説明

濾過装置

【課題】濾過処理の能力を向上しつつ装置を小型化できるとともに逆洗浄時に濾布をムラなく洗浄できる濾過装置及び濾過エレメントの洗浄方法を提供すること。
【解決手段】濾過器本体内に配設され、当該濾過器本体内に流入した被処理流体を濾過した処理済流体を下流側へ送給する濾過エレメントを具備する濾過装置であって、前記濾過エレメントは、前記処理済流体が通過する貫通孔を周面に穿設した可撓性のホース体と、このホース体に覆設した筒状の濾布とを備えており、しかも、前記ホース体に螺旋体を巻着して、当該ホース体の外周面と前記濾布との間に間隙を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理流体を濾過処理するための濾過装置及び濾過エレメントの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、濾過装置は、様々な物質を濾過する産業分野や技術分野で使用されている。例えば、濾過装置は、中空状に形成された濾過器に濾過エレメントと称するフィルタユニットを内臓したものが知られている。この濾過装置は、濾過器内に被処理流体を注入し、濾過エレメントを介して被処理流体を濾過することにより処理済流体を得ることができる一方、濾過エレメントの濾過体表面には、被処理流体を濾過した後に残渣としての濾滓が蓄積することとなる。このような濾滓が蓄積して濾過効率が低下した濾過エレメントは、使い捨て交換する場合もあるが、一方で濾過エレメントに捕捉された濾滓を除去し、濾過エレメントを再生させて再利用する場合がある。
【0003】
後者の再生式の濾過エレメントを内蔵する装置のうち被処理流体として液体を濾過する濾過装置には、珪藻土等の濾過助剤を使用するものがある。具体的には、濾過体の濾過面に珪藻土の皮膜が積層されており、これら皮膜に被処理液体を通過させることで濾過処理が行われる。
【0004】
また、被処理流体として気体を濾過する濾過装置には、濾過エレメントに比較的目開きの小さい濾布を取り付け、この濾布に被処理気体を直接噴き付けて濾過処理を行うものがある。
【0005】
また、気体の濾過処理では、被処理気体に含まれる粒子物質の性状に応じて、様々な多穴性状の濾材、もしくは繊維状の濾材を使用することにより、粉塵物質から超微粒物質までの除去が行われる。これら濾材の形状としては、平板状や袋状の様々なタイプがある。特に精密な超微粒物質を濾過する濾過装置では、所定期間ごとに濾材を取り外し、洗浄処理が行われたり、或は濾材を廃棄した後に、新品に交換することが行われている。
【0006】
ここで、再生式の濾過エレメントを濾過再生する方法ついて詳説する。
【0007】
(1)濾過エレメントの濾過再生の方法としては、先ず、濾過器内に被処理液体を残留し、この被処理液体に濾過エレメントを浸漬した状態とする。次に、濾過エレメントの内側にブロワーや空気圧縮機で大量の気体を吹き込み、濾過エレメントの内側から外側に気体の噴出しを行うことにより、被処理液体と気体とによる気液混相流を発生させ、剥離洗浄を行う方法が一般に行われる。
【0008】
(2)その他の方法として、濾過エレメントの内部に圧縮気体を送気して逆流洗浄する方法が行われる。
【0009】
(3)また、被処理気体を濾過する濾過装置では、濾過エレメントを振動させることで濾布に付着した濾過物(ろ滓)を払い落とす方法、或は濾過器本体に振動機を設置し、この振動機の振動により濾過器本体を振動させて内部の濾過エレメントを振動させて濾布に付着した濾過物(ろ滓)を払い落とす方法が行われる。
【0010】
(4)さらには、濾過器内から濾過エレメントを取り外し、濾過器の外部にて濾過エレメントを液体洗浄し、その後、乾燥して、濾過器内に濾過エレメントを再装着する方法が行われることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−15296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上述した(1)の濾過エレメントの濾過再生の方法においては次のような問題がある。すなわち、被処理液体に浸漬した濾過エレメントを洗浄する処理では、濾過エレメントに送気する気体の密度が液体の密度と比較して非常に小さいため、濾過エレメント内部で気体と液体とに分離してしまい、結果的に、通過抵抗が少ない濾過エレメントの浸漬部の浅い方から気体が噴出して、剥離洗浄が均一に行えない問題があった。この問題の解決のために、濾過エレメントの全長が短いものを使用する必要があった。しかしながら、このような全長が短い濾過エレメントを用いて、所定容量の濾過処理能力を得るには、濾過器内に装着する濾過エレメントの本数を多くし、これら濾過エレメントを納める耐圧容器である濾過器本体の直径を大きくする必要があるため、装置コストが高くなるという欠点を有していた。しかも、このような短尺な濾過エレメントを複数収納した濾過装置において剥離洗浄を行うためには、気体の噴出がしやすいように濾過エレメントの目開きを大きく取る必要があった。このように目開きが大きいと一度に大量の圧縮空気が必要となり、コンプレッサが大型化してしまう問題も生じていた。
【0013】
また、濾過エレメントは、濾布をエレメントに密着させて構成した濾過面、或は、エレメント自体が濾過面を構成しているため、これら濾過面全体を充分に洗浄するにはやはり大量の圧縮空気を大型のコンプレッサで送気しなければならない。そのため、結果的に、大型のコンプレッサを作動させるための動力費が増大してしまっていた。さらに、大型のコンプレッサを作動させ、濾過エレメント内への空気吹き込み量を増加させたとしても、濾過エレメントの下端部付近では、濾滓の剥離洗浄が充分に行われないことが多く、再生される濾過面積の減少を招いてしまい、結果として装置の濾過能力の不足を来す状況となる問題があった。
【0014】
このように、濾過エレメントの全長を長くすることは好ましくないため、昨今では長尺の濾過エレメントを装着した濾過装置は殆ど存在せず、短尺の濾過エレメントが用いられてきたものの、上述した課題が残されているのが現在の状況である。
【0015】
また、従来では、上述した濾過エレメントの材質は硬い素材、例えば、ステンレス、磁器や硬い樹脂等を使用して製作されており、特に濾過エレメントを交換する作業の際に、濾過器にはメンテナンス空間が抜き出し方向に必要となり、しかも、このメンテナンス空間を濾過エレメント全長以上に設けなければならず、濾過器自体が大型化してしまうため、技術的、かつコスト的な両方の面で問題があった。その他に、濾過器から濾過エレメントを取り外すための別の方法としては、一旦、濾過器本体を移動可能な状態に分解して、設置場所から別の場所に移動した後に、この濾過器本体内から濾過エレメントを取り外す方法がある。しかし、このような方法では、分解工程、移動工程、取り外し工程のような多くの工程を要する問題があった。なお、上記濾過エレメントの材質に柔軟性を持たせようとした場合、内部の芯材が濾過圧で押しつぶされてしまうため、濾過エレメントの芯材を柔軟な材質の構造とすることは困難とされている。
【0016】
また、上記(2)の圧縮気体を送気して逆流洗浄を行う方法では、通常、濾過エレメントの外周面は平滑に形成されており、所定期間使用した濾過エレメントでは、濾布が芯材に密着してしまう。このような密着状態で、上記(2)の逆流洗浄を行う場合、エレメント内部に処理液体が残留していると、処理液体が濾布を介して逆流する抵抗が高く、圧縮気体が濾過エレメント下端まで到達せず流れを阻害し、不均一な剥離除去を起こすという現象があった。
【0017】
また、上記(3)の払い落とし方法のうち、濾過エレメントを振動させる方法では、新たに濾過器エレメントに伸縮装置を装着する必要があり構造が複雑になり装置コストが高くなる問題があった。
【0018】
さらに、上記(4)の濾過器内から濾過エレメントを取り外し、濾過器の外部にて濾過エレメントを液体洗浄した後、再装着する方法では、洗浄が困難な場合や再生処理のコストが高くなる問題があった。
【0019】
そこで、本発明は、濾過処理の能力を向上しつつ装置を小型化できるとともに逆洗浄時に濾布をムラなく洗浄でき、さらに、装置自体のコストを低減した濾過装置及び濾過エレメントの洗浄方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に記載の濾過装置は、濾過器本体内に配設され、当該濾過器本体内に流入した被処理流体を濾過した処理済流体を下流側へ送給する濾過エレメントを具備する濾過装置であって、前記濾過エレメントは、前記処理済流体が通過する貫通孔を周面に穿設した可撓性のホース体と、このホース体に覆設した筒状の濾布とを備えており、しかも、前記ホース体に螺旋体を巻着して、当該ホース体の外周面と前記濾布との間に間隙を形成したことを特徴とする。
【0021】
請求項2に記載の濾過装置は、請求項1に記載の濾過装置において、前記濾過器本体は、前記被処理流体が流入する下室と、前記処理済流体が流入する上室とに区画されており、前記ホース体は、前記上室と下室を区画する目板に垂下されるとともに、下端部には錘が取付けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項3に記載の濾過装置は、請求項2に記載の濾過装置において、前記下室に前記被処理流体を供給する供給流路及び前記濾過エレメントを洗浄した後の洗浄済流体を排出する排出流路を接続する一方、前記上室には前記処理済流体を排出する出口流路及び前記濾過エレメントを洗浄するための洗浄流体を供給する洗浄流体供給流路を接続し、前記各流路に流量を制御するための弁を設けるとともに、前記濾過器本体には、内部圧力を開放するための圧力開放弁を設けたことを特徴とする。
【0023】
請求項4に記載の濾過エレメントの洗浄方法は、前記請求項1から請求項3の何れか1項に記載の濾過装置における濾過エレメントの洗浄方法であって、前記濾過器本体の圧力を開放するとともに、前記濾過エレメントのホース体に洗浄流体を注入して濾布を洗浄する逆洗浄工程を有することを特徴とする。
【0024】
請求項5に記載の濾過エレメントの洗浄方法は、請求項4に記載の濾過エレメントの洗浄方法において、前記逆洗浄工程では、前記ホース体に、洗浄流体としての洗浄液体と洗浄気体とを交互に注入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明によれば、濾過器本体内に配設され、当該濾過器本体内に流入した被処理流体を濾過した処理済流体を下流側へ送給する濾過エレメントを具備する濾過装置であって、前記濾過エレメントは、前記処理済流体が通過する貫通孔を周面に穿設した可撓性のホース体と、このホース体に覆設した筒状の濾布とを備えており、しかも、前記ホース体に螺旋体を巻着して、当該ホース体の外周面と前記濾布との間に間隙を形成した。
したがって、濾過エレメントは、可撓性を有したホース体に螺旋体を巻着することにより、濾過処理工程の際の濾過圧に対してホース体の筒形状を維持することができる。かかる構成とすることで、濾過エレメントを可撓性としながら長尺構造とすることができ、1本当たりの濾過面積を大きくすることができるため、濾過処理の能力を向上できるとともに、濾過器本体に収納する濾過エレメント数を大幅に削減することができる。また、耐圧設計が施されている濾過器本体は、その径を大幅に小さくすることができる。このように、高価な濾過エレメントの本数の削減をすることができるために、装置コストを削減することができる。また、濾過エレメントは長尺構造としながらも可撓性であるために、濾過器本体におけるメンテナンス空間を狭くしても濾過エレメントを濾過器本体内から抜き出すことができる。すなわち、濾過器本体の全長を濾過エレメントの全長より若干大きくするだけで抜き出すことができる効果があり、装置を小型化することができる。しかも、逆洗浄時にホース本体の貫通孔を介して洗浄流体が噴出し、さらに、螺旋体に沿って流下することで、ホース体外周面から濾布を剥離し、洗浄流体が間隙に均一に充満し、長尺な濾過エレメント全体に行き渡らせて、均一に逆流洗浄を行う効果がある。このような逆洗浄が可能となり、洗浄流体を送るコンプレッサを大型する必要がなくなる効果がある。本濾過装置は濾過エレメントを濾過器内に取り付けたまま逆洗浄することができるため再生コストを低減することができる。また、本濾過装置によれば、逆洗浄を行うための構造が単純であるため、装置自体のコストを低減できる。
【0026】
請求項2の発明によれば、前記濾過器本体は、前記被処理流体が流入する下室と、前記処理済流体が流入する上室とに区画されており、前記ホース体は、前記上室と下室を区画する目板に垂下されるとともに、下端部には錘が取付けられているので、この錘の重さにより可撓性の濾過エレメントをまっすぐにして、濾布の損傷を防止することができる。
【0027】
請求項3の発明によれば、前記下室に前記被処理流体を供給する供給流路及び前記濾過エレメントを洗浄した後の洗浄済流体を排出する排出流路を接続する一方、前記上室には前記処理済流体を排出する出口流路及び前記濾過エレメントを洗浄するための洗浄流体を供給する洗浄流体供給流路を接続し、前記各流路に流量を制御するための弁を設けるとともに、前記濾過器本体には、内部圧力を開放するための圧力開放弁を設けた。したがって、逆洗浄時において、濾過器本体の内圧力を開放することで洗浄流体の瞬時的な流れが濾過エレメント内に発生させる。すなわち、ホース体に流入した洗浄流体がホース体上部の貫通孔から噴出し、洗浄流体が瞬時に濾布を膨張させつつホース体の螺旋体に沿って流下する。このとき、濾布はホース体の外周面に張り付いた状態から一気に引き剥がされることとなる。濾布の張り付きを一気に引き剥がすことができるため、大型コンプレッサを用いる必要がなくなり、装置の設置コストを低減することができる。
【0028】
請求項4の発明によれば、前記濾過器本体の圧力を開放するとともに、前記濾過エレメントのホース体に洗浄流体を注入して濾布を洗浄する逆洗浄工程を有するので、ホース体に流入した洗浄気体がホース体上部の貫通孔から噴出し、洗浄気体が瞬時に濾布を膨張させつつホース体の螺旋体に沿って流下し、濾布はホース体の外周面に張り付いた状態から一気に引き剥がされることとなる。このように膨張した状態で濾布面から洗浄気体が噴出するため濾布の洗浄ムラが生じることなくきれいに洗浄することができる。
【0029】
請求項5の発明によれば、前記逆洗浄工程では、前記ホース体に、洗浄流体としての洗浄液体と洗浄気体とを交互に注入するので、気体の濾過においても、洗浄気体と洗浄液体との併用洗浄を可能とするため、濾過器本体内から外部への取り外し洗浄を行う必要がなく、さらに、乾燥工程を付加することにより取り外しを行わず濾過エレメントの使用を継続することができ、メンテナンス労力の大幅な軽減とコストの削減をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る濾過装置を示す全体概念図である。
【図2】ホース体の要部を示す正面図である。
【図3】濾過エレメント上部の接続状態を示す断面図である。
【図4】濾過エレメント下部の接続状態を示す断面図である。
【図5】濾過エレメントを示す平面図である。
【図6】濾過装置の濾過工程から逆洗浄工程までの各種処理を示す説明図である。
【図7】濾過装置の濾過工程から逆洗浄工程までの各種処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本実施形態に係る濾過装置は、濾過器本体内に配設され、当該濾過器本体内に流入した被処理流体を濾過した処理済流体を下流側へ送給する濾過エレメントを具備する濾過装置であって、前記濾過エレメントは、前記処理済流体が通過する貫通孔を周面に穿設した可撓性のホース体と、このホース体に覆設した筒状の濾布とを備えており、しかも、前記ホース体に螺旋体を巻着して、当該ホース体の外周面と前記濾布との間に間隙を形成した。
【0032】
すなわち、長尺なホース体に線形状の螺旋体を形成することで凹凸となる螺旋溝が設けられることにより、濾過工程において濾布が濾過圧で押圧され、螺旋状のホース体に密着したまま濾過処理を終了し、ホース体の内部の処理液体を全て抜くことなく、逆洗浄処理を行った場合に、圧縮空気(洗浄流体)がホース体から貫通孔を介して噴出し、連続した螺旋溝に沿って圧縮気体が伝わるため剥離用圧縮空気の流入を阻害せず、圧縮気体により長尺の濾布全体が瞬時に膨張し、濾布表面全体からろ滓剥離除去が行われることを見出したものである。
【0033】
上記濾過器本体は、前記被処理流体が流入する下室と、前記処理済流体が流入する上室とに区画されており、前記ホース体は、前記上室と下室を区画する目板に垂下されるとともに、下端部には錘が取付けられている。
【0034】
また、濾過エレメントは、その全長を、例えば、1m以上10m程度の長尺な螺旋構造とすることができる。かかる構造とすることで、濾過エレメント表面に蓄積したろ滓を剥離除去する圧縮空気の消費量を削減することができる。また、濾過エレメントの材質を可撓性とすることで、濾過器内において濾過エレメントを設置する作業及び交換する作業に必要なメンテナンス空間を最小とすることができる。
【0035】
さらに、ホース体の下端部には、球状の錘を配設している。ホース体を目板に垂下し、濾過エレメントの撓みを是正し下方に引っ張る構成としている。
【0036】
ホース体の外周面には、線形状とした硬質な金属もしくは硬質樹脂を連続的に螺旋状に巻回して螺旋体が形成される。さらに、螺旋体が、ホース体の外周面の巻回部分から移動しないように接着もしくは溶着される。
【0037】
このようにホース体に螺旋体を形成することによりホース体自体の剛性を高めつつ、濾過操作での耐圧性を高めながら可撓性を有する性状を有するホース体構造とすることができる。
【0038】
上記ホース体には、ホース体の外周面と螺旋体からなる螺旋溝に貫通孔を穿設している。具体的に螺旋溝は、ホース体の外周面に硬質の線状体をスパイラル状に連続して巻き付けた螺旋体に沿って連続して構成される。このようにホース体の外周面に筒状の濾布を装着することで濾過エレメントを構成することとなる。
【0039】
ホース体の貫通孔は、濾過工程時に処理済流体の集孔として機能する一方、洗浄工程時には、ホース体内に注入して洗浄する洗浄気体もしくは洗浄液体の噴出孔として機能するものである。
【0040】
ホース体の外周面に連続した螺旋溝を設けることにより、ホース体内に残留した流体、特に処理済液体が残留しても、逆流洗浄用の洗浄気体及び洗浄液体がホース体の上部側の貫通孔から噴出して、連続した螺旋溝に沿って長尺の濾過エレメント全体に均一に到達し、濾布内面から外面に向って洗浄気体或は洗浄液体が噴出することで、濾布面全体が回復し、長期間に渡る円滑な濾過処理を提供することができる。
【0041】
また、本濾過エレメントは、長尺構造とすることで、1本当たりの濾過面積を大きくすることができるため、濾過器本体に収納する濾過エレメント数を大幅に削減することができるとともに、耐圧設計している濾過器本体の径を大幅に小さくすることができる。このように、高価な濾過エレメントの本数の削減をすることができ、また、耐圧化している濾過器本体を細身化することにより、濾過器本体の肉厚を大幅に薄くでき、装置コストを削減することができる。
【0042】
さらに、濾過エレメントは、柔軟性を有したホース体に線状の硬質樹脂もしくは針金を巻回することにより、濾過処理工程の際の濾過圧に対してホース体の筒形状を維持することができる。また、さまざまな濾過圧に応じて、硬質樹脂もしくは針金を巻きつける回数やその材質を適宜選定することによりホース体の耐圧性能を調整することができる。
【0043】
さらに、濾過エレメントは、その材質を可撓性としつつ、濾過器本体の上部に吊り下げる構造とすることにより、濾過エレメントの下端部が自由な状態となる。濾過エレメントは、吊り下げ部の脱着操作を行う際に、濾過器本体内の非常に狭い空間で取り外しを行うことができるため、全体の設備設置の大幅なコストの削減ができる。
【0044】
濾過エレメントは、全長を長尺構造とすることで、気体の濾過処理の際に、濾過処理容量を大幅に増加させることができ、長期間の使用後の取り外し洗浄も容易にでき、コスト削減も大幅に可能である。また、ろ滓の振り落としの際にも濾過エレメントの下端部が自由であるため、振動が自由に伝わりやすく払い落とし操作での効果が大きくなる。
【0045】
液体の濾過処理の場合において、濾過器本体内の濾過圧を初期0.1[MPa]程度で始め、次第に0.2[MPa]程度の圧力に上昇するまで、数十分〜数時間、もしくは数日間、濾過を継続する。その後、濾過エレメントの濾布面にろ滓が蓄積してくると、濾過の圧力が規定以上に上昇し、例えば、濾過圧が0.3[MPa]程度になったとき、ろ滓の剥離除去操作を行う。そして、剥離除去を行う逆洗浄工程を行った後に、再度、濾過エレメントによる濾過処理を開始する。
【0046】
逆洗浄工程では、濾過器内に被処理液体が存在した状態で内部圧力を開放すると同時に、濾布内面に圧縮空気を吹き込むと、ホース体の外周面から剥離しつつ濾布が円柱状に膨張し、気体が内面から外面に吹き出すことにより、ろ滓を剥離除去する操作が行われる。
【0047】
すなわち、剥離除去操作を行う場合には、前記濾過処理により濾布がホース体に押圧されて、濾布とホース体とが密着した状態であるために、濾布をホース体から剥離させるために大きなエネルギーを必要とし、このエネルギーは、上から順次濾布を円柱状に膨張させ下端まで伝達することとなる。このとき濾布が膨張した部分では、ろ滓の剥離除去が進行し、その部分から圧縮空気が濾布より放出されるとともに、濾布膨張により生じた濾布とホース体との間隙より圧縮空気が内部全体にも周り濾布全体の剥離洗浄が行われる。この状況を発生させるには、圧縮空気を瞬時に流入させることも必要となる。
【0048】
なお、この逆流洗浄の圧力は被濾過流体と含まれる濾過補足物質により異なるが、逆洗浄時の濾過圧を調整することで広範囲の流体に適用が可能である。
【0049】
また、被処理流体のうち気体の濾過処理では、ホース体の内部に液体がないため、ホース内部全体に洗浄用気体が充満し易い、すなわち、凹凸用の螺旋溝内にある貫通孔より噴出する洗浄用気体が濾布を持ち上げ、同時にホース体の外周面の連続した螺旋溝に沿って洗浄用気体が伝播することにより、ホース体と濾布との完全剥離を容易にし、濾布全体の逆流洗浄を行うことができ、濾布全体の再生が円滑になされる。
【0050】
[濾過装置の構成]
本実施形態に係る濾過装置について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る濾過装置を示す全体概念図、図2はホース体の要部を示す正面図、図3は濾過エレメント上部の接続状態を示す断面図、図4は濾過エレメント下部の接続状態を示す断面図、図5は濾過エレメントを示す平面図である。
【0051】
本実施形態に係る濾過装置1は、図1に示すように、被処理流体を濾過して、その処理済流体を導出する濾過エレメント4と、複数本の濾過エレメント4を収納する濾過器本体3とからなる濾過器2を具備している。
【0052】
濾過器2には、被処理流体、処理済流体及び濾過エレメント4を洗浄するための洗浄流体を供給・排出する各種流路が設けられている。すなわち、濾過器2の上室3aには、処理済流体を排出するための出口流路11及び洗浄流体を供給するための洗浄供給流路12を連通連結している。一方の濾過器2の下室3bには、被処理流体を供給するための供給流路13及び洗浄流体を排出するための排出流路14を連通連結している。これら各流路11,12,13,14には、各種流体の導通を制御する出口弁11a,洗浄弁12a,供給弁13a,排出弁14aがそれぞれ設けられる。さらに、濾過器2には、その内部圧力を開放するための圧力開放弁15が設けられる。なお、上記弁11a,12a,13a,14aは、弁体の開度を調整することにより、流体の流量を制御するようにしてもよい。また、洗浄供給流路12に洗浄弁12aの他に、別途圧力を調整するための逃し弁を設けるようにしてもよい。あるいは、洗浄供給流路12に別途圧力を調整するための圧力調整タンクを設けるようにしてもよい。
【0053】
濾過器本体3には、内部空間を上室3aと下室3bに区切るための強度な目板5を配設している。目板5には、複数の濾過エレメント4を取り付けるための開口部16が複数形成される。具体的には、後述する中空状のホース体21を下部カップリング22に接続し、この下部カップリング22に上部カップリング23を接続し、これら一体化した上部カップリング23を開口部16に接続している(図3参照)。両カップリング22,23は、内部を中空状に形成している。上室3aと濾過エレメント4内とは、目板5の開口部16を介して導通している。
【0054】
濾過エレメント4は、長尺な可撓性のホース体21とホース体21を覆うように取付けた筒状の濾布25とからなり、ホース体21の外周面には、螺旋体24としての針金が螺旋状に例えば1〜2cmの間隔で巻着される。
【0055】
なお、螺旋体24は、線状の硬質樹脂を巻着して構成してもよいし、或は、ホース体21の外周面に一体成形するようにしてもよい。
【0056】
図2に示すように、ホース体21には、処理済流体或は洗浄流体を通過させる適宜直径1〜5mm程度の貫通孔21a,・・,21aが穿設されており、これら貫通孔21aは、隣り合う螺旋体24,24間に設けられる。
【0057】
図4に示すように、ホース体21の下端部には、ステンレス製の錘26を配設しており、その重さは、可撓性のホース体21を真っ直ぐに引っ張ることができる重量である。また、錘26は、基端側にホース体21に螺合する雄ネジ部26aと、先端側に設けた球形状の錘部26bとを有しており、錘部26bの直径R1は、ホース体21の外径R2以上の大きさとなる(図5参照)。かかる大きさとすることで、垂下したホース体21,21同士が衝突した場合に、錘部26b,26b同士が衝突するため各濾布25を損傷することがなくなり、長期にわたり濾過処理を効率よく行うことができる。
【0058】
なお、錘部26bの形状は、球状の他に円柱状であってもよい。
【0059】
また、図5に示すように、濾布25の外径R4は、ホース体21の螺旋体24を含む外径R3より、10%から30%程度大きいものが逆洗流体を流入させた際に、濾布25全体が膨張して洗浄効果が高くなる。一方、上記外径R4が10%よりも小さい場合は、濾布25をホース体21に装着する時間を要し、特に曲がりのある長尺構造のホース体21に装着する作業が難渋することとなる。外径R4が30%よりも大きい場合は、ホース体21と濾布25との間隙Sが大きくなり過ぎて、洗浄流体が間隙S全体に行き渡らなくなり、濾過エレメント下部の洗浄が十分にできなくなる。
【0060】
また、ホース体21外径と濾布25内径との間に形成される間隙S(図4参照)は、洗浄気体としての圧縮空気がこの間隙に均一に充満し、長尺な濾過エレメント全体に行き渡らせて、逆流洗浄の効果を発揮するために必要である。
【0061】
濾過エレメント4を濾過器本体3内から外部へ取り外す場合には、濾過器本体3の取付けネジ27を外し、濾過エレメント4と目板5とが連結したまま上部に20cm〜50cm引き上げて、下部カップリング22を上部カップリング23から取り外し、可撓性な構造を利用しつつ濾過器本体3内から濾過エレメント4を外部に引き出す。この際に、濾過エレメント4の落下を防止するため落下防止紐28を上部カップリング23と下部カップリング22とに取り付ける。なお、落下防止紐28は、その他端を目板5の下部に直接取り付けるようにして良い。
【0062】
濾過エレメント4はコイル状に巻いた状態で保管されることがある。このため、濾過器本体3に取り付けた場合に、濾過エレメント4に曲がりの癖がついているため、取り付けた後に垂直状態を保持することが困難な状態が見られる。そのため、ホース体21の下端部に球状の錘26を装着して垂直状態を保持させるようにしている。
【0063】
図3及び図4に示すように、筒状の濾布25は、濾布取付バンド29,29を介してホース体21の外周に取り付けられる。濾布交換時には、濾布取付けバンド29を弛めることにより濾布25の取り外しが容易にでき、また、濾過エレメントの内部が汚染された場合、洗浄し易い構造となっている。なお、濾布25の上に濾布取付けバンド29を装着して締め付けるようにしたが、番線等を用いて締め付けるようにしてもよい。また、濾布取付けバンド29の上に濾布25を被覆して、その上をホースバンドを用いて締め付けるようにしてもよい。
【0064】
濾過エレメント4は、ホース体21を柔軟性のある材質とし、且つ貫通孔21aを有したホース体21の外周に硬質の螺旋体24を連続的に巻きつけた構造とすることにより、濾過時ホース体外周にかかる濾過圧に対して、つぶれない構造とすることができる。また、ホース体21の肉厚と螺旋体24の強度を変えることにより、耐圧性を強化することができる。
【0065】
可撓性を有した本濾過エレメントでは、濾過エレメントが曲がったままであると、長期間の使用で隣接する他の濾過エレメントと接触することにより、濾布同士の磨耗による損傷が発生し、流体の処理性能、特に本来捕捉可能な粒子が処理側に漏洩する等の状況となり、処理済流体の悪化のみならず、損傷濾布の頻繁な交換をもたらし、メンテナンス時間の消費等で稼働率を低下させ、同時に大幅なコストアップをもたらす要因となるため、下端部に錘を設けることは重要な技術事項である。
【0066】
かかる構造の濾過エレメントは、従来の硬質な濾過エレメントと比べて、大幅に少ないメンテナンススペースで装着や引き抜きができるため、濾過器本体のスリム化と装置全体のスリム化が達成され大幅なコスト削減を達成することができる。
【0067】
このような濾過エレメントを用いて濾過処理を行った場合に、濾過圧により筒状の濾布がホース体外周面に押圧されて密着した状態となる。
【0068】
しかし、本濾過エレメント4は、ホース体21の外周面に硬質な材質の螺旋体24を有することにより、逆洗浄処理の際に、濾布25がホース体21の外周面から剥離するとともに、螺旋体24がホース体21と濾布25との間に流体の流れる流路を連続して構成することができ、ホース体21の内部に残存の液体が存在しても、長尺エレメント全体を気体による逆流洗浄が可能となり、従来にない長尺構造の濾過エレメントを可能としたものである。
【0069】
本実施形態の濾過装置によれば、長尺の濾過エレメントを使用することにより、濾過エレメント数を大幅に削減することができるために、濾過器本体の口径を小さくすることができ、濾過器を設置する面積等を大幅に削減することができる。
【0070】
また、濾過エレメントの材質は、可撓性を有しているために、取り外し時のメンテナンス空間を大幅に削減でき、例えばメンテナンス空間として数十センチを考慮すればよく、濾過エレメントの全長としては限界がなく、例えば10mを超える超長尺のものとすることができる。すなわち、数十メートルの配管を濾過器本体として、この配管の中に配管長より若干短い濾過エレメントを装着した濾過器を作ることもできる。
【0071】
通常、濾過装置は、濾過処理を継続すると、濾布にろ滓が蓄積し、濾過圧の上昇や目詰まりが発生し、濾布の洗浄もしくは交換が必須となる。しかし、本濾過装置では、濾過エレメントを長尺構造とすることで、その本数を削減することができ、装置自体の大幅なコストダウンを実現することができる。
【0072】
また、従来の濾過装置では、長尺濾過エレメントで下端を支持する構造では剛体の構造での直立を必要とし、濾過エレメントの上端を支持する構造で可撓性のない剛体の濾過エレメントの取り外しでは、濾過器本体を横倒し、濾過器本体の一部を分解し濾過エレメントを取り出すか、又は使用する長尺エレメントの長さ以上の上部空間を必要とし、取り外しメンテナンスの際仮設足場もしくは恒常的な足場とクレーン設備等を必要としていた。
また、従来の濾過エレメントの上下の両端を支持する構造は、内部支持構造が複雑となり内部に剛体、可撓性に係わらず作業員が入るか、濾過器本体を横倒しする等の作業が必要となり実際上採用しがたいものであった。
【0073】
本実施形態の濾過装置によれば、液体及び気体の両方の濾過に応用ができる。また、濾過処理では、被処理流体に含まれる粒子状物質の捕捉に応じて様々な濾布を用いることにより、様々の被処理流体に対して適用することができ、長尺濾過エレメントを内蔵した濾過器のコストダウンに貢献できるものである。
【0074】
なお、上記実施例において、濾過エレメントは、濾過器本体に複数本設置したが、本数に限定する必要はなく、1本であってもよい。
【0075】
[濾過処理工程]
本濾過装置における濾過処理工程について図6(a)を参照しつつ説明する。なお、以下の処理における被処理流体としては被処理液体であり、洗浄流体としては洗浄液体或は洗浄気体である。
【0076】
図6(a)に示すように、被処理流体を濾過処理するにあたり、濾過器2の圧力開放弁15を閉じ、被処理流体を供給する供給流路13に設けた供給弁13aを開き、排出流路14の排出弁14aを閉じ、さらに、処理液体を排出するための出口流路11の出口弁11aを開き、洗浄供給流路12の洗浄弁12aを閉じる。このとき供給流路13から濾過器本体3の下室3bに被処理流体が導入される。
【0077】
目板5に吊り下げた濾過エレメント4が、濾布25により被処理流体を濾過し、この処理済流体としての処理液体もしくは気体〈=濾過流体〉を、ホース体21の貫通孔21aから中空部に流入させる。また、処理液体は、中空部の下方から上方に上昇して、目板5の開口部16を介して上室3aに集められ、出口流路11より回収される。
【0078】
すなわち、濾過処理では、供給弁13aを開くと濾過器本体3内に被処理流体が流入し、濾布25により物理的な濾過作用で粒子物質が捕捉され、ホース体21の貫通孔21aからホース体21内の中空部に流入して、上方の目板5の開口部16から上室3aに集められて出口弁11aより排出される。
【0079】
このとき、濾過器2外の圧力をP1、濾過器2の下室3b内の圧力をP2、濾過エレメント4内の圧力をP3としたときの各圧力の関係は、例えば、P1=大気圧、P2=0.1〜0.2[MPa]、P3=大気圧より大きい圧力[MPa]となり、P2>P3>P1となる。
【0080】
このように濾過器本体3内の濾過圧を初期0.1[MPa]程度で始め、次第に0.2[MPa]程度の圧力に上昇するまで、数十分から数時間、もしくは数日間、濾過を継続する。
【0081】
その後、濾過エレメント4の濾布25表面にろ滓が蓄積してくると、濾過の圧力が規定以上に上昇し、例えば、濾過圧が0.3[MP]程度になったとき、ろ滓の剥離除去操作を行う。このとき濾過処理により濾過エレメント4の濾布25がホース体21に押圧されて、濾布25とホース体21とが密着した状態をなしている。以下、剥離除去を行う逆洗浄工程について説明する。
【0082】
[逆洗浄工程]
本濾過装置における逆洗浄工程について図6(b)から図7(c)を参照しつつ説明する。
【0083】
先ず、図6(b)に示すように、濾過器本体3内には被処理液体が貯留され、濾過エレメント4内には処理液体が貯留されている。このような状態から供給流路13の供給弁13a及び出口流路11の出口弁11aを閉じて、逆洗浄を行う。この濾過器本体3の下室3b内の圧力P2は、液深により下部になるほど高圧となる。
【0084】
図6(c)に示すように、洗浄供給流路12の洗浄弁12aを開にする直前、圧力開放弁15を開にし、濾過器本体3の圧力を開放する。内圧力を開放することで洗浄気体の瞬時的な流れが濾過エレメント4内に発生する。すなわち、ホース体21の中空部に流入した洗浄気体がホース体21上部の貫通孔21aから噴出し、洗浄気体が瞬時に濾布25を膨張させつつホース体21の螺旋溝に沿って流下する。このとき、濾布25はホース体の外周面に張り付いた状態から一気に引き剥がされることとなる。従来では、濾過エレメント内に処理液体が残留した状態で逆洗浄を行おうとすると、洗浄気体の圧力を非常に高くする必要があったが、本濾過エレメント4におけるホース体21の外周面に形成された螺旋体24により濾布25の剥離を容易にして洗浄気体の圧力を低くすることができる。なお、洗浄供給流路12には、圧縮空気が供給できるようにコンプレッサが接続されている。
【0085】
図6(d)に示すように、濾布25は上から順次膨張して、ホース体21から完全に剥離した状態となり、濾布25面から洗浄気体が吹き出すとともに、濾布膨張により生じた濾布25とホース体21との間隙より圧縮空気が内部全体にもわたり濾布25全体の剥離洗浄が行われる。また、濾過エレメント4の下端部が自由であるため、洗浄気体を流入させる際に発生する振動が自由に伝わり易く、ろ滓の払い落とし効果が大きくなる。なお、圧力開放弁15は、濾布25が完全に膨張した段階で閉じ、濾過器本体3内のろ滓を含む被処理液体を排出流路14の排出弁14aを開いて排出する。
【0086】
このとき、濾過器2外の圧力をP1、濾過器2の下室3b内の圧力をP2、濾過エレメント4内の圧力をP3としたときの各圧力の関係は、例えば、P1≒P2となり、P3=濾布の圧力損失分だけ高い圧力[MPa]となる。
【0087】
このような操作を行うことにより、洗浄効果がより高まり洗浄時間の短縮と満足度の高い濾過エレメントの洗浄が達成される。さらに、濾布25の洗浄効果を高めるために、洗浄液体による洗浄を続けて行うこととした。
【0088】
図7(a)に示すように、洗浄供給流路12から洗浄液体をホース体21に注入すると、洗浄液体がホース体21の貫通孔21aから流れ出し、濾布25を筒状に膨張し、濾布25面から洗浄液体が吹き出す。このようにして、濾布25が洗浄される。ろ滓を含んだ洗浄液は、排出流路14に排出される。なお、圧力開放弁15は開としている。
【0089】
このとき、濾過器2外の圧力をP1、濾過器2の下室3b内の圧力をP2、濾過エレメント4内の圧力をP3としたときの各圧力の関係は、例えば、P1=P2となり、P3=洗浄液体のため上記図6(d)における圧力損失より高い圧力[MPa]となる。
【0090】
図7(b)に示すように、洗浄液体の注入を止めて、洗浄供給流路12から洗浄気体をホース体21内に注入する。ホース体21内の洗浄液体が排出されるまで、圧力開放弁15を開としている。
【0091】
このとき、濾過器2外の圧力をP1、濾過器2の下室3b内の圧力をP2、濾過エレメント4内の圧力をP3としたときの各圧力の関係は、例えば、P1=P2<P3となる。
【0092】
図7(c)に示すように、圧力開放弁15を閉じ、連続して洗浄供給流路12から洗浄気体をホース体21内に注入する。
【0093】
このとき、濾過器2外の圧力をP1、濾過器2の下室3b内の圧力をP2、濾過エレメント4内の圧力をP3としたときの各圧力の関係は、例えば、P1<P2<P3となる。なお、P3は濾布25の濾過抵抗と圧縮空気の投入量により変化する。すなわち、投入量が大きいとP3の圧力も大きくなる。
【0094】
従来の濾過エレメントの全長を長尺構造とした場合に、逆流洗浄すると、濾過エレメント全体での均一な逆流洗浄は困難であるという不具合が見られたため長尺構造のエレメントの使用は見られなかった。
【0095】
また、従来は気体用のエレメント型濾過器では、気体と液体の併用洗浄は殆ど行われていないが、本発明における濾過エレメントの構造によれば、気体と液体の交互逆流洗浄を併用した後、乾燥工程を追加することにより、洗浄効果を高めることができ、しかも、メンテナンスの削減効果と濾過エレメントの長寿化をもたらす効果がある。
【0096】
かかる濾過エレメントの逆洗浄によれば、濾過エレメントの表面にある濾布に蓄積されたろ滓を洗浄弁12aを開にすることにより、濾過エレメント内側から貫通孔21aを通り濾布25の裏に到達し、濾布25を持ち上げながらホース体21に巻かれた硬さのある螺旋体24で形成された螺旋状の溝を流れながら迂回し、濾布全体を上下方向に膨張させながら、同時に濾布の裏側から外側に流れ出る際に濾布に付着したろ滓を剥離させることができる。
【0097】
また、従来の濾過器本体を振動させて濾布表面のろ滓を払い落とす方法では、振動機の騒音が発生してしまうと共に振動で濾過器本体の様々な結合部がゆるむおそれがあり、点検の間隔を短くしないといけない問題があり、さらに、濾過器本体内での摩擦により濾布が損傷してしまう問題があったが、本濾過エレメントの洗浄方法では、騒音が発生することなく、結合部がゆるむ心配もないため、定期点検の間隔も短くする必要がない効果がある。本濾過装置の濾過エレメントは下端部に錘を備える構造のため濾布の損傷を抑えて、長期にわたり濾過処理を効率よく行うことができる。
【0098】
上述した各処理においては、被処理流体が被処理気体であってもよく、被処理気体における各処理の重複説明を省略する。
【符号の説明】
【0099】
1 濾過装置
2 濾過器
3 濾過器本体
4 濾過エレメント
5 目板
6 錘
11 出口流路
12 洗浄供給流路
13 供給流路
14 排出流路
15 圧力開放弁
16 開口部
21 ホース体
22 下部カップリング
23 上部カップリング
24 螺旋体
25 濾布
27 取付けネジ
28 落下防止紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過器本体内に配設され、当該濾過器本体内に流入した被処理流体を濾過した処理済流体を下流側へ送給する濾過エレメントを具備する濾過装置であって、
前記濾過エレメントは、
前記処理済流体が通過する貫通孔を周面に穿設した可撓性のホース体と、このホース体に覆設した筒状の濾布とを備えており、しかも、前記ホース体に螺旋体を巻着して、当該ホース体の外周面と前記濾布との間に間隙を形成したことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記濾過器本体は、
前記被処理流体が流入する下室と、前記処理済流体が流入する上室とに区画されており、
前記ホース体は、前記上室と下室を区画する目板に垂下されるとともに、下端部には錘が取付けられていることを特徴とする請求項1記載の濾過装置。
【請求項3】
前記下室に前記被処理流体を供給する供給流路及び前記濾過エレメントを洗浄した後の洗浄済流体を排出する排出流路を接続する一方、前記上室には前記処理済流体を排出する出口流路及び前記濾過エレメントを洗浄するための洗浄流体を供給する洗浄流体供給流路を接続し、
前記各流路に流量を制御するための弁を設けるとともに、前記濾過器本体には、内部圧力を開放するための圧力開放弁を設けたことを特徴とする請求項2記載の濾過装置。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3の何れか1項に記載の濾過装置における濾過エレメントの洗浄方法であって、
前記濾過器本体の圧力を開放するとともに、前記濾過エレメントのホース体に洗浄流体を注入して濾布を洗浄する逆洗浄工程を有する
ことを特徴とする濾過エレメントの洗浄方法。
【請求項5】
前記逆洗浄工程では、前記ホース体に、洗浄流体としての洗浄液体と洗浄気体とを交互に注入する
ことを特徴とする請求項4に記載の濾過エレメントの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11292(P2012−11292A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148953(P2010−148953)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【特許番号】特許第4653252号(P4653252)
【特許公報発行日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(597131624)松尾機器産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】