濁水浄化装置
【課題】小型かつ簡易な構造でありながら、電極付近で発生する気泡の影響を軽減することでき、更にランニングコストを抑えながら濁水の浄化を行うことができる濁水浄化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】濁水中に挿入される陽電極4及び陰電極6と、陽陰両電極間に電圧を印加する電源装置7とを備え、電源装置7によって陽陰両電極間に通電することによって濁水Wの浄化を行う濁水浄化装置1において、陽陰両電極4、6は、導電性を有する柱状本体部10と、柱状本体部10の内側に形成され、軸方向に延びる気泡誘導路12と、柱状本体部10の周側面から気泡誘導路12につながる連通孔14と、柱状本体部10から発生する気泡18、20の動きを連通孔14に導くように規制する気泡規制部とを有する。
【解決手段】濁水中に挿入される陽電極4及び陰電極6と、陽陰両電極間に電圧を印加する電源装置7とを備え、電源装置7によって陽陰両電極間に通電することによって濁水Wの浄化を行う濁水浄化装置1において、陽陰両電極4、6は、導電性を有する柱状本体部10と、柱状本体部10の内側に形成され、軸方向に延びる気泡誘導路12と、柱状本体部10の周側面から気泡誘導路12につながる連通孔14と、柱状本体部10から発生する気泡18、20の動きを連通孔14に導くように規制する気泡規制部とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川やダム、湖沼等の水域における濁水を、電気分解を利用して処理する濁水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、濁水中には、負に帯電した浮遊粒子が互いに反発し合いながら分散状態で安定している点に着目し、電気分解を利用して濁水Wを浄化する技術が知られていた。例えば、特許文献1には、濁水中に挿入した複数の電極に間欠的なパルス電流を印加して浄化する濁水処理方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、濁水を通過させて水流を形成する流路部に陽陰それぞれの電極を有する電極群を配置する一方、その電極群の下流側に、電極付近で発生する気泡を浮遊粒子から取り除くための邪魔板を配置し、その邪魔板により、濁水を攪拌して濁水を浄化する濁水浄化装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−282861号公報
【特許文献2】特開平6−47382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の濁水処理方法では、パルス電流の印加によって電極付近に発生する気泡を電極から引き離し、気泡が通電の邪魔にならないようにしつつ濁水の浄化を行うが、電極から引き離した気泡が、濁水中の浮遊粒子と結びついてしまい、浮遊粒子の沈降を阻害するという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2記載の濁水浄化装置では、濁水の攪拌によって濁水中の浮遊粒子から気泡を取り除き、気泡による浮遊粒子の沈降が阻害されないようにされている。しかし、この濁水浄化装置では、濁水を通過させる流路部や邪魔板、曝気装置等の攪拌装置等を設けなければならないため、装置全体が複雑で大型化してしまい、更に、濁水を浄化するのに、水流の形成や濁水の攪拌等のランニングコストも要するという問題があった。しかも、この浄化処理装置では、気泡を浮遊粒子から除去するために水流を形成する必要がある。そのため、ダムや湖沼といった流れの無い貯水域の水を浄化するためには、水を循環させるための装置ないし設備を別途設けなければならないという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、小型かつ簡易な構造でありながら、電極付近で発生する気泡の影響を軽減することでき、更にランニングコストを抑えながら濁水の浄化を行うことができる濁水浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、濁水中に挿入される陽電極及び陰電極と、その陽陰両電極間に電圧を印加する電源装置とを備え、電源装置によって陽陰両電極間に通電することによって濁水の浄化を行う濁水浄化装置において、陽陰両電極は、導電性を有する柱状本体部と、その柱状本体部の内側に形成され、軸方向に延びる気泡誘導路と、柱状本体部の周側面から気泡誘導路につながる連通孔と、前記柱状本体部から発生する気泡の動きを前記連通孔に導くように規制する気泡規制部とを有することを特徴とする。
【0008】
この濁水浄化装置では、陽陰両電極間に通電することによって濁水中に生じる気泡の動きを、気泡規制部によって連通孔に導くように規制する。そして動きを規制された気泡は、連通孔を通って気泡誘導路へ入り込む。
【0009】
この気泡規制部は、柱状本体部の周側面に形成され、連通孔側に気泡規制面を向けて構成される鍔状体としたり、鍔状体の周縁から連通孔側に向けて延設され、連通孔を囲む周壁部を更に備えているようにしてもよい。
【0010】
また、前述の連通孔は、柱状本体部の軸方向に沿って複数設けるようにしてもよい。
【0011】
この濁水浄化装置では、柱状本体部の軸方向に沿って発生する気泡が、柱状本体部の複数箇所で気泡誘導路に入り込める。
【0012】
また更に、濁水中に挿入される陽陰両電極間の距離は、濁度低下率が所定範囲内に納まるように設定するようにしてもよい。
【0013】
このような濁水浄化装置では、濁水中に挿入される陽陰両電極間の距離の設定により、濁度低下率を所定範囲内に納めるようにすることができる。
【0014】
また、陽電極と陰電極に印加される電圧の極性を切り替える切替手段を更に備えてもよい。
【0015】
この濁水浄化装置では、陽電極と陰電極に印加される電圧の極性が切り替えられる。
【0016】
更にまた、複数の陽電極と複数の陰電極とからなる電極群を備え、その電極群は、異なる極性の電極が一定間隔にて交互に並ぶ電極列を複数有し、その複数の電極列が一定間隔で並列に並び、かつ、隣接する列において隣り合う電極同士の極性が異なるものとしてもよい。
【0017】
このような濁水浄化装置では、複数の陽電極と複数の陰電極との間で通電される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小型かつ簡易な構造でありながら、陽陰両電極間を通電することによって電極付近で発生する気泡の影響を軽減することができ、更にランニングコストを抑えながら濁水の浄化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明による濁水浄化装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、全図を通し、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。図1は本発明による第1の実施の形態に係る濁水浄化装置を概略的に示す側面図であり、陰電極を一部破断して示している。図2は、第1の実施の形態に係る濁水浄化装置の陰電極6を拡大して示す斜視図である。
【0020】
以下の各実施の形態に係る濁水浄化装置1は、ダム、池、湖沼等の閉鎖性流域や比較的流れが緩やかな河川等における濁水Wを浄化する装置である。濁水Wとは、浮遊粒子2が漂っているために濁っている水を意味し、土壌排水や生活廃水を広く含む。以下の各実施の形態では、珪酸などを主成分とする粒径数ミクロンの土壌粒子が浮遊粒子2として存在する濁水Wを例に説明する。
【0021】
浮遊粒子2は、負に帯電して濁水W中で安定しており、沈降除去が困難である。そこで、濁水浄化装置1では、陽電極4と陰電極6を濁水W中に挿入し、陽陰両電極間に20V程度の電圧を印加する。すると、陽電極4と陰電極6との間で通電が起き、濁水Wが電気分解される。電気分解によって陽電極4側では水素イオン8が発生する。水素イオン8は正の電荷を有するため、負に帯電している浮遊粒子2と結びつき、浮遊粒子2の電荷を中和する。中和された微細な浮遊粒子2同士は、互いに結び付く。それによって浮遊粒子2が成長して径大となり、沈降し易くなる。本発明による濁水浄化装置1は、このように電気分解を利用して浮遊粒子2の沈降を促進し、濁水Wの浄化を図っている。
【0022】
第1の実施の形態に係る濁水浄化装置1は、濁水W中に挿入される陽電極4及び陰電極6と、その陽陰両電極間に電圧を印加する電源装置7とを備える。また、陽陰両電極4、6は、導電性を有する柱状本体部10と、その柱状本体部10の内側に形成され、軸方向に延びる気泡誘導路12と、柱状本体部10の周側面から気泡誘導路12につながる連通孔14と、柱状本体部10から発生する気泡の動きを連通孔14に導くように規制する気泡規制部24Aとを有する。この濁水浄化装置1は、電源装置7によって陽陰両電極間に通電することによって濁水Wの浄化を行う。以下、濁水浄化装置1について詳述する。
【0023】
濁水浄化装置1の電源装置7は、陽電極4及び陰電極6に直流電流を流すことができればよく、直流発電機や電池、更に整流器等を備えた交流発電機等であってもよい。濁水浄化装置1は、少なくとも二つの電極を備え、一方の電極が電源装置7の正極に接続され、他方の電極が負極に接続される。正極に接続される電極が陽電極4として機能し、負極に接続される電極が陰電極6として機能する。陽陰両電極4、6同士は、絶縁性の支持部材16によって一定間隔にて保持され、架台部(図示せず)に固定されている。
【0024】
陽電極4と陰電極6は、径よりも軸方向に長い円筒状の柱状本体部10を備える。陽陰両電極4、6は、柱状本体部10の軸方向を上下方向、例えば略鉛直方向に向けて濁水W中に挿入されている。濁水W中に挿入された柱状本体部10の上端は開放され、濁水Wの水面よりも上に突き出ている。なお、柱状本体部10は、上端も含めてすべて濁水W中に水没させてもよい。
【0025】
陽陰両電極4、6の柱状本体部10の素材としては、導電性の金属や炭素素材等が考えられる。しかし、経済性や加工の容易性、更に電気分解に伴う溶出を極力避けて環境に配慮するためにSUS316が好ましい。また、この柱状本体部10の径は、印加する電圧等の関係に基づき、電流密度が、1.0mA/cm2〜1.2mA/cm2となるように特定することが好ましい。電流密度が上がり過ぎると、金属イオン等が溶出し易くなるからである。
【0026】
本実施の形態では、柱状本体部10の内部、つまり筒内が気泡誘導路12に相当する。柱状本体部10の周側面には、連通孔14が設けられている。連通孔14は、柱状本体部10の中心軸線と交差する方向に貫通して形成され、一対の連通孔14、14が、柱状本体部10における周側面の対向位置に配置されている。また、この一対の連通孔14、14は、柱状本体部10の軸方向に複数設けられている。なお、連通孔14は、柱状本体部10の周方向に複数設けられていても、一つでもよい。また、軸方向に複数設けられていてもよい。なお、柱状本体部10の長さが短い場合には、連通孔14が一つだけ設けられていてもよい。
【0027】
本実施の形態では、軸方向における各連通孔14同士の間隔を10cm程度に設定しているが、この間隔も、濁水Wの性状等により、適宜変更できる。例えば、水深の深いところに位置する連通孔14同士の間隔を長く(例えば、10cm以上)したり、浅いところを逆に短く(例えば、10cm未満)してもよい。また、この間隔を不規則に変化させてもよい。
【0028】
気泡規制部24Aは、図2に示す如く柱状本体部10の周側面から外側に向かってはり出す厚肉円筒状の鍔状体となっている。気泡規制部24Aは、円還状の気泡規制面26Aを備えている。気泡規制面26A側の近傍には、柱状本体部10の中心軸線と交差する方向に貫通して形成された一対の連通孔14、14が配置されている。つまり、図1において気泡規制部24Aの下方側(濁水Wの水深方向側)に一対の連通孔14、14が配置されている。
【0029】
陰電極6の周辺で発生する水素ガスからなる気泡18は、陰電極6における柱状本体部10の外周面に付着して集まり、一定の大きさになった状態で浮上する。浮上する気泡18の動きは、気泡規制部24Aの気泡規制面26Aによって規制される。気泡規制面26Aの近傍には、連通孔14が設けられているため、動きを規制された気泡18は連通孔14に導かれる。すると、その気泡18は連通孔14を通って気泡誘導路12に入り込み、気泡誘導路12に沿って上昇する。
【0030】
気泡18を気泡誘導路12に導くことができれば、気泡18が柱状本体部10の外で浮遊粒子2と結びついてしまうことを抑制でき、沈降の阻害要因を排除することが可能になる。仮に、柱状本体部10の外周面に付着して気泡18が集まったとすると、その気泡18の集まりが、陽陰両電極間の通電を阻害する絶縁膜のような作用を奏する。しかし、連通孔14内に気泡18を入り込ませることができれば、集まる前の気泡18を気泡誘導路12内に導くことが可能となり、通電阻害を未然に抑制できる。
【0031】
また、通電状態にある限り、陰電極6の柱状本体部10の外周面には至るところで気泡18が発生する可能性がある。そのため、例えば、連通孔14と気泡規制部24Aを軸方向に沿って複数設けていれば、柱状本体部10の軸方向にそって発生する気泡18を連通孔14に導き易くなる。特に、発生する気泡は、水面に向かって上昇する。そのため、連通孔14と気泡規制部24Aを軸方向に複数設けると、より効果的に気泡18の動きを規制でき、連通孔14に導くことが可能となる。また、柱状本体部10の周方向に連通孔14を複数設けると、柱状本体部10の周方向にそって発生する気泡18を連通孔14に導き易くなる。
【0032】
以上、陰電極6側を主として説明したが、陽電極4側でも同様の作用を生じる。具体的には、陽電極4側では、水素ガスの代わりに酸素ガスが発生し、酸素ガスによる気泡20が浮遊粒子2の沈降等を阻害する可能性がある。そのため、気泡20の上昇を気泡規制部24Aの気泡規制面26Aによって規制し、この気泡規制面26Aによって気泡20を連通孔14に導いて気泡誘導路12に入り込ませる。それにより浮遊粒子2の沈降阻害等を軽減できる。
【0033】
本濁水処理装置1において濁水W中に挿入される陽陰両電極間の距離は、単位時間当りに濁度が低下する割り合い(以下、濁度低下率と云う。)が所定範囲内に納まるように設定されていることが好ましい。濁度低下率ができるだけ高くなるように陽陰両電極間の距離を設定でき、その場合は、比較的短い時間で濁水Wの浄化が可能になる。
【0034】
図3は、在る閉鎖性水域にて採取した濁水Wに対し、浄化処理を施した実験結果であり、陽陰両電極間の距離と濁度低下率と関係を示している。図3に示すグラフでは、横軸が陽陰両電極間の距離を示しており、縦軸が濁度低下率を示している。また、図3で示す濁度低下率は、分を基準としている。
【0035】
図3によれば、陽陰両電極間の距離が2cm(図3のA1)以下の範囲では、濁度低下率は比較的高く略一定(0.45程度)に保つことができる。しかし、距離が2cmを超えると、急激に濁度低下率が下がり、4cmを超えたあたりで略一定の値になる。一方、陽陰両電極間の距離が短くなり過ぎると、陽陰両電極間が触れ合う可能性が高くなり、短絡の恐れを生じる。本実施の形態では、これらの点を考慮して陽陰両電極間距離を2cmに設定し、これによって濁度低下率が所定範囲内に納まるようにしている。
【0036】
ただし、濁度低下率が所定範囲内に納まるように設定される距離とは2cmに限定されるものではなく、例えば、陽陰両電極がぶれて短絡を起こすことがないような構造とすることにより、さらに短くすることもできる。
【0037】
一方、濁水W中に挿入される陽陰両電極4、6の長さは、濁水Wの水深や浄化を行おうとする部分の深さを考慮して設定すればよい。
【0038】
また、本実施の形態に係る濁水浄化装置1では、図1に示すように、更に陽電極4と陰電極6に印加される電圧の極性を切り替える切替手段22を備えている。この切替手段22は、陽電極4と陰電極6の極性を反転できればよく、例えば、陽電極4につながる電源装置7の端子を負に切り替え、陰電極6につながる電源装置7の端子を正に切り替えることのできるスイッチ手段とすることができる。
【0039】
浮遊粒子2は、負に帯電しているため、陽電極4に付着し易く、陽電極4に多く付着すると通電を阻害する絶縁層のようになる可能性がある。そこで、切替手段22によって印加する電圧の極性を切り替えると、陽電極4に付着した浮遊粒子2が電気的に反発して陽電極4から剥離する。それにより、通電を阻害する浮遊粒子2の層の形成を未然に抑止することができる。
【0040】
また、切替手段22は、印加する電圧の極性の切り替えを、一定のタイミング(例えば30分間隔毎)で繰り返して行う制御回路を備えることが好ましい。陽電極4に付着した浮遊粒子2は、一定の時間が経過すると、周囲のもの同士が集まってかたまり状になる。そのかたまり状になるタイミングを見計らって極性を切り替えると、陽電極4からかたまり状になった浮遊粒子2をまるごと剥離させることができる。するとかたまり状になった浮遊粒子2が核となり、浮遊している他の浮遊粒子2を吸着して成長する。それにより、浮遊粒子2の沈降が促進される。
【0041】
つまり、一定のタイミングで繰り返し極性の切り替えを行うことにより、かたまり状の浮遊粒子2を適宜に濁水W中に放散でき、浮遊粒子2の沈降を促進して濁水Wの浄化効率を高める。なお、この一定のタイミングは、核となるかたまり状の浮遊粒子2を生じさせつつ、浮遊粒子2の電極付着による通電阻害を抑止できる時間間隔であることが好ましい。
【0042】
なお、極性の切り替えは、一定のタイミングで繰り返す場合に限定されず、少しづつ切り替えのタイミングを遅らせたり、早めたりすることもできる。また、切り替えのタイミングを不規則に行ってもよい。更に、濁水Wの状態、陽電極4に付着した浮遊粒子2の状態に応じて切り替えを行ってもよい。
【0043】
続いて、本発明に係る濁水浄化装置1の第2〜第4の実施の形態について説明する。これらの実施の形態に係る濁水浄化装置1は、前述の第1の実施の形態に係る濁水浄化装置1に対し、異なった形態の気泡規制部を備えている。図4〜図6は、陰電極6側に設けた気泡規制部の各態様について示している。なお、第2〜第4の実施の形態においては、陽電極4側にも同様の気泡規制部が設けられている。
【0044】
図4は、第2の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示し、陰電極6側に設けた気泡規制部24Bを拡大し、柱状本体部10の軸方向に割った断面図である。この気泡規制部24Bは、前述の気泡規制部24A(鍔状体)の周縁部から連通孔14を囲むようにして連通孔14側に向けて延設された周壁部28を更に備えている。
【0045】
つまり、気泡規制部24Bは、気泡規制部24A(鍔状体)と周壁部28とを有し、その両者によって気泡18を保持する空間が確保される。周壁部28で囲む柱状本体部10の周側面に連通孔14が配置されるようになっている。気泡規制部24A(鍔状体)と周壁部28によって空間が形成される内面が、気泡規制面26Bとなる。
【0046】
陰電極6を濁水W中に挿入する際には、気泡規制面26Bを例えば鉛直下方に向けて濁水W中に挿入する。陰電極6の柱状本体部10の周側面付近で発生する気泡18は、水面に向けて上昇する。そのため、気泡規制部24Bを設けていれば、上昇しようとする気泡18の動きが気泡規制面26Bによって規制される。
【0047】
特に、本濁水浄化装置1では、気泡規制面26Bによって空間が形成されているため、気泡18は、この空間内で保持される。そのため、柱状本体部10の軸方向のみならず、その交差方向にも動きを規制されて連通孔14に導かれる。そのため、第1の実施の形態における濁水浄化装置1よりも、より効果的に気泡18を連通孔14に導くことができる。
【0048】
図5は、第3の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示し、陰電極6側に設けた気泡規制部24Cを拡大して示す斜視図である。この気泡規制部24Cは、前述の鍔状体25の代わりに、柱状本体部10の周側面に固定されている付根部30から漸次拡径した概ね逆すりばち状のキャップ部32によって構成されている。また、キャップ部32の内周面は、柱状本体部10の一部を囲み、この柱状本体部10の一部に連通孔14が配置されている。キャップ部32の内周面が気泡規制面26となる。
【0049】
第2、第3の実施の形態と同様に、陰電極6は、気泡規制面26Cを例えば鉛直下方に向けて濁水W中に挿入される。陰電極6の柱状本体部10の周側面付近で発生する気泡18は、水面に向けて上昇する。そのため、上昇する気泡18はキャップ部32の気泡規制面26Cで動きを規制され、連通孔14に導かれる。すると、気泡18は連通孔14を通って気泡誘導路12まで入り込み、気泡誘導路12に沿って上昇する。
【0050】
特に、本濁水浄化装置1では、気泡規制面26Cであるキャップ部32の内周面が連通孔14に向けて漸次縮径している。そのため、気泡規制面26Cで動きを規制された気泡18は、気泡規制面26Cにガイドされ、連通孔14付近に集められる。そのため第1、2の実施の形態における濁水浄化装置1よりも、より効果的に気泡18を連通孔14に導いて気泡誘導路12まで入り込ませ、気泡誘導路12に沿って上昇させることができる。
【0051】
図6は、第5の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示し、陰電極6側に設けた気泡規制部24Dを拡大して示す斜視図である。気泡規制部24Dは、連通孔14の上側約半分を覆うひさし状の湾曲突き出し板によって構成されている。
【0052】
気泡規制部24Dでは、湾曲突き出し板の連通孔14側の面が気泡規制面26Dとなる。気泡規制部24Dおよび連通孔14は複数設けられている。また、複数の気泡規制部24Dおよび連通孔14は、柱状本体部10の軸方向に一定の間隔を空け、かつ周方向にずれた位置に配置されており、柱状本体部10の周側面に対し、螺旋状に配置されている。
【0053】
本実施の形態においても、陰電極6は、気泡規制面26Dを例えば鉛直下方に向けて濁水W中に挿入される。陰電極6の柱状本体部10の周側面付近で発生する気泡18は、水面に向けて上昇する。そのため、上昇する気泡18は気泡規制面26Dで動きを規制され、連通孔14に導かれる。すると、気泡18は連通孔14を通って気泡誘導路12まで入り込み、気泡誘導路12に沿って上昇する。
【0054】
特に、本実施の形態では、複数の気泡規制部24Dが、柱状本体部10の軸方向に一定の間隔を空けて設けられており、かつ周方向にずれた位置となっている。そのため、複数の気泡規制部24Dが、柱状本体部10の周側面で発生する気泡18を満遍なく、効率的に連通孔14に導くことが可能になる。
【0055】
以上、気泡規制部24A〜24Dの形態が異なる各態様について詳述した。これらの気泡規制部24A〜24Dは、柱状本体部10に一つだけ設けても、複数設けてもよい。つまり、柱状本体部10に複数の連通孔14が設けられている場合には、各連通孔14に対応して複数設けてもよい。
【0056】
続いて、本発明に係る濁水浄化装置1の第5、第6の実施の形態について説明する。これらの実施の形態に係る濁水浄化装置1では、陽陰両電極4、6の柱状本体部10が円筒状ではなく、異なった形状となる。図7、図8は、陰電極6側の柱状本体部10の各態様について示している。なお、第5、第6の実施の形態においては、陽電極4側も同様の柱状本体部10となる。
【0057】
図7は、第5の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示し、陰電極6側の柱状本体部10を拡大するとともに横に割った断面を示す斜視図である。なお、本濁水浄化装置1は気泡規制部を備えているが、図7では、説明の便宜のために気泡規制部を省略して示している。本濁水浄化装置1における柱状本体部10は径方向よりも軸方向に長い円柱状をなし、内部には軸方向に延びる複数本(本実施の形態では2本)の気泡誘導路12が形成されている。柱状本体部10の周側面には、複数の連通孔14が設けられており、各連通孔14が、それぞれ気泡誘導路12につながっている。
【0058】
なお、本実施の形態では、一つの連通孔14が、複数設けられた気泡誘導路12のいずれか一つにつながっているが、複数の気泡誘導路12につながっていてもよい。また、複数の連通孔14を設ける位置も、柱状本体部10の軸方向に沿って直線状でなくてもよく、例えば、周方向にずれていてもよい。
【0059】
本実施の形態における濁水浄化装置1においても、気泡規制部(図示せず)が、気泡18を連通孔14に導く。連通孔14に導かれた気泡18は、連通孔14を介して気泡誘導路12に入り込む。すると、気泡18は、気泡誘導路12で保持され、いずれ気泡誘導路12に沿って上昇する。このように気泡18を気泡誘導路12に導くことができれば、気泡18が柱状本体部10の外で浮遊粒子2と結びついてしまうことを抑制でき、沈降の阻害要因を排除することが可能になる。
【0060】
図8は、第6の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示し、陰電極6側の柱状本体部10の底部を拡大し、縦に割った断面図である。なお、本濁水浄化装置1は気泡規制部を備えているが、図8では、説明の便宜のために気泡規制部を省略して示している。本濁水浄化装置1における陰電極6の柱状本体部10は有底円筒体である。つまり、濁水W中に挿入された状態における気泡誘導路12の下端は、底部36によって閉塞されている。
【0061】
本実施の形態における濁水浄化装置1においても、気泡規制部(図示せず)が、気泡18を連通孔14に導く。連通孔14に導かれた気泡18は、連通孔14を介して気泡誘導路12に入り込む。すると、気泡18は、気泡誘導路12で保持され、いずれ気泡誘導路12に沿って上昇する。このように気泡18を気泡誘導路12に導くことができれば、気泡18が柱状本体部10の外で浮遊粒子2と結びついてしまうことを抑制でき、沈降の阻害要因を排除することが可能になる。
【0062】
以上の各実施の形態からも明らかなように、本発明に係る柱状本体部10は、円筒状に限定されず、円柱体も含まれる。また、多角柱体であってもよい。一方、気泡誘導路12も、柱状本体部10の内部に一つだけ設けられている場合に限定されず、複数設けられていてもよい。更に、気泡誘導路12は柱状本体部10の内部であり、柱状本体部10の軸方向に延びる一定の流路空間が形成されていればよく、かつ、連通孔14がつながっていればよい。
【0063】
続いて、複数の陽電極4および複数の陰電極6を備えた第7の実施の形態に係る濁水浄化装置1について説明する。図9は、第7の実施の形態に係る濁水浄化装置1の側面図であり、気泡規制部の一部を破断して示している。また、図10は、第7の実施の形態に係る濁水浄化装置1における陽電極4と陰電極6の配置を模式的に示した平面図である。
【0064】
本実施の形態に係る濁水浄化装置1では、複数の陽電極4と複数の陰電極6とからなる電極群38を備える。また、陽電極4と陰電極6には、上述の複数の気泡規制部24Bが設けられている。隣り合う陽陰両電極4、6同士は、双方の周壁部28(気泡規制部24Bの一部要素)に接続される絶縁性の支持部材16によって保持されており、互いの距離が一定に保たれている。電極群38は、架台40に固定されている。
【0065】
図10に示すように、電極群38は、異なる極性の陽電極4、陰電極6が一定間隔にて交互に並ぶ電極列42を複数有し、複数の電極列42が一定間隔で並列に並び、かつ、隣接する列において隣り合う電極同士の極性が異なっている。このような配置とすることにより、一番外側の電極も有効に機能させることができ、通電による電気分解処理を効率化できる。
【0066】
続いて、第8の実施の形態に係る濁水浄化装置1について説明する。図11は、第8の実施の形態に係る濁水浄化装置1の概略側面図である。なお、本濁水浄化装置1は気泡規制部を備えているが、図11中においては、説明の便宜のために詳細図示を省略している。
【0067】
本実施の形態に係る濁水浄化装置1は、電源装置7が、陽陰両電極間に電圧を印加するための電力を起こす太陽電池44を更に有し、電源装置7と陽陰両電極4、6とを濁水W中で浮遊保持するフロート体46を更に備えている。
【0068】
フロート体46は、光のエネルギーを電力に変換するための素子等を備えた太陽電池44を上部に搭載し、下面(濁水)側に複数の陽電極4と複数の陰電極6とを吊り下げて保持する基体部48を有する。この基体部48は、フロート50によって水面上に浮遊保持されている。基体48内には、太陽電池44と陽電極4及び陰電極6とを電気的に接続する配線が組み込まれている。なお、複数の陽電極4と複数の陰電極6の配置は、前述の実施の形態8で説明した配置(図10参照)と同様となっている。
【0069】
本濁水浄化装置1では、太陽光エネルギーを利用して起こした電力を用いて陽陰両電極間に通電する。そのため、ランニングコストを低く抑えることができ、また、放置した状態で自動的に濁水Wの浄化を行うことができる。
【0070】
続いて、第9の実施の形態に係る濁水浄化装置1について説明する。図12は、第9の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示す模式図である。なお、本濁水浄化装置1は気泡規制部を備えているが、図12中においては、説明の便宜のために詳細図示を省略している。
【0071】
本実施の形態に係る濁水浄化装置1は複数の陽電極4と陰電極6とを備え、ダム60によって堰き止められた濁水Wを浄化するための装置で、水力発電施設Pに併設されている。また、本濁水浄化装置1は水力発電施設Pで用いられる所内電力を利用しており、配線ライン66を介して陽陰両電極間に電圧を印加している。本濁水浄化装置1によれば、水力発電施設Pで用いられる所内電力を有効利用でき、例えば、昼夜連続での浄化処理が可能となる。それにより、特に夜間における余剰電力を有効利用できる。
【0072】
また、本濁水浄化装置1は、架台40によって放流口62や取水口(図示せず)の付近に固設されている。放流口62は、ダム60によって堰き止められた濁水Wを一定水位に保つためのものである。また、取水口は発電に供せられる水を取水するためのものである。そのため、本濁水浄化装置1の陽陰両電極4、6の長さは、放流口62や取水口の水深よりも深い長さとすることが好ましい。浄化した後の水を放流し、または発電に利用するためである。
【0073】
以上の各実施の形態に係る濁水浄化装置1によれば、濁水W中に電気分解処理を施すことによって生じる気泡18、20が、浮遊粒子2と結び付き、浮遊粒子2の沈降を阻害するという不都合を軽減できる。また、陰電極4や陽電極6の付近で発生した気泡が、電極周側面に留まって絶縁作用を奏する膜を形成するという不具合を未然に抑制する。特に、以上の濁水浄化装置1では、基本的に陽電極4と陰電極6の構造に特徴を持たせ、上記の効果を奏させるものである。そのため、小型、かつ簡易な構造とすることが可能である。
【0074】
更に、濁水の攪拌等が不要であるため、沈降する浮遊粒子2を巻き上げてしまうという不都合も無く、また、ランニングコストを抑えながら濁水の浄化を行うことができる。
【0075】
なお、本発明が、以上の各実施の形態のみに限定されないことは云うまでもない。そのため、例えば、各実施の形態同士の要素を適宜組み合わせることもできる。また、陽電極4と陰電極6の構造を異ならせることもできる。なお、陽陰両電極間に通電することによって発生する水素ガスや酸素ガスを貯留槽等に集め、別途利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】第1の実施の形態に係る濁水浄化装置を概略的に示す側面図であり、陰電極を一部破断して示している。
【図2】第1の実施の形態に係る濁水浄化装置の陰電極を拡大して示す斜視図である。
【図3】在る閉鎖性水域にて採取した濁水に対し、浄化処理を施した実験結果であり、陽陰両電極間の距離と濁度低下率と関係を示すグラフである。
【図4】第2の実施の形態に係る濁水浄化装置を示し、陰電極側に設けた気泡規制部を拡大し、柱状本体部の軸方向に割った断面図である。
【図5】第3の実施の形態に係る濁水浄化装置を示し、陰電極側に設けた気泡規制部を拡大して示す斜視図である。
【図6】第4の実施の形態に係る濁水浄化装置を示し、陰電極側に設けた気泡規制部を拡大して示す斜視図である。
【図7】第5の実施の形態に係る濁水浄化装置を示し、陰電極側の柱状本体部を拡大するとともに横に割った断面を示す斜視図である。
【図8】第6の実施の形態に係る濁水浄化装置を示し、陰電極側の柱状本体部の底部を拡大し、縦に割った断面図である。
【図9】第7の実施の形態に係る濁水浄化装置の側面図であり、気泡規制部の一部を破断して示している。
【図10】第7の実施の形態に係る濁水浄化装置における陽電極と陰電極の配置を模式的に示した平面図である。
【図11】第8の実施の形態に係る濁水浄化装置の概略側面図である。
【図12】第9の実施の形態に係る濁水浄化装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0077】
1・・・濁水浄化装置、4・・・陽電極、6・・・陰電極、7・・・電源装置
10・・・柱状本体部、12・・・気泡誘導路、14・・・連通孔
18,20・・・気泡、22・・・切替手段、24A〜24D・・・気泡規制部
26A〜26D・・・気泡規制面、28・・・周壁部
38・・・電極群、42・・・電極列、44・・・太陽電池、46・・・フロート体
60・・・ダム
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川やダム、湖沼等の水域における濁水を、電気分解を利用して処理する濁水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、濁水中には、負に帯電した浮遊粒子が互いに反発し合いながら分散状態で安定している点に着目し、電気分解を利用して濁水Wを浄化する技術が知られていた。例えば、特許文献1には、濁水中に挿入した複数の電極に間欠的なパルス電流を印加して浄化する濁水処理方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、濁水を通過させて水流を形成する流路部に陽陰それぞれの電極を有する電極群を配置する一方、その電極群の下流側に、電極付近で発生する気泡を浮遊粒子から取り除くための邪魔板を配置し、その邪魔板により、濁水を攪拌して濁水を浄化する濁水浄化装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−282861号公報
【特許文献2】特開平6−47382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の濁水処理方法では、パルス電流の印加によって電極付近に発生する気泡を電極から引き離し、気泡が通電の邪魔にならないようにしつつ濁水の浄化を行うが、電極から引き離した気泡が、濁水中の浮遊粒子と結びついてしまい、浮遊粒子の沈降を阻害するという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2記載の濁水浄化装置では、濁水の攪拌によって濁水中の浮遊粒子から気泡を取り除き、気泡による浮遊粒子の沈降が阻害されないようにされている。しかし、この濁水浄化装置では、濁水を通過させる流路部や邪魔板、曝気装置等の攪拌装置等を設けなければならないため、装置全体が複雑で大型化してしまい、更に、濁水を浄化するのに、水流の形成や濁水の攪拌等のランニングコストも要するという問題があった。しかも、この浄化処理装置では、気泡を浮遊粒子から除去するために水流を形成する必要がある。そのため、ダムや湖沼といった流れの無い貯水域の水を浄化するためには、水を循環させるための装置ないし設備を別途設けなければならないという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、小型かつ簡易な構造でありながら、電極付近で発生する気泡の影響を軽減することでき、更にランニングコストを抑えながら濁水の浄化を行うことができる濁水浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、濁水中に挿入される陽電極及び陰電極と、その陽陰両電極間に電圧を印加する電源装置とを備え、電源装置によって陽陰両電極間に通電することによって濁水の浄化を行う濁水浄化装置において、陽陰両電極は、導電性を有する柱状本体部と、その柱状本体部の内側に形成され、軸方向に延びる気泡誘導路と、柱状本体部の周側面から気泡誘導路につながる連通孔と、前記柱状本体部から発生する気泡の動きを前記連通孔に導くように規制する気泡規制部とを有することを特徴とする。
【0008】
この濁水浄化装置では、陽陰両電極間に通電することによって濁水中に生じる気泡の動きを、気泡規制部によって連通孔に導くように規制する。そして動きを規制された気泡は、連通孔を通って気泡誘導路へ入り込む。
【0009】
この気泡規制部は、柱状本体部の周側面に形成され、連通孔側に気泡規制面を向けて構成される鍔状体としたり、鍔状体の周縁から連通孔側に向けて延設され、連通孔を囲む周壁部を更に備えているようにしてもよい。
【0010】
また、前述の連通孔は、柱状本体部の軸方向に沿って複数設けるようにしてもよい。
【0011】
この濁水浄化装置では、柱状本体部の軸方向に沿って発生する気泡が、柱状本体部の複数箇所で気泡誘導路に入り込める。
【0012】
また更に、濁水中に挿入される陽陰両電極間の距離は、濁度低下率が所定範囲内に納まるように設定するようにしてもよい。
【0013】
このような濁水浄化装置では、濁水中に挿入される陽陰両電極間の距離の設定により、濁度低下率を所定範囲内に納めるようにすることができる。
【0014】
また、陽電極と陰電極に印加される電圧の極性を切り替える切替手段を更に備えてもよい。
【0015】
この濁水浄化装置では、陽電極と陰電極に印加される電圧の極性が切り替えられる。
【0016】
更にまた、複数の陽電極と複数の陰電極とからなる電極群を備え、その電極群は、異なる極性の電極が一定間隔にて交互に並ぶ電極列を複数有し、その複数の電極列が一定間隔で並列に並び、かつ、隣接する列において隣り合う電極同士の極性が異なるものとしてもよい。
【0017】
このような濁水浄化装置では、複数の陽電極と複数の陰電極との間で通電される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小型かつ簡易な構造でありながら、陽陰両電極間を通電することによって電極付近で発生する気泡の影響を軽減することができ、更にランニングコストを抑えながら濁水の浄化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明による濁水浄化装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、全図を通し、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。図1は本発明による第1の実施の形態に係る濁水浄化装置を概略的に示す側面図であり、陰電極を一部破断して示している。図2は、第1の実施の形態に係る濁水浄化装置の陰電極6を拡大して示す斜視図である。
【0020】
以下の各実施の形態に係る濁水浄化装置1は、ダム、池、湖沼等の閉鎖性流域や比較的流れが緩やかな河川等における濁水Wを浄化する装置である。濁水Wとは、浮遊粒子2が漂っているために濁っている水を意味し、土壌排水や生活廃水を広く含む。以下の各実施の形態では、珪酸などを主成分とする粒径数ミクロンの土壌粒子が浮遊粒子2として存在する濁水Wを例に説明する。
【0021】
浮遊粒子2は、負に帯電して濁水W中で安定しており、沈降除去が困難である。そこで、濁水浄化装置1では、陽電極4と陰電極6を濁水W中に挿入し、陽陰両電極間に20V程度の電圧を印加する。すると、陽電極4と陰電極6との間で通電が起き、濁水Wが電気分解される。電気分解によって陽電極4側では水素イオン8が発生する。水素イオン8は正の電荷を有するため、負に帯電している浮遊粒子2と結びつき、浮遊粒子2の電荷を中和する。中和された微細な浮遊粒子2同士は、互いに結び付く。それによって浮遊粒子2が成長して径大となり、沈降し易くなる。本発明による濁水浄化装置1は、このように電気分解を利用して浮遊粒子2の沈降を促進し、濁水Wの浄化を図っている。
【0022】
第1の実施の形態に係る濁水浄化装置1は、濁水W中に挿入される陽電極4及び陰電極6と、その陽陰両電極間に電圧を印加する電源装置7とを備える。また、陽陰両電極4、6は、導電性を有する柱状本体部10と、その柱状本体部10の内側に形成され、軸方向に延びる気泡誘導路12と、柱状本体部10の周側面から気泡誘導路12につながる連通孔14と、柱状本体部10から発生する気泡の動きを連通孔14に導くように規制する気泡規制部24Aとを有する。この濁水浄化装置1は、電源装置7によって陽陰両電極間に通電することによって濁水Wの浄化を行う。以下、濁水浄化装置1について詳述する。
【0023】
濁水浄化装置1の電源装置7は、陽電極4及び陰電極6に直流電流を流すことができればよく、直流発電機や電池、更に整流器等を備えた交流発電機等であってもよい。濁水浄化装置1は、少なくとも二つの電極を備え、一方の電極が電源装置7の正極に接続され、他方の電極が負極に接続される。正極に接続される電極が陽電極4として機能し、負極に接続される電極が陰電極6として機能する。陽陰両電極4、6同士は、絶縁性の支持部材16によって一定間隔にて保持され、架台部(図示せず)に固定されている。
【0024】
陽電極4と陰電極6は、径よりも軸方向に長い円筒状の柱状本体部10を備える。陽陰両電極4、6は、柱状本体部10の軸方向を上下方向、例えば略鉛直方向に向けて濁水W中に挿入されている。濁水W中に挿入された柱状本体部10の上端は開放され、濁水Wの水面よりも上に突き出ている。なお、柱状本体部10は、上端も含めてすべて濁水W中に水没させてもよい。
【0025】
陽陰両電極4、6の柱状本体部10の素材としては、導電性の金属や炭素素材等が考えられる。しかし、経済性や加工の容易性、更に電気分解に伴う溶出を極力避けて環境に配慮するためにSUS316が好ましい。また、この柱状本体部10の径は、印加する電圧等の関係に基づき、電流密度が、1.0mA/cm2〜1.2mA/cm2となるように特定することが好ましい。電流密度が上がり過ぎると、金属イオン等が溶出し易くなるからである。
【0026】
本実施の形態では、柱状本体部10の内部、つまり筒内が気泡誘導路12に相当する。柱状本体部10の周側面には、連通孔14が設けられている。連通孔14は、柱状本体部10の中心軸線と交差する方向に貫通して形成され、一対の連通孔14、14が、柱状本体部10における周側面の対向位置に配置されている。また、この一対の連通孔14、14は、柱状本体部10の軸方向に複数設けられている。なお、連通孔14は、柱状本体部10の周方向に複数設けられていても、一つでもよい。また、軸方向に複数設けられていてもよい。なお、柱状本体部10の長さが短い場合には、連通孔14が一つだけ設けられていてもよい。
【0027】
本実施の形態では、軸方向における各連通孔14同士の間隔を10cm程度に設定しているが、この間隔も、濁水Wの性状等により、適宜変更できる。例えば、水深の深いところに位置する連通孔14同士の間隔を長く(例えば、10cm以上)したり、浅いところを逆に短く(例えば、10cm未満)してもよい。また、この間隔を不規則に変化させてもよい。
【0028】
気泡規制部24Aは、図2に示す如く柱状本体部10の周側面から外側に向かってはり出す厚肉円筒状の鍔状体となっている。気泡規制部24Aは、円還状の気泡規制面26Aを備えている。気泡規制面26A側の近傍には、柱状本体部10の中心軸線と交差する方向に貫通して形成された一対の連通孔14、14が配置されている。つまり、図1において気泡規制部24Aの下方側(濁水Wの水深方向側)に一対の連通孔14、14が配置されている。
【0029】
陰電極6の周辺で発生する水素ガスからなる気泡18は、陰電極6における柱状本体部10の外周面に付着して集まり、一定の大きさになった状態で浮上する。浮上する気泡18の動きは、気泡規制部24Aの気泡規制面26Aによって規制される。気泡規制面26Aの近傍には、連通孔14が設けられているため、動きを規制された気泡18は連通孔14に導かれる。すると、その気泡18は連通孔14を通って気泡誘導路12に入り込み、気泡誘導路12に沿って上昇する。
【0030】
気泡18を気泡誘導路12に導くことができれば、気泡18が柱状本体部10の外で浮遊粒子2と結びついてしまうことを抑制でき、沈降の阻害要因を排除することが可能になる。仮に、柱状本体部10の外周面に付着して気泡18が集まったとすると、その気泡18の集まりが、陽陰両電極間の通電を阻害する絶縁膜のような作用を奏する。しかし、連通孔14内に気泡18を入り込ませることができれば、集まる前の気泡18を気泡誘導路12内に導くことが可能となり、通電阻害を未然に抑制できる。
【0031】
また、通電状態にある限り、陰電極6の柱状本体部10の外周面には至るところで気泡18が発生する可能性がある。そのため、例えば、連通孔14と気泡規制部24Aを軸方向に沿って複数設けていれば、柱状本体部10の軸方向にそって発生する気泡18を連通孔14に導き易くなる。特に、発生する気泡は、水面に向かって上昇する。そのため、連通孔14と気泡規制部24Aを軸方向に複数設けると、より効果的に気泡18の動きを規制でき、連通孔14に導くことが可能となる。また、柱状本体部10の周方向に連通孔14を複数設けると、柱状本体部10の周方向にそって発生する気泡18を連通孔14に導き易くなる。
【0032】
以上、陰電極6側を主として説明したが、陽電極4側でも同様の作用を生じる。具体的には、陽電極4側では、水素ガスの代わりに酸素ガスが発生し、酸素ガスによる気泡20が浮遊粒子2の沈降等を阻害する可能性がある。そのため、気泡20の上昇を気泡規制部24Aの気泡規制面26Aによって規制し、この気泡規制面26Aによって気泡20を連通孔14に導いて気泡誘導路12に入り込ませる。それにより浮遊粒子2の沈降阻害等を軽減できる。
【0033】
本濁水処理装置1において濁水W中に挿入される陽陰両電極間の距離は、単位時間当りに濁度が低下する割り合い(以下、濁度低下率と云う。)が所定範囲内に納まるように設定されていることが好ましい。濁度低下率ができるだけ高くなるように陽陰両電極間の距離を設定でき、その場合は、比較的短い時間で濁水Wの浄化が可能になる。
【0034】
図3は、在る閉鎖性水域にて採取した濁水Wに対し、浄化処理を施した実験結果であり、陽陰両電極間の距離と濁度低下率と関係を示している。図3に示すグラフでは、横軸が陽陰両電極間の距離を示しており、縦軸が濁度低下率を示している。また、図3で示す濁度低下率は、分を基準としている。
【0035】
図3によれば、陽陰両電極間の距離が2cm(図3のA1)以下の範囲では、濁度低下率は比較的高く略一定(0.45程度)に保つことができる。しかし、距離が2cmを超えると、急激に濁度低下率が下がり、4cmを超えたあたりで略一定の値になる。一方、陽陰両電極間の距離が短くなり過ぎると、陽陰両電極間が触れ合う可能性が高くなり、短絡の恐れを生じる。本実施の形態では、これらの点を考慮して陽陰両電極間距離を2cmに設定し、これによって濁度低下率が所定範囲内に納まるようにしている。
【0036】
ただし、濁度低下率が所定範囲内に納まるように設定される距離とは2cmに限定されるものではなく、例えば、陽陰両電極がぶれて短絡を起こすことがないような構造とすることにより、さらに短くすることもできる。
【0037】
一方、濁水W中に挿入される陽陰両電極4、6の長さは、濁水Wの水深や浄化を行おうとする部分の深さを考慮して設定すればよい。
【0038】
また、本実施の形態に係る濁水浄化装置1では、図1に示すように、更に陽電極4と陰電極6に印加される電圧の極性を切り替える切替手段22を備えている。この切替手段22は、陽電極4と陰電極6の極性を反転できればよく、例えば、陽電極4につながる電源装置7の端子を負に切り替え、陰電極6につながる電源装置7の端子を正に切り替えることのできるスイッチ手段とすることができる。
【0039】
浮遊粒子2は、負に帯電しているため、陽電極4に付着し易く、陽電極4に多く付着すると通電を阻害する絶縁層のようになる可能性がある。そこで、切替手段22によって印加する電圧の極性を切り替えると、陽電極4に付着した浮遊粒子2が電気的に反発して陽電極4から剥離する。それにより、通電を阻害する浮遊粒子2の層の形成を未然に抑止することができる。
【0040】
また、切替手段22は、印加する電圧の極性の切り替えを、一定のタイミング(例えば30分間隔毎)で繰り返して行う制御回路を備えることが好ましい。陽電極4に付着した浮遊粒子2は、一定の時間が経過すると、周囲のもの同士が集まってかたまり状になる。そのかたまり状になるタイミングを見計らって極性を切り替えると、陽電極4からかたまり状になった浮遊粒子2をまるごと剥離させることができる。するとかたまり状になった浮遊粒子2が核となり、浮遊している他の浮遊粒子2を吸着して成長する。それにより、浮遊粒子2の沈降が促進される。
【0041】
つまり、一定のタイミングで繰り返し極性の切り替えを行うことにより、かたまり状の浮遊粒子2を適宜に濁水W中に放散でき、浮遊粒子2の沈降を促進して濁水Wの浄化効率を高める。なお、この一定のタイミングは、核となるかたまり状の浮遊粒子2を生じさせつつ、浮遊粒子2の電極付着による通電阻害を抑止できる時間間隔であることが好ましい。
【0042】
なお、極性の切り替えは、一定のタイミングで繰り返す場合に限定されず、少しづつ切り替えのタイミングを遅らせたり、早めたりすることもできる。また、切り替えのタイミングを不規則に行ってもよい。更に、濁水Wの状態、陽電極4に付着した浮遊粒子2の状態に応じて切り替えを行ってもよい。
【0043】
続いて、本発明に係る濁水浄化装置1の第2〜第4の実施の形態について説明する。これらの実施の形態に係る濁水浄化装置1は、前述の第1の実施の形態に係る濁水浄化装置1に対し、異なった形態の気泡規制部を備えている。図4〜図6は、陰電極6側に設けた気泡規制部の各態様について示している。なお、第2〜第4の実施の形態においては、陽電極4側にも同様の気泡規制部が設けられている。
【0044】
図4は、第2の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示し、陰電極6側に設けた気泡規制部24Bを拡大し、柱状本体部10の軸方向に割った断面図である。この気泡規制部24Bは、前述の気泡規制部24A(鍔状体)の周縁部から連通孔14を囲むようにして連通孔14側に向けて延設された周壁部28を更に備えている。
【0045】
つまり、気泡規制部24Bは、気泡規制部24A(鍔状体)と周壁部28とを有し、その両者によって気泡18を保持する空間が確保される。周壁部28で囲む柱状本体部10の周側面に連通孔14が配置されるようになっている。気泡規制部24A(鍔状体)と周壁部28によって空間が形成される内面が、気泡規制面26Bとなる。
【0046】
陰電極6を濁水W中に挿入する際には、気泡規制面26Bを例えば鉛直下方に向けて濁水W中に挿入する。陰電極6の柱状本体部10の周側面付近で発生する気泡18は、水面に向けて上昇する。そのため、気泡規制部24Bを設けていれば、上昇しようとする気泡18の動きが気泡規制面26Bによって規制される。
【0047】
特に、本濁水浄化装置1では、気泡規制面26Bによって空間が形成されているため、気泡18は、この空間内で保持される。そのため、柱状本体部10の軸方向のみならず、その交差方向にも動きを規制されて連通孔14に導かれる。そのため、第1の実施の形態における濁水浄化装置1よりも、より効果的に気泡18を連通孔14に導くことができる。
【0048】
図5は、第3の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示し、陰電極6側に設けた気泡規制部24Cを拡大して示す斜視図である。この気泡規制部24Cは、前述の鍔状体25の代わりに、柱状本体部10の周側面に固定されている付根部30から漸次拡径した概ね逆すりばち状のキャップ部32によって構成されている。また、キャップ部32の内周面は、柱状本体部10の一部を囲み、この柱状本体部10の一部に連通孔14が配置されている。キャップ部32の内周面が気泡規制面26となる。
【0049】
第2、第3の実施の形態と同様に、陰電極6は、気泡規制面26Cを例えば鉛直下方に向けて濁水W中に挿入される。陰電極6の柱状本体部10の周側面付近で発生する気泡18は、水面に向けて上昇する。そのため、上昇する気泡18はキャップ部32の気泡規制面26Cで動きを規制され、連通孔14に導かれる。すると、気泡18は連通孔14を通って気泡誘導路12まで入り込み、気泡誘導路12に沿って上昇する。
【0050】
特に、本濁水浄化装置1では、気泡規制面26Cであるキャップ部32の内周面が連通孔14に向けて漸次縮径している。そのため、気泡規制面26Cで動きを規制された気泡18は、気泡規制面26Cにガイドされ、連通孔14付近に集められる。そのため第1、2の実施の形態における濁水浄化装置1よりも、より効果的に気泡18を連通孔14に導いて気泡誘導路12まで入り込ませ、気泡誘導路12に沿って上昇させることができる。
【0051】
図6は、第5の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示し、陰電極6側に設けた気泡規制部24Dを拡大して示す斜視図である。気泡規制部24Dは、連通孔14の上側約半分を覆うひさし状の湾曲突き出し板によって構成されている。
【0052】
気泡規制部24Dでは、湾曲突き出し板の連通孔14側の面が気泡規制面26Dとなる。気泡規制部24Dおよび連通孔14は複数設けられている。また、複数の気泡規制部24Dおよび連通孔14は、柱状本体部10の軸方向に一定の間隔を空け、かつ周方向にずれた位置に配置されており、柱状本体部10の周側面に対し、螺旋状に配置されている。
【0053】
本実施の形態においても、陰電極6は、気泡規制面26Dを例えば鉛直下方に向けて濁水W中に挿入される。陰電極6の柱状本体部10の周側面付近で発生する気泡18は、水面に向けて上昇する。そのため、上昇する気泡18は気泡規制面26Dで動きを規制され、連通孔14に導かれる。すると、気泡18は連通孔14を通って気泡誘導路12まで入り込み、気泡誘導路12に沿って上昇する。
【0054】
特に、本実施の形態では、複数の気泡規制部24Dが、柱状本体部10の軸方向に一定の間隔を空けて設けられており、かつ周方向にずれた位置となっている。そのため、複数の気泡規制部24Dが、柱状本体部10の周側面で発生する気泡18を満遍なく、効率的に連通孔14に導くことが可能になる。
【0055】
以上、気泡規制部24A〜24Dの形態が異なる各態様について詳述した。これらの気泡規制部24A〜24Dは、柱状本体部10に一つだけ設けても、複数設けてもよい。つまり、柱状本体部10に複数の連通孔14が設けられている場合には、各連通孔14に対応して複数設けてもよい。
【0056】
続いて、本発明に係る濁水浄化装置1の第5、第6の実施の形態について説明する。これらの実施の形態に係る濁水浄化装置1では、陽陰両電極4、6の柱状本体部10が円筒状ではなく、異なった形状となる。図7、図8は、陰電極6側の柱状本体部10の各態様について示している。なお、第5、第6の実施の形態においては、陽電極4側も同様の柱状本体部10となる。
【0057】
図7は、第5の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示し、陰電極6側の柱状本体部10を拡大するとともに横に割った断面を示す斜視図である。なお、本濁水浄化装置1は気泡規制部を備えているが、図7では、説明の便宜のために気泡規制部を省略して示している。本濁水浄化装置1における柱状本体部10は径方向よりも軸方向に長い円柱状をなし、内部には軸方向に延びる複数本(本実施の形態では2本)の気泡誘導路12が形成されている。柱状本体部10の周側面には、複数の連通孔14が設けられており、各連通孔14が、それぞれ気泡誘導路12につながっている。
【0058】
なお、本実施の形態では、一つの連通孔14が、複数設けられた気泡誘導路12のいずれか一つにつながっているが、複数の気泡誘導路12につながっていてもよい。また、複数の連通孔14を設ける位置も、柱状本体部10の軸方向に沿って直線状でなくてもよく、例えば、周方向にずれていてもよい。
【0059】
本実施の形態における濁水浄化装置1においても、気泡規制部(図示せず)が、気泡18を連通孔14に導く。連通孔14に導かれた気泡18は、連通孔14を介して気泡誘導路12に入り込む。すると、気泡18は、気泡誘導路12で保持され、いずれ気泡誘導路12に沿って上昇する。このように気泡18を気泡誘導路12に導くことができれば、気泡18が柱状本体部10の外で浮遊粒子2と結びついてしまうことを抑制でき、沈降の阻害要因を排除することが可能になる。
【0060】
図8は、第6の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示し、陰電極6側の柱状本体部10の底部を拡大し、縦に割った断面図である。なお、本濁水浄化装置1は気泡規制部を備えているが、図8では、説明の便宜のために気泡規制部を省略して示している。本濁水浄化装置1における陰電極6の柱状本体部10は有底円筒体である。つまり、濁水W中に挿入された状態における気泡誘導路12の下端は、底部36によって閉塞されている。
【0061】
本実施の形態における濁水浄化装置1においても、気泡規制部(図示せず)が、気泡18を連通孔14に導く。連通孔14に導かれた気泡18は、連通孔14を介して気泡誘導路12に入り込む。すると、気泡18は、気泡誘導路12で保持され、いずれ気泡誘導路12に沿って上昇する。このように気泡18を気泡誘導路12に導くことができれば、気泡18が柱状本体部10の外で浮遊粒子2と結びついてしまうことを抑制でき、沈降の阻害要因を排除することが可能になる。
【0062】
以上の各実施の形態からも明らかなように、本発明に係る柱状本体部10は、円筒状に限定されず、円柱体も含まれる。また、多角柱体であってもよい。一方、気泡誘導路12も、柱状本体部10の内部に一つだけ設けられている場合に限定されず、複数設けられていてもよい。更に、気泡誘導路12は柱状本体部10の内部であり、柱状本体部10の軸方向に延びる一定の流路空間が形成されていればよく、かつ、連通孔14がつながっていればよい。
【0063】
続いて、複数の陽電極4および複数の陰電極6を備えた第7の実施の形態に係る濁水浄化装置1について説明する。図9は、第7の実施の形態に係る濁水浄化装置1の側面図であり、気泡規制部の一部を破断して示している。また、図10は、第7の実施の形態に係る濁水浄化装置1における陽電極4と陰電極6の配置を模式的に示した平面図である。
【0064】
本実施の形態に係る濁水浄化装置1では、複数の陽電極4と複数の陰電極6とからなる電極群38を備える。また、陽電極4と陰電極6には、上述の複数の気泡規制部24Bが設けられている。隣り合う陽陰両電極4、6同士は、双方の周壁部28(気泡規制部24Bの一部要素)に接続される絶縁性の支持部材16によって保持されており、互いの距離が一定に保たれている。電極群38は、架台40に固定されている。
【0065】
図10に示すように、電極群38は、異なる極性の陽電極4、陰電極6が一定間隔にて交互に並ぶ電極列42を複数有し、複数の電極列42が一定間隔で並列に並び、かつ、隣接する列において隣り合う電極同士の極性が異なっている。このような配置とすることにより、一番外側の電極も有効に機能させることができ、通電による電気分解処理を効率化できる。
【0066】
続いて、第8の実施の形態に係る濁水浄化装置1について説明する。図11は、第8の実施の形態に係る濁水浄化装置1の概略側面図である。なお、本濁水浄化装置1は気泡規制部を備えているが、図11中においては、説明の便宜のために詳細図示を省略している。
【0067】
本実施の形態に係る濁水浄化装置1は、電源装置7が、陽陰両電極間に電圧を印加するための電力を起こす太陽電池44を更に有し、電源装置7と陽陰両電極4、6とを濁水W中で浮遊保持するフロート体46を更に備えている。
【0068】
フロート体46は、光のエネルギーを電力に変換するための素子等を備えた太陽電池44を上部に搭載し、下面(濁水)側に複数の陽電極4と複数の陰電極6とを吊り下げて保持する基体部48を有する。この基体部48は、フロート50によって水面上に浮遊保持されている。基体48内には、太陽電池44と陽電極4及び陰電極6とを電気的に接続する配線が組み込まれている。なお、複数の陽電極4と複数の陰電極6の配置は、前述の実施の形態8で説明した配置(図10参照)と同様となっている。
【0069】
本濁水浄化装置1では、太陽光エネルギーを利用して起こした電力を用いて陽陰両電極間に通電する。そのため、ランニングコストを低く抑えることができ、また、放置した状態で自動的に濁水Wの浄化を行うことができる。
【0070】
続いて、第9の実施の形態に係る濁水浄化装置1について説明する。図12は、第9の実施の形態に係る濁水浄化装置1を示す模式図である。なお、本濁水浄化装置1は気泡規制部を備えているが、図12中においては、説明の便宜のために詳細図示を省略している。
【0071】
本実施の形態に係る濁水浄化装置1は複数の陽電極4と陰電極6とを備え、ダム60によって堰き止められた濁水Wを浄化するための装置で、水力発電施設Pに併設されている。また、本濁水浄化装置1は水力発電施設Pで用いられる所内電力を利用しており、配線ライン66を介して陽陰両電極間に電圧を印加している。本濁水浄化装置1によれば、水力発電施設Pで用いられる所内電力を有効利用でき、例えば、昼夜連続での浄化処理が可能となる。それにより、特に夜間における余剰電力を有効利用できる。
【0072】
また、本濁水浄化装置1は、架台40によって放流口62や取水口(図示せず)の付近に固設されている。放流口62は、ダム60によって堰き止められた濁水Wを一定水位に保つためのものである。また、取水口は発電に供せられる水を取水するためのものである。そのため、本濁水浄化装置1の陽陰両電極4、6の長さは、放流口62や取水口の水深よりも深い長さとすることが好ましい。浄化した後の水を放流し、または発電に利用するためである。
【0073】
以上の各実施の形態に係る濁水浄化装置1によれば、濁水W中に電気分解処理を施すことによって生じる気泡18、20が、浮遊粒子2と結び付き、浮遊粒子2の沈降を阻害するという不都合を軽減できる。また、陰電極4や陽電極6の付近で発生した気泡が、電極周側面に留まって絶縁作用を奏する膜を形成するという不具合を未然に抑制する。特に、以上の濁水浄化装置1では、基本的に陽電極4と陰電極6の構造に特徴を持たせ、上記の効果を奏させるものである。そのため、小型、かつ簡易な構造とすることが可能である。
【0074】
更に、濁水の攪拌等が不要であるため、沈降する浮遊粒子2を巻き上げてしまうという不都合も無く、また、ランニングコストを抑えながら濁水の浄化を行うことができる。
【0075】
なお、本発明が、以上の各実施の形態のみに限定されないことは云うまでもない。そのため、例えば、各実施の形態同士の要素を適宜組み合わせることもできる。また、陽電極4と陰電極6の構造を異ならせることもできる。なお、陽陰両電極間に通電することによって発生する水素ガスや酸素ガスを貯留槽等に集め、別途利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】第1の実施の形態に係る濁水浄化装置を概略的に示す側面図であり、陰電極を一部破断して示している。
【図2】第1の実施の形態に係る濁水浄化装置の陰電極を拡大して示す斜視図である。
【図3】在る閉鎖性水域にて採取した濁水に対し、浄化処理を施した実験結果であり、陽陰両電極間の距離と濁度低下率と関係を示すグラフである。
【図4】第2の実施の形態に係る濁水浄化装置を示し、陰電極側に設けた気泡規制部を拡大し、柱状本体部の軸方向に割った断面図である。
【図5】第3の実施の形態に係る濁水浄化装置を示し、陰電極側に設けた気泡規制部を拡大して示す斜視図である。
【図6】第4の実施の形態に係る濁水浄化装置を示し、陰電極側に設けた気泡規制部を拡大して示す斜視図である。
【図7】第5の実施の形態に係る濁水浄化装置を示し、陰電極側の柱状本体部を拡大するとともに横に割った断面を示す斜視図である。
【図8】第6の実施の形態に係る濁水浄化装置を示し、陰電極側の柱状本体部の底部を拡大し、縦に割った断面図である。
【図9】第7の実施の形態に係る濁水浄化装置の側面図であり、気泡規制部の一部を破断して示している。
【図10】第7の実施の形態に係る濁水浄化装置における陽電極と陰電極の配置を模式的に示した平面図である。
【図11】第8の実施の形態に係る濁水浄化装置の概略側面図である。
【図12】第9の実施の形態に係る濁水浄化装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0077】
1・・・濁水浄化装置、4・・・陽電極、6・・・陰電極、7・・・電源装置
10・・・柱状本体部、12・・・気泡誘導路、14・・・連通孔
18,20・・・気泡、22・・・切替手段、24A〜24D・・・気泡規制部
26A〜26D・・・気泡規制面、28・・・周壁部
38・・・電極群、42・・・電極列、44・・・太陽電池、46・・・フロート体
60・・・ダム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濁水中に挿入される陽電極及び陰電極と、該陽陰両電極間に電圧を印加する電源装置とを備え、前記電源装置によって前記陽陰両電極間に通電することによって前記濁水の浄化を行う濁水浄化装置において、
前記陽陰両電極は、
導電性を有する柱状本体部と、
該柱状本体部の内側に形成され、軸方向に延びる気泡誘導路と、
前記柱状本体部の周側面から前記気泡誘導路につながる連通孔と、
前記柱状本体部から発生する気泡の動きを前記連通孔に導くように規制する気泡規制部とを備えていることを特徴とする濁水浄化装置。
【請求項2】
前記気泡規制部は、前記柱状本体部の周側面に形成され、前記連通孔側に気泡規制面を向けて構成される鍔状体であることを特徴とする請求項1記載の濁水浄化装置。
【請求項3】
前記気泡規制部は、前記鍔状体の周縁から前記連通孔側に向けて延設され、前記連通孔を囲む周壁部を更に備えていることを特徴とする請求項2記載の濁水浄化装置。
【請求項4】
前記連通孔は、前記柱状本体部の軸方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の濁水浄化装置。
【請求項5】
前記濁水中に挿入される前記陽陰両電極間の距離は、濁度低下率が所定範囲内に納まるように設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の濁水浄化装置。
【請求項6】
前記陽電極と前記陰電極に印加される電圧の極性を切り替える切替手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の濁水浄化装置。
【請求項7】
複数の前記陽電極と複数の前記陰電極とからなる電極群を備え、
該電極群は、
異なる極性の電極が一定間隔にて交互に並ぶ電極列を複数有し、
該複数の電極列が一定間隔で並列に並び、
かつ、隣接する列において隣り合う電極同士の極性が異なることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の濁水浄化装置。
【請求項1】
濁水中に挿入される陽電極及び陰電極と、該陽陰両電極間に電圧を印加する電源装置とを備え、前記電源装置によって前記陽陰両電極間に通電することによって前記濁水の浄化を行う濁水浄化装置において、
前記陽陰両電極は、
導電性を有する柱状本体部と、
該柱状本体部の内側に形成され、軸方向に延びる気泡誘導路と、
前記柱状本体部の周側面から前記気泡誘導路につながる連通孔と、
前記柱状本体部から発生する気泡の動きを前記連通孔に導くように規制する気泡規制部とを備えていることを特徴とする濁水浄化装置。
【請求項2】
前記気泡規制部は、前記柱状本体部の周側面に形成され、前記連通孔側に気泡規制面を向けて構成される鍔状体であることを特徴とする請求項1記載の濁水浄化装置。
【請求項3】
前記気泡規制部は、前記鍔状体の周縁から前記連通孔側に向けて延設され、前記連通孔を囲む周壁部を更に備えていることを特徴とする請求項2記載の濁水浄化装置。
【請求項4】
前記連通孔は、前記柱状本体部の軸方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の濁水浄化装置。
【請求項5】
前記濁水中に挿入される前記陽陰両電極間の距離は、濁度低下率が所定範囲内に納まるように設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の濁水浄化装置。
【請求項6】
前記陽電極と前記陰電極に印加される電圧の極性を切り替える切替手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の濁水浄化装置。
【請求項7】
複数の前記陽電極と複数の前記陰電極とからなる電極群を備え、
該電極群は、
異なる極性の電極が一定間隔にて交互に並ぶ電極列を複数有し、
該複数の電極列が一定間隔で並列に並び、
かつ、隣接する列において隣り合う電極同士の極性が異なることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の濁水浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−21171(P2006−21171A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203795(P2004−203795)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】
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