説明

火炎検出装置

【課題】受光セルとして半導体受光素子を用いた火炎検出装置であって、半導体受光素子の逆接続を防止すると共に、半導体受光素子の短絡故障を検出する機能を備えた簡易な構成の火炎検出装置を提供する。
【解決手段】火炎が発する可視光を検知する半導体受光素子と、ケーブルを介して上記半導体受光素子にその駆動電圧を供給すると共に上記ケーブルを介して上記半導体受光素子による火炎検知信号を検出して火炎の有無を判定する検出装置本体とを具備したものであって、特に前記半導体受光素子と前記ケーブルとの間に逆接続防止用ダイオードを直列に介挿すると共に、前記検出装置本体に前記火炎の有無を判定する第1の閾値に加えて、前記半導体受光素子の短絡および逆接続をそれぞれ判定する第2および第3の閾値を設定したことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎が発する可視光を検知する受光セルとして、フォトダイオード等の半導体受光素子を用いた火炎検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバーナーやオイルバーナー等の火炎を検出してその燃焼(点火)制御に用いられる火炎検出装置は、例えば火炎が発する可視光を検知する受光セルを組み込んだセンサヘッドと、ケーブルを介して上記受光セルにその駆動電圧を供給すると共に上記ケーブルを介して上記受光セルによる火炎検知信号を検出して火炎の有無を判定する検出装置本体とを備えて構成される(例えば特許文献1,2を参照)。
【0003】
ちなみにオイルバーナーは、例えば図4に示すように送風機1の送風口(ブラストチューブ)内に燃料噴射ノズル2を設けると共に、上記燃料噴射ノズル2のノズル口に近接させて点火電極3を設けて構成される。このようなオイルバーナーの火炎を検出してその燃焼を制御する為の火炎検出装置におけるセンサヘッド4は、例えば前記燃料噴射ノズル2の後方に位置して該燃料噴射ノズル2のノズル口に形成される火炎が発する可視光を検出するように設けられる。尚、センサヘッド4に組み込まれる受光セルとしては、従来より専らCdSセルが用いられている。
【0004】
そしてオイルバーナーの燃焼制御は、図5にその点火制御シーケンスを示すように、バーナーの起動指令を受けて先ず送風機1を作動させた後に点火トランスを作動させて点火電極3にスパークを発生させ、スパークが安定した状態で燃料弁を開けることで前記燃料噴射ノズル2から噴射される燃料を着火する。そして燃料の燃焼による火炎が前記火炎検出装置にて検出された後、前記点火トランスの作動を停止することによりその点火制御が完了する(例えば特許文献3を参照)。
【特許文献1】特開平8−261443号公報
【特許文献2】特許第3255442号公報
【特許文献3】特開平6−288541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、RoHS(Restriction of Hazardous Substances;危険物質に関する制限)指令等の化学物質規制によりCd(カドミウム)の使用が制限されている。このような事情から最近では火炎検出装置の受光セルとして、従来のCdSセルに代えてフォトダイオード等の半導体受光素子を用いることが試みられている。しかしながらCdSセルは無極性のものであるがSiフォトダイオード等の半導体受光素子は有極性であり、駆動電源に対して正極と負極とを正しく接続することが必要である。ちなみに半導体受光素子を逆接続した場合には該半導体受光素子の動作が不安定となる上、その出力信号自体が不定となることが否めない。従って半導体受光素子の逆接続を確実に検出し、逆接続に起因する不具合を防ぐことが重要となる。
【0006】
また半導体受光素子は、光に対する検出感度が高く、しかも受光強度に対する電流出力特性がリニアであり、暗黒(火炎なし)の状態においてはその出力電流が数nA程度と極めて小さいと言う出力特性を有している。この為、半導体受光素子を正しく接続したとしても、半導体受光素子が短絡故障している場合には火炎検出信号が得られないので、火炎検出信号が得られない理由が、暗黒(火炎なし)の状態であるか、或いは短絡故障しているのかを判定することができないと言う問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮したもので、その目的は、受光セルとしてフォトダイオード等の半導体受光素子を用いた火炎検出装置であって、特に半導体受光素子の逆接続を確実に検出すると共に、逆接続に起因する不具合を防止することができ、更には半導体受光素子の短絡故障を検出する機能を備えた簡易な構成の火炎検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するべく本発明に係る火炎検出装置は、火炎が発する可視光を検知して火炎検知信号を出力する有極性の半導体受光素子と、ケーブルを介して上記半導体受光素子にその駆動電圧を供給すると共に上記ケーブルを介して前記半導体受光素子における火炎検知信号によって変化する装置内の接点の電圧値に基づいて火炎の有無を判定する検出装置本体とを具備したものであって、当該検出装置本体は、前記電圧値と第1の閾値とを比較して火炎の有無を判定するとともに、前記電圧値と第2の閾値とを比較して前記半導体受光素子の短絡を検出するものであり、前記第2の閾値は前記第1の閾値よりも低い電圧かつ前記半導体受光素子が最大の火炎検出信号を出力した場合の前記電圧値よりも小さい値としたことを特徴としている。
【0009】
また、前記半導体受光素子と前記ケーブルとの間に直列に、前記半導体受光素子の極性を逆に接続した場合においては当該半導体受光素子への前記駆動電圧の印加を遮断する逆接続防止用ダイオードを介挿すると共に、前記検出装置本体は更に、前記電圧値と前記第3の閾値とを比較して前記半導体受光素子の逆接続を検出するものであり、前記第3の閾値は前記第1の閾値よりも高い電圧かつ前記半導体受光素子が、前記火炎が発する可視光を検知しない場合の前記電圧値よりも大きい値とするようにしてもよい。ちなみに前記半導体受光素子として、例えばフォトダイオードと該フォトダイオードの出力を増幅する増幅器とを一体に備えたものを用いることが好ましい。また前記検出装置本体は、例えば直列接続されて駆動電源に接続された第1および第2の抵抗器を備え、上記第1または第2の抵抗器の両端間に前記ケーブルを介して前記半導体受光素子を並列接続したものであって、前記第1および第2の抵抗器により電源電圧を抵抗分割して前記半導体受光素子の駆動電圧を生成すると共に、前記第1の抵抗器と前記第2の抵抗器との接続点に生じる電圧を判定して火炎の有無を判定するものからなる。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された火炎検出装置によれば、前記検出装置本体に前記火炎の有無を判定する第1の閾値に加えて、前記半導体受光素子の逆接続および短絡をそれぞれ判定する第2および第3の閾値を設定し、これらの第2および第3の閾値と検出電圧との比較により半導体受光素子の逆接続状態や該半導体受光素子の短絡故障状態をそれぞれ判定することができるので、半導体受光素子からの火炎検出信号が検出されない状態を以て、これを「火炎なし」と誤判定することがなくなる等の効果が奏せられる。また、前記半導体受光素子と前記ケーブルとの間に逆接続防止用ダイオードを直列に介挿しているので、検出装置本体(駆動電源)に半導体受光素子を逆接続しても該半導体受光素子を確実に保護することができ、また半導体受光素子の不安定な動作を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る火炎検出装置について説明する。
図1は実施形態に係る火炎検出装置の要部概略構成を示している。図1において10は火炎が発する可視光を検出する受光セルとしての半導体受光素子(例えばSiフォトダイ
オード)11を組み込んで構成されるセンサヘッドであり、20はケーブル30を介して上記半導体受光素子11にその駆動電圧を供給すると共に上記ケーブル30を介して前記半導体受光素子11による火炎検知信号を検出して火炎の有無を判定する検出装置本体である。
【0012】
検出装置本体20は、例えば直列接続されて駆動電源に接続される第1および第2の固定抵抗21,22を備え、例えば接地側の第2の固定抵抗22の両端間にケーブル30を
介して半導体受光素子11を並列接続して構成される。上記第1および第2の固定抵抗21,22は電源電圧Vcを分圧して前記半導体受光素子11の駆動電圧Vdを生成し、この
駆動電圧Vdを前記ケーブル30を介して出力する役割を担うと共に、後述するように前記半導体受光素子11の出力(火炎検知信号)に応じて前記第1の固定抵抗21と第2の固定抵抗22との接続点における電圧を変化させる役割を担う。換言すれば半導体受光素子11は、ケーブル30を介して前記第2の固定抵抗22に並列接続されている。そして半導体受光素子11は、火炎が発する可視光を受光して火炎検出信号を出力し、これに伴うインピーダンスの変化により前記固定抵抗21,22の接続点における電圧を変化させ
るものとなっている。
【0013】
また前記半導体受光素子11の出力(火炎検知信号)を検出する検出装置本体20における火炎検出部23は、例えばマイクロコンピュータからなり、前記固定抵抗21,22の接続点に生じる電圧の変化から前記半導体受光素子11による火炎検知信号の有無を判定するように構成される。特にこの火炎検出部23は、前記固定抵抗21,22の接続点に生じる電圧を予め設定した判定閾値電圧Vthと比較することで火炎の有無を検出するように構成される。
【0014】
尚、火炎検出の制御対象がオイルバーナーである場合、上記検出装置本体20にはオイルバーナーにおける送風機31、点火トランス(点火電極)32、および燃料弁(燃料噴射ノズル)33の各動作を火炎の有無により制御する燃焼制御装置24が設けられる。この燃焼制御装置24は、前述した火炎検出部23を構成するマイクロコンピュータが有する機能の一部として実現しても良いことは言うまでもない。
【0015】
さて基本的には上述したように、火炎が発する可視光を検出する受光素子として半導体受光素子、例えばSiフォトダイオード11を用いた火炎検出装置において、本発明が特徴とするところは、図1にその実施形態を示すように前記Siフォトダイオード11の直近であるセンサヘッド10に、暗電流加算回路12およびフィルタ回路13をそれぞれ組み込むと共に、前記Siフォトダイオード11と直列に逆接続防止用ダイオード14を介挿したことを特徴としている。
【0016】
尚、前記Siフォトダイオード11として、ここではフォトダイオード11にその負荷抵抗11aと、その出力電流を増幅する増幅器11bとを一体に設けた、いわゆる複合型のフォトICを用いた例について示している。しかし負荷抵抗11aおよび増幅器11bをそれぞれ単体部品としてフォトダイオード11に組み付けることも勿論可能である。また前記暗電流加算回路12は、例えば前記Siフォトダイオード11に対して並列接続した固定抵抗からなる。更に前記フィルタ回路13は、抵抗13aとコンデンサ13b,13cとを組み合わせて構築されるパッシブ形の低域通過フィルタからなる。このフィルタ回路13は、フォトダイオード11による火炎検知信号を遅延して前記ケーブル30に出力する役割を担うと共に、前記ケーブル30に重畳するノイズによる前記フォトダイオード11の誤動作を防止する機能、つまりノイズ除去機能を担う。
【0017】
ここで先ず、上述した暗電流加算回路12について説明する。受光セルとして用いる半導体受光素子(フォトダイオード)11は、従来一般的なCdSセルに比較してその応答速度が数m秒と速く、しかもその受光強度(照度)に対して図2に特性Aとして示すように略リニアな出力電流特性を有している。そして受光強度が低い場合、特に暗黒(火炎なし)の場合における出力電流は数nA程度と非常に少なく、火炎が発する可視光を受けてその受光強度が高まるに従って出力電流が増大する。このような出力電流特性は、一般的な計測用途においては計測誤差を低減する上で非常に好ましい。
【0018】
しかしながら上述した出力電流特性は、換言すれば暗黒(火炎なし)の場合における半導体受光素子(フォトダイオード)11のインピーダンスが極めて高いことを意味する。そしてケーブル30を介して上記半導体受光素子(フォトダイオード)11を検出器本体20に接続する構成の火炎検出装置においては、半導体受光素子(フォトダイオード)11のインピーダンスが高いとき、ケーブル30の引き回し(配線)によってノイズの影響を受け易くなり、誤検出の要因となることが否めない。即ち、半導体受光素子(フォトダイオード)11のインピーダンスが高い状態(暗黒状態)においては、ケーブル30に重畳する僅かなノイズだけで、該ケーブル30を介して検出する上記半導体受光素子(フォトダイオード)11の出力が大きく変動してしまう。しかも前述したように半導体受光素子(フォトダイオード)11自体が、送風機31や点火トランス(点火電極)32等のノイズ発生源の近傍に配置されることが多い。
【0019】
そこでこの火炎検出装置においては、半導体受光素子(フォトダイオード)11の直近において該半導体受光素子(フォトダイオード)11に対して並列に固定抵抗を接続し、検出装置本体20側からケーブル30を介して前記半導体受光素子(フォトダイオード)11を見たときの暗黒時におけるインピーダンスを意図的に低くし、これによって外来ノイズの影響を受け難いものとしている。具体的には図1に示したように半導体受光素子(フォトダイオード)11の直近において該半導体受光素子(フォトダイオード)11に対して暗電流加算回路12としての固定抵抗を並列接続し、その上で上記半導体受光素子(フォトダイオード)11をケーブル30を介して検出装置本体20に接続するようにしている。
【0020】
このようにして半導体受光素子(フォトダイオード)11に並列接続した固定抵抗によれば、該固定抵抗の抵抗値に比較して半導体受光素子(フォトダイオード)11のインピーダンスが高い場合には、ケーブル30を介して半導体受光素子(フォトダイオード)11に駆動電圧Vdを加えたとき、専ら、上記固定抵抗を介して電流が流れる。そして半導体受光素子(フォトダイオード)11のインピーダンスが低くなるに従って該半導体受光素子(フォトダイオード)11の出力電流が増えることになる。すると暗黒時においても図2に出力電流特性Bに示すようにケーブル30を介して或る程度の電流が流れることになり、ケーブル30を介して前記半導体受光素子(フォトダイオード)11を見たときの暗電流を増大させることが可能となる。そして前述したように半導体受光素子(フォトダイオード)11に並列接続した固定抵抗は、見掛け上、該半導体受光素子(フォトダイオード)11の暗電流を加算し、暗黒時における半導体受光素子(フォトダイオード)11のインピーダンスを低減する作用を呈することになる。
【0021】
この結果、暗黒時においても半導体受光素子(フォトダイオード)11のインピーダンスを或る程度低く抑えることができるので、仮にケーブル30がノイズ発生源の近傍に配設される場合であっても、ノイズの混入を抑えることができる。そして該ケーブル30を介して検出する上記半導体受光素子(フォトダイオード)11の出力の、ノイズの混入による誤検出を効果的に防止することが可能となる。
【0022】
尚、上述した固定抵抗に代えて前述した増幅器11bの利得を半導体受光素子(フォトダイオード)11の出力に応じて可変し、暗黒時における増幅器11bの出力を増大させるように暗電流加算回路12を構成することも可能である。この場合には、例えば半導体受光素子(フォトダイオード)11の出力に応じて増幅器11bのバイアスを可変し、これによってその電流出力特性(利得)を変化させるようにすれば良い、或いはママイクロプロセッサやA/D変換器を用いて半導体受光素子(フォトダイオード)11の出力をデジタル変換した後、その信号をケーブル30を介して伝送するような場合には、上記半導体受光素子(フォトダイオード)11の出力に応じてそのA/D変換特性自体を可変することも可能である。
【0023】
ところで上述した如く半導体受光素子(フォトダイオード)11の出力に暗電流成分を加算することでその誤検出の防止対策を施しても、ケーブル30に外来ノイズが重畳することは否めない。しかも半導体受光素子(フォトダイオード)11は外来ノイズに弱く、ノイズによって半導体受光素子(フォトダイオード)11自体がラッチアップ等の誤動作を起こし易い。
【0024】
そこでこの火炎検出装置においては、半導体受光素子(フォトダイオード)11の直近にフィルタ回路13を設け、ケーブル30を介して加わる外来ノイズから上記半導体受光素子(フォトダイオード)11におけるラッチアップ等の誤動作を防止するようにしている。同時に上記フィルタ回路13により、半導体受光素子(フォトダイオード)11からケーブル30を介して出力される火炎検知信号を遅延し、これによって火炎のゆらぎ等に起因する半導体受光素子(フォトダイオード)11の不本意な応答成分を除去するものとなっている。即ち、前述したように半導体受光素子(フォトダイオード)11の応答特性は従前のCdSセルに比較して非常に早く、火炎のゆらぎによってその可視光の強度が僅かに変動するだけで、その受光強度の変化に敏感に応答する。これ故、僅かな火炎のゆらぎにより半導体受光素子(フォトダイオード)11の出力(火炎検知信号)が低下するだけでも、これを消炎として誤検出する虞がある。
【0025】
このような不具合を防止するべく、この火炎検出装置においては上述しように半導体受光素子(フォトダイオード)11の直近にフィルタ回路13を設けることで、高速に応答する前記半導体受光素子(フォトダイオード)11の出力(火炎検知信号)を遅延し、これによって火炎検出信号の応答波形をなまらせた後、ケーブル30に出力するものとなっている。換言すればフィルタ回路13により、半導体受光素子(フォトダイオード)11の見掛け上の応答特性を遅くしている。また上記フィルタ回路13により、前述した点火トランス等のライズ発生源から前記ケーブル30に重畳したスパイクノイズ等の外来ノイズを除去し、上記半導体受光素子(フォトダイオード)11の動作安定化を図るものとなっている。
【0026】
この結果、検出装置本体20側においては、動作が安定化された状況下における半導体受光素子(フォトダイオード)11からの出力(火炎検知信号)の変化を、火炎のゆらぎの影響を受けることのない緩やかな応答信号として検出することが可能となり、従って火炎検出を安定に行うことが可能となる。特にフィルタ回路13を半導体受光素子(フォトダイオード)11の直近に設けることで、ノイズによる半導体受光素子(フォトダイオード)11の誤動作防止機能と、該半導体受光素子(フォトダイオード)11の応答性の改善とを同時の実現することができる。
【0027】
ところで上述したセンサヘッド10、つまり半導体受光素子(フォトダイオード)11と検出装置本体20とは、単に2芯のケーブル30を介して接続されるだけである。これ故、検出装置本体20に対して半導体受光素子(フォトダイオード)11を逆接続してしまう可能性がある。ちなみに従来のCdSセルは無極性であるので、検出装置本体20に対する接続極性は問題とならない。しかし半導体受光素子(フォトダイオード)11を逆接続すると、該半導体受光素子(フォトダイオード)11の動作が不安定となる上、その出力信号自体が不定となる。
【0028】
そこでこの火炎検出装置においては、半導体受光素子(フォトダイオード)11の直近に逆接続防止用のダイオード14を直列に介挿すると共に、検出装置本体20に半導体受光素子(フォトダイオード)11の逆接続検出機能および該半導体受光素子(フォトダイオード)11の短絡故障検出機能を設けている。この逆接続検出機能および短絡故障検出機能は、前述した第1および第2の固定抵抗21,22の接続点に生じる電圧を、予め設定した閾値と比較する機能からなり、上記閾値は後述するように火炎の有無を判定する閾値とは別に設定される。
【0029】
即ち、この火炎検出装置においては半導体受光素子(フォトダイオード)11とケーブル30との間に逆接続防止用のダイオード14を直列に介挿することで、逆接続時には半導体受光素子(フォトダイオード)11に検出装置本体20側からの駆動電圧Vdが加わらないようにし、これによって半導体受光素子(フォトダイオード)11の動作自体を禁止し、不本意な出力(火炎検出信号)が得られないようにしている。換言すれば半導体受光素子(フォトダイオード)11を逆接続した場合には、該半導体受光素子(フォトダイオード)11からの出力を零[0]とし、これによって常に「火炎なし」の検出状態となるようにしている。
【0030】
更にこの火炎検出装置においては、上述したように逆接続防止用のダイオード14を設けたことと相俟って、前記検出装置本体20に火炎の有無を判定する機能に加えて、半導体受光素子(フォトダイオード)11の逆接続検出機能および短絡故障検出機能を設けている。上記逆接続検出機能および短絡故障検出機能は、図3に示すように前記第1および第2の固定抵抗21,22の接続点に生じる電圧Vinから火炎の有無を判定する閾値がVth1として与えられるとき、該閾値Vth1よりも高い電圧として設定された逆接続検出用閾値Vth2、上記閾値Vth1よりも低い電圧として設定された短絡検出用閾値Vth3として与えられる。
【0031】
検出装置本体20にケーブル30を介して半導体受光素子(フォトダイオード)11を接続しないとき、前述した第1および第2の固定抵抗21,22の接続点に生じる電圧Vdを5Vとすると、該検出装置本体20にケーブル30を介して正常に半導体受光素子(フォトダイオード)11を接続した場合には、暗黒(火炎なし)の状態においては前述した暗電流加算回路12により加算された暗電流分だけ前記ケーブル30からセンサヘッド10を介して電流が流れるので、上記第1および第2の固定抵抗21,22の接続点に生じる電圧Vinは、上記電圧Vdよりも若干低くなる。即ち、第2の固定抵抗22に対して上記暗電流の加算分だけ前記半導体受光素子(フォトダイオード)11が並列に作用するので、その検出電圧Vinは駆動電圧Vdよりも若干低くなる。
【0032】
そして火炎による可視光を検出して半導体受光素子(フォトダイオード)11が火炎検出信号を出力し、そのインピーダンスが低下すると、これに伴って第1および第2の固定抵抗21,22の接続点に生じる電圧Vinが更に低下する。前述した火炎の有無を判定する閾値Vth1は、このような受光の有無による検出電圧Vinの変化を弁別し得る電圧値として設定される。
【0033】
これに対して半導体受光素子(フォトダイオード)11を逆接続した場合には、前述した逆接続防止用のダイオード14によって半導体受光素子(フォトダイオード)11、ひいてはセンサヘッド10への電流供給自体が遮断されるので、前述した暗電流加算回路12が機能することがなく、従って暗黒(火炎なし)の状態においても第1および第2の固定抵抗21,22の接続点に生じる検出電圧Vinが前述した駆動電圧Vdから低下することがない。前述した逆接続検出用閾値Vth2は、このような逆接続の有無によって変化する検出電圧Vinの違いを弁別し得る電圧値として設定される。そして逆接続した状態においては、火炎が存在しても半導体受光素子(フォトダイオード)11自体が作動することがないのでその出力が得られず、従って駆動電圧Vdに張り付いた検出電圧Vinが変化することはない。従ってこのような状態を上記逆接続検出用閾値Vth2の下で判定することによりセンサヘッド10、つまり半導体受光素子(フォトダイオード)11の逆接続を検出することが可能となる。
【0034】
また検出装置本体20に半導体受光素子(フォトダイオード)11を正常に接続している場合、該半導体受光素子(フォトダイオード)11が正常に機能している限り前述した暗電流加算回路12を含む内部インピーダンスが存在するので、半導体受光素子(フォトダイオード)11が最大の火炎検出信号(電流)を出力したとしても、前記第1および第2の固定抵抗21,22の接続点に生じる検出電圧Vinが0Vまで低下することはない。しかし半導体受光素子(フォトダイオード)11が短絡故障すると、暗電流加算回路12の存在に拘わることなく逆接続防止用のダイオード14を介して第2の固定抵抗22の両端間が短絡されることになるので、第1および第2の固定抵抗21,22の接続点に生じる検出電圧Vinが0Vまで一気に低下する。前述した短絡故障検出用閾値Vth3は、このような半導体受光素子(フォトダイオード)11の短絡故障の有無によって変化する検出電圧Vinの違いを弁別し得る電圧値として設定される。
【0035】
かくして検出装置本体20に、上述したようにして第1および第2の固定抵抗21,22の接続点に生じる電圧Vinから、火炎の有無を判定すると共に、半導体受光素子(フォトダイオード)11の逆接続および短絡故障をそれぞれ判定する機能を設けることで、火炎検出装置の動作信頼性を確認しながら火炎検出を確実に実行することが可能となる。従ってオイルバーナー等の燃焼制御を信頼性良く安定に実行することが可能となる。
【0036】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば前述した第1〜第3の閾値電圧Vth1,Vth2,Vth3については、半導体受光素子(フォトダイオード)11の出力特性やその駆動条件等に応じてそれぞれ定めれば良いものである。また逆接続防止用のダイオード14の挿入位置を正極電源ラインとしても良いことは勿論のことである。また受光セルとしてSi以外の他の半導体受光素子を用いたものを適宜採用した場合にも同様に適用することができる。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る火炎検出装置の概略構成図。
【図2】半導体受光素子(フォトダイオード)の受光強度に対する出力電流特性を示す図。
【図3】火炎検出電圧Vinに対する火炎判定閾値Vth1、逆接続判定閾値Vth2、短絡検出閾値Vth3の関係を示す図。
【図4】ガスバーナーの概略構成と火炎検出装置のセンサヘッドの取り付け部位との関係を示す図。
【図5】ガスバーナーにおける点火制御シーケンスの例を示す図。
【符号の説明】
【0038】
10 センサヘッド
11 半導体受光素子(フォトダイオード)
11a 負荷抵抗
11b 増幅器
12 暗電流加算回路
13 フィルタ回路
14 逆接続防止用ダイオード
20 検出装置本体
21,22 固定抵抗
23 火炎検出部
24 燃焼制御装置
30 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎が発する可視光を検知して火炎検知信号を出力する有極性の半導体受光素子と、ケーブルを介して上記半導体受光素子にその駆動電圧を供給すると共に上記ケーブルを介して前記半導体受光素子における火炎検知信号によって変化する装置内の接点の電圧値に基づいて火炎の有無を判定する検出装置本体とを具備した火炎検出装置であって、
当該検出装置本体は、前記電圧値と第1の閾値とを比較して火炎の有無を判定するとともに、前記電圧値と第2の閾値とを比較して前記半導体受光素子の短絡を検出するものであり、前記第2の閾値は前記第1の閾値よりも低い電圧かつ前記半導体受光素子が最大の火炎検出信号を出力した場合の前記電圧値よりも小さい値としたことを特徴とする火炎検出装置。
【請求項2】
前記半導体受光素子と前記ケーブルとの間に直列に、前記半導体受光素子の極性を逆に接続した場合においては当該半導体受光素子への前記駆動電圧の印加を遮断する逆接続防止用ダイオードを介挿すると共に、
前記検出装置本体は更に、前記電圧値と前記第3の閾値とを比較して前記半導体受光素子の逆接続を検出するものであり、前記第3の閾値は前記第1の閾値よりも高い電圧かつ前記半導体受光素子が、前記火炎が発する可視光を検知しない場合の前記電圧値よりも大きい値としたことものである請求項1に記載の火炎検出装置。
【請求項3】
前記半導体受光素子は、フォトダイオードと該フォトダイオードの出力を増幅する増幅器とを備えたものである請求項1又は2に記載の火炎検出装置。
【請求項4】
前記検出装置本体は、直列接続されて駆動電源に接続された第1および第2の抵抗器を備え、上記第1または第2の抵抗器の両端間に前記ケーブルを介して前記半導体受光素子を並列接続したものであって、
前記第1および第2の抵抗器により電源電圧を抵抗分割して前記半導体受光素子の駆動電圧を生成すると共に、前記第1の抵抗器と前記第2の抵抗器との接続点に生じる電圧を判定して火炎の有無を判定するものである請求項1又は2に記載の火炎検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−141290(P2011−141290A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67011(P2011−67011)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【分割の表示】特願2007−4523(P2007−4523)の分割
【原出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】