説明

火炎加水分解により製造される二酸化チタン粉末

一次粒子の凝集物の形で存在し、20〜200m/gのBET表面積を有し、一次粒子分布のナノメートルでの半値幅(HW)がHW[nm]=a×BET(式中、a=670×10−9/gおよび−1.3≦f≦−1.0である)であり、45μmより大きい直径を有する粒子の割合が0.0001〜0.05質量%の範囲内にある、火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。前記粉末は、ハロゲン化チタンを、200℃より低い温度で蒸発させ、決められた湿分を有するキャリアガスを用いて蒸気を混合室に搬送し、これとは別に水素、場合により酸素で富化されおよび/または予熱されていてもよい、一次空気および蒸気を混合室に添加し、引き続き反応混合物を、周囲空気から閉鎖された反応室中で燃焼し、更に反応室に二次空気を導入し、引き続き気体の物質から固体を分離し、これに続いて蒸気を用いて固体を処理する方法により製造される。前記二酸化チタン粉末はポリマーの熱安定化に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火炎加水分解により製造される二酸化チタン粉末およびその製造および使用に関する。
【0002】
熱分解法により二酸化チタンを製造できることは知られている。熱分解法は火炎酸化または火炎加水分解を含むことが理解される。火炎酸化において、二酸化チタン前駆物質、例えば四塩化チタンを式1aにより酸素を用いて酸化する。火炎加水分解において、二酸化チタン前駆物質の加水分解により二酸化チタンを形成し、加水分解に必要な水を燃料ガス、例えば水素および酸素の燃焼から誘導する(式1b)。
TiCl+O → TiO+2Cl (式1a)
TiCl+2HO → TiO+4HCl (式1b)。
【0003】
欧州特許第1231186号は粒子の質量に関するD90直径2.2μm以下を有し、BET表面積3〜200m/gを有する二酸化チタンを記載する。D90直径0.8〜2.1μmが実施例に記載される。更にBET表面積3〜200m/gおよび式:
R=100exp(−bD
(Dは粒子直径を表し、bは定数である)により計算される分配定数n1.7以上を有する二酸化チタンが得られる。値nは3つの値D10、D50およびD90から得られ、これらは互いに近似直線により関係付けられる。二酸化チタンは四塩化チタンと酸化ガスの火炎酸化により得られ、出発物質は反応の前に少なくとも500℃の温度で予熱する。有利な構成において、反応混合物の速度は10m/sec以上であり、反応空間での滞留時間は3秒以下である。
【0004】
欧州特許第778812号は火炎酸化および火炎加水分解の組み合わせによる二酸化チタンの製造方法を記載する。これに関して、蒸気状態の四塩化チタンと酸素を反応帯域で混合し、混合物を燃料ガスとして水素の燃焼により発生する火炎中で加熱する。四塩化チタンを反応器の中心コアに供給し、中心コアを包囲する管状スリーブに酸素を供給し、四塩化チタンと酸素を搬送する管を包囲する管状スリーブに燃料ガスを供給する。
【0005】
積層拡散火炎反応器が有利に使用される。この方法において、大きな割合のアナターゼ変態を有する高い表面活性二酸化チタン粉末を製造することができる。欧州特許第778812号には一次粒子および凝集物の構造および大きさに関する情報は示されていない。しかし多くの用途に、例えば化粧品の用途に、または電子工業用の分散液中の研磨剤として重要であるのは特にこれらの量である。欧州特許第778812号による二酸化チタン形成のメカニズムは火炎酸化(式1a)および火炎加水分解(式1b)を含む。異なる形成メカニズムが調節されるアナターゼ部分を可能にするにもかかわらず、一次粒子および凝集物の特定の分布を達成できない。この方法の他の欠点は米国特許第20002/0004029号に記載されるように、四塩化チタンと燃料ガスの不完全な変換および生じる二酸化チタンの灰色の着色である。
【0006】
これらの問題は米国特許第20002/0004029号により、欧州特許第778812号に記載される3つの管の代りに5個の管を使用することにより排除される。このために四塩化チタン蒸気、アルゴン、酸素、水素および空気を同時に火炎反応器に配量する。この方法の欠点は、高価な希ガス、アルゴンおよび反応ガス中の四塩化チタンの低い濃度による二酸化チタンの低い収率である。
【0007】
火炎加水分解により製造される二酸化チタン粉末はかなり前から、Degussa社によりP25の名称で販売されている。
【0008】
これは比表面積50±15m/g、一次粒子の平均粒度21nm、圧縮かさ密度(大体の値)130g/l、HCl含量0.300質量%以下およびモッカー(Mocker)によるふるい分け残留値(45μm)0.050%以下を有する微細な粒子状二酸化チタン粉末である。この粉末は多くの用途に良好な特性を有する。
【0009】
技術水準は熱分解により製造した二酸化チタンに広い関心を示す。これに関して通常の一般的な用語、熱分解、すなわち火炎加水分解および火炎酸化が二酸化チタンの適当な記載でないことが見出される。熱分解法の複雑さのために、わずかな物質パラメーターのみが具体的に調節できるにすぎない。
二酸化チタンは特に触媒作用に、例えば化粧品での光触媒作用に、例えば日焼け防止剤に、電子工業において分散剤の形の研磨剤として、またはポリマーの熱安定性に使用される。これらの使用において、二酸化チタンの純度および構造に要求が高まる。従って例えば二酸化チタンを分散剤中の研磨剤として使用する場合に、二酸化チタンが良好な分散性を有し、研磨される表面を傷つける粗い粒子をできるだけ含まないことが重要である。
【0010】
本発明の課題は、高い純度を有し、容易に分散し、できるだけ粗い粒子を含まない、二酸化チタン粉末を提供することである。
【0011】
本発明の課題は、二酸化チタン粉末の製造方法を提供することである。これに関して前記方法は工業的規模で実施できるべきである。
【0012】
本発明は、一次粒子の凝集物の形で存在する火炎加水分解により製造した二酸化チタン粉末を提供し、
前記粉末は20〜200m/gのBET表面積を有し、および
一次粒子分布のナノメートルの半値幅HWが、
HW[nm]=a×BET(式中、a=670×10−9/gおよび−1.3≦f≦−1.0である)の間の値を有し、
45μmより大きい直径を有する粒子の割合が0.0001〜0.05質量%の範囲内であることを特徴とする。
【0013】
本発明の範囲で“一次粒子”の用語は最初に反応中に形成され、反応が更に進行する間に合体して凝集物を形成する粒子を表すと理解される。
【0014】
本発明の範囲で“凝集物”の用語は、個々の分離した一次粒子の合計より小さい表面を有し、一緒に合体した類似の構造および大きさの一次粒子を表すと理解される。若干の凝集物または個々の一次粒子は更に一緒に結合して集塊を形成することができる。従って凝集物または一次粒子は尖った物体の形で互いに隣接して存在する。結合の程度に依存して凝集物はエネルギーの適用により分解することができる。
【0015】
他方で凝集物はエネルギーの高い入力によってのみ分解することができるかまたは全く分解できない。中間の形が存在する。
【0016】
一次粒子分布(数量に関する)の平均半値幅HWはTEM写真の画像分析により得られる。本発明により、平均半値幅は−1.3≦f≦−1である定数fを有するBET表面積の関数である。有利に前記半値幅は−1.2≦f≦−1.1の範囲内であることができる。例えば表面を研磨する場合に本発明による粉末の有利な特性に該当するものは、高いBET表面積、一次粒子分布の狭い分布および45μmより大きい直径を有する凝集物の低い割合である。同時にこれらの特性を示す火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末は技術水準で知られていない。例えば45μmより大きい直径を有する凝集物から技術水準による粉末を機械的に大部分除去することはもちろん可能であるが、得られた粉末は一次粒子のBET表面積および半値幅値に関して本発明の請求の範囲に記載の範囲を達成することができないであろう。
【0017】
本発明による二酸化チタン粉末のBET表面積は20〜200m/gの広い範囲内である。BET表面積が40〜60m/gの範囲内である場合が有利であることが示された。45〜55m/gの範囲が特に有利である。
【0018】
BET表面積40〜60m/gを有する本発明の二酸化チタン粉末に関して、一次粒子直径の数量分布の90%の分布は10〜100nmにあることができる。一般に一次粒子直径の数量分布の90%の分布は10〜40nmである。
【0019】
更にこの二酸化チタン粉末の凝集物の相当円形直径(ECD)は80nm未満であることができる。
【0020】
BET表面積40〜60m/gを有する本発明による二酸化チタン粉末の平均凝集物面積は6500nm未満であることができ、平均凝集物円周は450nm未満であることができる。
【0021】
更に本発明による二酸化チタン粉末のBET表面積は80〜120m/gの範囲内であることができる。85〜95m/gの範囲が特に有利である。
【0022】
BET表面積80〜120m/gを有する本発明による二酸化チタン粉末に関して、一次粒子直径の数量分布の90%の分布が4〜25nmの値を有することができる。更にこの二酸化チタン粉末は凝集物の相当円形直径(ECD)70nm未満を有することができる。
【0023】
BET表面積80〜120m/gを有する本発明による二酸化チタン粉末の平均凝集物面積は6000nm未満であることができ、平均凝集物円周は400nm未満であることができる。
【0024】
45μmより大きい直径を有する本発明による二酸化チタン粉末の凝集物および/または集塊の割合は0.0001〜0.05質量%の範囲内である。0.001〜0.01質量%の範囲が有利であり、0.002〜0.005質量%の範囲が特に有利である。
【0025】
本発明による二酸化チタン粉末は結晶変態としてルチルおよびアナターゼからなる。これに関して所定の表面積でのアナターゼ/ルチルの割合は2:98〜98:2の範囲内であることができる。80:20〜95:5の範囲が特に有利である。
【0026】
本発明による二酸化チタン粉末は塩素の残留物を含有することができる。塩化物含量は有利に0.1質量%未満である。0.01〜0.05質量%の範囲の塩化物含量を有する本発明による二酸化チタン粉末が特に有利である。
【0027】
本発明による二酸化チタン粉末の圧縮かさ密度は制限されない。しかし圧縮かさ密度が20〜200g/lの値を有する場合が有利であると示された。30〜120g/lの圧縮かさ密度が特に有利である。
【0028】
本発明は更に本発明による二酸化チタン粉末の製造方法を提供し、前記方法は
ハロゲン化チタン、有利に四塩化チタンを200℃より低い温度で蒸発させ、キャリアガスを用いて蒸気を混合室に搬送し、その際蒸気の割合が1〜25g/mの範囲であり、
これとは別に水素、場合により酸素で富化されおよび/または予熱されていてもよい一次空気および蒸気を混合室に搬送し、
その際蒸気の割合が1〜25g/一次空気mの範囲であり、
λ値が1〜9の範囲にあり、γ値が1〜9の範囲にあり、
引き続き、
ハロゲン化チタン蒸気、水素、空気および蒸気からなる混合物をバーナー中で発火し、火炎が、周囲空気から閉鎖された反応室中で燃焼し、その際
反応室中で1〜200ミリバールの真空が存在し、
混合室から反応空間への反応混合物の排出速度が10〜80m/secの範囲にあり、
更に反応室に二次空気を導入し、その際
一次空気と二次空気の比が10〜0.5であり、
引き続き気体の物質から固体を分離し、
その後蒸気を用いて固体を処理することを特徴とする。
【0029】
本発明の方法の重要な特徴は、ハロゲン化チタンを200℃より低い温度で蒸発させ、キャリアガス、例えば空気または酸素を用いて蒸気を混合室に搬送し、キャリアガスが決められたキャリアガス湿分含量を有することである。例えば蒸発温度が高いほど生成物の品質が低下することが見出された。
【0030】
更に請求の範囲に記載されたガスまたは一次空気の1〜25g/mの蒸気含量の範囲内で、ケーキングの形のハロゲン化チタンの顕著な加水分解が存在しないが、これに対して他方で蒸気含量が引き続く一次粒子および凝集物構造に影響することが見出された。請求の範囲の外部で本発明による粉末が得られない。有利な構成において、蒸気含量は5〜20g/ガスまたは一次空気mである。
【0031】
キャリアガスとして空気を使用できる。これは反応室中で不活性ガスを使用する場合より高い空−時収率を可能にする。
【0032】
更に混合室から反応空間への反応混合物の排出速度が10〜80m/secの範囲内にある。有利な構成において、排出速度は15〜60m/secであり、特に有利な構成において、20〜40m/secである。これより低い値では均一な粉末が得られないが、その代わりに0.05質量%より大きい量で45μm以上の粒子を含有する粉末が得られる。
【0033】
更に反応はλ値が1〜9の範囲内であり、γ値が1〜9の範囲内であるように実施しなければならない。
【0034】
火炎加水分解により製造された酸化物は、一般に、気体の出発物質が互いに対して化学量論の比で存在し、添加される水素が、ハロゲン化チタンTiXからの存在するハロゲンXと反応してHXを形成するために、少なくとも十分であるように得られる。この目的のために必要な水素の量を水素の化学量論的量と呼ぶ。
【0035】
前記の化学量論的に必要な水素に対する添加される水素の比をγと呼ぶ。γは以下のように定義される。
γ=添加される水素/化学量論的に必要な水素、または
γ=供給されるH(モル)/化学量論的H(モル)。
【0036】
火炎加水分解により製造された酸化物と一緒に、更にハロゲン化チタンを二酸化チタンに変換し、なお存在する過剰の水素を水に変換するために少なくとも十分である(例えば空気からの)酸素の量を一般に使用する。この酸素の量を化学量論的酸素量と呼ぶ。
【0037】
同様に、化学量論的に必要な酸素に対する添加される酸素の比をλと呼び、以下のように定義される。
λ=添加される酸素/化学量論的に必要な酸素、または
λ=供給されるO(モル)/化学量論的O(モル)。
【0038】
更に本発明の方法において、混合室中の一次空気のほかに空気(二次空気)を直接反応室に導入する。混合室に付加的な空気を添加しないと本発明による二酸化チタンが得られないことが見出された。これに関して二次空気に対する一次空気の比が10〜0.5であることを記載するべきである。この比は有利に5〜1の範囲内である。
【0039】
二次空気の量を正確に供給できるために、周囲空気から閉鎖された反応室中で火炎が燃焼することが必要である。これは本発明の方法を正確に調節することを可能にし、本発明による二酸化チタン粉末を得るために不可欠である。反応室中の真空は有利に10〜80ミリバールである。
【0040】
重要な特徴は、気体の物質から分離後の酸化チタン粉末が蒸気を用いて処理されるという事実である。この処理は第1に表面からハロゲン化物を含有する基を除去することを目的とする。同時にこの処理は集塊の数を減少する。前記方法は連続的に、粉末を向流でまたは順流で、蒸気により、場合により空気と一緒に処理するように実施することができ、この関係で蒸気を下から垂直な、加熱可能なカラムに常に導入する。粉末の供給は、カラムの上からまたは下から行うことができる。流動床が形成されるように反応条件を選択することができる。蒸気での処理を実施する温度は有利に250〜750℃であり、450〜550℃の値が有利である。更に前記処理を向流で、流動床が形成されないように実施することが有利である。
【0041】
蒸気を空気と一緒に混合室に導入することが有利である。
【0042】
図1Aは本発明の方法を実施する装置の図を示す。図面において、A=混合室、B=火炎、C=反応室、D=固体/気体分離、E=蒸気での後処理である。使用される物質は以下のように確認される。a=決められた湿分含量を有するハロゲン化チタンとキャリアガスの混合物、b=水素、c=空気、d=蒸気、e=二次空気、f=蒸気または蒸気/空気。図1Bは図1Aの装置の断面図である。ここで蒸気(d)を空気(c)と一緒に混合室に導入する。図1Cは二次空気eが周囲から吹き込まれる開放した反応室を示す。図1Cによる装置では本発明による二酸化チタン粉末が得られない。
【0043】
本発明は更にシリコーンの熱処理安定化のための本発明による二酸化チタン粉末の使用を提供する。
【0044】
本発明は更に日焼け防止剤における本発明による二酸化チタン粉末の使用を提供する。
【0045】
本発明は更に触媒としての、触媒担体としての、光触媒としての、および分散剤を製造するための研磨剤としての本発明による二酸化チタン粉末の使用を提供する。
【0046】
実施例
分析
BET表面積はDIN66131により決定する。
【0047】
圧縮かさ密度はDINISO787/XIK5101/18にもとづき決定する(ふるい分けせず)。
【0048】
かさ密度はDINISO787/XIにより決定する。
【0049】
pH値はDIN787/IX、ASTMD1280、JISK5101/24にもとづき決定する。
【0050】
45μmより大きい粒子の割合はDINISO787/XVIII、JISIK5101/20により決定される。
【0051】
塩化物含量の決定:本発明による粒子約0.3gを正確に計量し、20%水酸化ナトリウム溶液(分析純度)20mlをこれに添加し、溶解し、冷却したHNO15mlに攪拌しながら移す。溶液中の塩化物含量をAgNO溶液(0.1モル/lまたは0.01モル/l)で滴定する。
【0052】
一次粒子分布の半値幅および凝集物の面積、円周および直径を画像分析により決定する。画像分析は、H7500TEM装置、日立およびMegaViewIICCDカメラ、SISを使用して実施する。評価のための画像の大きさはピクセル密度3.2nmで30000:1である。評価された粒子の数は1000より大きい。製造はASTM3849−89により実施する。検出に関する下側閾値限界は50ピクセルである。
【0053】
例A1(本発明による)
蒸発機中、140℃で、TiCl160kg/hを蒸発する。15g/キャリアガスmのキャリアガス湿分含量を有するキャリアガスとして、窒素(15Nm/h)を使用して蒸気を混合室に移送する。これと別に、水素52Nm/hおよび一次空気525Nm/hを混合室に導入する。中心の管中で反応混合物をバーナーに供給し、発火する。水冷火炎管中で火炎が燃焼する。更に二次空気200Nm/hを反応空間に添加する。形成される粉末を流れを下るフィルター中で分離し、引き続き520℃で空気および蒸気を用いて向流で処理する。
【0054】
本発明による例A2〜A9はA1と同様に実施する。それぞれ変更したパラメーターを表1に記載する。
【0055】
A1〜A9からの粉末の物理化学的データを表2に示す。
【0056】
比較例B1〜B3およびB5〜B8はA1と同様に実施する。それぞれ変更したパラメーターを表1に記載する。
【0057】
比較例B4は開いたバーナーを使用して実施する。二次空気の量は測定されない。
【0058】
例B1〜B8からの粉末の物理化学的データを表2に示す。
【0059】
表3はf=−1.0,−1.05、−1.15および−1.3を有するBET表面積に依存する一次粒子の計算した半値幅を示す。係数10−9はメートルをナノメートルに変換するための基礎である。係数fとしてマイナスのみが存在し、BETの単位はg/mである。
【0060】
図2は実施例で製造された二酸化チタン粉末の一次粒子の半値幅HBを示す。これに関して本発明による二酸化チタン粉末(黒い四角で示される)はHW[nm]=a×BET(式中、a=670×10−9/gおよび−1.3≦f≦−1.0である)の請求の範囲に記載された半値幅の範囲内にあるが、比較例(+により示される)は前記範囲の外部にある。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
ポリマーの熱安定化
例C1:二酸化チタン粉末を使用しない(比較例)
ベース成分(付加架橋剤)として二成分シリコーンゴム、Bayer、商標名Silopren(登録商標)LSR2040を使用する。ディスソルバーで2つの成分を均一に混合した後に、180℃で10分間加硫を行う。厚さ6mmの試料プレート(約10×15cm)を製造する。試料プレートを炉内で80℃に、一定の質量に加熱する(約1日)。熱に対する熱安定性を検査するために、熱貯蔵試験を実施する。このために、5×7cmの大きさの試料ストリップを空気循環炉中で275℃に維持する。質量損失を測定する。
【0065】
例C2:技術水準による二酸化チタン粉末の添加(比較例)
ベース成分(付加架橋剤)として二成分シリコーンゴム、Bayer、商標名Silopren(登録商標)LSR2040を使用する。全バッチに関して1.5質量%の二酸化チタン粉末P25S(Degussa社)を、前記成分の1種に、ディスソルバーを使用して配合する。これに続いて、例1に記載されるように、加硫および試料プレートの製造を実施する。
【0066】
5×7cmの大きさの試料ストリップを275℃で貯蔵する。質量損失を測定する。
【0067】
例C3〜5はC1と同様に実施するが、P25Sの代わりに、C3では本発明による二酸化チタン粉末A1、C4ではA3、C5ではA7を使用する。
【0068】
表4は275℃で貯蔵した試料の1日後、3日後、および7日後の長さの変化を示す。
【0069】
結果は本発明による二酸化チタン粉末を使用することにより達成されるポリマーの有効な熱保護安定化を示す。
【0070】
【表4】

【0071】
光触媒活性
例D1:技術水準による二酸化チタン粉末(比較例)
光触媒活性を決定するために、測定すべき試料を2−プロパノール中に懸濁し、UV光で1時間照射する。引き続き形成されたアセトンの濃度を測定する。
【0072】
二酸化チタン粉末P25S(Degussa社)約250mg(精度0.1mg)を、ウルトラ・ツラックス(Ultra Turrax)撹拌機を使用して2−プロパノール350ml(275.1g)中で懸濁させる。この懸濁液を、ポンプを使用して、冷却器により24℃に温度調節して、放射源を備え、酸素で予め洗浄したガラス光反応器に搬送する。例えば放射源として、出力500ワットを有するタイプTQ718(Heraeus)のHg中圧浸漬ランプを使用する。ホウ珪酸ガラスの保護管は放射した光線を300nmより大きい波長に制限する。放射源は外部で水が流動する冷却管により包囲されている。酸素は流量計により反応器に供給される。放射源のスイッチを入れた場合に反応が開始する。反応の終了時に、少量の懸濁液が直ちに除去され、濾過され、ガスクロマトグラフィーにより分析される。
【0073】
0.68×10−3モルkg−1−1の光活性kが測定される。これは基本値1とみなす。本発明による二酸化チタン粉末は0.8〜0.9のいくらか低い光触媒活性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1A】本発明の方法を実施する装置の図である。
【図1B】図1の装置の断面図である。
【図1C】周囲から二次空気が吹き込まれる開放した反応室の図である。
【図2】実施例で製造された二酸化チタン粉末の一次粒子の半値幅HBを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の凝集物の形で存在する、火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末であり、
20〜200m/gのBET表面積を有し、
一次粒子分布のナノメートルでの半値幅HWが、
HW[nm]=a×BET
(式中、a=670×10−9/gおよび−1.3≦f≦−1.0である)の間の値を有し、および
45μmより大きい直径を有する粒子の割合が0.0001〜0.05質量%の範囲内にあることを特徴とする、火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項2】
BET表面積が40〜60m/gの範囲内にある請求項1記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項3】
一次粒子直径の数量分布の90%の分布が5〜100nmの範囲内にある請求項2記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項4】
凝集物の相当円形直径(ECD)が80nm未満である請求項2または3記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項5】
平均凝集物面積が6500nm未満である請求項2から4までのいずれか1項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項6】
平均凝集物円周が450nm未満である請求項2から5までのいずれか1項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項7】
BET表面積が80〜120m/gの範囲内にある請求項1記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項8】
一次粒子直径の数量分布の90%の分布が4〜25nmの値を有する請求項7記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項9】
凝集物の相当円形直径(ECD)が70nm未満である請求項7または8記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項10】
平均凝集物面積が6000nm未満である請求項7から9までのいずれか1項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項11】
平均凝集物円周が400nm未満である請求項7から10までのいずれか1項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項12】
45μmより大きい直径を有する凝集物および/または集塊の割合が0.001〜0.1質量%の範囲内にある請求項1から11までのいずれか項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項13】
所定のBET表面積のためにアナターゼ/ルチルの比2:98〜98:2を有する請求項1から12までのいずれか項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項14】
0.1質量%未満の塩化物含量を有する請求項1から13までのいずれか項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項15】
圧縮かさ密度が20〜200g/lの値を有する請求項1から14までのいずれか項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末を製造する方法において、
ハロゲン化チタン、有利に四塩化チタンを、200℃より低い温度で蒸発させ、キャリアガスを用いて蒸気を混合室に搬送し、その際蒸気の割合が1〜25g/mの範囲内であり、
これとは別に水素、場合により酸素で富化されおよび/または予熱されていてもよい、一次空気および蒸気を混合室に搬送し、
その際蒸気の割合が1〜25g/一次空気mの範囲内であり、
λ値が1〜9の範囲内にあり、γ値が1〜9の範囲内にあり、
引き続き、
ハロゲン化チタン蒸気、水素、空気および蒸気からなる混合物をバーナー中で発火し、火炎が、周囲空気から閉鎖された反応室中で燃焼し、その際
反応室中で1〜200ミリバールの真空が存在し、
混合室から反応空間への反応混合物の排出速度が10〜80m/secの範囲内にあり、
更に反応室に二次空気を導入し、その際
一次空気と二次空気の比が10〜0.5であり、
引き続き気体の物質から固体を分離し、
その後蒸気を用いて固体を処理することを特徴とする、火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末を製造する方法。
【請求項17】
蒸気を空気と一緒に混合室に導入する請求項16記載の方法。
【請求項18】
シリコーンの熱保護安定化のための、請求項1から15までのいずれか1項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末の使用。
【請求項19】
日焼け防止剤における請求項1から15までのいずれか1項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末の使用。
【請求項20】
触媒としての、触媒担体としての、光触媒としての、および分散剤を製造するための研磨剤としての請求項1から15までのいずれか1項記載の火炎加水分解により製造された二酸化チタン粉末の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−515368(P2007−515368A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541842(P2006−541842)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013317
【国際公開番号】WO2005/054136
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(501073862)デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】