説明

瀝青組成物

本発明は、20〜90重量%の範囲の量の瀝青、0.25〜5重量%の量のカルボキシル添加剤、及び5〜75重量%の量のイオウを含み、全てのパーセントは、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準とするものであり、カルボキシル添加剤は、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びカルボン酸無水物から選択される瀝青組成物を提供する。この組成物の製造方法、及びかかる瀝青組成物を含むアスファルト組成物が更に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は瀝青組成物に関する。本発明はまた、瀝青組成物の製造方法;イオウペレット;瀝青組成物を含むアスファルト組成物;アスファルト組成物の製造方法;アスファルト舗装を形成する方法;及びかくして形成されるアスファルト舗装;にも関する。
【背景技術】
【0002】
瀝青は、舗装及び屋根葺き材料を製造するため、並びにパイプ及びタンクのライナーなどのための被覆のために通常用いられる材料である。道路建設及び道路舗装産業においては、砂、砂利、砕石、又はこれらの混合物のような骨材材料を熱い流体の瀝青で被覆し、被覆した材料を未だに熱いうちに均一な層として路盤又は予め建設された道路の上に広げ、重いローラーを転がすことによって均一な層を圧縮して滑らかな表面の道路を形成することは、盛んに行われている手順である。
【0003】
瀝青と、砂、砂利、砕石、又はこれらの混合物のような骨材材料との組み合わせは、「アスファルト」と呼ばれる。「アスファルトバインダー」とも呼ばれる瀝青は、通常はアスファルテン、樹脂、及び油を含む液体のバインダーである。これは天然のものであってよいが、例えば分別、又は例えばプロパンを用いる沈殿によって原油の残渣から得ることもでき、或いはクラッキングのような原油の精製プロセスの後に得ることもできる。瀝青は通常は、高い、例えば12重量%以上のアスファルテン含量を有する炭化水素を含む。瀝青はまた、幾つかの更なる処理、例えば瀝青成分を、酸素、例えば空気、又は化学成分、例えばリン酸による酸化にかけるブローイングにかけることもできる。
【0004】
道路建設及び道路舗装産業における用途のためにイオウを瀝青と混合することができることは当該技術において公知である。瀝青中にイオウを用いる場合に遭遇する問題点の1つは、高温、例えば140℃より高い温度における瀝青中のイオウの水素化反応によって生成する硫化水素の望ましくない形成である。
【0005】
特に、例えば1:1程度の高さの高いイオウ−瀝青の重量比を有するアスファルトにおいて用いられる相当量のイオウを考慮すると、硫化水素の放出は重大な問題である。したがって、イオウ含有アスファルトからの硫化水素の望ましくない形成及び放出を減少させることが望ましい。
【0006】
熱間敷設イオウ−アスファルト混合物からの硫化水素の放出を減少させる1つの方法がWO2005/059016に記載されている。塩化第二鉄のような硫化水素抑制剤をイオウペレット中に含ませることによって、イオウ含有アスファルトの製造中の硫化水素の放出を減少させることができる。しかしながら、硫化第二鉄は取り扱うのが困難であり、空気中の湿分と反応しやすいので、イオウ−アスファルト混合物からの硫化水素の放出を減少させる別の手段を見出すことが望ましい。
【0007】
US3,960,585においても、熱間敷設イオウ−アスファルト混合物からの硫化水素の放出を減少させる方法が開示されている。一例においては、酸化亜鉛、ステアリン酸、及びジフェニルグアニジン(それぞれ混合物の重量を基準として0.1重量%で存在する)の混合物を抑制剤として用いる。酸化亜鉛とステアリン酸が反応してステアリン酸亜鉛を与え、これが酸化還元触媒として機能することができると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2005/059016
【特許文献2】US3,960,585
【発明の概要】
【0009】
ここで、本発明者らは、アスファルトの製造中に更なる成分を加えるとイオウ含有アスファルトの製造の温度を低下させることができることを見出した。混合温度及び/又は圧縮温度を低下させることによって、アスファルト舗装の形成中に放出される硫化水素の量が減少する。より低い混合及び/又は圧縮温度にかかわらず、得られるアスファルトは耐久性であり、低い感水性を有する。
【0010】
したがって、本発明は、20〜90重量%の範囲の量の瀝青、0.25〜5重量%の量のカルボキシル添加剤、及び5〜75重量%の量のイオウを含み、全てのパーセントは、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準とするものであり、カルボキシル添加剤は、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びカルボン酸無水物から選択される瀝青組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、
(i)瀝青を加熱し;
(ii)かくして得られた熱い瀝青を、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として5〜75重量%の範囲の量のイオウと混合する;
工程を含み、工程(i)又は(ii)の少なくとも1つの中で、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として0.25重量%〜5重量%のカルボキシル添加剤を加え、カルボキシル添加剤が、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びカルボン酸無水物から選択される、本発明による瀝青組成物の製造方法にも関する。本発明による瀝青組成物は、道路及び屋根葺き用途、好ましくは道路用途において有利に適用することができる。
【0012】
本発明は更に、骨材、及び本発明による瀝青組成物を含むアスファルト組成物に関する。
本発明はまた、
(i)瀝青を加熱し;
(ii)骨材を加熱し;
(iii)混合ユニット内において、熱い瀝青を熱い骨材と混合してアスファルト組成物を形成する;
工程を含み、工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として5〜75重量%のイオウを加え、工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として0.25〜5重量%のカルボキシル添加剤を加える、本発明によるアスファルト組成物の製造方法も提供する。
【0013】
更に本発明はまた、本発明のアスファルト組成物の製造方法を用いてアスファルト組成物を製造し、次に、
(iv)アスファルト組成物を層に広げ;そして
(v)層を圧縮する;
工程を行う、アスファルト舗装を形成する方法も提供する。
【0014】
本発明は更に、かかる方法を用いて形成されるアスファルト舗装に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の瀝青組成物は、3つの必須成分:瀝青、イオウ、及びカルボキシル添加剤を含む。
瀝青は、広範囲の瀝青化合物から選択することができる。従来技術の幾つかの文献においては、瀝青は舗装用途において用いる前にブローイングにかけなければならないと規定されているが、本発明による組成物においてはかかる要件は必要ない。したがって、用いることができる瀝青は、直留瀝青、例えばプロパンからの熱分解残渣又は沈殿瀝青であってよい。必須ではないが、瀝青はまたブローイングにかけることもできる。ブローイングは、瀝青を、空気、酸素富化空気、純粋酸素、又は分子酸素と二酸化炭素又は窒素のような不活性ガスを含む任意の他の気体のような酸素含有気体で処理することによって行うことができる。ブローイング操作は、175〜400℃、好ましくは200〜350℃の温度で行うことができる。或いは、ブローイング処理は接触プロセスを用いて行うことができる。かかるプロセスにおける好適な触媒としては、塩化第二鉄、リン酸、五酸化リン、塩化アルミニウム、及びホウ酸が挙げられる。リン酸を用いることが好ましい。
【0016】
本発明による瀝青組成物中の瀝青の含量は、瀝青、イオウ、及びカルボキシル添加剤の重量を基準として20〜90重量%の範囲であってよい。良好な結果は、50〜75重量%の範囲の量を用いて得られた。
【0017】
カルボキシル添加剤は、瀝青、イオウ、及びカルボキシル添加剤の重量の0.25〜5重量%のレベル、より好ましくは0.5〜3重量%、最も好ましくは1〜3重量%のレベルで瀝青組成物中に存在する。
【0018】
カルボキシル添加剤は、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びカルボン酸無水物から選択される。好ましくは、カルボキシル添加剤はカルボン酸である。
1つの好ましい態様においては、カルボキシル添加剤は、式:RCOOX(式中、RはC〜C22アルキル又はアルケニルであり、Xは、H、C〜C22アルキル又はアルケニル、或いはR’COであり、ここでR’はC〜C22アルキル又はアルケニルである)のカルボキシル化合物から選択される。XがHである場合には、カルボキシル添加剤はカルボン酸である。XはC〜C22アルキルであってよく、カルボキシル添加剤はカルボン酸エステルである。XはR’CO(ここで、R’はC〜C22アルキル又はアルケニルである)であってよく、カルボキシル添加剤はカルボン酸無水物である。好ましくは、Rはアルキル基である。Rは、C15〜C20アルキル又はアルケニル基、より好ましくはC15〜C18アルキル又はアルケニル基、特にC15〜C18アルキル基であることが好ましい。例えば、カルボキシル添加剤は、ステアリン酸、エチルステアレート、又は無水ステアリン酸であってよい。或いは、RはC21〜C22アルキル基であってよく、例えばカルボキシル添加剤はベヘン酸、エチルベヘネート、又は無水ベヘン酸であってよい。
【0019】
カルボキシル添加剤はまた、1つより多い酸、エステル、又は無水物基を有していてもよい。トリオクチルトリメリテート及びビス(2−エチルヘキシル)セバケートはいずれも複数のエステル基を有し、本発明においてカルボキシル添加剤として用いることができる。
【0020】
また、本発明における組成物中に1以上のカルボキシル添加剤の混合物を含ませることもできる。
イオウはバインダー材料の主要部分を構成する。したがって、相当量のイオウを用いる。これは、架橋剤としてのイオウの使用(ここでは、瀝青、イオウ、及びカルボキシル添加剤の重量を基準として2重量%より低い量を用いる)とは異なる。本発明の用途においては、イオウは、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として5〜75重量%の範囲の量で存在させる。本発明による瀝青組成物において20重量%未満のイオウを用いる場合には、イオウによって瀝青組成物に与えられる強度の向上が減少するので、好適には、イオウは20〜60重量%の量で瀝青組成物中に存在させることができる。
【0021】
WO−A−03/014231に記載されているように、イオウはイオウペレットの形態で瀝青組成物に加えることができ、好ましくは、イオウはこの形態で本発明の組成物中に含ませる。ここでペレットは、溶融状態からある種の規則的な寸法の粒子、例えば、小球、顆粒、小塊及びトローチ、或いはエンドウ豆の半分の大きさの(half pea sized)イオウのようなフレーク、スレート、又は球体形状のイオウにキャストした任意のタイプのイオウ材料を指す。イオウペレットは、通常はイオウペレットの重量を基準として50〜100重量%、好ましくは60重量%から、最も好ましくは70重量%から、通常は99重量%まで、好ましくは95重量%まで、或いは100重量%までのイオウを含む。より好ましい範囲は60〜100重量%である。
【0022】
これらのペレットには、カーボンブラック、及び場合によっては酢酸アミル及びワックスのような他の成分を含ませることができる。カーボンブラックは、ペレットを基準として5重量%以下、好ましくは2重量%以下の量で存在させることができる。好適には、イオウペレット中のカーボンブラックの含量は少なくとも0.25重量%である。酢酸アミル及びワックスのような他の成分の含量は、通常はそれぞれ1.0重量%の量を超えない。ワックスが存在する場合には、これは例えばスラックワックス又はフィッシャー・トロプシュプロセスから誘導されるワックスの形態であってよい。本発明において用いるのに好適なワックスの例は、Sasolから商業的に入手できるフィッシャー・トロプシュ誘導ワックスであるSasobit (RTM)、及びShell Malaysiaからのフィッシャー・トロプシュワックスであるSX100ワックスである。
【0023】
本発明の一態様においては、カルボキシル添加剤はイオウペレット中に存在させる。
本発明による瀝青組成物は3つの必須成分:瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウを含むが、かかる組成物に異なる化合物も加えることができることは当業者に明らかである。例えば、WO−A−03/014231において言及されているポリマーを加えることができる。
【0024】
本発明による瀝青組成物にはまた、例えばEP2185640に開示されているもののような臭気抑制剤を含ませることもできる。
本発明の瀝青及びアスファルト組成物にはまた、ワックス、例えばスラックワックス、又はフィッシャー・トロプシュプロセスから誘導されるワックスを含ませることもできる。本発明において用いるのに好適なワックスの例は、Sasolから商業的に入手できるフィッシャー・トロプシュ誘導ワックスであるSasobit (RTM)、及びShell Malaysiaからのフィッシャー・トロプシュワックスであるSX100ワックスである。
【0025】
本発明の瀝青及びアスファルト組成物にはまた剥離防止剤を含ませることもできる。
本発明による瀝青組成物は、瀝青組成物、並びにフィラー及び/又は骨材を含むアスファルト組成物の形態で有利に用いられる。フィラーの例はUS−A−5863971に記載されており、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、安定剤、酸化防止剤、顔料、及び溶媒が含まれる。骨材の例としては、砂、岩石、砂利、石、小石等が挙げられる。これらの骨材材料は道路を舗装するために特に有用である。
【0026】
通常は、アスファルト組成物は、アスファルト組成物の重量を基準として少なくとも1重量%の瀝青を含む。アスファルト組成物の重量を基準として約1重量%〜約10重量%の瀝青を含むアスファルト組成物が好ましく、約3重量%〜約7重量%の瀝青を含むアスファルト組成物が特に好ましい。
【0027】
本発明による瀝青組成物は、3つの成分を適当な量で混合することによって製造することができる。まず瀝青−カルボキシル添加剤混合物を調製し、次にイオウを加えることが好ましい。
【0028】
したがって、本発明は、
(i)瀝青を加熱し;
(ii)かくして得られる熱い瀝青を、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として5〜75重量%の範囲の量のイオウと混合する;
工程を含み、工程(i)又は(ii)の少なくとも1つの中でカルボキシル添加剤を加える、本発明による瀝青組成物の製造方法を提供する。
【0029】
本発明はまた、
(i)瀝青を加熱し;
(ii)骨材を加熱し;
(iii)混合ユニット内において熱い瀝青を熱い骨材と混合してアスファルト組成物を形成する;
工程を含み、工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として5〜75重量%のイオウを加え;そして、工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として0.25〜5重量%のカルボキシル添加剤を加える、本発明によるアスファルト組成物の製造方法も提供する。
【0030】
本瀝青又はアスファルト組成物を製造する方法の工程(i)においては、瀝青を、好ましくは、60〜200℃、好ましくは80〜150℃、より好ましくは100〜145℃、更により好ましくは125〜145℃の温度に加熱する。120℃より高い温度で運転することは、イオウが液体であって混合プロセスが容易になるという有利性を有する。当業者であれば最適の混合時間を容易に決定することができるが、混合時間は比較的短くてよく、例えば10〜600秒であってよい。
【0031】
瀝青は、好ましくは、例えば9〜1000dmm、より好ましくは15〜450dmmの針入度(EN−1426:1999にしたがって25℃において試験)、及び25〜100℃、より好ましくは25〜60℃の軟化点(EN−1427:1999にしたがって試験)を有する道路用途のために好適な舗装グレードの瀝青である。
【0032】
本アスファルト組成物を製造する方法の工程(ii)においては、骨材を、好ましくは、60〜200℃、好ましくは80〜170℃、より好ましくは100〜160℃、更により好ましくは100〜145℃の温度に加熱する。骨材は、好適には道路用途のために好適な任意の骨材である。骨材は、粗骨材(4mmの篩上に残留する)、細骨材(4mmの篩を通過するが、63μmの篩上に残留する)、及びフィラー(63μmの篩を通過する)の混合物から構成することができる。
【0033】
アスファルト製造方法の工程(iii)においては、熱い瀝青及び熱い骨材を混合ユニット内で混合する。好適には、混合は、80〜200℃、好ましくは90〜150℃、より好ましくは100〜145℃の温度において行う。通常は、混合時間は10〜60秒間、好ましくは20〜40秒間である。
【0034】
瀝青及び骨材を加熱し、次に混合する温度は、望ましくは、イオウを加える際の硫化水素の放出を減少させるために可能な限り低く維持する。しかしながら、温度は、瀝青によって骨材を有効に被覆することができるように十分に高くする必要がある。本発明によれば、アスファルト混合物から発生する臭気を抑制して、瀝青、骨材、及びイオウの混合物を製造することが可能である。
【0035】
アスファルトの製造方法においては、イオウは、好ましくはプロセスにおいて可能な限り後段で、好ましくは工程(iii)において加える。
本発明方法においては、イオウは上記に記載したようなイオウペレットの形態で加えることが好ましい。
【0036】
イオウ及びカルボキシル添加剤は、一緒に、即ち本瀝青及びアスファルト組成物を製造するためのそれぞれのプロセスの工程(i)、工程(ii)、又は工程(iii)において両方を加えることができる。第1の態様においては、熱い骨材をイオウ及びカルボキシル添加剤と混合する。次に、熱い瀝青を熱い骨材−イオウ混合物に加える。第2の態様においては、熱い骨材を熱い瀝青と混合し、イオウ及びカルボキシル添加剤を熱い瀝青−骨材混合物に加える。この態様は、より強いイオウ−アスファルト混合物の強度を生成させる有利性を与える。第3の態様においては、熱い瀝青をイオウ及びカルボキシル添加剤と混合し、得られる熱い瀝青−イオウ混合物を熱い骨材と混合してイオウ含有アスファルト混合物を得る。
【0037】
或いは、アスファルト製造プロセスにおいてカルボキシル添加剤を別に加えることができる。例えば、カルボキシル添加剤を工程(i)において瀝青に加えることができ、イオウを工程(iii)において加えることができる。
【0038】
本発明の一態様においては、イオウ及びカルボキシル添加剤を一緒に加え;イオウはペレットの形態であり、カルボキシル添加剤はイオウペレット中に含ませる。イオウペレットは、好ましくはイオウペレットの重量を基準として0.1〜28重量%のカルボキシル添加剤を含む。イオウペレットは、好適には、液体のイオウを、カルボキシル添加剤、及び場合によってはカーボンブラック又は酢酸アミルのような更なる成分と混合するプロセスによって製造する。次に、混合物を成形及び/又はペレット化する。
【0039】
本発明の一態様においては、イオウは2つのタイプのイオウペレット:カルボキシル添加剤を含む第1のタイプのイオウペレット、及びカルボキシル添加剤を含まない第2のタイプのイオウペレット;の形態で加えることができる。これは、カルボキシル添加剤を第1のタイプのイオウペレット中に実質的に濃縮し、通常のイオウペレットを用いてイオウの必要量の残りを補うことができるという有利性を有する。
【0040】
本発明は更に、本発明方法によってアスファルトを製造し、更に、
(iv)アスファルトを層に広げ;そして
(v)層を圧縮する;
工程を含む、アスファルト舗装を形成する方法を提供する。
【0041】
本発明は更に、本発明方法によって形成されるアスファルト舗装を提供する。
工程(v)における圧縮は、好適には、80〜200℃、好ましくは90〜150℃、より好ましくは100〜145℃の温度において行う。圧縮の温度は、望ましくは、硫化水素の放出を減少させるために可能な限り低く維持する。しかしながら、圧縮の温度は、得られるアスファルトの空隙含量がアスファルトを耐久性及び耐水性にするのに十分に低くなるように十分に高くする必要がある。
【実施例】
【0042】
ここで、以下の実施例(本発明を制限する意図はない)を用いて示す例を参照して本発明を説明する。
瀝青とイオウペレットを表1に示す比でブレンドし、次にカルボキシル添加剤を加えることによって瀝青試料を製造した。ブレンドは125〜145℃の範囲において30分間行った。
【0043】
表1にそれぞれの試料の配合を示す。
【0044】
【表1】

【0045】
Brookfiled粘度計を用いてEN−13302にしたがって125、135、及び145℃において粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
粘度の測定値は、比較例(カルボキシル添加剤を含まない)に関するよりも実施例(それぞれカルボキシル添加剤を含む)に関する方が低い。イオウ含有アスファルトの製造温度は、許容できる低い粘度を達成するために十分に高くする必要がある。したがって、瀝青試料が特定の温度においてより低い粘度を有する場合には、イオウ含有アスファルトの製造温度を低下させることができる。
【0048】
中国の「高速道路瀝青舗装の建設のための技術仕様」(JTG F40−2004及びAASHTO T−245)にしたがうAC−13混合物デザインを用いてアスファルト試料を製造した。表3に、アスファルト試料を製造するのに用いたそれぞれの瀝青組成物の配合を示す。
【0049】
【表3】

【0050】
瀝青は、74dmmの針入度及び48.5℃の軟化点を有する針入度級の瀝青であった。イオウはイオウペレットの形態で加えた。残留マーシャル安定度及び標準中国試験法T0729による凍結解凍間接引張り試験を用いて水分安定性を測定した。残留マーシャル安定度は、未処理の試料のマーシャル安定度と比べた、浸漬にかけたアスファルト試料のマーシャル安定度の比である。引張り試験結果は、調整した試料の間接引張り強さを未調整の試料の間接引張り強さで割った引張り強さの比として報告する。轍掘れ抵抗は、標準中国ホイールトラッキング試験(T0719)によって測定した。この試験においては、鋼製のローラーを用いて、緩いアスファルト混合物を300mm正方で深さ50mmの成形型内で圧縮温度において圧縮する。次に、固形ゴムタイヤ(直径200mm、幅50mm)によって、圧縮した試験片を60℃において42パス/分で0.7MPaの繰り返し負荷下に配置した。下式:
DS(パス数/分)=N15’/(D60−D45)
(ここで、N15’は負荷パス数(即ち、N15’=15(分)×42(パス数/分))であり、D60−D45は試験の最後の15分間での轍掘れの深さの変化(mm)である)
から動的安定度(パス数/分)を計算した。水分安定性及び轍掘れ抵抗の結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
ステアリン酸を含むアスファルト試料(実施例7及び8)は、従来技術によるアスファルト試料(比較例3及び4)と比べるとより良好な水分安定性を示す。ベヘン酸を含むアスファルト試料(実施例9及び10)は、従来技術によるアスファルト試料(比較例3及び4)と比べるとより良好な水分安定性及び轍掘れ抵抗を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20〜90重量%の範囲の量の瀝青、0.25〜5重量%の量のカルボキシル添加剤、及び5〜75重量%の量のイオウを含み、全てのパーセントは、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準とするものであり、カルボキシル添加剤は、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びカルボン酸無水物から選択される瀝青組成物。
【請求項2】
カルボキシル添加剤が、式:RCOOX(式中、RはC〜C22アルキル又はアルケニルであり、Xは、H、C〜C22アルキル、C1〜22アルケニル、又はR’COであり、ここでR’はC〜C22アルキル又はアルケニルである)のカルボキシル化合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
XがHであり、RがC15〜C18アルキル又はアルケニル基である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
イオウが20〜60重量%の範囲の量で存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
(i)瀝青を加熱し;
(ii)かくして得られた熱い瀝青を、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として5〜75重量%の範囲の量のイオウと混合する;
工程を含み、工程(i)又は(ii)の少なくとも1つの中で、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として0.25重量%〜5重量%のカルボキシル添加剤を加え、カルボキシル添加剤が、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びカルボン酸無水物から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の瀝青組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の瀝青組成物、並びにフィラー及び/又は骨材を含むアスファルト組成物。
【請求項7】
(i)瀝青を加熱し;
(ii)骨材を加熱し;
(iii)混合ユニット内において、熱い瀝青を熱い骨材と混合してアスファルト組成物を形成する;
工程を含み、工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として5〜75重量%のイオウを加え、工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、カルボキシル添加剤、及びイオウの重量を基準として0.25〜5重量%のカルボキシル添加剤を加え、カルボキシル添加剤が、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びカルボン酸無水物から選択される、請求項6に記載のアスファルト組成物の製造方法。
【請求項8】
イオウをイオウペレットの形態で加える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の方法にしたがってアスファルト組成物を製造し、次に、
(iv)アスファルト組成物を層に広げ;そして
(v)層を圧縮する;
工程を行う、アスファルト舗装を形成する方法。

【公表番号】特表2013−520548(P2013−520548A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554471(P2012−554471)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/IN2011/000109
【国際公開番号】WO2011/104726
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】