説明

灌水・排水機構を備えた植栽パネル及びこれを用いた壁面緑化工法

【課題】灌水・排水機構を備え一体型となった植栽パネルを提供し、雨水を利用した壁面緑化を構築することを課題とする。
【解決手段】植栽パネル1は、灌水の為の導水路2Aおよび2Bを有している。なお、片側の導水路2Aのみに灌水の為の孔18を有しており、導水路を通る水の半分を下段へと導くことができる。これにより、複数段の植栽パネルに植栽された植物全体への灌水を可能とする。また、植栽パネルと灌水ホースを一度に設置できる為、壁面緑化構造体の設置作業が容易になる。植栽パネル1は、2枚のリブ21によって形成された排水層3を有しており、その底面には排水のための孔19を有している。これにより均一な排水が可能となるうえ、植栽部底面にパーライト等を敷詰める必要がなく、植栽作業が容易になる。さらに、雨どい11と導水路2とを連結することにより、雨水による省資源・省エネルギーな灌水を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雨水を利用して建築物の壁面を緑化する為に用いる植栽パネル及びこの植栽パネルを用いた壁面緑化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁面を緑化する場合には、植栽パネル及び灌水装置を現場にて設置し、この中に基盤や倍土を配置して植物の苗を植え込むことで緑化を行う方法が採用されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この方法では、複数の部材からなる植栽パネル及び灌水ホースを設置する際に時間と労力がかかる。また、排水機構を備えていないため、植物が根腐れする恐れもある。
【0004】
さらに、水供給を灌水装置のみに依存した緑化は、その維持に電力や水道を必要とし、省資源・省エネルギーの観点から問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−29322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、灌水・排水機構を備え一体型となった植栽パネルを提供し、雨水を利用した壁面緑化を構築することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明の植栽パネルは、一つの部材の中に、灌水の為の有孔導水路と、排水の為の排水層と、を有して構成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、植栽パネルには導水路が設けられている。また、この導水路内部はしきりにより2つに分断されており、片側のみに灌水の為の孔を有している。
【0009】
これにより、導水路を通る水の半分を下段へと導くことができ、複数段の植栽パネルに植栽された植物全体への灌水を可能とする。
【0010】
また、従来は2つの部材から成る植栽パネルと灌水ホースを一度に設置できる為、壁面緑化構造体の設置作業が容易になる。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、植栽パネルには排水のための排水層が2枚のリブにより形成されている。これにより、均一な排水が可能となるうえ、排水のために植栽部底面にパーライト等を敷詰める必要がなく、植栽作業が容易になる。
【0012】
また、排水層底面に開けられた孔より排水された水は、下段の植栽パネルの植栽部に落下し、2次的な灌水として利用される。
【0013】
請求項2に記載の壁面緑化構造は雨水の供給を受けることを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、雨どいと植栽パネル内部の導水路とを連結することにより、雨どいから雨水の供給を受けることができる。これにより、省資源・省エネルギーな灌水を可能とする。
【0015】
また、雨どいと導水路の連結部は、分岐することにより灌水装置へ連結することができる。これにより、降雨の少ない時期の灌水を補助する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記構成としたので、灌水・排水機構を備え一体型となった植栽パネルを提供し、雨水を利用した壁面緑化を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本発明の第1の実施形態に係る植栽パネルの側面図であり、(B)は底面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る壁面緑化構造の植栽状態を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る壁面緑化構造の植栽状態を示す側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るブラケットの斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る植栽パネルとブラケットおよびエンドキャップの係合状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る壁面緑化構造を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る支柱の斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る支柱内部と植栽パネルを結ぶ導水管の斜視図である。
【図9】(A)は本発明の第2の実施形態に係る壁面緑化構造を示す斜視図であり、(B)は側面図である。ただし、(B)は図を見やすくするためにブラケットおよび支柱の外枠を省略してある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の第一の実施形態に係る植栽パネル1について説明する。
【0019】
植栽パネル1は、灌水の為の導水路2Aおよび2Bと、排水の為の排水層3と、を有している(図1参照)。なお、導水路は内部でしきり20により2つに分断されており、片側の導水路2Aのみに灌水の為の孔18を有している。
【0020】
また、2枚のリブ21によって形成された排水層3の底面には排水のための孔19を有している(図1参照)。
【0021】
次に、本発明の第一の実施形態に係る壁面緑化構造について説明する。
【0022】
基盤材または培土4を透水性防根シートからなる袋体5に混入した基盤にあらかじめ植物6を植え付けたものを、植栽パネル1の植栽部7に設置する(図2参照)。または、透水性防根シート8および基盤材4をそれぞれ植栽部7に設置した後、植物6を現場にて植栽する(図3参照)。
【0023】
植栽パネル1は図4に示す2種類のブラケット9Aおよび9Bによりアンカーボルトを用いて壁面に固定できる。壁面への固定は植栽パネル1の各2箇所で行う。また、植栽パネル1の両端はエンドキャップ10によりビスを用いて閉じられる(図5参照)。
【0024】
雨どい11と植栽パネル1内部の導水路2の一端とを同径の導水管12にて連結する。壁面緑化構造が複数段の植栽パネル1からなる場合、導水路2のもう一端は、下段に設置された同様の植栽パネル1へと導水管13にて連結する(図6参照)。
【0025】
次に、本発明の第2の実施形態に係る壁面緑化構造について説明する。なお、第一の実施形態と同様の構成については、第一の実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0026】
本実施形態は、ブラケット9Aおよび9Bを壁面に直接固定することが困難な場合や望ましくない場合に実施されうる。
【0027】
第一の実施形態と同様に植栽された植栽パネル1をブラケット9Aおよび9Bにより、図7に示される支柱14に固定する。
【0028】
支柱14は内部に導水路15を有している。この導水路15の側面と植栽パネル1の導水路2Aとを同径の導水管16(図8)により連結する。壁面緑化構造が複数段の植栽パネル1からなる場合、全ての段において同様の連結を行う(図8参照)。
【0029】
雨どい11と支柱14内部の導水路15の上端とを同径の導水管17により連結する(図8参照)。
【符号の説明】
【0030】
1 植栽パネル、 2 導水路、 3 排水層、 4 基盤材または培土、
5 袋体、 6 植物、 7 植栽部、 8 防根シート、 9 ブラケット、
10 エンドキャップ、 11 雨どい、 12 導水管、 13 導水管、
14 支柱、 15 導水路、 16 導水管、 17 導水管、 18 孔、
19 孔、 20 しきり、 21 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの部材の中に、灌水の為の有孔導水路と、排水の為の排水層と、を有して構成されていることを特徴とする植栽パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の植栽パネルを壁面に固定し、雨どいから雨水の供給をうけることを特徴とする壁面緑化構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−19450(P2011−19450A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167561(P2009−167561)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(309026196)
【Fターム(参考)】