説明

濃度検知装置

【課題】本発明は、簡易で安価な濃度検知装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係る濃度検知装置1は、検知したい所望の濃度の溶液の比重とほぼ同じ比重の濃度検知用フロート10と、濃度検知用フロート10を溶液中で上下動可能に支持するフロート支持棒35と、濃度検知用フロート10の下降を検知するリードスイッチ15と、リードスイッチ15と配線51を介して接続された制御回路50と、を備えている。溶液の濃度が所望の濃度よりも低くなると、浮力が小さくなるため濃度検知用フロート10が下降し、リードスイッチ15から制御回路50へと下降検知信号が出力される。これにより、制御回路50は、溶液の濃度が所望の濃度よりも低くなったことを検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液の濃度を検知する濃度検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶液の濃度を検出するための濃度検出装置が提供されている。例えば、硬水を軟水化する軟水化装置のイオン交換樹脂を再生するための再生用塩水タンクにおいて、塩水の濃度を検知する濃度検出装置が用いられている。イオン交換樹脂の再生には、通常、塩水タンク内で調整された塩水を希釈して使用しており、塩水タンク内では20%以上の塩水濃度を確保する必要がある。このため、濃度検知装置により塩水タンク内の塩水濃度を監視している。
【0003】
この濃度検知装置としては、例えば、下記特許文献1に、圧力センサを用いて塩水タンク内の塩水濃度を検出する構成のものが開示されている。圧力センサを用いた濃度検知装置であれば、塩水の濃度(比重)をリニアに検知することが可能である。
【特許文献1】特開平6−288812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、圧力センサは高価であるため、装置のコストが高くなってしまう。さらに、半導体圧力センサは、個体誤差や温度誤差があり、また、ソフト上の分解能の影響も受けるため、測定精度が低くなるおそれがある。また、圧力センサを塩水タンクに取り付ける際に複雑な加工が必要であり、手間やコストがかかる。
【0005】
一方、濃度検知装置としては、リニアな濃度検知までは必要なく、ある任意の濃度(比重)が検知できる簡易な濃度検知装置で十分なケースも多い。例えば、軟水化装置の塩水タンクでは、塩水濃度が20%未満にならないように監視すれば良いので、塩水濃度が20%以上になったことを検知できる濃度検知装置で十分な場合も多い。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡易で安価な濃度検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る濃度検知装置は、溶液の濃度を検知する濃度検知装置であって、検知したい所望の濃度の溶液の比重とほぼ同じ比重のフロートと、前記フロートを溶液中で上下動可能に支持するフロート支持部材と、前記フロートの下降又は上昇を検知するセンサと、前記センサの出力から前記溶液が前記所望の濃度よりも低い濃度又は高い濃度になったことを検知する制御回路と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る塩水濃度検知装置は、軟水化装置の再生用塩水タンクにおける塩水の濃度を検知する塩水濃度検知装置において、検知したい所望の塩水濃度の比重とほぼ同じ比重のフロートと、前記フロートを塩水中で上下動可能に支持するフロート支持部材と、前記フロートの下降を検知するセンサと、前記センサの出力から前記塩水が前記所望の濃度よりも低くなったことを検知する制御回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易で安価な濃度検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る濃度検知装置の構成を概略的に示す断面図である。本実施形態では、軟水化装置のイオン交換樹脂を再生するための再生用塩水タンク60内に設置される濃度検知装置1を例に挙げて説明している。図1には、濃度検知装置1の塩水タンク60内への設置態様も示している。
【0011】
図1に示すように、濃度検知装置1は、濃度検知用フロート10、永久磁石11、リードスイッチ15、ストッパー20、補水停止用フロート30、フロート支持棒35、固定棒40、固定台41、把持部材42、制御回路50及び配線51を備えている。
【0012】
濃度検知用フロート10は、円柱形状であり、中心軸上に開けられた穴の中をフロート支持棒35が貫通している。よって、濃度検知用フロート10は、フロート支持棒35に沿って上下に移動自在である。また、濃度検知用フロート10には、永久磁石11が成型時に組み込まれており、この永久磁石11は、中心軸上の穴に面した下方側の位置に設置されている。
【0013】
フロート支持棒35は、塩水タンク60の底面に載置された固定台41に固定され、垂直に延在する固定棒40に、把持部材42を介して固定されている。これにより、フロート支持棒35は、間接的に塩水タンク60に固定され、タンク内に垂直に延在するように配置されている。
【0014】
フロート支持棒35の下端近傍にはストッパー20aが設置され、フロート支持棒35の真ん中より若干下よりであって濃度検知用フロート10の上方には、ストッパー20bが設置されている。よって、濃度検知用フロート10は、塩水内において、このストッパー20a,20bで挟まれた領域内で上下に移動可能である。
【0015】
補水停止用フロート30は、下方が開放端となる中空の円筒形状であり、上面の中心部分には、フロート支持棒35を通すための穴が開けられている。そして、補水停止用フロート30は、フロート支持棒35に通されて、ストッパー20bと把持部材42との間に設置されており、ストッパー20bと把持部材42との間で、上下に移動自在である。
【0016】
補水停止用フロート30は、塩水に浮く構造となっており、塩水タンク60内の水位に従って、補水停止用フロート30が上下動する。図示は省略するが、補水停止用フロート30が所定の高さまで上昇すれば、補水用の弁を閉じて補水が停止するように構成されている。
【0017】
フロート支持棒35は、上端が開放端、下端が閉鎖端となる中空であり、内部にリードスイッチ15が設置されている。リードスイッチ15は、濃度検知用フロート10の上下ストローク範囲の下側部分に設置されている。濃度検知用フロート10がこの位置まで下がってくると、リードスイッチ15は、永久磁石11の磁界に反応して、検知信号を出力する。リードスイッチ15は、配線51を介して制御回路50とつながっており、制御回路50は、濃度検知用フロート10がリードスイッチ15の位置まで下がってきたことを検知することができる。
【0018】
塩水タンク60内の所定の高さの位置には、細かいメッシュ状の網61が水平に設置されており、この上に固形の塩70(塩化ナトリウム)が置かれている。塩化ナトリウムの飽和濃度は、26%程度であり、塩水タンク60内の塩水の濃度が低くなると、網61の上の塩70が溶け出し、ほぼ飽和濃度に近い塩水を維持している。また、塩水タンク60内の上方に設置された網61の上に固形の塩70が置かれているので、塩水濃度が高く比重の大きい溶液が下降して、塩水タンク60内に対流を生じさせ、タンク内の濃度をできるだけ均一に保つことができる。
【0019】
また、塩水タンク60内には、濃度検知装置1を囲むように細かいメッシュ状の網63が設置されている。これにより未溶解の塩70が濃度検知装置1に接触するのを防止している。塩水タンク60の下部側面には、塩水タンク60と軟水化装置本体とを接続する配管である塩水ライン65が取り付けられている。
【0020】
ここで、本実施形態に係る濃度検知用フロート10の材料は、ポリフェニレンオキサイド(PPO)である、比重1.17のノリル(登録商標)である。比重1.17のノリル(登録商標)としては、例えば、日本ジーイープラスチック株式会社のグレードGFN1を用いることができる。比重1.17は、約22%の質量パーセント濃度の塩水の比重に相当する。
【0021】
したがって、塩水タンク60内の塩水の濃度が22%よりも高ければ、濃度検知用フロート10はフロート支持棒35に沿って上昇し、22%よりも低くなれば、フロートに作用する浮力が小さくなるため、濃度検知用フロート10は下降する。濃度検知用フロート10が下降し、永久磁石11がリードスイッチ15の位置まで達すると、リードスイッチ15から制御回路50へと下降検知信号が出力される。
【0022】
よって、制御回路50は、この濃度検知用フロート10の下降検知信号を受信することで、塩水タンク60内の塩水濃度が22%を切ったことを検知することができる。すなわち、制御回路50は、塩水タンク60内の塩水濃度を監視することができる。制御回路50は、リードスイッチ15の出力から、塩水濃度が22%よりも低い濃度になったことを検知すると、外部の警報器を作動させ、塩の補充が必要である旨を軟水化装置の管理者に知らせる。
【0023】
もちろん、本実施形態において、監視したい塩水の濃度に合わせて、濃度検知用フロート10を構成する材料を変更してフロートの比重を変えれば、適宜、所望の濃度よりも低下したことを検知することが可能である。
【0024】
以上、詳細に説明したように、本実施形態では、濃度検知用フロートの比重を、塩水の監視したい濃度に相当する比重にするという簡易な構成で、塩水濃度の検知を実現することができる。また、リードスイッチ等、安価な部品を使用しているので、濃度検知装置自体を低コストで作ることができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、濃度検知用フロート10は、塩水の溶液内で上下動するようにフロート支持部材35に支持されているので、表面が乾燥して塩が析出することなく、濃度検知用フロート10のスムーズな上下動を実現している。
【0026】
なお、塩水濃度検知用フロートの構成において、フロートの材料と異なる材料からなる部材を付加しており、塩水濃度検知用フロートの比重に対する影響が無視できない場合には、塩水濃度検知用フロートが目的とする比重になるように、各々の比重及び体積を調整する必要がある。調整を行っても塩水濃度検知用フロートの比重が目的とする比重よりも軽い場合は、フロートに錘となる別部材を追加する等の対策を行うこともできる。
【0027】
具体的には、濃度検知用フロート自体の比重が、検知したい所望の濃度に相当する比重から±10%以内に収まるようにすることが望ましく、濃度の検知精度を上げるためには、±5%以内収まるようにすることが望ましい。但し、濃度検知用フロート自体の比重が、当該フロートによる検知濃度に相当するように、フロートの形状は、中空や発泡したものではなく、中実のフロートにする必要がある。
【0028】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。図2は、本実施形態の変形例の構成を概略的に示す断面図である。同図に示すように、本実施形態では、フロート支持棒35にフロートを3つ設置したことを特徴としており、その他の構成は、上記実施形態とほぼ同じである。本変形例に係るフロート支持棒35には、4つのストッパー20a,20b,20c,20dが設置されている。
【0029】
フロート10及びフロート12は濃度検知用のフロートであり、濃度検知用フロート10は、上記実施形態と同じ構成である。濃度検知用フロート12は、濃度検知用フロート10と同様の構成を有し、永久磁石13を有しているが、濃度検知用フロート10とは材料が異なっている。濃度検知用フロート12を形成する材料は、ポリフェニレンオキサイド(PPO)である、比重1.10のノリル(登録商標)である。比重1.10のノリル(登録商標)としては、例えば、日本ジーイープラスチック株式会社のグレードN190Xを用いることができる。比重1.10は、約13%の質量パーセント濃度の塩水の比重に相当する。
【0030】
フロート31は、塩水の有無を検知するための塩水検知用のフロートであり、その構成は上記フロート10と同様の構成であり、永久磁石32を有しているが、濃度検知用フロート10とは材料が異なっている。塩水検知用フロート31を形成する材料は、比重0.92の低密度ポリエチレン(LDPE)であり、水よりも比重が小さい。
【0031】
濃度検知用フロート12及び塩水検知用フロート31もフロート支持棒35に上下動可能に支持されている。濃度検知用フロート12は、ストッパー20b,20cで挟まれた領域内で上下に移動自在に支持され、塩水検知用フロート31は、ストッパー20c,20dで挟まれた領域内で上下に移動自在に支持されている。
【0032】
また、フロート支持棒35の内部のストッパー20b,20cで挟まれた領域の下側部分には、リードスイッチ16が設置され、同じくストッパー20c,20dで挟まれた領域の下側部分には、リードスイッチ33が設置されている。リードスイッチ16,33は、配線51によって制御回路50に接続されている。よって、制御回路50は、リードスイッチ16からの検知信号により濃度検知用フロート12の下降、リードスイッチ33からの検知信号により塩水検知用フロート31の下降を検知することができる。
【0033】
ここで、上述したように、濃度検知用フロート12自体の比重は、塩水濃度13%に相当する比重1.10であるため、制御回路50は、濃度検知用フロート12の下降を検知することで、塩水タンク60内の塩水の濃度が13%よりも低くなったことを検知することができる。
【0034】
また、水よりも比重の低い塩水検知用フロート31は、塩水タンク60内に塩水が存在すれば、その液面に浮いている。そして、液面が下がってくると、液面と共に塩水検知用フロート31も下降する。よって、制御回路50は、塩水検知用フロート31の下降を検知することで、塩水タンク60内の塩水が減少したことを検知することができる。
【0035】
制御回路50は、リードスイッチ16の出力から、塩水濃度が13%を切ったことを検知すると、再度、外部の警報器を作動させ、塩の補充が必要である旨を軟水化装置の管理者に知らせる。また、制御回路50は、リードスイッチ33の出力から、タンク内の塩水の減少を検知すると、図示しない補水用の弁を開き、水の補充を行うように制御する。
【0036】
以上、本変形例によれば、上記実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、さらに2つのフロートを設置したことで、多段階の濃度検知と、塩水の減少の検知も行うことができるというメリットがある。
【0037】
以上、変形例も含めて本実施形態について詳細に説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、塩水の濃度を検知する塩水濃度検知装置を例に挙げて説明したが、本発明は、溶液の濃度を検知する濃度検知装置全般に広く適用可能である。
【0038】
また、本実施形態では、フロートに永久磁石を設けたうえで、リードスイッチによってフロートの下降を検知しているが、フロートの下降や上昇を検知するセンサとしては、適宜他のセンサを用いることができるのは言うまでもない。例えば、メカニカルなスイッチによりフロートの移動を検知しても良いし、光学的なセンサにより検知しても良い。
【0039】
また、本実施形態では、濃度検知用フロートの下降を検知することで、溶液の濃度が所定の濃度よりも低くなったことを検知するように構成したが、濃度検知用フローの上昇を検知することで、溶液の濃度が所定の濃度よりも高くなったことを検知するように構成しても良い。
【0040】
また、下降を検知する濃度検知用フロートと、上昇を検知する濃度検知用フロートの双方を設置しても良い。例えば、比重の異なる2つの濃度検知用フロートを設置し、比重の低い方のフロートの下降を検知すると共に、比重の高い方のフロートの上昇を検知するように構成すれば、監視対象の溶液の濃度が、低い方の比重に相当する濃度と、高い方の比重に相当する濃度との間の濃度範囲から外れたことを検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本実施形態に係る濃度検知装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、本実施形態の変形例の構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 濃度検知装置
10 濃度検知用フロート
11 永久磁石
15 リードスイッチ
20 ストッパー
30 補水停止用フロート
35 フロート支持棒
40 固定棒
41 固定台
42 把持部材
50 制御回路
51 配線
60 塩水タンク
61,63 網
65 塩水ライン
70 塩

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液の濃度を検知する濃度検知装置であって、
検知したい所望の濃度の溶液の比重とほぼ同じ比重のフロートと、
前記フロートを溶液中で上下動可能に支持するフロート支持部材と、
前記フロートの下降又は上昇を検知するセンサと、
前記センサの出力から前記溶液が前記所望の濃度よりも低い濃度又は高い濃度になったことを検知する制御回路と、
を備えることを特徴とする濃度検知装置。
【請求項2】
前記フロートは、検知したい所望の濃度の溶液の比重とほぼ同じ比重の材料から形成されたフロートであることを特徴とする請求項1記載の濃度検知装置。
【請求項3】
前記フロートは中実のフロートであることを特徴とする請求項1又は2記載の濃度検知装置。
【請求項4】
前記フロートと同様に前記フロート支持部材に支持される、前記フロートと比重の異なる第2フロートと、
前記第2フロートの下降又は上昇を検知する第2センサと、をさらに備え、
前記制御手段は、前記第2センサの出力から、前記溶液が、前記第2フロートの比重に相当する濃度よりも低い濃度又は高い濃度になったことをさらに検知することを特徴とする請求項1記載の濃度検知装置。
【請求項5】
軟水化装置の再生用塩水タンクにおける塩水の濃度を検知する塩水濃度検知装置において、
検知したい所望の塩水濃度の比重とほぼ同じ比重のフロートと、
前記フロートを塩水中で上下動可能に支持するフロート支持部材と、
前記フロートの下降を検知するセンサと、
前記センサの出力から前記塩水が前記所望の濃度よりも低くなったことを検知する制御回路と、
を備えることを特徴とする塩水濃度検知装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−168639(P2009−168639A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7490(P2008−7490)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)