説明

灌流臓器止血法

ネフロン温存術における逆感熱性ポリマーの使用を含む、ポリマー溶液に基づく内部閉塞剤の使用を通じて出血を制御するための組成物、方法及びキットであって、完全な無血手術野を作り出し、迅速な切除を可能にする、組成物、方法及びキットについて、開示する。特定の実施形態では、一定の時間の経過後に、腎に対する明らかな悪影響なしに、血流が徐々に戻る。特定の実施形態では、血流の回復は腎を冷却することによって加速され得る。灌流臓器止血のための組成物、方法及びキットを用いて、肝臓外科手術、前立腺外科手術、脳外科手術、子宮の外科手術、脾臓外科手術及び高度に血管の発達した任意の臓器についての任意の外科手術を含む、他の臓器の外科手術又は介入手技を簡略化し、あるいは可能にしうる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本願は、2006年12月11日に出願された米国仮特許出願第60/874,062号、及び2007年3月9日に出願された米国仮特許出願第60/893,993号に対する優先権の利益を主張し;これらは双方とも全体として参照により本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ネフロン温存術における逆感熱性ポリマーの使用を含む、ポリマー溶液に基づく内部閉塞剤の使用を通じて出血を制御するための組成物、方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0003】
特定の標的とされる解剖学的部位において、可逆的に血流を制限することが医学的に望ましいことが多くある。例えば、様々な外科的手術において、多くの場合に一時的に血管を閉塞させることが望ましい。Fogarty鉗子、DeBakeyの「Atraugrip」、ブルドッグ鉗子又はPott及びSatinskyの末梢血管鉗子などの従来型止血の鉗子が、血管を閉塞するために広く使用されている。これらの従来型の鉗子は、血管の閉塞が要求されるほとんどの場合におおむね満足のいくものであるが、腎部分切除術の場合のように大きい実質臓器の部分切離など、止血が要求される他の適用においては使用が限定されている。腎部分切除術の処置を受ける腎細胞癌患者の割合は、3.7%(525症例;1988〜1990年)から12.3%(4000症例;2000〜2002年)へと3倍超に増加している。非特許文献1。肝切除術などの様々な他の手術もまた、一時的な血流遮断によって促進され得る。
【0004】
ネフロン温存術−腎部分切除術
ネフロン温存術(NSS)それ自体は、様々な状況下で好適であることが判明しているといえよう。例えば、腎細胞癌(RCC)の治療対応は、依然として外科的なものである。術前病期分類における最近の進歩、特に現代の画像化技術、及び外科手術技法の改良により、腎部分切除術は特定の患者において根治的腎摘出術に対する魅力的な代替策となりつつある。NSSは、より明確には、根治的腎摘出術によって患者が無腎状態となり、その後直ちに透析が必要となるであろう症例に適応される。同時性両側性腫瘍、単腎における腫瘍、又は対側腎単位の機能不全は、一般に、NSSの絶対的適応である。対側腎単位の機能不全が存在する状況は、片側性RCCと疾患過程(例えば、慢性腎盂腎炎、腎動脈疾患、結石疾患)にある対側腎とが同時に存在するか、又は全身性疾患(例えば、糖尿病)が存在する結果として生じている可能性がある。腎部分切除術はまた、腎臓の特定の良性病態及び限局性病変に対する治療選択肢としても検討され得る。非特許文献2。腎部分切除術により、それが可能で必要な場合には、最適な外科的処置が可能となると同時に、過剰治療及びネフロン喪失が回避される。より良性の適応可能例としては、腎の局部に対する不可逆的外傷性傷害、及びオンコサイトーマ、血管筋脂肪腫、又は多房性嚢胞などの良性腎腫瘍の摘除が挙げられる。他の適応としては、重複腎の閉塞性萎縮領域、排出障害を伴う腎領域の結石疾患、及びまれに、特定可能だが治療は不可能な腎動脈分枝疾患を伴う腎血管性高血圧症が挙げられる。非特許文献3。
【0005】
いくつかの要因を考慮すると、RCCに対するNSSの臨床的有用性は明らかである。第一に、RCCは通常、その経過の後期になるまで症候性ではない。偶然に検出される病変は、比較的小さく、且つ悪性度が低い傾向があり、従って保存的な外科手術が一層適している。腎腫瘍の悪性と良性とを区別するうえで現行の画像検査が信頼性に欠けることを考慮するとき、NSSの価値がさらに実感される。また、小さいRCCの自然歴及び悪性度も十分には理解されていない。同時罹患率の高い高齢患者では経過観察が実行可能な選択肢であり得たが、NSSによれば平均的な患者において根治的な外科手術及び不確実性の排除が可能となり、許容範囲での寿命延長が期待される。RCCの保存的切除の目標は、悪性腫瘍の完全に限局的な外科的摘除、及び十分な腎機能の温存である。これは微妙な均衡であり、それにより腎温存術は時に、難題を突きつけるとともに論争を招きもする。非特許文献3。
【0006】
腎腫瘍患者におけるネフロン温存術の施行には、いくつかの外科手術技法を利用することができる。主要な5つの外科手術法としては、組織の核出術、腎極領域切除術、楔状切除術、広範横断切除術、及び体外腎部分切除術と、それに続く自家腎移植術が挙げられる。
【0007】
これらの技法は全て、安定した血管制御及び徹底した止血、腎虚血の回避、自由縁を伴う完全な腫瘍摘除、並びに腎内集合系の有効な閉鎖が要求される。最後に、末期腎不全を回避するには、一方の腎の少なくとも二十パーセント(20%)を機能性の腎として残存させる必要があることから、十分な術後腎機能が維持されなければならない。しかしながら、切除を不完全にしてまで腎機能の温存のために外科手術の手技範囲を狭めないことが重要である。術後腎不全は、典型的には術中虚血と腎実質の機能喪失との組み合わせに起因する。腎不全の範囲は様々で、その程度は、クレアチニン、血中尿素、及びカリウムなどの滞留パラメータの増加に反映される。重篤な腎不全は一時的な透析を必要とし得る。残存腎組織の代償性肥大が腎機能の喪失を代償できない場合、結果的に永久的な透析を必要とする永久的な機能不全となり得る。従来の腎部分切除術の主要なステップとしては、腎循環の遮断前に十分に水分補給するとともに、術中にマンニトール静注及びループ利尿薬(例えば、フロセミド)による利尿を開始するステップが挙げられる。マンニトールは、予想される腎閉塞が起きる前に注入される。この薬剤は、浸透圧利尿を誘発するだけでなく、フリーラジカル捕捉剤でもあるため、動脈の鉗子固定による虚血傷害及び術後の急性尿細管壊死という最悪のリスクを最小限に抑えることができる。
【0008】
腎部分切除術では、両側肋骨下、又は胸腹部のいずれかのタイプで切開が行なわれる。開腹後、結腸を移動させることにより、腎が露出される。腎動脈を一時的に鉗子で固定し、出血を減少させる。典型的には、腎動脈は非侵襲性の血管用ブルドッグ鉗子によって閉塞される。腎静脈は閉塞されないままであってよく、これは、腎を逆行性灌流することによって、術後に急性尿細管壊死が生じる危険性を最小限に抑えられる可能性があるためである。腎は、腎筋膜の外側で周囲組織から切離される。正常組織の縁を伴って腫瘍が摘除される。切開された腎杯及び腎盂は縫合糸で慎重に閉じられる。腎の切断端は、脂肪、筋膜又は腹膜で覆われる。腎動脈の鉗子が取り外され、全ての出血が制御されてから、切開が閉じられる。
【0009】
現行の止血手法における課題
従来の腎部分切除法に関連する主な欠点の1つは、腎動脈の鉗子固定によって腎全体の虚血が引き起こされることである。虚血は典型的には一過性のものであるが、それでもなお、動脈の鉗子固定時間が長くなれば腎不全につながり得る。この合併症の可能性を低減するための術中対策、例えば、術前の水分補給、電解質異常の補正、マンニトールの使用及び表面低体温法の使用可能性などに対する配慮は、症例によっては残念ながら不十分であることが判明しているといえよう。従って、不運にも腎代替療法、例えば血液透析が必要となり得る患者もいる。
【0010】
技術文献には、再灌流された虚血組織に認められる損傷について理解を深めることを目的とした医学研究学界における多大な試みが掲載されている。実際、研究者らは、組織虚血と、それに続く再灌流の期間後に生じる著しい組織傷害は、循環停止の期間中だけでなく、再灌流の期間にも起こることを見出している。実に、5〜60分間にわたる循環停止の期間後に見られる全傷害部のうち比較的大きい部分が、実際には再灌流期中に発生し得る。かかる組織傷害は、再灌流傷害として知られている。
【0011】
従って、腎動脈の鉗子固定及びその後の解放は、虚血傷害のみならず、再灌流傷害にもつながり得る。権威ある研究者のなかには、腎動脈の鉗子固定によって生じる腎虚血が合計で20分を超えると、不可逆的な腎病変が起こると見る人もいる。
【0012】
従来の腎部分切除法でさらに多く見られる厄介なもう1つの術中合併症は、大量出血である。腎門への到達は、腎動脈を早い段階で特定して隔離することによってもたらされ、その容易さによって、大量出血によって妨げのない手術野及び十分な可視性が妨害される場合に、即座の動脈閉塞という追加的な安全策を提供する。しかしながら、ある状況においては、これは不十分であることが判明しているといってもよく、重篤な難治性出血の場合には、塞栓術又は再探索の必要性が生じる可能性があり得る。
【0013】
従来のネフロン温存術又は腎部分切除術における腎動脈の鉗子固定に関連する先述の欠点を回避するための試みにおいて、組織のうち除去対象の塊を取り囲む領域を鉗子固定しようと試みる外科医もいた。その目標は、腎臓用の止血帯を使用することで、直ちに摘除されるべき組織及びその辺縁に虚血を限局することである。残りの腎における虚血の低減は、理論的には魅力的だが、腎部分切除術において腎動脈の代わりに腫瘍に隣接する腎組織を鉗子固定する試みは、外科手術中の止血が不確かなため、失敗であることが判明している。
【0014】
腎動脈の代わりに腎組織を鉗子固定しようとする試みに関連する問題は、少なくとも部分的には、従来型血管鉗子を使用して組織鉗子術を施行する点に帰することができる。周知のとおり、従来型血管鉗子は、典型的には一対の旋回アームを含み、各旋回アームの遠位端にはクランプジョーが堅固に取り付けられている。鉗子固定する過程で、血管それ自体の圧力をはるかに超過する高圧の場所が生じる。従来型鉗子、例えば、Fogarty鉗子、DeBakeyの「Atraugrip」、ブルドッグ鉗子、又はPott及びSatinskyの末梢血管鉗子は、鉗子固定される血管に対して比較的高い圧力、ある場合には最高9バールを及ぼす。従来型血管鉗子を組織の鉗子固定に使用する場合、それに関連する欠点の1つは、加えられる圧力がクランプジョーと組織との界面において一様でない形で分散することである。実際に、従来型クランプジョー(典型的にはハサミ型のもの)では、ヒンジ近傍の近位端に隣接して位置する、より高い圧力と共に、クランプジョーに沿って加えられる圧力に勾配が生じる。これは、石灰化した、又は狭窄した腎動脈を有する可能性が高い、病気を有する患者において、特に懸念される。非特許文献4。
【0015】
これは、ある範囲に過度な高圧をもたらし、隣接する組織の必要以上の傷害、及び遠位の部位における不十分な圧力による不適切な止血につながる可能性がある。全身血圧が、従来型の鉗子によって組織に加えられる圧力より少なくとも1桁低いという事実を踏まえれば、好適な止血を実現する圧力は、ジョーの近位端に隣接して及ぼされる圧力よりはるかに低いであろうことが明らかとなる。さらには、ほとんどの従来型の血管鉗子の構成は、サイズに関して様々な構成にある生体組織の挿入を阻むことから、適さないことが判明している。
【0016】
最小侵襲技法
泌尿器学においては、ロボットによる腹腔鏡下の最小侵襲技法が明らかに趨勢となりつつある。腹腔鏡下ネフロン温存術には腎表面の十分な止血が必須であり、これは、抑制の効かない出血によって重大な合併症及びさらには開腹術への転換が引き起こされ得るためである。一般則として、腹腔鏡下術中の止血は極めて重要な役割を果たし、主に出血を防止するか、又は少なくとも早期に血管及び出血の制御を提供することを目指している。少量の出血でさえ、隣接する組織につく濃色の血液汚れによる著しい光吸収が原因となって視界の妨害が引き起こされ、それによって腹腔鏡により提供される拡大された視像という利点が損なわれ得るため、多様な組織シーラントが腹腔鏡下術用に、及び特にネフロン温存術を目的として構成又は開発されている。
【0017】
シーラント
腎部分切除術では、組織シーラントを使用することによって、実質的に、血管、及び集合系の速やかな修復が可能となり、且つ全体的な手術時間のみならず、特に温虚血時間も短縮される。従って、一時的な血管鉗子の腎機能に対する負の影響を低減でき、これは特に単腎症患者又は腎機能不全患者においては極めて重要である。
【0018】
利用可能なあらゆる止血用具のなかで、「糊」、又は組織シーラントは、切断される腎表面の出血制御に対する唯一十分な代替手段であり、辺縁が小さい病変の場合には、独特の止血剤としてそれらの使用が適切である。シーラントは、非生物学的なものと生物学的なものとの2種類に分類できる。非生物学的な糊のなかで最もよく知られているのは、おそらく2−オクチル−シアノアクリレートである。これは主に皮膚を閉じるために使用され、2〜3分間で切断された腎実質を覆って、固定的な耐水性のライニングを作り出す。これが機能するためには無血野が必要とされ、腎門の鉗子による予防的止血が必須となる。腎茎又は尿管などの他の構造に糊が付かないように、それを位置決めする間、誤って周囲組織と接触することがないよう特別な注意を払わなければならない。生物学的シーラントは、全て、トロンビン若しくはフィブリノゲン又はその双方を含む。これらは凝血過程の最終生成物であり、その使用によって付加した部位の全面にわたるフィブリン基質が決定される。おそらく、最もよく知られている生物学的シーラントは、フィブリン糊(Tissuecol、Crosseal、Tisseel)である。これは、ヒトトロンビンとフィブリノゲンとを、2本の別個のシリンジで同時に作用部位に注入して混和するもので、小さい血管病変を封止して止血過程に有利な被膜が作り出される。ゼラチン基質の止血シーラント(FloSeal)は、止血シーラントとして広く利用されている比較的最近の溶液である。これは、ウシゼラチンベースの基質をウシ由来の濃縮トロンビン成分と組み合わせたものである。この粘稠性のコラーゲン基質は、活性化し、且つ機能するために活動性出血が必要であり、それにより出血部位における凝固及び止血を促進する;これは、付加した後に、実質の切断端に、細心の注意を要する圧迫を1〜2分間、必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】W.C.Huangら、「Chronic kidney disease after nephrectomy in patients with renal cortical tumors:a retrospective cohort study」、The Lancet Oncology 2006、7(9)、735−740頁
【非特許文献2】A.C.Novick、「The role of nephron−sparing surgery for renal cell carcinoma in patients with a normal contralateral kidney」、Advan Urol 1996、9、1頁
【非特許文献3】R.G.Uzzo及びA.C.Novick、「Nephron sparing surgery for renal tumors:indications,techniques and outcomes」、J.of Urol.2001、166、6−18頁
【非特許文献4】R.D.Safian、S.C.Textor、「Renal−Artery Stenosis」、N Engl J Med 2001、344(6)、431−442頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本明細書に提供される本発明の組成物、方法及びキットは、ポリマー溶液に基づく内部閉塞剤の使用を通じた出血の制御に役立つ。例えば、本明細書では、ネフロン温存術における逆感熱性(reverse thermosensitive)ポリマーの使用が開示される。この手法の一実施形態において、罹患腎につながる腎動脈に過渡的な逆感熱ゲルが注入される。これは、腎実質内の血流の停止をもたらすことが示されている。ポリマーは、適切な注入速度では下流に流れ、循環の動脈側及び静脈側の双方において腎内小血管を閉塞するものと思われる。注目すべきことに、これにより完全に無血の手術野が生じ、それにより迅速な切除が可能となる。特定の実施形態において、一定の時間が経った後、血流が徐々に戻り、ここで腎に対する明らかな悪影響はない。特定の実施形態において、血流の回復は腎を冷却することによって加速され得る。
【0021】
他の実施形態において、今しがた説明された本発明の灌流臓器止血法を用いることで、他の臓器の外科的手術又は介入手技を簡略化したり、又は可能としたりすることができる。他の実施形態において、今しがた説明された本発明の灌流臓器止血法を用いることで、肝臓外科手術、前立腺外科手術、脳外科手術、子宮の外科手術、脾臓外科手術及び高度に血管の発達した任意の臓器についての任意の外科手術を簡略化し、あるいは可能にしうる。特定の実施形態では、記載される灌流臓器止血のための組成物、方法及びキットは、硬化した動脈に対する介入、石灰化した血管に対する介入、並びに他の多くの外科的及び介入的用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1(a)】ブタにおける腎部分切除術中、内部血管閉塞剤を用いる閉塞の15分時点を表す。注入後15分で腎は完全に駆血され、切断端からの出血は認められない。
【図1(b)】ブタにおける腎部分切除術中、内部血管閉塞剤を用いる閉塞の30分時点を表す。注入後30分で腎灌流が戻り、血液は一滴も認められない。
【図1(c)】ブタにおける腎部分切除術中、内部血管閉塞剤を用いる閉塞の50分時点を表す。注入後50分で腎は正常に戻っている;このことは病理報告によって確認された。
【図2】テープ又はテープと本発明のポリマー組成物(すなわち、生理食塩水中のポロキサマー407の20%溶液)との組み合わせのいずれかによって処置された4匹のブタにおける冠動脈吻合術中、15分間で採取された血液量を示すグラフを表す。
【図3(a)】バイパス術における本発明のポリマー(例えば、ポロキサマー407の20%溶液)の使用を表す。このポリマー材料は、注入し易い。
【図3(b)】バイパス術における本発明のポリマー(例えば、ポロキサマー407の20%溶液)の使用を表す。このポリマー材料は、汚れのない無血手術野を作り出す。
【図3(c)】バイパス術における本発明のポリマー(例えば、ポロキサマー407の20%溶液)の使用を表す。このポリマー材料によって縫合がし易くなる。
【図3(d)】バイパス術における本発明のポリマー(例えば、ポロキサマー407の20%溶液)の使用を表す。このポリマー材料は、使用後に消失する。
【図4】精製ポロキサマー407の様々な溶液について、温度に応じた粘度のグラフを表す。
【図5−1】ポロキサマー407の精製を示す表。「」は、コーンプレート粘度計を使用して30℃で計測された25%溶液の粘度を示す。
【図5−2】生理食塩水中における特定の逆感熱性ポリマーのゲル化温度を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0023】
腎全体を摘除するのではなく、罹患腎の病的部分のみを外科的に摘除することは、長期にわたる腎機能全般にとって有益である。この手法の選択を制限する技術的な障害は、外科手術中の出血を制御する能力、及び温虚血時間を短縮する必要性である。無血野もまた、腹腔鏡下最小侵襲技法の成功には不可欠である。本明細書には、技術的解決策として灌流臓器止血法が提供され、これは腎に生体適合性ゲルを充填することによって手技中の出血を制御するものであり、このゲルにより出血が完全に防止されて外科手術が一層容易となり、手技時間が短縮される可能性がある。他の実施形態において、記載される本発明の灌流臓器止血法を用いることで、他の臓器の外科的手術又は介入手技を簡略化し、あるいは可能にしうる。特定の実施形態において、記載される本発明の灌流臓器止血法を用いることで、肝臓外科手術、前立腺外科手術、脳外科手術、子宮の外科手術、脾臓外科手術、並びに高度に血管の発達した任意の臓器に対する任意の外科手術を簡略化し、あるいは可能にしうる。特定の実施形態において、記載される灌流臓器止血のための組成物、方法及びキットは、硬化した動脈に対する介入、石灰化した血管に対する介入、並びに他の多くの外科的及び介入的用途に用いることができる。
【0024】
本発明の一態様は、ポリマー溶液に基づく内部閉塞剤の使用を通じて出血を制御するための組成物、方法及びキットに関する。特定の実施形態では、こうした溶液は逆感熱性ポリマー溶液である。逆感熱性ポリマー溶液は低温では液状であり、温度が体温まで上昇すると、その粘度が硬質ゲルの硬さまで数桁上昇し、血管の閉塞をもたらす。閉塞部位を冷却すると、粘度が低下して液状に戻り、ゲルは血液中に溶解して血流を再開させる。血管閉塞を内部から適用することで、石灰化した動脈を穏やかに閉塞して動静脈血の臓器への供給を止めることができる。注目すべきことに、この閉塞は出血を防止するとともに、外科医に無血手術野を提供する。この無血手術野によって、ひいては外科手術に要する手術時間が短縮されるはずである。特定の外科手術では、温虚血時間が劇的に短縮され得るような程度まで手術時間を短縮できる可能性もある。
【0025】
上述されるとおり、生体適合性ゲルを使用して血管を充填及び閉塞する方法が開発された。特定の実施形態において、ゲルの作動原理は、ポリマーの逆感熱特性に基づく。ポリマー溶液は低温では液状である。温度が体温まで上昇すると、溶液の粘度は硬質ゲルの硬さまで急速に数桁上昇する。単純に氷を当てることによって閉塞部位を冷却すると、粘度が低下して液状に戻り、ゲルが血液中に溶解して血流が再開される。このゲルは、オフポンプバイパス術(OPCAB)、血液透析のアクセス、及び脛骨に関する吻合術(tibial anastomosis)などの吻合術の用途向けに開発された。図3を参照されたい。これは極めて穏やかに働くことが示されており、血管を充填して開いた後の微小血管の反応性の計測値によって証明されるとおり、動脈壁の生化学的構造を損なうことも、変化させることもない。M.Boodwhani、W.E.Cohn、J.Feng、B.Ramlavi、S.Mieno、A.Schwarz、及びF.W.Sellke、「Safety and Efficacy of a Novel Gel for Vascular Occlusion in Off−Pump Surgery」、Ann Thorac Surg 2005、80、2333−7頁。
【0026】
本明細書で提案されるとおり、本発明の過渡的ゲルは、臓器循環の動脈側及び静脈側の双方に溶液を灌流させてそれらを固化させ、それによって臓器の血液供給を完全に、又は実質的に遮蔽することによって、術中止血に関して多大な利点を提供する。例えば、本明細書には、ネフロン温存術における逆感熱性ポリマーの使用が開示される。特定の実施形態において、罹患腎につながる腎動脈に逆感熱性ゲルが注入される。これは、腎実質内の血流の停止をもたらすことが示されている。ポリマーは適切な注入速度では下流に流れ、循環の動脈側及び静脈側の双方で腎内小血管を閉塞するものと思われる。注目すべきことに、これにより完全に無血の手術野が生じ、それにより迅速な切除が可能となる。一定の条件下では、約20分後に血流が徐々に再開し、ここで腎に対する明らかな悪影響はない。特定の実施形態において、血流の戻りは必要に応じて腎を冷却することによって加速され得る。
【0027】
以下にさらに詳細に記載されるとおり、初期の短期インビボ実験は、この手法の実現可能性を示している。しかしながら、例証のいくつかにおいて使用されたポリマーの転移温度は、実質臓器に最適な転移温度より低い。腎臓などの実質臓器では、外科手術中の温度が、企業がより多くの実験経験を有する露出された動脈より高い可能性がある。より高い転移温度のポリマー溶液が、現行の実質臓器用途向けの配合より優れているといえる。転移温度がより高い、かかるポリマー溶液を、本明細書にいくつか開示する(図5の表2を参照)。特定の実施形態では、注入の速度/容量を用いて、下流の予想虚血時間が制御され得る。
【0028】
加えて、動脈の長い切開が要求されたり、又は注射部位の動脈の修復に追加的な外科手術が要求されたりすることによって手技時間が必要以上に増加することのない注入システムが、本明細書において特許請求される。特定の実施形態において、例えば腎部分切除術のために腎を十分に閉塞するためには、ポリマーゲルは腎動脈に流れ込み、その後腎の血管構造に流れ込まなければならない。ゲルは、腎動脈か、又は腎動脈に直ちに隣接する大動脈のいずれかに注入され得る。付加した後、外科医は注射部位を閉じて術後出血を防止しなければならない。しかしながら、罹患腎を有する患者は典型的には石灰化した動脈を有するため、穿刺部位は小さいほど望ましい。注射部位として大動脈が選択される場合、注射器の先端は腎動脈に入ってゲルの流れを腎まで送り込まなければならない。外科医は、注射部位を選択する際に特定の選択肢を比較検討しなければならない:1)腎動脈への到達の難易度、2)石灰化した血管へのカニューレ挿入及びそれに続く穿刺部位の閉鎖を成功させる難易度、及び3)大動脈が好ましい場合に、注射器先端を容易に腎動脈に送り込めること。また、注入前に血管の切開に費やすいかなる時間又は労力も、最小限に抑えるように努めなければならない。さらに、追加用量のゲルが必要となる事態に備え、及びゲルの溶解を早めるために必要な場合に生理食塩水を注入する導管として、腎部分切除術中は注入システムをその場に残しておくことが有利であり得る。
【0029】
定義
便宜上、本発明のさらなる説明の前に、本明細書、例、及び添付の特許請求の範囲で用いられている特定の用語がここにまとめられる。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らし合わせて読まれるべきであり、当業者の理解するとおり理解されるべきである。
【0030】
不定冠詞「a」及び「an」は、ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、明確にそれに反する旨が示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するよう理解されるものとする。
【0031】
語句「及び/又は」は、ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、そのように等位結合された要素の「いずれか、又は双方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、且つ別の場合には離接的に存在する要素を意味するよう理解されるものとする。「及び/又は」で列挙される複数の要素も同じように構成され、すなわち、そのように等位結合された要素の「1つ又は複数」であるものとする。「及び/又は」節で具体的に指定された要素以外にも、場合により他の要素が、具体的に指定されたそれらの要素に関連しても、又は関連しなくとも、存在し得る。従って、非限定的な例として、「A及び/又はB」という記載は、「〜を含んでなる(comprising)」などの非制限的な用語と併せて使用されるとき、一実施形態ではAのみを指し(場合によりB以外の要素を含む);別の実施形態ではBのみを指し(場合によりA以外の要素を含む);さらに別の実施形態ではA及びBの双方を指す(場合により他の要素を含む)、等であり得る。
【0032】
ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、1つ又は複数の要素の列挙に関連して語句「少なくとも1つ」は、要素の列挙のなかにある要素の任意の1つ又は複数から選択された少なくとも1つの要素を意味するよう理解されるものとするが、必ずしも要素の列挙の範囲にある具体的に列挙された1つ1つの要素の少なくとも1つを含むとは限らず、及び要素の列挙のなかにある要素の任意の組み合わせを排除するものではない。この定義はまた、語句「少なくとも1つ」が指している要素の列挙の範囲にある具体的に指定された要素以外の要素が、具体的に指定されたそれらの要素に関連しても、又は関連しなくとも、場合により存在し得ることも許容する。従って、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は等価なものとして「A又はBの少なくとも1つ」、又は等価なものとして「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、場合により2つ以上のAを含む、少なくとも1つのAを指し、Bは存在せず(及び場合によりB以外の要素を含む);別の実施形態では、場合により2つ以上のBを含む、少なくとも1つのBを指し、Aは存在せず(及び場合によりA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、場合により2つ以上のAを含む、少なくとも1つのAと、場合により2つ以上のBを含む、少なくとも1つのBとを指す(及び場合により他の要素を含む)、等であり得る。
【0033】
また、明確にそれに反する旨が示されない限り、2つ以上の工程又は行為を含む本明細書で特許請求される方法のいずれにおいても、方法の工程又は行為の順序は、必ずしも方法の工程又は行為が列挙されている順序に限定されるものではないものと解されるべきである。
【0034】
特許請求の範囲、並びに上記の明細書において、「〜を含んでなる(comprising)」、「〜を含む(including)」、「〜を保有する(carrying)」、「〜を有する(having)」、「〜を包含する(containing)」、「〜を伴う(involving)」、「〜を保持する(holding)」、及び「〜からなる(composed of)」などの移行句は全て、非制限的である、すなわち、「限定はされないが」を含んで意味すると理解されるべきである。移行句「〜からなる(cosisting of)」及び「〜から本質的になる(consisting essentially of)」のみは、米国特許庁の特許審査便覧(Manual of Patent Examining Procedures)の第2111.03条の定めるところに従い、それぞれ制限的又は半制限的移行句であるものとする。
【0035】
治療剤又は他の材料に関して使用されるとき、用語「徐放」は当該技術分野で認知されている。例えば、時間をかけて物質を放出する対象組成物は徐放特性を呈し得るもので、物質の全量が1回で生物学的に利用可能となるボーラス型投与と対照される。
【0036】
用語「ポロキサマー」は、その末端ヒドロキシル基の双方がポリオキシエチル化されたPPGのコアからなり、すなわち、互換可能な一般式(PEG)X−(PPG)Y−(PEG)X及び(PEO)X−(PPO)Y−(PEO)Xに従う対称性ブロック共重合体を示す。各ポロキサマー名は、最後に任意のコード番号が付され、これはX及びYによって示されるそれぞれの単量体単位の数値平均に関係している。
【0037】
用語「ポロキサミン」は、エチレンジアミンのポリアルコキシル化された対称性ブロック共重合体を示し、一般型[(PEG)X−(PPG)Y2−NCH2CH2N−[(PPG)Y−(PEG)X2に従う。各ポロキサミン名には任意のコード番号が続き、これはX及びYによって示されるそれぞれの単量体単位の数値平均に関係している。
【0038】
用語「逆感熱性ポリマー」は、本明細書で使用されるとき、周囲温度では水に対して可溶性だが、生理的温度では少なくとも部分的に水と相分離するポリマーを指す。逆感熱性ポリマーとしては、例えば、ポロキサマー407、ポロキサマー188、プルロニック(Pluronic(登録商標))F127、「プルロニック」F68、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム);及び特定のポリ(オルガノホスファゼン)が挙げられる。B.H.Leeら、「Synthesis and Characterization of Thermosensitive Poly(organophosphazenes)with Methoxy−Poly(ethylene glycol)and Alkylamines as Side Groups」、Bull.Korean Chem.Soc.2002、23、549−554頁を参照のこと。
【0039】
用語「可逆的ゲル化」及び「逆感熱性」は、温度の低下ではなく、温度が上昇することでゲル化が起こるポリマーの特性を指す。
【0040】
用語「転移温度」は、逆感熱性ポリマーのゲル化が生じる温度又は温度範囲を指す。
【0041】
用語「分解可能」は、本明細書で使用されるとき、例えば溶解によって、一定の条件下で崩壊したり、又は分解されたりする特性を有することを指す。
【0042】
語句「多分散性指数」は、特定のポリマーについての「重量平均分子量」の「数平均分子量」に対する比を指す;これは、ポリマー試料における個々の分子量の分布を反映する。
【0043】
語句「重量平均分子量」は、ポリマーの分子量の特定の尺度を指す。重量平均分子量は以下のとおり計算される:複数のポリマー分子の分子量を決定する;それらの分子量の二乗を足し合わせる;次に、分子の総分子量で除す。
【0044】
語句「数平均分子量」は、ポリマーの分子量の特定の尺度を指す。数平均分子量は、個々のポリマー分子の分子量を共通に平均したものである。これは、n個のポリマー分子の分子量を計測し、それらの分子量を合計し、nで除すことによって求められる。
【0045】
用語「生体適合性」は、本明細書で使用されるとき、生体組織において毒性反応、有害反応、又は免疫反応を起こさないことから生物学的に適合的な特性を有することを指す。
【0046】
本明細書で使用されるとき「コールドパック」は、易破断シールによって分離された化学物質の入っている2つの容器である。シールが破られると、別個の容器からの内容物が反応するため、エネルギーが周囲から吸収されて冷却効果を生じる。コールドパックで混合することのできる化学物質の例は、硝酸アンモニウム及び水である。特定の実施形態において、コールドパックは2つの密封された袋を有し、一方の袋が他方の袋の中にある。外側の袋は分厚い強力なプラスチックで作製されている。これには、硝酸アンモニウムと、第2のプラスチック袋とが入っている。第2の(内側の)袋は薄くて弱いプラスチックで作製されており、水が入っている。袋が締め付けられると、内側の袋が破れて水が粉末と混合され、冷却効果を生じる。
【0047】
用語「止血」は、体の血管又は臓器を通る血流の停止を指す。止血は一般に、それが正常な血管収縮(血管壁の一時的な閉鎖)によるものか、異常な障害物(プラークなど)によるものか、又は凝固手段若しくは外科的手段(結紮など)によるものかに関わらず、出血の停止を指す。本明細書で使用されるとき、止血は、過渡的ゲルを使用して障害物を作り出すことにより実現される。
【0048】
企図される上記のポリマー、サブユニット及び他の組成物の等価物としては、他の形でそれに相当し、且つそれと同じ一般特性(例えば、生体適合性)を有する材料が挙げられ、ここで代替物の1つ又は複数の単純な変化は、その意図する目的を実現するうえでかかる分子の効力に悪影響を及ぼさないようなものとされる。一般に、本発明の化合物は、例えば以下の説明により、又はその修正版により、容易に入手可能な出発物質、試薬及び従来の合成手順を用いて調製され得る。これらの反応では、それ自体公知の、但しここでは言及されない変化形を利用することもまた可能である。
【0049】
選択される用途
本発明の一態様は、外科手術中に腎表面出血を防止し、且つ温虚血時間を短縮して、それにより患者の転帰の向上をもたらす腎部分切除術のための組成物、方法及びキットに関する。腎部分切除術は、その腎温存効果から患者に有益であるが、現在、全ての腎摘出術のなかで腎部分切除術として施行されているのは、僅か12%ほどでしかない。これは、1つには、手技中に直面する技術的な困難に起因する。B.A.Kletscherら、「Nephron−Sparing laparoscopic surgery: techniques to control the renal pedicle and manage parenchymal bleeding」、J Endourol 1995、9、23頁;及びW.C.Huangら、「Chronic kidney disease after nephrectomy in patients with renal cortical tumours: a retrospective cohort study」、The Lancet Oncology 2006、7(9)、735−740頁。文献では、腎表面の出血を制御するための様々な試みが発表されているが、どれも腎表面に薬剤又はエネルギーを加えることによってそれを制御しようと試みるものであり、こうしたネフロン温存手術法の全てではないにしろほとんどが、指摘される2つの技術的問題、すなわち、温虚血時間を好ましくは20分未満に短縮するという要件、及び腎表面の十分な止血に対する要件のうちの少なくとも一方に悩まされる。後者の無血野に対する要件は、泌尿器科外科手術において、少量の血液によってさえ視界が大幅に制限され得るロボットによる最小侵襲技法が趨勢となりつつあることによって増幅される。R.G.Uzzo、A.C.Novick、「Nephron sparing surgery for renal tumors: indications,techniques and outcomes」、J.of Urol.2001、166、6−18頁。
【0050】
特定の実施形態において、本発明の方法は、過渡的ゲルをロボットによる腹腔鏡下技法の使用と組み合わせることにより、これらの最小侵襲技法に伴う失血及び手術時間を低減する。
【0051】
本発明の灌流臓器止血法はまた、他の実施形態において、肝臓外科手術(例えば、肝部分切除術)、前立腺外科手術(例えば、前立腺全摘術又は前立腺部分切除術)、脳外科手術、子宮の外科手術、脾臓外科手術及び高度に血管の発達した任意の臓器に対する任意の外科手術など、他の臓器の外科的手術又は介入手技を簡略化したり、又は可能にしたりするためにも用いることができる。特定の実施形態において、記載される灌流臓器止血のための組成物、方法及びキットは、硬化した動脈に対する介入;石灰化した血管に対する介入;並びに他の多くの外科的及び介入的用途に用いることができる。
【0052】
本発明の過渡的ゲル
特定の実施形態において、本発明の灌流臓器止血法は、体内でゲルを形成し、その後溶解するか、又は溶解されるポリマー、例えば、温度、pH、圧力の影響下にあることによるか、又は化学的若しくは生物学的反応の結果として体内でゲルを形成する他の逆感熱性ポリマー及び任意のポリマー溶液又はポリマーの組み合わせなどを使用することにより達成され得る。他の実施形態において、本発明の方法に使用される過渡的ゲルは架橋性ポリマーである。特定の実施形態において、過渡的ゲルはインサイチュで生成され得る。特定の実施形態において、過渡的ゲルは非組織接着性である。
【0053】
特定の実施形態において、2種の溶液、ポリマー溶液と架橋剤溶液とが、別個に(例えば、デュアルルーメンカテーテルを通じて)生体管腔に注入され、そこでそれらはゲル状となり、過渡的ゲルを形成する。前記ポリマー溶液は、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、又は非イオン性の架橋性ポリマーを含んでなり得る。かかるポリマーは、以下のうち1つ又は複数を含み得る:アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ナトリウム型ジェラン、カリウム型ジェラン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、及びポリビニルアルコール。ポリマーの架橋結合によるポリマーゲルの形成は、アニオン性架橋イオン、カチオン性架橋イオン、又は非イオン性架橋結合剤によって実現され得る。架橋結合剤としては、限定はされないが、以下のなかの1つ又は複数が挙げられる:リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム及びストロンチウム。ポリマーと架橋剤との例示的な組み合わせとしては、アニオン性ポリマー単量体とカチオン、例えば、アルギン酸塩と、カルシウム、バリウム若しくはマグネシウム;ジェランと、カルシウム、マグネシウム若しくはバリウム;又はヒアルロン酸とカルシウムが挙げられる。非イオン性ポリマーの化学的架橋結合剤との例示的な組み合わせは、ポリビニルアルコールとホウ酸塩(弱アルカリ性のpH)である。
【0054】
一般に、本発明の方法に使用されるポリマーは、体温又は体温付近でゲルになるもので、液状形態で投与できる。特定の実施形態において、本発明のポリマー組成物は、可塑性材料か、又は流動性材料であってもよい。「流動性」とは、体温において、時間が経つとそれが収まっている空間の形状をとる能力を意味する。例えばこの特徴には、例えば針が装着された、手動で操作するシリンジによる注入か、又はカテーテルを通じた送達に好適な液状組成物が含まれる。用語「流動性」はまた、室温での粘稠性が極めて高いゲル状材料も包含し、これは、注ぎ込むか、チューブから搾り出すか、又は手動手段単独で及ぼし得る圧力より大きい注入圧を提供する市販の高圧注射装置のいずれか1つを用いて注入することにより、所望の部位に送達され得る。使用されるポリマーそれ自体が流動性である場合、本発明のポリマー組成物は、たとえそれが粘稠性であっても、流動性とするため生体適合性溶媒を含む必要はないが、但し微量又は残留量の生体適合性溶媒は存在し得る。
【0055】
加えて、特定の実施形態において、本発明の過渡的ゲルは、1つ又は複数の逆感熱性ポリマーの水溶液であってもよい。こうしたポリマー溶液は、体温未満では液体、及び体温付近ではゲルである。特定の実施形態において、ポリマー溶液は体外で、すなわち体温未満の温度で調製される。ポリマー溶液はさらに、体内に導入した際にゲルが液状形態に留まる時間が長くなるよう冷却されてもよい。好ましい温度は、ポリマー溶液のゲル化温度未満で約10℃である。特定の実施形態において、本発明の方法に関連して使用される過渡的ゲルは、逆熱ゲル化特性を伴うブロック共重合体を含んでなってもよい。ブロック共重合体は、さらに、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、例えば、生分解性で生体適合性の、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとの共重合体を含んでなり得る。また、逆感熱性ポリマーは1つ又は複数の添加剤を含んでもよく、例えば、逆感熱性ポリマーに治療剤が添加されてもよい。
【0056】
特定の実施形態において、ブロック共重合体の分子量は、約2,000〜約1,000,000の範囲、より詳細には少なくとも約10,000、及びさらにより具体的には少なくとも約25,000又はさらには少なくとも約50,000である。特定の実施形態において、ブロック共重合体の分子量は、約5,000〜約30,000である。特定の実施形態において、逆感熱性ポリマーの分子量は、約1,000〜約50,000、又は約5,000〜約35,000であってもよい。他の実施形態において、好適な逆感熱性ポリマー(ポロキサマー又はポロキサミンなど)の分子量は、例えば、約5,000〜約25,000、又は約7,000〜約20,000であってもよい。数平均分子量(M)もまた様々であり得るが、概して約1,000〜約400,000、ある実施形態では約1,000〜約100,000、及び他の実施形態では約1,000〜約70,000の範囲に収まり得る。特定の実施形態では、Mは約5,000〜約300,000の間で様々である。
【0057】
特定の実施形態では、ポリマーは水溶液中にある。例えば、典型的な水溶液は、約5%〜約30%、好ましくは約10%〜約25%のポリマーを含有する。哺乳動物に投与される逆感熱性ポリマー製剤のpHは、一般的には約6.0〜約7.8であり、これは、哺乳動物の体内への注入に好適なpHレベルである。pHレベルは、任意の好適な酸又は塩基、例えば塩酸又は水酸化ナトリウムなどによって調整されてもよい。
【0058】
特定の実施形態では、本発明の逆感熱性ポリマーは、ポロキサマー又はポロキサミンである。「プルロニック」ポリマーは、特有の界面活性能力を有し、毒性反応及び免疫原性反応が極めて低い。これらの生成物は急性の経口及び経皮毒性が低く、且つ刺激作用又は感作を引き起こす可能性が低く、並びに一般慢性毒性及び亜慢性毒性が低い。実際、「プルロニック」ポリマーは、FDAによって医学的用途及び食品添加剤としての直接的な使用が承認された数少ない界面活性剤の1つである。BASF(1990年)「プルロニック」および「テトロニック」界面活性剤(BASF社(米国ニュージャージー州マウントオリーブ所在))を参照のこと。最近になって、いくつかの「プルロニック」ポリマーが、薬物の治療効果及びアデノウイルス介在性遺伝子導入の効率を亢進することが判明している。K.L.March、J.E.Madison、及びB.C.Trapnell、「Pharmacokinetics of adenoviral vector−mediated gene delivery to vascular smooth muscle cells: modulation by poloxamer 407 and implication for cardiovascular gene therapy」、Hum Gene Therapy 1995、6、41−53頁。
【0059】
興味深いことに、ポロキサマー(又は「プルロニック」)は、非イオン性界面活性剤として様々な工業用途で広く用いられている。例えば、「Nonionic Surfactants: polyoxyalkylene block copolymers」、第60巻、Nace VM、Dekker M(編者)、New York、1996年、280頁を参照されたい。その界面活性特性は、洗浄力、分散、安定化、発泡、及び乳化において有用となっている。A.Cabana、A.K.Abdellatif、及びJ.Juhasz、「Study of the gelation process of polyethylene oxide.polypropylene oxide−polyethylene oxide copolymer(poloxamer 407)aqueous solutions」、Journal of Colloid and Interface Science 1997、190、307−312頁。特定のポロキサミン、例えば、ポロキサミン1307及び1107はまた、逆感熱性も呈する。
【0060】
重要なことには、このクラスのポリマーのうちいくつかのメンバー、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー338、ポロキサミン1107及びポロキサミン1307は、生理的温度範囲内で逆感熱性を示す。Y.Qiu、及びK.Park、「Environment−sensitive hydrogels for drug delivery」、Adv Drug Deliv Rev 2001、53(3)、321−339頁;及びE.S.Ron、及びL.E.Bromberg、「Temperature−responsive gels and thermogelling polymer matrices for protein and peptide delivery」、Adv Drug Deliv Rev 1998、31(3)、197−221頁。換言すれば、これらのポリマーは、低温では水溶液に対して可溶性だが、より高い温度ではゲル状となるクラスのメンバーである。ポロキサマー407は、平均分子量が約12,500で、且つポリオキシプロピレン画分が約30%の生体適合性ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体であり;ポロキサマー188は、平均分子量が約8400で、且つポリオキシプロピレン画分が約20%であり;ポロキサマー338は、平均分子量が約14,600で、且つポリオキシプロピレン画分が約20%であり;ポロキサミン1107は平均分子量が約14,000であり、ポロキサミン1307は平均分子量が約18,000である。このタイプのポリマーは可逆的ゲル化物とも称され、これは、その粘度が温度の上昇及び下降に伴ってそれぞれ増加及び低下するためである。かかる可逆的ゲル化系は、材料の扱いには流動状態が望ましいが、機能としてはゲル化した、又はより粘稠性の高い状態が好ましいどのような場合にも有用である。上述のとおり、特定のポリ(エチレンオキシド)/ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体は、こうした特性を有する;これは、「プルロニック」ポロキサマー及びテトロニック(Tetronic(登録商標))ポロキサミン(BASF社(独国ルートウィヒスハーフェン所在)製)として市販されており、それぞれ総称的にポロキサマー及びポロキサミンとして知られている。米国特許第4,188,373号明細書、同第4,478,822号明細書及び同第4,474,751号明細書を参照のこと;これらは全て、参照によって本明細書に援用される。
【0061】
市販のポロキサマー及びポロキサミンの平均分子量は、約1,000〜16,000を超える範囲に及ぶ。ポロキサマーは一連の連続的な反応の生成物であるため、個々のポロキサマー分子の分子量が、平均分子量に関する統計的分布を形成する。加えて、市販のポロキサマーは、相当量のポリ(オキシエチレン)ホモポリマー及びポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)ジブロックポリマーを含有する。これらの副生成物の相対量は、ポロキサマーの成分ブロックの分子量が増加するほど増加する。製造者によっては、販売されているポリマーの全質量の約15%〜約50%を、これらの副生成物が構成する。
【0062】
逆感熱性ポリマーは水溶性ポリマーの分画プロセスを用いて精製でき、このプロセスは、既知の量のポリマーを水に溶解するステップと、可溶性抽出塩をポリマー溶液に添加するステップと、2つの異なる相が現れるのに十分な時間にわたって溶液を一定の最適温度に維持するステップと、相を物理的に分離するステップとを含む。加えて、好ましい分子量のポリマー画分を含む相が水によって初期容量まで希釈されてもよく、抽出塩を添加することにより初期濃度が実現されてもよく、及び出発物質より狭い分子量分布を有するポリマー及び最適な物理的特性を回復できるまで、必要に応じて分離プロセスが繰り替えされてもよい。
【0063】
特定の実施形態では、精製されたポロキサマー又はポロキサミンは、多分散性指数が約1.5〜約1.0である。特定の実施形態において、精製されたポロキサマー又はポロキサミンは、多分散性指数が約1.2〜約1.0である。
【0064】
前述のプロセスは、水中のポリマーと適当な塩とからなる水性二相系を形成することで構成される。かかる系では、可溶性の塩を単相ポリマー−水系に添加することで相分離を誘発して、塩が多くポリマーが少ない下相と、塩が少なくポリマーが多い上相とを生じさせることができる。分子量がより低いポリマーは、塩が多くポリマーが少ない相に優先的に区分される。このプロセスを用いて分画できるポリマーとしては、ポリエーテル、ポリ(エチレングリコール)及びポリ(エチレンオキシド)などのグリコール、ポロキサマー、ポロキサミン、及びポリオキシプロピレン/ポリオキシブチレン共重合体などのポリオキシアルキレンブロック共重合体、及びポリビニルアルコールなどの他のポリオールが挙げられる。これらのポリマーの平均分子量は、約800〜100,000を超える範囲に及び得る。米国特許第6,761,824号明細書(参照によって本明細書に援用される)を参照されたい。前述の精製プロセスは、本質的に、ポロキサマー分子、ポリ(オキシエチレン)ホモポリマー及びポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)ジブロック副生成物の間のサイズ及び極性、従って溶解度の違いを利用する。ポロキサマーの極性画分は、概してより低い分子量の画分及び副生成物を含み、これを取り除くことによってより高い分子量のポロキサマー画分の回収が可能となる。この方法によって回収されたより大きい分子量のポロキサマーは、より高い平均分子量、より低い多分散性及び水溶液中でのより高い粘度を含め、出発物質又は市販のポロキサマーと実質的に異なる物理的特性を有する。
【0065】
所望の結果を実現するため、他の精製方法が用いられてもよい。例えば、国際公開第92/16484号パンフレット(参照によって本明細書に援用される)は、有益な生物学的作用を呈し、有害な副作用を引き起こす可能性のないポロキサマー188の画分を隔離するための、ゲル浸透クロマトグラフィーの使用を開示している。こうして得られた共重合体は、多分散性指数が1.07以下であったとともに、実質的に飽和状態であった。害を及ぼす可能性のある副作用は、ポリマーのうち低分子量の不飽和部分に関連していることが示され、一方、医学的に有益な作用は、均一でより高い分子量の材料に存在していた。同じように改良された他の共重合体が、共重合体の合成中にポリオキシプロピレン中心ブロックか、又は共重合体生成物それ自体のいずれかを精製することによって得られた(例えば、米国特許第5,523,492号明細書及び米国特許第5,696,298号明細書;これらは双方とも参照によって本明細書に援用される)。
【0066】
さらに、米国特許第5,567,859号明細書(参照によって本明細書に援用される)に開示されるとおり、超臨界流体抽出技法を用いてポリオキシアルキレンブロック共重合体が分画されている。精製画分が得られ、これは多分散性が1.17未満の相当に均一なポリオキシアルキレンブロック共重合体からなっていた。この方法によれば、15.17MPa(2200ポンド毎平方インチ(psi))の圧力及び40℃の温度で維持された二酸化炭素流下において、より低い分子量の画分が取り除かれた。
【0067】
加えて、米国特許第5,800,711号明細書(参照によって本明細書に援用される)は、塩抽出及び液相分離技法を用いた低分子量種のバッチ式除去によるポリオキシアルキレンブロック共重合体の分画プロセスを開示している。この方法によって、ポロキサマー407及びポロキサマー188が分画された。いずれの場合も、出発物質と比較したときより高い平均分子量及びより低い多分散性指数を有する共重合体画分が得られた。しかしながら、多分散性指数の変化はそれほど大きくなく、ゲル浸透クロマトグラフィーによる分析からは、いくらかの低分子量材料が残留していることが示された。10℃〜37℃の温度において、分画されたポリマーの水溶液の粘度は、市販のポリマーの粘度と比べて大幅に高かったが、これは一部の医療用途及び薬物送達用途には重要な特性である。それにも関わらず、これらのポリマーのなかの低分子量混入物の一部が体内での使用時に有害な副作用を引き起こすと考えられ、分画プロセスにおけるその除去が特に重要となる。結果として、このプロセスによって分画されたポリオキシアルキレンブロック共重合体は、あらゆる医療用途に適切であるとはいえない。
【0068】
先行研究では、19℃で固体ゲルを形成するポロキサマー407の22%溶液を使用して、腎内血流の停止を得られることが示されている。J.Raymond、A.Metcalfe、I.Salazkin、及びA.Schwarz、「Temporary vascular occlusion with poloxamer 407」、Biomaterials 2004、25、3983頁。上述されるとおり、逆感熱性ポリマーのポロキサマー407はポロキサマーポリマー群の1種であり、様々な工業用途及び医療用途に使用されている周知の水溶性ポリマー界面活性剤である。しかしながら、このポリマーは別の目的、すなわち、より小さく、より冷たい、表面が露出された動脈の止血のために開発されたもので、特定の実施形態については、初期の動物実験中に必要とされた注入力が予想以上に大きかったことから(結果は示さない)、実質臓器への注入には低温過ぎる可能性がある。従って、特定の実施形態、例えば、正常体温の腎に利用されるような実質内の一時止血での使用については、理想的な逆感熱性ポリマーは異なり得る。特定の実施形態では、転移温度がより高いポリマーが好ましいこともある。特定の実施形態では、転移温度が約30℃のポリマーが好ましい。
【0069】
逆感熱性ポリマーの転移温度の変更は、数多くの方法で達成できる。例えば、転移温度は、転移温度改変添加剤の添加か、又は改変ポリマーの開発のいずれかを通じて変更することができる。転移温度には、数多くの添加剤、例えば、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム又はカプリン酸ナトリウムなどの医薬用脂肪酸賦形剤の添加によって影響を及ぼすことができる。他の可能な医薬用賦形剤は、溶媒、例えば、水、アルコール、特にC1〜C5アルコール、例えば、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコールなど;MTBEなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;グリセロールなどの保湿剤;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール;乳化剤、例えば、モノステアリン酸グリセロール、ミリスチン酸イソプロピルなどの長鎖(C12〜C24)脂肪酸、ソルビタンモノ脂肪酸エステルなどの糖アルコールの脂肪酸エステル、かかる化合物のポリエトキシル化誘導体、ポリエトキシエチレン脂肪酸エステル及び脂肪アルコールエーテルで部分的にエステル化された、場合により多価の低級C〜Cアルコール、コレステロール、セチルステアリルアルコール、羊毛ロウアルコール及び低HLB値の合成界面活性剤など;カルボポールなどの可溶化剤;低粘度パラフィン、トリグリセリド;ミリスチン酸イソプロピルなどの親油性物質;TEA、炭酸塩及びリン酸塩などのpH調節剤;EDTAなどのキレート剤、及びその塩;並びに防腐剤であり得る。さらに、転移温度に影響を与えるため、他のポロキサマーを添加してポロキサマーの混合物を形成することが公知である。
【0070】
より高い転移温度を実現するための別の手法は、288及び188などの他のポロキサマーを使用することである。これらのポロキサマーの転移温度に関する文献報告は、それらが逆感熱性であるという記載以外にはない。表2の図5は、様々な逆感熱性ポリマー溶液及びそれらのゲル化温度を示す。
【0071】
転移温度を上昇させるための手法は、様々な濃度のポリマー及び賦形剤におけるポリマー水溶液の粘度対温度曲線を計測することによって調べることができる。特定の実施形態について、転移温度を上昇させたポリマー溶液は、所要注入圧及び最低注入圧についてインビトロで評価され、その後ポリマー溶液は、まず始めに腎部分切除術のブタモデルにおいてインビボで評価され得る。
【0072】
特定の実施形態において、視覚化を補助するため、コントラスト増強剤が過渡的ゲルに添加され得る。例示的なコントラスト増強剤は、放射線不透過性材料、常磁性材料、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、染料、及び放射性核種含有材料である。
【0073】
選択される治療剤
本発明の方法に使用される可逆的ゲル化ポリマーは、その有する物理化学的特性により、従来の小分子薬物、並びに巨大分子(例えば、ペプチド)薬物又は他の治療用生成物の好適な送達媒体となる。従って、感熱性ポリマーを含んでなる組成物は、予め選択された医薬効果を提供するように選択された医薬製剤をさらに含んでなり得る。医薬効果は、疾患又は身体的障害の原因又は症状を予防又は治療しようとするものである。医薬品としては、FDAの医薬品ガイドラインに定められる規制に従うような生成物が挙げられる。重要なことに、本発明の方法に使用される組成物は、生物活性物質を可溶化し、放出する能力を有する。可溶化は、バルク水相中で溶解する結果としてか、又はポロキサマーの疎水性領域によって作り出されるミセルへの溶質の取り込みによって起こると予想される。薬物の放出は、拡散又はネットワーク浸食機序を通じて起こり得る。
【0074】
当業者は、本発明の方法に使用される組成物が、同時に様々な医薬品の創傷部位への送達にも利用できることを理解するであろう。医薬組成物を調製するため、望ましい医薬効果を付与する薬学的に活性な薬剤の有効量が、本発明の方法に使用される可逆的ゲル化組成物に組み込まれる。好ましくは、選択される薬剤は水溶性であり、このことは可逆的ゲル化組成物の全体にわたる均質な分散に直ちに役立ち得る。また、薬剤は組成物と反応性を有しないことが好ましい。水溶性でない材料については、組成物全体に親油性材料を分散又は懸濁させることもまた本発明の方法の範囲内である。無数の生物活性物質が、本発明の方法を用いて送達され得る;送達される生物活性物質としては、麻酔剤、抗菌剤(抗菌性、抗真菌性、抗ウイルス性)、抗炎症剤、診断剤、及び創傷治癒剤が挙げられる。
【0075】
本発明の方法に使用される可逆的ゲル化組成物は、様々な環境条件下での利用に適しているため、多岐にわたる薬学的に活性な薬剤を組成物に組み込むことができ、その組成物を介して投与され得る。感熱性ポリマーのポリマーネットワークに負荷される医薬製剤は、生物活性を有する任意の物質であってよく、タンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、核タンパク質、多糖、糖タンパク質、リポタンパク質、並びにそれらの合成類似体及び生物学的に改変された類似体が挙げられる。
【0076】
膨大な数の治療剤が本発明の方法で使用されるポリマーに組み込まれ得る。一般に、本発明の方法を介して投与され得る治療剤としては、限定なしに:抗生物質及び抗ウイルス剤などの抗感染薬;鎮痛薬及び鎮痛化合物;摂食障害剤;駆虫薬;抗関節炎剤;抗喘息薬;抗痙攣薬;抗うつ剤;抗利尿剤;止痢薬;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤;抗片頭痛製剤;制嘔吐剤;抗悪性腫瘍薬;抗パーキンソン薬;鎮痒薬;抗精神病剤;解熱剤、鎮痙剤;抗コリン薬;交感神経作動薬;キサンチン誘導体;カルシウムチャネル遮断薬及びβ遮断薬、例えばピンドロール及び抗不整脈薬などを含む心血管系製剤;降圧剤;利尿剤;総冠血管、末梢血管及び脳血管を含む血管拡張剤;中枢神経系刺激薬;鬱血除去薬を含む感冒薬;ホルモン、例えば、エストラジオール、及びコルチコステロイドを含む他のステロイドなど;催眠剤;免疫抑制薬;筋弛緩剤;副交感神経遮断薬;精神刺激薬;鎮静剤;及び精神安定剤;及び天然由来か、若しくは遺伝的に改変されたタンパク質、多糖、糖タンパク質、又はリポタンパク質が挙げられる。非経口投与に好適な医薬品は、「Handbook on Injectable Drugs」、第6版、Lawrence A.Trissel、American Society of Hospital Pharmacists、Bethesda、Md.、1990年(参照によって本明細書に援用される)に例示されるとおり周知されている。
【0077】
薬学的に活性な化合物は、生物活性を有する任意の物質であってよく、タンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、核タンパク質、多糖、糖タンパク質、リポタンパク質、並びにそれらの合成類似体及び生物学的に改変された類似体が挙げられる。用語「タンパク質」は当該技術分野で認知されており、本発明の目的上、ペプチドもまた包含する。タンパク質又はペプチドは、天然に存在するか、又は合成の任意の生物学的に活性なタンパク質又はペプチドであってよい。
【0078】
タンパク質の例としては、抗体、酵素、成長ホルモン及び成長ホルモン放出ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、並びにそのアゴニスト類似体及びアンタゴニスト類似体、ソマトスタチン及びその類似体、黄体形成ホルモン及び卵胞刺激ホルモンなどのゴナドトロピン、ペプチドT、サイロカルシトニン、副甲状腺ホルモン、グルカゴン、バソプレッシン、オキシトシン、アンジオテンシンI及びII、ブラジキニン、カリジン、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、インスリン、グルカゴン並びに前述の分子の様々な類似体及び同類物が挙げられる。医薬用薬剤は、インスリンと、MMR(ムンプス、麻疹及び風疹)ワクチン、腸チフスワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、単純ヘルペスウイルス、細菌トキソイド、コレラ毒素Bサブユニット、インフルエンザワクチンウイルス、百日咳菌ウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、カナリア痘、ポリオワクチンウイルス、熱帯熱マラリア原虫、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、肺炎桿菌、HIVエンベロープ糖タンパク質及びサイトカインからなる群より選択される抗原と、ウシソマトロピン(BSTと称されることもある)、エストロゲン、アンドロゲン、インスリン成長因子(IGFと称されることもある)、インターロイキンI、インターロイキンII及びサイトカインからなる群より選択される他の薬剤とから選択されてもよい。3つのかかるサイトカインは、インターフェロンβ、インターフェロンγ及びタフトシンである。
【0079】
本発明の方法で使用される組成物に組み込まれ得る細菌トキソイドの例は、破傷風、ジフテリア、緑膿菌(pseudomonas A)、結核菌(mycobaeterium tuberculosis)である。本発明の閉塞方法に使用される組成物に組み込まれ得るものの例は、HIVエンベロープ糖タンパク質、例えば、AIDSワクチン用のgp120又はgp160である。含まれ得る抗潰瘍H2受容体拮抗薬の例は、ラニチジン、シメチジン及びファモチジンであり、他の抗潰瘍薬物は、オンパラジド(omparazide)、セスプリド(cesupride)及びミソプロストールである。血糖降下剤の例はグリピジドである。
【0080】
本発明の閉塞方法に使用される組成物に組み込まれ得る薬学的に活性な化合物のなかで負荷可能なクラスとしては、限定はされないが、抗AIDS物質、抗癌物質、抗生物質、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン)、抗ウイルス物質、酵素阻害剤、神経毒、オピオイド、催眠剤、抗ヒスタミン剤、潤滑剤、精神安定剤、抗痙攣薬、筋弛緩剤及び抗パーキンソン病物質、鎮痙薬及び筋収縮剤、縮瞳薬及び抗コリン薬、抗緑内障化合物、抗寄生虫及び/又は抗原虫化合物、降圧薬、鎮痛薬、NSAIDなどの解熱薬及び抗炎症剤、局所麻酔剤、点眼薬、プロスタグランジン、抗鬱薬、抗精神病性物質、制吐薬、造影剤、特異標的化薬剤、神経伝達物質、タンパク質、細胞応答改良剤、及びワクチンが挙げられる。
【0081】
本発明の方法に使用される組成物への組み込みに特に好適な例示的医薬用薬剤としては、限定はされないが、イミダゾール、例えば、ミコナゾール、エコナゾール、テルコナゾール、サペルコナゾール、イトラコナゾール、メトロニダゾール、フルコナゾール、ケトコナゾール、及びクロトリマゾールなど、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及びその類似体であるノノキシノール−9、GnRHアゴニスト又はアンタゴニスト、天然又は合成プロゲスチン、例えば、特定のプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンなどの17−ヒドロキシプロゲステロン誘導体、及びノルエチンドロンなどの19−ノルテストステロン類似体など、天然又は合成エストロゲン、共役エストロゲン、エストラジオール、エストロピペート、及びエチニルエストラジオール、エチドロネート、アレンドロネート、チルドロネート、リセドロネート、クロドロネート、及びパミドロネートを含むビスホスホネート、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、炭酸脱水酵素阻害剤、例えばフェルバメート及びドルゾラミドなど、マスト細胞安定剤、例えば、キセステルベルグステロール−A(xesterbergsterol-A)、ロドキサミン(lodoxamine)、及びクロモリンなど、プロスタグランジン阻害剤、例えば、ジクロフェナク及びケトロラクなど、ステロイド、例えば、プレドニゾロン、デキサメタゾン、フルロメチロン(fluromethylone)、リメキソロン、及びロテプレドノールなど、抗ヒスタミン剤、例えば、アンタゾリン、フェニラミン、及びヒスタミナーゼなど、硝酸ピロカルピン、β遮断薬、例えば、レボブノロール及びマレイン酸チモロールなどが挙げられる。当業者は理解するであろうとおり、特定の効果のために2種以上の医薬用薬剤が組み合わされてもよい。活性成分の必要量は、単純な実験によって判断することができる。
【0082】
単に例として、数多くの抗生物質及び抗菌薬のいずれかが本発明の方法に使用される感熱性ポリマーに組み込まれてもよい。本発明の閉塞方法で使用される組成物への組み込みに好ましい抗菌薬物としては、ラクタム系薬物、キノロン系薬物、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、アミカシン、トリクロサン、ドキシサイクリン、カプレオマイシン、クロルヘキシジン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クリンダマイシン、エタンブトール、イセチオン酸ヘキサミジン、メトロニダゾール、ペンタミジン、ゲンタマイシン、カナマイシン、リネオマイシン(lineomycin)、メタサイクリン、メテナミン、ミノサイクリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ミコナゾール及びアマンタジンなどの塩が挙げられる。単に例として、抗炎症の場合、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)が本発明の閉塞方法で使用される組成物に組み込まれてもよく、例えば、プロピオン酸誘導体、酢酸、フェナム酸(fenamic acid)誘導体、ビフェニルカルボン酸誘導体、オキシカム系などであり、限定はされないが、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、及びブクロキシ酸(bucloxic acid)などが挙げられる。
【0083】
注入システム
送達システムを使用して逆感熱性ポリマー組成物の注入を促進及び制御してもよい。理想的には、この注入システムによって、注入前に動脈を切開する必要性が最小限に抑えられ得る。さらに、最適な注入システムの構築においては、毎秒0.5mLの流量を維持しながら液状形態のポリマーを様々な直径の針を通じて注入するのに要求される親指圧力を決定することが役に立ち得る。引張試験装置(例えば、Instron(登録商標))を使用して、プランジャを押圧するのに必要な力及びその結果得られる圧縮速度を計測できる。
【0084】
特定の実施形態において、手術室にある標準的な非侵襲システム(例えば、手持ち式超音波検査機器)を用いて血管中で検出することのできるカニューレを使用すると、カニューレが腎動脈において適正に配置されたことを確認するのに役立ち得る。カテーテルは拡張カテーテルであってもよい。一実施形態において、カテーテルは3〜10フレンチのサイズであり、より好ましくは3〜6フレンチである。別の実施形態において、カテーテルを使用することにより、ポリマー溶液以外に、又はそれに加えて、1種又は複数の流体を分注することができる。前記実施形態において、カテーテルは、あるルーメンがポリマー溶液の送達用であり、他のルーメンが造影剤溶液などの他の流体の送達用であるマルチルーメンカテーテルであってもよい。
【0085】
別の実施形態において、ポリマー溶液を体内に注入するために使用され得るシリンジ又は他の機構は、例えば、1〜100ccシリンジ、1〜50cc又は1〜5ccシリンジであり得る。シリンジに加えられる圧力は、手動で、又は自動シリンジプッシャによって加えることができる。特定の実施形態において、粘稠性材料を注入するためにシリンジに補助的な力を提供するシステム(例えば、ばね負荷式プランジャ補助装置)が使用されてもよい。
【0086】
キット
本発明はまた、本発明の方法を簡便且つ効果的に実施するためのキットも提供する。かかるキットは、本発明のポリマーのいずれか又はその組み合わせ、及び本発明の方法に従うその使用を促進するための手段を備える。かかるキットはまた、氷、コールドパック、又は他の冷却手段も含み得る。かかるキットは、この方法が効果的な形で実施されることを確実にするための簡便で効果的な手段を提供する。かかるキットのコンプライアンス手段としては、本発明の方法の実施を促進する任意の手段が挙げられる。かかるコンプライアンス手段としては、説明書、包装、及び分注手段、及びそれらの組み合わせが挙げられる。キットの構成要素は、前述の方法の手作業による実施用にも、又は部分的若しくは全体的に自動化された実施用にも包装され得る。他の実施形態において、本発明は、本発明のブロック共重合体、及び場合によりそれらの使用説明書を含むキットを企図する。特定の実施形態において、本発明のかかるキットの逆感熱性共重合体は、1本又は複数のシリンジの中に入れられる。
【0087】
本発明の過渡的ゲル
本発明の一態様は、過渡的ゲルに関する。
【0088】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで過渡的ゲルは哺乳動物の生理的温度においてゲルである。
【0089】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0090】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、約5%〜約35%の前記逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0091】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、約10%〜約30%の前記逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0092】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、多分散性指数が約1.5〜約1.0である。
【0093】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、多分散性指数が約1.2〜約1.0である。
【0094】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト重合体、及び分岐共重合体からなる群より選択される。
【0095】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポリオキシアルキレンブロック共重合体である。
【0096】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択される。
【0097】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポロキサマー407、ポロキサマー288、ポロキサマー188、ポロキサマー338、ポロキサマー118、「テトロニック」1107又は「テトロニック」1307からなる群より選択される。
【0098】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポロキサマー407である。
【0099】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、精製ポロキサマー及び精製ポロキサミンからなる群より選択される。
【0100】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、精製ポロキサマー407、精製ポロキサマー288、精製ポロキサマー188、精製ポロキサマー338、精製ポロキサマー118、精製「テトロニック」1107又は精製「テトロニック」1307からなる群より選択される。
【0101】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、精製ポロキサマー407である。
【0102】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは賦形剤を含んでなる。
【0103】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは医薬用脂肪酸賦形剤を含んでなる。
【0104】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記医薬用脂肪酸賦形剤は、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム又はカプリン酸ナトリウムである。
【0105】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは治療剤を含んでなる。
【0106】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで治療剤は、抗炎症薬、抗生物質、抗菌薬、化学療法薬、抗ウイルス薬、鎮痛薬、及び抗増殖薬からなる群より選択される。
【0107】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで治療剤は抗生物質である。
【0108】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルに関し、ここで前記過渡的ゲルはコントラスト増強剤を含んでなる。
【0109】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルに関し、ここで前記コントラスト増強剤は、放射線不透過性材料、常磁性材料、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、染料、及び放射性核種含有材料からなる群より選択される。
【0110】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、転移温度が約20℃〜約50℃である。
【0111】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、転移温度が約30℃〜約40℃である。
【0112】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%である。
【0113】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;及び前記過渡的ゲルは、転移温度が約20℃〜約50℃である。
【0114】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;及び前記過渡的ゲルは、転移温度が約30℃〜約40℃である。
【0115】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;前記過渡的ゲルは、転移温度が約20℃〜約50℃であり;及び前記過渡的ゲルは、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択される少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0116】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;前記過渡的ゲルは、転移温度が約30℃〜約40℃であり;及び前記過渡的ゲルは、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択される少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0117】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、又は非イオン性の架橋性ポリマーを含んでなる。
【0118】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ナトリウム型ジェラン、カリウム型ジェラン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるポリマーを含んでなる。
【0119】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、又はこれらの組み合わせを含んでなる。
【0120】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ナトリウム型ジェラン及びカリウム型ジェランからなる群より選択されるポリマーを含んでなり、カルシウム、マグネシウム又はバリウムをさらに含んでなる。
【0121】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸カリウムからなる群より選択されるポリマーをさらに含んでなり、カルシウムを含んでなる組成物をさらに含んでなる。
【0122】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、ナトリウム型ジェラン及びカリウム型ジェランからなる群より選択されるポリマーを含んでなり、マグネシウムをさらに含んでなる。
【0123】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルはヒアルロン酸を含んでなり、カルシウムをさらに含んでなる。
【0124】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルはポリビニルアルコールを含んでなり、ホウ酸塩をさらに含んでなる。
【0125】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、アルブミン、プロタミン、フィブリン、フィブリノゲン、ケラチン、リーリン、カゼイン、及びこれらの混合物からなる群より選択されるタンパク質を含んでなる。
【0126】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、ヒアルロン酸、キトサン、又はこれらの混合物を含んでなる。
【0127】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、アルギン酸塩、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの混合物からなる群より選択される合成材料を含んでなる。
【0128】
特定の実施形態において、本発明は前述の過渡的ゲルのうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは架橋性ポリマーを含んでなる。
【0129】
本発明の方法
本発明の一態様は、対象における灌流臓器止血の方法に関し、これは、臓器と流体連通している動脈血管に、ある容積の組成物を導入するステップを含み、ここで前記容積は前記臓器を実質的に灌流するのに十分であり;及び前記組成物は前記臓器内で過渡的ゲルを形成する。
【0130】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物の容積は、約1〜25mL又は約1〜10mLである。
【0131】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、約1〜30秒間又は約2〜20秒間をかけて導入される。
【0132】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、哺乳動物の生理的温度においてゲルである。
【0133】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0134】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、約5%〜約35%の前記逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0135】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、約10%〜約30%の前記逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0136】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、多分散性指数が約1.5〜約1.0である。
【0137】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、多分散性指数が約1.2〜約1.0である。
【0138】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト重合体、及び分岐共重合体からなる群より選択される。
【0139】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポリオキシアルキレンブロック共重合体である。
【0140】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択される。
【0141】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポロキサマー407、ポロキサマー288、ポロキサマー188、ポロキサマー338、ポロキサマー118、「テトロニック」1107及び「テトロニック」1307からなる群より選択される。
【0142】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポロキサマー407である。
【0143】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、精製ポロキサマー及び精製ポロキサミンからなる群より選択される。
【0144】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、精製ポロキサマー407、精製ポロキサマー288、精製ポロキサマー188、精製ポロキサマー338、精製ポロキサマー118、精製「テトロニック」1107及び精製「テトロニック」1307からなる群より選択される。
【0145】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、精製ポロキサマー407である。
【0146】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは賦形剤を含んでなる。
【0147】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは医薬用脂肪酸賦形剤を含んでなる。
【0148】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記医薬用脂肪酸賦形剤は、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム又はカプリン酸ナトリウムである。
【0149】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは治療剤を含んでなる。
【0150】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで治療剤は、抗炎症薬、抗生物質、抗菌薬、化学療法薬、抗ウイルス薬、鎮痛薬、及び抗増殖薬からなる群より選択される。
【0151】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで治療剤は抗生物質である。
【0152】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法に関し、ここで前記過渡的ゲルは、コントラスト増強剤を含んでなる。
【0153】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法に関し、ここで前記コントラスト増強剤は、放射線不透過性材料、常磁性材料、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、染料、及び放射性核種含有材料からなる群より選択される。
【0154】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、転移温度が約20℃〜約50℃である。
【0155】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、転移温度が約30℃〜約40℃である。
【0156】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%である。
【0157】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;及び前記過渡的ゲルは、転移温度が約20℃〜約50℃である。
【0158】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;及び前記過渡的ゲルは、転移温度が約30℃〜約40℃である。
【0159】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;前記過渡的ゲルは、転移温度が約20℃〜約50℃であり;及び前記過渡的ゲルは、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択される少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0160】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;前記過渡的ゲルは、転移温度が約30℃〜約40℃であり;及び前記過渡的ゲルは、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択される少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0161】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、又は非イオン性の架橋性ポリマーを含んでなる。
【0162】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ナトリウム型ジェラン、カリウム型ジェラン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるポリマーを含んでなる。
【0163】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、又はストロンチウムを含んでなる。
【0164】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ナトリウム型ジェラン及びカリウム型ジェランからなる群より選択されるポリマー;及びカルシウム、マグネシウム又はバリウムを含んでなる。
【0165】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム及びアルギン酸カリウムからなる群より選択されるポリマー;及びカルシウムを含んでなる。
【0166】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、ナトリウム型ジェラン及びカリウム型ジェランからなる群より選択されるポリマー;及びマグネシウムを含んでなる。
【0167】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、ヒアルロン酸;及びカルシウムを含んでなる。
【0168】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、ポリビニルアルコール;及びホウ酸塩を含んでなる。
【0169】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、アルブミン、プロタミン、フィブリン、フィブリノゲン、ケラチン、リーリン、及びカゼインからなる群より選択されるタンパク質を含んでなる。
【0170】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、ヒアルロン酸、又はキトサンを含んでなる。
【0171】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは、アルギン酸塩、ペクチン、メチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースを含んでなる。
【0172】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルは架橋性ポリマーを含んでなる。
【0173】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記臓器は、高度に血管の発達した臓器である。
【0174】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記臓器は、腎臓、肝臓、前立腺、脳、子宮、又は脾臓である。
【0175】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記臓器は、腎臓、肝臓又は前立腺である。
【0176】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記臓器は腎臓である。
【0177】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの寿命は約20分である。
【0178】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの寿命は約30分である。
【0179】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記過渡的ゲルの寿命は約40分である。
【0180】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記対象は哺乳動物である。
【0181】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記対象はヒトである。
【0182】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、シリンジ、カニューレ、カテーテル又は経皮的到達器具を使用して導入される。
【0183】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、デュアルルーメンカテーテル又はトリプルルーメンカテーテルを使用して導入される。
【0184】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここでカテーテルは、3〜10フレンチ又は3〜6フレンチのサイズである。
【0185】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここでカテーテルを使用することにより、ポリマー溶液以外に、又はそれに加えて1種又は複数の流体を分注できる。例えば、カテーテルは、あるルーメンがポリマー溶液の送達用であり、他のルーメンが造影剤溶液などの他の流体の送達用であるマルチルーメンカテーテルであってもよい。
【0186】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物はシリンジを使用して導入される。
【0187】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここでポリマー溶液を体内に注入するために使用されるシリンジは、1〜100ccシリンジ、1〜50ccシリンジ又は1〜5ccシリンジであり得る。シリンジに加えられる圧力は、手動か、又は自動シリンジプッシャによって加えることができる。
【0188】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、導入前に約15℃まで冷却される。
【0189】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、導入前に約10℃まで冷却される。
【0190】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、導入前に約5℃まで冷却される。
【0191】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、導入前に約0℃まで冷却される。
【0192】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、導入前に、氷、水、又はコールドパックによって冷却される。
【0193】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、生理食塩水を導入することによって前記過渡的ゲルの溶解を補助することをさらに含む。
【0194】
特定の実施形態において、本発明は前述の方法のうち任意の1つと、それに付随する任意の制約とに関し、前記臓器を冷却するステップをさらに含む。
【0195】
本発明のキット。特定の実施形態において、本発明は灌流臓器止血用のキットに関し、これは、その使用説明書;及びある容積の組成物を含んでなる第1の容器を含んでなり、ここで前記組成物は哺乳動物の生理的温度において過渡的ゲルを形成する。
【0196】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、コールドパックをさらに含んでなる。
【0197】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、シリンジ又はカニューレをさらに含んでなる。
【0198】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0199】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、約5%〜約35%の前記逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0200】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、約10%〜約30%の前記逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0201】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、多分散性指数が約1.5〜約1.0である。
【0202】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、多分散性指数が約1.2〜約1.0である。
【0203】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト重合体、及び分岐共重合体からなる群より選択される。
【0204】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポリオキシアルキレンブロック共重合体である。
【0205】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択される。
【0206】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポロキサマー407、ポロキサマー288、ポロキサマー188、ポロキサマー338、ポロキサマー118、「テトロニック」1107及び「テトロニック」1307からなる群より選択される。
【0207】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、ポロキサマー407である。
【0208】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、精製ポロキサマー及び精製ポロキサミンからなる群より選択される。
【0209】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、精製ポロキサマー407、精製ポロキサマー288、精製ポロキサマー188、精製ポロキサマー338、精製ポロキサマー118、精製「テトロニック」1107及び精製「テトロニック」1307からなる群より選択される。
【0210】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーは、精製ポロキサマー407である。
【0211】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は賦形剤を含んでなる。
【0212】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、医薬用脂肪酸賦形剤を含んでなる。
【0213】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記医薬用脂肪酸賦形剤は、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム又はカプリン酸ナトリウムである。
【0214】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は治療剤を含んでなる。
【0215】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで治療剤は、抗炎症薬、抗生物質、抗菌薬、化学療法薬、抗ウイルス薬、鎮痛薬、及び抗増殖薬からなる群より選択される。
【0216】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで治療剤は抗生物質である。
【0217】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物はコントラスト増強剤を含んでなる。
【0218】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記コントラスト増強剤は、放射線不透過性材料、常磁性材料、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、染料、及び放射性核種含有材料からなる群より選択される。
【0219】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、転移温度が約20℃〜約50℃である。
【0220】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、転移温度が約30℃〜約40℃である。
【0221】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物の生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%である。
【0222】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物の生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;及び前記組成物は、転移温度が約20℃〜約50℃である。
【0223】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物の生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;及び前記組成物は、転移温度が約30℃〜約40℃である。
【0224】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物の生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;前記組成物は、転移温度が約20℃〜約50℃であり;及び前記組成物は、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択される少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0225】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物の生理的温度における容積は、その転移温度未満におけるその容積の約80%〜約120%であり;前記組成物は、転移温度が約30℃〜約40℃であり;及び前記組成物は、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択される少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなる。
【0226】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、又は非イオン性の架橋性ポリマーを含んでなる。
【0227】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ナトリウム型ジェラン、カリウム型ジェラン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるポリマーを含んでなる。
【0228】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、又はストロンチウムを含んでなる。
【0229】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ナトリウム型ジェラン及びカリウム型ジェランからなる群より選択されるポリマー;及びカルシウム、マグネシウム又はバリウムを含んでなる。
【0230】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸カリウムからなる群より選択されるポリマー;及びカルシウムを含んでなる。
【0231】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、ナトリウム型ジェラン及びカリウム型ジェランからなる群より選択されるポリマー;及びマグネシウムを含んでなる。
【0232】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、ヒアルロン酸;及びカルシウムを含んでなる。
【0233】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、ポリビニルアルコール;及びホウ酸塩を含んでなる。
【0234】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、アルブミン、プロタミン、フィブリン、フィブリノゲン、ケラチン、リーリン、及びカゼインからなる群より選択されるタンパク質を含んでなる。
【0235】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、ヒアルロン酸、又はキトサンを含んでなる。
【0236】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は、アルギン酸塩、ペクチン、メチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースを含んでなる。
【0237】
特定の実施形態において、本発明は前述のキットと、それに付随する任意の制約とに関し、ここで前記組成物は架橋性ポリマーを含んでなる。
【実施例】
【0238】
本発明は以上で概略的に説明されたが、これは以下の実施例を参照することによってさらに容易に理解されるであろう。これらの実施例は単に本発明の特定の態様及び実施形態を例示するために含まれるに過ぎず、本発明を限定することは意図していない。
【0239】
実施例1−腎部分切除術
逆感熱性ポリマー溶液を使用した腎内血管閉塞による腎部分切除術が、2匹のブタで試みられた。ブタを挿管して鎮静させた後、胸郭から恥骨結合部のすぐ上まで右側腹部切開を施行した。後腹膜から接近することにより、右腎、腎静脈、腎動脈、大動脈及び大静脈の完全な露出が得られた。大動脈に右腸骨動脈から逆行性にカニューレ挿入し、このときカテーテル先端は右腎動脈の起点から約15mm近位に位置させた。12mlの過渡的ゲル(20%ポロキサマー407)を大動脈に注入し、これは大動脈、又は腎動脈を閉塞するには不十分であったが、腎それ自体の内部の血流の完全な停止をもたらした。15分後もなお腎に循環はなく、下極を切除したが出血の痕跡は全くなかった。次に腎の切除端を縫合し、腎を外部から冷却した。
【0240】
その後血流が戻り、腎は、右腎動脈の正常な脈動を含め、外観上正常な状態を回復した。双方のブタとも腎切除術部位からの出血はなく、腎表面は無血のままであった。外科手術中に出血に対処する必要がなかったため、この腎部分切除術にかかった時間は全体で10分未満であった。図1を参照のこと。
【0241】
実施例2−腎の露出
腎の露出試験は、上記の手順と同様であった。カテーテルは腎動脈に直接挿入した。1.5mlのポリマーを緩徐に注入して、上記と同じ虚血を生じさせた。この場合、半腎切除術を施行した。ここでも、外科手術は大部分が無血であったが、腎盂の主要腎動脈分枝の横切後に僅かなポリマーゲルの滲出と、それに続く出血が認められた。これは直ちに容易に縫合され、それによりこの半腎切除術及び上記のとおりの残存腎の閉鎖を容易に完了することができた。残った半分の腎もまた、一時的な冷却によってポリマーを再び液化させた後には、外観上、及び組織学的に正常な状態を回復した。この場合には顕微鏡検査を行ったが、切除した腎にも、又は残った半分の腎にも、病変は一切認められなかった。
【0242】
実施例3−試料精製
BASF社(米国ニュージャージー州マウントオリーブ所在)から購入したポロキサマー407(486.0g、ロット番号WPHT−543B)を脱イオン水(15,733g)に溶解した。溶液は0.1℃に維持し、2335.1gの(NHSOを添加した。溶液を2℃で平衡化し、2つの異なる相が形成された後、下相を捨てて上相(2060g)を回収し、計量した。脱イオン水(14159g)を添加し、溶液を2℃で平衡化した。次に、2171.6gの(NH42SO4を撹拌しながら添加した。塩が溶解した後、2つの相が形成されるまで溶液を約2℃で維持した。上相(3340g)を分離し、12879gの脱イオン水で希釈した。溶液を約2.2℃まで冷却し、2062gの(NH42SO4を添加した。上記のとおり相が分かれるまで放置した。上相を分離し、4リットルのジクロロメタンで抽出した。一晩放置して2つの相を形成させた。有機(下)相を分離し、そこに約2kgの硫酸ナトリウム(Na2SO4)を添加して残りの水を除去した。ジクロロメタン相をPTFEフィルタ(0.45μm孔径)によってろ過し、溶解しなかった塩を除去した。ジクロロメタンを真空下、約30℃で除去した。最終的な痕跡量のジクロロメタンを、オーブン中、一晩約30℃で乾燥させることにより除去した。合計297.6gの分画されたポロキサマー407(ロット番号00115001)が回収された。図5の表1では、分画されたポロキサマー407の化学的及び物理的特性について、出発物質と比較している。
【0243】
実施例4−試料のインビトロ粘度試験
粘度変化は、温度制御を備えたBrookfield社のコーン・アンド・カップ(Cone and Cup)粘度計で計測できる。例えば、ポロキサマー407の粘度変化のグラフ(図4)は、約12.5w%から少なくとも20w%までのポリマー濃度では、溶液粘度は温度に伴い急激な上昇を見せることを明らかに示している。ゲル化の開始は温度に依存し、ポリマー濃度が高いほど、より早いゲル化の開始がもたらされる。さらに、ポリマー濃度が約12.5w%未満であると、温度に伴う溶液粘度の増加は見られず、体温であっても液状のままである。
【0244】
これらの2つの知見は、潜在的な手術の原理が精製された逆感熱性ポリマーにあることを示している。ポリマー溶液は、特定の温度(例えば、典型的なORの温度)で軟質ゲルとして動脈切開に注入され、温度が上昇すると硬いゲルがもたらされる。ゲルは血液中に溶解し始め、ポリマー濃度が低下すると、生理的温度で再び固化してゲルになる可能性は一切ない。或いは、ゲルを氷又は冷温の生理食塩水で冷却すれば、温度がゲル化点未満に降下したときにゲルは液化し得る。液体では、ゲルはすぐに血液中に希釈され、ここでも生理的温度でゲルに戻る可能性はない。
【0245】
実施例5−選択された「プルロニック」及び「テトロニック」ポリマー溶液のゲル化温度
ポリマーを計量してプラスチックチューブに入れた。所要濃度を実現するため、生理食塩水を添加することによって計量物を4倍に増量して25重量パーセント(w%)とし、及び5倍に増量して20重量パーセント(w%)とし、所要の最終重量を実現した。溶液は4℃の冷蔵庫に入れ、通常は24時間以内に準備した。Brookfield社の粘度計でゲル化点を計測し、粘度がプレート/コーンの範囲を超えた点(約102Pa・s(約102,000cP)超)をゲル化温度と呼ぶこととした。図5の表2を参照のこと。
【0246】
実施例6a−脊椎動物に対する試験
腎部分切除術中に効果的な止血を実現するために逆感熱性ポリマーを使用する実現可能性について、動物試験によってさらに支持することができるであろう。これには、腎の動脈系及び静脈系の全ての側面、並びに髄質の詳細な解剖学的構造及び生理学的機能が関わり、これらはインビトロモデルでは再現できない。雑食動物であるブタの解剖学的構造はヒトと類似しているため、ヒト手術における状況の最良のシミュレーションを作り出し、且つブタ腎はヒト腎の古典的モデルである。M.M.Swindleら、「Swine as models in experimental surgery」、J Invest Surg.1988年、1(1)、65−79頁。
【0247】
通常の家畜ブタを使用した急性実験を実施する。ブタの体重は約30〜40kgであり、ヒトのサイズよりいくらか小さいが、本発明の止血剤の実現可能性を評価するには十分である。各ブタが腎部分切除術を受ける。一時的な止血を得るための本発明の過渡的ゲルの使用が評価される。
【0248】
ブタは、前麻酔薬としてアセプロマジン(1.1mg/kg)及びアトロピン(0.05mg/kg)を含有する筋内混合物によって導入する。前麻酔薬投与後5〜15分で、筋肉内注射を用いてケタミン(20mg/kg)及びキシラジン(2.0mg/kg)によってブタを導入する。ブタは、気管内挿管が可能な麻酔レベルに達した後、挿管する。挿管後、この動物は、準備及び外科手術の時間全体を通じて吸入麻酔で(イソフルランの半閉鎖循環式吸入を行って)維持する。必要であれば、換気装置によって補助換気を遂行する。IVカテーテルを耳静脈又は他の適当な血管に無菌で留置する。
【0249】
麻酔の導入後、皮膚を剪毛することによってブタを準備し、手術室に運び込む。この動物は上記のとおり換気する。肋骨縁から鼠径靱帯のすぐ上にかけての右傍正中切開により、腹斜筋を腹直筋付着部の約2.54cm(約1インチ)外側で分けることによって腹膜を開放する。腹膜を腎から反転させ、大静脈及び大動脈を露出させる。腎、腎動脈及び腎静脈を清浄にして露出させる。サーミスタを腎動脈のすぐ近位の大動脈に入れ、注入時の血液の温度をモニタする。
【0250】
一時的な腎虚血を誘発するため、25ゲージのカテーテルを穿刺によって腎動脈に導入し、1.5cm遠位に前進させる。これは、実験が続く間、その位置に留まる。約1〜2ccのポリマーを注入する。注入する容積及び速度は、1つには粘度計測値及び重合温度情報に基づき、外科手術前に決定する。各注入に関するデータとしては、注入時間、注入速度、注入容積、血液温度、血流停止時間、血流停止の完全性、切断された腎表面の褶襞形成術を含め、腎部分切除術の施行にかかった時間、及び血流の回復にかかった時間が挙げられる。これらのデータは、ポリマーの物理的特性と相関を有する。
【0251】
動物は、腎に完全な血流及び正常な外観が戻るまで維持する。次に、動物をさらに1時間、安定した条件下に保ち、残存腎塊の完全な再灌流を確実にする。次に、過量のペントバルビタール及びフェニトインを用いて動物を安楽死させる。切除した腎の一部及び再灌流した腎の一部を顕微鏡分析に回す。残ったブタの屠体は廃棄する。安楽死は、ペントバルビタールナトリウム及びフェニトインの静脈注射によって以下のとおり実現する:薬物:ペントバルビタールナトリウム及びフェニトインナトリウム;用量:1cc/10ポンド;及び経路:急速静注。動物が深い麻酔深度にある場合、KClの飽和溶液を静脈内投与して安楽死を遂行する。薬物の投与後、動物を検査し、呼吸機能が停止して明白な心機能がないことを確認する。
【0252】
実施例6b−ブタ麻酔の模範手順
以下は、実施例6aで説明される手順の実施において従うことのできる模範プロトコルである。
【0253】
動物の識別:各動物は耳介の入墨又は耳標によって識別される。
【0254】
麻酔;オプション#1:ブタは、テラゾール(Telazol)(4.4mg/kg)、キシラジン(2.2mg/kg)及びアトロピン(0.05mg/kg)を含有する筋内カクテルによって気管内挿管が可能な麻酔レベルまで導入する。挿管後、この動物は、準備及び外科手術の時間全体を通じて吸入麻酔で(イソフルランの半閉鎖循環式吸入を行って)維持する。必要であれば、換気装置によって補助換気を遂行する。IVカテーテルは耳静脈又は他の適当な血管に無菌で留置する。
【0255】
麻酔;オプション#2:ブタは、前麻酔薬としてアセプロマジン(1.1mg/kg)、アトロピン(0.05mg/kg)を含有する筋内カクテルによって導入する。前麻酔薬投与後5〜15分で、ブタは、筋肉内注射を介してケタミン(20mg/kg)及びキシラジン(2.0mg/kg)によって導入する。ブタは、気管内挿管が可能な麻酔レベルに達した後、挿管する。挿管後、この動物は、準備及び外科手術の時間全体を通じて吸入麻酔で(イソフルランの半閉鎖循環式吸入を行って)維持する。必要であれば、換気装置によって補助換気を遂行する。IVカテーテルは耳静脈又は他の適当な血管に無菌で留置する。
【0256】
外科手術準備:延命外科手術の場合には、無菌手技に従う。手術用剃刃が装着された動物用電気かみそりを用いて、外科手術部位の脱毛を遂行する。その範囲を吸引してあらゆる剃り屑及び残屑を除去し、次に擦過し、これを1%の有効ヨウ素及び70%のイソプロピルアルコールのヨードフォア水溶液を用いて最低3回、交互に行う。乾燥後、その範囲全体に0.7%の有効ヨウ素及び74%のイソプロピルアルコールの溶液を塗る。麻酔され、外科手術の準備が整った動物を手術台に運び、所望の臥位で載せる。無菌の手術ドレープを動物及び手術台の全体を覆うようにかける。静脈内輸液治療物質が4〜6ml/kg/時の速度を維持して投与される。
【0257】
臨床観察:術後に、獣医学スタッフ及び/又は主要な調査員の指示に従い体温、脈拍数及び呼吸数をモニタする。術後は毎日動物を観察し、食物摂取、排泄及び全般的態度に基づき健康状態を判断する。また、全ての動物について、疼痛及び/又は不快感の有無を毎日観察し、必要に応じて鎮痛薬を投与する。
【0258】
鎮痛薬:術後期間の最初の48時間は、ブプレネックス(0.01〜0.02mg/kg/IM Q 12時間)を投与する。最初の48時間の期間以降は、必要に応じて鎮痛薬を投与する。
【0259】
安楽死:安楽死は、ボトルの貼付説明書による指示に従い、ペントバルビタールナトリウム及びフェニトインナトリウムの静脈注射によって実現する。動物の麻酔深度が深い場合、塩化カリウムの飽和溶液を静脈内投与して安楽死を遂行する。カリウムイオンは心臓毒性であり、1〜2mmol/体重1kgの急速静脈内又は心内投与によって心停止が引き起こされる。薬物の投与後、動物を検査し、呼吸機能が停止して明白な心機能がないことを確認する。
【0260】
参照による援用
本明細書に引用される米国特許及び米国特許出願公開の全ては、参照により本明細書に援用される。
【0261】
等価物
当業者は、日常の域を出ない実験を用いて、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識したり、又は確認したりし得る。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における灌流臓器止血の方法であって、
臓器と流体連通している動脈血管に、ある容積の組成物を導入する工程を有してなり、
ここで、
前記容積が、前記臓器を実質的に灌流するのに十分な量であり、
前記組成物が、前記臓器において過渡的ゲルを形成する
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記組成物の前記容積が、約1〜25mL又は約1〜10mLであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、約1〜30秒間又は約2〜20秒間かけて導入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記過渡的ゲルが、哺乳動物の生理的温度においてゲルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記過渡的ゲルが、少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記過渡的ゲルが、約5%〜約35%の前記逆感熱性ポリマーを含んでなることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記過渡的ゲルが、約10%〜約30%の前記逆感熱性ポリマーを含んでなることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーの多分散性指数が、約1.5〜約1.0であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーの多分散性指数が、約1.2〜約1.0であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーが、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト重合体、及び分岐共重合体からなる群より選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーが、ポリオキシアルキレンブロック共重合体であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーが、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーが、ポロキサマー407、ポロキサマー288、ポロキサマー188、ポロキサマー338、ポロキサマー118、「テトロニック」1107及び「テトロニック」1307からなる群より選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーが、ポロキサマー407であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーが、精製ポロキサマー及び精製ポロキサミンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーが、精製ポロキサマー407、精製ポロキサマー288、精製ポロキサマー188、精製ポロキサマー338、精製ポロキサマー118、精製「テトロニック」1107及び精製「テトロニック」1307からなる群より選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの随意的に精製された逆感熱性ポリマーが、精製ポロキサマー407であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
前記過渡的ゲルが賦形剤を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記過渡的ゲルが医薬用脂肪酸賦形剤を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記医薬用脂肪酸賦形剤が、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム又はカプリン酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記過渡的ゲルが治療剤を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記治療剤が、抗炎症薬、抗生物質、抗菌薬、化学療法薬、抗ウイルス薬、鎮痛薬、及び抗増殖薬からなる群より選択されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記治療剤が抗生物質であることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記過渡的ゲルがコントラスト増強剤を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記コントラスト増強剤が、放射線不透過性材料、常磁性材料、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、染料、及び放射性核種含有材料からなる群より選択されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記過渡的ゲルの転移温度が、約20℃〜約50℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記過渡的ゲルの転移温度が、約30℃〜約40℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記過渡的ゲルの生理的温度における容積が、転移温度未満における容積の約80%〜約120%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記過渡的ゲルの生理的温度における容積が、転移温度未満における容積の約80%〜約120%であり、前記過渡的ゲルの転移温度が約20℃〜約50℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記過渡的ゲルの生理的温度における容積が、転移温度未満における容積の約80%〜約120%であり、前記過渡的ゲルの転移温度が、約30℃〜約40℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記過渡的ゲルの生理的温度における容積が、転移温度未満における容積の約80%〜約120%であり、前記過渡的ゲルの転移温度が、約20℃〜約50℃であり、前記過渡的ゲルが、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択される少なくとも1種類の随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記過渡的ゲルの生理的温度における容積が、転移温度未満における容積の約80%〜約120%であり、前記過渡的ゲルの転移温度が、約30℃〜約40℃であり、前記過渡的ゲルが、ポロキサマー及びポロキサミンからなる群より選択される少なくとも1種類の随意的に精製された逆感熱性ポリマーを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記過渡的ゲルが、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、又は非イオン性の架橋性ポリマーを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記過渡的ゲルが、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ナトリウム型ジェラン、カリウム型ジェラン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるポリマーを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記過渡的ゲルが、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、又はそれらの組み合わせを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記過渡的ゲルが、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ナトリウム型ジェラン及びカリウム型ジェランからなる群より選択されるポリマー、及びカルシウム、マグネシウム又はバリウムを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記過渡的ゲルが、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸カリウムからなる群より選択されるポリマーを含んでなり、カルシウムを含んでなる組成物をさらに含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記過渡的ゲルが、ナトリウム型ジェラン及びカリウム型ジェランからなる群より選択されるポリマーを含んでなり、マグネシウムをさらに含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記過渡的ゲルがヒアルロン酸、及びカルシウムを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記過渡的ゲルがポリビニルアルコール、及びホウ酸塩を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記過渡的ゲルが、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、アルブミン、プロタミン、フィブリン、フィブリノゲン、ケラチン、リーリン、及びカゼインからなる群より選択されるタンパク質を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記過渡的ゲルがヒアルロン酸又はキトサンを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記過渡的ゲルが、アルギン酸塩、ペクチン、メチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記過渡的ゲルが架橋性ポリマーを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記臓器が、高度に血管の発達した臓器であることを特徴とする、請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記臓器が、腎臓、肝臓、前立腺、脳、子宮、又は脾臓であることを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記臓器が、腎臓、肝臓又は前立腺であることを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記臓器が腎臓であることを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記過渡的ゲルの寿命が約20分であることを特徴とする、請求項1〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記過渡的ゲルの寿命が約30分であることを特徴とする、請求項1〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記過渡的ゲルの寿命が約40分であることを特徴とする、請求項1〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記対象が哺乳動物であることを特徴とする、請求項1〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記対象がヒトであることを特徴とする、請求項1〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記組成物が、シリンジ、カニューレ、カテーテル又は経皮的到達器具を使用して導入されることを特徴とする、請求項1〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記組成物が、デュアルルーメンカテーテル又はトリプルルーメンカテーテルを使用して導入されることを特徴とする、請求項1〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記カテーテルが、3〜10フレンチ又は3〜6フレンチのサイズであることを特徴とする、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記組成物が、シリンジを使用して導入されることを特徴とする、請求項1〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記シリンジが、1〜100ccシリンジ、1〜50ccシリンジ又は1〜5ccシリンジであることを特徴とする、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物が導入前に約15℃に冷却されることを特徴とする、請求項1〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物が導入前に約10℃に冷却されることを特徴とする、請求項1〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物が導入前に約5℃に冷却されることを特徴とする、請求項1〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物が導入前に約0℃に冷却されることを特徴とする、請求項1〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物が導入前に、氷、水、又はコールドパックによって冷却されることを特徴とする、請求項1〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
生理食塩水を導入して、前記過渡的ゲルの溶解を補助することをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記臓器を冷却する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜64のいずれか一項に記載の方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【公表番号】特表2010−512230(P2010−512230A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541532(P2009−541532)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/087079
【国際公開番号】WO2008/073938
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(506128226)プルーロームド インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】PLUROMED, INC.
【出願人】(509163352)ザ レイヒー クリニック インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】THE LAHEY CLINIC, INC.
【Fターム(参考)】