説明

潤滑油組成物

【課題】高温且つ高面圧の過酷な環境下で運転される増速歯車装置などに使用した場合であっても、十分に長い酸化寿命を示し、高水準の耐スラッジ性及び極圧性を達成することが可能な潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】多価アルコールと炭素数2〜24の脂肪酸とのエステルから選ばれる少なくとも1種の基油と、リン含有カルボン酸化合物と、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル及び亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種であるリン化合物と、アルキルフェノール及び芳香族アミンから選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー化対策の一環として、生成する副生ガスを燃料とする増速歯車装置を装備した新規なタイプのタービン装置が開発され、製鉄所などへの導入が進められている。当該装置の燃料である副生ガスは、従来使用されている重油燃料などに比べて熱量が10分の1程度と低いため、単に燃焼させるだけではタービンを回転させて熱効率よく発電するための十分な力を得ることができない。副生ガスから必要な力を得るためには、当該ガスを高圧縮して燃焼時の膨張力を増大させることが必須である。この理由により、当該装置には、副生ガスを圧縮するためのガス圧縮機及びさらに高度に圧縮するための増速歯車装置が更に設けられる。装備された増速歯車装置は、ガス圧縮機とタービン軸とを直接連結しているが、タービン装置のコンパクト化を目的として、タービン軸の潤滑油と増速歯車装置の潤滑油は兼用して使用されることが求められる。このような潤滑油にはタービン油とギヤ油との双方の性能が要求される。特に、高温且つ高面圧の過酷な条件下で優れた耐スラッジ性能を有し且つ高い極圧性を有することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−359994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の潤滑油は、上述の増速歯車装置に使用した場合の耐スラッジ性能及び極圧性が必ずしも十分とは言えない。すなわち、高い極圧性、耐摩耗性が要求される用途には、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などの硫黄系極圧剤を添加した潤滑油が広く使用されているが、硫黄系極圧剤はその添加量が微量であっても熱負荷が加わるとスラッジを多量に生成し、また熱・酸化安定性を低下させる傾向がある。そのため、硫黄系極圧剤を添加した潤滑油では、上述の増速歯車装置において十分な熱・酸化安定性を達成することが困難である。一方、リン系極圧剤は硫黄系極圧剤に比べてスラッジを生成しにくい傾向にあるが、リン系極圧剤を単独で使用した場合にはギヤ油レベルでの高い極圧性を得ることが困難である。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高温且つ高面圧の過酷な環境下で運転される増速歯車装置などに使用した場合であっても、十分に長い酸化寿命を示し、高水準の耐スラッジ性及び極圧性を達成することが可能な潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、所定基油にリン含有カルボン酸化合物、リン化合物及び特定の酸化防止剤を含有せしめることで上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の潤滑油組成物は、多価アルコールと炭素数2〜24の脂肪酸とのエステルから選ばれる少なくとも1種の基油と、リン含有カルボン酸化合物と、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル及び亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種であるリン化合物と、アルキルフェノール及び芳香族アミンから選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の潤滑油組成物によれば、高温且つ高面圧の過酷な環境下で運転される増速歯車装置などに使用した場合であっても、十分に長い酸化寿命を示し、高水準の耐スラッジ性及び極圧性を達成することが可能となる。従って本発明の潤滑油組成物は、増速歯車装置などにおける摺動部分の摩耗の抑制及び装置の長寿命化の点で非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、化合物又は官能基が直鎖状及び分岐状の構造の双方を取り得る場合、特に断らない限り当該化合物には直鎖状のものと分岐状のものとの双方が含まれる。
【0010】
本発明の潤滑油組成物は、多価アルコールと炭素数2〜24の脂肪酸とのエステルから選ばれる少なくとも1種の基油を含有する。
【0011】
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の油を挙げることができる。また、ワックス異性化鉱油、GTL WAX(ガストゥリキッド ワックス)を異性化する手法で製造される基油等も使用可能である。
【0012】
合成油としては、例えば、ポリオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、含フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等)、シリコーン油などが挙げられる。
【0013】
油脂としては、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の動植物油脂、又はこれらの水素添加物などが挙げられる。
【0014】
これらの基油の中でも、より耐熱性。熱・酸化安定性に優れることから、水素化処理などを施して硫黄分含有量及び窒素含有量をできるだけ低減した鉱油、ポリオレフィン、及びエステルの使用が好ましい。
【0015】
前記ポリオレフィンには、各種オレフィンの重合物、又はこれらの水素化物が含まれる。オレフィンとしては任意のものが用いられ、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン(1−ブテン、2−ブテン、イソブテン)、炭素数5以上のα−オレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンの製造にあたっては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
前記エステルとしては、任意のものが使用可能である。エステルを構成するアルコールは1価アルコール又は多価アルコールのいずれであってもよい。また、エステルを構成する酸は一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよい。
【0017】
1価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、ヘンイコサノール、トリコサノール、テトラコサノール及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0018】
多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトール及びこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0019】
これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコール及びこれらの混合物が好ましい。更により好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、及びこれらの混合物等である。これらの中でも、より高い酸化安定性が得られることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びこれらの混合物が好ましく、最も好ましくはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びこれらの混合物である。
【0020】
また、本発明にかかるエステルを構成する酸のうち、一塩基酸としては、通常炭素数2〜24の脂肪酸又は芳香族一塩基酸が挙げられる。
【0021】
前記脂肪酸は直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ヒドロキシオクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、ヒドロキシオクタデセン酸、ノナデセン酸、イコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0022】
また、芳香族一塩基酸としては、安息香酸等が挙げられる。
【0023】
前記多塩基酸としては、炭素数2〜16の脂肪族二塩基酸及び芳香族多塩基酸が挙げられる。
【0024】
炭素数2〜16の二塩基酸は、直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘプタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘキセン二酸、ヘプテン二酸、オクテン二酸、ノネン二酸、デセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸、トリデセン二酸、テトラデセン二酸、ヘプタデセン二酸、ヘキサデセン二酸及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0025】
芳香族多塩基酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0026】
本発明で用いられるエステルを構成するアルコールと酸との組み合わせは任意であり特に制限されない。また、なお、前記アルコール及び酸はそれぞれ1種を単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。本発明において使用可能なエステルとしては、例えば、1価アルコールと一塩基酸とのエステル、多価アルコールと一塩基酸とのエステル、一価アルコールと多塩基酸とのエステル、多価アルコールと多塩基酸とのエステル、1価アルコール及び多価アルコールの混合アルコールと多塩基酸とのエステル、多価アルコールと一塩基酸及び多塩基酸の混合酸とのエステル、1価アルコール及び多価アルコールの混合アルコールと一塩基酸及び多塩基酸の混合酸とのエステルなどが例示できる。また、本発明で用いられるエステルは完全エステル又は部分エステルのいずれでもよいが、好ましくは完全エステルである。
【0027】
これらの中でも、耐摩耗性に優れることから、多価アルコールと一塩基酸とのエステル、一価アルコールと多塩基酸とのエステルが好ましく、多価アルコールと一塩基酸とのエステルがより好ましい。
【0028】
多価アルコールと一塩基酸とのエステルに使用する多価アルコールとしては、上記のいずれも使用可能であるが、より耐摩耗性に優れることから、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコール及びこれらの混合物が好ましい。更により好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、及びこれらの混合物等である。これらの中でも、より高い酸化安定性が得られることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びこれらの混合物が好ましく、最も好ましくはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びこれらの混合物である。
【0029】
また、多価アルコールと一塩基酸とのエステルに使用する一塩基酸としては、上記のいずれも使用可能であるが、熱安定性の点から、炭素数2〜24の脂肪酸が好ましく、炭素数3〜18の脂肪酸がより好ましく、炭素数4〜12の脂肪酸が更に好ましく、炭素数5〜9の脂肪酸が特に好ましい。この際、脂肪酸は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、より耐摩耗性に優れる点から、2種以上の脂肪酸の混合物を用いることが好ましい。更に、脂肪酸は直鎖状又は分岐状のいずれでもよいが、より安価に入手でき、経済的に有利な直鎖状の脂肪酸を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の潤滑油組成物における上記基油の含有量は特に制限されないが、組成物全量基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0031】
上記基油の粘度は特に制限されないが、100℃における動粘度は、好ましくは25mm/s以下、より好ましくは20mm/s以下、更に好ましくは15mm/s以下、特に好ましくは10mm/s以下である。また、100℃における動粘度は、好ましくは1.0mm/s以上、より好ましくは1.5mm/s以上、更に好ましくは2.0mm/s以上、特に好ましくは2.5mm/s以上である。また、上記基油の粘度指数は特に制限されないが、好ましくは85以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは120以上である。
【0032】
また、本発明の潤滑油組成物はリン含有カルボン酸化合物を含有する。リン含有カルボン酸化合物としては、同一分子中にカルボキシル基とリン原子の双方を含んでいればよく、その構造は特に制限されない。しかしながら極圧性及び熱・酸化安定性の点から、ホスホリル化カルボン酸が好ましい。
【0033】
ホスホリル化カルボン酸としては、例えば下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化1】


[式(1)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜20のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、炭素数X、X、X及びXは同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を示す。]
一般式(1)中、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルキルビシクロアルキル基、アルキルトリシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ビシクロアルキルアルキル基、トリシクロアルキルアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。また、RとRが結合して下記一般式(2)で表される2価の基を形成してもよい。なお、当該2価の基の2個の結合手はそれぞれX、Xと結合するものである。
【0035】
【化2】


[式(2)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRの双方がメチル基であることが好ましい。]
及びRとしては、これらの中でもアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、トリシクロアルキルアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、RとRとが結合した上記一般式(2)で表されるような2価の基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0036】
、Rとしてのアルキル基は直鎖状又は分枝状のいずれであってもよい。また、当該アルキル基の炭素数は1〜18であることが好ましい。このようなアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、3−ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、2−エチルブチル基、1−メチルフェニル基、1,3−ジメチルブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1−メチルヘキシル基、イソヘプチル基、1−メチルヘプチル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基及び1−メチルウンデシル基などが挙げられる。これらの中でも炭素数3〜18のアルキル基が好ましく、炭素数3〜8のアルキル基がより好ましい。
【0037】
、Rとしてのシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基又はシクロドデシル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数5又は6のシクロアルキル基(シクロペンチル基及びシクロヘキシル基)が好ましく、とりわけシクロヘキシル基が好ましい。
【0038】
、Rとしてのシクロアルキルアルキル基としては、シクロアルキルメチル基が好ましく、炭素数6又は7のシクロアルキルメチル基がより好ましく、シクロペンチルメチル基及びシクロヘキシルメチル基が特に好ましい。
【0039】
、Rとしてのビシクロアルキルアルキル基としては、ビシクロアルキルメチル基が好ましく、炭素原子数9〜11のビシクロアルキルメチル基がより好ましく、デカリニルメチル基が特に好ましい。
【0040】
、Rとしてのトリシクロアルキルアルキル基としては、トリシクロアルキルメチル基が好ましく、炭素原子数9〜15のトリシクロアルキルメチル基がより好ましく、下記式(3)又は(4)で表される基が特に好ましい。
【0041】
【化3】

【0042】
【化4】


、Rとしてのアリール基及びアルキルアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ビニルフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、第三ブチルフェニル基、ジ−第三ブチルフェニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数6〜15のアリール基及びアルキルアリール基が好ましい。
【0043】
は炭素数1〜20のアルキレン基を示す。かかるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは3〜4である。また、このようなアルキレン基としては、下記一般式(5)で表されるものが好ましい。
【0044】
【化5】


一般式(5)中、R、R、R及びR10は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を示し、R、R、R及びR10の炭素数の合計は6以下である。また、好ましくは、R、R、R及びR10は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、R、R、R及びR10の炭素数の合計は5以下である。さらに好ましくは、R、R、R及びR10は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1又は2の炭化水素基を示し、R、R、R及びR10の炭素数の合計は4以下である。特に好ましくは、R、R、R及びR10は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基を示し、R、R、R及びR10の炭素数の合計は3以下である。最も好ましくは、R又はR10のいずれかがメチル基であり残りの3基が水素原子である。
【0045】
また、一般式(1)中のRは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。かかる炭化水素基としては、R及びRの説明において例示された炭化水素基が挙げられる。
【0046】
また、一般式(1)中のX、X、X及びXは同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を示す。極圧性の点からは、X、X、X又はXのうち1つ以上が硫黄原子であることが好ましく、2つ以上が硫黄原子であることがより好ましく、2つが硫黄原子であり且つ残りの2つが酸素原子であることがさらに好ましい。この場合、X、X、X又はXのうちいずれが硫黄原子であるかは任意であるが、X及びXが酸素原子であり且つX及びXが硫黄原子であることが好ましい。
【0047】
以上、一般式(1)中の各基について説明したが、より極圧性に優れることから、下記一般式(6)で表されるβ−ジチオホスホリル化プロピオン酸が好ましく使用される。
【0048】
【化6】


[式(6)中、R、Rはそれぞれ式(1)中のR、Rと同一の定義内容を示し、R、R、R、R10はそれぞれ(5)中のR、R、R、R10と同一の定義内容を示す。]
本発明の潤滑油組成物におけるリン含有カルボン酸化合物の含有量は特に制限されないが、組成物全量基準で、好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.002〜0.5質量%である。リン含有カルボン酸化合物の含有量が前記下限値未満では十分な潤滑性が得られない傾向にある。一方、前記上限値を超えても含有量に見合う潤滑性向上効果が得られない傾向にあり、更には熱・酸化安定性や加水分解安定性が低下するおそれがあるので好ましくない。なお、一般式(1)で表されるホスホリル化カルボン酸のうち、Rが水素原子である化合物(一般式(6)で表されるβ−ジチオホスホリル化プロピオン酸を含む)の含有量については、好ましくは0.001〜0.1質量%、より好ましくは0.002〜0.08質量%、更に好ましくは0.003〜0.07質量%、一層好ましくは0.004〜0.06質量%、特に好ましくは0.005〜0.05質量%である。当該含有量が0.001未満の場合は極圧性向上効果が不十分となるおそれがあり、一方、0.1質量%を超えると熱・酸化安定性が低下するおそれがある。
【0049】
また、本発明の潤滑油組成物はリン化合物を含有する。リン化合物としては、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスフォロチオネート、ジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸とアルカノール又はポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体が、熱・酸化安定性の点から好ましく用いられる。
【0050】
リン酸エステルとしては、具体的には例えば、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及びキシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0051】
酸性リン酸エステルの具体例としては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、及びジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0052】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、及びトリオクチルアミンなどのアミンとの塩が挙げられる。
【0053】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、及びポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。
【0054】
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、及びトリクレジルホスファイトなどが挙げられる。
【0055】
また、ホスフォロチオネートとしては、具体的には、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート等、が挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0056】
上記のリン化合物の中でも、より極圧性等の諸性能に優れることから、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホスフォロチオネートが好ましく、リン酸エステルがより好ましく、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、モノクレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルモノフェニルホスフェート等のトリアリールホスフェートが更により好ましい。
【0057】
本発明の潤滑油組成物におけるリン化合物の含有量は特に制限されないが、組成物全量基準で、好ましくは0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.05〜4.5質量%、更に好ましくは0.1〜4.0質量%、一層好ましくは0.5〜3.5質量%、特に好ましくは1.0〜3.0質量%である。リン化合物の含有量が0.01未満の場合はリン化合物の含有による極圧性向上効果が不十分となるおそれがあり、一方、5.0質量%を超えると熱・酸化安定性及び泡立ち性が低下するおそれがある。
【0058】
また、本発明の潤滑油組成物はアルキルフェノール及び芳香族アミンから選ばれる少なくとも1種を含有する。
【0059】
アルキルフェノールとしては、下記一般式(7)、(8)又は(9)で表されるアルキルフェノール化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0060】
【化7】


[式(7)中、R11は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R12は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R13は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、下記一般式(i)又は(ii):
【0061】
【化8】


(一般式(i)中、R14は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R15は炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【0062】
【化9】


(一般式(ii)中、R16は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R17は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R18は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、kは0又は1を示す。)
で表される基を示す。]
【0063】
【化10】


[一般式(8)中、R19及びR21は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、R20及びR22は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R23及びR24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Aは炭素数1〜18のアルキレン基又は下記の一般式(iii):
−R25−S−R26− (iii)
(一般式(iii)中、R25及びR26は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す)
で表される基を示す。]
【0064】
【化11】


一般式(9)中、R27は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R28は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R29は炭素数1〜6のアルキレン基又は下記一般式(iv):
【0065】
【化12】


(一般式(iv)中、R30及びR31は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す。)
で表される基を示す。]
上記一般式(7)で表される化合物において、R13が一般式(i)で表される基である化合物の場合、一般式(i)中のR14が炭素数1〜2のアルキレン基であり、R15が炭素数6〜12の直鎖状又は分枝状アルキル基であるものがより好ましく、一般式(i)のR14が炭素数1〜2のアルキレン基であり、R15が炭素数6〜12の分枝状アルキル基であるものが特に好ましい。
【0066】
一般式(7)で表される化合物の中で好ましいものを以下に示す。
【0067】
13が炭素数1〜4のアルキル基である場合の化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール等を挙げることができる。
【0068】
13が一般式(i)で表される基である場合の化合物の例としては、下記のものを挙げることができる。(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−オクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソオクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸2−エチルヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−デシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−オクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソオクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸2−エチルヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−デシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−オクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソオクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸2−エチルヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−デシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−オクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソオクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸2−エチルヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−デシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソドデシル等が挙げられる。
【0069】
13が一般式(ii)で表される基である場合の化合物の例としては、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等;及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0070】
次に、一般式(8)で表されるアルキルフェノールについて説明する。
【0071】
一般式(8)中、R19及びR21は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示す。R19、R21としては、メチル基又はtert−ブチル基が好ましく、酸化安定性により優れる点から、R19及びR21の双方がtert−ブチル基であることがより好ましい。
【0072】
また、一般式(8)中のR20及びR22は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。R20、R22としては、メチル基又はtert−ブチル基が好ましく、酸化安定性により優れる点から、R19及びR21の双方がtert−ブチル基であることがより好ましい。
【0073】
また、一般式(8)中のR23及びR24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す。かかるアルキレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。具体的には、上記一般式(i)中のR14の説明で例示された炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられる。
【0074】
一般式(8)中、Aは炭素数1〜18のアルキレン基又は上記一般式(iii)で表される二価の基を示す。炭素数1〜18のアルキレン基としては、上記一般式(i)中のR14の説明で例示された炭素数1〜6のアルキレン基の他、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ペンタデシレン基、オクタデシレン基などが挙げられる。これらの中でも、原料の入手容易性の点から、上記一般式(i)中のR14の説明で例示された炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜6の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
【0075】
また、上記一般式(iii)中、R25及びR26で示される炭素数1〜6のアルキレン基としては、上記一般式(i)中のR14の説明で例示された炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられる。一般式(8)で表される化合物を製造する際の原料の入手容易性の点からは、R25及びR26が炭素数1〜3のアルキレン基、例えばメチレン基、メチルメチレン基、エチレン基(ジエチレン基)、エチルメチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、トリメチレン基などがより好ましい。
【0076】
一般式(8)中のAが炭素数1〜18のアルキレン基である場合の特に好ましい化合物は、下記式(8−1)で表される化合物である。
【0077】
【化13】


また、一般式(8)中のAが式(iii)で表される基である場合の特に好ましい化合物は、下記式(8−2)で表される化合物である。
【0078】
【化14】


次に、一般式(9)で表されるアルキルフェノールについて説明する。
【0079】
一般式(9)で表されるアルキルフェノールとして特に好ましいものは、具体的には、下記式(9−1)又は(9−2)で表される化合物である。
【0080】
【化15】

【0081】
【化16】


上記アルキルフェノールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
芳香族アミンとしては、フェニル−α−ナフチルアミン系化合物、ジアルキルジフェニルアミン系化合物が挙げられる。
【0083】
フェニル−α−ナフチルアミン系化合物としては、下記一般式(10)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンが好ましく用いられる。
【0084】
【化17】


[式(10)中、R32は水素原子又は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示す。]
一般式(10)中のR32がアルキル基である場合、当該アルキル基は前述の通り炭素数1〜16の直鎖上又は分岐状のものである。このようなアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシ基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、及びヘキサデシル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。なお、R32の炭素数が16を超える場合には分子中に占める官能基の割合が小さくなり、酸化防止性能に悪影響を与える恐れがある。
【0085】
一般式(10)中のR32がアルキル基である場合、溶解性に優れる点から、R32は、炭素数8〜16の分枝アルキル基が好ましく、さらに炭素数3又は4のオレフィンのオリゴマーから誘導される炭素数8〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレンが挙げられるが、溶解性の点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。更に優れた溶解性を得るためには、R32は、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらにより好ましく、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基が特に好ましい。
【0086】
また、R32がアルキル基である場合、フェニル基の任意の位置に結合可能であるがアミノ基に対してp−位であることが好ましい。更に、アミノ基はナフチル基の任意の位置に結合可能であるが、α位であることが好ましい。
【0087】
一般式(10)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンとしては、市販のものを用いても良く、また合成物を用いても良い。合成物は、フリーデル・クラフツ触媒を用いて、フェニル−α−ナフチルアミンと炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物との反応、あるいはフェニル−α−ナフチルアミンと炭素数2〜16のオレフィン又は炭素数2〜16のオレフィンオリゴマーとの反応を行うことにより容易に合成することができる。フリーデル・クラフツ触媒としては、具体的には例えば、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化鉄等の金属ハロゲン化物;硫酸、リン酸、五酸化リン、フッ化ホウ素、酸性白土、活性白土等の酸性触媒;等を用いることができる。
【0088】
ジアルキルジフェニルアミン系化合物としては、下記一般式(11)で表されるジアルキルジフェニルアミンが好ましく用いられる。
【0089】
【化18】


[式(11)中、R33及びR34は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜16のアルキル基を示す。]
33及びR34で表されるアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシ基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。これらの中でも、溶解性に優れる点から、R33及びR34としては、炭素数3〜16の分枝アルキル基が好ましく、炭素数3又は4のオレフィン又はそのオリゴマーから誘導される炭素数3〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレン等が挙げられるが、溶解性に優れる点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。また、R33又はR34としては、更に優れた溶解性が得られることから、それぞれプロピレンから誘導されるイソプロピル基、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらにより好ましく、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基が最も好ましい。
【0090】
なお、R33又はR34の一方又は双方が水素原子である化合物を用いると、当該化合物自体の酸化によりスラッジが発生する恐れがある。また、アルキル基の炭素数が16を超える場合には、分子中に占める官能基の割合が小さくなり、高温での酸化防止性が低下する恐れがある。
【0091】
33又はR34で示されるアルキル基は、それぞれフェニル基の任意の位置に結合可能であるが、アミノ基に対してp−位であることが好ましく、すなわち一般式(11)で表されるジアルキルジフェニルアミンはp,p’−ジアルキルジフェニルアミンであることが好ましい。
【0092】
一般式(11)で表されるジアルキルジフェニルアミンは市販のものを用いても良く、また合成物を用いても良い。合成物は、フリーデル・クラフツ触媒を用い、ジフェニルアミンと炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物とジフェニルアミンとの反応、あるいはジフェニルアミンと炭素数2〜16のオレフィン又は炭素数2〜16のオレフィン又はこれらのオリゴマーとの反応を行うことにより容易に合成することができる。フリーデル・クラフツ触媒としては、フェニル−α−ナフチルアミン系化合物の説明において例示された金属ハロゲン化物や酸性触媒等が用いられる。
【0093】
上記一般式(10)、(11)で表される芳香族アミンは1種を単独で用いても良いし、構造の異なる2種以上の混合物を用いても良いが、高温での酸化防止性をより長期にわたって維持できることから、一般式(10)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンと一般式(11)で表されるジアルキルジフェニルアミンとを併用することが好ましい。この場合の混合比は任意であるが、質量比で1/10〜10/1の範囲にあることが好ましい。
【0094】
本発明の潤滑油組成物においては、上記のアルキルフェノール又は芳香族アミンの一方を単独で用いてもよく、アルキルフェノール及び芳香族アミンの双方を用いてもよいが、酸化防止性の点から、芳香族アミンを用いることが好ましい。
【0095】
また、本発明の潤滑油組成物中のアルキルフェノール及び芳香族アミンの合計の含有量は特に制限されないが、組成物全量基準で、好ましくは0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.02〜4.0質量%、更に好ましくは0.03〜3.0質量%、更により好ましくは0.04〜2.0質量%、特に好ましくは0.05〜1.0質量%である。合計の含有量が0.01重量%未満の場合には酸化安定性や熱安定性が不十分となる傾向にある。一方、5.0質量%を超える場合には、含有量に見合う酸化安定性の効果が得られず、更にはスラッジの増加の原因となるため好ましくない。
【0096】
本発明の潤滑油組成物には、更にその各種性能を高める目的で、公知の潤滑油添加剤の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。かかる添加剤としては、例えば、ジチオリン酸亜鉛系、フェノチアジン系等の酸化防止剤;エステル系等のさび止め剤;ポリアクリレート等のアクリレート系又はアルキルポリシロキサン等のシロキサン系などの消泡剤;ベンゾトリアゾール又はその誘導体等の金属不活性化剤;ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、オレフィンコポリマー、ポリスチレン等の流動点降下剤などが挙げられる。これらの添加剤を用いる場合の含有量は任意であるが、組成物全量基準で、さび止め剤の場合は0.01〜0.1質量%、消泡剤の場合は0.0005〜1質量%、金属不活性化剤の場合は0.005〜1質量%、その多の添加剤の場合はそれぞれ0.1〜15質量%が好ましい。
【0097】
本発明の潤滑油組成物の粘度は特に制限されないが、100℃における動粘度は、好ましくは25mm/s以下、より好ましくは20mm/s以下、更に好ましくは15mm/s以下、特に好ましくは10mm/s以下である。また、100℃における動粘度は、好ましくは1.0mm/s以上、より好ましくは1.5mm/s以上、更に好ましくは2.0mm/s以上、特に好ましくは2.5mm/s以上である。また、上記基油の粘度指数は特に制限されないが、好ましくは85以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは120以上である。
【0098】
また、本発明の潤滑油組成物においては、熱・酸化安定性を高めて特にスラッジ生成量を十分に低減する点から、当該組成物中の硫黄含有量(元素換算値)が、組成物全量基準で、0.020質量%以下であることが好ましく、0.015質量%以下であることがより好ましく、0.010質量%以下であることが更に好ましい。ここでいう硫黄含有量とは、JIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」の「微量電量滴定式酸化法」により測定される値をいう。
【0099】
本発明の潤滑油組成物の用途は特に制限されないが、圧縮機及び増速歯車装置を備えるタービン装置の潤滑油として特に好ましく使用される。タービン装置には、水力タービン、蒸気タービン、ガスタービン等があるが、本発明の潤滑油組成物は特に増速歯車装置を備えるガスタービン装置に用いた場合に最も優れた効果を発揮する。このようなガスタービン装置の出力数に特に制限はない。
【0100】
また、本発明の潤滑油組成物は、その優れた特性から、上記用途の他、油圧作動油、工業用ギヤ油、軸受油、圧縮機油等の用途においても好ましく使用することができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0102】
[実施例1、参考例1、2、比較例1〜3]
実施例1、参考例1、2及び比較例1〜3においては、それぞれ以下に示す基油及び添加剤を用いて、表1に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。得られた各潤滑油組成物の100℃における動粘度、粘度指数及び硫黄分含有量(硫黄元素換算値)を表1に示す。
【0103】
(基油)
基油1:原油を常圧上流して得られた潤滑油留分に対して、水素化分解、溶剤脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油(100℃における動粘度:5.95mm/s、粘度指数:120、硫黄分含有量(硫黄元素換算値):10質量ppm未満)
基油2:ペンタエリスリトールと炭素数5〜9の直鎖飽和脂肪酸とを用いて得られたポリオールエステル(100℃における動粘度:4.94mm/s、粘度指数:130)
基油3:1−デセンオリゴマー(100℃における動粘度:6.26mm/s、粘度指数:148)
(添加剤)
A1:β−ジチオホスホリル化プロピオン酸
B1:トリクレジルホスフェート
C1:フェニル−α−ナフチルアミン
D1:ジベンジルスルフィド。
【0104】
次に、実施例1、参考例1、2及び比較例1〜3の各潤滑油組成物を用いて以下の試験を行った。
【0105】
(極圧性試験)
ASTM D 5182−91で標準化された試験方法により、FZG試験を行い、核潤滑油組成物の極圧性を評価した。評価の際には、不合格となったステージを指標とした。得られた結果を表1に示す。
【0106】
(熱・酸化安定性試験)
JIS K 2514のTOSTに規定する試験において、油量を300mlとし、純水を加えずにオイルバスで120℃に加熱し、その温度に保持しながら3l/hの流量で酸素を吹き込んだ。触媒には銅及び鉄触媒を用いた。酸素の吹き込み開始時刻から起算して480時間後に、潤滑油組成物を酸素吹き込み管で十分に攪拌した後、100mlを採取した。採取した酸化劣化油を室温まで冷却させた後、孔径0.8μmのフィルターで濾過し、フィルター上の不溶分を秤量した。さらに、濾液の酸化寿命を同JIS規格試験のRBOTで標準化された方法にて測定した。更に、予め測定しておいた新油のRBOT値で各採取時間における酸化劣化油のRBOT値を除し、RBOT残存率とした。得られた結果を表1に示す。表1中、酸化劣化油のRBOT値が大きく、また、RBOT残存率に対する不溶分量が少ないほど熱・酸化安定性が良好であることを意味する。
【0107】
【表1】


表1に示した結果から明らかなように、実施例1、参考例1、2の潤滑油組成物はいずれも十分に長い酸化寿命を示し、また、優れた耐スラッジ性及び極圧性を有していることが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコールと炭素数2〜24の脂肪酸とのエステルから選ばれる少なくとも1種の基油と、リン含有カルボン酸化合物と、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル及び亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種であるリン化合物と、アルキルフェノール及び芳香族アミンから選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
前記多価アルコールがペンタエリスリトールであることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記リン化合物がリン酸エステルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記リン含有カルボン酸化合物が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【化1】


[式(1)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜20のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、炭素数X、X、X及びXは同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を示す。]


【公開番号】特開2010−138416(P2010−138416A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68949(P2010−68949)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【分割の表示】特願2003−430937(P2003−430937)の分割
【原出願日】平成15年12月25日(2003.12.25)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】