説明

濾過器

【課題】 本発明は、運搬や設置が容易で、かつ目詰まりを起こしにくい濾過器を提供することを目的とする。
【解決手段】 直方体形の骨組構造である枠体1と、該枠体1の内部に設置される袋状の濾布2と、該濾布2を前記枠体1に固定する濾布固定具3と、前記枠体1を積み重ねた際に一方の前記枠体1の上部と他方の前記枠体1の下部とが相互に係合する係止部4と、を備えていることを特徴とする濾過器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配水池の清掃により排出される固形物を含む水から固形物を除去する濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
配水池とは、浄水場から送水される水を一時的に貯留する施設であり、配水量の時間変動を調整し、また事故・災害時に一定量の給水を確保するためのものである。配水池に貯留される水は浄水場で浄化されているものの、砂、浄水場で形成されたフロック、配水池の構造物からはがれた鉄さび、天然由来のマンガンなどが含まれており、それらが長年の使用のうちに底部に堆積する。これらの堆積物が舞い上がると濁り水の原因となるため、一定期間ごとに清掃する必要がある。清掃に際しては貯留する水をすべて抜く方法もあるが、水資源の無駄が大きいことから、一般には潜水士または遠隔操作の清掃ロボットによって堆積物を水と一緒に排出する。図6は清掃方法の一例を示すものであり、清掃ロボット17が配水池16の底部を走行して堆積物18を捕集し、それを外部に設置したポンプ19により吸引ホース14を通して水と一緒に吸引する。吸引された堆積物18を含む水は、そのまま排水溝21などに排出すると、排水溝21の詰まりの原因となり好ましくない。そこで、ポンプ19から吐出された水は、排出ホース15を通して一旦沈殿槽20に貯留し、堆積物18を沈殿させてから排出する。
【0003】
ここで用いる沈殿槽は、堆積物を沈殿させる必要があることから、ある程度大きいものでなければならず、また一般には鉄製であり、人力で持ち運びできるものではない。よって、沈殿槽の運搬や設置にはクレーン付トラックなどを用いる必要があり、手間や経費がかかる。さらに、山中など車が入れない場所にある配水池の場合、そこまで沈殿槽を運搬すること自体が困難である。このような沈殿槽に替わって用いられるものとしては、文献1に記載の、枠体に脱水袋が吊り下げられた脱水処理装置がある。
【特許文献1】登録実用新案第3022737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この脱水処理装置は沈殿槽よりは軽量であると考えられるものの、主に運搬よりも収納時の効率向上を考慮したものであり、また、濾過のための脱水袋が単一であることから、目詰まりを起こしやすいと考えられる。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、運搬や設置が容易で、かつ目詰まりを起こしにくい濾過器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、直方体形の骨組構造である枠体と、該枠体の内部に設置される袋状の濾布と、該濾布を前記枠体に固定する濾布固定具と、前記枠体を積み重ねた際に一方の前記枠体の上部と他方の前記枠体の下部とが相互に係合する係止部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、骨組構造であることから軽量で、運搬および設置が容易である。また、係止部により二つ以上の本濾過器を積み重ねることが可能であり、濾布の目の粗細の異なる二つ以上の本濾過器を、濾布の目が粗いものを上にして積み重ねて使用することで、粒径の大きな砂などは上の濾過器で、粒径の小さなフロックなどは下の濾過器で捕集されるため、目詰まりを起こしにくく、大量の水を迅速かつ効率的に処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の濾過器の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。
【0009】
図1に示すのは、本発明の濾過器の斜視図である。立方体形の枠体1の内部に袋状の濾布2を設置し、さらに枠体1上面の各辺に沿って、濾布2の周辺部分を挟み込んで濾布固定具3を設置し、蝶ボルト7および蝶ナット(図示省略)で固定する。また、枠体1の下部には、二つ以上の本濾過器を積み重ねるための係止部4が設けられている。
【0010】
枠体1は、図2に示すように、十二本の同形の山形鋼を、溶接により立方体形に形成したものである。上面には蝶ボルト7を通すための枠体ボルト孔5が開けられている。また、枠体1の下面に切欠6を設けることで、二つの本濾過器を重ねた際に、上側の濾過器の枠体1と、下側の濾過器の蝶ボルト7とが干渉しない。
【0011】
濾布2は、一枚の正方形のメッシュ生地からなり、メッシュ生地の各辺中央部にタック8を設けて周辺部分を縫製(縫目9)することで、袋状に形成したものである。図3に、濾布2の斜視図を示す。周辺部分には枠体1の枠体ボルト孔5に対応する位置に濾布ボルト孔10が設けられ、ハトメによって補強されている。なお、メッシュ生地は、透水性があり、かつ砂やフロックなどの固形物を遮断するものであればどのようなものであってもよいが、本実施例においては、日本特殊織物株式会社のポリエチレン製メッシュを用いた。以下の表1に、5種類の製品についての規格を示す。
【表1】

【0012】
濾布固定具3は、図4に示すように、枠体1の一辺よりも短い山形鋼からなる固定部材11に、弾性部材12を接着したものである。固定部材11は平板状のものであってもよいが、山形鋼のほうが変形に強く、また使用時に垂直部分が枠体1に接するように設置することで簡単に位置決めすることができる。弾性部材12は直方体形のスポンジであり、濾布2を固定する際に、濾布固定具3を濾布2に密着させ、確実に固定するためのものである。素材はスポンジに限定されるものではなく、ゴムなどでもよい。固定部材11および弾性部材12には、枠体1の枠体ボルト孔5に対応する位置に固定具ボルト孔13が設けられている。
【0013】
係止部4は、一枚の平板からなり、枠体1の下部側面に溶接される。本実施例では、枠体1上部に設置される濾布固定具3の垂直部分が枠体1の縁より外側に突出する構造であるので、対面する係止部4の内側間の寸法が、対面する濾布固定具3の外側間の寸法よりわずかに大きくなるように形成する。係止部4をこのように形成することで、一方の濾過器の上部を他方の濾過器の下部に係合することができる。濾布固定具3が枠体1の縁より外側に突出しない構造である場合には、対面する係止部4の内側間の寸法が、枠体1の幅よりわずかに大きくなるように形成すればよい。係止部4は、二枚以上の平板からなるものや、枠体1の上面に凸部を、下面に対応する凹部を設けるものなど、二つの本濾過器を積み重ねて固定することができる構造であればどのようなものであってもよい。
【0014】
本発明の濾過器の使用方法を、図5に基づいて説明する。ここでは二つの本濾過器を使用する場合を示すものとし、それぞれを濾過器Fa、Fbとする。また、濾過器Faの各構成要素を1a、2a、・・・とし、濾過器Fbの各構成要素を1b、2b、・・・とする。濾過器Faと濾過器Fbとは、目の粗細の異なる濾布2aおよび2bを備え、ここでは、濾布2aはPE100、濾布2bはPE120からなるものとする。
【0015】
使用に際しては、まず本濾過器Fa、Fbを配水池のある場所まで運搬する。本濾過器Fa、Fbは骨組構造で非常に軽量であるので、車が入れないような場所であっても人力で運搬可能である。この際、枠体1a、濾布2a、濾布固定具3aおよび枠体1b、濾布2b、濾布固定具3bはあらかじめ組み立てられていてもよいし、別々に運搬して現地で組み立ててもよい。運搬が完了したら、排水溝21など排水できる場所の上に本濾過器Fa、Fbを設置する。この際、目の細かい濾布2bを有する濾過器Fbを下に設置し、その上に目の粗い濾布2aを有する濾過器Faを積み重ねて設置する。係止部4aにより、濾過器FaおよびFbは確実に固定される。
【0016】
濾過器Fa、Fbの設置が完了したら、配水池の清掃を開始する。本実施例では、清掃ロボットが配水池の中に潜り、底部の堆積物を捕集する。清掃ロボットには吸引ホースが接続され、外部に設置されたポンプの入口と繋がっている。さらに、ポンプ出口に排出ホース15が接続され、その他端は濾過器Faの上部に固定される。清掃ロボットによって捕集された堆積物は、ポンプにより吸引ホースを通して水と一緒に吸引され、さらに排水ホース15を通して濾過器Faへ排出される。濾過器Faでは、粒径の大きな砂などが捕集され、水と粒径の小さなフロックなどは下部の濾過器Fbへと流れ落ちる。濾過器Fbではフロックなどが捕集され、濾過された水は排水溝21へ排水される。
【0017】
濾過器Fa、Fbによって捕集された固形物は、配水池の敷地内に廃棄場所がある場合にはそこに廃棄し、ない場合にはあらかじめ回収容器を持参してその容器に回収する。濾布2a、2bは、捕集した固形物を廃棄して洗浄すれば繰り返し使用可能である。なお、回収容器を持参しなければならない場合であっても、沈殿槽を用いる場合よりははるかに運搬および設置における労力・費用の負担が少ない。
【0018】
本発明の濾過器は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、枠体1は直方体形でもよく、その場合は濾布2も長方形のメッシュ生地から形成する。また、枠体1の各辺をボルトにより固定することで分解可能としてもよい。さらに、濾布固定具3は、クリップ状でバネの弾性力により固定するものであってもよい。
【0019】
また、本発明の濾過器は、濾布2の目の粗細を適宜調整することで、配水池の清掃のほか、同様に固形物を含む水を排水する様々な場合に使用することができる。さらに、使用に際しては、三つ以上の本濾過器を積み重ねてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の濾過器を示す斜視図。
【図2】枠体を示す斜視図。
【図3】濾布を示す斜視図。
【図4】濾布固定具を示す斜視図。
【図5】本濾過器の使用状態を示す斜視図。
【図6】従来の沈殿槽を用いた配水池の清掃方法を示す説明図。
【符号の説明】
【0021】
1 枠体
2 濾布
3 濾布固定具
4 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形の骨組構造である枠体(1)と、該枠体(1)の内部に設置される袋状の濾布(2)と、該濾布(2)を前記枠体(1)に固定する濾布固定具(3)と、前記枠体(1)を積み重ねた際に一方の前記枠体(1)の上部と他方の前記枠体(1)の下部とが相互に係合する係止部(4)と、を備えていることを特徴とする濾過器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−93626(P2008−93626A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281374(P2006−281374)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(503196064)株式会社小矢部浄化槽管理センター (1)
【Fターム(参考)】