が形成されている。本実施の形態においては、この外周部55の表面が取付凸部4の開口端面3aとして構成されている。この外周部55(開口端面3a)には、アダプタ部21の凹部26の底面26aに当接する円形の突条56が設けられている。
更にまた、この覆栓50には、切断溝51が切断されたとき、4つの片部54を夫々支持するヒンジ57が設けられている。このヒンジ57は、片部54と外周部55との間に設けられており、このヒンジ57を介して片部54と外周部55とを接続している。
【0029】
従って、この実施の形態に係る潤滑剤用ポンプ装置Sにおいて、カートリッジタンク1を潤滑ポンプ20に取り付けるときは、予め、カートリッジタンク1に突出部10としてのフランジ11を取り付けておく。この場合、フランジ11を取付凸部4の基端部4aに取り付けるときは、切欠き部13から取付凸部4の溝6に差し込んで貫通孔12を溝6に嵌合させることにより行なう。差し込むだけで取り付けることができるので、着脱を容易に行なうことができる。
【0030】
そして、フランジ11が取り付けられたカートリッジタンク1を、潤滑ポンプ20に取り付ける。この際、容器本体2を逆さにして取付凸部4を下側にする。このとき、取付凸部4の開口3は覆栓50によって被覆されており、この覆栓50が潤滑剤を受け止めるので、粘度の低いやわらかい潤滑剤を使用した場合でも、潤滑剤が取付凸部4から漏れることを防止できる。そして、カートリッジタンク1の取付凸部4の雄ネジ5をアダプタ部21の取付凹部26の雌ネジ22にねじ込み、取付凸部4の開口端面3aを取付凹部26の底面26aに接合させる。
【0031】
詳しくは、図8に示すように、入口部23aが覆栓50の表面と接触し、更に挿入すると、入口部23aによって覆栓50の中心から縦溝53が切断され、4つの片部54が入口部23aによって覆栓50の中心を頂点として持ち上げられるようになる。これにより、円周溝52が切断され、片部54が容器本体2内に入り込むようになる。切断溝51が切断されると、入口部23aが取付凸部4の開口3に挿通される。
【0032】
入口部23aが取付凸部4の開口3に挿通された状態で、更にカートリッジタンク1を取付凹部26にねじ込んでいくと、覆栓50の外周部55の表面(開口端面3a)に設けられた円形の突条56が、底面26aに当接するようになる。このとき、この突条56によって、開口端面3aと底面26aとは略線接触で当接するようになる。この場合、開口端面3aと底面26aとを面接触で当接させた場合と比較して、接触場所に掛かる圧力が大きくなり、そのため、シール性が良くなる。
【0033】
この状態で、カバー30をカートリッジタンク1に被せ、カバー30の所定位置で、カバー30を回転させ、被係合部33をアダプタ部21の係合部28に係合させて、カバー30をアダプタ部21に装着する。
この際、図9に示すように、もし、カートリッジタンク1の取付凸部4の雄ネジ5がアダプタ部21の取付凹部26の雌ネジ22に対して、ねじ込みがなかったり、ねじ込みが緩い取り付け不良があると、取付凸部4の開口端面3aが取付凹部26の底面26aに接合していない状態になるが、この場合には、カバー30を装着する際に、カバー30の衝止部40がカートリッジタンク1の取付凸部4に設けた突出部10に衝止し、カバー30は所定位置への移動が阻止されるので、カバー30をアダプタ部21に保持することができなくなる。そのため、作業者は、カートリッジタンク1がアダプタ部21に対して取り付け不良になっていることを体感で認知することができるようになる。
【0034】
このように、カートリッジタンク1が取り付け不良になっていることを認知したならば、再び、カバー30を外して、カートリッジタンク1の取付凸部4の雄ネジ5をアダプタ部21の取付凹部26の雌ネジ22にしっかりとねじ込み、取付凸部4の開口端面3aを取付凹部26の底面26aに確実に接合させることができる。そして、この状態で、カバー30を装着する。この場合、図1に示すように、カバー30の衝止部40が突出部10に当接しても、カバー30は所定位置へ移動するので、カバー30を回転させてカバー30の被係合部33をアダプタ部21の係合部28に係合させて、カバー30をアダプタ部21に装着することができる。
【0035】
そして、カートリッジタンク1をアダプタ部21に取り付けた状態で潤滑ポンプ20を作動させる。潤滑ポンプ20を作動させると、ポンプ部29によってカートリッジタンク1内の潤滑剤が吸引され、この吸引された潤滑剤が入口部23aから導通路23を通ってポンプ部29内に入り、ポンプ部29から所望の位置に吐出される。この場合、従来においては、カートリッジタンク1のねじ込みがなかったり、ねじ込みが緩いと、取付凸部4の開口端面3aがアダプタ部21の底面26aに接合しない状態となって、装置の作動時にポンプ部29が潤滑剤のみならずエアも吸引してしまい、そのため、ポンプ部29側にエアが混入してしまう不具合が生じることがあるが、カバー30の装着の際に、このねじ込みがなかったり、ねじ込みが緩い取り付け不良に気がついて、この取り付け不良を解消できるので、ポンプ部29側にエアが混入してしまう不具合を防止することができる。
また、カバー30の被係合部33がアダプタ部21の係合部28に係合した状態で、衝止部40が突出部10に当接していると、衝止部40が押さえになってカートリッジタンク1のガタツキを防止することができ、取付凸部4の開口端面3aを取付凹部26の底面26aにより一層確実に接合させることができる。
【0036】
尚、上記実施の形態において、突出部10及び衝止部40の形状や形成位置などは上記したものに限定されるものではなく、適宜変更して差し支えない。また、カートリッジタンク1の容器本体2をジャバラ筒状に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、円筒状等どのような形状に形成しても良く、適宜変更して差支えない。
また、上記実施の形態において、カートリッジタンク1を、取付凸部4の外径よりも容器本体2の外径を大きく形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、取付凸部4の外径と容器本体2の外径とが同じに形成された、所謂寸胴タイプであっても良く、適宜変更して差支えない。
【0037】
尚また、上記実施の形態において、取付凸部4に覆栓50を設けて取付凸部4の開口端面3aを覆栓50の外周部55の表面で構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、覆栓50を設けなくても良く、適宜変更して差支えない。この場合、取付凸部4の開口端面3aは、取付凸部4の開口3の開口縁部で構成される。また、アダプタ部21の底面26aとカートリッジタンク1の覆栓50(開口端面3a)との間にパッキンを介装しても良い。より一層シール性が向上させられる。
【符号の説明】
【0038】
S 潤滑剤用ポンプ装置
1 カートリッジタンク
2 容器本体
3 開口
3a 開口端面
4 取付凸部
5 雄ネジ
6 溝
10 突出部
11 フランジ
12 貫通孔
13 切欠き部
20 潤滑ポンプ
21 アダプタ部
22 雌ネジ
23 導通路
23a 入口部
25 一般面
26 取付凹部
26a 底面
27 リング壁
28 係合部
29 ポンプ部
30 カバー
31 遊嵌部
32 開放口
33 被係合部
40 衝止部
41 段差部
50 覆栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動状の潤滑剤が充填される容器本体と、該容器本体に連通する開口が形成され外周に雄ネジが形成された取付凸部とを有したカートリッジタンクを備え、
該カートリッジタンクが着脱可能に取り付けられるアダプタ部と、該アダプタ部に取り付けられたカートリッジタンク内の潤滑剤を吸引して吐出するポンプ部とを有した潤滑ポンプを備え、
該潤滑ポンプのアダプタ部を、上記カートリッジタンクの取付凸部の雄ネジが螺合する雌ネジを有するとともに該取付凸部の開口の開口端面が接合する底面を有した取付凹部と、該取付凹部の底面に設けられ該カートリッジタンク内の潤滑剤を上記ポンプ部に導く導通路とを備えて構成し、
上記アダプタ部に着脱可能に設けられ装着時に上記カートリッジタンクを覆うカバーを備え、
上記アダプタ部に、上記カバーの所定位置で該カバーを該アダプタ部に保持するための係合部を設ける一方、上記カバーに、上記アダプタ部の係合部に係合する被係合部を設けた潤滑ポンプ装置において、
上記カートリッジタンクの取付凸部に、突出部を設け、
上記カバーに、上記カートリッジタンクの取付凸部の雄ネジが上記アダプタ部の取付凹部の雌ネジに螺合し始めてから該取付凸部の開口端面が上記取付凹部の底面に接合するまで、上記突出部に衝止して該カバーの所定位置への移動を阻止する衝止部を設けたことを特徴とする潤滑剤用ポンプ装置。
【請求項2】
上記突出部を、上記取付凸部の基端部に該取付凸部の外周面から突出して設けられ上記容器本体の外径よりも大きな外形を有するフランジで構成したことを特徴とする請求項1記載の潤滑剤用ポンプ装置。
【請求項3】
上記フランジを、上記取付凸部の基端部に着脱可能にしたことを特徴とする請求項2記載の潤滑剤用ポンプ装置。
【請求項4】
上記取付凸部の基端部外周に溝を形成し、上記フランジを、上記溝に嵌合する貫通孔と、外周縁から上記貫通孔に亘って形成され上記溝の直径と略同じ幅の切欠き部とを備えた板材で構成したことを特徴とする請求項3記載の潤滑剤用ポンプ装置。
【請求項5】
上記衝止部を、上記カバーの内側面に形成され、上記フランジに当接する段差部で構成したことを特徴とする請求項2乃至4何れかに記載の潤滑剤用ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−87912(P2013−87912A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230821(P2011−230821)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(591231926)リューベ株式会社 (25)
【Fターム(参考)】