説明

潤滑液の酸化安定性測定方法

本発明は、試験される潤滑液の試料を反応容器内に導入する工程、触媒作用量の触媒を該反応容器に導入する工程、該容器を潤滑液の酸化温度まで加熱し、そしてこの温度を維持する工程、一定の流量で該容器を通して反応の過程にわたって酸素含有ガスを送り込む工程、一定の流量で該容器を通して特定の時間の間、二酸化窒素を含むガスを送り込む工程、該反応容器に特定の真空を印加し、且つ維持する工程、該混合物を特定の時間の間、反応させる工程、酸化した潤滑液の粘度を測定する工程を含む、潤滑液の酸化安定性測定方法に関する。さらには、本発明は潤滑液の酸化安定性の測定装置について記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑液の酸化安定性測定方法に関する。
【0002】
エンジン潤滑配合物候補がAPI(米国石油協会)およびILSAC(国際潤滑油標準化承認委員会)規格を満たすことを認証するために、実施し、合格しなければならないいくつかのASTMエンジンシーケンス試験がある。それらの試験は非常に高価で且つ時間がかかる。従って、可能であればコスト上昇および新カテゴリー開発の複雑性を制御するために実験室ベンチを潤滑剤認証工程に追加することが望ましい。
【0003】
有意義な試験、例えば下記に引用されているものの開発が試みられた事例はある。しかし、以下の事例はどのエンジンオイル規格にも用いられていない。
【0004】
例えば、Glenn A.Mazzamaro,"Using Laboratory Tests to Predict Oxidation in Today’s Engines",Lubridcating Oil, Vol.19, No.6, 2004, p6−11は前エージング工程を含む特別な酸化試験を記載している。酸素ガスは潤滑液の酸化試験に使用される。さらには、Mazzamaroは様々な公知のベンチ酸化試験を概説しており、且つそこでシーケンスIIIEへの選別試験として1994年の出版物内に参照されている"VIT"(粘度増加試験)に焦点を合わせている。シーケンスIIIE試験は1988年に開発され、そしてより厳しいシーケンスIIIF(2001)によって置き換えられ、そして後にはさらにより厳しいシーケンスIIIG(2004)によって置き換えられている。しかしながら、シーケンスIIIGあるいはIIIGAによるエージングはMazzamaroの文献内に言及されていない。さらには、上述のように、酸素ガスが潤滑液の酸化に使用される。
【0005】
Mazzamaroによって概説された典型的な酸化試験がS.H.Roby,"Development of a Bench Test to Predict Oxidative Viscosity Thickening in the Sequence IIIG Engine Test",SAE Technical Paper Series 2004−01−2985内に言及されている。酸素ガスが潤滑剤の酸化試験に使用される。Robyの文献は窒素酸化物の使用に言及していない。さらには、Robyの試験とシーケンスIIIGエンジン試験との相関は乏しい。
【0006】
窒素酸化物ガスを潤滑剤成分の酸化安定性の測定に用いる使用は、DeBarros Bouchet(M.I. DeBarros Bouchet et al., "Mechanism of the MoS2 formation by MoDTC in the presence of ZnDTP: effect of oxidative degradation", Wear, (2005) 1643−1650)およびJ.M.Martin(J.M.Martin et al., "Effect of oxidative degradation on the mechanism of friction reduction by MoDTC", Boundary and Mixed Lubrication: Science and Applications, D.Dowsen et al. (Editors)Elsevier Science 2002)によって言及されている。しかしながら、DeBarros BouchetおよびMartinの文献はMoDTCの酸化分解および摩擦緩和の最終的な減少、ひいては燃料の経済性改善に関する。該実験が窒素酸化物を"ブローバイガス"として使用している一方、該研究はより高いあるいは低い温度での使用済みオイルのレオロジーの予想にも、シーケンスIIIGエンジン試験にも関連していない。実際には、それは完全に異なる主題、即ち使用オイルのレオロジーによって予想されるエンジンオイルの頑強性よりも燃料の経済性に関する。実際上の点では、これは長いオイルドレイン間隔に相当する長い潤滑剤寿命に換言される。
【0007】
先行技術を考慮して、本発明の課題は潤滑液の酸化安定性を測定するための単純で安価な方法を提供することである。さらには、シーケンスIIIGエンジン試験のレオロジーの結果が予想できるように、潤滑液の酸化安定性の測定方法を提供することが本発明の課題である。
【0008】
これら並びに序言の部分から容易に導き出されるあるいは生ずる明白に言及されていない他の目的は、本請求項1による潤滑液の酸化安定性の測定方法によって解決される。本発明による方法の適切な変法を従属請求項内に記載する。
【0009】
前記の潤滑液の酸化安定性の測定方法は、シーケンスIIIGエンジン試験のレオロジーの結果の予想において予想外の改善を提供する。本発明の方法は、シーケンスIIIGエンジン試験の結果を測定するために単純且つ安価な工程を提供する。
【0010】
同時に、多数の他の利点が本発明による方法によって実現できる。それらの中では:
本方法は比較的短時間で実施できる。
【0011】
前記の潤滑液の酸化安定性の測定方法は非常に少量の潤滑液のみを必要とする。
【0012】
本発明による方法はシーケンスIIIGエンジンエージング工程よりも複雑ではない。その結果、該方法を半自動化されたやり方で、且つ高度に熟練した人員がいなくても実施できる。
【0013】
本発明は潤滑液の酸化安定性の測定方法において、
試験される潤滑液の試料を反応容器内に導入する工程、
触媒作用量の触媒を該反応容器に導入する工程、
該容器を潤滑液の酸化温度まで加熱し、そしてこの温度を維持する工程、
一定の流量で該容器を通して反応の過程にわたって酸素を含むガスを送り込む工程、
一定の流量で該容器を通して特定の時間の間、二酸化窒素を含むガスを送り込む工程、
該反応容器に特定の真空を印加し、且つ維持する工程、
該混合物を特定の時間の間、反応させる工程、
酸化した潤滑液の粘度を測定する工程
を含む方法を提供する。
【0014】
潤滑液の酸化安定性の測定に使用される反応容器は当該技術分野では公知である。それらの容器は試験条件の下で安定な任意の材料で製造されていてよい。有用な材料は、例えばガラス、特別なプラスチック、金属あるいはステンレス鋼である。さらには、酸化容器は潤滑液の揺動あるいは攪拌のための手段を装備している。
【0015】
潤滑液の酸化安定性の測定のために、該容器を潤滑液に所望される反応温度に加熱する。酸化温度を所望の酸化苛酷度に達するように選択できる。好ましくは、酸化温度は140℃〜220℃、より好ましくは150℃〜200℃、および最も好ましくは160℃〜180℃の範囲である。好ましい実施態様によれば、約170℃の酸化温度を使用できる。試料を反応容器に導入した後、加熱を開始できる。
【0016】
本発明の好ましい実施態様によれば、該容器の加熱を減圧下で実施できる。減圧を加熱前および/または加熱の間に適用できる。好ましくは、減圧は0.1MPaあるいはそれ未満、より好ましくは0.08MPaあるいはそれ未満である。好ましい実施態様によれば、減圧は0.05〜0.07MPaの範囲、より好ましくは0.057〜0.064MPaの範囲、および最も好ましくは0.061〜0.063MPaである。
【0017】
潤滑液を酸化するために触媒を使用できる。例えば、該触媒を潤滑液と混合してから試料を反応容器に導入できる。好ましくは、該触媒は金属、例えば銅、鉄を含む。好ましい実施態様において、鉄フェロセンが好ましい触媒であり、なぜならそれは可溶性の液体で且つエンジン摩耗からの金属であるからである。
【0018】
好ましくは、金属触媒の量は酸化される試料の総質量に対して5〜25ppmの範囲、より好ましくは10〜20ppmの範囲であってよい。
【0019】
本発明の方法は、一定の流量で該容器を通して反応の過程にわたって酸素含有ガスを送り込む工程を含む。通常、有効量の酸素を含む全てのガスを使用できる。本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも5容積%、より好ましくは少なくとも10容積%の酸素を含むガスを使用する。好ましくは、酸素含有ガスは15〜30容積%、より好ましくは20〜22容積%の酸素を含む。さらには、酸素含有ガスは追加のガス、例えば不活性ガス、例えば窒素(N2)、および希ガス、例えばアルゴン、ネオン、ヘリウムを含んでよい。好ましくは、乾燥空気を酸素含有ガスとして使用できる。
【0020】
該酸素含有ガスを一定の流量で該容器に送り込む。一定の流量は、酸化容器内の酸素含有ガスの量が反応の過程にわたって、実質的に一定の値に保たれていることを意味する。しかしながら、試験結果に著しい影響を与えない多少の変化は"一定の流量"の表現の意味に含まれるべきである。好ましくは、酸素含有ガスの流量は、反応を通して、約1リットルの反応容器の容積に対して、120〜240ミリリットル毎分の範囲、より好ましくは150〜200ミリリットル毎分、およびより好ましくは180〜190ミリリットル毎分の範囲である。
【0021】
本発明の方法によれば、一定の流量で該容器を通して特定の時間の間、二酸化窒素含有ガスを送り込んで、強力なガス状酸化触媒を提供する。二酸化窒素含有ガスは好ましくは少なくとも1質量%、より好ましくは50質量%、あるいはさらによりこのましくは90質量%あるいはそれより多い二酸化窒素を含む。当業者には二酸化窒素が通常、酸化窒素と酸素との混合物と等価であることが公知である。従って、適切な混合物も反応容器に添加できる。さらには、二酸化窒素含有ガスは追加のガス、例えば不活性ガス、例えば窒素(N2)、および希ガス、例えばアルゴン、ネオン、ヘリウムを含んでよい。
【0022】
二酸化窒素含有ガスを昇温の後に送り込み、そしてその後、特定の時間の間、反応温度での反応容器の余熱によって継続する。"余熱"は該容器が反応温度に達しており、且つ所望の温度が維持されていることを意味する。好ましくは、酸化容器は45分以内、より好ましくは30分以内で酸化温度に達する。
【0023】
潤滑液を酸化して該液の酸化安定性を測定するために、二酸化窒素ガスを含むガスを一定の流量で該容器に送り込む。一定の流量は、酸化容器内の二酸化窒素含有ガスの量が特定の時間の間、実質的に一定の値に保たれていることを意味する。しかしながら、試験結果に著しい影響を与えない多少の変化は"一定の流量"の表現の意味に含まれるべきである。好ましくは、二酸化窒素を含むガスの流量は、約1リットルの反応容器の容積に対して、0.14〜0.2ミリリットル毎時の範囲、より好ましくは0.15〜0.18ミリリットル毎時の範囲である。二酸化窒素を含むガスを特定の時間の間送り込む。好ましくは、二酸化窒素を含むガスを送り込むための特定の時間は、5〜30時間の範囲、より好ましくは8〜15時間の範囲、およびより好ましくは11〜13時間の範囲である。
【0024】
好ましくは、反応容器に送り込まれる二酸化窒素ガスの総量は、潤滑液1グラムあたり0.0043〜0.0063モルの範囲、より好ましくは潤滑液1グラムあたり0.004697〜0.00564モルの範囲である。
【0025】
好ましくは、反応容器に送り込まれる二酸化窒素の総量は、試験開始時の潤滑液の総量に対して、0.1〜5質量%の範囲、より好ましくは0.5〜3質量%、より好ましくは1〜2質量%の範囲、およびより好ましくは1.4〜1.5質量%の範囲である。
【0026】
本発明の好ましい実施態様によれば、該ガスの該容器への送り込みは減圧下で実施できる。好ましくは、該減圧は0.1MPaあるいはそれ未満、より好ましくは0.08MPaあるいはそれ未満である。好ましい実施態様によれば、該減圧は0.05〜0.07MPaの範囲、より好ましくは0.057〜0.064MPaの範囲、および最も好ましくは0.061〜0.063MPaである。
【0027】
二酸化窒素を含むガスおよび酸素含有ガスを別々あるいは混合物として反応容器に供給できる。好ましくは、両方のガスを混合して二酸化窒素含有ガスの良好な分布を実現する。
【0028】
本方法は、反応容器に特定の真空を印加し、且つ維持する工程を含む。従って、酸化反応を減圧下で実施する。好ましくは、該減圧は0.1MPaあるいはそれ未満、より好ましくは0.08MPaあるいはそれ未満である。好ましい実施態様によれば、該減圧は0.05〜0.07MPaの範囲、より好ましくは0.057〜0.064MPaの範囲、および最も好ましくは0.061〜0.063MPaである。
【0029】
驚異的なことに、エンジンの動作は減圧を適用することで擬態できる。かかる工程はいかなる他の先行技術によっても示唆されていない。驚くべきことに、詳細な分析はシーケンスIIIGが実際にエンジンに充填された潤滑剤の約40〜50%を揮発させることを明らかにした。即ち、100時間のシーケンスIIIG工程の最後には、潤滑液の50〜60%のみがエンジン内に残っている。本発明もちょうどシーケンスIIIGと同様に、充填した潤滑液の約40〜50%を除去した。潤滑剤試験分野において真空を使用する他のベンチ酸化調整工程はなく、且つ、シーケンスIIIGのエンジン工程の結果を再現できる他のベンチ酸化工程はない。本方法の結果は、当業者にとって予知できるものではなかった。
【0030】
本発明者らは驚くべきことに、より少ない粘性、揮発性成分が、シーケンスIIIGエンジン試験工程からの使用済みオイルのレオロジーの再現に関して好ましくない影響を有することを見出した。
【0031】
反応容器内における潤滑液の酸化を特定の時間の間、実施する。好ましくは特定の時間は30〜50時間、より好ましくは38〜42時間の範囲である。
【0032】
好ましくは、ガスを反応容器に送り込んでいる間、および/または酸化容器内での潤滑液の加熱の間、および真空の適用の間、潤滑液を攪拌あるいは揺動できる。
【0033】
潤滑液の酸化安定性を測定するために、酸化した潤滑液の粘度を測定する。好ましくは、ASTM D 4684に従って潤滑液のミニロータリー粘度(Mini−Rotary Viscosity)を測定し、且つASTM D 445に従って潤滑液の40℃での動粘度を測定する。それらのレオロジー特性を、酸化を実施した前後で測定できる。好ましくは、触媒と一緒に特定の温度で真空下にて反応容器内に二酸化窒素および酸素含有ガスを送り込むことによって潤滑液を酸化する。酸化反応および揮発時間の終わりに得られる潤滑液は酸化された潤滑液としてみなされる。好ましくは、潤滑液の低温でのMRV粘度およびより高い温度、例えば40℃での動粘度における、酸化および揮発によって誘発された変化を測定する。
【0034】
本発明の方法は、あらゆる種類の潤滑液の分析において実施できる。それらの液体は、特にエンジン潤滑剤を含むが、他の機能性液、例えばトランスミッション液あるいは作動液さえも含んでよい。それらの液体は当該技術分野でよく知られており、且つ例えばUllmannの工業化学百科事典、CD−ROMの第5版、1997内、例えば"潤滑剤および関連製品(lubricants and related products)"の項目下に記載されている。
【0035】
好ましい潤滑液は、米国石油協会(API)によって、全米自動車技術者協会(SAE)によって、および国際潤滑油標準化承認委員会(ILSAC)によって分類される。
【0036】
潤滑剤の原材料はAPIによって5つのグループに分類される。モーターオイルはさらにそれらのAPIサービス分類によって分類される。該APIサービス分類は2つの包括的な格付け:サービス用のS(ガソリンエンジンを使用する典型的な乗用車および軽トラック)、および商用のC(典型的なディーゼル機器)を有する。最新のAPIサービス規格名は、ガソリンエンジン用のSMである。
【0037】
ILSACによる最新規格、GF−4が2004年に認可された。シーケンスIIIGは、1996/1997 V−6 GM 3800 CCシリーズIIエンジン3の125馬力、3600rpmおよび150℃のオイル温度での100時間の運転を必要とする。該試験は20時間ずつに5分割され、それぞれの後、サンプリングする。
【0038】
シーケンスIIIGAはスラッジおよびワニスの付着、オイル消費、およびエンジン摩耗に関する試験、および40℃でのオイル増粘(KV)に関する試験を含む。さらには、シーケンスIIIGAは元のSAE Wグレードの吸入排出温度での、あるいは5℃上でのオイル増粘の測定を含む(MRV)。40℃で許容される最大動粘度の上昇は150%である。経年オイルの低温での粘度を、ASTM D4684(MRV TP−1)によって測定する。試験試料の最後のMRV TP−1粘度は元のグレードあるいは次のより高いグレードの要求に合致しなければならない。関連する参考文献は、ASTM D4485−03a"エンジンオイル性能のための標準仕様(Standard Specification for Performance of Engine Oils)"である。
【0039】
シーケンスIIIG試験は、GF−3およびAPI SLオイルに使用された従来のIIIF試験より約50%困難である(例えばD.McFall,Lubes and Greases Magazine, January 2005,p.2.3を参照)。シーケンスIIIF試験はASTM D 6984−5a"シーケンスIIIFにおける自動車エンジンオイルの評価用標準試験方法、火花点火機関(Standard Test method for valuation of Automotive Engine Oils in the Sequence IIIF, Spark−Ignition Engine)"内に記載されている。
【0040】
好ましい潤滑液は少なくとも鉱油および/または合成油および/または生物由来油を含む。
【0041】
鉱油は当該技術分野でよく知られており、且つ市販されている。それらは一般に蒸留、および/または精製および随意に追加的な純化および加工方法よって石油あるいは原油から得られ、特に原油あるいは石油のより高沸点の留分が鉱油の概念に該当する。一般に、該鉱油の沸点は、5000Paで200℃より高く、好ましくは300℃より高い。頁岩油の低温蒸留、硬質炭のコークス化、空気除外下での亜炭の蒸留並びに硬質炭あるいは亜炭の水素化による製造もまた可能である。好ましくは、潤滑液はAPIグループI、IIおよび/またはIIIあるいはそれらの組み合わせからの鉱油に基づく。
【0042】
生物由来油も植物由来の原材料(例えばホホバ油、ナタネ(キャノーラ)油、ヒマワリ油およびダイズ油)あるいは動物由来の原材料(例えば牛脂あるいはニートフットオイル)から製造できる。従って、それぞれの場合、起源によって鉱油は種々の量の芳香族、環式、分岐鎖および直鎖の炭化水素を示す。
【0043】
合成油は、数ある物質の中で、ポリアルファオレフィン、有機酸エステル、例えばカルボン酸エステルおよびリン酸エステル;有機エーテル、例えばシリコーンオイルおよびポリアルキレングリコール;および合成炭化水素、特にポリオレフィンである。それらは大半が鉱油より幾分高価ではあるが、しかしそれらは性能に関して利点を有する。説明のために、基油タイプの5 API分類(API:米国石油協会)が参照される。
【0044】
潤滑液は当該技術分野でよく知られるさらなる添加剤、例えば粘度指数向上剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、腐食抑制剤、洗浄剤、分散剤、EP添加剤、脱泡剤、摩擦低減剤、流動点降下剤、染料、着臭剤、および/または解乳化剤を含んでよい。それらの添加剤を慣例的な量で使用する。通常、潤滑液は0〜50質量%、好ましくは0.1〜20質量%、およびより好ましくは0.2〜10質量%の添加剤を含有する。
【0045】
本発明を実施する好ましい装置は、反応容器、例えば潤滑剤の試料を含有するための一体型の加熱素子を有する1リットルの反応容器、
該容器を潤滑剤の酸化温度に加熱するための手段、
潤滑剤を混合するための手段、
酸素を含むガスを一定の流量で液面下の供給路において該容器を通してバブリングする手段、
二酸化窒素ガスを一定の流量で液面下の供給路において該容器を通して特定の時間の間、バブリングする手段、
一定の流量で該容器を減圧し、且つ得られる留出物を集める手段、
触媒作用量の触媒、例えば鉄フェロセンを潤滑剤に導入する手段、
二酸化窒素液を測定する手段、
反応の経過時間を測定および制御する手段
を含む。
【0046】
好ましい実施態様によれば、一体型の加熱素子を有する反応容器は、様々なねじ込み型のポートを有するステンレス鋼の平坦な頭部、攪拌機の回転軸周りの密封を提供するためのグランドパッキンハウジング、該頭部および容器を実験用フードの骨組みに支持させるロッド、および該容器を頭部に接続するクランプを含んでよい。
【0047】
好ましくは、加熱手段は反応温度を維持するためのオン/オフアルゴリズムを有する温度調節器、J熱電対センサー、および容器加熱素子への低電圧を維持するための電圧調節器を含んでよい。
【0048】
さらに好ましい実施態様によれば、混合手段は1分あたり一定の回転を維持できる電気モーター、および好ましくはおよそ直径65mm、高さ30mm、厚さ1.5mmを有し、且つ好ましくは8mmのロッドに取り付けられたステンレス鋼の45゜ピッチブレードの攪拌機を含んでよい。
【0049】
酸素ガスバブリング手段は、好ましくは一定の流量を維持できるガス供給路、酸素含有ガスの流量を測定するための流量計、酸素含有ガスから水分をフィルタリングするためのガス乾燥ジャー、および容器の底部に位置する高温チューブを含んでよい。
【0050】
好ましくは、二酸化窒素ガスバブリング手段は、二酸化窒素の流量を測定するためのガラス目盛管、および酸素ガスバブリング管に対して二酸化窒素の一定の流量を維持するためのステンレス鋼の絞り弁を含んでよい。
【0051】
好ましい実施態様によれば、一定の流量で減圧し、且つ留出物を集める手段は閉じられた容器の減圧下で一定の流量を実現するための充分な容量を有する真空ポンプ、酸素含有ガスの流量を測定する流量計、酸素含有ガスの流量を制御するステンレス鋼のニードルバルブ、および圧力低下を制限し、且つ留出物を集めるための正確なサイズの凝縮器および留出物を回収する手段を含んでよい。
【0052】
好ましくは、触媒の導入手段は0.0001グラムの単位で計量できる化学天秤を含んでよい。
【0053】
二酸化窒素液を測定する手段は、好ましくは装置が遮断されたときに系をベントするためのステンレス鋼のボールバルブ、二酸化窒素液の流れを制御するためのステンレス鋼のニードルバルブ、目盛ガラス管、より好ましくは12ミリリットル目盛りガラス管、二酸化窒素液を管に、あるいは二酸化窒素ガスを容器に振り分ける3ウェイプラグバルブ、および目盛りガラス管から二酸化窒素を排気する計量型ポンプを含んでよい。
【0054】
反応の経過時間を測定および制御する手段は、好ましくは60時間カウントダウン時間制御器を含んでよい。
【0055】
本発明はシーケンスIIIGエンジン試験の後に測定される粘度の変化を予想するための新規性および進歩性のある方法を提供する。シーケンスIIIGエンジン試験は当該技術分野でよく知られている(例えばILSAC GF−4を参照)。
【0056】
シーケンスIIIGエンジン試験の結果と本方法の結果との対比は驚異的に良好である。
【0057】
実施例1によって本発明を以下により詳細に説明するが、本発明を該実施例に限定するものではない。
【0058】
実施例1
酸化条件用の閉じた反応容器を、約0.061MPaの所定の目標真空度での流速を約56.66リットル毎分に設定することによって準備し(0.061MPaの真空度によって作られた面速度)、一度設定して、該容器を再度開ける。レクチャーボトルからの液体二酸化窒素を目盛りガラス管に集めるためのバルブ構成を設定する。バルブ構成をリセットし、二酸化窒素ガスを送り込むために反応器に戻す。ガラスビーカー内で下記の表に記載される200.0グラムの配合オイルを、オイルの質量に対して15ppmの鉄触媒(鉄フェロセン)と共に秤量し、且つビーカー内で混合する。オイルと触媒との混合物を反応容器に装填し、攪拌を開始し、そして反応容器を閉じる。該容器を減圧(既に設定されている)にし、空気の流れを約180ミリリットル毎分に調節し、且つタイマーを特定の反応時間、約40時間に設定する。反応を170℃に加熱するように温度調節器を設定し、且つ二酸化窒素の供給を調節して、12時間にわたって約0.16ミリリットル毎時の流量でガスを送り込む。該容器に送り込まれた二酸化窒素の全質量は約2.886グラム(1.443質量%)であった。
【0059】
ASTMリファレンスオイル438、435および434の試験結果を以下の表I、IIおよびIIIに記載する。
【0060】
表I:シーケンスIIIGおよび実験室の反応器でエージングされたオイルでの40℃でのMRV TP−1粘度および動粘度の増加の比較
【表1】

【0061】
表II:シーケンスIIIGおよび実験室の反応器でエージングされたオイルでの40℃でのMRV TP−1粘度および動粘度の増加の比較
【表2】

【0062】
表III:シーケンスIIIGおよび実験室の反応器でエージングされたオイルでの40℃でのMRV TP−1粘度および動粘度の増加の比較
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑液の酸化安定性の測定方法において、
試験される潤滑液の試料を反応容器内に導入する工程、
触媒作用量の触媒を該反応容器に導入する工程、
該容器を潤滑液の酸化温度まで加熱し、そしてこの温度を維持する工程、
一定の流量で該容器を通して反応の過程にわたって酸素を含むガスを送り込む工程、
一定の流量で該容器を通して特定の時間の間、二酸化窒素を含むガスを送り込む工程、
該反応容器に特定の真空を印加し、且つ維持する工程、
該混合物を特定の時間の間、反応させる工程、
酸化した潤滑液の粘度を測定する工程
を含む方法。
【請求項2】
酸化温度が160℃〜180℃の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合物を反応させる特定の時間が、30〜50時間の範囲であることを特徴とする、請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項4】
二酸化窒素流量が、11〜13時間にわたって0.15〜0.18ミリリットル毎時の範囲であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
酸素含有ガスの流量が、反応全体を通して180〜190ミリリットル毎分の範囲であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
容器の加熱を減圧下で実施することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ガスの送り込みを減圧下で実施することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
特定の真空度の減圧が0.061〜0.063MPaの範囲であることを特徴とする、請求項5あるいは6に記載の方法。
【請求項9】
反応容器に送り込まれる二酸化窒素の総量が、試験開始時の潤滑液の総量に対して1〜2質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
鉄フェロセンを触媒として利用することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
鉄フェロセンを潤滑液装填量に対して10〜20ppmで反応混合物に添加することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
潤滑液のミニロータリー粘度をASTM D 4684に従って測定することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
潤滑液の40℃での動粘度の増加をASTM D 445に従って測定することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
潤滑液がエンジンオイル潤滑剤あるいはトランスミッション液あるいは作動液であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法を実施するための装置において、
潤滑剤の試料を含有するための一体型の加熱素子を有する反応容器、
該容器を潤滑剤の酸化温度に加熱するための手段、
潤滑剤を混合するための手段、
酸素を含むガスを一定の流量で液面下の供給路において該容器を通してバブリングする手段、
二酸化窒素ガスを一定の流量で液面下の供給路において該容器を通して特定の時間の間、バブリングする手段、
一定の流量で該容器を減圧し、且つ得られる留出物を集める手段、
触媒作用量の触媒を潤滑剤に導入する手段、
二酸化窒素液を測定する手段、
反応の経過時間を測定および制御する手段
を含む装置。
【請求項16】
一体型の加熱素子を有する反応容器が、
様々なねじ込み型のポートを有するステンレス鋼の平坦な頭部、
攪拌機の回転軸周りの密封を提供するためのグランドパッキンハウジング、
該頭部および容器を実験用フードの骨組みに支持させるロッド、
該容器を頭部に接続するクランプ
を含むことを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
加熱手段が
反応温度を維持するためのオン/オフアルゴリズムを有する温度調節器、
J熱電対センサー、
容器加熱素子への低電圧を維持するための電圧調節器
を含むことを特徴とする、請求項15あるいは16に記載の装置。
【請求項18】
混合手段が、
1分あたり一定の回転を維持できる電気モーター、
ステンレス鋼の45゜ピッチブレードの攪拌機
を含むことを特徴とする、請求項15から17までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
酸素含有ガスバブリング手段が、
一定の流量を維持できる酸素ガス供給路、
酸素含有ガスの流量を測定するための流量計、
酸素含有ガスから水分をフィルタリングするためのガス乾燥ジャー、
容器の底部に位置する高温チューブ
を含むことを特徴とする、請求項15から18までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
二酸化窒素ガスバブリング手段が、
二酸化窒素の流量を測定するためのガラス目盛管、
酸素含有ガスバブリング管に対する二酸化窒素の一定の流量を維持するためのステンレス鋼の絞り弁
を含むことを特徴とする、請求項15から19までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
一定の流量で減圧し、且つ留出物を集める手段が、
閉じられた容器の減圧下で一定の流量を実現するための充分な容量を有する真空ポンプ、
酸素含有ガスの流量を測定する流量計、
酸素含有ガスの流量を制御するステンレス鋼のニードルバルブ、
圧力低下を制限し、且つ留出物を集めるための正確なサイズの凝縮器および該留出物を回収する手段
を含むことを特徴とする、請求項15から20までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
触媒の導入手段が、
0.0001グラムの単位で計量できる化学天秤
を含むことを特徴とする、請求項20から21までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
二酸化窒素液を測定する手段が、
装置が遮断されたときに系をベントするためのステンレス鋼のボールバルブ、
液体二酸化窒素の流れを制御するためのステンレス鋼のニードルバルブ、
目盛ガラス管、
液体二酸化窒素を管に、あるいは二酸化窒素ガスを容器に振り分ける3ウェイプラグバルブ、
目盛りガラス管から二酸化窒素を排気する計量型ポンプ
を含むことを特徴とする、請求項15から22までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
反応の経過時間を測定および制御する手段が、
60時間カウントダウン時間制御器
を含むことを特徴とする、請求項15から23までのいずれか1項に記載の装置。

【公表番号】特表2010−506178(P2010−506178A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531791(P2009−531791)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056674
【国際公開番号】WO2008/043584
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(399020957)エボニック ローマックス アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (38)
【氏名又は名称原語表記】Evonik RohMax Additives GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】