説明

瀬切り装置及びシート材集積システム

【課題】シート材の搬送途中に瀬切りを入れる装置において、瀬切りスペースを確実に形成できるようにする。
【解決手段】シート材Wを搬送方向の下流側が重ね関係の下で搬送方向の上流側が重ね関係の上になる逆刺身状態にして搬送させるシート搬送部15と、シート材Wの下流側先端部に係止させるストッパ22をシート搬送部15の搬送面上へ突出させたり搬送面下へ沈下させたりする瀬切り開始部16と、瀬切り開始部16より上流位置に設けられ且つシート支持台35をシート搬送部15の搬送面以上に上昇させたり搬送面以下に下降させたりする後続シート整流部17とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瀬切り装置と、この瀬切り装置を採用して構築したシート材集積システムとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
輪転機で印刷された刷本(ちらし等であって、1枚ものでもよいし、二つ折り又はそれ以上折り畳まれて成る「折帳」でもよい)を、その向きを揃えながら重合状に並べて柱形体に集積し、場合によってはこの集積した柱形体の束(以下この束を「集積束」と言い、また刷本や折帳をはじめ、集積束にし得る対象物を総じて「シート材」と言う)を結束バンドで結束するまでの処理を機械的に行うようにしたシート材集積装置は周知である。
この種のシート材集積装置のなかで「竪型」と呼ばれるものは、平置き姿勢にあるシート材をその一端側から下向きの流れに導いて立位姿勢に変換する姿勢変換部と、この姿勢変換部の下部位置でシート材を待ち受けて、到達したシート材から順次起立姿勢に支持しつつ縦並び状態に集積するテーブル面とを有したものとなっている。
【0003】
ところで、輪転機などから送り出されるシート材は、多くの場合、搬送方向の下流側が重ね関係の上で搬送方向の上流側が重ね関係の下になる刺身状態になっている。これに対し、テーブル面上へ到達するシート材は、テーブル面上で集積されつつある集積束に対して常に最も後端面に位置付けられるようにする必要があり、そのためには姿勢変換部に至る前に、シート材の天地を逆(裏返し)にし、搬送方向の下流側が重ね関係の下で搬送方向の上流側が重ね関係の上になる、所謂、逆刺身状態にしておかなければならない。
そこで従来は、輪転機などからのシート材の搬入経路を一旦、このシート材集積装置の下部側へ誘導して装置下を通過させ、その後に上向きの宙返り状となるように縦方向Uターンを行わせてから、上記姿勢変換部へ至らせるようにしていた(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
また、テーブル面上に集積されるシート材が一束の集積束に相当した枚数に達すると、その都度、この集積束を結束バンドで結束する位置へ送り出す動作が必要になる。この動作時間を確保するには、搬送途中のシート材の流れに対し、一定間隔で区切りを入れる(シート材とシート材との間にスペースを設けることであって、以下ではこの区切りのことを「瀬切り」と言い、搬送途中のシート材に入れられたスペースを「瀬切りスペース」と言う)必要があった。
従来、瀬切りを入れる装置としては、シート材を刺身状態で搬送する搬送ベルト(即ち、縦方向Uターンを行わせるより上流位置に設置された搬送装置である)を、瀬切りのタイミングに合わせて下流側へ伸ばしながら、シート材の上面を押さえるようにするものが知られている(例えば、特許文献2等参照)。
【0005】
また、搬送ベルトからシート材を一旦、浮上させるようにして搬送駆動を暫時的に中断させると共に、シート材の上面側でフリーローラを上流側へ向けて転動させる(逆移動させる)ようにするものもあった(例えば、特許文献3等参照)。
【特許文献1】特開2000−118511号公報
【特許文献2】特開昭60−83895号公報
【特許文献3】実公平8−5179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、瀬切りを入れる装置は、シート材がまだ刺身状態となっている位置(すなわち、縦方向Uターンを行わせるより上流位置)に設置してあった。これは瀬切り動作の容易さや、動作の確実さ、装置構成の簡潔さなどを得られることがその理由であった。
ところがこのことがネックとなり、瀬切りスペースは、形成されてから実際に集積用のテーブル面へ到達するまでに、長い搬送距離を搬送されることになっていた。殊に、この搬送途中には、縦方向Uターンを行わせる経路が含まれることになる。
このようなことから、瀬切りスペースに長短方向のバラツキが発生したり、瀬切りスペースの前後に位置するシート材に対して搬送向きのズレやめくれ(カールや折り皺)等が発生したりするといった問題があった。これらの問題は、テーブル面上等でのシート材の詰まりを発生させる原因となる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、シート材の搬送途中に瀬切りを入れる装置において、瀬切りスペースを確実に形成できるようにする瀬切り装置及びシート材集積システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る瀬切り装置は、シート材を搬送方向の下流側が重ね関係の下で搬送方向の上流側が重ね関係の上になる逆刺身状態にして搬送させるシート搬送部と、シート材の下流側先端部に係止させるストッパを上記シート搬送部の搬送面上へ突出させたり搬送面下へ沈下させたりする瀬切り開始部と、この瀬切り開始部より上流位置に設けられ且つシート材を支持するシート支持台をシート搬送部の搬送面以上に上昇させたり搬送面以下に下降させたりする後続シート整流部とを有している。
【0009】
このように本発明に係る瀬切り装置は、逆刺身状態とされたシート材(搬送方向の下流側が重ね関係の下で搬送方向の上流側が重ね関係の上になっているシート材)に対して瀬切りを入れるものである。すなわち本発明に係る瀬切り装置は、シート材集積装置においてテーブル面上で集積を開始させる直前位置(従来、縦方向Uターンを行わせていた場合で言えばターンの途中に該当)に設置することになる。
そのため、瀬切りスペースは、それが形成されたすぐ後に集積用のテーブル面へ到達するようになり、搬送距離は短くて済む。従って、瀬切りスペースに長短方向のバラツキが発生したり、瀬切りスペースの前後に位置するシート材に対して搬送向きのズレやめくれ(カールや折り皺)等が発生したりするといった問題は解消される。
【0010】
瀬切り開始部において、ストッパにはシート材の下流側先端部に係止した状態でシート材の上方へ被さるように突出するフック部が設けられていると共に、このフック部へ向けてシート材を下から持ち上げてクランプ状態にさせるクランプ部材が上下動可能に設けられたものとするのが好適である。
すなわち、クランプ部材によってシート材を持ち上げるようにすると、ストッパを突出させて係止させたシート材を、シート搬送部によって搬送駆動を受けない状態に浮上させることができる。また、クランプ部材で持ち上げたシート材を、ストッパのフック部とクランプ部材とでクランプするので、確実に搬送状態から停止させることができる。結果、確実に瀬切りスペースを形成することができるものである。
【0011】
クランプ部材は、後続シート整流部のシート支持台に結合されることによって当該シート支持台と一緒に上下動可能なものとすればよい。
このようにすることで、クランプ部材を上下動させるための機構を省略することができるので、構造の簡潔化、制御の不要化などが図れ、好適である。
瀬切り開始部には、ストッパで係止されるシート材よりも下流側で重ね関係になっている先行シート材に対し、上から下への押圧又は下からの吸引によってシート搬送部への接地圧を付与する払い出し促進部が設けられたものとするのが好適である。
【0012】
このようにしてシート搬送部に対する先行シート材の接地圧を付与することで、この先行シート材は、ストッパで係止されたシート材との摩擦抵抗より、シート搬送部からの搬送駆動を強く受けるようになり、確実に搬出させることができる。結果、確実に瀬切りスペースを形成することができるものである。
後続シート整流部は、シート材を支承するタイミングが搬送方向の下流側から上流側へ向けて順次遅延させながら複数枚のシート材に及ぶように、シート支持台を上昇動作させるようにするとよい。
【0013】
このようにすると、シート支持台によって支承されるシート材は、シート搬送部から浮上するタイミングにズレが生じることになり、このタイミングのズレによってシートピッチを縮めながらもシート支持台上で整然と整列した状態となる。
従って、その後、瀬切り開始部がストッパを下降させることで搬送を再開されるシート材は、整然と整列したまま集積用のテーブル面へと送られることになり、集積作業に乱れが生じることがない。
後続シート整流部は、搬送方向に沿って並ぶ複数のシート支持台を有しており、これらシート支持台を下流側から上流側へ向けて順次遅延させながら上昇可能になったものとすればよい。
【0014】
このような構造を採用するのが、構造的に簡潔であり、制御なども簡単に行えるものとなる。
後続シート整流部の上方に、シート支持台によって上昇したシート材の上面へ向けてシート押さえ部材を押下させたり上昇離反させたりするシート安定部が設けられたものとするのが好適である。
このようにすると、後続シート整流部のシート支持台上に支承されたシート材に位置的な乱れが生じるのを防止することができ、一層、整然と整列されやすくなる。
【0015】
シート安定部は、シート材を押下するタイミングが搬送方向の下流側から上流側へ向けて順次遅延しながら複数枚のシート材に及ぶように、シート押さえ部材を押下動作させるものとするのが好適である。
このようにすると、シート押さえ部材によって押下されるシート材は、後続シート整流部のシート支持台上へ押下されるタイミングにズレが生じることになり、このタイミングのズレによってシート支持台上に支承されるタイミングと合わせるようにすることができる。すなわち、シート支持台上に未だ支承されていないシート材をシート押さえ部材が押下して位置ズレを生じさせてしまうのを防止できることになる。
【0016】
シート安定部において、シート押さえ部材は搬送方向に沿って長い形体で形成されたものとすることができる。
この場合、シート押さえ部材は、搬送方向下流側が関節部を介して下流側昇降具によって保持されていると共に、シート押さえ部材の搬送方向上流側が関節部を介して上流側昇降具によって保持されており、下流側昇降具を先に下降動作させ上流側昇降具を後に下降動作させることでシート押さえ部材によりシート材の押下タイミングを下流側から上流側へ遅延させるようにするとよい。
【0017】
このようにすると、シート支持台上へ押下されるタイミングにズレを生じさせるための構造として、簡潔に実施できる。
一方、本発明に係るシート材集積システムは、搬送方向の下流側が重ね関係の上で搬送方向の上流側が重ね関係の下になる刺身状態にして搬送されつつあるシート材を天地逆向きにすることで搬送方向の下流側が重ね関係の下で搬送方向の上流側が重ね関係の上になる逆刺身状態にさせる天地反転部と、この天地反転部により逆刺身状態とされたシート材に対して所定間隔おきに搬送方向に沿った瀬切りスペースを生じさせる瀬切り部と、この瀬切り部を経たシート材をその一端側から下向きの流れに導いて立位姿勢に変換する姿勢変換部と、この姿勢変換部の下部位置でシート材を待ち受けて到達したシート材から順次起立姿勢に支持しつつ縦並び状態に集積するテーブル面とを有し、上記瀬切り部として、本発明に係る瀬切り装置が設置されているものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る瀬切り装置及びシート材集積システムでは、シート材の搬送途中に瀬切りを入れる装置において、瀬切りスペースを確実に形成できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図8は、本発明に係る瀬切り装置1の一実施形態を示しており、また図9及び図10は、この瀬切り装置1を採用して構築したシート材集積システム2を示している。
[シート材集積システムの概要]
図9及び図10に示すように、このシート材集積システム2は、天地反転部6a、瀬切り部7、姿勢変換部8、テーブル面9を有しており、このうちの瀬切り部7に、本発明に係る瀬切り装置1が設置されている。
【0020】
天地反転部6aは、シート材Wの搬送状態を逆刺身状態にさせるところである。逆刺身状態とは、搬送方向の下流側が重ね関係の下で搬送方向の上流側が重ね関係の上になる搬送状態を言う(図10参照)。
この天地反転部6aより上流側(一次側)では、シート材Wは搬送方向の下流側が重ね関係の上で搬送方向の上流側が重ね関係の下になる刺身状態にして搬送されてくるものであり、この刺身状態を、天地反転部6aによって天地逆向きの(裏返しにした)逆刺身状態に変換するということである。
【0021】
瀬切り部7では、逆刺身状態とされたシート材Wに対して所定間隔おきに搬送方向に沿った瀬切りスペースを生じさせるようにする。姿勢変換部8では、平置き姿勢にあるシート材Wをその一端側から下向きの流れに導いて立位姿勢に姿勢変換させ、シート材Wを略水平なテーブル面9へ供給する。
従ってこのテーブル面9上では立位姿勢とされたシート材Wが順次、縦並べ状に重合した状態(横倒した柱形体)に集積される。上記のように、天地反転部6aを経ることでシート材Wは逆刺身状態となっているので、テーブル面9上へ供給されるシート材Wは、当該テーブル面9上で集積されつつある集積束Pに対して常に最も後端面に位置付けられるようになる。
【0022】
図9では、テーブル面9の下流側(二次側)に、集積束Pに結束バンドをかける結束処理部10が設けられたものを示している。これら姿勢変換部8とテーブル面9、場合によって結束処理部10をも含めて「シート材集積装置」と言うこともできる。
なお、このシート材集積システム2の上流側には、輪転機などから送出される刷本等のシート材W(ちらし等であって1枚ものでもよいし折り畳みが済んだ「折帳」でもよい)を平送りする一次コンベア5が配置され、この一次コンベア5に後続して配置された二次コンベア6により、システム内へシート材Wが取り込まれるようになっている。
【0023】
一次コンベア5では、搬送途中のシート材Wの中から印刷不良や破れ、皺等の発生しているヤレ(不良品)を除去したりサンプルを抜き出したりする作業を行うため、搬送面を作業者の腰位置程度に設定してある。この一次コンベア5上のシート材Wは刺身状態である。
二次コンベア6は、シート材Wを姿勢変換部8へ送り込む前準備として、シート材Wを一旦、高位置へ持ち上げることを主目的として設けられたものであるが、同時に、搬送中のシート材Wにねじりを加えて天地逆向きにさせる作用を兼備している。この天地逆向きにさせる部分が天地反転部6aである。
【0024】
なお、図10に例示した天地反転部6aは、搬送方向を左にカーブさせながらシート材Wにねじりを加えるようにしているが、このようなカーブを設けず、直線的に搬送しながらシート材Wにねじりを加えるもの(一次コンベア5、二次コンベア6及びテーブル面9が一列配置とされるもの)としてもよい。
[瀬切り装置]
図1乃至図7に示すように、瀬切り装置1は、シート搬送部15と、このシート搬送部15に設けられた瀬切り開始部16と、この瀬切り開始部16より上流位置に設けられた後続シート整流部17と、この後続シート整流部17の上方に設けられたシート安定部18とを有している。
【0025】
上記したように、本実施形態において瀬切り装置1は、シート材集積システム2のなかで、天地反転部6aから姿勢変換部8へ向かう高位置経路6bに配置した瀬切り部7として採用されている。この高位置経路6b上のシート材Wが逆刺身状態にあるためである。従って以下では、この高位置経路6bを「シート搬送部15」として説明する。
図4に示すように、シート搬送部15は中央に間隔をあけるようにして平行架設された複数本(図例では2本)のエンドレスベルト19を有している。またこれらエンドレスベルト19の幅方向外側に、シート材Wの搬送方向を規制する路幅ガイド20が設けられている。これら路幅ガイド20は、幅詰め駆動部21の駆動を受けて、幅方向に拡縮する小刻みな動きを同調させて行うようになっており、これによってシート材Wの直進性を確実化させる。
【0026】
図1乃至図3に示すように、瀬切り開始部16は、シート材Wの下流側先端部を係止させるためのストッパ22と、このストッパ22を上下動させるストッパ駆動部23とを有している。また瀬切り開始部16は、ストッパ22の動きに合わせて動作するように設けられたクランプ部材24を有していると共に、これらストッパ22及びクランプ部材24のすぐ下流側となる配置で設けられた払い出し促進部25を有している。
ストッパ22は、シート搬送部15の2本のエンドレスベルト19間であって、且つそれらの搬送面(シート材Wを支持する面)よりも下方に設けられており、水平方向で且つシート搬送部15の搬送方向に直交するように設けられた揺動支軸27を支点として揺動自在に設けられている。
【0027】
ストッパ22は、揺動支軸27を支点として揺動することにより、ストッパ22の先端部がシート搬送部15の搬送面より上方へ突出して、シート材Wの下流側先端部を係止可能になったり、搬送面より下方へ沈み込んで、シート材Wの搬送を邪魔しないものとなったりする。
このストッパ22には、シート材Wの下流側先端部を係止させたとき、このシート材Wの上方へ被さるように突出するフック部28(図6参照)が設けられている。すなわち、このフック部28は、シート搬送部15の搬送面より上方へ突出したストッパ22の先端部から、シート搬送部15の上流側へ向けて折曲するような状態で設けられている。
【0028】
ストッパ駆動部23は例えばエアシリンダ等であって、ストッパ22を揺動支軸27まわりで揺動させ、これによってストッパ22の先端(フック部28が設けられた部分)をシート搬送部15の搬送面上へ突出させたり搬送面下へ沈下させたりする。エアシリンダに代えてモータ駆動機構(直線伸縮型又は回転動作型)を採用することも可能である。
クランプ部材24は、ストッパ22がシート搬送部15の搬送面上へ突出したときに、このストッパ22のフック部28に対して真下に位置するように配置されている。このクランプ部材24は、後述する後続シート整流部17の第1シート支持台35aに結合されており、この第1シート支持台35aが上下動するのと一緒に(一体的に)上下動する。
【0029】
この上下動のうち、上昇動作するときにシート搬送部15上のシート材Wを下から持ち上げることになる。そのため、この持ち上げられたシート材Wは、ストッパ22のフック部28との間でクランプ状態とされ、シート搬送部15による搬送駆動を切断されると同時に不動に固定されることになる。
払い出し促進部25は、ストッパ22で係止されるシート材Wよりも下流側で重ね関係になっている先行シート材Wに対し、シート搬送部15への接地圧を付与するようになっている。
【0030】
本実施形態では、シート搬送部15の上方に、自在回転する加圧ローラ30が設けられ、シート搬送部15上のシート材Wに対して上から下への押圧力を付与できるようにしたものを示してある。加圧ローラ30は、枢軸31を支点として上下揺動自在とされた揺動アーム32によって支持されており、シート搬送部15上を搬送されるシート材W上に乗り上げて(図7参照)、このシート材Wに自荷重による下向きの押圧力を付与するものである。
なお、シート搬送部15の下方に、吸引口を上に向けて吸引部を設けるようにし、この吸引部によってシート搬送部15上のシート材Wを吸引させ、もってシート材Wに下向きの吸引力(シート搬送部15への接地圧)を付与できるようにしてもよい。
【0031】
後続シート整流部17は、シート支持台35と、このシート支持台35を上下動させる支持台駆動部36とを有している。
本実施形態においてシート支持台35は、シート搬送部15の搬送方向に沿って四角柱状をしたものが複数(図例では6台)並んで設けられたものとしている。即ち、一つ一つの四角柱状をしたものが、それぞれシート支持台35である。以下、説明の便宜上、搬送方向の最も下流位置(図1〜図3の各右端位置)に設けられたものを「第1シート支持台35a」とおき、以後、上流へ向かって「第2シート支持台35b」「第3シート支持台35c」〜「第6シート支持台35f」と言うものとする。
【0032】
上記したように、第1シート支持台35aの上端部にクランプ部材24が固定されている。
また第1〜第6シート支持台35a〜35fは、互いに隣接するものの上端部同士が連接リンク38によって連接されており、更に、これら連接リンク38の上部に一連のベルト状覆い部材39が被せられている。なお、連接リンク38は、第1〜第6シート支持台35a〜35fが個別に上下動作を行えるよう、少なくとも一端側の連結孔40が長孔に形成されている。
【0033】
図1は第1〜第6シート支持台35a〜35fが全て、下降した状態を示してあるが、このような状況下において全ての連接リンク38は同じ高さで水平となり、且つ第1〜第6シート支持台35a〜35fの上端面と全ての連接リンク38の上面とが同一(面一)となるように、第1〜第6シート支持台35a〜35fと各連接リンク38との連結位置が設定されている。
言うまでもなく、第1〜第6シート支持台35a〜35fが上昇を開始したとき(図2や図3参照)も、隣り合うシート支持台が共に上昇すれば、それらの上端面と、それらを連接している連接リンク38の上面とは同一(面一)となる。
【0034】
ベルト状覆い部材39は、例えばチェンを幅方向に複数条連結させたようなもので、長手方向では上下への屈曲性が柔軟且つ豊富でありながら、幅方向では可撓性を生じないものとなっている。チェンに限らず、皮製やゴム製のベルト等でも採用可能であるが、このベルト状覆い部材39は上面でシート材Wを持ち上げるようにすることから、上面の平滑性や滑り性、耐摩耗性などに優れていることが必要となる。
ベルト状覆い部材39の一端部(図例では図1等の右側)は、第1シート支持台35aの上端部に設けられたクランプ部材24と連結されている。またベルト状覆い部材39の他端部(図例では図1等の左側)は、固定支持柱43により、シート搬送部15の搬送面よりやや低い高さで保持されていると共に、バネ44により斜め下方へ向けて引っ張り付勢されている。
【0035】
このバネ44による引っ張り付勢により、第1〜第6シート支持台35a〜35fの上下動に追随しながら搬送方向に沿った移動と上下動とが自在に行えるようになっている。これにより、第1〜第6シート支持台35a〜35fの上下動に伴ってベルト状覆い部材39に無理なテンションが作用することがなく、そのうえで、各連接リンク38及び第1〜第6シート支持台35a〜35fの各上端部との接触状態が常に維持されるように対処してある。
支持台駆動部36は例えばエアシリンダ等であって、装置フレーム側に固定された敷台45上に設置されている。この支持台駆動部36は、第1〜第6シート支持台35a〜35fに対して個別に設けられており、それぞれ直接的且つ個々独立して上下動させることができる。
【0036】
この支持台駆動部36の上下動により、第1〜第6シート支持台35a〜35fの上端(本実施形態の場合はベルト状覆い部材39を採用しているため、このベルト状覆い部材39の上面に該当する。要はシート材Wを支承する面を指す。以下の説明において同じ。)をシート搬送部15の搬送面以上に上昇させたり搬送面以下に下降させたりする。エアシリンダに代えてモータ駆動機構(直線伸縮型又は回転動作型)を採用することも可能である。
各支持台駆動部36は、第1〜第6シート支持台35a〜35fを、搬送方向の下流側から上流側へ向けて順次遅延させながら上昇させるように動作する。これにより、シート材Wを支承するタイミングが搬送方向の下流側から上流側へ向けて順次遅延するようになる。
【0037】
そのため、第1〜第6シート支持台35a〜35fによって支承されるシート材Wは、シート搬送部15から浮上するタイミングにズレが生じることになり、このタイミングのズレによってシートピッチを縮めながらも第1〜第6シート支持台35a〜35f上で整然と整列した状態となる。
シート安定部18は、シート押さえ部材47と、このシート押さえ部材47を上下動させるための下流側及び上流側の昇降具48,49とを有している。
本実施形態においてシート押さえ部材47は、搬送方向に沿って細長い形体の板材として形成されたものを示している。またこのシート押さえ部材47の下流側端部は、緩い角度(2〜3°程度)で上方へ屈曲されている。
【0038】
シート押さえ部材47の上面には、搬送方向の下流側寄りに下流側関節部50が設けられ、搬送方向の上流側寄りに上流側関節部51が設けられている。これら関節部50,51は、水平方向で且つシート搬送部15の搬送方向に直交するように設けられた、それぞれの揺動支軸50a,51aを支点として揺動自在に設けられている。
下流側昇降具48は例えばエアシリンダ等であって、装置フレーム側に固定された吊り台55に設置され、昇降動作するロッド48aが、吊り軸56を介してシート押さえ部材47の下流側関節部50と連結されている。
【0039】
上流側昇降具49もエアシリンダ等であるが、本実施形態では上段シリンダ57と下段シリンダ58とが互いに上下逆向きとなるように連結されたものを用いてある。
上段シリンダ57において昇降動作するロッド57aが、吊り台55に設けらえた支持ブラケット60と連結され、下段シリンダ58において昇降動作するロッド58aが、吊り軸61を介してシート押さえ部材47の上流側関節部51と連結されている。また、上段シリンダ57には支持ブラケット60に係合しつつ、この支持ブラケット60をガイドにして上下動自在となるスライダー62が設けられている。
【0040】
これら上段シリンダ57及び下段シリンダ58は、いずれも下流側昇降具48の昇降動作ストロークよりも小さなストロークで上下動をする。また、これら両シリンダ57,58の昇降動作ストロークを合計したものが、下流側昇降具48と略同じストロークになるように設定されている。そして、いずれか一方のシリンダ(本実施形態では上段シリンダ57としている)は、下流側昇降具48と同期して上下動するようになっている。
すなわち、下流側昇降具48が下降動作するときには上流側昇降具49の上段シリンダ57も下降動作し、シート押さえ部材47は、昇降動作ストロークの大きな下流側昇降具48によって保持された側(下流側端部)を低位とする傾斜状態に下降することになる(図2参照)。
【0041】
これによってシート押さえ部材47は、下流側先端部(2〜3°で屈曲された部分)を、後続シート整流部17の第1シート支持台35aによって上昇したシート材Wへ当接させる状態となる。
またこの状態から上流側昇降具49の下段シリンダ58だけが下降動作し、シート押さえ部材47は下降位置で略水平状態になる。これによってシート押さえ部材47は、その略全体で、後続シート整流部17の第1〜第6シート支持台35a〜35fによって上昇したシート材Wを押下する状態となる。
【0042】
このように、本実施形態では、下流側昇降具48による下降タイミングが先で、上流側昇降具49(下段シリンダ58)による下降タイミングが後になるように設定されており、これによってシート押さえ部材47は、シート材Wを押下するタイミングが搬送方向の下流側から上流側へ向けて順次遅延しながら複数枚のシート材Wを押下動作することになる。
[動作]
図8は、本発明に係る瀬切り装置1の動作状況を示したタイムチャートである。
【0043】
シート搬送部15によって瀬切り装置1内をシート材Wが搬送されている状況下にあって、シート材集積システム2側(姿勢変換部8やテーブル面9等に設けられたセンサ類)から瀬切り装置1の稼働を指示する信号が送られると、まず、瀬切り開始部16のストッパ駆動部23がストッパ22をシート搬送部15上へ突出させる。従ってシート搬送部15上のシート材Wは、このストッパ22に係止して停止する。
なお、ストッパ22に係止せず、そのすぐ前(下流側)を搬送されていたシート材W(先行シート材W)には、払い出し促進部25の加圧ローラ30により、シート搬送部15へ向けた接地圧が付与されている。
【0044】
従って、この先行シート材Wは、ストッパ22で係止されたシート材Wとの摩擦抵抗より、シート搬送部15からの搬送駆動を強く受けるようになり、瀬切り装置1からの搬出(姿勢変換部8への送り出し)が確実に行われる。すなわち、この時点から、瀬切りスペースが形成されてゆくことになる。
次に後続シート整流部17の支持台駆動部36が所定動作を開始して、最初に第1シート支持台35aを上昇させる。この第1シート支持台35aの上昇と一緒にクランプ部材24が上昇するため、ストッパ22に係止したシート材Wはクランプ部材24によって持ち上げられ、シート搬送部15からの搬送駆動を受けない状態に浮上する。
【0045】
また同時に、このシート材Wはストッパ22のフック部28とクランプ部材24とでクランプされるから、シート材Wの搬送停止状態は確実なものとなり、位置ズレなどは生じない。
更に、これら第1シート支持台35a及びクランプ部材24が上昇するとき、シート安定部18では、同じタイミングで下流側昇降具48が下降動作する。また上流側昇降具49の上段シリンダ57も同時に下降動作する。これにより、図2に示すようにシート押さえ部材47は、下流側端部を低位とする傾斜状態に下降して、第1シート支持台35aにより上昇しているシート材Wを押下するようになる。
【0046】
その後、後続シート整流部17では下流側から上流側へ向けて第2〜第6シート支持台35b〜35fを順々に上昇させる。
この過程で、シート安定部18では、第5シート支持台35eの上昇に合わせて上流側昇降具49の下段シリンダ58を下降動作させ、シート押さえ部材47を下降位置で略水平状態にさせる。これにより、図3に示すようにシート押さえ部材47は、その略全体で、後続シート整流部17の第1〜第6シート支持台35a〜35fによって上昇したシート材Wを押下する状態となる。
【0047】
かくして、後続シート整流部17の第1〜第6シート支持台35a〜35fとシート安定部18のシート押さえ部材47とによって挟持保持されるシート材Wは、保持のタイミングに生じるズレにより、一定ピッチで整然と整列しつつ搬送を停止する。
第6シート支持台35fが上昇した後、次のタイミングでストッパ22をシート搬送部15の搬送面より下へ沈み込ませ、また第1〜第6シート支持台35a〜35fを一斉に下降させ、更にシート安定部18でも下流側昇降具48及び上流側昇降具49(上段シリンダ57及び下段シリンダ58)を一斉に上昇させるようにする。
【0048】
これにより、シート材Wはシート搬送部15上へ戻され、搬送を再開されることになる。従ってシート材Wは、整然と整列したまま集積用のテーブル面へと送られることになり、集積作業に乱れが生じることがない。結果、所定長さの瀬切りスペースが確実に形成される。
[まとめ]
以上、詳説したところから明かなように、本発明に係る瀬切り装置1では、逆刺身状態とされたシート材Wに対して瀬切りを入れるものであるから、瀬切りスペースは、形成されたすぐ後に集積用のテーブル面9(図9、図10参照)へ到達することができるようになり、搬送距離は短くて済む。
【0049】
従って、瀬切りスペースに長短方向のバラツキが発生したり、瀬切りスペースの前後に位置するシート材Wに対して搬送向きのズレやめくれ(カールや折り皺)等が発生したりするといった問題は解消される。
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、後続シート整流部17において、シート支持台35の設置数は特に限定されるものではない。また、ベルト状覆い部材39は省略することもできる。
【0050】
本発明に係る瀬切り装置1は、シート材集積システム2の瀬切り部7として実施することが限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る瀬切り装置の一実施形態を示した側面図である。
【図2】図1からの動作状態を示した側面図である。
【図3】図2からの動作状態を示した側面図である。
【図4】図9のA−A線矢視図である。
【図5】図1のB−B線矢視図である。
【図6】図2のC部拡大図である。
【図7】図2のD部拡大図である。
【図8】瀬切り装置の動作状況を示したタイムチャートである。
【図9】シート材集積システムを示した側面図である。
【図10】シート材集積システムでのシート材の搬送状態を判りやすく説明した斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1 瀬切り装置
6a 天地反転部
7 瀬切り部
8 姿勢変換部
9 テーブル面
15 シート搬送部
16 瀬切り開始部
17 後続シート整流部
18 シート安定部
22 ストッパ
24 クランプ部材
25 払い出し促進部
28 フック部
35 シート支持台
35a〜35f 第1〜第6シート支持台
47 シート押さえ部材
48 下流側昇降具
49 上流側昇降具
50 下流側関節部
51 上流側関節部
W シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材(W)を搬送方向の下流側が重ね関係の下で搬送方向の上流側が重ね関係の上になる逆刺身状態にして搬送させるシート搬送部(15)と、
シート材(W)の下流側先端部に係止させるストッパ(22)を上記シート搬送部(15)の搬送面上へ突出させたり搬送面下へ沈下させたりする瀬切り開始部(16)と、
この瀬切り開始部(16)より上流位置に設けられ且つシート材(W)を支持するシート支持台(35)をシート搬送部(15)の搬送面以上に上昇させたり搬送面以下に下降させたりする後続シート整流部(17)とを有している
ことを特徴とする瀬切り装置。
【請求項2】
前記瀬切り開始部(16)において、ストッパ(22)にはシート材(W)の下流側先端部に係止した状態でシート材(W)の上方へ被さるように突出するフック部(28)が設けられていると共に、このフック部(28)へ向けてシート材(W)を下から持ち上げてクランプ状態にさせるクランプ部材(24)が上下動可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の瀬切り装置。
【請求項3】
前記クランプ部材(24)は、後続シート整流部(17)のシート支持台(35)に結合されることによって当該シート支持台(35)と一緒に上下動可能になっていることを特徴とする請求項2記載の瀬切り装置。
【請求項4】
前記瀬切り開始部(16)には、ストッパ(22)で係止されるシート材(W)よりも下流側で重ね関係になっている先行シート材(W)に対し、上から下への押圧又は下からの吸引によってシート搬送部(15)への接地圧を付与する払い出し促進部(25)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の瀬切り装置。
【請求項5】
前記後続シート整流部(17)は、シート材(W)を支承するタイミングが搬送方向の下流側から上流側へ向けて順次遅延させながら複数枚のシート材(W)に及ぶように、シート支持台(35)を上昇動作させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の瀬切り装置。
【請求項6】
前記後続シート整流部(17)は、搬送方向に沿って並ぶ複数のシート支持台(35a〜35f)を有しており、これらシート支持台(35a〜35f)を下流側から上流側へ向けて順次遅延させながら上昇可能になっていることを特徴とする請求項5記載の瀬切り装置。
【請求項7】
前記後続シート整流部(17)の上方に、シート支持台(35)によって上昇したシート材(W)の上面へ向けてシート押さえ部材(47)を押下させたり上昇離反させたりするシート安定部(18)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の瀬切り装置。
【請求項8】
前記シート安定部(18)は、シート材(W)を押下するタイミングが搬送方向の下流側から上流側へ向けて順次遅延しながら複数枚のシート材(W)に及ぶように、シート押さえ部材(47)を押下動作させることを特徴とする請求項7記載の瀬切り装置。
【請求項9】
前記シート安定部(18)において、シート押さえ部材(47)は搬送方向に沿って長い形体で形成されており、このシート押さえ部材(47)の搬送方向下流側は下流側関節部(50)を介して下流側昇降具(48)によって保持されていると共に、シート押さえ部材(47)の搬送方向上流側は上流側関節部(51)を介して上流側昇降具(49)によって保持されており、下流側昇降具(48)を先に下降動作させ上流側昇降具(49)を後に下降動作させることでシート押さえ部材(47)によりシート材(W)の押下タイミングを下流側から上流側へ遅延させることを特徴とする請求項8記載の瀬切り装置。
【請求項10】
搬送方向の下流側が重ね関係の上で搬送方向の上流側が重ね関係の下になる刺身状態にして搬送されつつあるシート材(W)を天地逆向きにすることで搬送方向の下流側が重ね関係の下で搬送方向の上流側が重ね関係の上になる逆刺身状態にさせる天地反転部(6a)と、
この天地反転部(6a)により逆刺身状態とされたシート材(W)に対して所定間隔おきに搬送方向に沿った瀬切りスペースを生じさせる瀬切り部(7)と、
この瀬切り部(7)を経たシート材(W)をその一端側から下向きの流れに導いて立位姿勢に変換する姿勢変換部(8)と、
この姿勢変換部(8)の下部位置でシート材(W)を待ち受けて到達したシート材(W)から順次起立姿勢に支持しつつ縦並び状態に集積するテーブル面(9)とを有し、
上記瀬切り部(7)に請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の瀬切り装置(1)が設置されていることを特徴とするシート材集積システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−52929(P2010−52929A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221861(P2008−221861)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】