説明

濾過システム

【課題】高濁度の水に対しても良好な浄化を実現できる緩速濾過法に基づく砂濾過システムが望まれていた。
【解決手段】第1濾過槽11および第2濾過槽12が直列に接続された2段式の砂濾過システムとする。第1濾過槽11の濾過速度は、第2濾過槽12の濾過速度よりも速くし、たとえば第2濾過槽12の濾過速度の4倍とする。第1濾過槽11で1次濾過された水は第2濾過槽12へ供給されるが、第2濾過槽12の濾過速度は第1濾過槽11よりも遅いため、供給された水の一部は溢水口20から溢水戻し管21を通って常時沈殿槽22へ戻される。
【効果】第2濾過槽12においてスカムの発生が抑制され、第1濾過槽11で1次濾過された水を第2濾過槽12において良好に緩速濾過法により濾過できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緩速濾過法を適用した濾過装置に関し、特に、緩速2段濾過法により水を濾過して浄化するための濾過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
緩速濾過法は、たとえば砂層と砂層表面に増殖した微生物群によって水中の浮遊物質や溶解物質等の不純物を捕獲、酸化分解する作用に依存した浄水方法である。この方法は、比較的良好な原水(被処理水)に適する方法で、生物の機能を阻害しなければ、水中の懸濁物質や細菌を除去できるだけでなく、臭気、鉄、マンガン等も除くことができるといわれている。
【0003】
浄化機能は、被処理水が細かい砂層を遅い速度で通過することにより、砂層表面で、水中の懸濁物質が抑留される。この抑留物質に、藻類や微生物が繁殖して、生物濾過層が形成される。この生物濾過層が形成されると懸濁物の阻止率が極めて高くなる。
緩速濾過における懸濁物の阻止は砂層の表面に集中するので、その部分で大きな濾過損失を生じる。砂層のごく表層のみで懸濁物の抑止が行われるので、濁度の高い水や藻類の異常に多い水は、表層の損失水頭を短時間に高め、濾過持続時間を短縮させる問題がある。よって、濁度が10度の被処理水が限界である。
【0004】
つまり、緩速濾過法は、一般に、被処理水の水質が比較的良好な場合には有効であるが、被処理水の水質が悪い場合には濾過効率や濾過性能を長時間良好に維持できない。
そこで、緩速濾過法によって、より効率の良い濾過を実現するために、逆洗付き2段細砂濾過装置が提案されている。
【特許文献1】特開2005−211804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水の浄化方法として、一般に、緩速濾過法および急速濾過法が知られている。急速濾過法は、日本で広く用いられている水の濾過方法で、濁った水に硫酸バンド等の薬品を注入して、沈殿除去後、高速に濾過する方法である。ところが、急速濾過法は、濾過槽以外の付帯設備に場所を要し、薬品を混入するとともに、有機物や細菌の除去のために塩素を添加しなければならない。このため、維持管理コストが高価になるとともに、薬品代等も必要であるという問題がある。
【0006】
そこで、本願発明者は、緩速濾過法に着目し、緩速濾過法において、(1)スカム対策(増殖藻類の対策)、(2)高濁度対策(濁度の高い水でも浄化できるように対策)、および(3)生活水混流水(有機物の含まれた水)に対する対策、を講じた新たな緩速濾過システムを開発した。
この発明は、高濁度の水に対しても良好な浄化を実現できる緩速濾過法に基づく濾過システムを提供することを主たる目的とする。
【0007】
この発明は、また、増殖藻類の発生を抑え、長期間良好な濾過を持続できる緩速濾過法に基づく濾過システムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、第1濾過槽で濾過された水を第2濾過槽に移送し、当該第2濾過槽で当該水を更に濾過する濾過システムであって、前記第1濾過槽は、第1水槽と、前記第1水槽内に収容され、第1水槽内を水が通過することにより水に含まれる不純物を濾過するための第1濾過層と、前記第1濾過層で濾過された水を取り出すための第1水出口と、前記第1水出口から前記第2濾過槽に水を移送するための配水管とを有し、前記第2濾過槽は、前記配水管を介して移送される水を溜める第2水槽と、前記第2水槽内に収容され、第2水槽内を水が通過することにより水に含まれる不純物を濾過するための第2濾過層と、前記第2水槽に所定水位以上溜まる水を溢水させるための溢水口と、前記第2濾過層で濾過された水を取り出すための第2水出口とを有し、前記第1濾過槽の濾過速度は前記第2濾過槽の濾過速度よりも速くされており、前記第2濾過槽は、常時、前記溢水口から水が溢れ出るようにされていて、前記溢水口から溢れ出る水を前記第1濾過槽側へ戻すための溢水戻し装置が設けられていることを特徴とする濾過システムである。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記第2水槽を覆う遮光部材を備え、当該遮光部材には所定の透過光量の採光部が設けられていることを特徴とする、請求項1記載の濾過システムである。
請求項3記載の発明は、前記第2水出口から流出する水を溜めるための逆洗浄用タンクと、前記逆洗浄用タンクに溜められた水を前記第1濾過層の下方から前記第1水槽へ流入させる逆洗浄用水路とを有し、前記第1水槽の上部には、逆洗浄時の水を流出させるための逆洗浄水出口が備えられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の濾過システムである。
【0010】
請求項4記載の発明は、逆洗浄時に、前記逆洗浄用タンクに溜められた水を前記逆洗浄用水路を介して前記第1水槽へ流入させる処理は重力を利用して行われることを特徴とする、請求項3記載の濾過システムである。
請求項5記載の発明は、前記第1水槽に流入する水を一定量に維持するための定量供給装置が備えられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の濾過システムである。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記定量供給装置は、水を前記第1水槽へ定量流入させるための水移送ポンプを含むことを特徴とする、請求項5記載の濾過システムである。
請求項7記載の発明は、前記定量供給装置は、前記第1水槽の上部に設けられ、供給される水を一定量ずつ第1水槽内へ流入させ、それ以上の水は前段側へ戻す計量槽を含むことを特徴とする、請求項5記載の濾過システムである。
【0012】
請求項8記載の発明は、前記第1濾過槽および/または前記第2濾過槽は、水の比重より重い粒状の濾材を含む構成であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の濾過システムである。
請求項9記載の発明は、前記溢水口から溢れ出る水量は、前記第1水槽へ流入する水の汚濁度に応じて変更することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の濾過システムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、被処理水は第1濾過槽および第2濾過槽で緩速濾過法による濾過され、2段階で濾過され、不純物が除かれた浄水となる。
請求項1において、濾過速度とは、単位時間当りに濾過槽で濾過される水量(濾過される水の総量)のことである。第1濾過槽の濾過速度は第2濾過槽の濾過速度よりも速くされているので、第1濾過槽では緩速濾過法および急速濾過法の双方の機能を併せ持った濾過が行われ、生物濾過槽の目詰まり等が生じにくく、被処理水中の不純物を大まかに除去される。
【0014】
そして、大まかに不純物が除去された被処理水は、第2濾過槽において緩速濾過により濾過され、浄水となる。第2濾過槽の水はその一部が常時溢れ出ているため、第2濾過槽においてスカムの発生を防止できる。
請求項2記載の発明によれば、第2濾過槽における生物濾過膜の育成を保ちながら、濾過に不適切な藍藻類等のスカムの発生を抑えた濾過システムとすることができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、第1濾過槽の第1濾過層を逆洗浄水により洗浄し、第1濾過層のメンテナンスを行うことができる。
逆洗浄は、請求項4記載のように、重力を利用して逆洗浄水を流す構成とすれば、逆洗浄のために大型の駆動装置(ポンプ等)を必要とせず、廉価な逆洗浄装置を備えた濾過システムとすることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、第1濾過槽の濾過速度に見合った量の被処理水を第1濾過槽へ供給することができる。よって、第1水槽から水が溢れたり、濾過する水が不足することがない。また、第1濾過槽はその濾過性能に応じた良好な濾過を行うことができる。
請求項6記載の発明によれば、水移送ポンプにより河川の水等を汲み上げ、第1濾過槽へ定量供給することができる。
【0017】
請求項7記載の発明によれば、第1水槽へ流入する水(被処理水)が計量槽で一定量に調整される。よって、第1水槽へ供給される水が、たとえば重力を利用して流れ込む水であって流量が経時的に変化する場合であっても、あるいはポンプにより汲み上げられる水であってポンプの汲み上げ性能が調整できないような場合であっても、常に一定量に調整することができる。
【0018】
請求項8記載の発明によれば、水の比重より重い粒状の濾材、たとえば砂、細砂、人工的に作ったセラミック粒子、金属粒子などを用いることにより、良好な緩速濾過を行うことができる。
請求項9記載の発明によれば、第2濾過槽により良好な緩速濾過を実現でき、また、スカムの発生を効率良く阻止することができる。さらに、被処理水の汚濁が多いときは溢水を増やし、戻し装置により戻された水が第1濾過槽で再濾過されるような構成とすることにより、第2濾過槽が短時間で閉塞することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下には、図面を参照して、この発明の一実施形態として、2段式の砂濾過システムを例にとって具体的に説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係る2段式砂濾過システムの全体構成を示す図である。この実施形態に係る砂濾過システムには、第1濾過槽11および第2濾過槽12が備えられており、第1濾過槽11および第2濾過槽12は直列に接続されている。
【0020】
第1濾過槽11は、円筒状の第1水槽13を有し、第1水槽13内には上方から流入する水を自然落下により通過させ、水に含まれる不純物を濾過するための第1濾過砂層14が収容されている。また、第1水槽13の上部には定量供給部としての計量槽15が備えられている。計量槽15は供給される水を一定量ずつ水槽13内へ流入させ、それ以上の水は上流側へ戻す機能を有している。計量槽15は、この実施形態では、5〜9L/minの流量で水(被処理水)を第1濾過槽11へ流入させる。第1水槽13の下部には、第1濾過砂層14で濾過された水を取り出すための第1水出口16と、第1水出口16から流出する水を重力により移送するための配水管17とが備えられている。
【0021】
第1水槽13の寸法は、直径φ=565mm、高さH=2000mmである。また、その内部に収容された第1濾過砂層14は、下層が砂利層(濾層厚:250mm)、上層がマンガン砂層(濾層厚:1000mm)の2層構造とされている。
第2濾過槽12は、遮光部材で構成された直方体状の第2水槽18を有する。第2水槽18内には上方から流入する水を自然落下により通過させ、水に含まれる不純物を濾過するための第2濾過砂層19が収容されている。第2水槽18の寸法は、長さL=1120mm、幅W=900mm、高さH=850mmである。第2濾過砂層19は下層が砂利層(濾層厚:300mm)で、上層がマンガン砂層(濾層厚:200mm)の2層構造とされている。そして、第2濾過槽12内の水深を示す揚程の上限は350mmとされ、それ以上の水(被処理水)が流入すると、その流入した所定水位以上の水は溢水口20から溢れ出る構成となっている。溢水口20には溢水戻し装置としての溢水戻し管21が接続されており、溢水は溢水戻し管21を経由して計量槽15の上流側である沈殿槽22へ戻される構成となっている。
【0022】
ここで、第1濾過槽11に溜められた水の水位23は相対的に高く、第2濾過槽12に溜められた水の水位24は相対的に低く、両水位の間には高低差h0 が生じるように設計されている。それゆえ、第1濾過槽11で濾過されて第1水出口16から流出する水は配水管17に案内され第2濾過槽12の第2水槽18上部から重力により自然流入する。
第2濾過槽12において第2濾過砂層19で濾過された水は、第2水槽18の下部に設けられた第2水出口25から流出する。そして浄水バッファタンク26に一時貯留され、浄化された処理水として取り出される。
【0023】
ここで、第1濾過槽11および第2濾過槽12の濾過方法について説明をしておく。
第1濾過槽11も、第2濾過槽12も、原理的には緩速濾過法による濾過を行っている。
第1濾過槽11および第2濾過槽12の濾過の仕様を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示すように、第1濾過槽11は、濾過速度が28m/日であり、第2濾過槽12は濾過速度が7m/日であって、第1濾過槽11の濾過速度が第2濾過槽12の濾過速度よりも速くされている。具体的には、この実施形態では、第1濾過槽11の濾過速度は第2濾過槽12の濾過速度の約4倍強に設定されている。
この実施形態では、第1濾過槽11の第1濾過砂層14を、250mmの支持層および1000mmの濾過層の2層構成とし、支持層を1.0〜10mmの砂利で構成し、濾過層は0.6〜1.2mmのフェライト系マンガン砂で構成した。
【0026】
一方、第2濾過槽12の第2濾過砂層19は、300mmの支持層および200mmの濾過層の2層構成とし、支持層は1.0〜10mmの砂利で構成し、濾過層は0.3〜0.35mmのマンガン砂で構成した。マンガン砂の粒径を0.3〜0.35mmとしたことにより、有機物に対する最適な濾過を行える。
緩速濾過法では、懸濁物の阻止は、濾過層(砂層)の表面に集中し、ごく表層のみで懸濁物の抑止が行われる。なぜなら、緩速濾過では、砂層の表層部に抑留された抑留物質に藻類や微生物が繁殖して生物濾過層が形成されることにより、懸濁物の阻止率が極めて高くなるからである。ところが、生物濾過層が珪藻類のみで構成されている場合は良好な濾過が行われるが、藍藻類が発生したり増殖するとスカムとなるので、スカム発生を防止しなければならない。さらに、緩速濾過では、砂層表層部のみで懸濁物の抑止が行われるので、表層部の損失水頭が高まった場合には、表層部のメンテナンスを行わなければならない。
【0027】
ところで、第1濾過槽11における濾過機能を厳密に考察すると、第2濾過槽12よりも濾過速度を速くしているために、緩速濾過法の特性と、急速濾過法の特性の両方の特性を有すると推定される。すなわち、(1)急速濾過における物理的処理(濁質成分の捕捉)、(2)緩速濾過における生物的処理(生物濾過)、の2つの特性を併せ持つと推定される。そこで、第1濾過槽11に対してのみ、逆洗浄による砂のメンテナンスを行う構成を採用した。
【0028】
すなわち、この実施形態では、第1濾過槽11の第1濾過砂層14を逆洗浄するための逆洗浄タンク30が備えられている。逆洗浄タンク30は、その容積がたとえば500Lであり、タンク内底面30bの高さ位置が第1濾過槽11の水位23よりも高い位置に設置されている。浄水バッファタンク26に溜まった浄水は、ポンプ31で汲み出され、汲み上げ水路32を通って逆洗浄タンク30に貯留される。逆洗浄タンク30内にはフロートスイッチ33が備えられており、フロートスイッチ33により逆洗浄タンク30内に浄水が満たされると、ポンプ31による汲み出しが停止される。
【0029】
第1濾過槽11により予め定める時間の濾過が行われるごとに、または、第1濾過槽11の損失水頭が所定値に達するごとに、逆洗浄タンク30に溜められた浄水は逆洗浄水供給管34を通って第1水槽13下部に設けられた第1水出口16から第1水槽13下方へ流入する。そして流入する水は第1水槽13内を上向流として流れ、第1濾過砂層14の逆洗浄を行う。これにより、第1濾過砂層14の主として表層部に付着していた抑留物質は第1水槽13の上部に設けられた逆洗浄水出口からオーバーフローにより流出する。逆洗浄終了後には、粒度の大きな砂から先に沈降し、下層に粒径の大きな濾過砂(支持材としての砂利)が成層し、上層に細かな濾材としての濾過砂(細砂層)が成層する。よって、逆洗浄後は、第1濾過砂層14は元の状態に戻る。
【0030】
なお、逆洗浄水供給管34、第1水出口16および配水管17の間で不所望の方向へ水が流れないように、第1水出口16近傍の逆洗浄水供給管34にはバルブ36が設けられ、同様に、第1水出口16近傍の配水管17にもバルブ37が設けられている。
第1濾過槽11の第1砂濾過層14を逆洗浄するために、浄水を逆洗浄タンク30に溜める構成を採用すると、比較的低能力のポンプ31により、浄水バッファタンク36に溜まった水を汲み上げることができ、逆洗浄のための装置構成を簡素なものとすることができる。換言すれば、逆洗浄タンク30を設けず、たとえば浄水バッファタンク26に溜められた水をポンプ圧により逆洗浄に用いようとすると、能力の高いポンプを用いなければならず、設備が高価なものとなってしまう。この実施形態では、逆洗浄タンク30を設け、逆洗浄水を重力により流す構成としたので、簡素な構成で逆洗浄を実現することができる。なお、高出力ポンプ等により第1濾過槽の逆洗浄を行う構成を採用することも、もちろん可能である。
【0031】
一方、第2濾過槽12には、その濾過速度以上に配水管17を通って第1濾過槽11で1次濾過された水が供給される。このため、第2濾過槽12の水位24が溢水口20に達すると、溢水口20から溢水戻し管21を通って余剰水が沈殿槽22へ戻される。この実施形態では第2濾過槽12内の上方に溜まった水は常時溢水口20から溢れ出ているため、第2濾過槽12に溜まった水の水面にスカムが発生することはほとんどない。
【0032】
また、第2濾過槽12は、第2水槽18が遮光部材で構成されると共に、遮光蓋27が被せられている。遮光蓋27には、たとえば直径200mmの入光用ガラス窓が備えられていて、当該ガラス窓からの光のみが第2濾過槽12内へ入射する仕組みである。それ以外の光は遮られている。このため、上記溢水と併せて、第2濾過槽12内で藍藻類が増殖することが防止されている。その反面、珪藻は育成するようにされている。よって、第2濾過槽12において緩速濾過による良好な2次濾過を行うことができる。
【0033】
なお、第2水槽18を遮光部材で構成し、遮光蓋27を被せる構成に代えて、第2水槽18(第2濾過槽12)を遮光部材で覆い、その遮光部材には所定の大きさ、または所定の透光性を有する採光部が設けられている構成としてもよい。つまり、藍藻類の増殖を阻止するが、珪藻の育成を助ける光を導入する採光部(採光窓や採光スリットなど)が設けられた構成としてもよい。
【0034】
第2濾過槽12において、溢水口20から溢水戻し管21を通って戻される水の水量は、第2濾過槽12へ供給される水の水量の1/20〜1/2の範囲に設定されている。この範囲であれば、溢水により藍藻の増殖を阻止でき(良好なスカム対策を実現でき)、濾過システムとしての損失、すなわち1次濾過された水を無駄にせず、いかに効率良く2次濾過するかという観点から見た損失も少ない。
【0035】
なお、戻される水の量は、被処理水の汚濁度により変更してもよい。被処理水の汚濁度が高い場合は、第2濾過槽12へ供給される水のたとえば約半分を溢水させて第1濾過槽11の上流側へ戻す。こうすると、第1濾過槽11で再濾過される被処理水の割合が増え、1次濾過によりある程度まで浄化された水を第2濾過槽12で緩速濾過することができる。よって、第2濾過槽12の濾過性能が長時間維持でき、メンテナンス回数を減らすことができる。溢水により戻す水の量は、被処理水の汚濁度が低い程、上記1/2より減らした所定量とすればよい。
【0036】
この実施形態においては、第1濾過槽11から第2濾過槽12へは、重力により水が移送される構成とした。このため、第2濾過槽12の溢水口20からの溢水は溢水戻し管21を通って沈殿槽22へ重力により戻される構成とした。つまり、溢水の戻し先を、第1濾過槽11側であって、第1濾過槽11よりも前段の水位が低い沈殿槽12とした。このような構成に代え、溢水口20からの溢水を、たとえば第1濾過槽11へ戻すように構成することも可能である。その場合、水の位置エネルギーが高い場所に戻すことになり、重力のみでは戻せない。そこで、溢水戻し管21にポンプを介挿(溢水戻し管21およびポンプ(図示せず)によって溢水戻し装置を構成)し、ポンプの力によって溢水口20からの溢水が第1濾過槽11(より具体的には第1水槽13の上方から該水槽13内)へ戻される構成とすることもできる。この場合、第1濾過槽11へ戻される溢水量は一定であるから、計量槽15を通じて供給される水の量を調整することにより、第1濾過槽11へ流入する水のトータル量を一定に維持することができる。また、この場合、第2濾過槽12からの溢水が第1濾過槽で確実に再濾過され、第2濾過槽12へ流入する水を相対的に濁度の低いものとすることができる。
【0037】
図1をさらに参照して、この実施形態では、河川の水がポンプ40により汲み上げられる。汲み上げ水路41におけるポンプ40の上流側にはたとえば金網等で構成された大きな塵挨を除去するためのフィルタ42が備えられている。ポンプ40で汲み上げられる河川の水(原水)は沈殿槽22に一旦溜められる。沈殿槽22にはフロートスイッチ43が備えられており、フロートスイッチ43によりポンプ40のオン/オフが制御される。汲み上げられた原水は、まず、第1槽22aに溜められる。第1槽22aに溜まった水は仕切り壁44を超えて第2槽22bへ流入する。すなわち、ポンプ40で汲み上げられた水は第1槽22aへ一旦流入し、原水に含まれる汚濁物質のうち重量の重いものは第1槽22aの底面に沈殿する。そして原水の主として上澄み水が第2槽22bへ流入する。
【0038】
沈殿槽22の第2槽22bの水はポンプ45により汲み上げ管46を通って汲み上げられ、被処理水用タンク47に溜められる。被処理水用タンク47にはフロートスイッチ48が備えられている。フロートスイッチ48により被処理水用タンク47に常時一定量の被処理水が溜まるようにポンプ45が駆動される。
被処理水用タンク47に溜まった水はポンプ49により汲み出され、給水管50を通って計量槽15へ供給される。そして計量槽15により水は一定量ずつ第1水槽13へ上方から供給される。たとえば5L/min(処理量7.2m3 /日相当)の水が供給される。それ以上の水は、循環管51を経て被処理水用タンク47へ戻される。
【0039】
上記の構成において、ポンプ49を、たとえば5L/minの水を定量汲み上げることのできる定量ポンプとすることにより、計量槽15および循環管51を省略することができる。
この実施形態では、河川の水を汲み上げ、第1濾過槽11へ供給するために3つのポンプ40、45、49を有する構成としているが、被処理水がたとえば山間部の池や湖等の水であり、その水を重力により第1濾過槽11へ導ける場合には、ポンプ等の動力源を不要にすることは、もちろん可能である。
【0040】
図2は、計量槽15の構成および作用を説明するための図解図である。
計量槽15は、小容量のタンク61を備え、タンク61の底面には給水管50(図1参照)の上端が連通されている。ポンプ49(図1参照)で汲み上げられる被処理水は給水管50を送られ、タンク61の底面側からタンク61内に溜まる。タンク61の上方側壁には流出口62が形成されている。タンク61に被処理水が溜まり、その水位が流出口62を超えると、流出口62から被処理水は流出して、第1濾過槽11(第1水槽13)へと流入する。流出口62の開口面積は一定であるから、流出口62全体を通って水が流出する際、その流出量は一定量に保たれる。給水管50によりタンク61へ供給される被処理水の量が流出口62から流出する水量よりも多い場合、余剰の水はタンク61の上部(流出口62よりも上位側)に設けられた戻し口63から流れ出、循環管51を通って被処理水用タンク47へ戻る。
【0041】
なお、計量槽15の構成は、上述した構成のものに限定されるわけではなく、被処理水を第1濾過槽11へ定量供給できる構成であれば他の構成であってもよい。
図3に、図1に示す2段式の砂濾過システムにより検証した被処理水の浄化における濁度の性能推移を示す。また、図4に被処理水の色度の性能推移を示す。
図3において、横軸は日数を示し、縦軸は濁度(NTU)を表わしている。
【0042】
図3に示すように、原水の濁度は、日により大きく変動している。これは、原水は河川の水であり、降雨時の汚濁の変動等により濁度が大きく変化するからである。
これに対し、第1濾過槽11で濾過した後の水はその濁度がかなり低くなっており、さらに第2濾過槽12により濾過した処理水は、その濁度がほとんどゼロに近く安定していることが理解できる。
【0043】
なお、図3において第11日目〜第20日目および第30日目〜第39日目の間は、装置の点検のために稼働させなかったので、データが欠落している。
図4の色度の性能推移のグラフにおいても、横軸は日数であり、縦軸は色度(TCU)を表わしている。
色度についても、原水である河川の水は降雨時の汚濁の変動が激しく、色度が大きく変動している。これに対し、第1濾過槽11で濾過した後の水はその色度がかなり低下されていることがわかる。さらに第2濾過槽12によって濾過された後の水は、原水の色度が大きい場合であってもかなり低い色度まで増加されていることが理解できる。
【0044】
図4においても、第11日目〜第20日目および第30日目〜第39日目の間は、装置を停止して点検していたため、データが取られていない。
図5に、図1に示す砂濾過システムに使用した原水、第1濾過槽11で濾過した後の水および第2濾過槽12で濾過した後の水を、参考写真として示す。
図5に示すように、茶褐色に濁った原水が、第1濾過槽11により濾過され、さらに第2濾過槽12で濾過された後には、透明な浄水になっていることが理解できる。
【0045】
この実施形態の2段式の砂濾過システムでは、第1濾過槽11の第1濾過砂層14にはフェライト系マンガン砂を用い、第2濾過槽12の第2濾過砂層19にはマンガン砂を用いたが、これは、浄水実験に使用した被処理水(原水)の特性を考慮したためである。濾材としての細砂の種類や粒径は、被処理水の性質に合わせて適切なものを採用すればよく、この実施例の内容に限定されるものではない。
【0046】
この実施形態では、濾過システムを砂濾過システムとして構成したので、濾材は、第1濾過槽11および第2濾過槽12共に砂(細砂)を用いた。しかし、この発明において、濾材は砂に限定されるものではなく、水の比重より重たい粒状の濾材、たとえばセラミック粒子、金属粒子等の砂以外の濾材を用いることもできる。
この発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の一実施形態に係る2段式砂濾過システムの全体構成を示す図である。
【図2】計量槽15の構成および作用を説明するための図解図である。
【図3】この発明の一実施形態に係る2段式砂濾過システムにより検証した被処理水の浄化における濁度の性能推移を示すグラフである。
【図4】この発明の一実施形態に係る2段式の砂濾過システムにより検証した被処理水の浄化における色度の性能推移を示すグラフである。
【図5】この発明の一実施形態に係る2段式の砂濾過システムに使用した原水、第1濾過槽11で濾過した後の水および第2濾過槽12で濾過した後の水を示す参考写真である。
【符号の説明】
【0048】
11 第1濾過槽
12 第2濾過槽
13 第1水槽
14 第1濾過砂層
15 計量槽
16 第1水出口
17 配水管
18 第2水槽
19 第2濾過砂層
20 溢水口
21 溢水戻し管
25 第2水出口
30 逆洗浄タンク
35 逆洗浄水出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1濾過槽で濾過された水を第2濾過槽に移送し、当該第2濾過槽で当該水を更に濾過する濾過システムであって、
前記第1濾過槽は、
第1水槽と、
前記第1水槽内に収容され、第1水槽内を水が通過することにより水に含まれる不純物を濾過するための第1濾過層と、
前記第1濾過層で濾過された水を取り出すための第1水出口と、
前記第1水出口から前記第2濾過槽に水を移送するための配水管とを有し、
前記第2濾過槽は、
前記配水管を介して移送される水を溜める第2水槽と、
前記第2水槽内に収容され、第2水槽内を水が通過することにより水に含まれる不純物を濾過するための第2濾過層と、
前記第2水槽に所定水位以上溜まる水を溢水させるための溢水口と、
前記第2濾過層で濾過された水を取り出すための第2水出口とを有し、
前記第1濾過槽の濾過速度は前記第2濾過槽の濾過速度よりも速くされており、前記第2濾過槽は、常時、前記溢水口から水が溢れ出るようにされていて、
前記溢水口から溢れ出る水を前記第1濾過槽側へ戻すための溢水戻し装置が設けられていることを特徴とする濾過システム。
【請求項2】
前記第2水槽を覆う遮光部材を備え、当該遮光部材には所定の透過光量の採光部が設けられていることを特徴とする、請求項1記載の濾過システム。
【請求項3】
前記第2水出口から流出する水を溜めるための逆洗浄用タンクと、
前記逆洗浄用タンクに溜められた水を前記第1濾過層の下方から前記第1水槽へ流入させる逆洗浄用水路とを有し、
前記第1水槽の上部には、逆洗浄時の水を流出させるための逆洗浄水出口が備えられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の濾過システム。
【請求項4】
逆洗浄時に、前記逆洗浄用タンクに溜められた水を前記逆洗浄用水路を介して前記第1水槽へ流入させる処理は重力を利用して行われることを特徴とする、請求項3記載の濾過システム。
【請求項5】
前記第1水槽に流入する水を一定量に維持するための定量供給装置が備えられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の濾過システム。
【請求項6】
前記定量供給装置は、水を前記第1水槽へ定量流入させるための水移送ポンプを含むことを特徴とする、請求項5記載の濾過システム。
【請求項7】
前記定量供給装置は、前記第1水槽の上部に設けられ、供給される水を一定量ずつ第1水槽内へ流入させ、それ以上の水は前段側へ戻す計量槽を含むことを特徴とする、請求項5記載の濾過システム。
【請求項8】
前記第1濾過槽および/または前記第2濾過槽は、水の比重より重い粒状の濾材を含む構成であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の濾過システム。
【請求項9】
前記溢水口から溢れ出る水量は、前記第1水槽へ流入する水の汚濁度に応じて変更することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の濾過システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−285618(P2009−285618A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143473(P2008−143473)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】