説明

火災感知器およびその試験器

【課題】火災感知器の動作試験時に、火災感知器の情報を確実かつ迅速に読み出すことができる火災感知器およびその試験器を提供する。
【解決手段】火災感知器を特定する識別子を格納しているICタグT1が、上記火災感知器に略環状に設けられている火災感知器である。また、火災感知器を特定する識別子を格納しているICタグT1であって、上記火災感知器に設けられているICタグT1から、上記識別子を読み出すICタグ用リーダと、上記ICタグ用リーダのアンテナ25であって、上記火災感知器の試験器に略環状に形成されているリーダ用アンテナ25とを有する火災感知器の試験器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器およびその試験器に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の防火対象物となる建物等には、消防用設備として火災報知設備の設置が義務付けられている。また、火災報知設備を定期的に点検することも義務付けられ、火災感知器が正常に動作して火災警報を発するかどうかを点検し、この点検結果を消防署等に提出する必要がある。このようにして、設備の維持管理が図られている。
【0003】
火災感知器には、煙感知器や熱感知器等が用いられ、熱感知器を動作させる場合、長い棒の先に筒状のチャンバを付け、チャンバ内に設けたヒータ等によって、熱感知器に熱を加える加熱試験器を、熱感知器に当接し、熱感知器を動作させる。煙感知器を動作させる場合、上記チャンバ内で擬似的な煙を発生させる加煙試験器を、天井面等に設置されている煙感知器に当接し、煙感知器を動作させる。
【0004】
このようにして、火災感知器の点検作業を行い、しかも、火災感知器の点検漏れをなくすために、各火災感知器の型式番号、製造年、製造番号等の情報を読み出すシステムが知られ、電磁誘導波によって非接触かつ省電力で情報を読み書きできるICタグを利用することが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−177695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例は、煙感知器の筐体側面に、ICチップ部とアンテナ部とを有する超小型データキャリアが貼着されている。このデータキャリアには、煙感知器の型式番号、製造年、製造番号等が記憶されている。また、上記データキャリアは、普通切手の数分の一程度の大きさであり、平面状である。
【0007】
上記従来例では、加煙試験器の内部に、小型のリーダライタが設けられ、このリーダライタが、上記データキャリアのICチップ部に格納されている情報を非接触で読み出す。また、上記リーダライタには、アンテナが設けられている。
【0008】
しかし、上記従来例において、煙感知器の動作試験を実行するに際して、煙感知器に加煙試験器を当接した場合、煙感知器に対する加煙試験器の位置(方向)によっては、煙感知器に設けられているデータキャリアと、加煙試験器に設けられているリーダライタとの距離が離れることがあり、この場合には、リーダライタがデータキャリアに格納されている煙感知器の型式番号、製造年、製造番号等を読み出すことができず、これらを読み出すためには、加煙試験器の位置(方向)を、作業員が変えながら動作試験する必要がある。このために、煙感知器の型式番号、製造年、製造番号等の情報を確実に読み出すことが困難であり、また、上記情報を読み出すのに時間がかかることがある。
【0009】
リーダライタは、消費電力が少ないため、出力パワーが少ない。また、データキャリアが超小型であり、データキャリアに内蔵されているアンテナも超小型である。この状態で、データキャリアの情報をリーダライタが読み出すには、リーダライタをデータキャリアに極力近づける必要があり、上記のように、煙感知器の型式番号、製造年、製造番号等の情報を確実に読み出すことが困難であり、また、上記情報を読み出すのに時間がかかることがある。
【0010】
すなわち、上記従来例は、火災感知器の動作試験時に、火災感知器の情報を確実かつ迅速に読み出すことができないという問題がある。
【0011】
本発明は、火災感知器の動作試験時に、火災感知器の情報を確実かつ迅速に読み出すことができる火災感知器およびその試験器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の火災感知器は、火災感知器を特定する識別子を格納しているICタグが、上記火災感知器に略環状に設けられている。
【0013】
また、本発明の火災感知器の試験器は、火災感知器を特定する識別子を格納しているICタグであって、上記火災感知器に設けられているICタグから、上記識別子を読み出すICタグ用リーダと、上記ICタグ用リーダのアンテナであって、上記火災感知器の試験器に略環状に形成されているリーダ用アンテナ部とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、火災感知器の動作試験時に、火災感知器の情報を確実かつ迅速に読み出すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1である煙感知器SE1を示す図である。
【図2】本発明の実施例2である加煙試験器20を示す図である。
【図3】煙感知器SE1、SE2、SE3、……、加煙試験器20が火災報知設備の試験装置100に使用されている例を示す図である。
【図4】実施例2における動作試験の手順を示すフローチャートである。
【図5】実施例2において、加煙試験器20が煙感知器の識別番号を読み出す動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例3である煙感知器SE1aを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1である煙感知器SE1を示す図である。
【0018】
図1(1)は、煙感知器SE1の正面図であり、図1(2)は、煙感知器SE1の底面図である。また、図1(3)は、ICタグT1のアンテナ部がほぼ環状に形成されている状態を示す図である。
【0019】
煙感知器SE1は、たとえば火災によって発生する煙の濃度を捕らえる光電式スポット型煙感知器であり、ベース11と、煙検出部12と、煙流入窓13と、ICタグT1とを有する。
【0020】
ICタグT1は、リング状の形状を有する平板のシールであり、ICタグT1の直径は、煙検出部12の凸部の平面部分の直径よりも小さくなっており、ICタグT1は、煙検出部12の凸部の平面部分に貼付されて設けられている。また、ICタグT1は、シート状の基板に、ICチップ部とアンテナ部とが平面状に設けられており、ICチップの両端からリーダ用アンテナ部25が半円状に設けられ、全体として略環状となっている。ICタグT1のICチップ部には、煙感知器SE1を個別に識別する固有の識別番号が格納されている。この固有の識別番号は、同一設備の中で、さらには同一回線の中で、個々の火災感知器を区別する番号である。また、ICタグT1は、自身では電源を持たず、加煙試験器20に設けられているICタグ用リーダ24からの電磁誘導波によって与えられた電力によって作動し、識別情報としての識別番号を送信する。ここで、ICタグT1は、シールで貼付する形で設けられるので、煙感知器SE1の製造時だけでなく、建物等に設置されている感知器にも簡便に貼付して設けることができる。
【0021】
また、ICタグT1は、感知器の固有の識別番号のみを保持するだけで十分であるが、煙感知器SE1の型式番号や製造年等の情報をも同時に格納するようにしてもよい。このようにすることによって、いわゆる型式失効となっている場合や、不具合品を回収したい場合に、上記格納された情報を利用することができ、点検作業とは異なる場面で利用することができる。これらの情報を、ICタグ用リーダ24が同時に読み出すことができるようにしてもよい。
【0022】
なお、上記固有の識別番号として、同じ番号の火災感知器が他に存在しないような大きな数、たとえば、2の45乗までの数字を準備するようにしてもよい。このように大きな数を上記固有の識別番号とし使用することによって、煙感知器SE1にICタグT1を無作為に貼付しても、識別番号が重複することがない。また、ICタグT1を含む大量のICタグを一度に製造しても、識別番号の重複がなく、コスト面で有利であり、小規模な設備において、大きな負担なしに導入できるというメリットがある。
【0023】
実施例1によれば、火災感知器の外形に沿って、ICタグが略環状に設けられているので、火災感知器の動作試験時に、火災感知器の試験器の角度がどのような角度であっても、ICタグのアンテナと火災感知器の試験器のアンテナとの距離が、適切な距離内に収まる。したがって、ICタグに格納されている情報を、火災感知器の試験器が確実かつ迅速に読み取ることができる。
【実施例2】
【0024】
図2は、本発明の実施例2である加煙試験器20を示す図である。
【0025】
図2(1)は、加煙試験器20の正面図であり、図2(2)は、加煙試験器20の平面図である。
【0026】
加煙試験器20は、煙感知器SE1を動作試験するために用いられる動作試験器であり、試験器本体21と、棒22と、フード23と、ICタグ用リーダ24と、リーダ用アンテナ部25と、記憶手段27とを有する。また、加煙試験器20は、ガスボンベ(図示せず)を有し、棒22の先端に設けたフード23内に、ガスボンベから擬似的な煙を発生させて、煙感知器SE1を動作させる。ここで、煙感知器SE1に対して加煙試験器20を用いるが、火災感知器が熱感知器である場合には、加煙試験器20の代わりに加熱試験器が用いられ、火災感知器の種別に応じて対応する試験器が用いられる。
【0027】
棒22は、試験器本体21を支える。
【0028】
ICタグ用リーダ24は、電磁誘導波を利用して非接触で、ICタグT1に格納されている識別情報(識別番号)を読み出す。つまり、ICタグ用リーダ24は、ICタグT1のアンテナ部に電磁誘導波を発するリーダ用アンテナ部25を具備し、この電磁誘導波によって、ICタグT1に作動電力を供給する。ICタグ用リーダ24は、電磁誘導波の発信後に、ICタグT1から、煙感知器SE1の固有の識別情報を無線受信する。
【0029】
図3は、煙感知器SE1、SE2、SE3、……、加煙試験器20が火災報知設備の試験装置100に使用されている例を示す図である。
【0030】
火災報知設備100は、煙感知器SE1、SE2、SE3と、ICタグT1、T2、T3と、動作試験器としての加煙試験器20と、複数でもよい感知器回線30と、火災受信機40と、記憶装置42と、信号処理装置50と、プリンタ60とを有する。
【0031】
また、煙感知器SE1は、動作すると動作表示灯(図示せず)を点灯し、感知器回線30に火災信号を出力する。火災を感知すると、いわゆるスイッチング回路によって、感知器回線30の共通線、信号線の2本の電線間が低インピーダンス状態になり、これによって、火災受信機40に火災信号が送出される。なお、火災信号の出力方式は、この方式に限る必要はない。煙感知器SE1は、監視区画の大きさ等に応じて、必要数が感知器回線30に接続されている。
【0032】
煙感知器SE2、SE3は、煙感知器SE1と同様の機能、形状を有する。
【0033】
また、火災感知器として、煙感知器と熱感知器とを混在するようにしてもよい。
【0034】
なお、煙感知器SE2には、煙感知器SE2の固有の識別情報を格納し、ICタグT1と同様のICタグT2が貼り付けられ、煙感知器SE3には、煙感知器SE3の固有の識別情報を格納し、ICタグT1と同様のICタグT3が貼り付けられている。
【0035】
記憶手段27は、各火災感知器のICタグからICタグ用リーダ24が読み出した識別情報を、発報情報として格納する。
【0036】
以下の説明では、煙感知器SE1〜SE3を代表して、煙感知器SE1に着目して説明し、必要な場合には煙感知器SE2、SE3にも記述する。
【0037】
火災受信機40は、煙感知器SE1が出力する火災信号を、感知器回線30を介して受信し、火災警報等の必要な火災動作を行い、詳細な説明は省略するが、火災受信機40の盤面において、火災発生の表示を行うとともに、いわゆる主音響が鳴動され、また、必要な地区音響の鳴動(一斉鳴動または地区鳴動の方式で)を制御する。
【0038】
火災受信機40は、いわゆるP型である。感知器回線30を低インピーダンス状態にすることによって火災信号が出力されるので、この状態を監視して、火災信号を検出する受信回路(図示せず)が、火災受信機40に設けられている。
【0039】
また、火災受信機40には、端子部41を介して、記憶装置42が設けられ、記憶装置42は、回線毎に火災信号の数を計数するカウンタ43と、カウンタ43が計数した火災信号の数を記憶する記憶手段44とを有する。カウンタ43が計数した火災信号の数を、以下では、回線情報という。
【0040】
記憶手段44は、火災受信機40内に固定されてもよいが、火災受信機40の端子部41に着脱可能とされており、この場合、通常状態では、記憶装置42は端子部41に接続されていなくてもよく、信号処理装置50で信号処理するに先立って、端子部41に記憶手段44を接続し、発報回数を記憶手段44に格納した後に、記憶装置42を端子部41から取り外し、信号処理装置50に装着するようにしてもよい。
【0041】
感知器回線30は、火災受信機40の筐体内に引き込まれ、所定の端子に接続されることによって、火災受信機40の受信回路に接続され、また、別途、記憶装置42が着脱される端子部41にも接続され、記憶装置42が感知器回線30の状態を監視することができ、火災信号を検出できる。
【0042】
なお、記憶装置42に格納する情報は、回線情報として、カウンタ43で計数した火災信号の数でなく、火災信号を検出したタイミングを時刻情報と共に格納する情報であってもよく、火災感知器SE1〜SE3が出力した火災信号が出力した火災信号が分かる情報であればよい。
【0043】
感知器回線30は、火災受信機40から引き出され、煙感知器SE1のような火災感知器が接続されるものであり、設置されている建物等の規模に応じて、1または複数設置される。建物等、または、フロア毎等のように、複数の地区が設定され、地区毎に、感知器回線30が配線されている。上記地区には、地区番号が付与され、この地区番号に合わせて、感知器回線30が、回線番号で管理されている。
【0044】
信号処理装置50は、比較手段51と、点検票のデータ作成手段52とを有する。比較手段51は、加煙試験器20の記憶手段27が記憶している煙感知器の識別情報の数と、火災受信機40の記憶手段44が記憶している受信した火災信号の数とを回線ごとに比較する。さらに、事前に設定された設置情報としての設置数とも比較する。点検票のデータ作成手段52は、煙感知器の識別情報の数と、火災受信機40の記憶手段44が記憶している受信した火災信号の数とが同数であれば、動作試験が正常に行われたと判断し、プリンタ60に点検票打ち出し指令信号を送信する。
【0045】
次に、上記実施例の動作について説明する。
【0046】
図4は、実施例における動作試験の手順を示すフローチャートである。
【0047】
まず、S1で、準備段階を実行する。火災受信機40に記憶手段44が設けられている。火災受信機40に記憶手段44が設けられていなければ、準備段階として、火災受信機40の端子部41に、着脱自在の記憶手段44を装着する。ここで、設置されている煙感知器SE1、SE2、SE3には、それぞれICタグT1、T2、T3が予め貼付されている。動作試験を開始する前に、煙感知器にICタグが貼付されていなければ、動作試験前に、ICタグを煙感知器に貼付する。
【0048】
また、準備段階において、火災受信機40は、いわゆる保守モードに設定される。この保守モードは、火災信号を受けた後に直ちに自動復旧するモードである。すなわち、火災受信機40の機能は、通常、煙感知器が発した火災信号を保持して自動復旧させない。つまり、同じ感知器回線30を介して、1つ目の火災信号を受けると、復旧の操作をしない限り、2つ目の火災信号を受信できない。しかし、動作試験時においては、保守モードに設定し、火災信号を受けた後に直ちに自動復旧するように設定する。これによって、動作試験時に火災受信機40の近傍に復旧入力させるための作業員を配置する必要がない。なお、自動復旧させない場合には、火災受信機40の盤面に、別の作業員を張り付かせ、煙感知器を動作させる作業員と連絡を取りながら、別の作業員が火災信号を復旧させる操作を行わせればよい。
【0049】
次に、実際に動作試験する作業段階について説明する。
【0050】
S2で、動作試験する作業段階を実行し、この作業段階では、3つの、煙感知器SE1、SE2、SE3について動作試験を行うとする。作業段階において、加煙試験器20を用いて、作業員が、煙感知器SE1、SE2、SE3を順次加煙し、煙感知器SE1、SE2、SE3を動作させる。
【0051】
まず、加煙試験器20に設けられているスイッチ(図示せず)を操作し、ICタグ用リーダ24が起動され、加煙試験器20を、煙感知器SE1に近づける。すると、電磁誘導波によって、加煙される煙感知器SE1に設けられているICタグT1に電力が供給され、ICタグT1から、煙感知器SE1の固有の識別番号を、非接触で読み出す。読み出された識別番号を、発報情報として、加煙試験器20に設けられている記憶手段27に保存する。その後、煙感知器SE1の煙濃度が十分に上がり、煙感知器SE1が動作し、火災信号を出力する。
【0052】
なお、ICタグ用リーダ24が煙感知器SE1の識別情報を読出す動作は、非接触であり、しかも半永久的に行うことができる。ICタグ用リーダ24とICタグT1との間隔が短かければ、識別情報を読み出すことが可能である。また、加煙試験器20に設けられているリーダ用アンテナ部25が略環状に形成されているので、ICタグT1を囲むように配置され、ICタグT1からの電波を受信し易い。しかも、加煙試験器20を煙感知器SE1にほとんど接触させる程度に近づけて動作試験することができるので、加煙試験器20における消費電力を少なくすることができる。また、煙感知器SE1とこの隣に設置されている煙感知器SE2との間隔が十分にあるので、2台の煙感知器SE1、SE2が識別情報を同時に発することがなく、仮に識別情報を同時に発したとしても、加煙試験器20から遠い位置に存在している煙感知器SE2から、その識別情報を加煙試験器20が受信することがない。
【0053】
そして、加煙試験器20を、煙感知器SE2に近づけ、煙感知器SE2に設けられているICタグT2に電力が供給される。そして、ICタグT2から、煙感知器SE2の固有の識別番号を、非接触で読み出し、煙感知器SE2が動作する。煙感知器SE3についても、上記と同様にして、ICタグT3から、煙感知器SE3の固有の識別番号を、非接触で読み出す。
【0054】
なお、ICタグ用リーダ24を設ける代わりに、リード機能とライタ機能とを併せ持つ読み書き装置を設け、ICタグT1、T2、T3に所定情報を書き込みするようにしてもよい。上記書き込む所定情報として、動作試験の実施日の情報が考えられる。
【0055】
つまり、動作試験として、煙感知器SE1、SE2、SE3を順次動作させると、煙感知器SE1、SE2、SE3の識別番号を、発報情報として、順次、記憶手段27に蓄積する。
【0056】
この作業段階において、動作した煙感知器SE1、SE2、SE3が、感知器回線30を介して、火災受信機40に火災信号を出力するが、煙感知器を動作させている作業者には、火災信号を目視することができない。この火災信号は、感知器回線30を介して、火災受信機40に到達し、火災受信機40の受信回路が火災信号を検出する。このときに、火災受信機40に設けられているカウンタ43が、火災信号を検出した回線毎に火災信号を計数し、カウンタ43が計数した計数値を、回線情報として記憶手段44が保持する。
【0057】
次に、S3で確認段階を実行する。この確認段階では、加煙試験器20の記憶手段27が記憶している煙感知器の識別情報の数と、火災受信機40の記憶手段44が記憶している受信した火災信号の数とを、比較手段51が突合せ、互いに同数であれば、動作試験が正常に行われたと判断する。なお、同一の識別番号が複数設定されていることはないので、同一の識別番号を複数検出した場合、その識別番号は1つであるとして計数する。
【0058】
そして、S4で作成段階を実行する。この作成段階では、信号処理装置50は、動作試験が正常に行なわれたと判断されると、プリンタ60に点検票打ち出し指令信号と点検票作成のデータとを送信し、プリンタ60が、動作試験の結果を示す点検票を出力する。すなわち、上記の動作試験による点検作業の結果を、所定の様式で記載した点検票を作成し、消防署等の関係機関に報告する。その際に、この信号処理装置50を用い、点検票61を作成し、この点検票61を見れば、上記確認段階で動作試験が正常終了したと判断されたことを認識することができる。
【0059】
次に、実施例2において、加煙試験器20が煙感知器の識別番号を読み出す動作について説明する。
【0060】
図5は、実施例2において、加煙試験器20が煙感知器の識別番号を読み出す動作を示すフローチャートである。
【0061】
加煙試験器20は起動されると、S11で、識別番号を読み込むトライをし、識別番号を取得できれば(S12)、取得された識別番号が既に取得した識別番号と重複しているか否かを、S13で判断する。重複していないと判断されれば、S14で、取得した識別番号を保存し、S15で、所定の周期(たとえば5秒間)が経過したか否かを判断する。5秒間経過していれば、S11に戻る。5秒間経過していなければ、S16で、オフ操作がされたか否かを判断する。オフ操作がされたと判断されれば、終了し、オフ操作がされていないと判断されれば、S15に戻り、5秒間の経過を待つ。
【0062】
一方、S13で、識別番号の重複があると判断されれば、重複回数の関数Cを、1インクリメントし、S18で、重複回数Cが所定の定数K(たとえば2回)に達したか否かを判断する。重複回数Cが2回に達していなければ、S15に進み、5秒間待機する。S18で重複回数Cが2回に達していると判断されれば、S19で、ICタグ用リーダ24は所定時間、たとえば1分間読み出しを待機し、待機時間1分間が経過すれば、S20で、重複回数の回数Cを0に初期化し、S11に戻る。S19で待機する時間は、火災感知器の試験器を火災感知器に当てたときから火災感知器が動作するまでの時間であることが望ましい。
【0063】
実施例2によれば、上記火災感知器の試験器に設けられているリーダのアンテナが略環状であるので、火災感知器の動作試験時に、火災感知器の試験器の角度がどのような角度であっても、ICタグのアンテナと火災感知器の試験器のアンテナとの距離が、適切な距離内に収まる。したがって、ICタグに格納されている情報を、火災感知器の試験器が確実かつ迅速に読み取ることができる。
【0064】
実施例2において、ICタグ用アンテナは、火災感知器の試験器の本体に設けられているフードの端部に沿って略環状に形成されているが、ICタグ用アンテナを、火災感知器の試験器の本体の端部に設け、つまり、試験器本体21の端部にリーダ用アンテナ部25を設けるようにしてもよい。
【実施例3】
【0065】
図6は、本発明の実施例3である煙感知器SE1aを示す図である。図6(1)は、煙感知器SE1aの正面図であり、図6(2)は、煙感知器SE1aの底面図である。
【0066】
煙感知器SE1aは、基本的には、煙感知器SE1と同じであるが、ICタグT1aの設置位置が異なる。煙感知器SE1aでは、ICタグT1aが、煙検出部12の凸部端面に設けられている。ICタグT1aの機能は、ICタグT1と同様である。
【0067】
実施例3のようにしても、火災感知器の動作試験時に、火災感知器の情報を確実かつ迅速に読み出すことができる。
【0068】
なお、火災試験器のリーダの読み込み動作は、感知器への近接を検知するセンサ(接近センサ、リミットスイッチ等)を設け、そのセンサが近接を検知している間、火災試験器のリーダが読み込み動作を実行するようにしてもよい。また、上記センサが近接を検知し、この検知を読み込み動作開始のトリガとし、同一の情報を読み込むと、火災試験器によるリーダの読み込み動作を停止するようにしてもよい。
【0069】
上記各実施例において、火災感知器の試験器の本体にフードが設けられ、上記アンテナは、上記フードの端面に沿って略環状に形成されていてもよい。
【0070】
上記火災感知器は、各火災感知器のICタグから個別の情報を読み出して格納しながら、各火災感知器を順次動作させ、上記リーダによって読み出された情報が互いに同一であれば、上記互いに同じ情報のうちの一方の情報を記憶せずに破棄するようにしてもよい。このようにすることによって、重複した情報の格納を阻止することができる。つまり、火災感知器の試験器は、無駄な情報を記憶する必要がなく、格納動作も不要である。
【0071】
また、実施例3において、ICタグを火災感知器のベースに設ける場合、ベースの表面、ベースの内面、突出する煙検出部の下面または熱検出部のプロテクタに沿って設けるようにしてもよい。さらに、ICタグを、火災感知器のベースまたは煙検出部に埋め込むようにしてもよい。
【0072】
上記各実施例において、火災感知器を特定する識別子を格納しているICタグを、火災感知器に略環状に設けてあるが、この場合、ICタグを、火災感知器に、貼付、固着、付着、ねじ止め等のどの手法によって設けるようにしてもよい。
【0073】
また、火災感知器又は火災感知器の試験器の少なくともいずれか一方が略環状であればよく、共に略環状でなくてもよい。
【符号の説明】
【0074】
SE1、SE2、SE3…煙感知器、T1、T2、T3…ICタグ、20…加煙試験器、21…試験器本体、23…フード、24…ICタグ用リーダ、25…リーダ用アンテナ部、27…記憶手段、30…感知器回線、40…火災受信機、41…端子部、44…記憶手段、50…信号処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災感知器を特定する識別子を格納しているICタグが、上記火災感知器に略環状に設けられていることを特徴とする火災感知器。
【請求項2】
請求項1において、
上記ICタグは、上記火災感知器のベースの表面、上記火災感知器のベースの内面、突出する煙検出部の下面または熱検出部のプロテクタに沿って設けられていることを特徴とする火災感知器。
【請求項3】
火災感知器を特定する識別子を格納しているICタグであって、上記火災感知器に設けられているICタグから、上記識別子を読み出すICタグ用リーダと;
上記ICタグ用リーダのアンテナであって、上記火災感知器の試験器に略環状に形成されているリーダ用アンテナ部と;
を有することを特徴とする火災感知器の試験器。
【請求項4】
請求項3において、
上記ICタグ用アンテナは、上記火災感知器の試験器の本体の端部または上記本体に設けられているフードの端部に沿って略環状に形成されていることを特徴とする火災感知器の試験器。
【請求項5】
請求項3において、
上記制御手段は、上記IC用リーダによる個別の情報の読み出しを一定周期で実行させ、同じ情報を複数回読み出すと、所定の時間、上記読み出しを休止する手段であることを特徴とする火災感知器の試験器。
【請求項6】
火災感知器を特定する識別子を格納しているICタグが、上記火災感知器に設けられている火災感知器と;
上記火災感知器を特定する識別子を格納しているICタグであって、上記火災感知器に設けられているICタグから、上記識別子を読み出すICタグ用リーダと、上記ICタグ用リーダのアンテナであって、上記火災感知器の試験器に形成されているリーダ用アンテナ部とを具備する火災感知器の試験器と;
を有し、上記火災感知器又は上記火災感知器の試験器の少なくともいずれか一方が略環状であることを特徴とする火災報知設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−212384(P2012−212384A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78474(P2011−78474)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】