説明

火力発電用予熱システム

【課題】 設備の容量や必要動力を軽減することが可能な火力発電用予熱システムを提供する。
【解決手段】 ボイラ2からの燃焼排ガスGによって外部からの空気Aを予熱し、空気Aをボイラ2に供給する回転式空気予熱器3と、ボイラ2の下流側に設けられ、燃焼排ガスGを回転式空気予熱器3に導入する第1の排ガス路31と、回転式空気予熱器3の下流側に設けられ、空気Aをボイラ2に導入する第1の空気路32と、第1の空気路32に設けられ、外部から空気Aを吸引して回転式空気予熱器3に供給する押込通風機4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火力発電においてボイラに供給する空気をボイラからの排ガスで予熱する火力発電用予熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大容量の火力発電所では、燃焼排ガスの熱回収を図って発電効率を高めるために、一般に設備コストが低い回転式の空気予熱器が用いられ、図3は、この空気予熱器を用いた従来の予熱システム10を示している。すなわち、ボイラ100から排出される燃焼排ガスGが、脱硝装置101を介して回転式空気予熱器102に流入し、空気(外気)Aが押込通風機103によって回転式空気予熱器102に流入して、回転式空気予熱器102において燃焼排ガスGと空気Aとが熱交換される。ここで、押込通風機103は、回転式空気予熱器102の上流側の空気路104に設けられ、燃焼排ガスGを引き込む誘引通風機105は、回転式空気予熱器102の下流側の排ガス路106に設けられている。
【0003】
そして、回転式空気予熱器102から流出した燃焼排ガスGは、排ガス路106上の電気集塵器107を経由して、煙突から大気中に排出される。一方、回転式空気予熱器102から流出した空気Aは、空気路108を介してボイラ100に供給される。このとき、窒素酸化物(NOx)の生成を抑制するために、排ガス混合通風機109によって、ボイラ100から排出される燃焼排ガスGの一部が空気路108に供給され、空気Aに燃焼排ガスGが混入して、燃焼空気Aの酸素濃度を低下させている。
【0004】
また、回転式空気予熱器に送られる燃焼空気がリークすることを防止する技術として、高温流体の熱を蓄熱体に一旦蓄熱し、この蓄熱により低温流体を加熱する回転再生式熱交換器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−193386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転式空気予熱器102は、空気層と燃焼排ガス層とをシーリングして混合防止するシール機構を備えているが、完全にシーリングすることは困難である。また、上記のように、押込通風機103が回転式空気予熱器102の上流側に設けられ、誘引通風機105が回転式空気予熱器102の下流側に設けられているため、燃焼用の空気Aの圧力が燃焼排ガスGの圧力よりも高くなる。このため、回転式空気予熱器102内において、燃焼用の空気Aが燃焼排ガスG側にリークし、燃焼排ガスGの量が15%程度増加してしまう。
【0007】
そして、このようなリークが生じるため、通風機103、105の必要動力が増加し、さらには、通風機103、105や煙道、電気集塵器107などの設備容量を増加しなければならない。一方、燃焼用の空気Aが燃焼排ガスG側にリークしないように、シール機能を高精密化、高精度化すると、設備費用が増大し、さらには、シーリング精度を維持するための保守、管理費用が増大する。また、排ガス混合通風機109は、NOxを低減させることはできるが、一方で、通風機109や煙道等の設備費用や、その保守に要する費用などが増大するという問題がある。
【0008】
一方、特許文献1の技術は、回転式予熱器を使用する場合に、燃焼用空気が燃焼排ガスへリークする量を抑制することはできるが、リークを完全に防止することはできない。
【0009】
そこで本発明は、設備の容量や必要動力を軽減することが可能な火力発電用予熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、ボイラからの燃焼排ガスによって外部からの空気を予熱し、前記空気を前記ボイラに供給する回転式空気予熱器と、前記ボイラの下流側に設けられ、前記燃焼排ガスを前記回転式空気予熱器に導入する排ガス路と、前記回転式空気予熱器の下流側に設けられ、前記空気を前記ボイラに導入する空気路と、前記空気路に設けられ、外部から空気を吸引して前記回転式空気予熱器に供給する通風機と、を備えることを特徴とする火力発電用予熱システムである。
【0011】
この発明によれば、ボイラからの燃焼排ガスが排ガス路を介して回転式空気予熱器に導入され、通風機によって外部からの空気が回転式空気予熱器に供給され、回転式空気予熱器において熱交換が行われて、予熱された空気が空気路を介してボイラに導入される。このとき、回転式空気予熱器の下流側に通風機が設けられているため、回転式空気予熱器において空気の圧力よりも燃焼排ガスの圧力が高くなる。つまり、燃焼排ガスが空気側にリークする傾向となる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の火力発電用予熱システムにおいて、前記排ガス路からの燃焼排ガスが所定量だけ前記空気と混合されるように、前記回転式空気予熱器内における燃焼排ガス層と空気層とがシーリングされている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、通風機が回転式空気予熱器の下流側に設けられ、燃焼排ガスが空気側にリークする傾向になるため、空気のリークを考慮する必要がなく、燃焼に必要な空気だけを供給すればよい。このため、通風機の動力を低減したり、通風機や電気集塵器、煙道の容量を縮小したりすることが可能となる。さらに、燃焼排ガス側への空気のリークがなくなるため、排ガス中の酸素濃度が低下し、硫酸の生成が抑制される。この結果、低温腐食の低減や、硫安の煙道などへの付着の抑制が図られる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、燃焼排ガスが空気と混合されるため、燃焼空気の酸素濃度が低下し、NOxを低減することができる。このため、排ガス混合通風機を設ける必要がなくなり、あるいは、排ガス混合通風機の容量を軽減することが可能となる。しかも、所定量だけ燃焼排ガスが空気と混合されるため、燃焼空気中の酸素濃度やNOxを調整することが可能となる。さらに、燃焼排ガス層と空気層とを完全にシーリングする必要がなくなり、回転部と固定部との接触による損傷などを回避することや、シーリングの維持費用や労力を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る火力発電用予熱システムの概略構成図である。
【図2】図1の火力発電用予熱システムにおける回転式空気予熱器の斜視図である。
【図3】従来の火力発電用予熱システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る火力発電用予熱システム1を示す。この火力発電用予熱システム1は、予熱された空気をボイラ2に供給するシステムであり、主として、回転式空気予熱器3と、ボイラ2の下流側に設けられ燃焼排ガスGを回転式空気予熱器3に導入する第1の排ガス路(排ガス路)31と、回転式空気予熱器3の下流側に設けられ空気Aをボイラ2に導入する第1の空気路(空気路)32と、第1の空気路32に設けられ外部から空気Aを吸引して回転式空気予熱器3に供給する押込通風機(通風機)4とを備えている。
【0018】
回転式空気予熱器3は、ボイラ2からの燃焼排ガスGと外部・大気からの空気Aとの熱交換によって、空気Aを予熱し、燃焼空気Aとしてボイラ2に供給する装置である。この回転式空気予熱器3の燃焼排ガスGの流入口とボイラ2の流出口とが、第1の排ガス路31によって連結され、燃焼排ガスGの流出口に第2の排ガス路33が接続されている。また、回転式空気予熱器3の空気Aの流出口とボイラ2の流入口とが、第1の空気路32によって連結され、空気Aの流入口に第2の空気路34が接続されている。
【0019】
一方、回転式空気予熱器3内には、図2に示すように、円柱状のロータ71の外周にハウジング72が設けられ、ロータ71は、低速で回転しながら空気Aを予熱するようになっている。すなわち、ロータ71の内側には、蓄熱体の伝熱エレメント(図示しない。)が配設され、この伝熱エレメントにボイラ2から排出された燃焼排ガスGの熱が蓄熱され、空気Aがロータ71の回転に伴って予熱される。このように回転式空気予熱器3は、燃焼排ガスGと空気Aとが伝熱エレメントを通過し熱交換することによって、空気Aを予熱して、燃焼空気Aとしてボイラ2に供給する。
【0020】
また、回転しているロータ71の外周面とこれに対向するハウジング72の内側との間には、僅かな間隙が形成されており、この間隙を燃焼排ガスGと空気Aとが通過するようになっている。さらに、回転式空気予熱器3内において、後述するように、第1の排ガス路31からの燃焼排ガスGが所定量だけ空気Aと混合されるように、燃焼排ガスGの層と空気Aの層とがシーリングされた状態になっている。すなわち、高圧の燃焼排ガスGが所定量だけ、低圧の空気A側にリークするように、ロータ71とハウジング72との間にシール部材が配設されている。ここで、燃焼排ガスGがリークする所定量は、発電設備の発電量やボイラ2の容量などに応じて、空気Aに含まれる酸素濃度が低下し、NOxの生成を抑制可能な量に設定されている。例えば、空気Aへの燃焼排ガスGの混合量が、空気A量の15〜20重量%になるように設定されている。
【0021】
押込通風機4は、第1の空気路32上に設けられ、第2の空気路34の自由端部から外気(空気A)を吸引して回転式空気予熱器3に供給するファンである。一方、ボイラ2から押し出された燃焼排ガスGは、第1の排ガス路31を介して回転式空気予熱器3に流入する。このように、押込通風機4が回転式空気予熱器3の下流側に設けられ、かつ燃焼排ガスGが押し流されているのみであるため、回転式空気予熱器3内において空気Aの圧力よりも燃焼排ガスGの圧力が高くなる。つまり、燃焼排ガスGが空気A側にリークする傾向となる。
【0022】
また、第1の排ガス路31上には脱硝装置5が配設され、ボイラ2から排出された燃焼排ガスGに含まれる窒素酸化物が除去(脱硝処理)されるようになっている。さらに、第2の排ガス路33上には電気集塵器6が配設され、回転式空気予熱器3を通過した燃焼排ガスGに含まれるばい塵が除去されて、燃焼排ガスGが煙突(図示せず)から大気中へ放出されるようになっている。
【0023】
次に、このような構成の火力発電用予熱システム1の作用などについて説明する。
【0024】
まず、ボイラ2から排出された燃焼排ガスGが、第1の排ガス路31を流れて脱硝装置5で脱硝され、この脱硝された燃焼排ガスGが、回転式空気予熱器3に導入される。一方、押込通風機4によって、外気(空気A)が第2の空気路34の自由端部から吸引され、第2の空気路34を流れて回転式空気予熱器3に導入される。そして、回転式空気予熱器3に導入された空気Aと燃焼排ガスGとの熱交換によって、空気Aが予熱され、燃焼空気Aとして第1の空気路32を流れてボイラ2に供給される。
【0025】
このとき、上記のように回転式空気予熱器3内において空気Aの圧力よりも燃焼排ガスGの圧力が高く、かつ、上記のようなシール部材が配設されているため、所定量の燃焼排ガスGが空気A側にリークする。そして、所定量の燃焼排ガスGが混合された空気Aが、燃焼空気Aとしてボイラ2に供給される。一方、空気A側にリークしない燃焼排ガスGは、第2の排ガス路33を流れて電気集塵器6で除塵され、煙突から大気に放出される。
【0026】
以上のように、この火力発電用予熱システム1によれば、押込通風機4が回転式空気予熱器3の下流側に設けられ、燃焼排ガスGが空気A側にリークするため、空気Aのリークを考慮する必要がなく、燃焼に必要な空気Aだけを供給すればよい。このため、押込通風機4の動力を低減したり、押込通風機4や電気集塵器6、第2の排ガス路33などの容量を縮小したりすることが可能となる。さらに、燃焼排ガスG側への空気Aのリークがなくなるため、排ガス中の酸素濃度が低下し、硫酸の生成が抑制される。この結果、低温腐食の低減や、硫安の第2の排ガス路33などへの付着の抑制が図られる。
【0027】
また、燃焼排ガスGが空気Aと混合されるため、燃焼空気Aの酸素濃度が低下し、NOxを低減することができる。このため、排ガス混合通風機を設ける必要がなくなり、あるいは、排ガス混合通風機の容量を軽減することが可能となる。しかも、上記のような所定量だけ燃焼排ガスGが空気Aと混合されるため、燃焼空気A中の酸素濃度やNOxを低下、抑制し、さらには調整することが可能となる。
【0028】
また、回転式空気予熱器3のロータ71とハウジング72との間を完全にシーリングする必要がなくなり、ロータ71とハウジング72との接触による損傷などを回避することや、シーリングの維持費用や労力を軽減することが可能となる。さらに、回転式空気予熱器3や押込通風機4などは、既存・既成のものを利用することができるため、火力発電用予熱システム1をより容易かつ低コストで構築することが可能となる。
【0029】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、第2の空気路34の自由端部に第2の押込通風機を設け、第2の排ガス路33の自由端部に誘引通風機を設け、押込通風機4と第2の押込通風機とによって外気Aを導入し、誘引通風機によって燃焼排ガスGを大気に誘引するようにしてもよい。このときも、回転式空気予熱器3内において燃焼排ガスGが空気A側にリークするように、各通風機の圧力を設定する。また、上記の実施の形態においては、シーリングの調整によって燃焼排ガスGを空気A側にリークさせているが、排ガス混合通風機を併用することにより、燃焼排ガスGを空気Aに混合させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 火力発電用予熱システム
2 ボイラ
3 回転式空気予熱器
31 第1の排ガス路(排ガス路)
32 第1の空気路(空気路)
33 第2の排ガス路
34 第2の空気路
4 押込通風機(通風機)
G 燃焼排ガス
A 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラからの燃焼排ガスによって外部からの空気を予熱し、前記空気を前記ボイラに供給する回転式空気予熱器と、
前記ボイラの下流側に設けられ、前記燃焼排ガスを前記回転式空気予熱器に導入する排ガス路と、
前記回転式空気予熱器の下流側に設けられ、前記空気を前記ボイラに導入する空気路と、
前記空気路に設けられ、外部から空気を吸引して前記回転式空気予熱器に供給する通風機と、
を備えることを特徴とする火力発電用予熱システム。
【請求項2】
前記排ガス路からの燃焼排ガスが所定量だけ前記空気と混合されるように、前記回転式空気予熱器内における燃焼排ガス層と空気層とがシーリングされている、ことを特徴とする火力発電用予熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−47406(P2012−47406A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190270(P2010−190270)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】