説明

濁水処理施設

【課題】施工現場への搬入作業が容易で、濁水浄化機能に優れ、使用後の撤収作業に手間がかからない濁水処理施設を提供する。
【解決手段】濁水処理施設10は、土木建設工事に伴って発生する濁水を一時的に貯留するため施工現場の地面Gの一部に形成された凹状の貯水領域11と、貯水領域11に貯留された濁水DWを濾過するため貯水領域11内に配置された濾過手段である複数の透水性土嚢12と、これらの透水性土嚢12で濾過された浄水CWを貯水領域11外へ排出する排水手段である排水経路13と、を備えている。透水性土嚢12は、透水性袋体に透水性土壌が充填された構造であり、透水性土壌は、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を透水性袋体に充填して固化させることによって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造成工事などの各種土木建設工事の現場で発生する濁水を処理するため工事現場内あるいはその付近などに構築可能な濁水処理施設に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、造成工事などの土木建設工事に伴って発生する濁水は、工事現場付近に設置された複数の沈殿施設に一旦貯留して濁水中の固形成分を沈殿させた後、その上澄み水が既存の河川や排水路へ放流されていた。しかしながら、適切な個数の沈殿施設を設置できない場合、沈殿処理が不十分となるため、固形成分を含有する水が既存の河川や排水路へ流入して、水質汚濁の原因となることがあった。
【0003】
そこで、土木建設工事に伴って発生する濁水を浄化処理することのできる「濁水用濾過装置」が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この「濁水用濾過装置」においては、可搬自在な濾過槽内が複数の仕切板によって複数の濾過室に区画され、それぞれの濾過室に所要レベルのフィルタが着脱自在に配置されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−131565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の「濁水用濾過装置」を使用する場合、当該「濁水用濾過装置」を構成する濾過槽やフィルタなどの資材を土木建設工事の施工現場に運び込まなければならないので、その作業に多大な労力と時間を要している。また、濾過槽内に形成された複数の濾過室にそれぞれ配置されているフィルタが目詰まりすると濾過機能が低下するため、フィルタの清掃や交換などのメンテナンスを定期的に行う必要がある。さらに、工事終了後は、この「濁水用濾過装置」を施工現場から撤収しなければならないので、その作業にも手間を要している。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、施工現場への搬入作業が容易で、濁水浄化機能に優れ、使用後の撤収作業に手間がかからない濁水処理施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の濁水処理施設は、土木建設工事に伴って発生する濁水を一時的に貯留するため地面の一部に形成された貯水領域と、前記貯水領域に貯留された濁水を濾過するため前記貯水領域に配置された濾過手段と、前記濾過手段で濾過された浄水を前記貯水領域外へ排出する排水手段と、を備え、前記濾過手段として、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成した透水性土壌を用いたことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成した透水性土壌を用いた濾過手段を、土木建設工事の施工現場の地面の一部に形成した貯水領域に配置し、濾過手段で濾過された浄水を貯水領域外へ排出する排水手段を設けることによって濁水処理施設を形成することができる。この場合、施工現場で入手した土材と、外部から施工現場へ運び込んだセメント系固化材及び団粒化剤との混合物を固化させれば濾過手段を形成することができるため、外部から施工現場へ持ち込まなければならない資材は比較的少なくて済み、搬入作業が容易である。
【0009】
また、土材とセメント系固化材とを混合したものに団粒化剤を添加すると、イオンの作用により、土材の粒子とセメント系固化材の粒子とが立体的な団粒構造を形成し、混合物中に連続した空隙が発生するため、前記混合物を固化させた透水性土壌で形成された濾過手段は優れた濁水浄化機能を発揮する。また、使用後の貯水領域は埋め戻すことができ、濾過手段は施工現場に埋設することができるため、工事終了後、施工現場から搬出すべき資材が極めて少なく撤収作業にも手間がかからない。
【0010】
ここで、前記濾過手段として、前記透水性土壌が透水性袋体に充填された透水性土嚢を用いることが望ましい。このような構成とすれば、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を透水性袋体に充填して固化させる、という比較的簡単な作業で透水性土嚢を形成することができ、貯水領域への配置も容易である。
【0011】
一方、前記排水手段として、前記浄水を地中に埋設された排水管へ送給可能な排水経路を設けることが望ましい。このような構成とすれば、濾過手段で濾過された浄水を、高低差を利用して貯水領域外へ排出することができるため、電動式ポンプなどの送水手段が不要となり、構造の簡素化及び省エネルギを図ることができる。
【0012】
この場合、周壁の少なくとも一部が透水性を有する管状体を用いて前記排水経路を形成することもできる。このような構成とすれば、濾過手段で濾過された浄水を、管状体の周壁を通過させて当該管状体内へ導入することが可能となり、排水導入領域を広く確保することができるため、排水効率を高めることができる。
【0013】
さらに、前記団粒化剤として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を用いることができる。このような団粒化剤を用いれば、比較的強固な団粒構造を形成することができるため、外力や自重による濾過手段の損傷や破壊を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、施工現場への搬入作業が容易で、濁水浄化機能に優れ、使用後の撤収作業に手間がかからない濁水処理施設を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態である濁水処理施設を示す垂直断面図、図2は図1に示す濁水処理施設を示す平面図、図3は図1に示す濁水処理施設を構成する透水性土嚢の一部切欠斜視図、図4は図1に示す濁水処理施設の拡大図、図5は図4に示す濁水処理施設の一部拡大図である。
【0016】
図1,図2に示すように、本実施形態の濁水処理施設10は、土木建設工事に伴って発生する濁水を一時的に貯留するため施工現場の地面Gの一部に形成された凹状の貯水領域11と、貯水領域11に貯留された濁水DWを濾過するため貯水領域11内に配置された濾過手段である複数の透水性土嚢12と、これらの透水性土嚢12で濾過された浄水CWを貯水領域11外へ排出する排水手段である排水経路13と、を備えている。図3に示すように、透水性土嚢12は、透水性袋体12aに透水性土壌14が充填された構造であり、透水性土壌14は、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を透水性袋体12に充填して固化させることによって形成されている。透水性土嚢12の外形は略円柱形状であり、クレーン(図示せず)などのフックを引っ掛けるための帯状の係止部12bが透水性土嚢12の上下端面にそれぞれ設けられている。
【0017】
図4に示すように、排水経路13は、横断面が円形の管状体13を地中に直立状態に埋設するとともに、地中に埋設された排水管15に管状体13pの下端部が接続され、管状体13pの上端部は大気中に開口している。図5に示すように、管状体13pの周壁に透水性を持たせるため、多数の貫通孔13hが周壁全体に渡って開設されている。
【0018】
図1,図2に示すように、管状体13pの周囲には、複数の棒材16を井桁状に積層配列することにより井戸型構造体17が構築され、井戸型構造体17の周りを二重に包囲するように複数の透水性土嚢12が互いに密着した状態で配列されている。管状体13p外周と井戸型構造体17内周との間には浄水CWが流入可能な空間Sが形成されている。また、貯水領域11の底部11a上に配列された複数の透水性土嚢12は、貯水領域11へ流入した濁水DWがそのまま井戸型構造体17内へ流入するのを阻止する井堰として機能している。貯水領域11の底部11aより下方に位置する透水性土嚢12は地中に埋設されている。
【0019】
図1に示すように、貯水領域11内へ流入した濁水DWは透水性土嚢12を通過することによって固形物が除去され、浄水CWとなって空間Sに流入する。空間Sに一次的に貯留されている浄水CWは、管状体13pの周壁の貫通孔13pを通過して排水経路13へ流入し、排水経路13内を流下して排水管15へ流入した後、排水管15内を流動して所定の排水施設へ排出される。このように、濁水浄化施設10を使用することにより、土木建設工事現場で発生する濁水DWを浄水CWへ浄化して排出することができるため、固形成分を含有する濁水が既存の河川や排水路へ流入して、水質汚濁を引き起こすのを防止することができる。
【0020】
濁水処理施設10は、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成した透水性土壌14が充填された透水性土嚢12を、土木建設工事の施工現場の地面Gの一部に形成した貯水領域11内に配置し、透水性土嚢12で濾過された浄水CWを貯水領域外へ排出する排水経路13を設けることによって形成することができる。この場合、施工現場で入手した土材と、外部から施工現場へ運び込んだセメント系固化材及び団粒化剤との混合物を透水性袋体12aに充填して固化させれば透水性土嚢12を形成することができるため、外部から施工現場へ持ち込まなければならない資材は比較的少なくて済み、搬入作業が容易である。
【0021】
また、土材とセメント系固化材とを混合したものに団粒化剤を添加すると、イオンの作用により、土材の粒子とセメント系固化材の粒子とが立体的な団粒構造を形成し、混合物中に連続した空隙が発生するため、前記混合物を固化させた透水性土壌14が充填された透水性土嚢12は優れた濁水浄化機能を発揮する。なお、前記団粒化剤として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を用いたところ、透水性土壌14内に比較的強固な団粒構造を形成することができた。このため、外力や自重によって透水性土嚢12が損傷したり、破壊したりするのを防止することができた。
【0022】
また、土木建設工事が終了して濁水処理施設10が不要となった場合、使用後の貯水領域11は埋め戻すことができ、透水性土嚢12や井戸状構造体17は施工現場に埋設することができる。このため、工事終了後、施工現場から搬出すべき資材は極めて少なく、撤収作業にも手間がかからない。
【0023】
図3に示すように、透水性土壌14が透水性袋体12aに充填された透水性土嚢12を濾過手段として用いているため、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を透水性袋体12aに充填して固化させる、という比較的簡単な作業で透水性土嚢12を形成することができ、貯水領域11内への配置も容易である。
【0024】
図4に示すように、排水手段として、地中に埋設された排水管15へ浄水CWを送給可能な排水経路13を設けたことにより、透水性土嚢12で濾過された浄水CWを、高低差を利用して貯水領域11外へ排出することができる。このため、電動式ポンプなどの送水手段が不要であり、構造の簡素化及び省エネルギを図ることができる。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の濁水処理施設10は、工事の進行に伴い造成地の地面Gが徐々に上昇していく造成工事の現場に設置された事例を示している。この場合、地面Gの上昇に伴い、貯水領域11の底部11aに配列された透水性土嚢12の周りに土材を搬入して透水性土嚢12を埋設するとともに、管状体13の上端に同形の管状体を継ぎ足し、その周りに井戸型構造体17を構築し、さらにその周りに複数の透水性土嚢12を密着配列することによって濁水浄化機能を維持することができる。なお、濁水処理施設10の用途は限定しないので、造成工事現場以外においても広く使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の濁水処理施設は、造成工事などの各種土木建設工事の現場で発生する濁水の処理手段として、土木建設業の分野などにおいて広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態である濁水処理施設を示す垂直断面図である。
【図2】図1に示す濁水処理施設を示す平面図である。
【図3】図1に示す濁水処理施設を構成する透水性土嚢の一部切欠斜視図である。
【図4】図1に示す濁水処理施設の拡大図である。
【図5】図4に示す濁水処理施設の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0028】
10 濁水処理施設
11 貯水領域
11a 底部
12 透水性土嚢
12a 透水性袋体
12b 係止部
13 排水経路
13p 管状体
14 透水性土壌
15 排水管
16 棒材
17 井戸型構造体
G 地面
CW 浄水
DW 濁水
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木建設工事に伴って発生する濁水を一時的に貯留するため地面の一部に形成された貯水領域と、前記貯水領域に貯留された濁水を濾過するため前記貯水領域に配置された濾過手段と、前記濾過手段で濾過された浄水を前記貯水領域外へ排出する排水手段と、を備え、前記濾過手段として、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成した透水性土壌を用いたことを特徴とする濁水処理施設。
【請求項2】
前記濾過手段として、前記透水性土壌が透水性袋体に充填された透水性土嚢を用いた請求項1記載の濁水処理施設。
【請求項3】
前記排水手段として、前記浄水を地中に埋設された排水管へ送給可能な排水経路を設けた請求項1または2記載の濁水処理施設。
【請求項4】
周壁の少なくとも一部が透水性を有する管状体を用いて前記排水経路を形成した請求項3記載の濁水処理施設。
【請求項5】
前記団粒化剤として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を用いた請求項1〜4のいずれかに記載の濁水処理施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137154(P2010−137154A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314926(P2008−314926)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(500305380)株式会社シーマコンサルタント (30)
【Fターム(参考)】