説明

潤滑油の給油装置

【課題】潤滑油の圧送にエア加圧方式を採用し、給油量や給油箇所、給油落差に制約がなく、常に一定の給油が可能となり、追加変更が自由でメンテナンスも省くことができる潤滑油の給油装置を提供する。
【解決手段】潤滑油Aのオイル圧送ユニット11を、内部に潤滑油Aを収納するオイルタンク14に加圧エアの供給管16と潤滑油Aの取り出し管17を接続して形成し、このオイルタンク14内に前記供給管16から加圧エアを供給し、潤滑油Aをエア圧力で加圧して押出すことで取り出し管17から給油配管12に送り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンベア等の各種産業機械において、移動や摺動する部分である給油箇所に所定量の潤滑油を供給する給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工作機械を用いた加工時に発生する切り屑や削り屑、抜き屑等の搬送物を集屑場所に搬送する手段として用いられているスクレーパコンベアは、搬送樋の一方側壁にガイドレールを上下に設け、このガイドレールに沿ってエンドレスチエンを循環移動するように装着し、前記エンドレスチエンに多数のスクレーパを、搬送樋に対して往路は搬送樋内の底部断面形状に適合する位相となり、また、復路は側壁上部に平行する折り畳み状となるように取付け、往路のスクレーパで搬送樋内の搬送物を押しながら移送するようになっている。
【0003】
このようなスクレーパコンベアは、ガイドレールに沿って走行するエンドレスチエンや、姿勢を変化させるスクレーパのチエンへの取付け部分は、耐久性を維持する観点から潤滑油を定期的に給油する必要がある。
【0004】
上記のような、給油箇所に潤滑油を給油するための給油装置は、潤滑油圧送手段とスクレーパコンベアにおける給油箇所の間に給油配管を配置し、潤滑油圧送手段から送り出された潤滑油を給油配管で誘導して先端のノズルで給油箇所に給油するようになっている。
【0005】
従来、このような給油装置に採用されている潤滑油圧送手段は、潤滑油を収納するオイルタンクと、このオイルタンクに接続したポンプ及びこのポンプを駆動する電動モータの組み合わせによって形成し、前記電動モータで駆動されたポンプによってオイルタンク内の潤滑油を給油配管に送り出す構造になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の潤滑油圧送手段は、ポンプ方式になっているため、給油位置及び給油箇所に応じて予めポンプの性能(総揚程、吐出量)が決まり、設置後の給油箇所の増加や変更等に対応することができないという不便がある。
【0007】
また、ポンプはその可動部(軸受)に故障の原因になり易い要素を含んでいるため、定期的なメンテナンスが必要になり、余分な経費がかかることになる。
【0008】
更に、ポンプによる潤滑油の圧送は、給油位置の落差にバラツキがある場合、容量の一定化が設定しにくい要素があり、しかも、長距離(例えば、50m位)への給油に対応するためには、必要以上の大型のポンプが入要となり、給油装置が高価になるという問題がある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、潤滑油の圧送にエア加圧方式を採用し、給油量や給油箇所、給油落差に制約がなく、常に一定の給油が可能となり、追加変更が自由になると共にメンテナンスも省くことができる潤滑油の給油装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するため、この発明は、潤滑油圧送手段から送り出された潤滑油を、給油配管で誘導して先端のノズルで潤滑位置に給油するようにした潤滑油の給油装置において、前記潤滑油圧送手段を、内部に潤滑油を収納するオイルタンクに加圧エアの供給管と潤滑油の取り出し管を接続して形成し、このオイルタンク内に前記供給管から加圧エアを供給し、内部に収納した潤滑油をエア圧力で加圧して押出すことで取り出し管から給油配管に送り出すようにした構成を採用したものである。
【0011】
上記給油配管の先端に給油ユニットが設けられ、この給油ユニットが、給油配管で送られてきた潤滑油を貯めるオイルポットと、前記給油配管を開閉することでオイルポット内の油量を適量に制御する開閉弁と、前記オイルポット内の潤滑油を吐出するノズルの吐出量を調整する給油量調整弁とで形成されている構造とすることができる。
【0012】
ここで、潤滑油圧送手段のオイルタンクは密閉構造となり、上壁に密閉可能な潤滑油供給部が設けられ、このオイルタンクの上部に接続した加圧エアの供給管は、エアレギュレータと開閉弁を介してエア供給源につながり、また、取り出し管は、オイルタンクの上部を内外に貫通し、オイルタンク内の下部で潤滑油を吸い上げ、逆止弁と開閉弁を介して給油配管に潤滑油を送り出すようになっている。
【0013】
このオイルタンクは、内部に収納した潤滑油の油面上に加圧エア溜め空間を確保するように、潤滑油の量を油面センサーで検出し、潤滑油は加圧エア溜め空間に供給された加圧エアによって圧力が加えられ、加圧された潤滑油が取り出し管から流出することになる。
【0014】
また、上記給油ユニットは、オイルポット内の潤滑油の量をレベルセンサーで検出し、給油配管の開閉弁を制御することでオイルポット内の油量を適量に保ち、このオイルポットから給油箇所に臨ませたノズルに、給油量調整弁で調整した量の潤滑油が流れ出るようになっている。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、潤滑油を収納するオイルタンクに加圧エアを供給し、内部に収納した潤滑油をエア圧力で加圧して押出すことで取り出し管から給油配管に送り出すようにしたので、送りだされる潤滑油には常時エア圧力が付加されているので、潤滑油の送り出しにおいて、給油量と給油位置及び給油箇所、給油落差(高さ)に制約がなく、絶対流量、時間当たりの供給量が変化しないので、設置後における給油箇所の増加や変更等の追加に対して自由に対応することができる。
【0016】
また、潤滑油の圧送源はオイルタンクに加圧エアを供給する構造になっているので、可動部品が無いために故障の原因がなく、メンテナンスを省くことで経費の削減が可能になる。
【0017】
更に、加圧エアの圧力で潤滑油を送り出す方式は、複数の給油箇所に落差や距離の長短があっても給油そのものに影響がなく、常に一定条件の給油が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、この発明の給油装置をスクレーパコンベアの給油に使用した例を示し、スクレーパコンベアは、工作機械を用いた加工時に発生する切り屑や削り屑、抜き屑等の搬送物を集屑場所に搬送するためのものであり、このスクレーパコンベアを用いた搬送ラインは、第1スクレーパコンベア1と、この第1スクレーパコンベア1で送られてきた搬送物を受け取って送る第2スクレーパコンベア2と、第2スクレーパコンベア2に対して枝状に配置され、搬送物を第2スクレーパコンベア2に向けて送る複数の枝スクレーパコンベア3とで形成されている。
【0020】
図2は、上記した各スクレーパコンベア1〜3の要部の断面構造を示し、搬送樋4の一方側壁5の長さ方向にガイドレール6を上下に設け、このガイドレール6に沿ってエンドレスチエン7を循環移動するように装着し、前記エンドレスチエン7に多数のスクレーパ8を片持ちアーム9を介して取付けた構造になっている。
【0021】
このようなスクレーパコンベア1〜3は、エンドレスチエン7を駆動源で循環移動させてスクレーパ8を移動させると、図示省略したが、搬送樋4の両端部に設けたスクレーパガイドがスクレーパ8の姿勢を変化させ、搬送樋4に対して往路のスクレーパ8は搬送樋4内の底部断面形状に適合する位相となり、また、復路のスクレーパ8は一方側壁5の上部に平行して垂れ下がる折り畳み状となり、往路のスクレーパ8で搬送樋4内の搬送物を押しながら搬送するようになっており、このようなスクレーパコンベア1〜3においては、ガイドレール6に沿って走行するエンドレスチエン7や、各スクレーパ8の片持ちアーム9のエンドレスチエン7に対する取付け部分が潤滑油の給油箇所となる。
【0022】
この発明の給油装置は、図1のように、各スクレーパコンベア1〜3における給油位置にそれぞれ給油ユニット10を配置すると共に、各給油ユニット10に潤滑油を供給するための圧送手段となるオイル圧送ユニット11を適所に配置し、このオイル圧送ユニット11と前記各給油ユニット10を給油配管12によって接続し、各給油ユニット10をメイン制御盤13で電気的に制御することにより、上記スクレーパコンベア1〜3の給油箇所に潤滑油を供給するようになっている。
【0023】
図3は、潤滑油圧送手段である上記オイル圧送ユニット11を示し、潤滑油Aを収納するオイルタンク14は密閉構造となり、その上壁にオイルフィルター付きの密閉可能な潤滑油供給部15が設けられ、このオイルタンク14に、加圧エアの供給管16と潤滑油Aの取り出し管17及びエア抜き管18が接続され、外部には油面計19と油面センサー20が設けられている。
【0024】
このオイルタンク14の上部に接続した加圧エアの供給管16は、エアレギュレータ21と開閉弁22を介して加圧エア供給源につながり、開閉弁22を開とすることでオイルタンク14内に加圧エアを供給するようになっており、また、取り出し管17はオイルタンク14の上部を内外に貫通し、下端がオイルタンク14の底部に臨み、その上端が逆止弁23と開閉弁24を介して給油配管12に接続され、更に、上部に接続したエア抜き管18は開閉弁25を備え、オイルタンク14内に潤滑油Aを供給するときオイルタンク14内の加圧エアを抜くようになっている。
【0025】
上記オイルタンク14内には、収納した潤滑油Aの油面上に加圧エア溜めBを確保するように潤滑油Aが充填され、この潤滑油Aの量を油面センサー20で検出するようになっており、オイルタンク14内の潤滑油Aは加圧エア溜めBに供給された加圧エアによって圧力が加えられ、加圧された潤滑油Aは取り出し管17から押し出されて流出することになる。
【0026】
上記各給油ユニット10は、図4に示すように、給油配管12の端末に接続され、この給油配管12で送られてきた潤滑油Aを貯めるオイルポット26と、前記給油配管12の途中に設けられ、給油配管12を開閉することでオイルポット26内の油量をレベルセンサー27とで適量に制御する電磁開閉弁28と、電磁開閉弁28の上流側に設けたオイルフィルター29と、前記オイルポット26内の潤滑油Aを吐出するノズル30の吐出量を調整する給油量調整弁31と、レベルセンサー27の油面検出信号で電磁開閉弁28を制御する制御盤32とで形成され、各給油ユニット10は、メイン制御盤13に予め入力した情報に従って給油箇所への給油が自動的に制御される。
【0027】
各給油ユニット10は、図4の場合、オイルポット26に二つのノズル30を設け、図1と図2に示したスクレーパコンベア1〜3に対して、一方のノズル30がエンドレスチエン7への給油用で、他方のノズル30がスクレーパ8の片持ちアーム9への給油用となり、図2のように、片持ちアーム9へはスポンジ等の貯油性がある塗油ローラ33を介して給油するようにしている。
【0028】
この発明の潤滑油の給油装置は、上記のような構成であり、スクレーパコンベア1〜3の給油箇所に潤滑油Aを給油するには、オイル圧送ユニット11のオイルタンク14内に所定量の潤滑油Aを充填した状態で、加圧エアの供給管16に設けた開閉弁22を開にして、加圧エア供給源からオイルタンク14内の加圧エア溜めBに、例えば、0.5Mpa程度の加圧エアを注入すると、オイルタンク14内の潤滑油Aは加圧エアによって加圧され、その圧力で取り出し管17から押し出された潤滑油Aは、給油配管12を流れ、この給油配管12の各給油ユニット10の電磁開閉弁28の位置にまで充填される。
【0029】
このとき、上記オイルタンク14内の潤滑油Aは、加圧エア溜めBの加圧エアによって加圧されるので、潤滑油Aの給油量及び給油箇所、給油落差(高さ)に制約がなく、絶対流量、時間当たりの供給量が変化しないので、各給油ユニット10に対して等しい条件で送られることになる。
【0030】
潤滑箇所への給油時は、メイン制御盤13の給油開始ボタンを押すことで、各給油ユニット10の電磁開閉弁28が開となり、加圧エアによって加圧されている給油配管12の潤滑油Aはオイルポット26内に供給される。
【0031】
オイルポット26に潤滑油Aが充填されるとこれをレベルセンサー27が検知し、オイルポット26内の潤滑油Aが適量になると電磁開閉弁28を自動的に閉じ、給油配管12からオイルポット26内への潤滑油Aの供給を停止する。
【0032】
各スクレーパコンベア1〜3の給油位置に設置されている給油ユニット10は、給油量調整弁31を開にして微調整すれば、オイルポット26に接続したノズル30から潤滑油が吐出し、各スクレーパコンベア1〜3の給油箇所に潤滑油Aを供給することができる。
【0033】
上記オイルポット26内の潤滑油Aの油量が低下してこれをレベルセンサー27が検知すると、電磁開閉弁28が開となり、給油配管12から潤滑油Aが供給される。
【0034】
また、オイル圧送ユニット11においては、オイルタンク14の潤滑油Aが減少してくると、油面センサー20が作動してメイン制御盤13のランプを点灯させ、潤滑油補給の合図を発することになる。
【0035】
オイルタンク14への潤滑油Aの補給は、加圧エアの供給管16の開閉弁22を閉としてオイルタンク14内への加圧エアの供給を止め、次に、エア抜き管18の開閉弁25を開いてオイルタンク14内の加圧エアを放出し、この状態で、潤滑油供給部15からオイルタンク14内に潤滑油Aを補充すればよく、補充後は潤滑油供給部15を密閉してエア抜き管18の開閉弁25を閉じ、加圧エアの供給管16の開閉弁22を開とすれば、再び潤滑油Aの送り出しが行われることになる。
【0036】
なお、実施の形態では、この発明の潤滑油の給油装置をスクレーパコンベア1〜3の給油箇所に潤滑油Aを給油するために使用した例を示したが、給油装置の用途はこのようなスクレーパコンベア1〜3に限るものではなく、潤滑を必要とする部分のある各種産業機械に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】スクレーパコンベアを用いた搬送ラインと、これに潤滑油の給油装置を組み合わせた状態を示す平面図
【図2】スクレーパコンベアの要部構造を示す縦断面図
【図3】オイル圧送ユニットの構造を示す縦断面図
【図4】給油ユニットの構造を示す正面図
【符号の説明】
【0038】
1 第1スクレーパコンベア
2 第2スクレーパコンベア
3 枝スクレーパコンベア
4 搬送樋
5 一方側壁
6 ガイドレール
7 エンドレスチエン
8 スクレーパ
9 片持ちアーム
10 給油ユニット
11 オイル圧送ユニット
12 給油配管
13 メイン制御盤
14 オイルタンク
15 潤滑油供給部
16 加圧エアの供給管
17 潤滑油の取り出し管
18 エア抜き管
19 油面計
20 油面センサー
21 エアレギュレータ
22 開閉弁
23 逆止弁
24 開閉弁
25 開閉弁
26 オイルポット
27 レベルセンサー
28 電磁開閉弁
29 オイルフィルター
30 ノズル
31 給油量調整弁
32 制御盤
33 塗油ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油圧送手段から送り出された潤滑油を、給油配管で誘導して先端のノズルで潤滑箇所に給油するようにした潤滑油の給油装置において、
前記潤滑油圧送手段を、内部に潤滑油を収納するオイルタンクに加圧エアの供給管と潤滑油の取り出し管を接続して形成し、このオイルタンク内に前記供給管から加圧エアを供給し、内部に収納した潤滑油をエア圧力で加圧して押出すことで取り出し管から給油配管に送り出すようにしたことを特徴とする潤滑油の給油装置。
【請求項2】
上記給油配管の先端に給油ユニットが設けられ、この給油ユニットが、給油配管で送られてきた潤滑油を貯めるオイルポットと、前記給油配管を開閉することでオイルポット内の油量を適量に制御する開閉弁と、前記オイルポット内の潤滑油を給油箇所に吐出するノズルの吐出量を調整する給油量調整弁とで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油の給油装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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