説明

灯具用意匠面構成部材および灯具用意匠面構成部材の製造方法

【課題】灯具用意匠面構成部材の意匠面に凹凸部を形成したときに生じる外観ムラを低減させる。
【解決手段】車両用前照灯のエクステンションにおいて、意匠面は、最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の凹凸部と、最大断面高さRtが0.3マイクロメートル以下の平面部と、が混在するよう形成された装飾面を有する。平面部は、装飾面に対する面積比率が30%以上80%以下となるよう形成される。平面部は、最大断面高さRtが0.3マイクロメートル以下となるよう形成される。装飾面は、当該装飾面を形成するための装飾形成面を有する金型で成形用材料を成形することにより形成される。装飾形成面は、凹凸部を形成後、当該凹凸部に研磨処理を施すことにより、平面部を形成するための金型平面部が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具用意匠面構成部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用前照灯では、アウターカバーを通じて外部から目視できる意匠面を構成するエクステンションなどの意匠面構成部材を有する。このような意匠面構成部材は、デザイン性も求められるため、例えば、リフレクタなどのインナ部材を表面処理を施したランプボディなどの意匠面に溶着したときの溶着個所を目立たなくすべく、溶着個所に対応して非透明な塗装面を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、例えば、高級感ある外観を提供すべく、意匠面のうち脚部に沿った領域の内面にシリンドリカルステップを形成した車両用灯具が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
現在、意匠面構成部材のデザイン性を高めるため、表面に微小な凹凸を形成したシボが、多くの意匠面構成部材の意匠面に採用されている。このようなシボは、例えば凹凸の無い金型表面にエッチングなどの化学的な処理を施すことにより凹凸を形成させ、この金型を用いて樹脂材料を成形することにより形成することができる。例えば結晶性の樹脂材料を用いて意匠面構成部材を成形する場合、その高い流動特性から転写性も高いため、深さが1μmなど微細な凹凸や、深さが100μmなど比較的粗い凹凸も形成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−317505号公報
【特許文献2】特開2004−103390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、成形圧力や成形の充填速度によって、シボ形状の凹凸よりさらに微細な凹凸形状が転写される個所とされない個所とが生じる場合がある。このような転写のバラツキは、例えばグロスのムラなど外観ムラに繋がり、外観の品質を低下させる一因となる。たとえば車両用灯具に使用される灯具用意匠面構成部材では、無機質さを表現するために、いわゆる梨地などのシボによる凹凸面が、その多くに採用されている。しかし、このようなシボは、その加工方法から成形品の凹凸が不均一となる場合があり、上記の外観ムラが発生しやすい性質を有する。この外観ムラの軽減には、金型のシボ形成面にビーズ加工(ブラスト処理)を施して微細な凹凸を低減させる方法が知られているが、外観ムラを充分に軽減するには至っていない。
【0006】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、灯具用意匠面構成部材の意匠面に凹凸部を形成したときに生じる外観ムラを低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の灯具用意匠面構成部材は、最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の凹凸部と、最大断面高さRtが1マイクロメートル未満の平面部と、が混在するよう形成された装飾面を有する意匠面を備える。平面部は、装飾面に対する面積比率が30%以上80%以下となるよう形成される。
【0008】
発明者による研究開発の結果、平面部をこのように設けることにより、意匠面に凹凸部を形成したときに生じる外観ムラを低減させることができることが判明した。したがってこの態様によれば、外観の品質の良好な灯具用意匠面構成部材を提供することができる。
【0009】
平面部は、最大断面高さRtが0.3マイクロメートル以下となるよう形成されてもよい。発明者による研究開発の結果、平面部の最大断面高さRtが0.3マイクロメートル以下にすることにより、意匠面に凹凸部を形成したときに生じる外観ムラをより低減させることができることが判明した。したがってこの態様によれば、灯具用意匠面構成部材の外観の品質をより向上させることができる。
【0010】
装飾面は、当該装飾面を形成するための装飾形成面を有する金型で成形用材料を成形することにより形成され、装飾形成面は、凹凸部を形成後、当該凹凸部に研磨処理を施すことにより、平面部を形成するための金型平面部が設けられてもよい。この態様によれば、金型に研磨処理を施すという簡易な方法により、成型品の平面部を形成するための金型平面部を設けることができる。
【0011】
本発明の別の態様は、灯具用意匠面構成部材の製造方法である。この方法は、意匠面を有する灯具用意匠面構成部材の製造方法であって、意匠面のうち凹凸を有する装飾面を形成するための装飾形成面を有する金型で成形用材料を成形することにより、灯具用意匠面構成部材を形成する工程を備える。装飾形成面は、成形した装飾面に、最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の凹凸部と最大断面高さRtが1マイクロメートル未満の平面部とが、装飾面に対する平面部の面積比率が30%以上80%以下となって混在して形成されるよう、凹凸部を成形するための金型凹凸部と、平面部を成形するための金型平面部とが設けられる。
【0012】
発明者による研究開発の結果、金型の装飾形成面をこのように設けることにより、意匠面に凹凸部を形成したときに生じる外観ムラを低減させることができることが判明した。したがってこの態様によれば、外観の品質の良好な灯具用意匠面構成部材を提供することができる。
【0013】
金型平面部は、金型のうち装飾形成面とすべき被処理面に凹凸部を形成後、当該凹凸部に研磨処理を施すことにより形成されてもよい。
【0014】
この態様によれば、このような金型平面部を簡易に設けることができる。このため、灯具用意匠面構成部材を成形するための金型製作を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、灯具用意匠面構成部材の意匠面に凹凸部を形成したときに生じる外観ムラを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る車両用前照灯の断面図である。
【図2】実施例1に係る成形品の装飾面の表面写真である。
【図3】実施例1の平面部を特定した図である。
【図4】実施例1の凹凸部と平面部とを分離した図である。
【図5】実施例2に係る成形品の装飾面の表面写真である。
【図6】実施例2の平面部を特定した図である。
【図7】実施例2の凹凸部と平面部とを分離した図である。
【図8】比較例に係る成形品の装飾面の表面写真である。
【図9】実施例1、実施例2、および比較例の各々の装飾面の算術平均粗さRaおよび最大断面高さRtを示す図である。
【図10】実施例1、実施例2、および比較例の外観ムラに対する評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る車両用前照灯10の断面図である。図1は、水平な面で切断した車両用前照灯10を上方から見た状態を示している。図1は、車両の右側に設けられる車両用前照灯10を示している。車両左側に設けられる車両用前照灯は、図1に示す車両用前照灯10と面対称に形成される。
【0019】
車両用前照灯10は、ランプボディ12、透光カバー14、エクステンション16、ロービーム用灯具ユニット18、およびハイビーム用灯具ユニット20を有する。ランプボディ12は、樹脂などによって細長い開口部を有するカップ型に成形されている。透光カバー14は透光性を有する樹脂などによって成形され、ランプボディ12の開口部を塞ぐようにランプボディ12に取り付けられる。こうしてランプボディ12と透光カバー14とによって灯室が形成され、この灯室内にエクステンション16、ロービーム用灯具ユニット18、およびハイビーム用灯具ユニット20が配置される。
【0020】
エクステンション16は、ロービーム用灯具ユニット18およびハイビーム用灯具ユニット20からの照射光を通すための開口部を有し、ランプボディ12に固定される。
【0021】
ロービーム用灯具ユニット18は、リフレクタ32、光源バルブ30、およびシェード34を有する。リフレクタ32はカップ型に形成され、中央に挿通孔が設けられている。本実施形態では、光源バルブ30はハロゲンランプなどフィラメントを有する白熱灯によって構成されている。なお、光源バルブ30は、メタルハライドバルブなどのHIDランプ(ディスチャージランプともいう)からなる放電灯が採用されてもよい。光源バルブ30は、内部に突出するようリフレクタ32の挿通孔に挿通されてリフレクタ32に固定される。リフレクタ32は、光源バルブ30が照射した光を車両前方に向けて反射させるよう、内面の曲面が形成されている。シェード34は、光源バルブ30から車両前方へ直接進行する光を遮断する。
【0022】
ハイビーム用灯具ユニット20は、光源バルブ40およびリフレクタ42を有する。リフレクタ42はカップ型に形成され、中央に挿通孔が設けられている。光源バルブ40もまた、白熱灯によって構成されている。光源バルブ40は、内部に突出するようリフレクタ42の挿通孔に挿通されてリフレクタ42に固定される。リフレクタ42もまた、光源バルブ40が照射した光を車両前方に向けて反射させるよう、内面の曲面が形成されている。
【0023】
例えばエクステンション16などは、透光カバー14を通して外部から目視可能に構成される。このためエクステンション16は、透光カバー14を通じて目視可能な部分は意匠面16aとなる。したがってエクステンション16は、意匠面構成部材として機能する。
【0024】
このように外部から目視可能な部分は、デザイン性などが求められる。このため、エクステンション16の意匠面16aは、シボが形成された装飾面16bを有する。本実施形態では、意匠面16aの全面が装飾面16bとなっている。しかし、意匠面16aの一部に装飾面16bが設けられていてもよい。また、エクステンション16とリフレクタ32またはリフレクタ42とが一体的に形成されてもよい。また、リフレクタ32またはリフレクタ42に、シボなどが形成された装飾面が設けられてもよい。
【0025】
本実施形態では、装飾面16bは、最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の凹凸部と、最大断面高さRtが1マイクロメートル未満の平面部と、が混在するよう形成されている。この平面部は、装飾面16bに対する面積比率が30%以上80%以下となるよう形成される。この装飾面16bは、装飾面16bを形成するための装飾形成面を有する金型で成形用材料を成形することにより形成される。金型のこの装飾形成面は、最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の金型凹凸部と、最大断面高さRtが1マイクロメートル未満の金型平面部とが、装飾形成面に対する金型平面部の面積比率が30%以上80%以下となるよう互いに混在して形成されている。
【0026】
発明者による鋭意なる研究開発の結果、このように凹凸部に平面部を混在させることにより、視認される外観ムラを低減できることが判明した。また、装飾面16bの平面部は、最大断面高さRtが1マイクロメートル以下、好ましくは0.3マイクロメートル以下となるよう形成されることにより、外観ムラをより低減できることが判明した。以下、本実施形態に係る装飾面16bにこのような平面部を設けた実施例1および実施例2について、比較例と比較しながら説明する。
【0027】
(実施例1)
図2は、実施例1に係る成形品の装飾面の表面写真である。実施例1は、金型に梨地の凹凸部を形成後、その凹凸部に紙ヤスリによる平面加工を施した後、凹凸部に研磨処理を施すことにより装飾形成面を形成した金型を用いて試験材を成形したものである。実施例1では、エクステンション16と同じ材質の樹脂材料を用いて成形したが、エクステンション16とは異なる外形の試験材に成形した。
【0028】
実施例1の成形品の装飾面を成形するための金型の装飾形成面には、成形した装飾面に凹凸部と平面部とが上述のように形成されるよう、成形品の凹凸部を形成するための金型凹凸部と、成形品の平面部を形成するための金型平面部とが混在するよう形成されている。
【0029】
金型凹凸部は、最大断面高さRtが1マイクロメートル以上となるよう形成されている。また、金型平面部は、最大断面高さRtが0.3マイクロメートル以下となるよう形成されている。なお、金型平面部は、最大断面高さRtが1マイクロメートル未満となるよう形成されてもよい。この金型平面部は、装飾形成面に対する面積比率が30%以上80%以下となるよう形成されている。
【0030】
金型を形成するために、金型のうち装飾形成面とすべき被処理面に、例えばエッチングなどによって最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の梨地の凹凸部を形成した。次に、この凹凸部を紙ヤスリでこすり、凹凸の凸部の上部を平坦化させる平面加工を施した。次に、当該凹凸部に研磨処理を施すことにより、その一部を金型平面部とした。このとき、残った凹凸部が金型凹凸部となる。このように研磨処理を用いることにより、このような平面部を簡易に設けることができる。実施例1では、磨き番手#14000のコンパウンドによって金型の装飾形成面に研磨処理を施した。コンパウンドには、ダイヤモンド粒子またはアルミナが含まれているものを使用した。
【0031】
図2から分かるように、このような金型を用いて成形されることで、成形品の装飾面は、ルーペや光学顕微鏡で拡大すると、色の濃い凸部と、色の薄い凹部とが明確に視認できるよう形成される。この成形品の凸部が、金型の凹部によって形成された部分となり、この成形品の凹部が、研磨処理された金型平面部によって形成された平面部となる。
【0032】
図3は、実施例1の平面部を特定した図である。平面部は、凹部よりも色が薄く表れているため容易に特定することができる。このため発明者は、公知の画像ソフトを用いて図2の画像にレイヤを重ね、平面部と特定した領域の外縁をラインで囲った。
【0033】
図4は、実施例1の凹凸部と平面部とを分離した図である。次に発明者は、そのレイヤのみを取り出し、平面部として囲った領域の色を白色とし、それ以外の領域の色を黒とした。発明者は、この画面全体の領域と、平面部すなわち白色の領域との面積比率を画像ソフトの機能を用いて算出した。このように画像ソフトの機能によって、レイヤにラインを引き、色を付けて面積比率を求めることが可能であることは公知であるため、その詳細な手順については説明を省略する。
【0034】
(実施例2)
図5は、実施例2に係る成形品の装飾面の表面写真である。実施例2は、金型に革シボの凹凸部を形成後、研磨処理を施すことにより装飾形成面を形成した金型を用いて試験材を成形したものである。実施例2では、エクステンション16と同じ材質の樹脂材料を用いているが、エクステンション16とは異なる外形の試験材を用いて評価を行った。
【0035】
実施例2の成形品の装飾面を成形するための金型の装飾形成面にも、成形した装飾面に凹凸部と平面部と上述のように形成されるよう、成形品の凹凸部を形成するための金型凹凸部と、成形品の平面部を形成するための金型平面部とが混在するよう形成されている。
【0036】
最大断面高さRtが1マイクロメートル以上となるよう金型凹凸部が形成され、最大断面高さRtが0.3マイクロメートル以下となるよう金型平面部が形成されている点や、装飾形成面に対する面積比率が30%以上80%以下となるよう金型平面部が形成されている点などは実施例1と同様である。
【0037】
金型を製造するため、金型のうち装飾形成面とすべき被処理面に、例えばエッチングなどによって最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の革シボの凹凸部を形成した。次に、上述と同様の研磨処理を施すことにより、金型平面部を形成させた。実施例2もまた、エクステンション16と同じ材質の樹脂材料を用いて成形したが、エクステンション16とは異なる外形の試験材に形成した。
【0038】
図5から分かるように、このような金型を用いて成形されることで、成形品の装飾面は、色の薄い凸部と、色の濃い凹部とが明確に視認できるよう形成される。この成形品の凸部が、金型の凹部によって形成された部分となり、この成形品の凹部が、研磨処理された金型平面部によって形成された平面部となる。
【0039】
図6は、実施例2の平面部を特定した図である。発明者は、上述と同様に公知の画像ソフトを用いて図5の画像にレイヤを重ね、平面部と特定した領域の外縁をラインで囲った。
【0040】
図7は、実施例2の凹凸部と平面部とを分離した図である。次に発明者は、このレイヤのみを取り出し、上述と同様に平面部として囲った領域の色を白色とし、それ以外の領域の色を黒とした。さらに、この画面全体の領域と平面部との面積比率を画像ソフトの機能を用いて算出した。
【0041】
(比較例)
図8は、比較例に係る成形品の装飾面の表面写真である。比較例に係る装飾面は、いわゆる梨地とされたものである。比較例は、梨地の凹凸が形成された金型を利用して樹脂材料を成形して試験材の表面に最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の梨地の凹凸部を形成したものである。比較例においても、エクステンション16と同じ材質の樹脂材料を用いて成形したが、エクステンション16とは異なる外形の試験材に成形した。図8から分かるように、表面に研磨処理の跡はなく、凹凸部のみで表面が構成されている。
【0042】
図9は、実施例1、実施例2、および比較例の各々の装飾面の算術平均粗さRaおよび最大断面高さRtを示す図である。実施例1および実施例2については、凹凸部と平面部とを完全に分離して算術平均粗さRaおよび最大断面高さRtを算出することは困難であるため、まず凹凸部については、平面部を含む状態で算術平均粗さRaおよび最大断面高さRtの双方を測定および算出した。したがって、実施例1については、図2に示す装飾面の算術平均粗さRaおよび最大断面高さRtの双方を測定および算出し、実施例2については、図5に示す装飾面の算術平均粗さRaおよび最大断面高さRtの双方を測定および算出した。
【0043】
また、図2に示す実施例1の平面部や、図5に示す実施例2の平面部は、それぞれ一つ一つの平面部の面積が非常に小さい。このため、算術平均粗さRaおよび最大断面高さRtをより正確に算出すべく、実施例1および実施例2の平面部については、表面に梨地や革シボの凹凸が形成されていない金型の平坦な被処理面に対して研磨処理を施し、この金型を用いて試験材を成形した。このとき、エクステンション16と同様の材料によって形成された試験材を用いた。また、研磨処理は、磨き手番#14000の上述のコンパウンドを使用した。こうして成形した試験材の算術平均粗さRaおよび最大断面高さRtの双方を測定および算出した。
【0044】
このように、実施例1および実施例2は、凹凸部の算術平均粗さRaは1μm以上、最大断面高さRtは8μm以上となっており、平面部の算術平均粗さRaは0.05μm以下、最大断面高さRtは0.3μm以下となっていることが分かる。また、比較例では、凹凸部の算術平均粗さRaは1μ以上、最大断面高さRtは9μm以上となっていることが分かる。
【0045】
図10は、実施例1、実施例2、および比較例の外観ムラに対する評価結果を示す図である。実施例1では、装飾面に対する平面部の比率がこのように金型の研磨処理を施した実施例1および実施例2では、目視による官能評価の結果、外観ムラが許容範囲となった。これに対し比較例では、外観ムラは許容範囲とはならなかった。
【0046】
この結果から、装飾面に、最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の凹凸部と、最大断面高さRtが0.3マイクロメートル以下の平面部と、を混在するよう形成し、このとき平面部が、装飾面16bに対する面積比率が30%以上80%以下となるよう形成させることにより、外観ムラを抑制することができることが分かる。
【0047】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を本実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
【0048】
ある変形例では、金型のうち当該装飾形成面とすべき被処理面に対する被処理面に対する面積比率が30%以上80%以下となるよう当該被処理面に分散してマスキングしてからエッチング処理を施して金型凹凸部を形成後、当該マスキングを除去することにより金型平面部が形成される。これにより、成形した装飾面に最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の凹凸部と最大断面高さRtが1マイクロメートル未満の平面部とが装飾面に対する平面部の面積比率が30%以上80%以下となって混在して形成されるよう、凹凸部を成形するための金型凹凸部と、平面部を成形するための金型平面部とが設けられる。このようにマスキングおよびエッチングという簡易な方法を用いることにより、成形品の平面部の面積比率を簡易に調整することができる。このため、外観ムラを簡易に抑制することができる。
【0049】
また、上述の実施形態では、灯具用意匠面構成部材としてエクステンションを例に説明しているが、もちろんこれに限られるものではなく、本発明はハウジングにも適用することができる。また、上述の実施形態では、ロービーム用灯具ユニットとハイビーム用灯具ユニットとが別々となっている、いわゆる4灯式に対応する車両用前照灯を例に説明しているが、もちろんこれに限られるものではなく、本発明はロービーム用灯具ユニットとハイビーム用灯具ユニットとが兼用されている、いわゆる2灯式に対応する車両用前照灯にも適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 車両用前照灯、 16 エクステンション、 16a 意匠面、 16b 装飾面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の凹凸部と、最大断面高さRtが1マイクロメートル未満の平面部と、が混在するよう形成された装飾面を有する意匠面を備え、
前記平面部は、前記装飾面に対する面積比率が30%以上80%以下となるよう形成されることを特徴とする灯具用意匠面構成部材。
【請求項2】
前記平面部は、最大断面高さRtが0.3マイクロメートル以下となるよう形成されることを特徴とする請求項1に記載の灯具用意匠面構成部材。
【請求項3】
前記装飾面は、当該装飾面を形成するための装飾形成面を有する金型で成形用材料を成形することにより形成され、
前記装飾形成面は、凹凸部を形成後、当該凹凸部に研磨処理を施すことにより、前記平面部を形成するための金型平面部が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の灯具用意匠面構成部材。
【請求項4】
意匠面を有する灯具用意匠面構成部材の製造方法であって、
前記意匠面のうち凹凸を有する装飾面を形成するための装飾形成面を有する金型で成形用材料を成形することにより、前記灯具用意匠面構成部材を形成する工程を備え、
前記装飾形成面は、成形した装飾面に、最大断面高さRtが1マイクロメートル以上の凹凸部と最大断面高さRtが1マイクロメートル未満の平面部とが、前記装飾面に対する前記平面部の面積比率が30%以上80%以下となって混在して形成されるよう、前記凹凸部を成形するための金型凹凸部と、前記平面部を成形するための金型平面部とが設けられており、
前記金型平面部は、前記金型のうち前記装飾形成面とすべき被処理面に凹凸部を形成後、当該凹凸部に研磨処理を施すことにより形成されることを特徴とする灯具用意匠面構成部材の製造方法。
【請求項5】
前記平面部は、最大断面高さRtが0.3マイクロメートル以下となるよう形成されることを特徴とする請求項4に記載の灯具用意匠面構成部材の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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