説明

潤滑油組成物

【課題】低摩擦性、長期使用時における低摩擦性の維持、鋳鉄に対する貼り付き性および耐ステイン性に優れる潤滑油組成物、特にすべり案内面用潤滑油として有用な潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】潤滑油基油に、(A)酸性リン酸エステルおよび亜リン酸エステルの中から選ばれる1種以上のリン化合物を組成物全量基準で0.01〜2質量%、(B)分岐鎖型のアルキル基又は/及び分岐鎖型のアルケニル基を1〜3個有する脂肪族モノアミン化合物を組成物全量基準で0.01〜2質量%、および(C)ポリアミン化合物を組成物全量基準で0.001〜0.5質量%含有することを特徴とする潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物に関し、特に工作機械用として、好適には工作機械のすべり案内面に用いられる潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の加工テーブルなどのすべり案内面用の潤滑油には、加工精度を向上させるために低摩擦性能やスティックスリップの防止、貯蔵安定性、耐腐食性等が要求されている。
摩擦低減剤として、これまでさまざまな極圧剤や油性剤が用いられてきた。昨今の工作機械においては特に精度に対する要求が高まっており、工作精度に重要な影響を与える低速領域における摩擦低減を実現するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、カルボン酸、イオウ化合物、アミン類等が用いられている(例えば、特許文献1〜5を参照。)。また、酸性リン酸エステルをアルキルアミンで中和することにより安定性を向上させることが試みられていた(例えば、特許文献6を参照。)。しかし、すべり案内面用潤滑油として、近年の高度な要求性能を総合的に満足するためには、長期に亘っての摩擦性能の維持や耐ステイン性などの性能がより一層求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−134488号公報
【特許文献2】特開平8−183979号公報
【特許文献3】特開2001−104973号公報
【特許文献4】特開2003−171684号公報
【特許文献5】特開2003−430949号公報
【特許文献6】特開2007−238764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの従来技術においては、添加剤の環境に対する負荷は高く、かつこのような添加剤では初期の摩擦性能および工作機械の位置決め性能は優れるものの、すべり案内面用潤滑油に水溶性切削液が混入した場合、当初の低摩擦性能を著しく阻害し、またリン酸などの酸性成分が鉄を使用する摺動面に腐食を発生させるなど、工作機械における加工精度を悪化させる原因となり、装置の使用が進むにつれて位置決め精度が悪化する傾向にあった。また、これらの活性が高い添加剤を用いた場合、工作機械の運転休止中に機械の摺動面にステインが発生することが問題とされていた。
【0005】
これまで酸性リン酸エステルをアルキルアミンで中和することにより安定性を向上させることが試みられていたが、従来の添加剤の組み合わせにおいては長期に亘って低摩擦を維持し続けることは困難であった。そのため長期間に亘って優れた摩擦性能を維持し続け、ステインの発生を抑えることの出来る油剤が必要とされていた。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低摩擦性、位置決め性、熱安定性、低温貯蔵安定性に優れ、かつ切削液が混入した場合においても当初の低摩擦性を著しく悪化させない潤滑油組成物を提供することにあり、さらには、耐腐食性能にも優れた潤滑油組成物をも提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、潤滑油基油に、特定のリン酸エステル化合物、特定のモノアミン化合物、さらに特定のポリアミン化合物を含有する潤滑油組成物により上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
[I]潤滑油基油に、
(A)下記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルおよび下記一般式(2)で表される亜リン酸エステルの中から選ばれる1種以上のリン化合物を組成物全量基準で0.01〜2質量%、
(RO)P(=O)(OH)3−a ・・・・・・(1)
(式(1)中、Rは炭素数2〜24の炭化水素基を示し、aは1又は2である。aが2の場合、Rは同一であっても異なってもよい。)
(RO)P(OH)3−b ・・・・・・(2)
(式(2)中、Rは炭素数2〜24の炭化水素基を示し、bは1〜3の整数を示す。bが2又は3の場合、Rは同一であっても異なってもよい。)
(B)分岐鎖型のアルキル基又は/及び分岐鎖型のアルケニル基を1〜3個有する脂肪族モノアミン化合物を組成物全量基準で0.01〜2質量%、および
(C)下記一般式(3)で表されるポリアミン化合物を組成物全量基準で0.001〜0.5質量%
−(NH−R)c−NH2 ・・・・・・(3)
(式(3)中、Rは炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、Rは炭素数2〜4の2価の飽和炭化水素基を表し、cは1〜8の整数を表す。)
を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【0009】
[II]工作機械のすべり案内面に用いられることを特徴とする前記[I]に記載の潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の潤滑油組成物は、低摩擦性、長期使用時における低摩擦性の維持、鋳鉄に対する貼り付き性、耐ステイン性に優れる。したがって、本発明の潤滑油組成物は、工作機械の動作の安定化、長寿命化などの点で非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例で用いた摩擦係数測定システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について説明する。
【0013】
本発明で用いられる潤滑油基油としては特に制限はないが、鉱油、油脂および合成油を挙げることができる。
鉱油系基油としては、その製法に特に制限はなく、例えば、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製手段を1種もしくは2種以上適宜組み合わせて適用して得られるパラフィン系またはナフテン系の鉱油を挙げることができる。
【0014】
油脂としては、例えば、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、あるいはこれらの水素添加物などが挙げられる。また、遺伝子組み換え技術を利用してオレイン酸含有量を高くした前記油脂も好適に使用できる。
【0015】
合成油としては、例えば、ポリ−α−オレフィン(エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、これらの水素化物など)、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、モノエステル(ブチルステアレート、オクチルラウレートなど)、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセパケートなど)、ポリエステル(トリメリット酸エステルなど)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネートなど)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、リン酸エステル(トリクレジルホスフェートなど)、含フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィンなど)、シリコーン油などが例示できる。
【0016】
潤滑油基油としては、鉱油、油脂および合成油の中から選ばれた1種を単独で又は2種以上組み合わせて配合して使用することができる。
【0017】
本発明で用いられる潤滑油基油の粘度については特に制限はないが、40℃における動粘度が10〜700mm/sの範囲にあるものが好ましく、15〜500mm/sの範囲にあるものがより好ましい。また、本発明の潤滑油組成物における潤滑油基油の含有量は特に限定されるものではないが、組成物全量基準で50〜99.98質量%の範囲であることが好ましい。
【0018】
(A)成分のリン化合物は、下記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルおよび/または下記一般式(2)で表される亜リン酸エステルである。
(RO)P(=O)(OH)3−a ・・・・・・(1)
(式(1)中、Rは炭素数2〜24の炭化水素基を示し、aは1又は2である。aが2の場合、Rは同一であっても異なってもよい。)
(RO)P(OH)3−b ・・・・・・(2)
(式(2)中、Rは炭素数2〜24の炭化水素基を示し、bは1〜3の整数を示す。bが2又は3の場合、Rは同一であっても異なってもよい。)
【0019】
前記一般式(1)および一般式(2)において、RおよびRで示される炭素数2〜24の炭化水素基としては、炭素数2〜24のアルキル基及びアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラルキル基などを挙げることができる。
【0020】
前記アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基,sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、各種イコシル基、各種ヘンイコシル基、各種ドコシル基、各種トリコシル基、各種テトラコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種イコセニル基、各種ヘンイコセニル基、各種ドコセニル基、各種トリコセニル基、各種テトラコセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
炭素数6〜24のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数7〜24のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、メチルベンジル基、メチルフェネチル基、メチルナフチルメチル基などが挙げられる。
【0021】
前記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルとしては、Rの炭素数2〜18のものが好ましく、具体的には、a=1の酸性リン酸エステルとしては、例えば、モノエチルアシッドホスフェート、モノn−プロピルアシッドホスフェート、モノ−n−ブチルアシッドホスフェート、モノ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、モノ−n−オクチルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート(モノラウリルアシッドホスフェート)、モノテトラデシルアシッドホスフェート(モノミリスチルアシッドホスフェート)、モノパルミチルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート(モノステアリルアシッドホスフェート)、モノ−9−オクタデセニルアシッドホスフェート(モノオレイルアシッドホスフェート)などが挙げられる。
【0022】
また、a=2の酸性リン酸エステルとしては、例えば、ジエチルアシッドホスフェート、ジ−n−ブチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジ−n−オクチルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート(ジラウリルアシッドホスフェート)、ジ(トリデシル)アシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート(ジミリスチルアシッドホスフェート)、ジオクタデシルアシッドホスフェート(ジステアリルアシッドホスフェート)、ジ9−オクタデセニルアシッドホスフェート(ジオレイルアシッドホスフェート)などが挙げられる。
【0023】
前記一般式(2)で表される亜リン酸エステルとしては、Rが炭素数2〜18のものが好ましく、具体的には、b=1の酸性亜リン酸ジエステルとしては、例えば、モノ−n−ブチルハイドロジェンホスファイト、モノ−2−エチルヘキシルハイドロジェンホスファイト、モノデシルハイドロジェンホスファイト、モノドデシルハイドロジェンホスファイト(モノラウリルハイドロジェンホスファイト)、モノオクタデシルハイドロジェンホスファイト(モノステアリルハイドロジェンホスファイト)、モノ−9−オクタデセニルハイドロジェンホスファイト(モノオレイルハイドロジェンホスファイト)、モノフェニルハイドロジェンホスファイトなどが挙げられる。
【0024】
b=2の酸性亜リン酸モノエステルとしては、例えば、ジ−n−ブチルハイドロジェンホスファイト、ジ−2−エチルヘキシルハイドロジェンホスファイト、ジデシルハイドロジェンホスファイト、ジドデシルハイドロジェンホスファイト(ジラウリルハイドロジェンホスファイト)、ジオクタデシルハイドロジェンホスファイト(ジステアリルハイドロジェンホスファイト)、ジ−9−オクタデセニルハイドロジェンホスファイト(ジオレイルハイドロジェンホスファイト)、ジフェニルハイドロジェンホスファイトなどが挙げられる。
【0025】
また、b=3の亜リン酸トリエステルとしては、例えば、トリ−n−ブチルハイドロジェンホスファイト、トリ−2−エチルヘキシルハイドロジェンホスファイト、トリ(デシル)ハイドロジェンホスファイト、トリ(ドデシ)ルハイドロジェンホスファイト(トリラウリルハイドロジェンホスファイト)、トリオクタデシルハイドロジェンホスファイト(トリステアリルハイドロジェンホスファイト)、トリ−9−オクタデセニルハイドロジェンホスファイト(トリオレイルハイドロジェンホスファイト)、トリフェニルハイドロジェンホスファイトなどが挙げられる。
【0026】
本発明の潤滑油組成物においては、(A)成分として、前記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルおよび前記一般式(2)で表される亜リン酸エステルの中から選ばれる1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明の潤滑油組成物において、(A)成分のリン化合物の含有量は、低摩擦性能に優れる点から、組成物全量基準で、0.01質量%以上であり、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。また、得られる潤滑油組成物の耐腐食性に優れる点から、組成物全量基準で、2質量%以下であり、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0028】
(B)成分のモノアミン化合物は、分岐鎖型のアルキル基又は/及び分岐鎖型のアルケニル基を1〜3個有する脂肪族モノアミン化合物である。具体的には、通常、炭素数1〜30、好ましくは炭素数3〜20の分岐鎖型のアルキル基又は/及び分岐鎖型のアルケニル基を1〜3つ有するモノアミンであり、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンのいずれであってもよいが、炭素数3〜20のアルキル基又はアルケニル基を1つまたは2つ有するモノアミンの第一級アミンまたは第二級アミンが好ましく、さらに炭素数3〜20のアルキル基又はアルケニル基を2つ有するモノアミンの第二級アミンが最も好ましい。
これらのアルキル基及びアルケニル基の中でも、(A)成分および(C)成分と混合した場合の低温貯蔵安定性、切削油が混入した場合の低摩擦性能に優れる点から、これらアルキル基及びアルケニル基の炭素数は4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。また、潤滑油基油に対する溶解性の点からは、これらアルキル基及びアルケニル基の炭素数は、20以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、14以下であることがさらに好ましい。
【0029】
上記の好ましい炭素数3〜20のアルキル基及びアルケニル基としては、具体的には、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等のアルキル基;プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等のアルケニル基(これらのアルケニル基の二重結合の位置は任意である)などが挙げられる。これらのアルキル基及びアルケニル基はいずれも分岐鎖型のものである。
【0030】
本発明の潤滑油組成物において、(B)成分のモノアミン化合物の含有量は、金属材料への耐腐食性能に優れる点から、組成物全量基準で、0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上である。また、低臭気性に優れる点から、2質量%以下であり、好ましくは1質量%以下である。
【0031】
本発明における(C)成分は、下記一般式(3)で表されるポリアミン化合物である。
−(NH−R)c−NH2 ・・・・・・(3)
(式(3)中、Rは炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、Rは炭素数2〜4の2価の飽和炭化水素基を表し、cは1〜8の整数を表す。)
【0032】
式(3)におけるRは、炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基である。このようなRとしては、具体的には例えば、直鎖状または分岐状のオクチル基、直鎖状または分岐状のノニル基、直鎖状または分岐状のデシル基、直鎖状または分岐状のウンデシル基、直鎖状または分岐状のドデシル基、直鎖状または分岐状のトリデシル基、直鎖状または分岐状のテトラデシル基、直鎖状または分岐状のペンタデシル基、直鎖状または分岐状のヘキサデシル基、直鎖状または分岐状のヘプタデシル基、直鎖状または分岐状のオクタデシル基、直鎖状または分岐状のノナデシル基、直鎖状または分岐状のイコシル基、直鎖状または分岐状のヘンイコシル基、直鎖状または分岐状のドコシル基、直鎖状または分岐状のトリコシル基、直鎖状または分岐状のテトラコシル基などのアルキル基;直鎖状または分岐状のオクテニル基、直鎖状または分岐状のノネニル基、直鎖状または分岐状のデセニル基、直鎖状または分岐状のウンデセニル基、直鎖状または分岐状のドデセニル基、直鎖状または分岐状のトリデセニル基、直鎖状または分岐状のテトラデセニル基、直鎖状または分岐状のペンタデセニル基、直鎖状または分岐状のヘキサデセニル基、直鎖状または分岐状のヘプタデセニル基、直鎖状または分岐状のオクタデセニル基、直鎖状または分岐状のノナデセニル基、直鎖状または分岐状のイコセニル基、直鎖状または分岐状のヘンイコセニル基、直鎖状または分岐状のドコセニル基、直鎖状または分岐状のトリコセニル基、直鎖状または分岐状のテトラコセニル基などのアルケニル基が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、特に炭素数12〜18のアルキル基もしくは炭素数12〜18のアルケニル基が好ましく、最も好ましいものとしては、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基などの炭素数12〜18の直鎖のアルキル基;n−ドデセニル基、n−トリデセニル基、n−テトラデセニル基、n−ペンタデセニル基、n−ヘキサデセニル基、n−ヘプタデセニル基、n−オクタデセニル基などの炭素数12〜18の直鎖のアルケニル基が挙げられる。
【0034】
また、Rは炭素数2〜4、好ましくは炭素数2〜3の2価の飽和炭化水素基である。この様な2価の飽和炭化水素基としては、具体的には例えば、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、ジメチルメチレン基等が挙げられる。この中でも最も好ましいものとしては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。cは1〜8の整数を表すが、好ましくは1〜6の整数である。
【0035】
(C)成分のポリアミン化合物としては、沈殿物を生成させないなどといった組成物の安定性や、加工テーブルの位置決め精度の向上効果の点から、式(3)のRが、炭素数12〜18の直鎖アルキル基もしくは直鎖アルケニル基で、Rがエチレン基、プロピレン基もしくはトリメチレン基であって、かつcが1〜6の整数であるポリアミン化合物が好ましい。
【0036】
(C)成分のポリアミン化合物として好ましいものとしては、具体的には例えば、N−ドデシルエチレンジアミン、N−トリデシルエチレンジアミン、N−テトラデシルエチレンジアミン、N−ペンタデシルエチレンジアミン、N−ヘキサデシルエチレンジアミン、N−ヘプタデシルエチレンジアミン、N−オクタデシルエチレンジアミン;
【0037】
N−ドデシルジエチレントリアミン、N−トリデシルジエチレントリアミン、N−テトラデシルジエチレントリアミン、N−ペンタデシルジエチレントリアミン、N−ヘキサデシルジエチレントリアミン、N−ヘプタデシルジエチレントリアミン、N−オクタデシルジエチレントリアミン;
【0038】
N−ドデシルトリエチレンテトラミン、N−トリデシルトリエチレンテトラミン、N−テトラデシルトリエチレンテトラミン、N−ペンタデシルトリエチレンテトラミン、N−ヘキサデシルトリエチレンテトラミン、N−ヘプタデシルトリエチレンテトラミン、N−オクタデシルトリエチレンテトラミン;
【0039】
N−ドデシルテトラエチレンペンタミン、N−トリデシルテトラエチレンペンタミン、N−テトラデシルテトラエチレンペンタミン、N−ペンタデシルテトラエチレンペンタミン、N−ヘキサデシルテトラエチレンペンタミン、N−ヘプタデシルテトラエチレンペンタミン、N−オクタデシルテトラエチレンペンタミン;
【0040】
N−ドデシルペンタエチレンヘキサミン(N−ラウリルペンタエチレンヘキサミン)、N−トリデシルペンタエチレンヘキサミン、N−テトラデシルペンタエチレンヘキサミン、N−ペンタデシルペンタエチレンヘキサミン、N−ヘキサデシルペンタエチレンヘキサミン、N−ヘプタデシルペンタエチレンヘキサミン、N−オクタデシルペンタエチレンヘキサミン;
【0041】
N−ドデシルヘキサエチレンヘプタミン、N−トリデシルヘキサエチレンヘプタミン、N−テトラデシルヘキサエチレンヘプタミン、N−ペンタデシルヘキサエチレンヘプタミン、N−ヘキサデシルヘキサエチレンヘプタミン、N−ヘプタデシルヘキサエチレンヘプタミン、N−オクタデシルヘキサエチレンヘプタミン;
【0042】
N−ドデシルプロピレンジアミン、N−トリデシルプロピレンジアミン、N−テトラデシルプロピレンジアミン、N−ペンタデシルプロピレンジアミン、N−ヘキサデシルプロピレンジアミン、N−ヘプタデシルプロピレンジアミン、N−オクタデシルプロピレンジアミン;
【0043】
N−ドデシルジプロピレントリアミン、N−トリデシルジプロピレントリアミン、N−テトラデシルジプロピレントリアミン、N−ペンタデシルジプロピレントリアミン、N−ヘキサデシルジプロピレントリアミン、N−ヘプタデシルジプロピレントリアミン、N−オクタデシルジプロピレントリアミン;
【0044】
N−ドデシルトリプロピレンテトラミン、N−トリデシルトリプロピレンテトラミン、N−テトラデシルトリプロピレンテトラミン、N−ペンタデシルトリプロピレンテトラミン、N−ヘキサデシルトリプロピレンテトラミン、N−ヘプタデシルトリプロピレンテトラミン、N−オクタデシルトリプロピレンテトラミン;
【0045】
N−ドデシルテトラプロピレンペンタミン、N−トリデシルテトラプロピレンペンタミン、N−テトラデシルテトラプロピレンペンタミン、N−ペンタデシルテトラプロピレンペンタミン、N−ヘキサデシルテトラプロピレンペンタミン、N−ヘプタデシルテトラプロピレンペンタミン、N−オクタデシルテトラプロピレンペンタミン;
【0046】
N−ドデシルペンタプロピレンヘキサミン、N−トリデシルペンタプロピレンヘキサミン、N−テトラデシルペンタプロピレンヘキサミン、N−ペンタデシルペンタプロピレンヘキサミン、N−ヘキサデシルペンタプロピレンヘキサミン、N−ヘプタデシルペンタプロピレンヘキサミン、N−オクタデシルペンタプロピレンヘキサミン;
【0047】
N−ドデシルヘキサプロピレンヘプタミン、N−トリデシルヘキサプロピレンヘプタミン、N−テトラデシルヘキサプロピレンヘプタミン、N−ペンタデシルヘキサプロピレンヘプタミン、N−ヘキサデシルヘキサプロピレンヘプタミン、N−ヘプタデシルヘキサプロピレンヘプタミン、N−オクタデシルヘキサプロピレンヘプタミン;
【0048】
N−ドデシル(トリメチレン)ジアミン、N−トリデシル(トリメチレン)ジアミン、N−テトラデシル(トリメチレン)ジアミン、N−ペンタデシル(トリメチレン)ジアミン、N−ヘキサデシル(トリメチレン)ジアミン、N−ヘプタデシル(トリメチレン)ジアミン、N−オクタデシル(トリメチレン)ジアミン;
【0049】
N−ドデシル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−トリデシル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−テトラデシル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−ペンタデシル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−ヘキサデシル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−ヘプタデシル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−オクタデシル−ビス(トリメチレン)トリアミン;
【0050】
N−ドデシル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−トリデシル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−テトラデシル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−ペンタデシル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−ヘキサデシル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−ヘプタデシル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−オクタデシル−トリス(トリメチレン)テトラミン;
【0051】
N−ドデシル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−トリデシル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−テトラデシル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−ペンタデシル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−ヘキサデシル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−ヘプタデシル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−オクタデシル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン;
【0052】
N−ドデシル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−トリデシル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−テトラデシル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−ペンタデシル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−ヘキサデシル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−ヘプタデシル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−オクタデシル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン;
【0053】
N−ドデシル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−トリデシル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−テトラデシル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−ペンタデシル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−ヘキサデシル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−ヘプタデシル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−オクタデシル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン;
【0054】
N−ドデセニルエチレンジアミン、N−トリデセニルエチレンジアミン、N−テトラデセニルエチレンジアミン、N−ペンタデセニルエチレンジアミン、N−ヘキサデセニルエチレンジアミン、N−ヘプタデセニルエチレンジアミン、N−オクタデセニルエチレンジアミン;
【0055】
N−ドデセニルジエチレントリアミン、N−トリデセニルジエチレントリアミン、N−テトラデセニルジエチレントリアミン、N−ペンタデセニルジエチレントリアミン、N−ヘキサデセニルジエチレントリアミン、N−ヘプタデセニルジエチレントリアミン、N−オクタデセニルジエチレントリアミン;
【0056】
N−ドデセニルトリエチレンテトラミン、N−トリデセニルトリエチレンテトラミン、N−テトラデセニルトリエチレンテトラミン、N−ペンタデセニルトリエチレンテトラミン、N−ヘキサデセニルトリエチレンテトラミン、N−ヘプタデセニルトリエチレンテトラミン、N−オクタデセニルトリエチレンテトラミン;
【0057】
N−ドデセニルテトラエチレンペンタミン、N−トリデセニルテトラエチレンペンタミン、N−テトラデセニルテトラエチレンペンタミン、N−ペンタデセニルテトラエチレンペンタミン、N−ヘキサデセニルテトラエチレンペンタミン、N−ヘプタデセニルテトラエチレンペンタミン、N−オクタデセニルテトラエチレンペンタミン;
【0058】
N−ドデセニルペンタエチレンヘキサミン、N−トリデセニルペンタエチレンヘキサミン、N−テトラデセニルペンタエチレンヘキサミン、N−ペンタデセニルペンタエチレンヘキサミン、N−ヘキサデセニルペンタエチレンヘキサミン、N−ヘプタデセニルペンタエチレンヘキサミン、N−オクタデセニルペンタエチレンヘキサミン;
【0059】
N−ドデセニルヘキサエチレンヘプタミン、N−トリデセニルヘキサエチレンヘプタミン、N−テトラデセニルヘキサエチレンヘプタミン、N−ペンタデセニルヘキサエチレンヘプタミン、N−ヘキサデセニルヘキサエチレンヘプタミン、N−ヘプタデセニルヘキサエチレンヘプタミン、N−オクタデセニルヘキサエチレンヘプタミン;
【0060】
N−ドデセニルプロピレンジアミン、N−トリデセニルプロピレンジアミン、N−テトラデセニルプロピレンジアミン、N−ペンタデセニルプロピレンジアミン、N−ヘキサデセニルプロピレンジアミン、N−ヘプタデセニルプロピレンジアミン、N−オクタデセニルプロピレンジアミン(N−オレイルプロピレンジアミン);
【0061】
N−ドデセニルジプロピレントリアミン、N−トリデセニルジプロピレントリアミン、N−テトラデセニルジプロピレントリアミン、N−ペンタデセニルジプロピレントリアミン、N−ヘキサデセニルジプロピレントリアミン、N−ヘプタデセニルジプロピレントリアミン、N−オクタデセニルジプロピレントリアミン;
【0062】
N−ドデセニルトリプロピレンテトラミン、N−トリデセニルトリプロピレンテトラミン、N−テトラデセニルトリプロピレンテトラミン、N−ペンタデセニルトリプロピレンテトラミン、N−ヘキサデセニルトリプロピレンテトラミン、N−ヘプタデセニルトリプロピレンテトラミン、N−オクタデセニルトリプロピレンテトラミン;
【0063】
N−ドデセニルテトラプロピレンペンタミン、N−トリデセニルテトラプロピレンペンタミン、N−テトラデセニルテトラプロピレンペンタミン、N−ペンタデセニルテトラプロピレンペンタミン、N−ヘキサデセニルテトラプロピレンペンタミン、N−ヘプタデセニルテトラプロピレンペンタミン、N−オクタデセニルテトラプロピレンペンタミン;
【0064】
N−ドデセニルペンタプロピレンヘキサミン、N−トリデセニルペンタプロピレンヘキサミン、N−テトラデセニルペンタプロピレンヘキサミン、N−ペンタデセニルペンタプロピレンヘキサミン、N−ヘキサデセニルペンタプロピレンヘキサミン、N−ヘプタデセニルペンタプロピレンヘキサミン、N−オクタデセニルペンタプロピレンヘキサミン;
【0065】
N−ドデセニルヘキサプロピレンヘプタミン、N−トリデセニルヘキサプロピレンヘプタミン、N−テトラデセニルヘキサプロピレンヘプタミン、N−ペンタデセニルヘキサプロピレンヘプタミン、N−ヘキサデセニルヘキサプロピレンヘプタミン、N−ヘプタデセニルヘキサプロピレンヘプタミン、N−オクタデセニルヘキサプロピレンヘプタミン;
【0066】
N−ドデセニル(トリメチレン)ジアミン、N−トリデセニル(トリメチレン)ジアミン、N−テトラデセニル(トリメチレン)ジアミン、N−ペンタデセニル(トリメチレン)ジアミン、N−ヘキサデセニル(トリメチレン)ジアミン、N−ヘプタデセニル(トリメチレン)ジアミン、N−オクタデセニル(トリメチレン)ジアミン;
【0067】
N−ドデセニル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−トリデセニル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−テトラデセニル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−ペンタデセニル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−ヘキサデセニル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−ヘプタデセニル−ビス(トリメチレン)トリアミン、N−オクタデセニル−ビス(トリメチレン)トリアミン;
【0068】
N−ドデセニル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−トリデセニル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−テトラデセニル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−ペンタデセニル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−ヘキサデセニル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−ヘプタデセニル−トリス(トリメチレン)テトラミン、N−オクタデセニル−トリス(トリメチレン)テトラミン;
【0069】
N−ドデセニル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−トリデセニル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−テトラデセニル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−ペンタデセニル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−ヘキサデセニル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−ヘプタデセニル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン、N−オクタデセニル−テトラキス(トリメチレン)ペンタミン;
【0070】
N−ドデセニル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−トリデセニル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−テトラデセニル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−ペンタデセニル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−ヘキサデセニル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−ヘプタデセニル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン、N−オクタデセニル−ペンタキス(トリメチレン)ヘキサミン;
【0071】
N−ドデセニル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−トリデセニル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−テトラデセニル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−ペンタデセニル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−ヘキサデセニル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−ヘプタデセニル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン、N−オクタデセニル−ヘキサキス(トリメチレン)ヘプタミン;およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0072】
本発明の潤滑油組成物において、(C)成分のポリアミン化合物の含有量は、鉄材に対する貼り付き性に優れる点から、組成物全量基準で、0.001質量%以上であり、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.008質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。また、得られる潤滑油組成物の貯蔵安定性に優れる点から、0.5質量%以下であり、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下である。
【0073】
また、組成物全量基準の(B)成分と(C)成分の配合量(質量%)において、(B)成分と(C)成分の比率は、50:1〜5:1が好ましく、20:1〜10:1がより好ましい。
【0074】
本発明の潤滑油組成物には、さらにその性能を高めるために、あるいは潤滑油組成物、特に工作機械の摺動面用潤滑油組成物として必要な性能を付与するために潤滑油分野において公知の添加剤を配合することができる。
【0075】
かかる添加剤としては、例えば、1価アルコール又は多価アルコール、1塩基酸又は多塩基酸、前記アルコールと前記酸とのエステル、(B)成分および(C)成分以外のアミン、アルカノールアミン等のアミン化合物等の油性剤、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系化合物、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N’−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系化合物等の酸化防止剤;ベンゾトリアゾールやアルキルチアジアゾール等の金属不活性化剤;シリコーン油、フルオロシリコン油等の消泡剤;硫黄を含有するりん酸エステル化合物;アルケニルコハク酸、ソルビタンモノオレート等のさび止め添加剤;ポリメタクリレート等の流動点降下剤;ポリメタクリレート、ポリブテン、ポリアルキルスチレン、オレフィンコポリマー、スチレン−ジエンコポリマー、スチレン−無水マレイン酸コポリマー等の粘度指数向上剤などが挙げられる。
【0076】
本発明の潤滑油組成物は、低摩擦性、長期使用時における低摩擦性の維持、鋳鉄に対する貼り付き性、耐ステイン性に優れるため、低摩擦性や耐ステイン性が要求される様々な用途で好適に使用することができる。中でも、工作機械等のすべり案内面(摺動面)用の潤滑油として使用した場合に、本発明の効果がより一層発揮される。
【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0078】
[実施例1〜9、比較例1〜8]
表1、表2の各例に示すような組成を有する各種の本発明に係る潤滑油組成物及び比較のための潤滑油組成物をそれぞれ調製した。
各組成物の調製に用いた成分は、以下のとおりである。なお、本発明でいう粘度指数とは、JIS K 2283−1993に準拠して測定された粘度指数を意味する。また、飽和炭化水素成分含有量とは、Analytical Chemistry第44巻第6号(1972)第915〜919頁“Separation of High-Boiling Petroleum Distillates Using Gradient Elution Through Dual-Packed(Silica Gel-Alumina Gel) Adsorption Columns”に記載されたシリカ−アルミナゲルクロマト分析法に準拠し、但し、この方法において飽和炭化水素成分の溶出に使用されるn−ペンタンの代わりにn−へキサンを使用する方法により分取される飽和炭化水素成分の試料全量に対する質量百分率を意味する。
【0079】
潤滑油基油:
溶剤脱ろう、水素化精製したパラフィン系鉱油(粘度指数101、硫黄分0.51質量%、飽和炭化水素分65.6容量%、40℃における動粘度68.7mm/s、引火点248℃、15℃における密度0.882g/cm
【0080】
(A)リン化合物
A1:モノn-オクチルアシッドホスフェートとジn−オクチルアシッドホスフェートの混合物(リン含有量:11.6質量%)
A2:オレイルハイドロジェンホスファイト
A3:トリフェニルホスファイト
A4:トリクレジルホスフェート(TCP)
【0081】
(B)モノアミン化合物
B1:2−エチルヘキシルアミン
B2:ジ−2−エチルヘキシルアミン
B3:ラウリルアミン
【0082】
(C)ポリアミン化合物
C1:N−オレイルプロピレンジアミン
C2:N−ラウリルペンタエチレンヘキサミン
【0083】
次に、実施例1〜9及び比較例1〜8の各潤滑油組成物について以下の試験を行った。
【0084】
(摩擦特性試験)
図1は摩擦特性評価試験に用いた摩擦係数測定システムを示す概略構成図である。図1中、ベッド6上にはロードセル5を介して連結されたテーブル1及び可動治具4が配置されており、さらにテーブル1上には、加工工具の代用物としてのおもり9が配置されている。テーブル1及びベッド6はいずれも鋳鉄からなるものである。また、可動治具4は軸受部を有するもので、当該軸受部は送りネジ3を介してA/Cサーボモータ2に連結されている。A/Cサーボメータ2により送りネジ3を動作させることで、可動治具4を送りネジ3の軸方向(図中の矢印方向)に往復運動させることができる。さらに、ロードセル5はコンピュータ7と、コンピュータ7及びA/Cサーボメータ2はそれぞれ制御板8と電気的に接続されており、これにより可動治具4の往復運動の制御及びテーブル1と可動治具4との間の荷重の測定を行うことができる。
このような摩擦係数測定システムにおいて、ベッド6の上面に潤滑油組成物を滴下し、おもり9の選定によりテーブル1とベッド6との間を面圧200kPaに調整した後、送り速度0.1mm/min、送り長さ15mmで可動治具4を往復運動させた。このときのテーブル1と可動治具4との間の荷重をロードセル5(荷重計)により測定し、得られた測定値に基づいて案内面(テーブル1/ベッド6=鋳鉄/鋳鉄)の摩擦係数を求めた。なお、上記試験は慣らし運転を3回行った後に行った。各潤滑油組成物の摩擦係数を表1、表2に示す。
【0085】
(長期使用時の摩擦特性試験)
上記の摩擦試験を終了させた後、送り速度500mm/minにてベッドの稼動範囲上を144時間往復運動させた後、再度同様の条件にて摩擦特性を評価した。摩擦係数が0.1以下を合格とした。
【0086】
(鋳鉄貼り付き性能試験)
上端部に孔を開けたJIS G5501に規定する鋳鉄の試験片(FC300、4cm×2cm、厚さ3.0mm、十点平均粗さRz約3.5μm)をメタノールで脱脂したのち重量(W)を測定しておき、その試験片を試料油に浸漬して引き上げ、上端部の孔に針金を通し空中に吊り下げて1時間後の重量(W)と24時間後の重量(W24)を測定した。
鋳鉄貼り付き性能は下式に示すように、1時間経過後の試料油の重量に対する24時間経過後の試料油の重量の百分率(重量%)で評価した。65重量%以上を合格とした。
鋳鉄貼り付き性能(重量%)=(W24−W)/(W−W)×100
【0087】
(ステイン性能試験)
JIS G3141に規定する冷間圧延鋼板の試験片(SPC材、7cm×7cm、厚さ0.2mm、80番ダル仕上げ)をメタノールで脱脂したのち、試験片の表面に試料油を0.2cc滴下し、その上に同じ材質・形状の試験片を載せて試料油を挟み、100gのおもりを載せて82℃で静置した。24時間経過後の試験片を溶剤で洗浄した後、外観を目視により観察して耐ステイン性能を評価した。表面状態により次のように評価した。
○:変色なし
△:やや変色する傾向あり
×:明らかに変色あり
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
表1、2に示した結果から明らかなように、実施例1〜9の潤滑油組成物は、比較例1〜8と比較して、低摩擦係数が低く、長期使用時にも低摩擦性能が維持でき、鋳鉄貼り付き性が良好で、且つステイン性能も満足できる性能を兼ね備えていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の潤滑油組成物は、低摩擦性、長期使用時における低摩擦性の維持、鋳鉄に対する貼り付き性、耐ステイン性に優れており、工作機械の動作の安定化、長寿命化などの点で非常に有用であり、特に工作機械のすべり案内面用として好適である。
【符号の説明】
【0092】
1…テーブル、2…A/Cサーボメータ、3…送りネジ、4…可動治具、5…ロードセル、6…ベッド、7…コンピュータ、8…制御盤、9…おもり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油に、
(A)下記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルおよび下記一般式(2)で表される亜リン酸エステルの中から選ばれる1種以上のリン化合物を組成物全量基準で0.01〜2質量%、
(RO)P(=O)(OH)3−a ・・・・・・(1)
(式(1)中、Rは炭素数2〜24の炭化水素基を示し、aは1又は2である。aが2の場合、Rは同一であっても異なってもよい。)
(RO)P(OH)3−b ・・・・・・(2)
(式(2)中、Rは炭素数2〜24の炭化水素基を示し、bは1〜3の整数を示す。bが2又は3の場合、Rは同一であっても異なってもよい。)
(B)分岐鎖型のアルキル基又は/及び分岐鎖型のアルケニル基を1〜3個有する脂肪族モノアミン化合物を組成物全量基準で0.01〜2質量%、および
(C)下記一般式(3)で表されるポリアミン化合物を組成物全量基準で0.001〜0.5質量%
−(NH−R)c−NH2 ・・・・・・(3)
(式(3)中、Rは炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、Rは炭素数2〜4の2価の飽和炭化水素基を表し、cは1〜8の整数を表す。)
を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
工作機械のすべり案内面に用いられることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−202680(P2010−202680A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46470(P2009−46470)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】