説明

潤滑油組成物

【課題】圧縮機油などの用途において、熱・酸化安定性、抗スラッジ性、潤滑性、長寿命性及び水分離性の全てを高水準で達成することが可能な潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】鉱油、油脂及び合成油から選ばれる少なくとも1種の基油と、フェニル−α−ナフチルアミンと、p,p’−ジアルキルジフェニルアミンと、リン酸エステルと、リン含有カルボン酸と、を含有することを特徴とする潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、空気又はガス(窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、COガス、COガスなど)に外部より仕事を与えて圧縮し、その圧縮ガスを送り出す装置である。このような圧縮機は、空気又はガスの圧力を高める作動原理により、容積型とターボ型とに大別される。容積型圧縮機はさらに往復動式圧縮機と回転式圧縮機とに分類される。
【0003】
従来、これらの圧縮機には、鉱油系又は合成油系の圧縮機油が使用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−204995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、圧縮機の高圧化、小型化が進められ、これに伴い圧縮機の使用条件はより過酷なものとなっている。そのため、圧縮機に求められる熱・酸化安定性、抗スラッジ性、潤滑性、長寿命性などの要求値は益々高まっている。特に、近年では、装置のメンテナンスに費やす労働の省力化や天然資源の有効利用などの観点から、圧縮機油自体に更なる長寿命化が要求されるようになってきている。
【0006】
一方、圧縮機の場合は、その構成上、外気の水分が系内に混入することは不可避であり、混入した水分は系内の錆の発生だけでなく圧縮機油の劣化の原因となり得る。そのため、圧縮機油に混入した水分を油水分離(いわゆるドレン切り)により除去することが不可欠となる。その際、圧縮機油の水分離性が悪いと、効率よく水分を除去することが困難となる。さらに、ドレン切りの際に圧縮機油の一部が水分と共に除去されることとなるため、環境汚染の点でも好ましくない。したがって、圧縮機油には、熱・酸化安定性、抗スラッジ性、潤滑性、長寿命性に加えて、高い水分離性が求められる。
【0007】
潤滑油の水分離性を高める方法としては、例えば抗乳化性添加剤の使用が考えられる。しかし、圧縮機油における抗乳化性添加剤の使用は、圧縮機油の寿命の短縮など他の要求特性に影響を与え得るため、この方法は根本的な改善策とはなり得ない。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、圧縮機油などの用途において、熱・酸化安定性、抗スラッジ性、潤滑性、長寿命性及び水分離性の全てを高水準で達成することが可能な潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、フェニル−α−ナフチルアミン、p,p’−ジアルキルジフェニルアミン及びリン系極圧剤を所定基油に含有せしめた潤滑油組成物によって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の潤滑油組成物は、鉱油、油脂及び合成油から選ばれる少なくとも1種の基油と、フェニル−α−ナフチルアミンと、p,p’−ジアルキルジフェニルアミンと、リン酸エステルと、リン含有カルボン酸と、を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の潤滑油組成物によれば、熱・酸化安定性、抗スラッジ性、潤滑性、長寿命性及び水分離性の全てを高水準で達成することが可能となる。したがって、本発明の潤滑油組成物は、例えば高圧化及び小型化された圧縮機用の潤滑油として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例で用いた高温ポンプ循環試験設備を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明の潤滑油組成物は、鉱油、油脂及び合成油から選ばれる少なくとも1種の基油を含有する。鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られるパラフィン系またはナフテン系などの鉱油を挙げることができる。
【0015】
また、油脂としては、例えば、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などの動植物油脂、またはこれらの水素添加物などが挙げられる。
【0016】
合成油としては、例えば、ポリα−オレフィン(例えば、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、あるいはこれらの水素化物など)、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、モノエステル(例えば、ブチルステアレート、オクチルラウレートなど)、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセパケートなど)、ポリエステル(例えば、トリメリット酸エステルなど)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネートなど)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、リン酸エステル(例えば、トリクレジルホスフェートなど)、含フッ素化合物(例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィンなど)、シリコーン油などが例示できる。
【0017】
本発明においては、上記基油のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明で使用する基油の粘度に格別の限定はないが、40℃における基油の動粘度は800mm2/s以下であることが好ましく、500mm2/s以下であることがより好ましい。基油の40℃における動粘度が800mm2/sを超えると、各種機械における潤滑油供給性が不十分となる傾向にある。一方、40℃における基油の動粘度は10mm2/s以上であることが好ましく、15mm2/s以上であることがより好ましい。基油の40℃における粘度が10mm2/s未満であると揮発性が高くなり安全性が低下するとともに潤滑膜が薄くなり摺動面が焼き付きやすくなる傾向にある。
【0019】
本発明の潤滑油組成物中の基油の含有量についても特に制限はないが、通常潤滑油組成物全量基準で60〜99.96質量%、好ましくは70〜99.90質量%である。
【0020】
また、本発明の潤滑油組成物は、フェニル−α−ナフチルアミンを含有する。フェニル−α−ナフチルアミンとしては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0021】
【化1】


[式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示す。]
【0022】
一般式(1)中のRがアルキル基である場合、当該アルキル基は前述の通り炭素数1〜16の直鎖上又は分岐状のものである。このようなアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシ基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、及びヘキサデシル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。なお、Rの炭素数が16を超える場合には分子中に占める官能基の割合が小さくなり、熱・酸化安定性に悪影響を与える恐れがある。
【0023】
一般式(1)中のRがアルキル基である場合、溶解性に優れる点から、R14は、炭素数8〜16の分枝アルキル基が好ましく、さらに炭素数3又は4のオレフィンのオリゴマーから誘導される炭素数8〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレンが挙げられるが、溶解性により優れる点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。更に優れた溶解性を得るためには、R14は、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらにより好ましく、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基が特に好ましい。
【0024】
一般式(1)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンとしては、市販のものを用いても良く、また合成物を用いても良い。合成物は、フリーデル・クラフツ触媒を用いて、フェニル−α−ナフチルアミンと炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物との反応、あるいはフェニル−α−ナフチルアミンと炭素数2〜16のオレフィン又は炭素数2〜16のオレフィンオリゴマーとの反応を行うことにより容易に合成することができる。フリーデル・クラフツ触媒としては、具体的には例えば、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化鉄等の金属ハロゲン化物;硫酸、リン酸、五酸化リン、フッ化ホウ素、酸性白土、活性白土等の酸性触媒;等を用いることができる。
【0025】
本発明の潤滑油組成物におけるフェニル−α−ナフチルアミンの含有量は任意であるが、組成物全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。当該含有量が10質量%を超えても、その含有量に見合うだけの熱・酸化安定性のさらなる向上効果は期待できず経済的に不利であり、さらにはスラッジの発生を招く恐れがある。一方、当該含有量は、組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、最も好ましくは0.1質量%以上である。当該含有量が0.01質量%に満たない場合は、それらの添加による熱・酸化安定性の向上効果が見られない恐れがある。
【0026】
また、本発明の潤滑油組成物は、p,p’−ジアルキルジフェニルアミンを含有する。p,p’−ジアルキルジフェニルアミンとしては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0027】
【化2】


[式(2)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜16のアルキル基を示す。]
【0028】
及びRで表されるアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシ基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。これらの中でも、溶解性に優れることから、R及びRとしては、炭素数3〜16の分枝アルキル基が好ましく、炭素数3又は4のオレフィン又はそのオリゴマーから誘導される炭素数3〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレン等が挙げられるが、溶解性に優れることから、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。また、R又はRとしては、更に優れた溶解性が得られることから、それぞれプロピレンから誘導されるイソプロピル基、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらにより好ましく、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基が最も好ましい。
【0029】
なお、R及びRの一方又は双方が水素原子である化合物を用いると、当該化合物自体の酸化によりスラッジが発生する恐れがある。また、アルキル基の炭素数が16を超える場合には、分子中に占める官能基の割合が小さくなり、高温での酸化防止性が低下する恐れがある。
【0030】
一般式(2)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンは市販のものを用いても良く、また合成物を用いても良い。合成物は、フリーデル・クラフツ触媒を用い、ジフェニルアミンと炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物とジフェニルアミンとの反応、あるいはジフェニルアミンと炭素数2〜16のオレフィン又は炭素数2〜16のオレフィン又はこれらのオリゴマーとの反応を行うことにより容易に合成することができる。フリーデル・クラフツ触媒としては、フェニル−α−ナフチルアミンの説明において例示された金属ハロゲン化物や酸性触媒等が用いられる。
【0031】
本発明の潤滑油組成物におけるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンの含有量は任意であるが、組成物全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。当該含有量が10質量%を超えても、その含有量に見合うだけの熱・酸化安定性のさらなる向上効果は期待できず経済的に不利であり、さらにはスラッジの発生を招く恐れがある。一方、当該含有量は、組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、最も好ましくは0.1質量%以上である。合計の含有量が0.01質量%に満たない場合は、その添加による熱・酸化安定性の向上効果が見られない恐れがある。
【0032】
フェニル−α−ナフチルアミン又はp,p’−ジアルキルジフェニルアミンはいずれも芳香族アミンであるが、本発明による上記の効果はこれらの2種の芳香族アミン及び後述するリン系極圧剤を組み合わせて使用することによって初めて奏されるものである。なお、フェニル−α−ナフチルアミン又はp,p’−ジアルキルジフェニルアミンの一方を単独で用いた場合には、本発明による効果を得ることができず、特に、高圧化及び小型化された圧縮機等に使用した場合に熱・酸化安定性が不十分となる。
【0033】
本発明の潤滑油組成物においては、フェニル−α−ナフチルアミンとp,p’−ジアルキルジフェニルアミンとの双方を含有する限り両者の含有量の比は特に制限されないが、より優れた熱・酸化安定性が得られる点から、フェニル−α−ナフチルアミンとp,p’−ジアルキルジフェニルアミンとの含有量の比は、質量比で1/10〜10/1の範囲にあることが好ましい。
【0034】
また、本発明の潤滑油組成物はリン系極圧剤を含有する。リン系極圧剤としては、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホスフォロチオネートが好ましく用いられる。
【0035】
リン酸エステルとしては、具体的には例えば、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及びキシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0036】
酸性リン酸エステルの具体例としては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、及びジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0037】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、及びトリオクチルアミンなどのアミンとの塩が挙げられる。
【0038】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、及びポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。
【0039】
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、及びトリクレジルホスファイトなどが挙げられる。
【0040】
ホスフォロチオネートとしては、具体的には、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート等、が挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0041】
これらの化合物の中でも、熱・酸化安定性及び耐摩耗性により優れることから、リン酸エステルが特に好ましい。
【0042】
本発明の潤滑油組成物におけるリン系極圧剤の含有量は、熱・酸化安定性及び耐摩耗性の点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。また、それ以上含有させても含有量に見合うだけの効果が期待できない場合があり、さらにスラッジ生成に関して悪影響を及ぼす可能性があることから、当該含有量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。
【0043】
本発明の潤滑油組成物は、上記の基油、フェニル−α−ナフチルアミン、p,p’−ジアルキルジフェニルアミン及びリン系極圧剤からなるものであってもよいが、リン含有カルボン酸化合物を更に含有することが好ましい。リン含有カルボン酸化合物を含有せしめることで、抗スラッジ性を低下させることなく潤滑性を更に向上させることができる。リン含有カルボン酸化合物としては、同一分子中にカルボニルオキシ基とリン原子の双方を含んでいればよく、その構造は特に制限されない。しかしながら極圧性能及び熱・酸化安定性の点から、ホスホリル化カルボン酸が好ましい。
【0044】
ホスホリル化カルボン酸としては、例えば下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【化3】


[式(3)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜20のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、炭素数X、X、X及びXは同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を示す。]
【0046】
一般式(3)中、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルキルビシクロアルキル基、アルキルトリシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ビシクロアルキルアルキル基、トリシクロアルキルアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。また、RとRが結合して下記一般式(4)で表される2価の基を形成してもよい。なお、当該2価の基の2個の結合手はそれぞれX、Xと結合するものである。
【0047】
【化4】


[式(4)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRの双方がメチル基であることが好ましい。]
【0048】
及びRとしては、これらの中でもアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、トリシクロアルキルアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、RとRとが結合した上記一般式(4)で表されるような2価の基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0049】
、Rとしてのアルキル基は直鎖状又は分枝状のいずれであってもよい。また、当該アルキル基の炭素数は1〜18であることが好ましい。このようなアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、3−ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、2−エチルブチル基、1−メチルフェニル基、1,3−ジメチルブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1−メチルヘキシル基、イソヘプチル基、1−メチルヘプチル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基及び1−メチルウンデシル基などが挙げられる。これらの中でも炭素数3〜18のアルキル基が好ましく、炭素数3〜8のアルキル基がより好ましい。
【0050】
、Rとしてのシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基又はシクロドデシル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数5又は6のシクロアルキル基(シクロペンチル基及びシクロヘキシル基)が好ましく、とりわけシクロヘキシル基が好ましい。
【0051】
、Rとしてのシクロアルキルアルキル基としては、シクロアルキルメチル基が好ましく、炭素数6又は7のシクロアルキルメチル基がより好ましく、シクロペンチルメチル基及びシクロヘキシルメチル基が特に好ましい。
【0052】
、Rとしてのビシクロアルキルアルキル基としては、ビシクロアルキルメチル基が好ましく、炭素原子数9〜11のビシクロアルキルメチル基がより好ましく、デカリニルメチル基が特に好ましい。
【0053】
、Rとしてのトリシクロアルキルアルキル基としては、トリシクロアルキルメチル基が好ましく、炭素原子数9〜15のトリシクロアルキルメチル基がより好ましく、下記式(5)又は(6)で表される基が特に好ましい。
【0054】
【化5】

【0055】
【化6】

【0056】
、Rとしてのアリール基及びアルキルアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ビニルフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、第三ブチルフェニル基、ジ−第三ブチルフェニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数6〜15のアリール基及びアルキルアリール基が好ましい。
【0057】
は炭素数1〜20のアルキレン基を示す。かかるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは3〜4である。また、このようなアルキレン基としては、下記一般式(7)で表されるものが好ましい。
【0058】
【化7】

【0059】
一般式(7)中、R10、R11、R12及びR13は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を示し、R10、R11、R12及びR13の炭素数の合計は6以下である。また、好ましくは、R10、R11、R12及びR13は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、R10、R11、R12及びR13の炭素数の合計は5以下である。さらに好ましくは、R10、R11、R12及びR13は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1又は2の炭化水素基を示し、R10、R11、R12及びR13の炭素数の合計は4以下である。特に好ましくは、R10、R11、R12及びR13は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基を示し、R10、R11、R12及びR13の炭素数の合計は3以下である。最も好ましくは、R12又はR13のいずれかがメチル基であり残りの3基が水素原子である。
【0060】
また、一般式(3)中のRは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。かかる炭化水素基としては、R及びRの説明において例示された炭化水素基が挙げられる。
【0061】
また、一般式(3)中のX、X、X及びXは同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を示す。極圧性の点からは、X、X、X又はXのうち1つ以上が硫黄原子であることが好ましく、2つ以上が硫黄原子であることがより好ましく、2つが硫黄原子であり且つ残りの2つが酸素原子であることがさらに好ましい。この場合、X、X、X又はXのうちいずれが硫黄原子であるかは任意であるが、X及びXが酸素原子であり且つX及びXが硫黄原子であることが好ましい。
【0062】
以上、一般式(3)中の各基について説明したが、より極圧性に優れることから、下記一般式(8)で表されるβ−ジチオホスホリル化プロピオン酸が好ましく使用される。
【0063】
【化8】


[式(8)中、R、Rはそれぞれ式(3)中のR、Rと同一の定義内容を示し、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ(7)中のR10、R11、R12及びR13と同一の定義内容を示す。]
【0064】
リン含有カルボン酸化合物の含有量は特に制限されないが、組成物全量基準で、好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.002〜0.5質量%である。リン含有カルボン酸化合物の含有量が前記下限値未満では十分な潤滑性が得られない傾向にある。一方、前記上限値を超えても含有量に見合う潤滑性向上効果が得られない傾向にあり、更には熱・酸化安定性や加水分解安定性が低下するおそれがあるので好ましくない。なお、一般式(3)で表されるホスホリル化カルボン酸のうち、Rが水素原子である化合物(一般式(8)で表されるβ−ジチオホスホリル化プロピオン酸を含む)の含有量については、好ましくは0.001〜0.1質量%、より好ましくは0.002〜0.08質量%、更に好ましくは0.003〜0.07質量%、一層好ましくは0.004〜0.06質量%、特に好ましくは0.005〜0.05質量%である。当該含有量が0.001未満の場合は極圧性向上効果が不十分となるおそれがあり、一方、0.1質量%を超えると熱・酸化安定性が低下するおそれがある。
【0065】
また、本発明の潤滑剤組成物は硫黄系極圧剤を更に含有してもよい。硫黄系極圧剤としては、ジハイドロカルビルポリサルファイド、硫化エステル、硫化鉱油、ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物、ジチオカルバミン酸モリブデン化合物などが好ましく用いられる。
ジハイドロカルビルポリサルファイドは、一般にポリサルファイド又は硫化オレフィンと呼ばれる硫黄系化合物であり、具体的には下記一般式(9)で表される。
【0066】
14−Sx−R15 (9)
一般式(9)において、R14及びR15はそれぞれ別個に、炭素数3〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアルキルアリール基あるいは炭素数6〜20のアリールアルキル基を表し、xは2〜6、好ましくは2〜5の整数を表す。
【0067】
14及びR15で表されるアルキル基としては、具体的には、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝ペンチル基、直鎖又は分枝ヘキシル基、直鎖又は分枝ヘプチル基、直鎖又は分枝オクチル基、直鎖又は分枝ノニル基、直鎖又は分枝デシル基、直鎖又は分枝ウンデシル基、直鎖又は分枝ドデシル基、直鎖又は分枝トリデシル基、直鎖又は分枝テトラデシル基、直鎖又は分枝ペンタデシル基、直鎖又は分枝ヘキサデシル基、直鎖又は分枝ヘプタデシル基、直鎖又は分枝オクタデシル基、直鎖又は分枝ノナデシル基、直鎖又は分枝イコシル基を挙げることができる。
【0068】
14及びR15で表されるアリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができる。
【0069】
14及びR15で表されるアルキルアリール基としては、具体的には、トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝オクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝デシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分枝)プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分枝)ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、メチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分枝)プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分枝)ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)などを挙げることができる。上記R10 及びR11で表されるアリールアルキル基としては、具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)、フェニルプロピル基(全ての異性体を含む)などを挙げることができる。
【0070】
一般式(9)中のR14及びR15は、それぞれプロピレン、1−ブテン又はイソブチレンから誘導された炭素数3〜18のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数7〜8のアルキルアリール基、あるいは炭素数7〜8のアリールアルキル基であることが好ましい。具体的には、上記アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、プロピレン2量体から誘導される分枝状ヘキシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン3量体から誘導される分枝状ノニル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン4量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン5量体から誘導される分枝状ペンタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン6量体から誘導される分枝状オクタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−ブテン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)などを挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基を挙げることができる。アルキルアリール基としては、例えば、トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)などを挙げることができる。アリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基(全ての異性体を含む)などを挙げることができる。
【0071】
さらに、R14及びR15は、その潤滑性能の点から、それぞれ別個に、プロピレンから誘導された炭素数3〜18の分枝状アルキル基であることがより好ましく、プロピレンから誘導された炭素数6〜15の分枝状アルキル基であることが特に好ましい。
【0072】
ジハイドロカルビルポリサルファイドとしては、任意の硫黄含有量のものを使用することができるが、極圧性能に優れる点から、通常硫黄含有量が10〜55質量%、好ましくは20〜50質量%のものを用いることが好ましい。
【0073】
硫化エステルとしては、具体的には例えば、牛脂、豚脂、魚脂、菜種油、大豆油などの動植物油脂;不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸又は上記の動植物油脂から抽出された脂肪酸類などを含む)と各種アルコールとを反応させて得られる不飽和脂肪酸エステル;及びこれらの混合物などを任意の方法で硫化することにより得られるものが挙げられる。(B−2)硫化エステルとしては、任意の硫黄含有量のものを使用することができるが、極圧性能に優れる点から、通常硫黄含有量が2〜40質量%、好ましくは5〜35質量%のものを用いることが好ましい。
【0074】
硫化鉱油とは、鉱油に単体硫黄を溶解させたものをいう。本発明に用いられる鉱油は特に制限されないが、具体的には、上記の潤滑油基油の例として挙げた鉱油系潤滑油基油が挙げられる。また、単体硫黄としては、塊状、粉末状、溶融液体状等いずれの形態のものを用いてもよいが、粉末状又は溶融液体状のものは、基油への溶解を効率よく行うことができるので好ましい。なお、溶融液体状の単体硫黄を用いるときは、液体同士を混合することになるので溶解作業を非常に短時間で行うことができるという利点を有しているが、単体硫黄の融点以上で取り扱わねばならず、加熱設備などの特別な装置を必要としたり、高温雰囲気下での取り扱いとなるため危険を伴うなど取り扱いが必ずしも容易ではない。これに対して、粉末状の単体硫黄は、安価で取り扱いが容易であり、しかも溶解時間が十分に短いので特に好ましい。また、硫化鉱油中の硫黄含有量に特に制限はないが、通常硫化鉱油全量基準で好ましくは0.05〜1.0質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0075】
ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物、及びジチオカルバミン酸モリブデン化合物は、それぞれ下記一般式(10)〜(13)で表される。
【0076】
【化9】

【0077】
【化10】

【0078】
【化11】

【0079】
【化12】

【0080】
一般式(10)、(11)、(12)及び(13)において、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30及びR31は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上の炭化水素基を表し、X1及びX2は、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0081】
16〜R31で表される炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜24のアルキルアリール基及び炭素数7〜12のアリールアルキル基を挙げることができる。
【0082】
上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基(すべての分枝異性体を含む)、ブチル基(すべての分枝異性体を含む)、ペンチル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘキシル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘプチル基(すべての分枝異性体を含む)、オクチル基(すべての分枝異性体を含む)、ノニル基(すべての分枝異性体を含む)、デシル基(すべての分枝異性体を含む)、ウンデシル基(すべての分枝異性体を含む)、ドデシル基(すべての分枝異性体を含む)、トリデシル基(すべての分枝異性体を含む)、テトラデシル基(すべての分枝異性体を含む)、ペンタデシル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘキサデシル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘプタデシル基(すべての分枝異性体を含む)、オクタデシル基(すべての分枝異性体を含む)、ノナデシル基(すべての分枝異性体を含む)、イコシル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘンイコシル基(すべての分枝異性体を含む)、ドコシル基(すべての分枝異性体を含む)、トリコシル基(すべての分枝異性体を含む)、テトラコシル基(すべての分枝異性体を含む)などを挙げることができる。
【0083】
上記シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などを挙げることができる。上記アルキルシクロアルキル基としては、具体的には、メチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)などを挙げることができる。
【0084】
上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基(すべての分枝異性体を含む)、ペンテニル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘキセニル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘプテニル基(すべての分枝異性体を含む)、オクテニル基(すべての分枝異性体を含む)、ノネニル基(すべての分枝異性体を含む)、デセニル基(すべての分枝異性体を含む)、直鎖または分枝ウンデセニル基(すべての分枝異性体を含む)、ドデセニル基(すべての分枝異性体を含む)、トリデセニル基(すべての分枝異性体を含む)、テトラデセニル基(すべての分枝異性体を含む)、ペンタデセニル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘキサデセニル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘプタデセニル基(すべての分枝異性体を含む)、オレイル基などのオクタデセニル基(すべての分枝異性体を含む)、ノナデセニル基(すべての分枝異性体を含む)、イコセニル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘンイコセニル基(すべての分枝異性体を含む)、ドコセニル基(すべての分枝異性体を含む)、トリコセニル基及びテトラコセニル基(すべての分枝異性体を含む)などを挙げることができる。
【0085】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができる。
【0086】
上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基(すべての置換異性体を含む)、キシリル基(すべての置換異性体を含む)、エチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ペンチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘキシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘプチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、オクチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ノニルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、デシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ウンデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ドデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、トリデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、テトラデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ペンタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘキサデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘプタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、オクタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)などを挙げることができる。上記アリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基(すべての分枝異性体を含む)、フェニルブチル基(すべての分枝異性体を含む)などを挙げることができる。
【0087】
上記一般式(10)〜(13)で表される化合物の中では、一般式(10)で表されるジチオリン酸亜鉛化合物が好ましく、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ個別に、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアルキルアリール基であることが好ましい。特に炭素数3〜8のアルキル基が一般的に用いられる。なお、R16、R17、R18及びR19を導入する際にα−オレフィンの混合物を原料とする場合があるが、この場合、一般式(10)で表される化合物は互いに異なる構造のアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物となる。
【0088】
ジチオリン酸亜鉛化合物の具体例としては、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(1,3−ジメチルブチル)ジチオリン酸亜鉛、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0089】
また、本発明の潤滑油組成物においては、油性剤をさらに含有させてもよい。油性剤を含有させると、油性剤自体の油性作用に加えて、上記リン系極圧剤と油性剤との相乗作用により、本発明の潤滑油組成物の耐摩耗性及び摩擦特性をさらに向上させることができる。油性剤としては、エステル油性剤、1価アルコール油性剤、カルボン酸油性剤、エーテル油性剤などが挙げられる。
【0090】
エステル油性剤は、アルコールとカルボン酸とを反応させることにより得られる。アルコールとしては、1価アルコールでも多価アルコールでもよい。また、カルボン酸としては、一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。
【0091】
エステル油性剤を構成する一価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状又は分岐状のプロパノール、直鎖状又は分岐状のブタノール、直鎖状又は分岐状のペンタノール、直鎖状又は分岐状のヘキサノール、直鎖状又は分岐状のヘプタノール、直鎖状又は分岐状のオクタノール、直鎖状又は分岐状のノナノール、直鎖状又は分岐状のデカノール、直鎖状又は分岐状のウンデカノール、直鎖状又は分岐状のドデカノール、直鎖状又は分岐状のトリデカノール、直鎖状又は分岐状のテトラデカノール、直鎖状又は分岐状のペンタデカノール、直鎖状又は分岐状のヘキサデカノール、直鎖状又は分岐状のヘプタデカノール、直鎖状又は分岐状のオクタデカノール、直鎖状又は分岐状のノナデカノール、直鎖状又は分岐状のイコサノール、直鎖状又は分岐状のヘンイコサノール、直鎖状又は分岐状のトリコサノール、直鎖状又は分岐状のテトラコサノール及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0092】
また、エステル油性剤を構成する多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトール及びこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0093】
これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコール及びこれらの混合物等が好ましい。さらにより好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、及びこれらの混合物等である。これらの中でも、より高い酸化安定性が得られることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びこれらの混合物等が好ましい。
【0094】
エステルを構成するアルコールは、上述したように一価アルコールであっても多価アルコールであってもよいが、耐摩耗性及び摩擦特性がより高められる点、低温下での析出防止性の点などから、一価アルコールであることが好ましい。
【0095】
また、エステルを構成する酸のうち、一塩基酸としては、通常炭素数2〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、直鎖状又は分岐状のブタン酸、直鎖状又は分岐状のペンタン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン酸、直鎖状又は分岐状のオクタン酸、直鎖状又は分岐状のノナン酸、直鎖状又は分岐状のデカン酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン酸、直鎖状又は分岐状のドデカン酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のノナデカン酸、直鎖状又は分岐状のイコサン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコサン酸、直鎖状又は分岐状のドコサン酸、直鎖状又は分岐状のトリコサン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、直鎖状又は分岐状のブテン酸、直鎖状又は分岐状のペンテン酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン酸、直鎖状又は分岐状のオクテン酸、直鎖状又は分岐状のノネン酸、直鎖状又は分岐状のデセン酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン酸、直鎖状又は分岐状のドデセン酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のノナデセン酸、直鎖状又は分岐状のイコセン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコセン酸、直鎖状又は分岐状のドコセン酸、直鎖状又は分岐状のトリコセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0096】
多塩基酸としては、二塩基酸、トリメリット酸等が挙げられるが、低温下での析出防止性の点から、二塩基酸であることが好ましい。二塩基酸は鎖状二塩基酸、環状二塩基酸のいずれであってもよい。また、鎖状二塩基酸の場合、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。鎖状二塩基酸としては、炭素数2〜16の鎖状二塩基酸が好ましく、具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状又は分岐状のブタン二酸、直鎖状又は分岐状のペンタン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン二酸、直鎖状又は分岐状のオクタン二酸、直鎖状又は分岐状のノナン二酸、直鎖状又は分岐状のデカン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン二酸、直鎖状又は分岐状のドデカン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン二酸、直鎖状又は分岐状のオクテン二酸、直鎖状又は分岐状のノネン二酸、直鎖状又は分岐状のデセン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン二酸、直鎖状又は分岐状のドデセン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン二酸及びこれらの混合物等が挙げられる。また、環状二塩基酸としては、1、2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、安定性の点から、鎖状二塩基酸が好ましい。
【0097】
エステル系添加剤を構成する酸としては、上述したように一塩基酸であっても多塩基酸であってもよいが、耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果がより優れる点から、一塩基酸が好ましい。
【0098】
エステル系添加剤におけるアルコールと酸との組み合わせは任意であって特に制限されないが、例えば下記(i)〜(vii)の組み合わせによるエステルを挙げることができる。
【0099】
(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステル
(iv)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(v)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と多塩基酸との混合エステル
(vi)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
(vii)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と一塩基酸、多塩基酸との混合エステル。
【0100】
上記(ii)〜(vii)のエステルのそれぞれは、多価アルコールの水酸基又は多塩基酸のカルボキシル基の全てがエステル化された完全エステルであってもよく、また、一部が水酸基又はカルボキシル基として残存する部分エステルであってもよいが、低温下での析出防止性への影響がより小さい点からは完全エステルであることが好ましく、また、摩擦特性の向上効果の点からは部分エステルであることが好ましい。
【0101】
上記(i)〜(vii)のエステルの中でも、(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル、(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステルが好ましく、(i)のエステルがより好ましい。これらのエステルは、耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果が非常に高く、また、低温下での析出防止性や熱・酸化安定性に及ぼす影響も小さいものである。
【0102】
また、上記(i)のエステルにおいて、一塩基酸の炭素数は、耐摩耗性及び摩擦特性がより向上する点、並びに熱・酸化安定性の点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは14以上である。また、一塩基酸の炭素数は、低温下での析出防止性の点から、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、さらに好ましくは24以下である。このようなエステルとしては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸イソプロピルなどが挙げられる。
【0103】
また、上記(iii)のエステルにおいて、二塩基酸は鎖状であることが好ましい。このようなエステルとしては、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソブチルアジペートなどが挙げられる。
【0104】
1価アルコール油性剤としては、上記エステル油性剤の説明において例示された1価アルコールが挙げられる。1価アルコール油性剤の合計炭素数は、摩擦特性及び摩耗特性の向上の点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が最も好ましい。また、合計炭素数が大き過ぎると低温下で析出しやすくなる恐れがあることから、合計炭素数は20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が最も好ましい。
【0105】
カルボン酸油性剤としては、一塩基酸でも多塩基酸でもよい。このようなカルボン酸としては、例えば、エステル油性剤の説明において例示された一塩基酸及び多塩基酸が挙げられる。これらの中では、摩擦特性及び摩耗特性の向上の点から一塩基酸が好ましい。また、カルボン酸油性剤の合計炭素数は、摩擦特性及び摩耗特性の向上の点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が最も好ましい。また、カルボン酸油性剤の合計炭素数が大き過ぎると低温下で析出しやすくなる恐れがあることから、合計炭素数は20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が最も好ましい。
【0106】
エーテル油性剤としては、3〜6価の脂肪族多価アルコールのエーテル化物、3〜6価の脂肪族多価アルコールの二分子縮合物又は三分子縮合物のエーテル化物などが挙げられる。
【0107】
3〜6価の脂肪族多価アルコールのエーテル化物は、例えば、下記一般式(27)〜(32)で表される。
【0108】
【化13】

【0109】
【化14】

【0110】
【化15】

【0111】
【化16】

【0112】
【化17】

【0113】
【化18】

【0114】
[式中、R32〜R56は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、アリル基、アラルキル基、−(RO)−R(Rは炭素数2〜6のアルキレン基、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基、nは1〜10の整数を示す)で示されるグリコールエーテル残基を示す。]
【0115】
3〜6価の脂肪族多価アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトールなどが挙げられる。上記一般式(14)〜(19)中のR32〜R56としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。また、上記エーテル化物は、R32〜R56の一部が水素原子である部分エーテル化物も包含する。
【0116】
3〜6価の脂肪族多価アルコールの二分子縮合物又は三分子縮合物のエーテル化物としては、上記一般式(14)〜(19)で表される化合物のうちの同種又は異種の縮合物が挙げられる。例えば、一般式(14)で表されるアルコールの二分子縮合物及び三分子縮合物のエーテル化物はそれぞれ一般式(20)及び(21)で表される。また、一般式(17)で表されるアルコールの二分子縮合物及び三分子縮合物のエーテル化物はそれぞれ一般式(22)及び(23)で表される。
【0117】
【化19】

【0118】
【化20】

【0119】
【化21】

【0120】
【化22】

【0121】
[式中、R32〜R34及びR42〜R45はそれぞれ式(14)中のR32〜R34及び式(17)中のR42〜R45と同一の定義内容を示す。]
【0122】
3〜6価の脂肪族多価アルコールの二分子縮合物,三分子縮合物の具体例としては、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ジソルビトール、トリグリセリン、トリトリメチロールプロパン、トリペンタエリスリトール、トリソルビトールなどが挙げられる。
【0123】
一般式(14)〜(19)で表されるエーテル油性剤の具体例としては、グリセリンのトリヘキシルエーテル、グリセリンのジメチルオクチルトリエーテル、グリセリンのジ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、グリセリンのジフェニルオクチルトリエーテル、グリセリンのジ(フェニルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、トリメチロールプロパンのトリヘキシルエーテル、トリメチロールプロパンのジメチルオクチルトリエーテル、トリメチロールプロパンのジ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、ペンタエリスリトールのテトラヘキシルエーテル、ペンタエリスリトールのトリメチルオクチルテトラエーテル、ペンタエリスリトールのトリ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルテトラエーテル、ソルビトールのヘキサプロピルエーテル、ソルビトールのテトラメチルオクチルペンタエーテル、ソルビトールのヘキサ(メチルオキシイソプロピレン)エーテル、ジグリセリンのテトラブチルエーテル、ジグリセリンのジメチルジオクチルテトラエーテル、ジグリセリンのトリ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルテトラエーテル、トリグリセリンのペンタエチルエーテル、トリグリセリンのトリメチルジオクチルペンタエーテル、トリグリセリンのテトラ(メチルオキシイソプロピレン)デシルペンタエーテル、ジトリメチロールプロパンのテトラブチルエーテル、ジトリメチロールプロパンのジメチルジオクチルテトラエーテル、ジトリメチロールプロパンのトリ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルテトラエーテル、トリトリメチロールプロパンのペンタエチルエーテル、トリトリメチロールプロパンのトリメチルジオクチルペンタエーテル、トリトリメチロールプロパンのテトラ(メチルオキシイソプロピレンデシルペンタエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサプロピルエーテル、ジペンタエリスリトールのペンタメチルオクチルヘキサエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサ(メチルオキシイソプロピレン)エーテル、トリペンタエリスリトールのオクタプロピルエーテル、トリペンタエリスリトールのペンタメチルオクチルヘキサエーテル、トリペンタエリスリトールのヘキサ(メチルオキシイソプロピレン)エーテル、ジソルビトールのオクタメチルジオクチルデカエーテル、ジソルビトールのデカ(メチルオキシイソプロピレン)エーテルなどが挙げられる。これらの中でも、グリセリンのジフェニルオクチルトリエーテル、トリメチロールプロパンのジ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、ペンタエリスリトールのテトラヘキシルエーテル、ソルビトールのヘキサプロピルエーテル、ジグリセリンのジメチルジオクチルテトラエーテル、トリグリセリンのテトラ(メチルオキシイソプロピレン)デシルペンタエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサプロピルエーテル、トリペンタエリスリトールのペンタメチルオクチルヘキサエーテルが好ましい。
【0124】
本発明の潤滑油組成物においては、エステル油性剤、1価アルコール油性剤、カルボン酸油性剤及びエーテル油性剤のうちの1種を単独で用いてもよく、又、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの油性剤の中でも、摩擦特性、摩耗特性、析出防止性、及び熱・酸化安定性を高水準でバランスよく達成する点からは、エステル油性剤を含有することが好ましい。エステル油性剤は、耐摩耗性及び摩擦特性を高水準で達成可能であるだけでなく、1価アルコール油性剤やエーテル油性剤よりも析出防止性に優れており、また、カルボン酸油性剤よりも安定性に優れている。
【0125】
本発明の潤滑油組成物に上記油性剤を含有させる場合の含有量は任意であるが、耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果に優れる点から、組成物全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。また、当該含有量は、抗スラッジ性及び熱・酸化安定性により優れる点から、組成物全量を基準として、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0126】
また、本発明の潤滑油組成物は、フェノール系酸化防止剤をさらに含有してもよい。フェノール系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のアルキルフェノール系化合物が使用可能であり、特に限定されるのもではないが、例えば、下記の一般式(26)、一般式(27)及び一般式(28)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のアルキルフェノール化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0127】
【化23】


[式中、R57は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R58は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R59は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、下記一般式(i)又は(ii):
【化24】


(式中、R60は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R61は炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化25】


(式中、R62は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R63は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R64は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、kは0又は1を示す。)
で表される基を示す。]
【0128】
【化26】


[式中、R65及びR67は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、R66及びR68は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R69及びR70は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Aは炭素数1〜18のアルキレン基又は下記の一般式(iii):
−R71−S−R72− (iii)
(式中、R71及びR72は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す)
で表される基を示す。]
【0129】
【化27】


[式中、R73は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R74は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R75は炭素数1〜6のアルキレン基又は下記一般式(iv):
【化28】


(式中、R76及びR77は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す。)
で表される基を示す。]
【0130】
上記一般式(24)で表される化合物において、R59が一般式(i)で表される基である化合物の場合、一般式(i)中のR60が炭素数1〜2のアルキレン基であり、R61が炭素数6〜12の直鎖状又は分枝状アルキル基であるものがより好ましく、一般式(i)のR60が炭素数1〜2のアルキレン基であり、R61が炭素数6〜12の分枝状アルキル基であるものが特に好ましい。
【0131】
一般式(24)で表される化合物の中で好ましいものを以下に示す。
【0132】
59が炭素数1〜4のアルキル基である場合の化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール等を挙げることができる。
【0133】
59が一般式(i)で表される基である場合の化合物の例としては、下記のものを挙げることができる。(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−オクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソオクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸2−エチルヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−デシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−オクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソオクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸2−エチルヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−デシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−オクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソオクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸2−エチルヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−デシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−オクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソオクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸2−エチルヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−デシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソドデシル等が挙げられる。
【0134】
59が一般式(ii)で表される基である場合の化合物の例としては、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等;及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0135】
次に、一般式(7)で表されるアルキルフェノールについて説明する。
【0136】
一般式(25)中のAが炭素数1〜18のアルキレン基である場合の特に好ましい化合物は、下記式(25−1)で表される化合物である。
【0137】
【化29】

【0138】
また、一般式(25)中のAが式(iii)で表される基である場合の特に好ましい化合物は、下記式(25−2)で表される化合物である。
【0139】
【化30】

【0140】
次に、一般式(26)で表されるアルキルフェノールについて説明する。
【0141】
一般式(26)で表されるアルキルフェノールとして特に好ましいものは、具体的には、下記式(26−1)又は(26−2)で表される化合物である。
【0142】
【化31】

【0143】
【化32】

【0144】
フェノール系酸化防止剤の含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは0.02〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%である。フェノール系酸化防止剤の含有量が0.02重量%未満の場合には酸化安定性や熱安定性が不十分となる傾向にある。一方、5質量%を超える場合には、含有量に見合う酸化安定性の効果が得られず、経済的にも不利であるため好ましくない。
【0145】
本発明の圧縮機用潤滑油組成物には、その各種性能をさらに高める目的で、公知のその他の潤滑油添加剤、例えば、さび止め剤、金属系清浄剤、腐食防止剤、無灰分散剤、流動点降下剤、消泡剤などを単独で、又は数種類組み合わせて配合することができる。
【0146】
さび止め剤としては、例えば、脂肪族アミン類、有機スルホン酸金属塩、有機リン酸金属塩、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステルなどが挙げられる。金属系清浄剤としては、例えば、中性、塩基性又は過塩基性のアルカリ金属スルホネート、アルカリ金属フェネート、アルカリ金属サリシレート、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート等が例示することができる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等が、またアルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム等がそれぞれ例示できる。
【0147】
無灰分散剤としては、例えば、アルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルポリアミン、ベンジルアミン等の、いわゆる潤滑油用の無灰分散剤だけでなく、ポリメタクリレートやポリアクリレート等のポリマーに窒素を含有する極性モノマーを導入した、いわゆる分散型粘度指数向上剤等も使用可能である。腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系の化合物などが挙げられる。
【0148】
また、流動点降下剤としては、潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマーなどが挙げられ、消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーンなどのシリコーン類が挙げられる。
【0149】
これらの公知の添加剤の配合量は任意に選ぶことができるが、潤滑油組成物全量基準での各添加剤の含有量は、通常、酸化防止剤では0.01〜5.0質量%、さび止め剤及び腐食防止剤ではそれぞれ0.01〜3.0質量%、摩耗防止剤では0.01〜5.0質量%、流動点降下剤では0.01〜5.0質量%、消泡剤では0.00001〜0.05質量%となるように配合するのが望ましい。
【0150】
本発明の潤滑油組成物は、圧縮機油、タービン油、油圧作動油、ギヤ油、軸受油などの各種用途の潤滑油として好ましく使用されるが、特に圧縮機用潤滑油として使用した場合に、本発明による効果がより一層発揮される。
【実施例】
【0151】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0152】
[実施例1〜2、参考例1〜2、比較例1〜4]
実施例1〜2、参考例1〜2及び比較例1〜4においては、それぞれ以下に示す基油及び添加剤を用いて、表1及び表2に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。
【0153】
(基油)
基油1:水素化分解基油
(添加剤)
A1:ドデシルフェニル−α−ナフチルアミン
B1:(オクチルフェニル)(ブチルフェニル)アミン
C1:トリクレジルホスフェート
D1:β−ジチオホスホリル化プロピオン酸。
E1:ブチルステアレート。
【0154】
次に、実施例1〜2、参考例1〜2及び比較例1〜4の各潤滑油組成物について以下の評価試験を実施した。
【0155】
(酸化安定度試験)
図1に示す高温ポンプ循環試験設備により、ピストンポンプを用いて試料油を7MPa、120℃で循環し、循環系内にセットしたラインフィルター(3μm)の前後の差圧上昇をモニターした。スラッジがない場合の差圧は約35kPaであるが、スラッジが捕集されると徐々に差圧は上昇する。こうして差圧が200kPaになるまでの運転時間を測定し、スラッジ生成防止性の尺度とした。得られた結果を表1及び表2に示す。なおこの運転時間の数値は大きいほどスラッジ生成防止性に優れることを示す。
【0156】
(耐摩耗性試験)
シェル式四球摩耗試験法により耐摩耗性評価試験を実施した。具体的には、1/2インチ鋼球、1200rpm、30kgf、30分の条件で摩耗試験を行い、磨耗痕径を測定した。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0157】
(極圧性能試験)
ASTM D5182に準拠した方法によりFZG試験を行い、各潤滑油組成物の極圧性能を評価した。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0158】
(FALEX試験)
下記条件でFALEX試験(ASTM D2670)を実施した。試験後のピン及びブロックの重量を測定して、摩耗量を重量の減少量として求めた。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0159】
試験開始温度:25℃
試験時間:30分
荷重:25N
ピン:アルミ材A390。
【0160】
(水分離性試験)
500mlビーカーに各潤滑油組成物300mlを入れ、150℃で2週間放置した。その後、組成物を回収し、JIS K 2520「石油製品−潤滑油−抗乳化性試験方法」に準拠して抗乳化性試験を行い、組成物と水とが分離するまでの時間を測定した。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0161】
【表1】

【0162】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油、油脂及び合成油から選ばれる少なくとも1種の基油と、フェニル−α−ナフチルアミンと、p,p’−ジアルキルジフェニルアミンと、リン酸エステルと、リン含有カルボン酸と、を含有することを特徴とする潤滑油組成物。



【図1】
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【公開番号】特開2010−150562(P2010−150562A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85385(P2010−85385)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【分割の表示】特願2004−52192(P2004−52192)の分割
【原出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】